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カテゴリー「ニュース」の80件の投稿

2023年11月 3日 (金)

新型コロナ2023.10 ノーベル賞

 新型コロナウイルスが感染症法の5類に移行した5月以降、第9波の感染拡大傾向が続いていた。9月下旬にはピークアウトして、10月は毎週連続で減少している。一方で、インフルエンザ患者は増加傾向にあり、休校や学年・学級閉鎖が全国に広がっている。冬に備え、引き続き感染対策を続ける事が必要。

 そんな中で、今年のノーベル生理学・医学賞に、新型コロナの「mRNAワクチン」の開発で大きな貢献をした米国ペンシルベニア大学の研究者カリコ氏ら2人を選んだと発表があった。

 2023年10月1日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.09 第9波減少」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

 

【10月2日】

●新型コロナワクチンにつながる技術 2氏にノーベル生理学・医学賞

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日、今年のノーベル生理学・医学賞を、独バイオ企業ビオンテック顧問のカタリン・カリコ氏(68)と、米ペンシルベニア大のドリュー・ワイスマン教授(64)に贈ると発表した。新型コロナに対する「mRNAワクチン」の実用化につながる新たな技術を開発したことが評価された。カリコ氏らは人工的に合成した遺伝物質のmRNAをワクチンとして使うための基礎となる方法を開発した。

 ハンガリー出身で米国に渡ってmRNAの研究をしていたカリコ氏は、米国のワクチン研究者ワイスマン氏とともに、mRNAの一部を別の物質に置き換えて「飾り」がついたような状態にすると、免疫反応を回避できることを発見。2005年、米国の免疫学専門誌に論文を発表した。これを発展させたものが、新型コロナに対するワクチンとして使われ、パンデミックが始まってから、わずか11カ月という驚異的なスピードで実用化に至った。

【10月4日】

●海外で感染症発生 省庁の役割明確化 政府、初動方針

 政府の新型インフルエンザ等対策推進会議が4日開かれ、感染症が海外で発生した際の初動方針が示された。国内での発生に備え、テレワークや時差出勤、出入国時の検疫、検査能力の確保などの対応を速やかに実施できるように各省庁の役割を明確化。初動対応は、指定感染症や急速に広がる恐れのある新感染症が海外で発生した段階を想定。厚労省が情報を収集し、司令塔の内閣感染症危機管理統括庁に報告、状況に応じて関係省庁による対策会議を開く。

 WHOが新型インフルの発生を宣言したり、新型コロナのように急速に広がる可能性のある感染症の発生を公表したりした段階で、政府に対策本部を設置する。厚労省は国のコールセンターを設置。統括庁は他省庁と連携し、感染症が起きている国や地域へ国立感染研の専門家の派遣を検討したり、感染が疑われる人への休暇取得や、テレワークの準備を企業に呼びかけたりする。推進会議は来年6月ごろに新たな政府行動計画をまとめる。

【10月5日】

●コロナ給付金「性風俗業は対象外」、憲法に違反せず 東京高裁

 関西地方の性風俗事業者は、新型コロナの影響を受けた事業者に国が支給する「持続化給付金」や「家賃支援給付金」の制度の対象から外されたことについて、「職業差別で法の下の平等を定めた憲法に違反する」と主張、国などに賠償と給付金の支給を求めた。1審の東京地方裁判所は去年、「性風俗業の特徴は、大多数の国民の道徳意識に反するもので、異なる取り扱いをすることには合理的な根拠がある」として、憲法には違反しないと判断、訴えを退けた。

 5日の2審の判決で、東京高等裁判所は「給付対象とすると、国民の理解を得るのが難しいと判断した理由には合理性がある。性のあり方に関する価値観は多様化しているが、性風俗業を公的に認めるのは相当ではない」として、1審に続いて憲法に違反しないと判断、事業者の訴えを退けた。弁護団の亀石弁護士は「なぜ性風俗事業者を給付対象としないことが正当化されるのか、最高裁にはきちんと向き合い検討してほしい」と述べ、上告する方針を明らかにした。

【10月6日】

●新型コロナワクチン「すべての小児に接種推奨」 日本小児科学会

 厚労省の審議会がことし秋以降の新型コロナワクチン接種について、接種を勧める対象を重症化リスクの高い人に限定したことなどを受け、日本小児科学会は、子どもへの接種を推奨するかどうか改めて検討し、その結果を公表した。それによると、現在国内で主流となっているオミクロン株のXBB系統や、さらに変異した「EG.5」と呼ばれる変異ウイルスが広がり、今後流行の拡大が想定されるとしている。

 その上で、この秋以降接種されるワクチンは、従来のワクチンよりも変異ウイルスに対して発症を予防する効果が高いと考えられることから、引き続き「すべての小児に接種を推奨する」としている。安全性については、膨大なデータにもとづき、信頼性の高い安全性の評価が行われているとする。学会は「小児に対する新型コロナの脅威は依然として存在し、感染や重症化を予防する手段としてワクチン接種は有効だ」としている。

●コロナ感染者数、前週比0.8倍 北海道以外は減少 インフル、注意報に迫る

 厚労省は6日、全国に約5千ある定点医療機関に9月25日~10月1日に報告された新型コロナの新規感染者数は計4万3705人で、1定点あたり8.83人だったと発表した。前週の約0.80倍で、北海道をのぞく46都府県で減少した。都道府県別の最多は愛知の12.40人で、熊本11.30人、茨城10.73人と続く。定点医療機関に報告された新規入院患者数は2011人だった。厚労省は「全国的に減少傾向にありピークアウトしたと考えられるが、引き続き感染対策を行って欲しい」としている。

 一方、季節性インフルエンザは、前週の約1.35倍の9.57人に増加、注意報レベルの「10人」に迫る。昨冬からの流行が続いており、例年より患者が多い状態で推移している。前年同時期は0.01人だった。39都道府県で前週から増加、14都県が注意報レベルを超えた。休校や学年・学級閉鎖は全国で計2204校にのぼる。

 10月6日発表の定点把握(9月25日~10月1日)出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【10月11日】

●「コロナ禍企業向け補助金、縮減や効果検証を」 審議会で意見

 財務相の諮問機関「財政制度等審議会」は、11日の会合で財務省の担当者は新型コロナの感染拡大のあと、中小企業対策費が急増していて、事業者の状況をみきわめながら早期に正常化する必要があると提起した。この中では感染拡大を受けて設けられた新たな業種に転換する企業などを支援する「事業再構築補助金」は、これまでにおよそ2兆4000億円の予算が計上された一方で、先月末時点で5600億円程度が具体的な使いみちが決まっていない状況だと説明された。

 委員からは、新型コロナの感染症法の位置づけは、5類に移行していて膨らんだ中小企業対策費を縮減するのは当然ではないかという意見や「事業再構築補助金」について企業の構造転換に、どこまでつながったのか検証が必要だという意見が出された。「財政制度等審議会」の土居部会長代理は、会議のあとの記者会見で「国民の税金が使われていることを踏まえると、コロナ禍で未曽有の水準に達した中小企業対策費は平時に戻していくべきではないかと考えている」と述べた。

【10月13日】

●コロナ感染、全都道府県で減少 インフル、注意報に迫る

 厚労省は13日、全国に約5千ある定点医療機関に2~8日に報告された新型コロナの新規感染者数は計2万5630人、1定点あたり5.20人と発表。前週の約0.59倍で、全都道府県で減少。厚労省は「全国的に減少しており、感染拡大のピークは過ぎたとみられるが感染対策は引き続き行ってほしい」としている。前の週から減少が続くのは5週連続で47の都道府県で減少。都道府県別では最多が北海道8.19人、沖縄県7.52人、石川県7.42人、愛知県7.11人、茨城県6.84人。

 今月8日までの1週間に、全国およそ5千の医療機関から報告された新たに入院した患者の数は1431人で、前の週と比べて580人減少した。一方、季節性インフルエンザは前週の約1.04倍の9.99人で、注意報レベルの10人に迫っている。休校や学年・学級閉鎖は全国で計2275校にのぼる。

 10月13日発表の定点把握(10月2日~10月8日)出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【10月15日】

●新型コロナ後遺症「血液中物質に特定の変化」 米研究チーム発表

 米国イエール大学の岩崎教授らの研究チームは、新型コロナに感染したあと倦怠感や息苦しさなど何らかの症状が長引く「後遺症」が1年以上ある人と、後遺症がない人、感染しなかった人など、合わせて268人の血液成分を分析した。その結果、後遺症がある人たちでは、血液中にあるB細胞やT細胞と呼ばれる特定の免疫細胞が増加していたほか、体内で潜伏していたヘルペスウイルスが活性化するなどの変化が確認されたという。

 さらに、後遺症がある人では、体の状態を一定に保ちストレス反応に関わる「コルチゾール」というホルモンの量が、後遺症がない人や感染しなかった人と比べ、半減していた。チームは、こうした変化を指標にすることで、新型コロナの後遺症の正確な診断や、治療法の開発につながるとしていて、科学雑誌「ネイチャー」に発表した。岩崎教授は「後遺症があることを周りに理解されず悩み続ける人も多いので、原因の解明を目指して研究を進めたい」と話す。

【10月17日】

●新型コロナ変異分析機器 交付金整備の21台 ほとんど使用されず

 厚労省は、全ゲノム解析によってウイルスの変異を調べられる分析機器「次世代シークエンサー」を、都道府県が地方衛生研究所や民間検査機関に整備した際に交付金を出していて、導入された機関は自治体から依頼を受けた際に、ウイルス変異の動向の監視などのため使用する。この機器について、会計検査院は2020年度と2021年度に18道府県が導入した63台の使用状況を調査した。

 その結果、8つの道府県が民間検査機関に整備した21台がほとんど使用されていなかった。21台で合わせておよそ5億8600万円の国の交付金が支出されていた。厚労省は新型コロナの位置づけが「5類」に移行されたあとも、変異状況を確認するよう要請していることから、会計検査院は使い方を自治体に検討させることなどを求めた。厚労省は「事業目的に沿って機器が使われるよう改めて周知する」としている。

【10月18日】

●訪日客消費、コロナ前超す 円安追い風、19年比17%増 7~9月

 観光庁は18日、7~9月の訪日外国人の旅行消費額が1兆3904億円だったと発表。2019年同期より17.7%増、コロナ前の水準を上回った。円安で国内の商品やサービスの割安感が強まり、富裕層の消費も活発になっている。旅行消費額は日本に滞在中の宿泊や交通、買い物、飲食などの合計。中国2827億円で最も多く、台湾2046億円、韓国1955億円で続く。中国は8月に団体旅行が解禁されたが訪日客数は回復しておらず、消費額はコロナ前の6割。

 独立行政法人日本政府観光局(JNTO) が18日発表した9月の訪日外国人客数は218万4300人となり、2019年同月の96.1%に回復した。コロナ前に最多だった訪日中国人は32万5600人で、19年同月の39.8%にとどまった。東京電力福島第一原発の処理水放出を受けて訪日を避ける動きが影響したとみられる。

●倉庫で眠るマスク・ガウン コロナ交付金で自治体が購入 検査院が調査

  コロナ対応の地方創生臨時交付金を使って自治体が購入したマスクや医療用ガウンなどの一部が、活用されないまま残っていることが、会計検査院の調べでわかった。2020~21年度に20府県と505市町村が433億円(交付金397億円)を使い、6674品目を購入。しかし秋田、福島、茨城、熊本の4県と横浜市などの48市町村では、22年度末で、半分以上が使われず在庫の残高が50万円以上になっている物品が90品目(購入額6億円、交付金4億円)あった。

 マスクや医療用ガウン、パーティション、消毒液などだった。購入直後から倉庫で保管され、使用期限が迫っている物品もあるという。検査院は「コロナ拡大の初期段階ではマスクの在庫が逼迫するなどやむを得ない状況もあったが、配布対象者の意向確認をして必要な分量を確保するべきだった」としている。検査院は交付金を所管する内閣府と総務省に対して、「自治体の物品配布事業の見直しを行い、在庫の有効活用を行うべきだ」としている。

【10月19日】

●新型コロナワクチン 新たに1000万回分を追加購入 厚労省

 オミクロン株の派生型「XBB」系統に対応するワクチンは、先月20日から希望する生後6か月以上のすべての人を対象に接種が行われている。厚労省はワクチン廃棄ができるだけ少なくなるよう、接種希望者数の状況を確認しながらメーカーから購入、ことし7月に2500万回分を購入したほか、先月には1000万回分を追加購入。一方、一部の自治体や医療機関では、希望者が当初の見込みよりも多く、接種予約が取りづらい状況が続いている。

 感染が拡大する冬を前に、今後も接種が滞りなく行えるよう厚労省は、ファイザーのワクチン900万回分とモデルナのワクチン100万回分を追加購入したことを19日発表した。ワクチンは来月から年内にかけて自治体や医療機関に配送される予定。厚労省は「打ちたい人が滞りなくワクチンを打てるよう、今後も確実に供給していきたい」としている。

【10月20日】

●コロナ感染者数 香川県以外減少

 厚労省は20日、全国に約5千ある定点医療機関に9~15日に報告された新型コロナの新規感染者数は計1万8587人で、1定点あたり3.76人だったと発表した。前週(5.20人)の約0.72倍で6週連続で減少した。都道府県別では、香川県を除く46都道府県で減少。最多は北海道の6.61人で、岐阜6.13人、石川5.58人と続く。東京2.33人、愛知5.12人、大阪2.77人、福岡2.83人だった。

 また、今月15日までの1週間に、全国およそ500の医療機関から報告された新たに入院した患者の数は1245人で、前の週と比べて265人の減少だった。厚労省は全国の流行状況について「ピークを過ぎて6週連続減少しているが、インフルエンザの患者は増加傾向にあるほか、冬にコロナの感染が拡大することからも引き続き、感染対策は続けてほしい」としている。

 10月20日発表の定点把握(10月9日~15日)出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●インフル患者数 注意報レベル超

 厚労省は20日、全国約5千カ所の定点医療機関から9~15日に報告された季節性インフルエンザの患者数が計5万4709人にのぼり、1医療機関あたり11.07人だったと発表した。10月に注意報レベルの「10人」を超えたのは、新型インフルが流行した2009年を除けば、今の集計方法が始まった1999年以降で初めてという。

 例年なら春までにおさまってきたが、今年は昨年12月からの流行期が続いたまま、次のシーズンに突入する異例の事態。9~15日の患者数は前週の約1.11倍。37道府県で前週から増加し、17都県が注意報レベルを超えた。

【10月23日】

●「感染症や災害 規定なくても国が指示を」地方制度調査会素案

 首相の諮問機関である地方制度調査会は、コロナ禍で浮き彫りになった課題を踏まえ、新しい国と地方の在り方について議論を進めていて、23日の会合で答申の素案を示した。それによると、2020年2月に発生したクルーズ船での集団感染で、県などをまたいで患者を移送する際に、国と自治体との間で調整が難航したことなどに触れ、緊急時に迅速に対応できるよう関係を見直す必要があるとしている。

 このため、国民の安全に重大な影響を及ぼす感染症や災害が発生した場合には感染症法など個別の法律に規定がなくても、患者受け入れの調整などを念頭に、国が自治体に必要な指示を行えるようにすべき、指示する際には関係大臣が判断し、閣議決定を経ることが適当だとしている。地方制度調査会はさらに議論を進め、年内をめどに岸田首相に答申することにしている。

【10月27日】

●全国のコロナ感染者、7週連続減 インフルは注意報、沖縄以外で増加

 厚労省は27日、全国に約5千ある定点医療機関に16~22日に報告された新型コロナの新規感染者数は計1万6075人で、1定点あたり3.25人と発表した。前週の約0.86倍、7週連続で減少した。都道府県別の最多は北海道6.79人で、長野5.17人、福島4.93人と続く。22日までの1週間に定点医療機関に報告された新規入院患者数は1138人だった。前週の1271人から133人減った。集中治療室(ICU)に入院している患者数は41人、前週の68人から27人減。

 厚労省は「新型コロナの患者数は7週連続で減少し、新たに入院した患者も減少傾向であるが、例年、冬になるとコロナの感染が拡大傾向にあることから引き続き感染対策は続けてほしい」としている。一方、季節性インフルエンザは、前週の約1.48倍の16.41人で、沖縄をのぞく46都道府県で前週から増加した。休校や学年・学級閉鎖は全国で計3751校にのぼり、前週の1772校の約2倍となった。

 10月27日発表の定点把握(10月16日~22日)出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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2023年10月 5日 (木)

新型コロナ2023.09 第9波減少

 新型コロナが感染症法の5類に移行した5月以降、感染拡大傾向が続いている。加藤厚労相は9月11日、現状を「第9波」だと事実上認めた。9月3日までの1週間に報告された新規感染者数は1つの医療機関あたり平均20.50人で、5類移行後で最多となっていた。3週間後の9月24日までの1週間では、1つの医療機関あたりの平均11.01人で、前の週の0.63倍となった。厚労省は「減少傾向が続いていてピークアウトの可能性がある。今後も感染対策を続けてほしい」としている。

 2023年9月1日から30日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.08 EG.5系統」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】


【9月1日】

●感染症危機、次への備え 「危機管理統括庁」、きょう発足

 政府の感染症対応の司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁」が9月1日発足した。新型コロナ対応の反省をふまえ、省庁や関係機関とのやりとりを一元化。次の感染症危機に備えた行動計画を策定、訓練などを通じ、次の感染症危機に備える。新組織は、平時は38人の専従職員で構成。有事には各省庁から職員が加わり、101人に増員される。トップの内閣感染症危機管理監には栗生内閣官房副長官、事務総括の内閣感染症危機管理対策官には厚労省の迫井医務技監が就く。

 新型コロナの初動対応では様々な問題が明らかになった。検査が十分に受けられなかったり、保健所に電話がつながらなかったりする事態が発生した。専門的な治療が必要な重症者が入院できない事例も少なくなかった。ワクチン開発も海外から大きく後れをとった。このほか、空港での水際対策や一斉休校による混乱、緊急事態宣言などに伴う飲食店への休業要請などでも関係者は振り回された。

●昨年度の医療費、46兆円 2年連続で過去最高更新

 厚労省のまとめによると昨年度の2022年度の医療費は、概算で46兆円で、前の年度から1兆8000億円、率にして4%増加し、2年連続で過去最高を更新した。このうち、主な病名が新型コロナと診断された人の医療費は推計でおよそ8600億円で、前の年度の2倍近くに増えた。1人あたりの医療費は、前の年度より1万6000円増えて36万8000円となり、年代別では75歳未満が24万5000円、75歳以上は95万6000円となっている。

 厚労省は、医療費が増加した主な要因について、オミクロン株の流行で新型コロナの患者数が増えたことに加え、2020年度の受診控えの反動で医療機関を訪れる人が増えたことなどを挙げている。

●コロナ「XBB」対応ワクチンを承認 20日からの追加接種で使用

 厚労省は1日、新型コロナのオミクロン株の亜系統「XBB」に対応する米ファイザー社製のワクチンを承認したと発表した。全世代を対象に20日から始まる追加接種では、このXBB対応のワクチンが使われる。今春からの65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人らを対象にした追加接種では、オミクロン株「BA.5」などに対応したワクチンが使われていた。今回承認されたワクチンはXBB.1系統に対応、現在増え始めているEG.5系統にも効果があるとしている。

 20日からの追加接種は全世代が対象だが、予防接種法上の「努力義務」や「接種勧奨」は高齢者や基礎疾患のある人に限られる。費用は引き続き全額公費となる。国立感染研の報告によると、8月14~20日に流行している株のうち、XBB.1系統は低下傾向で、EG.5系統が増え始めている。XBB対応のワクチンについては、米モデルナ社も厚労省に製造販売の承認申請をしている。厚労省は自治体を通じ、接種希望者に早めの予約を呼びかけている。

●一昨年の日本人の死亡率、10年ぶり増加 コロナが影響か

 国立がん研究センターのグループは、国が公表している2021年までの27年間の「人口動態統計」をもとに年ごとの死亡率の変化について統計学的な手法で調べた。その結果、2021年の死亡率は人口10万当たり989.6人で、前の年の人口10万当たり968.4人に比べて2.2%増加した。日本人の死亡率はこの数年、減少傾向が続いていて、前の年より増加するのは東日本大震災の影響を受けた2011年以来、10年ぶりだという。

 死因別で、前年から増加が大きかったのは、いずれも人口10万当たりで新型コロナの感染の11.8人、老衰の93.8人、心不全などの心疾患の145.2人。グループでは、新型コロナの流行やコロナ禍で診療体制が制限されたことなどが影響した可能性があるとしている。研究員は「コロナ禍の影響が死亡率にも表れる結果となった。ほかにもがん治療の先延ばしや検診の受診控えなどが今後、がんの死亡率に影響してくる可能性があり、注視していく必要がある」としている。

●新型コロナ 全国の感染状況 前週の1.07倍 2週連続の増加

 厚労省によると、8月27日までの1週間に全国およそ5千の医療機関から報告された新型コロナの患者数は前の週から7036人増えて9万3792人となった。また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は19.07人で前の週の1.07倍となった。前の週から増加が続くのは2週連続となる。都道府県別では多い順に、岩手が31.71人、青森31.3人、宮城29.54人、茨城26.8人、秋田26.73人と、28の都府県で前の週より増加している。

 このほか、8月27日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万3501人で、前の週と比べて168人の減少となった。厚労省は全国の流行状況について「お盆期間も終わり、減少していた患者数が再度緩やかな増加に転じている状況にある。夏休みが終わり、今後は学校が再開されたことによる影響も懸念される状況にあるので、体調管理に留意するなど基本的な感染対策を徹底してほしい」としている。

 9月1日発表の定点把握(8月21日~27日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「子どもたちでの流行 さらに広がる可能性」

 現在の感染状況について、感染症に詳しい東邦大学の舘田教授は「全国的に微増傾向が続いている。年齢別に見ると10歳未満の子どもたちが一番多い状況で、9月に入り学校が本格的に始まると子どもたちでの流行がさらに広がる可能性がある。また、高齢者でも一定の増加が見られているので引き続き注意していく必要がある」としている。

 その上で「かぜのような症状があった場合は、コロナの可能性を考えて無理して出勤や通学などをせず、自宅で療養してほしい。また、高齢者や、基礎疾患があって不安だという人は早めに医療機関を受診してほしい」と述べた。また、ワクチンの接種から時間がたつと発症を予防する効果などが下がってしまうとした上で「高齢者や基礎疾患がある人など重症化のリスクの高い人は今後、必要に応じて次の接種をすることが大事になると思う」と話していた。

【9月4日】

●厚労相「コロナ公費負担継続 知事会の考え聞きながら検討」

 加藤厚労相は4日、全国知事会で新型コロナ対策を担当する鳥取県の平井知事と厚労省で会談し、知事会からの提言を受け取った。提言では、今月末までとなっている高額なコロナ治療薬の費用と入院費用の一部などに対する国の公費負担について、患者が増加傾向であることを踏まえ、継続するよう求めている。また、自治体が医療機関や高齢者施設で実施する検査費用などで負担が生じないよう、国が引き続き全額を負担することも求めている。

 会談では平井知事が、来月以降の公費負担の在り方について、政府と全国知事会との間で協議の場を設けるよう求めたのに対し、加藤大臣は「厚労省として応じていきたい」と述べ、全国知事会などの考えも聞きながら、今後の方針を検討する考えを示した。会談後、平井知事は記者団に対し「コロナ治療薬の自己負担があまりにも高くなると、医師が処方できない事態になるおそれがあるのではないか。負担を常識的な範囲に抑える配慮が最低限必要だ」と述べた。

【9月7日】

●PCR補助、詐取未遂容疑 コロナ検査虚偽、5.3億円 6人逮捕

 新型コロナ検査の無料化事業で補助金の不正申請が相次いだ問題で、警視庁は7日、「大洋商事」(東京都渋谷区)の代表取締役の上嶋容疑者ら男6人を詐欺未遂容疑で逮捕、発表した。6人は共謀し、「東京都PCR等検査無料化事業」の補助金をだまし取ろうと2022年9月中旬ごろ、医療法人「華風会」(大阪市)名義で実施した2022年8月分のPCR検査などの精算額について、約5億3千万円とする虚偽の実績報告書などを都に提出、補助金を交付させようとした。

 都が不正を見抜き、交付されなかった。大洋商事は、華風会に持ちかけて業務委託を受け、事業に参入。逮捕容疑も含め22年6~11月の検査分として、計約12.8億円(約17万件分)を都側に申請していた。捜査2課は8~9割が架空とみている。同課によると、大洋商事は都内4カ所の検査場の運営業務を不動産販売「YELL合同会社」(東京都世田谷区)など4法人に委託。4法人の従業員らのつばや水を入れるなどした検体を大洋商事側が回収し、うその実績報告書を作成していたという。

【9月8日】

●無料臨時接種、今年度末まで コロナワクチン 来年度からは高齢者などに年1回

 新型コロナのワクチン接種について、厚労省の専門家部会は8日、全額公費負担の臨時接種を今年度末で終了する方針を了承した。来年度からは65歳以上の高齢者など重症化リスクの高い人を対象に、秋から冬に年1回の接種にする方向。来年度以降は、高齢者らは季節性インフルエンザなどと同じ一部自己負担が生じる可能性がある定期接種とし、対象者以外は原則自己負担を視野に検討を進める。今年の秋冬の接種は20日から始まる。生後6カ月以上のすべての世代が対象。

●新型コロナ「空床補償」病院への補助金、500億円超過大に支払い

 新型コロナの入院患者を受け入れる病院を支援するため、厚労省は患者の受け入れに備えて病床を空けた場合に、確保しながら患者が入らず空いた病床や、コロナ患者の受け入れで休止した病床に対して、「病床確保料」として1日単位で補助金を支払う、いわゆる「空床補償」を行ってきた。これについて、会計検査院が去年11月、不適切な支出があったと指摘し、その後、厚労省が都道府県に点検するよう求めていた。

 その点検結果によると、2020年度から2021年度までの2年間に「病床確保料」を受け取った医療機関のうち、岩手県と徳島県を除く45の都道府県ののべ1536の医療機関に対して過大に補助金が支払われ、その額はあわせて504億7000万円あまりにのぼるという。厚労省は、過大に補助金を受け取った医療機関に対して、返還手続きを行うよう求めている。

●新型コロナ全国の感染状況、前週の1.07倍 5類後最多に

 厚労省は8日、今月3日までの1週間に全国およそ5千の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から7497人増えて10万1289人と発表した。また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は20.50人で、前の週の1.07倍。前の週から増加が続くのは3週連続となる。都道府県別では、多い順に岩手が35.24人、宮城32.54人、秋田30.61人、千葉県28.68人、茨城27.74人などとなっていて、37の都道府県で前の週より増加。

 このほか、今月3日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万2842人で、前の週と比べて1130人の減少。厚労省は全国の流行状況について「お盆明けから緩やかな増加傾向が続いている。20歳未満の人たちで増えていて学校再開の影響も懸念されることから、引き続き基本的な感染対策を徹底してほしい」としている。

 9月8日発表の定点把握(8月28日~9月3日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「学校が始まってさらに拡大するおそれ」 学級閉鎖も

 感染症に詳しい東邦大学の舘田教授は、「全国的に緩やかな増加傾向が続いている。お盆の時期は医療機関を受診する人や検査を受ける人が少なくなり、見かけ上、感染者が少なくなっていたが、人々の移動に伴って感染が広がっている」と話す。そのうえで「年代別では10歳未満の子どもたちで最も多くなり、学校が始まってさらに拡大するおそれがある。その結果、家庭でも感染が広がって、重症化リスクが高い高齢者の感染者が増えないように注意する必要がある」と指摘した。

 そして「9月の新学期早々、学級閉鎖や休校が相次いでいる。新型コロナもインフルも広がりやすいウイルスなので、発熱やのどの違和感、鼻水が出るなど体調が悪い場合は、感染を疑って無理をせずに自宅療養し、不安があれば医療機関を受診して検査を受けたり、薬を処方してもらったりすることが大事だ」と話していた。

●インフルエンザ 1医療機関当たり2.56人 前週より増加 初の「収束せず」

 季節性インフルの流行が、昨年末から継続したまま、次のシーズンに入ることになった。厚労省が8日発表した。発表によると、全国約5千カ所の定点医療機関から報告された最新1週間(8月28日~9月3日)の季節性インフルの患者数が1医療機関あたり、前の週の1.40人から2.56人になった。「1人」を超すと「流行」とされ、昨年12月19~25日に流行期入りしたあと、これまで一度も下回っていない。

 厚労省はインフルの発生状況について、9月4日以降の週からは新シーズンとして集計。流行が収束しないまま次のシーズンに突入するのは、現在の方法になった1999年以来、初めてという。日本感染症学会インフル委員会の石田委員長は流行が続いている背景として、3年間インフルの流行がなかったことや昨年のワクチン接種から時間がたったことで、1人が感染すると周囲に広がりやすい状況があると指摘する。

【9月11日】

コロナ「第9波」 加藤厚労相、注意呼びかけ

 新型コロナの国内の感染状況について、加藤厚労相は11日、大阪市内での講演で「第9波と言われているものが今回来ている」と述べた。コロナが感染症法の5類に移行した5月以降、感染拡大傾向が続いているが、現状を「第9波」だと事実上認めた。全国約5千の定点医療機関からの報告では、3日までの1週間に報告された新規感染者数は1定点あたり20.50人(速報値)で、5類移行後で最多となっていた。

 加藤厚労相は講演で「政府では1波、2波、3波と波を数えていない」としつつも「一般的に言えば第9波が来ている」と指摘。例年は夏に感染が拡大し、お盆の時期にピークを迎えるが、今年はまだ「ピークアウトという状況ではない」と注意を呼びかけた。

【9月12日】

●米FDA、更新版の新型コロナワクチンを承認 XBB.1.5対応

 米食品医薬品局(FDA)は11日、更新版の新型コロナワクチンを承認した。オミクロン株の亜系統「XBB.1.5」に対応した1価ワクチンで、今秋以降に米国で接種される。日本国内でもすでにこのワクチンは承認され、20日から始まる全世代を対象にした追加接種で使われることになっている。FDAはモデルナとファイザーがそれぞれ製造する新たなワクチンについて、12歳以上に対しては正式に承認、生後6カ月から11歳以下に対しては緊急使用許可を出した。

 米疾病対策センター(CDC)によると、8月下旬現在、新型コロナによる新規入院者数が1週間で約1万7千人。10万人を超えていた2021年1月や2022年1月に比べると大幅に少ないが、6千人台に減った今年6月に比べると増加している。9月初旬の段階で流行しているのは、「EG.5」や「FL.1.5.1」といった系統。新たなワクチンが対応する「XBB.1.5」の割合は減少しているが、FDAは新たな現在流行している系統に対する効果もあるとしている。

●コロナ新変異株、免疫逃れやすく EG.5に置き換わり進む

 国内で感染者の緩やかな増加が続く中、新たな変異株「EG.5」系統への置き換わりが進んでいる。過去には新たな変異株の流行により感染者が急激に増えた事例もあり注意が必要。オミクロン株XBB系統から派生した「EG.5」系統は2月に初めて報告され、WHOが8月に「注目すべき変異株」(VOI)に指定。現時点で重症度が高まっているという知見はないが、これまでのXBB系統と比べて、免疫を逃れやすく、感染しやすくなる可能性がある。

 国立感染研によると国内でも7月ごろから広がり、EG.5系統の一つ「EG.5.1」は8月7~13日時点で200検体のうち29%だったが、9月11日の週には58%を占めると推計。東京都は7日、都内で初めて多数の変異がある「BA.2.86」を8月24日にPCR検査検体から確認したと発表。2022年に主流となったBA.2系統から派生、ワクチンや感染でできた免疫から逃れる可能性があり、WHOは8月24日に「監視下の変異株」(VUM)に指定した。

●新型コロナ感染「ピークアウトしているとは言えず注視」 加藤厚労相

 厚労省によると、新型コロナの患者数は、今月3日までの1週間で1つの医療機関当たりの平均の患者数が20.50人と3週連続で増加した。これについて、加藤厚労相は閣議の後の記者会見で「まだピークアウトしているとは言えず、注視していかなければならない。厚労省としても医療機関の逼迫やウイルスの変異についての状況を、しっかりおさえて必要な対策をとっていきたい」と述べた。

●都医師会「第9波に入っている」 感染対策呼びかけ

 新型コロナの患者数の増加傾向が続いていることを踏まえ、東京都医師会の尾崎会長は記者会見で、感染者の増加傾向が続き医療が逼迫しているとして「5類への移行でもう終わったように思っている人もいるが、今は都内だけで毎日、新たに1万5000人ほどが感染しているような状況だ。第9波に入っており、第8波のピークに近づきつつある」と述べた。

 そして「重症化する人は減っており、以前のように規制をかける必要はないが、コロナとの戦いはまだまだ続いている」とした上で「新たな変異株にも効果があるとされるワクチンの接種が来週20日から始まるので、できるだけ接種して欲しい」と述べ基本的な感染対策の実施を呼びかけた。

●XBB系統対応 モデルナ製承認 厚労省

 厚労省は12日、新型コロナのオミクロン株の亜系統「XBB」に対応する米モデルナ社製のワクチンを承認したと発表した。既に承認されている米ファイザー社製のワクチンとともに、全世代を対象に20日から始まる追加接種で使われる。同社は25日の週から各自治体に配送を始める。

 モデルナ社製のXBB対応ワクチンの対象年齢は6歳以上。同社は、XBB対応ワクチンについて、現在流行しているEG.5.1系統や、東京都で今月初めて確認されたBA.2.86系統に対して細胞への感染を防ぐ力を示す「中和活性」を確認したと発表している。20日からの接種は6カ月以上の全世代が対象だが、予防接種法上の「努力義務」や「接種勧奨」は高齢者や基礎疾患のある人に限られる。費用は引き続き全額公費。

【9月14日】

●尾身氏ら専門家3人 退任にあわせ3年半を総括

 14日、都内で開かれた記者会見で、政府の「新型インフルエンザ等対策推進会議」を退任した尾身前議長をはじめ、専門家3人が出席した。尾身氏は、新型コロナ対策に当たった3年半の活動を振り返り、感染対策と社会経済活動の両立を図りながら提言をまとめることの困難さに触れ、「正解がない中で大切にしてきたのは科学的に合理性があり、多くの人が納得できる提言をまとめ、その意図を市民に発信することだった」と述べた。

 また、川崎市健康安全研究所の岡部所長は「日本の死亡者の数は海外よりも低く抑えられ、やるべきことはやれた自負があるが、コロナ対策が教育など社会に深刻な影響を及ぼしたことも事実。こうした課題を乗り越えていくことが必要」と述べた。そして尾身氏は、「第9波と言われる状況でまだピークは見えず、コロナは完全に終わったわけではない。これからも社会活動を維持しながら、高齢者などを感染から守る取り組みが必要」と訴えた。

【9月15日】

●新型コロナの患者支援、10月から見直し

 新型コロナは、ことし5月に「5類」になったが、厚労省はその後も患者や医療機関への支援を一部継続してきた。厚労省は15日、10月から行う支援の縮小の具体的な内容を公表した。このうち、患者への支援の見直しでは、現在、全額公費で負担している高いもので9万円を超える高額なコロナ治療薬について、来月からは一部自己負担を求めることになった。

 年齢や所得に応じて、3000円~9000円の自己負担を求めるという。また、入院医療費については、これまで、1か月当たりの医療費が高額になった場合、「高額療養費制度」を適用したうえで、さらに最大2万円を補助してきたが、来月からは補助額を半額の最大1万円にする。

●医療機関への支援見直し

 一方、医療機関への支援の見直しでは、これまで医療機関が新型コロナ入院患者の受け入れに備えて病床を空けた場合、「病床確保料」として補助金を支払う、いわゆる「空床補償」をしてきた。来月からは感染状況が一定の基準を超えて拡大するまで支給しない。このほか、特例で加算していた診療報酬や、高齢者施設への支援についても見直す。厚労省は、新型コロナへの支援策を、来年4月からは季節性インフルなどの感染症と同様の対応とする方向で見直しを行うことにしている。

 厚労省の感染症部会の委員も務める国立国際医療研究センターの大曲国際感染症センター長は「新型コロナの患者を受け入れる医療機関は、十分に増えているとは言えない。さらに来月から、病床確保料などの支援策が削減され入院患者を受け入れる医療機関が減り、ベッドを探すのが難しくなるおそれがある。新型コロナの患者を受け入れる医療機関の労力は今でもとても大きいので、それに見合う支援策のあり方を今後も検討するべきだ」と指摘した。

 10月以降の患者支援と医療機関支援の見直し 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●コロナ予備費3.7兆円繰り越し 検査院「経緯示すべきだ」 2020、21年度

 会計検査院が2020年度と21年度に政府が新型コロナ対策としてあてた予備費を調べ、15日に公表した。2020年度は7兆9819億円のうち4兆7964億円が翌年度に繰り越された。2021年度は新たに4兆6185億円がついたが、国交省など6府省18事業に配分された約3兆7千億円の全額が翌年度に繰り越されていた。

 検査院は各省庁に予備費の執行状況を公表するよう求めるとともに「全額を翌年度に繰り越した場合は、決定時の想定や繰り越しに至った経緯を丁寧に示すべきだ」と指摘している。予備費は自然災害など「予見しがたい予算の不足」に対応するため、使い道を決めずに計上する予算。国会の事前審議なしで政府が自由に使えるため、「不透明」との批判が出ている。

●コロナ自然感染、高齢者は「4人に1人」 厚労省、年代別の抗体保有率公表

 新型コロナに自然感染した後にできる抗体を保有している人の割合(抗体保有率)について、5~29歳は7割前後で、高齢者は2~3割弱であることが分かった。15歳以下や70歳以上の抗体保有率が明らかになったのは初めて。厚労省が15日に調査結果を公表した。コロナに感染後、体内には抗体ができ、しばらく残る。ワクチンによる抗体と自然感染による抗体は区別でき、抗体保有率を調べれば、どれくらいの人が感染した経験があるのか分かる。

 調査では、今年7~8月の22府県4235人分の血液を調べたところ、全体の抗体保有率は45.3%だった。小中学生にあたる年代の子どもの7割が感染を経験した可能性がある一方で、70歳以上は、4人に1人程度しか自然感染の経験がないことになる。

●新型コロナの感染状況 前の週の0.98倍

 厚労省によると、今月10日までの1週間に全国およそ5千の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から1545人減って9万9744人。また、1つの医療機関当たりの平均患者数は20.19人で前の週の0.98倍でほぼ横ばい。都道府県別では、多い順に宮城が32.47人、岩手29.87人、千葉27.45人、埼玉26.95人など、25の府県で前の週より増加。このほか、今月10日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万1566人で、前の週と比べて1744人減少。

 9月15日発表の定点把握(9月4日~10日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 厚労省は、全国の流行状況について「新型コロナの5類移行後、緩やかな増加傾向が続いていて、前の週からは減少したもののほぼ横ばいだといえる。年齢別では20歳未満が増加している一方でそれ以外は減少していて、学校再開などの影響が続いているとみられる。引き続き、感染対策を徹底してほしい」としている。

●専門家「新型コロナ、減少に転じるか注意して見る必要」

 感染症に詳しい東邦大学の舘田教授は、新型コロナの現在の感染状況について「この夏にかけて感染者数は増加傾向が続いていたが、直近では横ばいとなっていて、ピークが見え始めているように見える。これまでの3年間は8月から9月にかけて感染拡大が続き、その後、収束したが、ことしも同様に横ばいから減少に転じていくのか、これから1週間か2週間は注意して見ていく必要がある」と話した。

 また、インフルエンザが同時に流行している状況については「新型コロナとの同時に検査できるキットが普及し、インフルが以前より見つかりやすくなったことも関係していると考えられるが、コロナ対策でここ数年、流行が抑えられ、免疫を持たない人が多いことが影響している。今の時期、冬のシーズンのように爆発的に患者が増加するリスクは低いと考えているが、流行状況に注意する必要がある」と話していた。

●新型コロナの病床使用率 6つの県で5割上回る

 厚労省は、入院している新型コロナの患者数や、確保されている病床の数、その使用率などを都道府県別に1週間ごとにまとめ、毎週公表している。病床使用率は、最新の今月6日の時点で最も高いのが、福岡で65%、神奈川59%、宮城58%、山形57%、栃木51%、兵庫50%と6つの県で5割を超えている。また、重症患者用の病床の使用率は、和歌山44%、山梨40%、岡山、愛媛、高知、熊本が33%などとなっている。

●オミクロン株の1種「EG.5.1」、最も多い

 国立感染研によると、国内で検出される新型コロナの変異ウイルスの割合はオミクロン株の1種「EG.5.1」が最も多く、来週の時点で63%になると推定されている。そのほか「XBB.1.16」が16%、「XBB.1.9」が9%などと推定されている。EG.5.1を含む系統は、WHOがVOI(注意すべき変異ウイルス)に指定して監視していて、世界的にも先月13日までの1週間で26.1%を占めている。

 東京大学医科学研究所の佐藤教授らのグループが発表した論文によると、EG.5.1は、細胞を使った実験で、細胞への感染力自体は一時、感染の主流となっていた従来の「XBB」系統のウイルスよりも下がっていた一方で、ワクチンの接種や感染によってできる中和抗体が効きにくかったということで、グループは「免疫を逃れる能力が高くなっている」と指摘している。また、世界的には「BA.2.86」という変異ウイルスへの警戒も高まっている。

●インフルエンザ 1医療機関当たりの患者数、前週より増加

 厚労省によると、今月10日までの1週間に全国およそ5千か所の医療機関から報告されたインフル患者数は2万2111人で、前の週から9473人増えた。1医療機関当たりでは4.48人で、前の週から1.92人増えている。前週の2.56人から1.75倍に。コロナとの同時流行により、学級閉鎖は全国で627校に上った。国立感染研によると、このデータを基に推計されるこの1週間の全国の患者数はおよそ15万1000人だという。

 都道府県別では、いずれも1医療機関当たりで、沖縄が13.43人と最も多く、注意報レベルとされる「10」人を超えたほか、長崎8.8人、千葉8.58人、福岡7.56人、宮城7.34人などとなっていて、全国の44の都道府県で前の週より増加した。厚労省では例年この時期からインフルの集計を発表し、1医療機関当たりの患者が1人を上回ると全国的な「流行期入り」の目安としていたが、今年は、去年12月から1人を一度も下回らないまま新たなシーズンとなった。

【9月18日】

●新型コロナ19万人余調査、成人1~2割が「後遺症」  厚労省研究班

 新型コロナのいわゆる「後遺症」について国の研究班が3つの自治体で19万人余りを対象に行ったアンケート調査の結果、成人の1割から2割余りが咳や倦怠感など何らかの症状が感染から2か月以上続いたと答えたことが分かった。調査は厚労省の研究班が東京・品川区、大阪府八尾市、それに札幌市の住民を対象に行った。

 この中で、去年9月までに新型コロナに感染し、咳や倦怠感などが2か月以上続くいわゆる「後遺症」とみられる症状があると答えた人の割合は、成人では札幌市で23.4%、八尾市で15.0%、品川区で11.7%ととなった。一方、5歳から17歳の小児を調査した札幌市と八尾市ではいずれも6.3%と、成人より低い割合。また感染前にワクチンを接種した人は接種していない人に比べて、成人と小児のいずれも症状が続いた人の割合がおよそ25%から55%低かったという。

【9月20日】

●オミクロン株派生型対応ワクチン、全世代で接種開始

 新型コロナは、ことし5月に法的位置づけが5類に変更されたが、厚労省は今年度末まで自己負担なしで接種することができる特例接種を続けている。20日から冬に懸念される感染拡大に備え、希望する生後6か月以上のすべての人を対象にした接種が始まった。全額公費での特例接種は今年度末までで終了することが決まっている。厚労省は、来年度以降の接種については、一部自己負担が生じるケースもある「定期接種」に移行することも含めて、検討している。

 厚労省は自治体が住民に接種を勧める「接種勧奨」や、接種を受けるよう努めなければならないとする「努力義務」について、今回の接種からは高齢者や基礎疾患がある重症化リスクの高い人にのみ適用し、それ以外の65歳未満の健康な人には接種勧奨や努力義務を適用しないことになった。また、多くの自治体で来月から始まるインフルと新型コロナのワクチンを同時に接種しても、安全性や有効性に問題はないとしている。

●「XBB.1.5」対応ワクチンとは  「EG.5.1」への効果は

 20日から接種が始まるワクチンは、オミクロン株の一種「XBB.1.5」対応の成分が含まれたワクチン。国立感染研によると現在、流行の主流となっているのはXBB系統からさらに変異した「EG.5」と呼ばれるウイルスで、今週の時点でこのうち「EG.5.1」が63%を占めると推定されている。「XBB.1.5」対応ワクチンを開発した米製薬会社2社は、臨床試験などで「EG.5」や「BA.2.86」など、新たな変異ウイルスに対しても免疫反応がみられたとしている。

 また、東京大学医科学研究所の佐藤教授が主宰する研究グループによると、培養細胞を使った実験から「EG.5.1」は、感染力がこれまでの「XBB」系統より下がっていた一方で、免疫を逃れる能力は高くなっている可能性があるとしている。また、感染症に詳しい東京医科大学の濱田特任教授は「ワクチンの効果には、重症化予防と感染予防があるが、XBB.1.5対応のワクチンはEG.5に対しても重症化予防の効果は十分に期待できる」と話していた。

●ワクチン接種 これまでに4億700万回余

 政府のまとめによると新型コロナワクチンの接種は、9月17日までの時点で合わせて4億700万回余り行われた。このうち、42%にあたる1億7400万回余りが65歳以上の高齢者に対する接種。また接種した回数別にみると「初回接種」にあたる2回目の接種を終えている人は79.8%、3回目の接種を終えている人は68.8%。一方で高齢者の接種率は高く、3回目の接種を終えている人は91.5%にのぼる。

 国内のワクチン接種人数(9月19日公表) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●これまで使用の従来型対応ワクチン、廃棄へ

 オミクロン株の派生型に対応した新型コロナワクチンの接種が始まるのに合わせて、厚労省は、これまで使っていたワクチンの廃棄について発表した。このうち、従来株に対応したファイザーのワクチンは、購入したおよそ2億7480万回分のうち、使用しなかった830万回分を廃棄する。

 また、オミクロン株に対応した2価ワクチンについては、ファイザーのおよそ1億2510万回分のうち21%余りにあたるおよそ2650万回分と、モデルナのおよそ7000万回分のうち73%余りにあたるおよそ5150万回分は、有効期限を迎えたものから順次廃棄する予定。厚労省は「感染が拡大する中で色々な可能性を視野に入れて必要なワクチンの量を確実に確保できるよう購入を進めてきたので、廃棄されるものもあるが購入した行為自体は無駄ではないと考えている」としている。

【9月22日】

●新型コロナの感染状況 前週の0.87倍

 厚労省によると、今月17日までの1週間に全国およそ5千の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から1万3234人減って8万6510人となった。また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は17.54人で、前の週の0.87倍となった。都道府県別では、多い順に埼玉が24.98人、千葉23.99人、宮城22.77人、愛知22.74人、岩手21.44人などとなっている。このほか、今月17日までの1週間に新たに入院した人は全国で8920人で、前の週と比べて2905人の減少となった。

 厚労省は、全国の流行状況について「緩やかな増加傾向が続いたのち2週連続で前の週から減少したものの、ピークを越えたかどうかは注視が必要だ。特に10代は増加しており、夏休みが明け学校再開の影響が続いているとみられる。引き続き感染対策を徹底してほしい」としている。

 9月22日発表の定点把握(9月11日~17日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●新型コロナ 夏の感染拡大の波はピークを越えたとみられる

 感染症に詳しい東邦大学の舘田教授は、新型コロナの現在の感染状況について「前の週から2週間連続で減少傾向が続き、入院患者の数も減少していることから、この夏の感染拡大の波はピークを越えたとみられている。ただ、人の動きは活発でマスクを着けていない人も増えている中で、ここから急に感染者の数が減少するとは考えにくい」と指摘している。

 また、今月20日からオミクロン株の派生型「XBB」系統に対応するワクチンの接種が始まったことについて「高齢者や基礎疾患のある人たちで、最後にワクチンを打ってから4か月から6か月が経過した人たちは重症化リスクも考えワクチン接種を早めに進めることが大事。ワクチンの接種には感染後に続く『後遺症』を抑える効果があるという報告もあるので、若い人でも重症化リスクのある人と接する機会のある人は接種を検討してもらいたい」と話していた。

●「インフル、4週間以内に大流行の可能性 対策を」小池都知事

 インフルエンザについて、東京都は21日、統計を取り始めた1999年以降、最も早く「流行注意報」を出した。これについて、小池知事は22日の記者会見で「今後4週間以内に、大きな流行が発生する可能性が高いことを教えてくれているので、十分な注意を行ってほしい」と述べ、新型コロナへの感染予防のためにも、換気や手洗いなどの対策を心がけるよう呼びかけた。また、新型コロナについては「若干、落ち着きつつあるのではないか。ただ10代の感染が伸びているという状況」と述べた。

●インフルエンザ患者数、前週の約1.5倍

 厚労省によると、今月17日までの1週間に全国およそ5千の医療機関から報告されたインフル患者数は3万4665人で、前の週からおよそ1.5倍に増えている。1医療機関当たりの患者数は全国で7.03人で、都道府県別では、沖縄が20.85人と最も多く、千葉14.54人、愛媛12.07人、佐賀11.95人、東京11.37人などとなっている。このうちこのうち7つの都県では、今後4週間以内に大きな流行が発生する可能性があることを示す「注意報レベル」の基準値10人を超えている。

 感染症に詳しい東邦大学の舘田教授は、「しばらくは感染拡大が続く兆候がみられている。近く、全国で『注意報レベル』の10人を超える可能性もあり、来週や再来週の推移は特に注意する必要がある」と話している。そして「マスクを必要に応じて使うことや換気、3密を避けることなど基本的な感染対策が、コロナだけでなくインフルエンザの予防にも有効。深刻な同時流行を起こさないために対策を取ってもらいたい」と話していた。

●コロナ患者、労災申請低調 経路不明でも認定例、周知に課題

 業務中の新型コロナ感染で労災認定を受けたあとに、後遺症が続いて傷病補償年金を支給する事例が出てきた。ただ、コロナで労災が認められることへの認知が広がっていない可能性があり、医療関係者は周知する必要を訴える。厚労省によると、コロナ感染に伴う労災は、8月末までに約21万件の申請があり、約20万件が支給された。だが、感染者は全数把握されていた5月までに3300万人超に上り、申請した人は、このうちの0.6%程度にとどまる。

 労災が認められれば、治療費が全額支払われるほか、仕事を休んだ場合は4日目から賃金の8割相当を給付される。死亡時には遺族に補償金が支払われる。さらに治療から1年6カ月が経過しても症状が治らないと、傷病補償年金が受け取れる可能性がある。コロナの後遺症のクリニック院長は「後遺症で倦怠感などが続き、仕事を失う人もいる。経済的負担が大きく、労災保険はまさに『命綱』だ」と説明する。

●コロナ後遺症で傷病年金 初事例か 老人ホーム勤務の女性

 新型コロナに業務中に感染して労災認定を受けた後、後遺症が続いているとして東京都内の女性に傷病補償年金が支給された。女性を支援するNPO法人「東京労働安全衛生センター」が22日に会見を開き、明らかにした。コロナによる労災はこれまでに約20万件が認定されているが、その後の後遺症で傷病年金の支給につながるのは珍しい。同センターは「初めての事例ではないか。国にも今回の先行事例をもとに積極的な認定を考えてもらいたい」と語る。

 女性は、老人ホームの事務職として勤務していた2021年1月に施設内でコロナに感染し、高熱などで一時入院した。退院後も呼吸困難の症状が改善せず、仕事は休職し、在宅で酸素吸入が必要な状態が続いた。青梅労働基準監督署で労災認定されたあとも、在宅で酸素療法を続けざるを得ない状態という。今年5月になって労基署が傷病等級3級に認定し、年金支給を決定したという。

【9月23日】

●7~8月の山岳遭難、統計開始後最多738件、死者・行方不明者61人に

 新型コロナの5類移行を受けてひさしぶりに登山を楽しむ人が増えていることなどから、全国で山岳遭難が増えている。今年7月と8月の山岳遭難は統計を取り始めてから最も多くなり、合わせて738件、809人。死者・行方不明者は61人。9月に入っても死亡事故などが相次いでいて、警察が注意を呼びかけている。

 長野県警山岳安全対策課は、「新型コロナの制限緩和を受けてひさしぶりに登山を再開する人が増える中、難易度が高くない一般登山道でも遭難が相次いでいる。特に加齢や体力不足に伴う疲労で下山中に足下がふらつき、滑落したり転倒したりする事故が多いので、日頃からトレーニングを行い、自分の体力にあった山を選んで登山を楽しんでほしい」。また登山指導者は「いつも行っている山より少しレベルを下げて登り、体調の変化を感じたら早めに下山すること・・・」と話す。

【9月25日】

●北朝鮮、外国人の入国を許可 中国国営テレビが報道 国境開放進む

 中国国営中央テレビ(CCTV)は25日、北朝鮮が同日から外国人の入国を許可したと伝えた。入国後に2日間の隔離を義務づけるという。北朝鮮は8月下旬、新型コロナ対策を理由に約3年7カ月にわたって封鎖した国境の限定的な開放に乗り出したが、外国人の扱いについては明らかにしていなかった。

 長期間、国境を封鎖したことで、北朝鮮の慢性的な食料・物資不足はさらに悪化した。北朝鮮は8月に国外からの自国民の帰国を認めたのに続き、今後は外国人ビジネス関係者らの往来も増やし、経済状況の改善につなげたい考えがあるとみられる。ただ、すぐに観光客を含めた外国人をコロナ禍前と同じ水準で受け入れるのかどうかは不明。

【9月26日】

●ロンドン近郊の空港で管制官が相次ぎコロナ感染 欠航も 

 英国のロンドン近郊にあるガトウィック空港が25日に発表したところによると、管制塔に勤務する管制官のうちおよそ30%が新型コロナに感染するなどして体調を崩し、勤務できない状態となった。その結果、発着便の数を1日800便に制限することになり、10月1日までに合わせて164便の欠航が決まったという。英国政府によると、イングランドでは一時1日に200人程度にまで減っていた新型コロナの新規感染者数が、今月は連日1000人を超えるようになっている。

●人工透析患者 新型コロナ「5類」移行後も感染時の致死率 約2%

 人工透析を行う医師などで作る日本透析医会は、新型コロナが「5類」に移行したあとの透析患者の感染状況について独自に調査を行った。その結果、ことし5月から9月12日までに全国の61の透析施設から報告された新型コロナの感染者257人のうち、亡くなった人は6人で、致死率は2.3%となっていた。また、感染が確認された時点で重症になっていた人は全体の7.4%。

 日本透析医会によると、これらは去年からことしにかけての流行の「第8波」の際とほぼ同じ水準だという。医会では透析を受けている人は「5類」以降後も、引き続き感染に注意が必要だとしている。医会の菊地理事は「5類移行後は感染を気にしなくなった人も増えているが、腎不全や透析の患者など基礎疾患がある人は今も重症化リスクが高いので、ワクチン接種など対策に努めてほしい」と話していた。

●愛知、コロナワクチン接種直後に死亡 調査委が検証結果公表

 去年11月、愛知県愛西市の集団接種会場で、新型コロナワクチンの4回目の接種を受けた女性が接種直後、息苦しさを訴えたあと容体が急変し、死亡した。愛西市は専門家による「医療事故調査委員会」で原因の調査を進め、26日、報告書を公表した。報告書では当時の女性が接種後の経過観察中にせきが出始め、その後、息苦しさを強く訴え、症状が出始めてから10分後に心停止となっていることから、「アナフィラキシーを起こしていた可能性が高い」としている。

 そして、当時、医師がアナフィラキシーの治療薬のアドレナリンを投与しなかったことは標準的ではないと指摘したうえで、「早期にアドレナリンが投与された場合、救命できた可能性を否定できず、投与されなかったことの影響は大きい」としている。また、接種会場の体制について、接種を始める前に、医師と看護師が集まって、急変時の対応の確認などが行われず、救命のためのチームワークが十分実行されなかったと指摘し、再発防止策を提言している。

【9月27日】

●医療費1回7841円、コロナ禍急増 報酬抑えたい財務省、医療界は反発

 財務省は27日の財政制度等審議会の分科会で、全国にある診療所の1回の受診あたりの医療費が2022年度に7841円だったとの試算を発表した。コロナ前の2019年度比13%増と、コロナ禍で急増した。物価上昇率を上回る伸びとなり、「診療単価のあり方などの見直しが必要」と提言した。財務省によると、高齢化が進んだことや、医療の高度化で医療費のかかる処置が増えたとみている。今回の試算では、新型コロナの補助金に関わる費用は除いた。

 2024年度は医療サービスを受ける時の料金である診療報酬の改定年にあたり、年末の決定に向けて日本医師会などは、物価高を診療報酬に反映させるよう求めている。だが、財務省は診療所の売上高は伸びていると主張しており、診療報酬を抑えたいねらいがある。財務省が慎重なのは、診療所の医療費が増えていることに加えて、新型コロナ対策による病床確保料やワクチン接種など 補助金で病院の利益が増えていることがある。

埼玉県内の新型コロナ感染者数、前週の約半分に減少

 埼玉県が27日発表した新型コロナの感染状況によると、今月18日から24日までの1週間に定点把握の対象となっている261の医療機関から報告のあった新たな感染者数は3268人。1医療機関当たりでは12.62人で、24.98人だった前の週と比べておよそ半分に減少した。

 世代別にみると、10代が844人と最も多く、10歳未満が521人と続いているが、すべての世代で前の週よりも減少したという。県は感染者数が減少傾向に転じているものの、高齢者や基礎疾患がある人にとっては重症化リスクが高いとして、体調が悪いときは外出を控えるなど引き続き感染対策を徹底するよう呼びかけている。

【9月28日】

●東京都の新型コロナ感染者数、前週より大きく減少も基本的対策を

 東京都は28日、都内の新型コロナの感染状況について、モニタリング項目を発表した。それによると、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、415か所から報告があり、9月24日までの1週間の感染者数は合わせて3688人で、1医療機関当たり8.89人。これは前の週の16.04人のおよそ55%となり、大きく減少した。また、9月25日時点での入院患者数は1769人で、前の週より483人減った。

 専門家は「祝日に伴い定点医療機関の診療日数が減り低めの数値となっている可能性があり注意が必要だ。インフルエンザなどの受診者が増加してきており、医療提供体制への負担が長期化している」などと指摘し基本的な感染対策の継続を呼びかけた。

【9月29日】

●新型コロナ感染状況 全都道府県減少、前週比0.63倍 「ピークアウト可能性」

 厚労省によると、9月24日までの1週間に全国およそ5千の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から3万2164人減って5万4346人となった。また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は11.01人で前の週の0.63倍。前の週から減少が続くのは3週連続で、すべての都道府県で減少した。

 都道府県別では多い順に、愛知16.61人、岐阜15.24人、茨城14.53人、千葉14.43人、熊本12.74人などとなっている。このほか、9月24日までの1週間に新たに入院した人は全国で7685人で、前の週と比べて2288人の減少。厚労省は全国の流行状況について「3週連続で前の週から減少しているほか、今回はすべての都道府県で減少していてピークアウトの可能性がある。引き続き感染対策を続けてほしい」としている。

 9月29日発表の定点把握(9月18日~24日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「都市部でも明確に減少 ピーク超えたといえる」

 感染症に詳しい東邦大学の舘田教授は、新型コロナの現在の感染状況について「感染者の数は東京都など都市部でも明確に減っていて、減少傾向が9月以降続いていることから、ピークを超えたといえる状況」。そのうえで「現在、主流となっているのはオミクロン株のXBB系統となる『EG.5』で、新たな変異ウイルスが広がっている状況ではないので、減少傾向はしばらく続くと考えられる。ただ、いつまで減少が続くか注意して見る必要がある」と話していた。

 そのうえで「この冬にコロナとインフルエンザの感染拡大が重なって、同時流行が起きないかが懸念される。10月からはインフルワクチンの接種が始まり、コロナでは、XBB系統に対応するワクチンの接種がすでに始まっている。特に高齢者や基礎疾患があり重症化しやすい人は、いずれのワクチンも接種し、そのほかの人も希望する人は早めに接種を済ませてほしい」と話していた。

●インフルエンザ感染広がる 「ワクチン積極的な接種推奨」 日本感染症学会

 日本感染症学会は、インフルワクチンなどの接種についての文書をウェブサイトで公開した。2020年以降、インフルの大きな流行がなかったことから子どもや高齢者を中心に抗体の量が減って感染しやすい状態の人が増えている可能性があると指摘。ことしは、例年の流行しやすい時期に限らず流行し、規模も大きくなる可能性があること、新型コロナとの同時流行が懸念されることから、「インフルワクチンの積極的な接種を推奨する」としている。

 また、ワクチンの供給量は例年以上となる見込みのため、子どもや高齢者、それに基礎疾患がある人など重症化のリスクが高い人だけでなく、リスクが低い人も含めてより積極的に接種の推進が可能とした。一方、高齢者や基礎疾患がある人などについてはインフルにかかった後の肺炎の予防も重要だとして、肺炎の原因となる肺炎球菌ワクチンの接種も推奨するとしたほか、新型コロナワクチンの接種も推奨するとした。

2023年9月 4日 (月)

新型コロナ2023.08 EG.5系統

 厚労省は8月18日、全国に約5千ある定点医療機関に8月7~13日に報告された新規感染者数は計6万7070人で、1定点あたり14.16人だったと発表。4月上旬から緩やかな増加が続いていたが、 前の週の約0.90倍で2週連続の減少となった。一方、世界的に広がり、WHOが9日に「注目すべき変異株」に指定した「EG.5.1」が、国内でも増えている。

 ところが8月25日、14~20日までに報告された患者数は、前の週から1万9686人増え8万6756人。1定点当たり17.84人、前の週の1.26倍の増加に転じた。厚労省は「お盆期間に人に会う機会が増えた影響などもあり、緩やかな増加に転じた。例年、お盆が明けた時期に感染拡大のピークを迎える傾向があり、増加傾向が続くかどうか注視したい」とした。


 2023年8月1日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.07 漸増続く」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

【8月1日】

●コロナワクチン、「定期接種」に変更するか本格検討へ厚労省

 新型コロナワクチンの接種については、接種費用を全額公費で負担する「特例臨時接種」で行われ、ことし5月に感染症法上の位置づけが5類に変更されたあとも、今年度の接種については、無料で受けることができる。来年度以降の接種について、厚労省は「特例臨時接種」ではなく、はしかや季節性インフルエンザなどと同様に「定期接種」に変更するかどうか、今月から本格的に検討を始める方針。

「定期接種」には、費用を自治体が負担し実質無料となるケースもあるが、一部自己負担となるケースもある。厚労省は、今月開催予定の専門家の会議で議論を始め、ワクチンの効果が継続する期間などを見極めた上で「定期接種」として実施する場合の費用負担のあり方や、接種の対象者などについて、検討していくことにしている。

【8月3日】

●東京都の感染者数、前週の1.19倍 6週連続で増加

 3日、東京都庁で感染症の対策会議が開かれ、都内の新型コロナの感染者数が公表された。定点把握対象の都内419の医療機関のうち、415か所から報告があり、先月30日までの1週間で合わせて4613人で、1医療機関当たりでは11.12人となった。これは、前の週の1.19倍と、6週続けて増えていて、このうち60歳以上は1.82人と前の週の1.36倍。

【8月4日】

●新型コロナ専門家組織「夏の間、感染者数が増え続ける可能性」

 厚労省の専門家組織の会合が4日、7月7日以来およそ1か月ぶりに開かれ、最新の感染状況の分析結果が示された。それによると、新規患者数は全国的には4月上旬以降、緩やかな増加傾向が続き、5類移行後も11週連続で増加している。地域別では、先行して感染が拡大した沖縄県で減少傾向がみられるものの、42の都府県で前の週より増えている。

 新たな入院患者や重症患者は全国的に増加傾向が続いているものの、医療提供体制の逼迫はみられていないという。ただ、救急搬送が困難なケースは増加が続いているとしている。また、オミクロン株のうちの「XBB系統」が大部分を占めていて、中でもより感染を広げやすいとされる「EG.5.1」が増加しているという。

●脇田座長「重症者数の増加の詳細の解析必要」

 厚労省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田座長は現在の感染状況について「感染者数は11週連続で増加していて、感染が拡大していることは間違いない。夏休みで人出が増え、ふだん会わない人と接する機会が多くなることは流行が広がるきっかけになる」と述べた。

 そのうえで、先月中旬以降、重症者数が増えていることについて「免疫を逃れやすい新たな変異ウイルスの割合が増えてきている。重症者数の増加が、ウイルスのタイプが変わったからなのか、感染が拡大して入院者数自体が増えたからなのか、詳しい分析はできていない。モニタリングをしっかりして、研究や解析をすることが必要ではないか」と述べた。

●42都府県で前の週より増加

 厚労省によると、先月30日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナ患者数は、前週から9901人増えて7万8502人となった。1つの医療機関当たりの平均患者数は15.91人、前週の1.14倍。17週連続の増加。都道府県別では佐賀31.79人、長崎30.29人、宮崎27.21人、鳥取25.52人、熊本24.66人など、42の都府県で増加。先月30日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万1146人で、前の週と比べて1751人の増加。

 8月4日発表の定点把握(7月24日~7月30日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 厚労省は全国の流行状況について「全国的に緩やかな増加傾向が続いているほか、夏の間に感染が拡大する可能性もあり、医療提供体制への負荷が増えることも懸念される。定期的に換気するほか必要な場面でマスクを着用するなど基本的な感染対策を行って欲しい」としている。また、今後の医療の逼迫を防ぐため、厚労省は各都道府県が住民への注意喚起を行う際に参考にしてもらうための目安を作成する方向で検討することになった。

 夏の感染対策のポイント 出典:厚生労働省ホームページ

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【8月5日】

●東京 じわり入院増、身構える 「1カ月で倍」「既に第8波の半分」

 7月末現在、都内には約1750人の入院患者がいる。直近3回の流行の波のピーク時には、都内の入院患者は約4千~4500人。この水準が都内のベッド数の限界とされる。連日の猛暑で熱中症患者も増える中、医療現場はコロナ感染者の急増に警戒を強めている。都立多摩総合医療センターは7月からコロナ入院患者が増え始め、いまは1カ月前の約2倍の20~30人。高齢者は発熱や倦怠感、基礎疾患の悪化などの症状が多く、若い人も喉の痛みで食事できない人がいる。

 東京医科歯科大病院には、3日時点で重症2人、中等症11人が入院。同病院の植木室長は「7月に入ってじわじわ入院が必要な患者が増えてきた」と話す。熱中症患者が増えたこともあり、救急車は1日に平均30台ほど受け入れる。室長は「前回の第8波が急峻な山だったのに対して、今はゆっくりとじわじわ。現状は(第8波)ピーク時の半分ぐらいではないか」。過去3年の夏の流行は一気に感染者が増え、医療の逼迫につながった。

【8月7日】

●委託費詐取容疑、社員2人追送検 近ツー、新たに1.7億円

 近畿日本ツーリストによる新型コロナワクチンの業務委託費をめぐる詐欺事件で、大阪府警は7日、新たに2自治体から計約1億7千万円をだまし取ったとして、関西法人MICE支店(大阪市浪速区)の元支店長と元グループリーダーを詐欺容疑で追送検したと発表した。別の社員3人も詐欺容疑で書類送検した。府警は同支店と静岡支店の計7人を立件し、2支店で詐取したとされる総額は約12億8800万円となった。

 捜査2課によると、容疑者らはそれぞれ共謀してワクチン接種などのコールセンターの業務委託費を過大請求。大阪府から2022年4~11月に約9370万円、同府羽曳野市から2021年10~11月に約7690万円をだまし取った疑いがある。

【8月9日】

●コロナワクチン、定期接種検討 厚労省で協議、年内に結論

 新型コロナワクチン接種の位置づけについて、厚労省が9日、議論を始めた。全額を公費でまかなう現在の「臨時接種」から、自己負担が生じる可能性がある「定期接種」への移行を視野に、年内に結論を出す予定。オミクロン株が流行し、重症化率が低下したことなどから、昨年11月の財務省の財政制度等審議会が定期接種化を検討すべきだとしていた。だが、流行の継続を理由に、今年度末までは期限を延長し臨時接種が続けられている。

 9日に開かれた厚労省の専門家分科会では、「費用対効果なども考える時期」といった意見が出た。今後、別の専門家部会でウイルスの重篤性やワクチンの有効性、費用対効果などについて議論を進める。また、分科会では、9月20日からの全世代を対象にした接種についても議論。現在主流のオミクロン株XBB系統に対応したワクチンの製造販売が承認されれば、これを使用する方針を了承し、「生後6カ月以上」を接種対象とすることを決めた。

●コロナ感染拡大時「注意喚起の目安」 4指標作成 厚労省

 「定点把握」を行っている季節性インフルエンザのように都道府県が「注意報」や「警報」を出すための指標はない。厚労省は、自治体からの求めに応じて感染拡大時に都道府県が住民に注意喚起したり医療提供体制を強化したりする際の参考にしてもらうための目安として、4つの指標を作成し、9日自治体に示した。

 指標は、医療機関が受診者数などを報告するシステムに「外来が逼迫している」と回答した割合が25%を超えたとき、感染者数が直近の感染拡大時に「外来が逼迫している」と回答した割合がピークとなる2週間前の数を超えたとき、入院者数がこれまでのオミクロン株による感染拡大時の半数を超えたとき、それに確保病床の使用率が50%を超えたときの4つ。

【8月14日】

●コロナ後遺症 シニアご注意 うつ・介護リスク

 新型コロナ感染症の後遺症のリスクについて、医療法人「徳洲会」のチームが発表した。1期(2020年1月~2021年6月)、デルタ株が流行した2期(2021年7~12月)、オミクロン株が流行した3期(2022年1~6月)に分け、新型コロナ感染症と診断された約12万人の電子カルテを解析した。診断から2週間以降の「慢性期」の症状を後遺症とした。

 解析の結果、60歳以上は若い人に比べてうつ傾向になる率が高く、要介護度が上がる傾向もわかった。今井プロジェクトリーダーは「高齢者は生活の質の低下につながる後遺症のリスクが高いので、慎重に経過をみてほしい」と話した。

●全国の感染状況、前週比わずかに減少も ほぼ横ばい

 厚労省によると、今月6日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は前の週から565人減って7万7937人。また、1つの医療機関あたりの平均の患者数は15.81人で前の週の0.99倍となり、5月8日に5類に移行してから11週連続で増加が続いていたが、初めて減少となったが微減であり、ほぼ横ばいの状態といえる。

 都道府県別では多い順に佐賀34.69人、長崎28.46人、宮崎25.84人、大分24.86人、石川24.1人、前週比では青森(約1.65倍)など23都道県で増加。最も減ったのは沖縄の約0.60倍だった。このほか、今月6日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万1801人で、前の週と比べて167人の増加。厚労省は「例年、お盆明けは感染拡大のピークとなるので、高齢者と一緒に過ごす際には体調に留意し、マスクを着用するなど引き続き感染対策を行ってほしい」としている。

 8月14日発表の定点把握(7月31日~8月6日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「今月末に向けて再び増加も」

 感染症に詳しい東京医科大学の濱田特任教授は「1週間前に比べてやや減少しているが、夏休み期間で10代の学校での感染が減ったことが要因として考えられる。一方で、60代以上の高齢者は引き続き増加が続いていて、横ばいの状況」と話す。今後の見通しは、お盆で人の移動が活発になっていることで、人と人との接触が増え、感染が広がりやすい状況になっているとして「今月末に向けて再び増加に転じる可能性が高い」と指摘した。

 また現在、オミクロン株のうち、EG.5という変異ウイルスが増加傾向にあることについて「EG.5は従来のオミクロン株よりやや感染力が強いのではないかと懸念されていて、世界的にも感染が拡大している。WHOは病原性は高くないのではないかとしているが、感染力がどの程度なのか注視していく必要がある」と述べた。

【8月16日】

●7月訪日客、コロナ前の77%に回復 中国団体旅行解禁、さらに増か

 日本政府観光局は16日、7月の訪日外国人客が232万600人だったと発表した。コロナ拡大前の2019年同月(299万1189人)の77.6%に回復。中国本土からを除くと、2019年同月を3.4%上回り、コロナ前の水準を初めて超えた。国・地域別では、韓国が62万6800人で最も多く、台湾が42万2300人。中国は31万3300人で、昨年10月の水際対策緩和以降初めて上位3位に入った。2019年同月の3割ほどにとどまるが、今後は大きく回復するとみられる。

 コロナ前は中国の訪日客の約3割を団体客が占め、100万人が訪日する月もあった。2019年に比べると2割ほど円安、来年夏にはその水準に回復するという予測がある。一方で、海外旅行代金はコロナ前より高く、比較的安い団体ツアーを選ぶ客層は中国内旅行に流れるという。日本では人手不足で訪日客の受け入れ態勢が課題。中国からの団体客がコロナ前のように来日すれば、高騰している宿泊料金はさらに上がるとみられる。

【8月18日】

●全国感染状況、前週比減少も「引き続き対策を」

 厚労省によると、今月13日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナ患者数は、前の週から1万867人減って6万7070人。また、1つの医療機関当たりの平均患者数は14.16人で前の週の0.9倍で2週連続減少。都道府県別では佐賀24.59人、石川21.06人、鳥取20.76人、愛知20.7人、大分20.45人など、12道県で前の週より増加している。このほか、今月13日までの1週間に新たな入院患者は全国で1万1696人、前の週と比べて585人の減少。

 厚労省は全国の流行状況について「定点当たりの患者数は減少したものの、例年、お盆明け以降に感染が拡大する傾向がある。お盆期間の接触機会の増加がどのように影響してくるか今後も感染者数の推移には注意が必要だ。体調に留意し、引き続き感染対策を行って欲しい」としている。

 8月18日発表の定点把握(8月7日~13日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「ピークアウトと考えるのはまだ早い」

 感染症に詳しい東京医科大学の濱田特任教授は「全国の定点の感染者数は2週連続で減少しているが、学校が夏休みに入り、子どもたちの学校での感染が減ったことやお盆で休みの医療機関が増え、診断を受ける人が少なかったことなどが影響していると考えられる。ピークアウトしたと考えるのはまだ早いのではないか」と分析している。今後は、「お盆で人が一斉に移動し、人と人との接触が増えたためお盆休み明けに感染者が増加することが予想される」とする。

 その上で「引き続き人の移動が活発な時期が続くほか、部屋を閉めきって冷房をかけることで換気が不十分になることも考えられる。今月いっぱいは感染者が増加する可能性があるので、感染状況に注意していく必要がある」と話す。その上で「感染の拡大を防ぐためにもお盆の休み明けに体調不良を感じたら無理して出勤せず、検査を受けたり、自宅で療養したりすることが大切だ」と注意を呼びかけている。

●注目すべき変異株「EG.5.1」

 世界的に広がり、WHOが9日に「注目すべき変異株(VOI)」に指定した「EG.5.1」が国内でも増えている。国立感染研の報告によると、7月下旬時点でEG.5系統が国内で最も多い23.6%となった。EG.5系統は、XBB.1.9系統にさらに変異が入ったタイプで、WHOの報告では、現時点ではこれまでのXBB系統と比べて、重症度は高くなっていないが、免疫を回避する傾向にあり、今後蔓延する可能性はあるという。

 また、WHOは17日、多数の変異がある変異株「BA.2.86」についても「監視下の変異株」に指定した。まだ日本以外の数カ国でしか見つかっていない。現時点でウイルスの性質はわかっていない。

【8月20日】

●成田空港、帰国ラッシュピーク お盆休みの出入国者、去年の3.6倍

 成田空港では、お盆休みを海外で過ごした人たちの帰国ラッシュがピークを迎え、20日は午前中から大きな荷物を持った家族連れなどで混雑している。空港会社によると、ことしは新型コロナの5類移行後初めてのお盆休みとなり、8月10日から20日までに成田空港から出入国する人は77万人余りと、去年の同じ時期の3.6倍に上ると見込まれているが、新型コロナ感染拡大前の2019年と比べると7割弱にとどまっているという。

●中小倒産、「5類」でも増 コロナ支援終了、「ゼロゼロ」返済本格化

 中小企業の倒産が、コロナ下を上回るペースで増えている。新型コロナが5類移行後も、業界によっては期待されたほど業績が戻っていないため。手厚い公的支援は打ち切られ、物価高が追い打ちをかける。中小企業向けの実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済も本格化しており、今後さらに増える可能性がある。電気、ガス料金の値上げや物価高などの負担も重しになっている。

 東京商工リサーチによると、5月の中小企業の倒産件数は704件(前年同月比34.3%増)、ゼロゼロ融資の返済開始がピークを迎えた7月は758件(53.7%増)だった。7月に倒産件数が最も多かった業種は、「サービス業他」で262件(69.0%増)。全体の34.5%を占めた。そのうち飲食業が71件(73.1%増)と増加が目立った。5類移行後、インバウンド需要の盛り上がりなどを受け、サービス業のうち宿泊業などは回復傾向にあるが、飲食業は厳しい状況が続く。

【8月21日】

●観光庁長官「訪日旅行者、年内にもコロナ前水準回復の見通し」

 日本政府観光局のまとめによると、先月日本を訪れた外国人旅行者は232万人余りと推計され、新型コロナの感染拡大前の2019年との比較で77%の水準まで回復している。

 今月10日に中国から日本への団体旅行が解禁されたことについて、観光庁の高橋長官は「10月の国慶節の時期には中国からの団体旅行客が本格化すると想定。ひと月当たりの訪日客数が年内にもコロナ前の水準に戻ることも視野に入れている」。一方で「観光需要の急速な回復で宿泊施設などで人手不足が顕著になり、宿泊施設では稼働を落とさざるをえない状況も生じている」と述べ、今後、宿泊や旅行業界の人手不足の解消に向けて国として支援を強化する考えを示した。

◆コロナワクチン接種後に死亡、新たに9人に死亡一時金など支給へ

 厚労省は21日、新型コロナワクチン接種後に脳梗塞や呼吸不全、気管支ぜんそくなどで亡くなった49歳から96歳の男女9人について、予防接種法に基づいた健康被害の救済制度で、国が因果関係が否定できないと認定し、新たに認定することを決めた。厚労省は、このほか7月31日にも、21歳から90歳の38人を認定していて、新型コロナのワクチン接種で死亡一時金などの支給が認められたのは、今回の9人を含めて、10代から90代までの合わせて156人となった。

【8月24日】

●尾身会長、退任へ 組織見直しで分科会廃止、内閣感染症危機管理統括庁、発足

 政府は、有識者による「新型コロナ感染症対策分科会」と「基本的対処方針分科会」を廃止する方針を固めた。両分科会は、政府の「新型インフルエンザ等対策推進会議」の下に置かれている。会議の議長、両分科会の会長を務める尾身茂氏は退任する。来月9月1日の「内閣感染症危機管理統括庁」の発足に伴う対応で、近く発表予定。発足に合わせて分科会を廃止し、推進会議に機能を集約する方向。

 「内閣感染症危機管理統括庁」は新型コロナ対応をめぐり、病床確保の遅れなど課題が指摘されたことを教訓に、感染症対策を一元的に担う司令塔として来月1日に発足する。政府は、この新たな組織の担当相に後藤新型コロナ対策担当相を充てることを発表した。また、組織のトップとなる「内閣感染症危機管理監」には、事務の官房副長官の栗生俊一氏を起用するとしている。この人事は来月1日付けで発令される。

 尾身茂分科会会長と後藤茂之新型コロナ担当相 出典:ウキメディア・コモンズ

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【8月25日】

●尾身氏「コロナ禍、葛藤の連続」 分科会長退任 活動、書籍に

 新型コロナ対策を専門家の立場からリードした尾身氏が、政府の感染対策の一線から退く。氏は2020年2月に厚労省にできた専門家会議に参加。密閉・密集・密接の「3密」回避を世界に先駆けて呼びかけ、「第1波」のコロナ政策を主導した。新たに対策分科会の会長に就任、対策のとりまとめを担ってきた。一方で東京五輪を控えた2021年6月、「無観客での開催が望ましい」との提言するなど、政府と対立も辞さない姿勢に政府内には反発もあった。

 尾身氏は25日、取材に「コロナ禍の3年半は葛藤の連続だった。ようやく肩の荷が下りた」と振り返った。「専門家として最も大事なことは、感染状況を分析し、政府に提言すること。提言の根拠は何か、どう考えてつくったのか。これだけ大変な危機を経験したのだから、『次』に少しでも役立てないといけない」とも述べた。この間の活動などを書籍にまとめるという。

●成田空港 お盆休みの国際線利用者、コロナ禍前の76%まで回復

 東京出入国在留管理局成田空港支局によると、8月10日から20日までの11日間に成田空港の国際線を利用した人はおよそ80万3000人だった。お盆の時期に成田空港の国際線を利用した人は、コロナ禍前の2019年は過去最多のおよそ105万7000人だったが、2020年にはおよそ2万2000人と大きく減っていた。今回、コロナ禍前の76%まで回復したという。

 このうち、日本人の利用者は31万7600人でコロナ禍前の5割程度だったのに対して、外国人の利用者は48万5100人で、ほぼ同じ水準にまで回復したという。出国先では韓国が最も多く、16%を占めていて、次いで米国、台湾が多くなっている。

◆全国感染状況、前週比1.26倍 緩やかな増加に転じる

 厚労省によると、今月20日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から1万9686人増えて8万6756人となった。1つの医療機関当たりの平均の患者数は17.84人で、前の週の1.26倍となった。これまで2週連続で前の週から減少が続いていたが、今回、増加に転じた。都道府県別では多い順に、岐阜31.03人、岩手30.42人、秋田28.48人、茨城27.42人、石川26.69人などとなっていて、41の都道府県で前の週より増加している。

 このほか、今月20日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万3135人で、前の週と比べて554人の増加となった。厚労省は「お盆期間や祝日に人に会う機会が増えた影響などもあり、緩やかな増加に転じた。例年、お盆が明けた時期に感染拡大のピークを迎える傾向があり、このまま増加傾向が続くかどうか注視したい」としている。

 8月25日発表の定点把握(8月14日~20日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「さらに感染広がるか抑えられるのか 注意が必要」

 新型コロナ対策にあたる政府の分科会のメンバーで東邦大学の舘田教授は、お盆明けとなった現在の感染状況について「先週は35の地域で減少していたが、今回は九州の一部などを除き、すべてで増加している。これまでもお盆で帰省してふだん会わない人と会ったり食事をしたりすることで感染が広がることがあったが、今回も同じ状況だ。さらに感染が広がるのか、抑えることができるのか、注意して見ていく必要がある」と述べた。

そして「多くの人はかぜ症状で済むが、高齢者や基礎疾患のある人を守るという意識で、できる範囲で感染対策を行うことが大切だ。夏休みも終盤となり、8月最後に予定が入っていて、出かけたいかもしれいないが、喉の調子が悪いとか少し熱っぽいといったかぜの症状がある場合はコロナかもしれないと考えて、無理をせずに自宅で療養してほしい。飲み薬もあるので、心配な場合は医療機関を受診してほしい」と述べた。

【8月27日】

●北朝鮮、自国民の帰国認める コロナ規制を一部解除 経済活動活発化のためか

 北朝鮮がコロナ対策を緩和し、国外に滞在していた国民の帰国を認めた。「国家非常防疫司令部」が26日付で発表。朝鮮中央通信が27日に伝えた。コロナ対策を理由に約3年7カ月前に国境を封鎖した北朝鮮は、今月、自国民の帰国を受け入れ始めていたが、公式に発表した。貿易など経済活動を活発化させたい意向がうかがわれる。北朝鮮で世界的なコロナの感染状況の改善を受けた措置だといい、帰国した人は1週間、施設で隔離される。

 北朝鮮では国境の封鎖後、貿易量が減り、慢性的な食料・物資不足が深刻化した。昨年9月に中国の丹東と北朝鮮の新義州を結ぶ貨物列車の運行が正常化したが、ごく一部の例外を除いて人の往来は厳しく制限してきた。しかし、8月22日以降、北京やウラジオストクと平壌との間で、国営の高麗航空の運航を再開し、自国民を帰国させていた。今回、入国を認めたのは自国民のみ。外国人の入国がコロナ禍前の水準に戻る時期は明らかでない。

【8月28日】

●不適正申請、新たに39.1億円 コロナ無料検査補助金 大阪府

 新型コロナのPCR検査や抗原検査の無料検査事業で不適正な補助金申請が見つかった問題で、大阪府は28日、新たに府内5事業者で計39.1億円の不適正申請があったと発表した。事業者には全額返還を求めており、応じなければ警察への被害届提出などの措置をとる。これまでの発覚分と合わせ、不適正申請は、計81.9億円。府は今年6~8月に355事業者を対象に調査を実施。書面で申請内容の再確認を求め、立ち入り調査、検査の受検者へ電話での聞き取りを進めた。

 府によると、不適正申請では、事業者が登録した検査所以外の福祉施設などで集めた検体を実績として報告したり、検査を受けていないのに受けたように書類を作成したりして、検査数を水増ししていた。

【8月30日】

●コロナ病床補助金 一定の感染拡大まで支給なしで検討 厚労省

 医療機関が新型コロナ患者受け入れに備えて病床を空けた場合、「病床確保料」として国は補助金を支払ってきた。補助金の額は病床の種類によって異なり、1病床あたり1万6千円~43万6千円の空けた日数分。5類移行後も、半額に減らして支給。厚労省は、段階的に通常医療体制に戻すため、10月以降は感染状況が一定の基準を超えて拡大するまで補助金を支給しない、支給する場合も酸素投与や人工呼吸器が必要な重症患者の病床に限ることを検討している。

 病床確保料は2020年度から昨年度までの3年間で、全国医療機関に対して4兆8千億円余りが支払われていた。患者を受け入れなくても支払われるため、仕組みを疑問視する声の一方で、廃止すれば急激な感染拡大時の病床確保が困難になり、医療機関側は継続を求めていた。このほかこれまで全額公費でまかなっていたコロナ治療薬について、一定の自己負担を求める方向。今後、自治体や関係団体と調整をすすめたうえで来月中旬にも、正式決定する方針。

【8月31日】

●新型コロナ感染拡大 仕事休む人が増え、身近なところにも影響

 お盆休みを挟んで全国でも新型コロナの感染が拡大していて、東京や神奈川など首都圏でも先週の定点当たりの感染者数は5類に移行してから最多を更新している。こうした中、感染して仕事を休む人が増えることで身近なところにも影響が広がっている。川崎市にある診療所では、8月中旬ごろから患者が増えていて、一日当たり40人と7月の2倍近くの患者が訪れている。30日も発熱などの症状を訴える患者が相次ぎ、検査した人の7割ほどが新型コロナに感染していた。

 患者は幅広い年代に及んでいて、高齢者も増えているというが、重症化する人はほとんどおらず、人数は多いものの、以前のような切迫感はないという。診療所の院長は、「数だけでいうと第8波と変わらない感じですが、うつりやすいかぜのような感覚で診察できるようになった。ただ、かなり感染しやすいウイルスで、うちのクリニックでも今3人休んでいるが、会社を休む人が増えるなど社会活動への影響は出ていると思う」と話していた。

●バス会社、感染相次ぎ運休 郵便局、職員の感染で休業

 感染の影響は、身近なところにも広がっている。都内では8月、複数のバス会社で運転手の感染による人手不足で路線バスを一部、運休している。このうち、都内などで路線バスを運行する小田急バスではお盆休み明けから運転手の感染が相次ぎ、29日から一日当たり200本近くバスの本数を減らして対応している。31日も24人が欠勤した。

 このほかに、郵便局でも複数の職員の感染で休業を余儀なくされるケースがある。日本郵便によると、都内では8月に入って臨時休業する郵便局も出ていて、24日には10か所が休業、31日も4か所が臨時休業している。

●東京都 新型コロナ感染者数、2週連続増 「感染拡大に警戒を」

 都は31日、都内の新型コロナの感染状況についてモニタリング項目を発表した。それによると、定点把握の対象の都内419の医療機関のうち410か所から報告があり、8月27日までの1週間の感染者数は合わせて5956人で、1医療機関当たり14.53人。これは前の週の10.96人の1.33倍で、増加したのは2週連続。8月28日時点での入院患者数は、前の週とほぼ変わらず2684人だった。

 専門家は「感染者を年代別に見ると、10歳未満や60歳以上の増加が目立っており、特に重症化リスクが高い高齢者などの感染拡大を警戒する必要がある」として、場面に応じたマスク着用や換気などとともに、体調が悪い時は外出を控えるよう呼びかけています。

●東京都 注意喚起の際の参考数値を公表

 新型コロナの感染拡大時に、住民に注意喚起する際の参考にしてもらう目安として国が作成した4つの指標について東京都は31日、都に当てはめた数値を公表した。それによると、①医療機関が「外来が逼迫している」と回答した割合が25%を超えるとき、②感染者数が、1医療機関あたり19.78人を超えるとき、③入院患者数が2230人以上のとき、④確保している病床の使用率が50%を超えるときとしている。

 31日に発表された都のモニタリング項目では、入院患者数が2684人と国の目安を超えているが、都の担当者は「数値はあくまでも参考であり、都内の病床は逼迫している状況ではない。注意喚起にあたっては専門家による医療現場の状況確認や、数値の増加スピードなどを踏まえて総合的に判断していく」としている。

●日本人の死亡率、10年ぶり増加 2021年、新型コロナが影響

 新型コロナ感染症の感染が拡大した2021年は、日本人全体の死亡率が前年と比べ2.2%増えた、と国立がん研究センターの研究グループが発表した。増加は、東日本大震災のあった2011年以来10年ぶり。研究グループは、厚労省が公表する人口動態統計の死亡データをもとに、主要な死因別の死亡率について1955~2021年の推移を調べた。高齢者のほうが一般的に死亡リスクは高くなるため、死亡率は各年の人口構成がそろえられている。

 死亡率は、生活習慣の改善や医学の進歩によって長期的には減少傾向にあったが、2011年の1.4%増に続いての増加となった。2021年は、新型コロナ感染者が149万人で、前年の23万人から大幅に増え、死因別の死亡率にも影響が見られた。新型コロナが前年比380%増で、老衰が9.3%増、心疾患が1.4%増だった。これらが死亡率引き上げの主要因となっていた。コロナ禍で高齢者の衰弱が進んだほか、診療が制限されたことも影響したとみられる。

2023年8月 6日 (日)

新型コロナ2023.07 漸増続く

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。7月7日、厚労省の専門家組織は移行後2回目の会合が開かれ、全国的に緩やかな増加傾向が続いていて、特に沖縄県で感染拡大がみられると指摘した。今後、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性があるとして、基本的な対策が重要だとしている。

 7月28日厚労省は、全国に約5千ある定点医療機関に17~23日に報告された新規感染者数は計6万8601人で、1定点あたり13.91人だったと発表した。前週の約1.26倍で、香川と沖縄をのぞく45都道府県で前週より増え、4月上旬からの緩やかな増加傾向が続いている。

 2023年7月1日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.06 第9波入口」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】
 

【7月1日】

●沖縄で新型コロナ急拡大 状況把握し対策検討 厚労省

 厚労省によると、新型コロナの全国の感染状況は先月25日までの、1週間の医療機関1つあたりの平均患者数が6.13人と前の週の1.09倍となり、12週連続で増加した。このうち沖縄県が39.48人と全国で最も多く、ことし1月の第8波のピークを超える水準で感染が急拡大していて、岸田首相は30日、加藤厚労相や後藤新型コロナ対策担当相らに、沖縄県と連携しながら必要な対策を取るよう指示した。

 厚労省は、今後、沖縄県内の医療提供体制が十分かどうか、県や医療関係者などから聞き取りを行うなど状況の把握に努め、対策を検討する方針。また去年、夏の間に全国で感染が拡大したことも踏まえ、換気の徹底など基本的な感染対策を呼びかけるとともに、沖縄県をはじめ各地で高齢者などへのワクチン接種を進めていきたいとしている。

【7月5日】

●「第9波と判断が妥当」日本医師会

 日本医師会の釜萢(かまやち)常任理事は記者会見で、新型コロナの感染が沖縄県で急拡大していることなどを踏まえ、「現状は第9波と判断することが妥当」と指摘した。この中で、「5類への変更後、一貫して全国で徐々に増えているのは変わらない。ほとんどの県で、5月よりも6月のほうが報告数が増えており、沖縄県の感染者の増加が非常に著しい」と述べた。

 そのうえで、「これまで一時下がって、最も低いところになって、もう一度上がる状態がずっと持続している場合には、新しい波と考えてきた。現状は、第9波という状況になっていると判断することが妥当ではないか」と指摘。そのうえで、沖縄県では、リスクの高い高齢者などへの感染を防ぐ取り組みが最も求められるとし、ほかの地域についても、今後の感染状況を注視していく必要があるという考えを示した。

●詐欺容疑、計9億円に 近ツー元支店長ら再逮捕

 近畿日本ツーリストの支店長ら3人が新型コロナワクチンの業務委託費を詐取したとされる事件で、大阪府警は5日、3人を詐欺容疑で再逮捕し、発表した。3人は2022年5~10月、東大阪市から委託されたワクチン接種のコールセンター業務で、オペレーター数を水増しし市に約7200万円を過大請求、約3億500万円をだまし取った疑い。府警は過大請求分だけでなく、うその請求に基づいて支払われた委託費全体を詐取したと判断した。

 近ツーの親会社によると、過大請求は静岡支店などが担当していた静岡県焼津市や同県掛川市でもあり、総額は約14億7千万円に上る。府警は静岡支店も家宅捜索しており、過大請求の経緯を調べている。

【7月7日】

●米製薬会社 新型コロナ「XBB.1.5」対応ワクチン 厚労省に申請

 米製薬会社、ファイザーとモデルナは、それぞれが開発したオミクロン株の「XBB.1.5」に対応した成分を含むmRNAワクチンについてそれぞれ厚労省に承認を申請した。先月開かれた厚労省の専門家分科会で示された資料によると、モデルナのワクチンは米国で行われた臨床試験で「XBB.1.5」や「XBB.1.16」といった「XBB」系統の変異ウイルスに対して免疫の反応が確認できたという。

 またファイザーのワクチンもマウスを使った実験で「XBB」系統の変異ウイルスに免疫の反応が確認されたとしている。接種の対象となる年齢はファイザーは生後6か月以上、モデルナは12歳以上を想定している。厚労省は、ことし9月から5歳以上の人を対象に行われる予定の追加接種で「XBB.1.5」を含む「XBB.1」系統に対応する、ワクチンを使う方針を示している。

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●「現時点では「第9波」に当たらない」 後藤新型コロナ対策相

 日本医師会の釜萢常任理事は、5日、沖縄県で感染が急拡大していることなどを踏まえ「第9波」と判断するのが妥当だと指摘した。これについて後藤新型コロナ対策担当相は閣議のあとの記者会見で「全国的に少しずつ感染が拡大しているが、数字の伸び方はまださほど大きいという認識は持っていない」と述べた。

 その上で「政府として今の段階で新しい流行の波が発生しているとは特に認識していない」として、現時点では感染の「第9波」には当たらないという認識を示した。一方で沖縄県には職員を派遣するなど、必要な支援を行っているとした上で「今後ともできるかぎり注意しながら基本的な感染対策をとるようお願いしたい」と呼びかけた。

●専門家組織「夏の間に一定の感染拡大生じる可能性」

 厚労省の専門家組織の会合が7日に行われ、現在の感染状況について、全国的に緩やかな増加傾向が続いていて、地域別では46の都道府県で前の週より増えていて、特に沖縄県で感染拡大がみられるとしている。今後、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性があるとして、手洗いや換気、マスクの効果的な場面での着用などの基本的な対策が重要だとしている。専門家会合は、5類に移行後、6月16日以来2回目の開催。

 新規入院者数や重症者数も増加傾向で、医療提供体制は全国的に逼迫はみられていないものの、沖縄県では入院者数の増加や病院内でのクラスターの発生で医療への負荷が増大していると指摘。また、検出されるウイルスの種類はオミクロン株のうちの「XBB系統」が大部分を占めていて、特にインドなどで拡大し免疫を逃れやすい可能性が指摘されている「XBB.1.16」の割合が増加傾向だという。

 7月7日発表の定点把握(6月26日~7月2日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●脇田座長「九州や西日本でも増加続いている 注視する必要」

 専門家組織の会合のあと開かれた記者会見で、脇田座長は現在の感染状況について、「全国でみると沖縄県が突出して感染が広がっている状況だが、九州や西日本でも増加が続いているので、注視する必要がある。沖縄県ではかなりの規模での感染拡大が続き、医療体制も逼迫していると、沖縄県の医師から報告があった」と指摘した。その上で「夏を迎え暑くなり、人々が密閉空間に集まる機会が増えたことで、増加傾向になっていると考えられる」とした。

 「沖縄県で突出しているのは、去年の夏の『第7波』で大きな感染の波があった一方で、この冬の『第8波』は全国に比べると大きくはなく、感染から時間がたっている人が多いことや、ワクチンの接種率が全国と比べて低いこと、観光地であることなどが影響している可能性がある」と話している。一方、現在の感染状況が「第9波」にあたるかどうかについては「いずれ、感染拡大が落ち着いた時に波がどうだったのか評価をすることになる」と述べた。

【7月11日】

●コロナ禍を経験した5歳、平均で4か月余り発達遅い 京大など調査

 新型コロナの流行による生活の変化が幼い子どものに与える影響について京都大学などのグループは、2017年から2019年に1歳と3歳だった首都圏の認可保育所に通う子どもおよそ890人を対象に2年後の発達状況を調べた。運動やことば表現、それに社会性などのおよそ140項目の指標で分析。コロナ禍を経験した5歳の子どもはコロナ禍前に5歳になった子どもに比べて発達が全体で平均4.39か月遅かった。特に運動や言語表現、しつけなどの分野で遅れが大きい。

 グループでは、5歳のころの発達に重要な人との交流が制約を受けたことが遅れにつながったのではないかという。一方、3歳の子どもは明確な差はなかった。逆にコロナ禍を経験した方が、部分的には発達が進んでいた。在宅勤務で親との接触が増えたことが要因ではないかとしている。調査した佐藤助教は「こうした影響はその後の成長で十分に取り返せる。周囲の大人のコミュニケーションのほか、保育環境もコロナ前に戻していくことが大切」と話す。

【7月13日】

●東京都、コロナ感染者3週連続増 「高齢者と接触の場合は対策を」

 13日、都庁で感染症の対策会議が開かれ、この中で都内の新型コロナの感染者数について公表された。それによると、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、416か所から報告があり、感染者数は7月9日までの1週間で合わせて3152人で、1医療機関当たりでは7.58人となった。これは前の週の6.85人の1.1倍と、3週続けて増えている。

 東京都医師会の猪口顧問は「感染者数は緩やかに増加している。夏休みは人の往来が増える時期で、高齢者への感染の機会を減らすことが重要」として、重症化リスクの高い高齢者に接触する場合は状況に応じてマスクをつけるなど、基本的な感染対策をとるよう呼びかけた。このほか会議では、幼い子どもがかかりやすいウイルス性感染症のヘルパンギーナやRSウイルスについても、感染が広がっていると報告があり、換気や手洗いなどの徹底が呼びかけられた。

●コロナ検査不正227億円 5都府県、補助金取り消し

 新型コロナ検査の無料化事業で不正な申請があったとして、6月下旬までに東京や大阪など5都府県が総額約227億円の補助金交付を取り消していたことが分かった。うち約29億円は交付済みで、受給した事業者に返還を命じている。12都府県が不正の調査を始めたり、検討したりしており、金額はさらに膨らむ可能性がある。5月の「5類移行」に合わせて各種のコロナ関連事業が終了したが、こうした不正事案への対応が今後、焦点となる。

 無料化事業は、PCR検査などを希望者が無料で受けられるように、2021年12月~2023年5月に全国で実施された。国の地方創生臨時交付金を財源に都道府県が実務を担当。医療機関や医療関係会社などの事業者から報告された検査件数などをもとに、検査経費などを補助。事業者側が検査件数を水増し、補助金を過大に申請するなどの不正でこれまでに取り消された補助金交付申請は、東京都が計183億円(11事業者)、大阪府計42億8千万円(7事業者)など。

【7月14日】

●全国の感染状況 、45都道府県で前週比増加

 厚労省によると今月9日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から9361人増えて4万5108人。また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は9.14人で前の週の1.26倍となった。前の週から増加が続くのは14週連続。今月8日で、5類に移行して2か月がたったが、今回発表された今月9日までの1週間と、5類移行直後の5月14日までの1週間を比べると3.48倍となった。

 全国の感染者数は、4月上旬からの緩やかな増加傾向が続く。都道府県別では、沖縄41.67人、鹿児島17.18人、宮崎16.0人、佐賀15.33人、熊本11.99人などと、青森、沖縄両県を除く45の都道府県で前の週より増加。厚労省は「全国的に緩やかな増加傾向が続き、特に九州や中国、四国では前の週より増加幅が大きい県が多く、また沖縄県では前週よりは減少したものの依然として高い水準。引き続き感染状況を注視したい」としている。

●コロナ入院、2カ月で2.5倍
 
 9日までの1週間に新たに入院した人は 全国の新規入院患者数は6096人で、前週(5494人)の約1.11倍。5類移行直後(5月8~14日分)の2489人の約2.45倍で増加が続く。感染拡大に備え、厚労省は14日、重症者を優先的に入院させるなどの体制を確認するよう都道府県に事務連絡を出した。

 集中治療室(ICU)に入院している全国の重症患者数は7日間平均で87人で前週(93人)から6人減った。ただ、14日に公表されたコロナ患者の療養状況調査では、12日午前0時時点でICUへの入室や人工呼吸器が必要な全国の重症患者数は208人いた。5類移行直後の5月10日の99人の約2.10倍となっている。

●専門家「8月にかけ感染拡大のリスク高まる」

 政府分科会のメンバーで、東邦大学の舘田教授は、現在の感染状況について「深刻な状況となっていた沖縄では少しピークアウトした様子が見られるが、感染者の数は依然として高いレベルが続いている。全国でも感染者の増加が続き、西日本を中心にはっきりとした増加傾向が見られる地域も増えていて、8月にかけて沖縄のような感染拡大が起きるリスクが高まっている」と指摘した。

 そのうえで「これから夏休みに入り、特にお盆の時期にはふだん会わない人との接触の機会が増えたり、暑さで換気が徹底できなかったりするため、感染が拡大しやすい時期が続く。私たちの周りにウイルスが潜んでいることを思い出してもらって、できる範囲で基本的な感染対策をとってもらうことが大事」と話している。

 7月14日発表の定点把握(7月3日~9日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●ワクチン接種後に死亡 新たに6人に死亡一時金など支給へ

 新型コロナワクチンの接種後に死亡した人については、「予防接種法」に基づいた健康被害の救済制度で、国が因果関係が否定できないと認定した場合には死亡一時金などが支給されている。厚労省は14日、接種後に急性循環不全や急性心筋梗塞、急性心不全などで亡くなった、53歳から89歳の男女6人について、新たに認定することを決めた。

 このうち、5人が高血圧症や慢性心不全などの基礎疾患があったということで、厚労省は、死亡診断書やカルテの記載などを踏まえて、因果関係が否定できないと判断した。厚労省は、このほか、6月26日にも15歳から99歳の31人を認定していて、新型コロナのワクチン接種で死亡一時金などの支給が認められたのは、今回の6人を含め、合わせて109人になったという。

【7月17日】

●コロナで祭りなく、しぼむ暴力団 支援金不正受給容疑、組員24人立件

 東京の下町を縄張りにしてきた「老舗」の暴力団が警視庁に詐欺容疑で捜査され、組員全体の4分の1の24人が立件された。夏祭りなどに露店を出す「テキ屋」を稼業にしてきたがコロナ禍で細り、暴力団員であることを隠し、2020年3月~2021年11月に国のコロナ対策の支援金計約5300万円を不正受給したとして、全員が起訴された。しぼむ暴力団の象徴的な姿と受け止められている。

【7月19日】

●上半期、訪日1071万人 コロナ前の64% 円安追い風に回復、ホテル料金は高騰

 日本政府観光局(JNTO)は19日、1~6月の訪日外国人客が1071万人だったと発表。コロナ前の2019年同期比で64.4%まで戻った。国・地域別では、韓国が最多で約55万人、台湾約39万人、米国約23万人。2019年に訪日客の3割(959万人)を占めていた中国は、約21万人。中国政府が日本行き旅行商品の販売を禁止しているため。円安も追い風に東南アジアや米国、豪州からの訪日客は、コロナ前を上回った。中国以外はコロナ前の水準まで回復している。

 一方、国内旅行の宿泊者数はコロナ前に戻り、予約状況も好調。観光庁の調査では、5月の日本人の延べ宿泊者数は4115万人で、2019年同月と同水準だった。旅行大手JTBによると、夏休みに国内旅行をする人は前年比16.9%増の7250万人となり、2019年並みになる見通し。国内客と訪日客の増加があいまって、都市部の観光地は混雑し、ホテルなどの料金も高騰。人手不足が高騰に追い打ちをかけている。

●羽田第2、国際線再開 コロナ休止後3年超ぶり

 新型コロナの影響で休止していた羽田空港第2ターミナルの国際線施設が19日、営業を再開した。2020年3月のオープン後、わずか13日で休止となって以来、3年3カ月ぶりに国際線が飛び立った。施設を利用する全日本空輸(ANA)では、羽田発着の国際線便数が7月末時点でコロナ前と同水準に回復。第3ターミナルだけでは足りなくなっていた。第2では、台北、上海、香港、ロンドン行きの4路線で1日計5便を運航させる。

 国際線施設は、国内線専用だった第2ターミナルを増築して設けた。同じターミナルで国内線に乗り継ぎできることから、インバウンド(訪日客)を地方に呼び込みたい考え。海外旅行の需要も回復しつつあり、国際線の便数はさらに増える見込み。

【7月20日】

●東京都 新型コロナ感染者数、前週比1.08倍で4週連続増加

 都は、20日、新型コロナの感染状況について、モニタリング項目を発表した。それによると、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、413か所から報告があり、感染者数は今月16日までの1週間で合わせて3407人で、1医療機関当たりでは8.25人となった。これは前の週の7.58人の1.08倍と、4週続けて増えている。また、今月17日時点での入院患者数は、前の週より157人増えて1333人となり、こちらも4週続けて増えている。

【7月21日】

●全国の感染状況 43都道府県で前の週より増加

 厚労省によると、今月16日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から9042人増えて5万4150人となった。また、1つの医療機関当たりの平均の患者数が11.04人、前の週の1.21倍。前の週から増加が続くのは15週連続。都道府県別では多い順に、沖縄31.83人、佐賀23.05人、宮崎20.79人、鹿児島19.08人、長崎16.66人などとなっていて、43の都道府県で前の週より増加した。

 7月21日発表の定点把握(7月10日~16日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 このほか、今月16日までの1週間に新たに入院した人は全国で6952人、前の週と比べて632人の増加。厚労省は全国の流行状況について「感染者数の伸び幅は横ばいで、全国的には緩やかな増加傾向が続いている。特に九州や中国、四国では前の週より増加幅が大きい県が多い。一方で、沖縄県では2週連続で減少。各都道府県には夏の感染拡大に備えて医療機関の間の連携などの準備を進めるよう呼びかけていて、引き続き感染状況を注視したいとしている。

●専門家「5類に移行して緩やかな増加続いている」

 新型コロナ対策にあたる政府の分科会のメンバーで東邦大学の舘田教授は現在の感染状況について「5類に移行して2か月近くの間、全国的にみると緩やかな増加が続いている。沖縄以外の地域ではそれほど急激な増加とはなっていない。東京では新型コロナで医療の逼迫が迫っている状況ではないが、小児の感染症やお年寄りの熱中症が重なって、救急医療の現場では少し負荷がかかっている」と分析した。

 夏休みになって人が移動することやクーラーで換気を行いにくいことなど、夏場は感染が広がりやすい状況が重なるとし、「過去3年間、夏に大きな流行があり、この夏も注意が必要。これまでの夏は新しい変異ウイルスが出てきてその急激な増加で感染拡大したが、いま流行しているXBB株は全く新しい変異ウイルスというわけではない。第8波から時間がたって免疫も下がっているので、どこまで感染が広がるか、慎重に見ていく必要がある」と指摘した。

●喉の痛み 水分とれず脱水に注意

 感染症に詳しい新潟大の斎藤教授(公衆衛生学)は「国内はまだコロナに感染した経験がない人が半数近くいるため、ウイルスから見れば、付け入ることができる環境にある。さらに、夏はイベントや旅行など、人の活動性が高まるため、今後も流行が広がる可能性は高い」と指摘する。夏休みで帰省する人が増えると、高齢者世代にも感染が広がるおそれがある。「人が密集する場面でのマスク着用や、冷房をつけながらも適度な換気が効果的」と訴える。

 斎藤氏によると、現在主流の「XBB」というオミクロン株亜系統は、肺より喉に感染しやすいため、喉の痛みで飲食が難しく、脱水で体調不良となるおそれがある。気温も高く、熱中症患者が増える季節と重なることから、患者が医療機関で治療を受けられない懸念もある。「スポーツドリンクや、熱やのどの痛みを抑える市販薬を自宅に備蓄しておくことも重要」と話す。

【7月25日】

●新型コロナ 入院患者や重症者数も「定点把握」へ 9月下旬から

 新型コロナの流行状況をより正確に把握するため、厚労省は新たに入院患者や重症者の数について全国およそ500の指定医療機関から報告を受け、毎週金曜日に公表することになった。新たな入院者数や人工呼吸器を使用しているなどの重症者の数については、すべての医療機関から報告が今も行われているが、9月下旬から指定した医療機関からの報告をもとにした「定点把握」を始める予定。

 入院者数や重症者数の「定点把握」は季節性インフルエンザでも行われていて、厚労省は、1つの医療機関あたりの平均の患者数などとあわせて推移を分析していくことで流行の状況をより正確に把握していくとしている。

【7月26日】

●「すべての人への積極的接種呼びかけは不要」 釜萢常任理事

 ワクチンの無料接種は現在、高齢者と基礎疾患のある人などが対象で、9月からは5歳以上のすべての人を対象にした接種が再開する。日本医師会の釜萢(かまやち)常任理事は記者会見で「65歳以上の人や基礎疾患がある人以外が重症になる割合はそれほど高くはない。全体の感染を抑えるために無理をして接種してもらうよりも、個人で選択してもらう時期に入った」と述べ、すべての人に積極的に接種を呼びかける必要はないという認識を示した。

【7月28日】

●コロナワクチン接種後死亡の女性 「因果関係否定できず」 2例目

 ワクチンの副反応を検討する厚労省の専門家部会は28日、去年8月ファイザーの3回目の新型コロナワクチンを接種した2日後に、心臓の筋肉や膜に炎症が起きる「心筋心膜炎」で亡くなったとされる14歳の女性について、接種との因果関係は「否定できない」とした。女性はアレルギーや別のウイルスの感染がなく、接種後、短い間に心臓を含む多くの臓器で炎症を起こしていることから、ワクチン接種によって、心筋心膜炎が生じたと考えて矛盾しないとしている。

 これまでにワクチン接種後に死亡した事例として2000件以上が部会に報告されている。国の「副反応疑い報告制度」で報告された接種後の死亡例で、接種との因果関係が「否定できない」と評価されたのは去年11月に亡くなった愛知県の女性に続いて2例目。部会では、現時点ではワクチン接種に影響を与える重大な懸念は認められないとしたうえで、厚労省に接種後に胸の痛みや呼吸困難などの症状がある場合は早期の受診を勧めるなど、改めて注意喚起するよう求めた。

●コロナ、5類移行後の死者初公表 5月に死亡診断書など記載1367人

 新型コロナの死者数については、国が全国の死者数を毎日公表してきたが、ことし5月に「5類」に移行してからは行われなくなり、厚労省は、死者数の動向を迅速に把握するため、死亡診断書などに「新型コロナ」と書かれたケースを分析する新たな集計を始めた。28日はことし5月の死者数が公表され、それによると、新型コロナが最も死亡に影響した死者は610人で、前の月と比べて50人増えた。

 また、新型コロナが、死因となった病気の経過に影響を及ぼした人も含めた死者は1367人で、前の月と比べて58人減った。新型コロナが「5類」に移行してから死者数が公表されるのは初めて。厚労省は引き続き動向を注視するとしている。

●新型コロナ感染者数、45都道府県で増加 前週比1.26倍 厚労省

 厚労省は28日、全国に約5千ある定点医療機関に17~23日に報告された新型コロナの新規感染者数は計6万8601人で、1定点あたり13.91人(速報値)だったと発表した。前週(11.04人)の約1.26倍で、香川と沖縄をのぞく45都道府県で前週より増え、4月上旬からの緩やかな増加傾向が続いている。

 都道府県別でみると、最多は佐賀の27.44人で、宮崎24.47人、長崎22.94人と続く。感染が拡大していた沖縄は3週連続で減少、前週比約0.70倍の22.43人だった。前週比では新潟1.65倍、鳥取1.57倍、福井1.56倍と一部の地域で急増した。全国の新規入院患者数は8983人で、前週(7702人)の約1.17倍。集中治療室(ICU)に入院している全国の重症患者数は7日間平均で68人で前週(50人)から18人増えた。

 7月28日発表の定点把握(7月17日~23日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【7月29日】

●療養後の未返却、30万個 血中酸素測定機器、都道府県が貸与

 新型コロナの自宅療養者向けに都道府県が無料で貸し出した血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターが、全国で少なくとも約30万個返されていないことが分かった。未返却の割合は約17%、試算すると計約15億円。貸し出しは市なども実施しており、実際の未返却数はさらに多そう。貸し出し事業は2020年4月に始めた国の新型コロナ感染症緊急包括支援交付金が充てられた。今年5月に原則終了した。

 厚労省担当者は、自宅療養者の健康管理を目的としていた点を踏まえ、「コロナ対応として適切に使われたなら問題ない」。元厚労官僚の教授(行政学)は、急増した自宅療養者の安全確保を優先させたため十分な制度設計の時間がなく「仕方ない部分もある」としつつ、「公共財産。なし崩しに未返却を認めてしまっているのはミス」と指摘する。

【7月31日】

●第一三共が開発のワクチン、国内製薬会社で初承認へ

 新型コロナのワクチンは、ファイザーやモデルナなど海外の製薬メーカーのものが使われているが、ことし1月、第一三共が厚労省に承認申請を行っていた。このワクチンについて、31日に開かれた厚労省の専門家の部会で検討が行われ、有効性や安全性が確認できたとして、使用を認めることを了承した。今後、厚労省の手続きを経て、国内の製薬会社の新型コロナのワクチンとして初めて正式に承認される。

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 開発されたワクチンは、変異ウイルスではなく従来型の新型コロナに対応したもの。人工的に作った遺伝物質mRNAを投与することにより、ウイルスが細胞に感染するときの足がかりとなるスパイクたんぱく質の一部を体内で作り出し、免疫を高める。また31日は、塩野義製薬が開発した新型コロナワクチンについても検討が行われたが、有効性を評価するためのデータが十分でないなどとして、継続審議となった。

●国産ワクチンの開発、迅速に進まず

 新型コロナワクチンは、2020年以降、国内外の製薬会社が開発に乗り出した。ファイザーやモデルナ、アストラゼネカなどの海外製薬会社が開発したワクチンはおよそ1年後には実用化され、国内でも承認、接種が始まった。日本では複数の製薬会社が国産ワクチンの開発を進め、日本医療研究開発機構が研究開発を補助、厚労省が研究や生産体制の整備を支援するなど、国を挙げて開発を後押した。ただ、早期の実用化はかなわず輸入に頼った。

 専門家は「これまで新しいワクチンを作るには、5年~10年はかかってきた。3年での承認は、かなり速いスピード」と述べた。海外に比べ、開発が迅速に進まなかった理由として2021年に政府がまとめたワクチン開発に関する長期戦略では、▽研究機関の機能や人材、産学連携の不足、▽戦略的な研究費配分の不足、▽最終段階の臨床試験を行う難しさなどの課題を挙げ、「平時からの研究開発・生産体制を強化する必要がある」などと指摘している。

2023年7月 3日 (月)

新型コロナ2023.06 第9波入口

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。6月16日、厚労省の専門家組織の会合が移行後初めて開かれ、新規患者数は緩やかな増加傾向が続いていて、夏の間に一定の感染拡大が起きる可能性があると分析。また、政府分科会の会長を務めていた尾身氏は26日、岸田首相と面会した後記者団に「全国的に微増傾向、第9波が始まっている可能性がある。高齢者をどう守るかが非常に重要」と述べた。

 2023年6月1日から30日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.05 「5類」移行」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】


【6月1日】

●東京都の定点把握、前週の約1.1倍 3週続けて増加傾向

 東京は6月1日、新型コロナの感染状況のモニタリング項目について発表した。それによると、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、416か所から報告があり、感染者数の合計は5月28日までの1週間で1647人で、1医療機関当たりでは3.96人となった。これは前の週の3.53人の1.12倍で、3週続けて増加傾向にあり、専門家は「今後の動向に十分な注意が必要だ」と指摘している。

 また、免疫を逃れやすい性質が指摘されている「XBB」系統の変異ウイルスの割合が増えて、全体の9割に上った。これについて専門家は、「新たな変異株の出現やその動向に警戒が必要だ」としている。一方、入院患者数は5月29日時点で、前の週より198人多い900人となった。

【6月2日】

●全国の感染状況「緩やかな増加傾向続く」 厚労省

 厚労省は2日、全国に約5千ある定点医療機関に5月22~28日に報告された新型コロナ新規感染者数は計1万7864人で、1医療機関あたり3.63人だったと発表した。前週(3.55人)の約1.02倍と横ばいで、4月上旬からの緩やかな増加傾向が続いている。

 都道府県別では多い順に、沖縄が10.35人、岩手が5.97人、山梨が5.78人、北海道が5.72人、石川が5.58人などとなっていて25の都道府県で前の週より増加。このほか、先月28日までの1週間に新たに入院した人は全国で3235人で、前の週のと比べて117人の減少とほぼ横ばいとなっている。厚労省は全国の流行状況について「比較的低い水準にあるものの、4月以降緩やかな増加傾向が続いていて、今後も感染状況を注視したい」としている。

 6月2日発表の定点把握(5月22日~28日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「発表より多くの感染者いる可能性」
 
 政府分科会のメンバーで、東邦大学の舘田教授は、現在の感染状況について「感染者の数は全国的には横ばいになっているが、検査を受けていない人も大勢いるとみられる。発表された数字よりも、さらに多くの感染者がいる可能性に注意する必要があり、警戒レベルを上げて対応していくことが重要になっている」と話している。

 そのうえで「5類移行に伴って人々の動きが盛んになっていて、感染が広がるリスクは高まっている。子どもたちの間では、コロナ以外にもインフルエンザやRSウイルスなどに感染する患者も増えている。気温が上がってきている中で、対策の徹底は難しいかもしれないが、重症化リスクが高い人を守るために、マスクを効果的に使い、換気を徹底すること、密を避けるなど、日常生活の中で警戒感を高めてほしい」と話している。

●今年度の大学入試 試験中のマスク不要など、コロナ前の形に

 文科省は2日に今年度行われる大学入学共通テストや各大学の試験の指針となる大学入試の実施要項を公表した。新型コロナが5類に移行されたことを受け、「コロナ禍前の形に戻すことを基本とする」としていて、昨年度まで求めていた試験中のマスクの着用は不要となり、4年ぶりに個人の判断でマスクをつけずに受験することが可能となる。

 また「濃厚接触者」の特定も行われなくなるなど、各大学などが自主的な感染対策に取り組むこととされている。一方、大学入学共通テストの追試験の会場の数については、コロナ禍前が2会場であったことも踏まえ、前回の全国47都道府県50会場から大幅に縮小することも検討されている。今年度の大学入試のうち、大学入学共通テストは本試験が来年1月13日と14日、追試験が来年1月27日と28日の日程で行われる。

●夏の甲子園 コロナで制限の選手どうしの握手など容認へ

 高校野球の春夏の全国大会では、新型コロナの感染拡大後、ガイドラインを設け選手をはじめ関係者の感染対策や応援のルールなどを定めてきた。高野連などは2日、大会の臨時運営委員会を開き、新型コロナが5類に移行されたことを踏まえてこうしたガイドラインの廃止を決めた。これにともなって試合終了後に対戦したチームの選手どうしが握手することや、学校の応援団がハイタッチや肩を組むなどの行為などが認められることになった。

【6月9日】

●コロナ感染、増加傾向続く 専門家「死者増加恐らくない」

 厚労省は9日、全国に約5千ある定点医療機関に5月29日~6月4日に報告された新型コロナ新規感染者数は計2万2432人で、1定点あたり4.55人(速報値)だったと発表。前週(3.63人)の約1.25倍、42都道府県で前週より増えた。4月上旬からの緩やかな増加傾向が続いている。最多は沖縄の15.80人で前週比1.53倍。石川6.98人、北海道6.71人、千葉6.66人と続く。香川(1.76倍)、三重(1.66倍)、島根(1.56倍)など一部地域では大幅に増えた。

 国立感染研の鈴木感染症疫学センター長は「第8波ほどではないが、全国で上昇傾向が見られる。特に沖縄は以前の流行に近い状況になっており、注意が必要だ」と話した。5月29日~6月4日の全国の新規入院患者数は4003人で前週(3346人)の約1.20倍。集中治療室に入院している全国の重症患者数は7日間平均で61人で前週(58人)から3人増えた。

●「超過死亡」、例年と比べ増えていない 国立感染研

 「超過死亡」は、過去のデータから統計学的に推計される死亡者数を実際の死亡者数がどれだけ上回ったかを調べる手法で、国立感染研などは今回、全国各地の17の自治体から提供された死亡者数のデータを用いて分析した。ことし3月20日以降、先月中旬までの8週間について、超過死亡が出ているか1週間ごとに調べたところ、全国でも地方ごとでも、過去5年間のデータから推計される死亡者数と比べて顕著に増えた時期はなかったことが分かった。

 分析に当たった専門家は、新型コロナによる死者はいたが、大幅な増加はみられなかったと考えられるとしている。超過死亡は去年、新型コロナの感染が拡大した時期に顕著に増えたことが報告されているが、これまでは自治体から遅れて報告される人口動態調査のデータを使っていたため、分析におよそ3か月かかっていた。

 日本の「超過死亡」の推移 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト(6月23日付)

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●子ども、他の感染症流行 「RSウイルス」 夏風邪「ヘルパンギーナ」

 子どもを中心にコロナ以外の感染症が流行している。国立感染研が9日に公表した感染症週報によると、大型連休明けから、代表的な夏風邪の「ヘルパンギーナ」や、乳幼児が重症化しやすい「RSウイルス」の患者数が増加している。週報によると、5月22~28日の定点当たりの患者数は、ヘルパンギーナが1.33人、RSウイルスが1.95人と、いずれも3週連続で増加。ともに定点医療機関当たりの患者数は過去5年間の同時期の平均を上回る。

 ヘルパンギーナは、発熱やのどの痛みのほか、口の中に水ぶくれができ、痛みにより食事がとりにいこともある。RSウイルスは、多くは風邪のような症状で済むが、初めてかかった乳幼児は肺炎や細気管支炎になりやすい。いずれも飛沫や接触によって感染、手洗いや人混みを避けることが基本的な感染対策。RSウイルスは手指のアルコール消毒も効果がある。通常は冬に流行する季節性インフルエンザも、全国の学校で集団感染が相次いでいる。

【6月14日】

●立民、新型コロナ感染後遺症の対策法案 国会に提出

 立憲民主党は、新型コロナ感染による後遺症への対策を進めるための法案を国会に提出した。後遺症について、実態が十分に解明されておらず、適切な医療を受けられていない現状があると指摘。そして対策の実施は、国や地方自治体の責務だと明記したうえで、政府が必要な財政上の措置を講じること、さらに後遺症の診断や治療方法に関する研究を推進し、医療提供体制や相談体制を整備するとしている。

 また、立憲民主党は、新型コロナワクチンの接種によるものと疑われる健康被害などが相次いでいるとして、給付金を速やかに支給することなどを盛り込んだ法案も提出した。党の新型コロナ対策本部を務める小川淳也衆議院議員は、記者団に対し、「コロナは5類に移行したが油断できない。財政支援を含め、さまざまな体制の整備はこれからだ」と述べた。

【6月15日】

●東京都 感染者、5週続け増加傾向 「動向に注意必要」

 東京都は6月15日、新型コロナ感染状況のモニタリング項目について発表した。定点把握対象の都内419の医療機関のうち、415か所から報告があり、感染者数の合計は6月11日までの1週間で2486人、1医療機関あたりでは5.99人。これは、前週の5.29人のおよそ1.13倍で、5週続けて増加傾向にあり、専門家は「感染拡大が続いている。今後の動向に十分な注意が必要」と指摘。また、6月12日時点の入院患者数は、前の週より49人増えて1032人。

●近ツー支店長ら詐欺容疑で逮捕 ワクチン業務で5.9億円を詐取か

 旅行大手の近畿日本ツーリストが、ワクチン接種の関連業務で委託料を自治体に過大請求していた問題で、大阪府警は15日、過大請求で計約5億8900万円をだまし取ったとして15日、大阪市の「関西法人MICE支店」の支店長ら3人を詐欺容疑で逮捕した。府警は1日、過大請求で公金をだまし取った疑いがあるとして、同支店などを詐欺容疑で家宅捜索。近ツーの親会社は同日の決算会見で、判明している過大請求の総額は約14億7千万円と発表していた。

 問題は4月に発覚。近ツーは、自治体からワクチン接種予約のコールセンター業務の委託を受け、指定より少ないオペレーターの人数で別の会社に再委託。委託通りの人数などをもとに自治体に過大請求していた。近ツーの5月の発表では2020~22年度の3年間、大阪府や東大阪市、静岡県焼津市など16自治体に計約5億8400万円を過大請求。東大阪市などから委託を受けたMICE支店長は、再委託先に勤務実態を改ざんするよう指示していたという。

【6月16日】

●5類移行後初 専門家会合「夏に一定の感染拡大可能性」

 厚労省の専門家組織の会合は16日、5類への移行後初めて開かれた。新規患者数は4月上旬以降緩やかな増加傾向で、36の都道府県で前の週より増え、沖縄県では感染拡大の傾向がみられる。新規入院者数や重症者数も増加傾向で、医療提供体制は全国的に逼迫はないものの、沖縄県の状況には注意が必要。また、オミクロン株のうちの「XBB系統」が大部分を占めていて、今月下旬時点には免疫を逃れやすい可能性が指摘されている「XBB.1.16」が49%になると推定。

 さらに今後の感染の見通しについて、過去の状況などを踏まえると夏の間に一定の感染拡大が起きる可能性があり、医療提供体制への負荷が増大する場合も考えられるとしていて、感染やワクチンによって得られた免疫が弱まる状況や、より免疫を逃れやすい可能性がある変異ウイルスの増加、接触する機会の増加によって感染状況に与える影響にも注意が必要だとしている。

●脇田座長「増加傾向の規模など予測は難しい」

 専門家会合のあとの記者会見で、脇田座長は現在の感染状況について「いま増加傾向が続いており、もう少しこの傾向が続くのではないか。この傾向がどこまで続きどのくらいの規模に広がるかは現時点で予測は難しい」。また、医療体制については「それほど逼迫しているわけではないが、入院者数が少し増加している。高齢者は感染による抗体保有率が若い世代に比べて低く、重症化リスクのある人たちに感染が波及し、医療が逼迫する可能性がある」と指摘した。

 脇田座長によると、会合では「第9波の入り口」と指摘する意見も出たという。だが、現時点では今後の「感染拡大の規模を予測するのは難しい」ため、「第9波」についての評価は示さなかった。全国の新規入院者数は1週間で4330人、集中治療室に入院中の重症者数は7日間平均で79人と、ともに前週から増加。脇田座長は「医療提供体制は全国的に逼迫はしていないが、沖縄では注意が必要だ」とした。

●全国の感染状況、前週の1.12倍 「緩やかな増加傾向」

 厚労省によると今月11日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナ患者数は前の週から2731人増えて2万5163人となった。1つの医療機関あたりの平均の患者数は5.11人で前の週の1.12倍。前の週から増加が続くのは10週連続となる。

 都道府県別では多い順に、沖縄18.41人、鹿児島7.37人、石川6.58人、埼玉6.51人、北海道6.47人などとなっていて、36の都府県で前の週より増加している。東北地方は減少している地域が多いが、首都圏や西日本での増加が目立つ。移行直後と比べると全国では約2倍となっている。このほか、今月11日までの1週間に新たに入院した人は全国で4330人で、前の週と比べて208人の増加となった。

●米FDA、「1価ワクチン」の開発を推奨

 米国では、新型コロナの感染状況の変化に伴い、ワクチンの成分をどのようにするか、FDA(米国食品医薬品局)の専門家会議などで議論が重ねられてきた。FDAは16日、米国国内でこの秋以降、使用する新型コロナのワクチンとして、変異株の「XBB.1.5」に対応する「1価ワクチン」の開発を製薬各社に推奨したことを発表した。

 「XBB.1.5」は複数のオミクロン株が組み合わさり、免疫から逃れやすい性質が指摘されている。今月10日現在、米国内の新規感染者の中で最も多く、およそ4割を占めると推定。複数の製薬会社はすでに「XBB」系統に対応する成分のワクチンの開発を進めていて、今回のFDAの推奨は、開発中のワクチンの有効性に関するデータや、製薬各社が供給できる時期の情報などをもとに行った。FDAの推奨を受け、製薬各社は今後、ワクチン開発をさらに加速させるとみられる。

●9月からの接種、「XBB.1」系統対応のワクチン使用へ

 新型コロナのワクチン接種は来年3月まで無料が継続、5月から高齢者などを対象に接種が進められ、9月からは5歳以上のすべての人を対象にした接種が始まる予定。現在の接種は、従来株に対応する成分と、オミクロン株の「BA.5」などに対応する成分を含んだ「2価ワクチン」で行われている。厚労省の専門家分科会は16日、9月から始まる接種では現在流行の主流となっているオミクロン株「XBB.1」系統だけに対応する「1価ワクチン」を使う方針を決めた。

 理由について分科会では、これまでの「2価ワクチン」よりも「XBB.1」系統に対してウイルスの働きを抑える効果が期待できることや、今後、従来株が流行する可能性は極めて低いことなどを挙げている。一方「5歳以上のすべての人」としている接種の対象者について、厚労省は最新の知見や外国の状況などを踏まえ、9月の接種開始を前に改めて分科会で議論したうえで決めることにしている。

【6月19日】

●新型コロナワクチン接種後に死亡、新たに5人に一時金など支給へ

 新型コロナのワクチンの接種後に死亡した人については、予防接種法に基づいた健康被害の救済制度で、国が因果関係が否定できないと認定した場合には、死亡一時金などが支給されている。厚労省は19日、接種後に間質性肺炎の悪化や急性心不全、急性心筋梗塞などで亡くなった、72歳から91歳の男女5人について、新たに認定することを決めた。

 5人全員が高血圧症や腎臓病などの基礎疾患があったということで、厚労省は、死亡診断書やカルテの記載などを踏まえて、因果関係が否定できないと判断したとしている。接種したワクチンの種類や接種の回数などは明らかにしていない。新型コロナのワクチン接種で、死亡一時金などの支給が認められたのは、今回の5人を含めて20代から90代までの合わせて72人となった。

【6月20日】

●自宅療養で貸し出しのパルスオキシメーター、未返却相次ぐ 千葉

 新型コロナに感染して自宅療養をしていた人に貸し出されていた血液中の酸素の状態をみるパルスオキシメーターについて、千葉県内で返却されないケースが相次いでいて、自治体が速やかな返却を呼びかけている。このうち千葉市は、パルスオキシメーターをおよそ2万2000台所有し、2020年12月から先月まで、新型コロナに感染して自宅療養をしていた人に貸し出してきた。

 療養が終わった段階で郵便で返却することになっているが、市によると、先月末の時点で2割余りにあたるおよそ5000台が返却されていないという。このほか千葉県内では、少なくとも千葉県で1万6200台余り、柏市でおよそ520台、船橋市でおよそ420台が返却されていない。1台の価格は、3500円から1万2000円ほどだという。各自治体は「自治体の財産なので必ず速やかに返してほしい」と呼びかけている。

●外食チェーン、コロナ禍で停滞していた海外進出 再び加速

 外食チェーンの間では、コロナ禍の落ち込みから回復する外食需要を取り込もうと、企業の買収などを通じて海外進出を再び加速する動きが相次いでいる。「丸亀製麺」などを展開するホールディングスは、欧米などで外食需要が回復する中、海外店舗の増加ペースを再び速めていて、昨年度は63店舗の増加。今年度も、この2倍以上にあたる162店舗の増加を計画、英国のピザチェーンなどの買収やカナダでのうどん店の初出店などを予定している。

 回転ずし大手の「くら寿司」は、中国大陸への出店計画を復活させ、6月に上海に初出店した。今後ほかにも、米国を中心に出店を加速し、2030年中に海外店舗を400店舗に増やし、年間1500億円の売り上げを目指す。居酒屋などを展開する「ワタミ」がことし2月以降、台湾と韓国、シンガポールに出店、焼き鳥の「鳥貴族」ホールディングスが、1年以内に米国に出店する方針。コロナ禍で停滞していた外食チェーンの海外進出が再び加速している。

【6月22日】

●RSウイルス感染の子どもが急増 小児病棟では足りず「危機的状況」

 RSウイルスなどの感染症にかかる子どもが急増し、関東では一部の病院で小児病棟が埋まりつつある。医療現場からは「危機的な状況」という声もあがり、医師らは、手洗いなどの感染対策を呼びかけている。RSウイルスは、もともとはインフルエンザと並んで「冬かぜ」の代表と言われていた。近年は流行入りが少し早まる傾向にあり、2021年には夏に大流行した。今年も5月以降、流行の兆しを見せている。

 国立感染研によると、全国3千の定点医療機関から報告された1定点あたりのRSウイルスの患者数は、6月5~11日で2.64人(速報値)で、21年と同程度まで増えている。最多は山口県の7.16人で、奈良県の5.15人と続く。首都圏では東京都が1.72人、千葉県が2.64人、埼玉県が2.53人、神奈川県が1.51人だった。

【6月23日】

●コロナ感染者数、前週比1.1倍 11週連続で増加 沖縄で医療逼迫

 厚労省によると今月18日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は前の週から2451人増えて2万7614人。1つの医療機関あたりの平均の患者数は5.6人で前の週の1.1倍。増加が続くのは11週連続。都道府県別では多い順に、沖縄が28.74人、鹿児島が9.6人、千葉が7.57人、愛知が7.22人、埼玉が7.02人など、32の府県で前の週より増加している。今月18日までの1週間に新たに入院した人は全国で4417人で、前の週と比べて67人の減少した。

 厚労省は全国の流行状況について「全国的に緩やかな増加傾向が続いているほか、5類移行の前後で単純に比較はできないものの沖縄県ではことし1月の第8波のピークに近い水準になっているため引き続き注視したい」としている。

 6月23日発表の定点把握(6月12日~18日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●沖縄で急拡大、搬送困難事例も

 沖縄県内では新型コロナ感染が急拡大している。患者の搬送先を探すのにおよそ1時間かかるケースも発生している。県によると、今月18日までの1週間に県内54の医療機関から報告された新型コロナの患者数は1552人、1医療機関あたりの平均患者は28.74人で、前週から1.56倍に増えた。推計される患者総数は7280人で、全国最悪の水準の感染状況が続いている。県全体の入院者数は今月18日現在で507人で、重症は9人、コロナ専用病床の使用率は57.8%。

 県内の医療機関では医療提供体制が逼迫しはじめ、27の重点医療機関では7か所で救急診療、3か所で一般診療を制限している。また先週、県内では救急車を呼んだ患者の搬送先を探すのに55分かかるケースや病院への照会が10回行われたケースなど、搬送が困難な事例が複数発生しているという。県保健医療部の糸数部長は「感染を防ぐための行動を取ってもらえるよう期待したい。軽症の場合は救急の時間帯の受診は控えてほしい」と呼びかけている。

●専門家「基本的な感染対策、思い出し行動を」

 政府分科会のメンバーで、東邦大学の舘田教授は現在の感染状況について「地域差があるものの感染者の数は全国的に増加している。特に突出している沖縄県では、病床使用率が5割に達し、現場の医師からは『医療体制が極めて逼迫している』と報告されている」と述べた。その上で「小児の診療現場では、RSウイルスやヘルパンギーナなどの患者も増えている。これらの感染症がコロナとともに拡大することで逼迫が起きないよう注意する必要がある」と話している。

 そして「沖縄県以外でも急激な感染拡大が起こる可能性がある。蒸し暑くなる時期を迎えているが、感染リスクが高い場面でのマスクの着用や換気の徹底など基本的な感染対策を改めて思い出し行動してもらうことが大事。高齢者や基礎疾患がある人で、ワクチンを最後に接種してから4か月から半年が経過している人は追加接種を考えてほしい」と話している。

【6月25日】

●コロナ下で高齢者の「フレイル」増加 自粛生活で心身の活力低下

 新型コロナ感染症が流行した2020年と2021年に、高齢者の心身の虚弱(フレイル)が進んでいたとする分析結果を、国際医療福祉大学のグループがまとめた。自粛生活が続く中、懸念されていた「コロナフレイル」の増加が裏付けられたかたちになった。フレイルとは、健康と要介護の中間に位置付けられ、筋力や心身の活力が低下した状態を指す。

 フレイルを防ぐには、運動と栄養、社会参加の三つが重要で、一つでも欠けると衰弱が進むとされる。分析をした同大の広瀬助教(理学療法学科)は「コロナ下で地域活動が中止になり、友人間の交流や外出の機会が減った。社会参加の減少から、健康がドミノ倒しのように崩れている恐れがある」と語る。今後について広瀬助教は「社会活動は継続することが何よりも大事。感染対策に注意しながら、趣味や地域の活動を続けてほしい」と話している。

【6月26日】

●「第9波の可能性」 尾身氏が首相面会 高齢者守る重要性強調

 政府の新型コロナ対策分科会の会長を務めていた尾身氏は26日、岸田首相と首相官邸で面会し、感染状況や今後の見通しについて意見交換した。面会後、尾身氏は記者団に「全国的に微増傾向にあり、第9波が始まっている可能性がある。高齢者をどう守るかが非常に重要になってくる」と述べた。感染状況については、「定点観測のデータをみると、県によって多少の違いはあるが全国的には微増傾向にある」と述べた。

 微増傾向の理由は、新型コロナが「5類」に移ったことで、人同士の接触機会が増えたことだと分析。「(地域的に流行を繰り返す)エンデミックに落ち着いていく可能性もある」とも述べた。尾身氏は「致死率はそんな急激には変わっていない」との見方も示し、社会経済活動を維持しながら、高齢者や基礎疾患のある重症化リスクのある人を守ることが重要だと強調。6回目のワクチン接種を促しつつ、「新規感染者数や死者数を注意深く観察する必要がある」とした。

●松野官房長官「重症化リスク高い方など、積極的に接種検討を」

 松野官房長官は、午前の記者会見で「専門家からは、感染者数が増加傾向にあること、死亡者数の推移を注視する必要があるが、死亡率はG7各国に比べ非常に低い水準にある、定点報告のほか重層的に実態を把握する必要があることなどの指摘があった」と説明した。

 そして「専門家の意見も踏まえ、引き続き感染状況を重層的に把握するとともに、感染拡大が生じても必要な医療が提供されるよう幅広い医療機関で対応する体制への移行を進めていく。また重症化リスクが高い方などに対するワクチン接種を進めており、対象者は積極的に接種を検討してほしい」と述べた。そのうえで「今後、夏に向けて一定の感染拡大が生じる可能性がある。各地域の感染動向を見ながら、自治体や医療関係者と連携し、先手先手で必要な対応を行っていく」と述べた。

【6月27日】

●沖縄、コロナ感染急拡大 専用病床ほぼ満床、患者受け入れ困難に

 沖縄県では、今月25日までの1週間で病院に搬送された新型コロナの患者は157人と前の週のおよそ1.3倍に増え、感染が急拡大している。県内の新型コロナ専用の病床はほぼ満床、多くの病院の救急部門で新たな患者の受け入れが難しくなっている。那覇市消防局によると、搬送先が見つかるまでに照会を4回以上行い、現場に30分以上滞在せざるを得なかった救急搬送困難事案が19~25日に21件、前週から4倍に増えた。

 夏休みの観光シーズンを前に、県内のホテルの中には感染急拡大の影響で予約の申し込みが鈍り、キャンセルが出ているところもある。事業者からは、これ以上の影響の拡大に不安を訴える声があがっている。玉城知事は、26日の記者会見で「このまま感染が拡大し続けた場合、昨年の第7波を超えることも想定しなければならない」と懸念。沖縄を訪れる観光客に対し、「体調不良であれば少し旅行を延期し、十分体調を整えてから来てもらいたい」と呼びかけた。

【6月29日】

●沖縄感染増、シーズン直撃 新型コロナ報告数、突出して最多

 沖縄県は6月29日、19~25日の1週間に報告された1定点医療機関あたりの感染者数が、前週から1.37倍増の39.48人になったと発表。全国で突出している。夏休みシーズンを控え、さらに感染が広がる懸念が強まっている。1週間の感染者の総数(推計値)は1万人に達し、コロナ患者向けの病床使用率は25日時点で65.9%まで上昇。コロナ入院患者は900人前後の高い水準で推移。医療従事者が、感染・濃厚接触で休むケースも相次いでいるという。

 沖縄県医師会は29日に記者会見を開き、「過去にも全国に先行して夏前に沖縄で流行した。今後、全国でも感染拡大が起こる可能性がある」と警鐘を鳴らした。

●沖縄の医師に危機感、5類でも対策訴え

 24時間対応の救命救急センターに勤務する沖縄県立中部病院の山口医師は「昨夏の第7波をしのぐ勢いで感染が拡大している。流行はさらに拡大する可能性がある」と懸念する。第7波では、直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数が全国最多となるなど、沖縄の感染状況は全国で最も深刻となった。

 背景に、「5類」に移行したことに伴う、社会のとらえ方の変化があると山口医師はみる。「5類に移行したからといって、ウイルス自体が変化したわけではないが、『もう5類』と油断してしまっている」と指摘。街でマスクをしない人が増え、換気や手洗いなどが徹底されなくなっていると話す。夏の観光シーズンを控え、「やっと日常に戻ったという人も多いと思うが、今こそ、3年間身につけてきた基本的な個人の感染対策を徹底すべきだ」と語った。

●第8波、自宅での死者1309人 厚労省 70代以上が85%

 厚労省は29日、新型コロナ感染症の流行の「第8波」にあたる昨年11月1日から今年1月31日までの間に、自宅で亡くなった新型コロナ患者が1309人いたと発表した。約85%が70代以上の高齢者だった。厚労省によると、亡くなったのは男性743人、女性566人。80代以上が63.0%で、70代が22.6%、60代が7.3%。

 死亡直前の症状は、軽症か無症状が38.3%、中等症13.4%、重症13.8%だった。死後に陽性とわかった人は31.7%。77.5%の人に基礎疾患があった。ワクチンの接種歴は、0回が16.2%、42.4%は不明。4回接種した人も18.8%いた。自宅療養中に重症化して死亡したケースや、陽性が判明したが、がんや基礎疾患があり自宅での看取りを希望した、高齢者施設内でのクラスターで亡くなった、コロナ以外の要因で亡くなった後に陽性がわかったなどがあった。

【6月30日】

●新型コロナ患者数、緩やかな増加傾向 沖縄、「第8波」超えも

 厚労省によると、新型コロナの全国の感染状況は先月25日までの、1週間の医療機関1つあたりの平均患者数が6.13人と前の週の1.09倍となり、12週連続で増加した。このうち沖縄県が39.48人と全国で最も多く、ことし1月の第8波のピークを超える水準で感染が急拡大している、次いで、鹿児島県11.71人、熊本県8.75人、愛知県8.03人、千葉県7.77人などと、39の都府県で前の週より増加している。

 今月25日までの1週間に新たに入院した人は全国で4567人で、前の週と比べて29人の増加。厚労省は「全国ではゆるやかな増加傾向が続いているほか、沖縄県ではことし1月の第8波のピークを超える水準になっている。去年は夏に全国的に感染が拡大したので引き続き注視したい」としている。

 6月30日発表の定点把握(6月19日~25日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●沖縄、別の感染症も流行 小児専門病院逼迫

 6月に入り10歳未満や10代の間で新型コロナの感染が急速に広がっているほか、風邪に似た症状を引き起こすRSウイルス感染症や、ヒトメタニューモウイルス感染症も流行している。このため小児専門の病院では対応に追われていて、沖縄本島南部の南風原町にある「県立南部医療センター・こども医療センター」では子ども向けの集中治療室(PICU)が8床あるが、6月29日時点で満床となっている。

 小児感染症内科の張医師によると、6月25日には190人近くの患者が救急外来を利用し、このうちおよそ7割が子どもでその多くが発熱の症状を訴え、5人程度が入院した。「子どものウイルス性感染症は時期に応じて主要な流行が決まっていて同時に流行することは珍しいが、この1か月ほどは新型コロナとRSウイルス感染症などが流行している。3年間行われてきた感染対策が解除され、感染症が広がりやすくなっていることが原因の1つだと思う」と指摘した。

●沖縄の医師「5類への移行で大規模な救急病院に患者集中」

 厚労省の専門家組織メンバーで沖縄県立中部病院の高山医師は、沖縄県内の感染状況について「すべての年齢層に広がり、減少へと転じる兆しはない。免疫を逃避する能力が高まったXBBウイルスが県内流行の主流になっていて、過去に感染をしていても再び感染するリスクが高まっている」。医療の現状について「行政による入院調整機能が無くなったことで、規模の大きな救急病院に患者が集中する傾向が強まり、一部医療機関が逼迫してしまっている」と指摘した。

 そのうえで「院内感染で使用できる病床が減ってしまうことや、コロナ以外の感染症で子どもが重症化する例が増えていることも大きな課題。今後、さらに感染拡大した際やインフル流行と重なるとさらに厳しい状況になることも予想され、高齢者や子どもの重症患者など個別の入院調整のあり方を議論しておく必要があるのではないか」と訴えた。

●都内クリニック「コロナ検査を希望しない患者も」

 東京・渋谷区のクリニックでは大型連休明けの時期は新型コロナの検査を受けて感染が確認された人はほとんどいなかったが、その後、徐々に増加していて、今週は1日に20人ほどに検査を行い、このうち陽性が確認されるのは6人~7人ほどだという。ただ5類移行後、検査の費用は自己負担となっていて、検査を希望しない患者もいるということで、実際にはさらに多くの患者が感染している懸念もあるようだ。

 クリニックの宮田理事長は「学校や職場などさまざまな場所で感染が広がっていることも懸念される」と話す。また、ヘルパンギーナや手足口病などほかの感染症が確認されるケースも増えていることから、のどの痛みを鎮める薬や解熱剤などが入手しにくい状況になっている。理事長は「患者さんが処方箋を持って薬局を回るような状況も発生している。周囲に感染を広げないためにも、まずはしっかりと検査を受けてほしい」と呼びかけている。

●小池都知事「感染者急増でも対応する体制は確保」

 小池知事は6月30日の定例会見で、都内の感染者数は前の週に比べてほぼ横ばいであることなどから、医療提供体制への大きな負荷にはなっていないという認識を示した。そして「コロナの教訓は、急に増える時は一気に増えることであり、もしそのような状況に陥った時でも、機動的に対応するための体制は確保している」と述べ、手洗いなどの基本的な感染防止対策を行うよう呼びかけた。

●政府分科会 舘田教授「第9波となる可能性」

 分科会メンバーで、東邦大学の舘田教授は「全国的には増加傾向はまだ緩やかだが、沖縄県では第8波以上の水準で感染が拡大している。今後ほかの地域でも感染が急増し、第9波となる可能性がある」とし、「なぜ、沖縄で感染者が増えたのか分かっていないが、これまでも全国と比べ早い時期に感染拡大する傾向があった。感染により獲得した免疫が失われたり、暑くてマスクをつけにくかったりして、増加につながった可能性がある」と分析。

 その上で「子どもの感染症が全国的に広がり、入院する子ども患者が増えていて、これがコロナ拡大と重なれば病床逼迫も考えられる。感染状況の最悪リスクに備え、行政が入院調整を支援する取り組みを進めることが重要」。感染拡大への備えとして「高齢者や基礎疾患がある人は、早めの追加接種を検討して欲しい。また重症化リスクの低い人も、風邪を引いたと思ったらコロナ感染を疑い、慎重な行動を取ることが大事」と話す。

●松野官房長官、先手先手で必要な対応 岸田首相、必要な対策取るよう指示
 
 松野官房長官は、午後の記者会見で「今後、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性があり、引き続き先々の感染動向を見据えながら、先手先手で必要な対応を行っていく」。また、沖縄県の状況ついて「入院者の増加や院内クラスターの発生により医療に一定の負荷がかかっている。沖縄県では県民への基本的な感染対策などの呼びかけに加え、医療提供体制の確保に向けた取り組みを進めており、引き続き県と密接に連携をとりつつ適切に対応していく」と述べた。

 岸田首相は30日夕方、加藤厚労相や後藤新型コロナ対策担当相らに、沖縄県と連携しながら必要な対策を取るよう指示した。厚労省は、今後、沖縄県内の医療提供体制が十分かどうか、県や医療関係者などから聞き取りを行うなど状況の把握に努め、対策を検討する方針。また去年、夏の間に全国で感染が拡大したことも踏まえ、換気の徹底など基本的な感染対策を呼びかけるとともに、沖縄県をはじめ各地で高齢者などへのワクチン接種を進めていきたいとしている。

 
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 5類移行後の「定点把握」は、感染状況の傾向や水準を把握する事が目的で、日々の正確な感染者数を表していない。これまでの1日ごとの感染者数を集計する医療機関や保健所の作業も大変であったが、「全数把握」に慣れていたため、定点あたりの数を聞いてもピンとこない。ただし、定点の数から推計患者を出すことはできるので、推計を参考にしてもらえば良いとの考えもあるようだ。

 しかし、オミクロン株が主流となって軽症者や無症状が増え、検査を受けない人も増えているという。5類移行後に、国民の意識も変わってきているので、「9波の可能性」とか「9波の入口」という話もどこか、別の世界かと思ってしまう。

 5類移行後はコロナ死者の日々の公表はなくなり、過去5年のデータから予測される死者数と比べ、どれほど実際の死者が増えたかをみる「超過死亡」の公表に代わっている。死亡届などをもとに厚労省が集計する「人口動態統計」を使うそうだ。従来の方法では超過がわかるのは2カ月後、死因別では5カ月後になるが、厚労省は、迅速にコロナの動向を把握するため、1カ月以内に示すことにしたという。

 6月9日に移行後初となる分析を公表し、「超過死亡は認められなかった」という。つまり深刻な流行拡大は起きていないとされている、これもピンとこない。1カ月後に死者のトレンドがわかっても、対策ができるのかという問題もある。

 6月26日の尾身会長の会見で、英国では感染拡大の波を経るごとに徐々に亡くなる人の数が少なくなり、感染が地域の中で一定のレベルに落ち着く「エンデミック」に移行してきている可能性があると述べた。「日本も第9波による死者数が第8波を下回るようであれば、英国から遅れてエンデミックの方向になっていくのではないか」という発言に期待したい。

2023年6月19日 (月)

新型コロナ2023.05 「5類」移行

  新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。3年余り続いたコロナ対策は大きな転換点を迎えた。移行後、感染者への入院勧告・指示、感染者・濃厚接触者への外出自粛の要請はなくなり、感染対策は個人の判断に委ねられる。厚労省は26日、定点あたりの新型コロナ新規感染者数が、15~21日は全国で3.56人だったと発表。前週の2.63人から約1.4倍に増えた。4月上旬から緩やかな感染拡大が続いている。

 2023年5月1日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.04 漸増傾向」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】


【5月1日】

●米国 入国時のワクチン接種証明、5月11日から不要に

 米国のバイデン政権は、新型コロナの感染状況が落ち着いてきたとして、5月11日に「国家非常事態宣言」を解除するのに合わせて、空路で入国する外国人に義務づけていたワクチンの接種証明の提示を不要にすると1日、発表した。理由についてホワイトハウスは、2021年1月以降、新型コロナによる死者は95%、入院患者数は91%近くそれぞれ減少したほか、世界的に見ても死者数が最低水準となっているためとしている。

 ジョー・バイデン米大統領 出典:ウキメディア・コモンズ

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 そのうえで国民の80%以上が少なくとも1回の接種を受けているとして「措置が導入された状況とは異なる段階にきている」としている。ホワイトハウスは、入国の要件などの詳細は後日発表するとしている。

●新型コロナ「後遺症」、診療報酬加算へ

 5類への移行後も流行は今後も続くと見込まれることから、厚労省は新型コロナの後遺症への対応を強化する方針。具体的には、全国各地で後遺症の診療にあたる医療機関のリストを今週中にもとりまとめて厚労省のホームページなどで見ることができるようにするほか、後遺症の患者を診療した医療機関に支払われる診療報酬を5月8日から加算する。

 また、後遺症についての国内外の最新の研究成果が診療に反映されるよう、医療機関向けに随時、情報を提供していく方針。一方、患者を受け入れている医療機関では、後遺症に悩む人たちへの家族や周囲の理解と支援が大切だと指摘している。

●5類移行 「脱マスク」に温度差

 新型コロナが感染症法上の「5類」になる8日から、接客サービス業の従業員にも「脱マスク」の動きが広がる。政府が着用を「個人の判断」とした後も、多くの企業は従業員に着用を求めていた。業界にはコロナ前の日常に戻したいとの期待が大きいが、一部では「お客様への配慮」として、着用する動きも残る。

 観光業界は、ようやくコロナ禍からの回復に向かっている。「脱マスク」の流れは、旅行需要をさらに喚起するとの期待が業界にはある。小売りや銀行業界でも緩和する動きが目立つ。判断が分かれるのは百貨店業界。鉄道の乗務員もJR北海道、東日本、東海、西日本、九州は着用を個人の判断とする一方、JR四国は乗務員、駅員とも原則マスク着用を続けるという。

●コロナ専門の病棟、半数が「縮小」「廃止」 全国の大学病院

 全国の大学病院にある新型コロナ専門病棟の半数が「すでに廃止」か「縮小」されていることが分かった。新型コロナが感染症法上の5類に移行する8日以降は、診療報酬の特例加算が削減され、コロナ患者の受け入れが広がるかは不透明。コロナ患者の看護は人手がかかる。診療報酬などが減ることから、コロナ患者を受け入れるほうが赤字になる可能性がある。

 調査をした全国医学部長病院長会議の横手会長(千葉大病院長)は会見で「患者を診れば診るほどマイナスとなる状況は変えてもらいたい」と訴えた。

【5月2日】

●過大請求最大16億円か ワクチン業務などKNT発表

 ワクチン接種など新型コロナ関連業務の委託料を自治体に過大請求していた問題で、近畿日本ツーリスト(KNT)は2日、水増し額が最大約16億円に上る疑いがあると発表した。コールセンター業務で実際の人数より多く請求していた。契約についての知識不足と、営業目標を達成したいとの意識が原因だとしている。同社はワクチン業務だけでなく、軽症者の収容施設の運営なども請け負っており、3年間の受託事業の合計額は約1300億円にのぼる。

 近畿ツーリスト ロゴ 出典:ウキメディア・コモンズ

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 2日に記者会見を開き、社内点検の結果を公表した。2020年4月~23年3月に扱った762団体、2924件の受託事業を調べたところ、すでに判明している大阪府東大阪市や静岡県焼津市を含む16自治体に5億8400万円を水増し請求していた。速やかに返納するとしている。16自治体とは別に、約70自治体と一部の民間企業に最大で計10億円の過大請求をしていた疑いも判明した。

【5月3日】

●ワクチン証明偽造疑い ボルソナロ・ブラジル前大統領宅を捜索

 おととし11月から去年12月にかけて、ブラジル保健省の新型コロナのワクチンをめぐるデータを不正に書き換え接種証明書を偽造した疑いで、ブラジルの連邦警察は3日、首都ブラジリアのボルソナロ前大統領の自宅などを捜索した。またデータの書き換えに関与したとして、ボルソナロ氏の当時の側近ら6人を逮捕したという。

 ジャイル・ボルソナロ 前ブラジル大統領 出典:ウキメディア・コモンズ

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 地元のメディアは、去年12月ボルソナロ氏や、その家族が米国に渡航する直前にワクチンの接種証明書が偽造されたと伝えている。ボルソナロ氏は地元メディアに対し「私はワクチンを接種していないし、接種証明書を偽造したこともない」と述べて関与を否定した。氏を巡っては、ことし1月にブラジル議会などが襲撃された事件を扇動した疑いや、サウジアラビア政府から贈られた高額の宝飾品を私物化しようとした疑いでも捜査が進められている。

【5月5日】

●WHO、新型コロナ「緊急事態宣言」終了を発表

 WHOのテドロス事務局長が5日、3年3カ月に及んだ「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の終了を宣言した。だが、700万人近い命を奪ったこのウイルスは、いまも根絶されていない。会見では、緊急事態が3年以上に及ぶ中で、ワクチン接種や感染により集団免疫が高まり、新型コロナによる致死率が下がり、医療システムへの負荷が緩和されてきたと指摘。「ほとんどの国でコロナ禍の前のような暮らしに戻ることができている」との認識を示した。

 ただし、「緊急事態」終了は、危機が去ったという意味ではないと強調。新型ウイルスは今後も地球上にとどまり変異を続けており、「新たな感染者や死者の増加をもたらすリスクは残る」と警告。そして、各国が「緊急対応」ではなく、他の感染症と並んで「管理」する局面に移行する時期に入ったとの考えを示し、警戒を解かないよう呼びかけた。WHOに報告された新型コロナ死者は690万人超だが、氏は「実際の人数はその数倍、少なくとも2千万人だ」とも述べた。

●尾身会長「判断は適切、ただ終息した訳ではない」

 WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を終了すると発表したことについて、政府分科会の尾身会長は「世界的に感染者数が少しずつ減り、直近では亡くなる人の数も減って医療の負荷が軽減されてきている。日本でも感染症法上の位置づけを『5類』に移行する対応をとる中でもあり、WHOの判断は適切なのではないか」と述べた。

 その上で「ただ、これで新型コロナの感染が終わった、終息したという訳ではない。今後、感染が低いレベルに向かっていくことを期待したいが、これからも感染者数が急増し、医療が逼迫する事態になってしまうこともあり得る。市民自身が個人の判断で、いままでの経験を元に感染リスクの高い行動を控えめにするなどの対応をとることが、これまでと変わらず有効な対策になると思う」と指摘した。

●コロナ下3年の死、都市より地方で拡大

 新型コロナの感染が広がった3年間に全国で亡くなった人は、例年の水準を大きく上回っていた。コロナだけでなく、循環器や呼吸器の病気、老衰といった死因で亡くなる人も増えた。人口当たりの死者数の増加は、感染が拡大するにつれ、高齢者の多い地方に広がっていた。2020年初めから2022年末までに、都道府県から報告されたコロナの死者は5万7千人。一方、コロナ以外の死因も含めた国内すべての死者は、厚労省研究班が予測する例年の水準より13万人以上多かった。

 感染が広がり始めた2020年は、予測より約3万5千人少なかった。未知のウイルスへの恐怖から感染対策が徹底されたことなどが要因とみられる。しかし、2021年にデルタ株が登場すると感染は拡大。死者は予測より約5万2千人多くなった。2022年には地方にも感染が広がり、予測より約11万8千人多い人々が亡くなった。直前の5年間のデータから例年並みの死者数を予測し、人口動態統計として報告された死者数と比較。多いと「超過死亡」、少ないと「過少死亡」と呼ぶ。

●死因、循環器の病気や老衰が増加

 死因別で特に多かったのは循環器の病気で、2022年11月までに約2万3千人の人々が例年より多く亡くなった。老衰による死者は約1万8千人増、呼吸器の病気による死者は約1万1千人多かった。感染を機に衰弱、誤嚥性肺炎になったり、寝たきりになったりしたことで増えた可能性がある。心筋梗塞や脳卒中といった循環器の病気は、治療が急がれるのに医療逼迫で対応が遅れたり、コロナ感染によって血栓ができる合併症にかかったりする例があったとみられる。

 感染急拡大した2021年以降は、ベッドが満床で救急搬送に時間がかかったり、治療開始が遅れたりする例も続出。2022年には、高齢者が感染しても施設や自宅で療養する流れが強まった。医療逼迫で通常の医療が受けられなかったとみられる。当初は重症化が早く、そのまま亡くなって死因がコロナになる例が目立った。2022年にオミクロン株が主流になると体がダメージを受け、時間をおいて亡くなる人が増加、死因がコロナ以外になった例が増えた可能性がある。

●ワクチン2回接種、8割完了

 首相官邸などによると、今年4月20日までに全人口の80.2%にあたる1億337万人が2回のワクチン接種を済ませた。65歳以上では92.4%。ただ、3回目以降の接種率は下がっている。65歳以上は91.3%が3回目の接種をしたが、全体では68.6%で、4回だと半数に満たない46.5%だった。感染力が高いオミクロン株に対応するワクチンの接種率も44.9%にとどまっている。

 都道府県では、3回接種率が最も高かったのは秋田県で80.2%。山形県の78.0%、岩手県の77.5%と続いた。逆に低かったのは沖縄県の51.6%や大阪府の62.3%など。沖縄県のワクチン・検査推進課は「20、30代を中心に、若い年齢層の接種が進まなかった」としている。

【5月6日】

●ウィズコロナに移る各国 米も緊急事態解除へ 経済復調の中国

 WHOは5日、新型コロナの「緊急事態」終了を宣言した。多くの国では、すでに規制が緩和や撤廃され、「ウィズコロナ」が定着しつつある。いまも1週間に約44万人の新たな感染が報告されているが、世界全体でみると感染者数や死者数が最も低水準の状態が続いている。米政府は今月11日、新型コロナ感染拡大に対処する公衆衛生上の「緊急事態宣言」の期間を解除する。ワクチンや検査、治療薬などは、今後は自己負担になるケースが出てくる。

 中国政府は昨年末、3年近くに及んだ「ゼロコロナ政策」を転換。軽症者の自宅隔離を認めたり、地区をまたぐ行動履歴の確認を撤廃した。今年1月には入国者に義務づけた隔離を撤廃。1~3月期の実質経済成長率が4.5%と経済正常化が進んでいる。英国のイングランドでは公共施設でのマスク着用義務が昨年1月に撤廃され、同2月には全ての法的規制を解除。他の地域でも、昨年5月迄には全ての義務が撤廃されている。

【5月7日】

●Jリーグ、感染対策ガイドライン廃止へ 5類移行受け

 2020年5月に策定された「Jリーグ新型コロナ感染症対応ガイドライン」は、選手やスタッフを対象にした検査の手順や、チームの関係者が陽性判定を受けた場合の対応、それに試合における観客数の制限などが細かく定められ、すべてのクラブがこれにしたがって活動してきた。今シーズンはおよそ3年ぶりにすべての席で声出し応援ができ、3月からは声出し応援の際のマスクの着用を個人の判断に委ねている。そのうえで5類移行をめどに、ガイドラインの運用自体を廃止することにしている。

【5月8日】

●新型コロナ きょうから「5類」に移行

 新型コロナの感染症法上の位置づけについて、厚労省は外出自粛の要請や入院勧告などの厳しい措置をとることができる「2類相当」として対策にあたってきたが、8日、季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。移行後、感染対策は個人の判断に委ねられる。これまでのように限られた医療機関で患者を受け入れる体制から幅広い医療機関で対応する体制を目指し、無料にしてきた医療費の窓口負担分については検査や外来診療の費用などが自己負担になる。「外来医療費の比較」の図の出典は、NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 流行状況の把握は、「全数把握」から指定医療機関が1週間分の感染者数をまとめて報告する「定点把握」に変更される。厚労省の発表は週一回、毎週金曜日、初回は19日の予定。「定点把握」の図の出典は、NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 一方で、今後も流行を繰り返すことが予想されることから、厚労省は感染したあとの療養期間の目安として、発症翌日から5日間は外出を控えることを推奨する。「療養期間」の図の出典は、NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 移行にあわせて、政府の対策本部や感染対策の「基本的対処方針」も廃止、3年余り続く国のコロナ対策は大きな節目を迎えた。 

●高齢者ら高リスク、懸念なお

 重症化リスクの高い高齢者らへの対策は、5類移行後も続ける必要がある。昨秋に感染者の把握方法が変わり、検査をしない人も増えた。感染者の検出率が下がり、実際の感染者数はもっと多かったと推測されている。重症化率や致死率は下がってきたが、高齢者ほど高く、厚労省発表の昨夏時点の80歳以上の致死率は1.69%。沖縄県で2022年に亡くなったコロナ患者約400人のデータによると、7割超は70歳以上で、推定された感染経路は入所施設約4割、医療機関約3割だった。

 日本では75歳以上の後期高齢者が1900万人超と、高齢化が著しく進む。高齢者らハイリスクの人たちをいかにコロナから守るか、これからが正念場だが、懸念材料は多い。感染が拡大すれば、高齢者も多く感染して重症化しやすい。死者を増やさないためには、高齢者施設や病院でのクラスター発生を抑えることが重要になる。

●高齢者向け接種、今年度分始まる

 高齢者らを対象にした2023年度の新型コロナワクチンの接種が8日、始まった。接種の目的は感染予防から重症化予防に重きを置き、年2回行われる。接種対象は、65歳以上の高齢者や基礎疾患があるなど重症化リスクの高い人、こうした人に接する機会が多い医療機関や高齢者・障害者施設の従事者。接種にはオミクロン株対応のワクチンが使われる。今回の接種は8月まで、2回目は9月以降に予定されている。それ以外の人への接種は、9月以降に年1回の機会が設けられる。

●GW、コロナ前水準 JR利用者・高速交通量

 JR旅客6社は8日、大型連休中(4月28日~5月7日)の新幹線や在来線特急などの利用状況を発表した。各社の利用者は前年よりも3~4割程度増え、コロナ前の2018年と比べても94%まで回復。記録が残る1990年以降では、1日あたりの利用者数も過去7番目に多かったという。JR東海では利用者数が2018年に比べて100%まで回復。東海道新幹線の利用者数は356万7千人で2018年比101%とコロナ前をわずかに上回った。

 高速道路各社もこの日に連休中(4月28日~5月7日)の交通量を発表した。全国の主要40区間では1日の平均交通量は4万2千台(前年比106%)だった。最も長かった渋滞は3日の関越道下り線の藤岡ジャンクション(群馬県)付近で54キロだった。

●最後の全数把握

 新型コロナの「5類移行」に伴い、これまでの「全数把握」による毎日の感染者数の発表は2023年5月8日(月)が最後となった。死者数と重症者数の発表は、5月9日(火)が最後。以下6枚の図の出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【5月9日】

●衆院本会議、約3年ぶり全議員出席し質疑 5類で制限解除

 衆議院本会議では、新型コロナの感染拡大を受け、2020年4月から、法案などの採決の際をのぞいて、出席を半数程度の議員に限る措置が取られてきたが、「5類」に移行したことを受け、措置が解除された。9日午後、解除後初めてとなる本会議が開かれ、およそ3年ぶりに、すべての議員が出席できる形で質疑が行われた。また、演壇に設置されていたアクリル板も取り外され、感染拡大前の通常の状態に戻った。

【5月10日】

●コロナ宣言解除でメキシコ越境者増? 米政権、移民規制を強化

 バイデン米政権は10日、他国で亡命申請をせず不法に入国した人を退去させることを盛り込んだ新たな移民規制を発表した。新型コロナの「緊急事態宣言」を11日に解除するのに伴い、メキシコからの越境者が急増することを見据えて12日から実施する。政権は移民政策で右派、左派の双方から批判を受けており、難しいかじ取りが続く。

●オミクロン株「BA.5」系統、高熱では増殖しにくい 東大など

 オミクロン株の「BA.5」系統は、高熱の状態では増殖しにくいとする実験の結果を、東京大学などのグループが国際的な科学雑誌で発表した。グループは、ヒトのiPS細胞から肺の細胞を作って、デルタ株やオミクロン株の「BA.5」と「BQ.1.1」を感染させ、ウイルスの増え方を調べた。その結果、平熱に近い37℃ではどの変異ウイルスも2日後には10万から100万倍に増えた。

 一方で、40℃では、デルタ株は37℃のときと同様に増えたが、「BA.5」の増加は1000倍にとどまり、「BQ.1.1」は増えなかった。グループは、オミクロン株は高熱で増殖しにくく、デルタ株などに感染した場合に比べて重症化する人の割合が少ないことに関わっている可能性がある。オミクロン株で重症化する人の割合が低かった理由の解明につながる可能性があるとしている。

【5月11日】

●「コロナ感染状況落ち着いた」 米国、国家非常事態宣言解除

 米国のバイデン政権は3年前から続けてきた「国家非常事態宣言」を11日いっぱいで解除する。背景には、ピーク時の2021年1月以降、新型コロナ死者が95%減少するなど感染状況が落ち着いてきているほか、国民の80%以上が少なくとも1回のワクチン接種を受けていることなどがある。これにともないコロナ禍で続いてきた様々な措置が解除されることになり、空路で入国する日本人を含む外国人に義務づけられていたワクチン接種証明の提示も不要になる。

 このほか連邦政府職員などを対象にしたワクチン接種の義務化や、新型コロナの検査キットの無料配布が終了するほか、各州や自治体の感染状況の国への報告義務もなくなる。ただ、専門家などからは検査キットの無料配布や報告義務がなくなることで、再び感染が拡大した場合の把握や対応に遅れが出るのではないかと懸念の声も出ている。

●韓国、コロナ隔離義務解除 警報レベル引き下げ

 韓国政府は11日、6月から新型コロナの警報レベルを、最高段階の「深刻」から「警戒」に1段階引き下げると発表した。コロナ感染者の隔離義務解除などが柱。街頭ではマスクをつけずに歩く人が多く、コロナ前の日常が戻りつつある。「3年4カ月ぶりに国民が日常を取り戻すことになりうれしく思う」。尹錫悦大統領は11日、コロナの対策本部の会議で述べた。WHOが緊急事態の終了を宣言したことを受け、韓国でも対策の緩和を決めた。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領 出典:ウキメディア・コモンズ

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 現在7日間の感染者隔離義務は解除され、5日間の隔離の「勧告」となり、個人の裁量に任される。一方でコロナの検査や治療への公費支援は、当面継続するという。マスクの着用義務は段階的に引き下げられており、今年1月に屋内での着用義務を解除。3月には公共交通機関での義務も解除された。今回、感染時のリスクが高い患者がいる、入院が可能な医療機関などの施設では着用義務を維持する一方、それ以外の医院や薬局では解除される。

●新型コロナ対応の記録公表 政府分科会尾身会長ら約90人が執筆

 政府分科会の尾身会長などの専門家や、全国の自治体の担当者などが、これまでの対応を振り返る記録を、まとめて公表した。この記録は、2020年以降の新型コロナの対応について、政府分科会のメンバーの専門家や政府や全国の自治体の担当者など、およそ90人が執筆。記録では、当初の対応から感染状況を把握する体制や保健所や医療の体制、ワクチンや治療薬の確保、それに、社会生活への影響まで、当事者が実際に行った対応と得られた教訓が記されている。

 尾身会長は、リスクを評価し取るべき対策の提言が専門家の役割だとしたうえで、布マスクの全世帯配布などを例に「専門家の意見を聞いたうえで、政府が対策の方針を決め、その理由を説明するという明確な意思決定プロセスを確立しておく必要がある」と指摘。また、脇田座長は、科学的に十分に精査されていない内容の資料が厚労省から突然出てきたこともあり、リスク分析と評価する専門家の思いと、厚労省の立ち位置との折り合いに苦労したなどと振り返っている。

【5月12日】

●企業純利益、最高水準に 3月期見通し コロナ後・円安影響

 コロナ禍からの回復や歴史的な円安を追い風に、上場企業の2023年3月期決算は、最終的なもうけを示す純利益が過去最高水準になる見通し。業績の重しになっている資源高や半導体不足が今後は和らぎ、好調が続くと予想する企業が多い。11日までに発表した703社(53.7%)と、未発表企業の業績予想などをもとに試算。売上高は前年比14.2%増、営業利益は4.2%増となる見込み。

 コロナ禍での行動制限で大きな打撃を受けていた非製造業が著しく改善。空運業は純損益が3年ぶりに赤字から黒字に転換、陸運業は純利益を10倍以上増。円安や資源高の影響で、商社は外貨で稼いだ分が円換算で膨らんだほか、原料炭などの資源やエネルギーの価格高騰で、過去最高益の更新が相次いだ。一方、電気・ガス業は赤字に転落。非製造業全体での純利益は34.7%増。製造業も円安が輸出を後押しするなどし、売上高が16.9%増加。だが、仕入れコストの急増などで純利益は5.5%減。

【5月14日】

●大型連休 成田空港の国際線利用、コロナ禍前の半分程度まで回復

 東京出入国在留管理局成田空港支局によると、先月28日から今月7日までの10日間に成田空港の国際線を利用した人は56万6000人余りだった。コロナ前の2019年は、大型連休の11日間で109万人余りで、今年はこの半分程度まで回復したことになる。利用者の内訳は、日本人がおよそ19万人、外国人がおよそ37万6000人で、出国先は韓国が最も多いおよそ19%。続いて米国、台湾だった。

【5月17日】

●4月 訪日外国人旅行者194万人余、前月比13万人増 回復傾向続く

 日本政府観光局によると先月、日本を訪れた外国人旅行者は推計で194万9100人と、前の月より13万人余り、率にして7%増えた。感染拡大前の2019年の同じ月と比べると33%少ない水準だが、去年10月に観光目的の個人旅行が解禁されるなど、水際対策が大幅に緩和されたことで増加傾向となっている。

 国や地域別では、韓国が最も多く46万7000人、次いで、台湾が29万1600人、米国が18万3900人。日本政府観光局では、先月は東南アジアや欧米など各国で祝日があったため、旅行需要が高まったことや、航空便の増便などが主な要因だと分析している。一方、2019年の外国人旅行者全体の3割を占めていた中国からの旅行者は、日本への団体旅行が制限されていることなどから10万8300人にとどまっている。

●ことし1~3月 日本人旅行者の国内消費額、コロナ禍前上回る

 観光庁によると、ことし3月までの3か月間に日本人が国内を旅行中に宿泊や買い物などで消費した金額は、4兆2331億円。これは去年の同じ時期の1.8倍にのぼる。また、感染拡大前の4年前、2019年の同じ時期を0.5%上回った。3か月ごとの消費額をまとめているこの調査で、コロナ禍前の水準を上回ったのは今回が初めて。

 観光庁は、年明けに再開した国の観光需要の喚起策「全国旅行支援」が呼び水となって、旅行に伴う消費が伸びたことが主な要因だとしている。また、旅行で支出する金額は、1人当たり4万2277円と、感染拡大前の2019年の同じ時期を21%上回っている。水際対策が緩和されてから日本を訪れる外国人旅行者が急速に増加し、インバウンド消費が拡大しているが、こうした中で日本人旅行者の消費についても回復の動きが鮮明になっている。

●東証3万円台回復、1年8カ月ぶり 脱コロナ追い風

 17日の東京株式市場で、日経平均株価が約1年8カ月ぶりに3万円台を回復。円安や「脱コロナ」の動きを追い風に企業業績が堅調なことに加え、企業が自社株買いなど株主還元の姿勢を強めていることが株高につながっている。日経平均は年初から5千円近く上がった。新型コロナの規制緩和で客足が戻り、業績を急回復させた「脱コロナ」銘柄の上昇が目立つ。

 業種別では鉄道会社などの陸運が年初から16%上昇。百貨店などの小売り(13%)や空運(9%)も伸びた。金融緩和も株高を支える。日本銀行の新体制が4月、大規模緩和の継続を決めたことで円安が進んだ。電機や自動車など輸出銘柄が買われた。日経平均はバブル期の1989年に3万8915円の史上最高値をつけた後、長く低迷。大規模な財政・金融政策を受けて2021年2月、3万円台を回復したが、欧米が金融引き締めに転じたため伸び悩んでいた。

●GDP年1.6%増 旅行や外食好調 1〜3月 3四半期ぶりプラス

 2023年1~3月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)で前期(2022年10~12月期)比0.4%増、年率換算で1.6%増となった。世界経済の減速に伴い輸出は落ち込んだが、コロナ禍からの回復で旅行や外食など個人消費が全体を押し上げた。内閣府が17日、1次速報を発表した。2022年10~12月期が下方修正されて年率換算で0.1%減とプラスからマイナスに転じたため、3四半期ぶりのプラス成長になった。

 GDPの半分以上を占める個人消費は0.6%増。行動制限のない年末年始となりサービス消費が好調だったほか、半導体不足で不振だった自動車の販売が回復。一方、物価高による節約志向の高まりで食品や家庭用消耗品、衣類などは減少。賃金や社会保険料などの雇用者報酬は実質1.3%減少、6四半期連続でマイナス。賃金は伸びても物価上昇に追いつかない状況が続く。設備投資は0.9%増と、2四半期ぶりにプラス。輸出は4.2%減と、6四半期ぶりのマイナス。輸入は2.3%減。

【5月18日】

●東京都、5類移行後初の「定点把握」 感染状況は?

 東京都は18日、今月8日から14日までの感染状況や専門家が分析するモニタリング結果について公表した。新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行して初めて、定点把握による感染者数を発表し、今月14日までの1週間で1医療機関あたりでは2.40人だった。前の週に比べて1.7倍になっていて、専門家は「緩やかな感染拡大傾向にあるが大型連休の影響もあるため今後の動向に注意が必要だ」としている。

 18日発表の東京の定点把握と全数把握 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【5月19日】

●コロナ定点感染数、5類移行後初公表 厚労省「緩やかに増加」

 厚労省は19日、新型コロナについて、一定の医療機関で継続的に把握する定点あたりの新規感染者数が、8~14日は全国で2.63人(速報値)だったと発表した。前週は1.80人(参考値)で、1.46倍に増加だった。前の週より増加するのは6週連続で、厚労省は「比較的、低い水準ではあるが、4月以降、緩やかな増加傾向が続いている。大型連休の影響もあるので今後の推移を注視したい」としている。8日にコロナの感染症法上の分類が5類に移行後、初めての公表となる。

 都道府県別では多い順に、沖縄県6.07人、石川県4.90人、北海道4.36人、新潟県4.30人、山梨県4.22人などとなっていて40の都道府県で前の週より増加している。厚労省は、流行状況を継続的に把握する指標の一つとして「新規入院者数」の発表を新たに始めた。5月14日までの1週間に新たに入院した人は全国で2330人で、前の週と比べて55人の減少とほぼ横ばい、厚労省は入院が必要な人が急増するような流行状況ではないとしている。

 5月19日発表の新規感染者の定点把握 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【5月20日】

●コロナ感染者数、毎日推計し更新のサイト開設 モデルナ日本法人

 モデルナ・ジャパンが今月ウェブサイトを公開し、民間の医療情報データベースに登録された全国およそ4200の医療機関からのデータをもとに、専門家の監修を受けて統計的に推計した、全国や地域ごとの感染者数を毎日更新して示している。また、年代別の感染者数の推計や検査を受けた人のうちの陽性者の割合「陽性率」も掲載されている。

 18日までのデータでは、全国の感染者数は1週間平均で1日当たりおよそ2万4000人と推計されていて、モデルナ・ジャパンは「これまで慣れてきた感染者数の形でデータを示すことが、最新の流行状況を正しく把握し、適切に行動するために重要と考える」としている。

【5月22日】

●羽田空港 新型コロナで閉鎖の国際線施設、需要回復に伴い再開へ

 羽田空港では、国際線の発着を増やすため、国内線専用だった第2ターミナルが増築され、3年前の2020年3月に国際線用の出発ロビーや到着ロビーなどの施設がオープンした。新型コロナの影響でおよそ2週間後に閉鎖された。それ以来、国際線の発着は第3ターミナルに集約されていたが、水際対策の緩和が大幅に進んだことで、国際線の発着便数は最近では多い日で一日250便と、感染拡大前を上回る水準まで回復しているという。

 このためターミナルビルの運営会社では、施設を使用する全日空などと協議した結果、夏にはさらに需要が増えることが見込まれるとして、ことし7月19日に施設を再開することを決めた。ただ、手荷物検査を行う保安検査員の人手不足の影響などにより、まずは時間を限って再開されるということで、全日空が一日に出発5便のほか、到着を数便運航することにしていて、徐々に便数を増やしていきたいとしている。

【5月23日】

●WHO総会開幕 台湾の参加、中国などの反対で今回も認められず

 WHOの年次総会は今月21日から30日までスイス・ジュネーブで開かれ、新型コロナの教訓を踏まえ、今後のパンデミックへの備えなどについて議論が行われる予定。総会では22日、WHOに加盟していないものの2016年までの8年間、オブザーバーとして年次総会に参加していた台湾については、中国などの反対で参加の可否について議論しないことが決まり、台湾の参加は7年連続で認められなかった。

 米国が「台湾の公衆衛生や先進技術はWHOにとって価値がある」と声明を出すなど、欧米各国などからはコロナ感染拡大の対策で成果をあげた台湾を参加させるべきという声があがっていた。22日の協議で中国政府の代表は「参加については『1つの中国』の原則に基づき処理されなければならない」と述べた。参加が認められなかったことについて、台湾外交部は「これは公衆衛生の問題であり、政治が優先されるべきではない」と不満を表明した。

【5月24日】

●イベルメクチン、新型コロナ患者に投与も効果みられず 北里大

 寄生虫が原因で失明などが引き起こされる感染症の特効薬「イベルメクチン」について、新型コロナ患者に投与しても効果がみられなかったとする結果を、治験を進めていた北里大学病院などのグループが発表した。治験は2020年8月からおととし10月まで新型コロナに感染した20歳以上の中等症までの患者248人を対象に行われた。。

 イベルメクチンは、ノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大学の大村特別栄誉教授の研究を元に開発された、寄生虫によって失明やリンパ管の腫れが引き起こされる病気の特効薬で、新型コロナへの効果があるか各国で研究が進められたが、去年9月、製薬会社の「興和」も新型コロナ患者に投与しても、有効性がみられなかったとする治験の結果を発表していた。

●生保、コロナ響き減益 8社3月期決算 入院給付金膨らむ

 生命保険大手8社の2023年3月期決算が24日、出そろった。新型コロナ感染者に支払う入院給付金が膨らむなどし、本業のもうけを示す基礎利益では全社が減益となった。一方、外貨建て商品の売れ行きが好調で、扱いの多い第一生命は売上高にあたる保険料等収入で日本生命を抜き、8年ぶりに首位に立った。

 コロナ感染者への入院給付金について、各社は無症状で自宅療養などをした「みなし入院」患者も支払い対象とした。昨年9月末に重症化リスクの高い人に対象を絞ったものの、支払額は急増。日本生命は前年の約8倍にあたる1811億円(約130万件)に、第一生命は約10倍の1062億円(93万件)に膨らんだ。ただ、コロナは今年5月8日に感染症法上の「5類」に移行し、給付金の支払いは今後急減する見込み。

【5月25日】

●北京市当局 感染者増加傾向、対策呼びかけ

 北京市の保健当局は24日、新型コロナを含めた感染症全体の患者数が5月21日までの1週間で2万5000人余りとなり、このうち新型コロナの感染者が最も多かったと発表した。新型コロナの感染者が最も多いのは4週連続で、北京市の保健当局は、公共交通機関を利用する際にマスクを着用するなどの感染対策の徹底を呼びかけた。

 中国政府はことし1月に厳しい行動制限などを伴う「ゼロコロナ」政策を終了し、5月からは国内の感染状況に関するデータを明らかにしておらず、実態の把握が困難になっている。こうした中、中国の感染症の専門家は5月22日、国内の感染状況について、1週間当たりの新規感染者数が5月末におよそ4000万人、6月末にはおよそ6500万人にそれぞれ達するという予測を示し、再び感染が拡大することへの警戒感が強まっている。

●東京都 1週間の感染者、前週の1.5倍 2週続け増加傾向

 25日、都は感染状況のモニタリング項目について、5類移行後2回目となる発表を行った。それによると、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、416か所から報告があった感染者数の合計は今月21日までの1週間で1470人で、1医療機関当たりでは3.53人となった。これは、前週の2.40人の1.47倍にあたり、2週続けて増加傾向にあるということで、専門家は「感染拡大の増加スピードに注意が必要だ」としている。

 また、今月22日時点での入院患者数は、前の週より196人多い702人となり、専門家は「現時点で医療提供体制への大きな負荷は見られないが、引き続き状況を注視する必要がある」としている。

【5月26日】

●新規感染者、前週比1.4倍 15〜21日緩やかな拡大傾向続く

 厚労省は26日、定点あたりの新型コロナ新規感染者数が、15~21日は全国で3.56人だったと発表した。前週の2.63人から約1.4倍に増えた。4月上旬から緩やかな感染拡大が続いている。8日にコロナが5類に変わり、定点医療機関からの報告は今回が2回目。全国に約5千ある定点で継続的に把握することで、感染者数の増加や減少をつかむことができる。

 42都道府県で感染者が前週から増えた。最多は沖縄の10.80人で、石川6.38人、岩手6.32人と続く。東京3.53人、愛知4.51人、大阪2.37人、福岡3.09人だった。15~21日の全国の新規入院患者数は3215人で、前週(2489人)の約1.3倍に。集中治療室に入院している全国の重症患者数は7日間平均で52人だった。

 5月26日発表の新規感染者の定点把握 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【5月31日】

●国内宿泊者数、前年同月比41%増 外国人は19倍と大幅増

 観光庁によると、4月、国内のホテルや旅館などに宿泊した人は、速報値で延べ4763万人で、去年の同じ月より41%増加した。このうち、日本人の宿泊者は延べ3724万人で、去年の同じ月より12%の増加。また、外国人の宿泊者は、延べ1038万人で、去年の同じ月の19倍と大幅に増加し、コロナ禍前の92%の水準となった。

 

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●厚労省リーフレット(2023年度版)

 「感染対策は個人・事業者の判断が基本となります」 出典:厚生労働省ホームページ

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2023年5月 5日 (金)

新型コロナ2023.04 漸増傾向

 厚労省に新型コロナ対策を助言する専門家組織(アドバイザリボード)は4月19日の会合で、現在の感染状況は全国的に緩やかな増加傾向とした。重症者数や亡くなる人の数は、「第8波」から大きく減って横ばい。感染者は今後も緩やかな増加が続き、5月連休が明けた後で拡大、いったん減少するものの再び夏に向けて感染拡大が起きる可能性があるとした。また専門家組織有志は、「第8波」を超える規模の「第9波」が起きる可能性があるという文書をまとめた。

 新型コロナの感染症法上の位置づけについて厚労省は27日、専門家による部会で現在の感染状況や変異株の状況などを踏まえ、5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」へ移行することを正式に発表した。

 2023年4月1日から30日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.03 下げ止り」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】


【4月1日】

●学校でのマスク着用、4月1日から原則不要 感染対策の考え方変更

 5月8日に「5類」移行を前に、学校現場では4月1日からマスクの着用が原則、不要となるなど感染対策の考え方が変わる。文科省が示した新しい考え方は、授業や行事などの教育活動では児童や生徒、教職員に対してマスクの着用を求めないことが基本。学校などがマスクの着脱を強制しないよう求める。一方、登下校時に混雑した電車などに乗る場合や、校外学習で医療機関、高齢者施設などを訪問する場合は、マスクの着用が推奨されるとしている。

 また学習活動のうち、対面形式のグループワークや、一斉に大きな声で話す活動、実験や観察、合唱や調理実習などは感染リスクが比較的高いとし、十分な換気を行うなど一定の感染対策を行うことが望ましいとし、部活動でもそうした場面では同様の対応を求めている。このほか、入学式や運動会、文化祭などの行事について、参加人数を制限したり、時間を短縮したりする必要はなく、給食の際も適切な対策を行えば「黙食」は必要ないとしている。

●東京都、991人感染確認 前週より128人増

 厚労省は1日、都内で新たに991人が新型コロナに感染していることを確認したと発表。1週間前の土曜日より128人増えた。また、人工呼吸器かECMO(人工心肺装置)を使っている重症患者は31日と同じ5人。一方、感染が確認された1人が死亡した。

 4月1日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【4月2日】

●救急車出動、去年は過去最多の700万件超 新型コロナで大幅増か

 総務省消防庁のまとめによると、去年1年間に全国で救急車が出動した件数は723万件と前の年に比べて103万件余り増え、過去最多を更新した。搬送された人の数も622万とこれまでで最も多くなり、このうち65歳以上の高齢者の割合が62.1%と半数以上を占める。出動件数が前年から大幅に増えた理由について、新型コロナの感染拡大の影響で感染者や感染疑いの患者の搬送が増えたことや、高齢化が進みお年寄りの搬送が増えたためなどという。

【4月3日】

●中国対象のコロナ水際措置、5日から緩和 陰性証明の提出求めず

 政府は中国での新型コロナの感染拡大を受け、去年12月以降、中国からのすべての入国者に対し、出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明の提出を求めるなどしている。松野官房長官は午後の記者会見で、国内外の感染状況などを踏まえ、中国を対象にした水際措置を緩和し、5日の午前0時からは、ワクチン3回の接種証明があれば陰性証明の提出を求めないことを明らかにした。

 一方、中国からの直行便を対象に、入国者の一部に限定してPCR検査を行う「サンプル検査」は継続。また、新型コロナが5月8日に5類に移行し、法律に基づいた水際措置をとれなくなったあとの対応について、引き続き感染症の監視は必要だとして、入国時に発熱やせきなどの症状がある人に対し任意のPCR検査を実施し、ウイルスの遺伝子解析を行っていく方針。

●景況感悪化、5期連続 製造業 世界経済減速響く 日銀短観

 日本銀行が3日発表の3月企業短期経済観測調査(短観)は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)が5四半期連続で悪化。前回の昨年12月調査から6ポイント悪化してプラス1。欧米の利上げなどに伴う世界経済減速から、2020年12月以来の低水準。業種別では、半導体需要の減少が響き「電気機械」「汎用機械」が特に悪化。原材料価格の高騰により「石油・石炭製品」「紙・パルプ」が大きく落ち込む。製造業16業種のうち、改善は「造船・重機等」「自動車」のみ。

 一方、大企業・非製造業は4四半期連続で改善。プラス20と前回より1ポイント改善、高水準を維持。新型コロナ下で製造業が日本経済を牽引した状況から一転し、非製造業が支える構図。新型コロナ対策の緩和による消費の復調や、訪日外国人客の増加に支えられ、大半の業種がプラス。特に小売業は10ポイント改善してプラス18。旅行業や娯楽業といった「対個人サービス」はコロナ下で一時はマイナス70まで落ち込んだが、プラス24と持ち直した。

●ことしの入社式、対面で行う企業や団体が8割余 民間調査

 コロナ禍の行動制限が緩和され、入社式を対面に戻す動きが広がっている。入社式を対面で行う企業や団体の割合は、去年よりさらに増えて、全体の8割余りに上るという民間の調査結果がまとまった。この調査は、就職情報会社の「学情」がことし2月下旬、企業や団体の人事担当者を対象にインターネットで行い、612人から回答を得た。

 ことしの入社式を、オンラインではなく会場に集めて「リアルで実施する」と答えた割合は、去年より14ポイント増え、全体の81.2%。理由は、「入社した実感を得てほしい」、「社内での人間関係を早く築いてもらうため」といった声が多かった。こうした企業などのうち、参加人数など式典の規模を「コロナ前と同規模」とする割合は、9割を超えた。ただ、入社式でマスク着用を求める予定の企業が半数に上り、感染対策への配慮も伺える。

【4月4日】

●新型コロナ対応、国と地方自治体の連携「できている」8割

 NHKは統一地方選挙を前に、全国すべての知事と市区町村長を対象に、一斉アンケートを行い、新型コロナへの対応で国と地方自治体の連携が「できている」と8割が回答した。福島県の内堀知事は、全国知事会の緊急対策本部長代行を務め、国への提言の取りまとめにあたってきたが、「新型感染症という国難に、政府が知事会をはじめ地方6団体と一緒に取り組んだ。地方分権のあり方が一つ上のステージに上がったと思う」と述べた。

 一方、アンケートでは「できていない」と回答した知事や市長らに、課題や教訓を聞いたところ「国からの情報提供が遅く、事業の企画・検討を行うための十分な期間が取れなかった」「コロナ感染者の情報が市町村には提供されず、初動が取れなかった」などの声が数多く寄せられ、情報共有などの面では課題も浮き彫りになった。

【4月5日】

●新型コロナ感染者数、増える傾向も 大型連休中の予測は?

 厚労省の専門家組織の会合が5日開かれ、現在の感染状況について第7波が始まる前の去年夏の水準を下回る状況ではあるものの、全国的に下げ止まりとなっていて大都市部など直近で増加している地域も多く見られると分析した。ただ、病床使用率、重症者数や亡くなる人の数は減少傾向が続いている。

 今後の感染状況については大都市部で20代の感染が増加していることから感染者数が増加に向かう可能性があり、短期的には横ばい傾向が続くか、東京など一部の地域では増加傾向となることが見込まれるとした。また、オミクロン株の亜系統の一つで、米国で流行する「XBB.1.5」の感染者が、国内の4割弱を占めるという推計も発表した。今後も「BA.2.75」など複数の亜系統が併存する状況が続くとみられる。

●全国新規感染者、前週比1.03倍

 厚労省の専門家組織の会合で示された資料によると、4日までの1週間の全国新規感染者数は下げ止まりから、2カ月半ぶりに上昇した。前週と比べて1.03倍。1倍を上回ったのは、1月11日に分析した際の1.28倍以来となる。北海道や東北、首都圏などで18の都道府県で前の週より多くなっている。首都圏では、東京都が1.26倍、神奈川県が1.16倍、埼玉県が1.07倍、千葉県が1.05倍と増加に転じ、ほかに福井県で1.35倍、北海道と秋田県で1.30倍など。

 人口10万あたりの直近1週間の感染者数は、鳥取県が73.54人と全国で最多、次いで福井県が65.85人、新潟県が64.19人、広島県が63.58人、長野県が62.94人などで、全国では38.61人となっている。

●専門家会合、「3密」回避など対策を改めて呼びかけ

 専門家会合は、年度替わりの行事など感染リスクや、ワクチンや感染でできた免疫が時間とともに下がっていくこと、免疫を回避する新たな変異ウイルスの割合が増えることなどに注意が必要だと指摘した。また、来月、感染症法上の位置づけが「5類」に移行され、感染対策は個人の判断に委ねることが基本となる中で、地域での流行状況に関心を持ち、自主的に感染を防ぐための行動をとって、特に重症化リスクの高い高齢者に配慮が重要だとしている。

 その上で、体調の不安や症状がある場合は無理せず自宅で療養するか医療機関を受診すること、手洗いなどを習慣として行うこと、その場に応じたマスクの着用やせきエチケットを行うこと、換気を行い、「3密」を回避することなどといった対策を一人ひとりが身につけるよう改めて呼びかけた。

●大型連休明け、東京で1日あたり約8300人の試算も

 名古屋工業大学の平田教授のグループは、3月29日までの感染者数などのデータを元に、さらに感染力の高い変異ウイルスが現れず、人出がコロナ前の水準まで緩やかに戻るといった想定で、今後の感染状況をAI(人工知能)を使って試算した。その結果、東京都の1週間平均の感染者数は5月上旬から中旬にかけて大型連休の影響で増えると見込まれ、80%の人がマスクをしない場合およそ8300人、半数の人がマスクをした場合はおよそ4600人に抑えられるとの結果になった。

 これまで通りの着用状況が続く場合は、およそ2600人にとどまる。その後は感染者数が緩やかに減るものの、お盆休みのあと、8月下旬にも5月中旬よりは少ないものの、増えると見込まれると試算されたという。平田教授は「換気が難しく『密』になる場合などにはマスクの着用は推奨できる。対策ができていれば、急激な拡大にはならないだろう」とコメントした。

 東京都の新規陽性者(1週間平均)予測 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【4月6日】

●都内の新規感染者、2週連続増 専門家「基本的な対策継続を」

 東京都は6日、新型コロナの感染状況と医療提供体制について、専門家によるモニタリング項目の分析結果を公表し、4段階ある警戒レベルのうち、いずれも下から2番目を維持した。新規感染者数の7日間平均は5日時点で938人と、前の週のおよそ116%、2週連続で100%を上回った。一方、入院患者数は前の週より24人少ない459人。

【4月7日】

●コロナ緊急事態、「年内解除へ」 WHOが見通し

 WHOのテドロス事務局長は6日の記者会見で、2020年1月に宣言した新型コロナの「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」について、「年内に解除できるようになるだろう」との見通しを示した。専門家でつくる緊急委員会で解除の妥当性が協議されるといい、その判断を尊重する意向も強調した。テドロス氏は、次の緊急委の会合は「5月上旬だろう」とした上で、「彼らが慎重に検討することになる」と述べた。

 テドロス氏は、1月下旬の緊急委の後、その助言を受け入れ、世界の現状は「緊急事態」に引き続き該当すると判断した。WHOでは年内解除への期待が公の場で表明されていたが、解除は見送られていた。昨年末の中国の感染爆発などが影響したとみられる。一方、氏は新型コロナの起源について、中国が持っている情報にアクセスできなければ仮説の検証ができず、起源の解明が進まないと指摘、中国政府に情報の共有を改めて呼び掛けた。

●アベノマスク、契約単価62〜150円 国が文書開示 時期や業者で2倍超の差

 政府が配布した布マスク(アベノマスク)を巡り、国は関連文書の開示を求めていた神戸学院大の上脇教授や国会に対し、調達した業者ごとの単価や枚数を開示した。大阪地裁が2月の判決で開示を命じ、確定していた。国側は当初、上脇教授に対し単価や枚数の部分を黒塗りにして開示し、「今後マスクを調達する際、交渉で不利になる」などと説明していた。会計検査院が2021年11月に公表した報告書で、契約月ごとの平均単価は判明していた。

 国は2020年3~6月、業者17社と計32件の随意契約を結び、3億枚超のマスクを約442億円で調達した。今回、明らかになったのは、32件の契約ごとの単価と枚数。業者や契約時期などにより、単価に2倍超の差があった。マスクの大きさや形状、素材は業者によって違い、単価(税抜き)は62.6~150円。会計検査院は、大半の契約では「業者側の見積書の額がそのまま契約額」と指摘。国側は市場価格を調査して算出するのは難しかったと説明したという。

【4月9日】

●新卒採用の看護職員、10人に1人が離職 調査開始以降、最も高く

 日本看護協会は2021年度の看護職員の離職状況について、全国の8100余りの病院を対象に調査を行い、2964の病院から回答を得た。調査の結果、離職率は正規雇用の看護職員全体で11.6%と、前の年度より1ポイント増えた。このうち、新卒で採用された看護職員の離職率は10.3%で、前の年度を2.1ポイント上回り、調査を始めた2005年以降、最も高くなった。 離職者が増えた理由について新型コロナの影響を尋ねたところ、38%が「影響している」と答えた。

●新型コロナの感染再拡大、「心配してない」41% 朝日新聞社世論調査

 8、9日に実施した朝日新聞の世論調査で、政府が新型コロナの感染対策を緩和するなか、感染の再拡大をどの程度心配しているかを聞いたところ、「あまり」「全く」を合わせた「心配していない」が41%に上った。「心配している」は「大いに」「ある程度」を合わせて59%。これまでの調査では「心配している」が毎回8~9割に達し、「心配していない」は1割前後だった。大型連休に帰省や旅行を計画しているかは、「計画している」は16%。2021年4月は6%、2022年4月は15%だった。

●東京都、956人感染確認 前週比167人増

 厚労省は9日、都内で新たに956人が新型コロナに感染していることを確認したと発表。1週間前の日曜日より167人増えた。前の週の同じ曜日を上回るのは9日連続。また、人工呼吸器かECMOを使っている重症患者は、8日より1人減って2人。一方、感染確認された1人が死亡。

 4月9日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【4月11日】

●ファイザーのオミクロン株対応ワクチン 初回接種で使用を申請

 オミクロン株に対応したワクチンの接種は、感染拡大の当初に広がった従来のウイルスに対応したワクチンで、1回目と2回目の接種を済ませたあと、5歳以上を対象に追加接種として行われている。米国の製薬大手ファイザーの発表によると、オミクロン株「BA.4」や「BA.5」に対応する成分と、従来の新型コロナ対応の成分が含まれる、メッセンジャーRNAワクチンについて、ワクチンを一度も接種していない人が、初回の接種から使えるように承認を申請した。

●「隅田川花火大会」、4年ぶり開催へ 新型コロナ「5類」移行で

 東京の「隅田川花火大会」は、毎年95万人が訪れる東京の夏の風物詩として知られていたが、新型コロナの影響で3年連続で中止になっていた。花火大会の開催をめぐり、実行委員会は11日に会議を開き、4年ぶりに開催することを決めた。開催を決めた理由は、新型コロナがことし5月に「5類」に移行するためとしている。具体的な日程は、7月29日土曜日の午後7時から午後8時半までで、4年前と同規模のおよそ2万発の花火を打ち上げる予定。

 2012年の隅田川花火大会 出典:ウキメディア・コモンズ

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【4月12日】

●5類移行後の感染者数把握、「定点把握」に 厚労省

 新型コロナの感染症法上の位置付けが「5類」に移行したあとの感染者数の把握や公表などについて、厚労省は、国が毎日取りまとめて公表する「全数把握」をやめ、指定した医療機関に週1回報告してもらう「定点把握」に変更する方針を含む監視体制を12日に専門家の部会で示し、了承された。死亡した人の数については、都道府県などによる毎日の報告と公表は終了し、今後は通常行っている「人口動態統計」で把握していくとしている。

 このうち、「流行状況の把握」については、医療機関などがすべての感染者を報告し、国が毎日公表する「全数把握」は、移行後は季節性インフルと同じように、およそ5000の医療機関に、週に1回、感染者数などを報告してもらう「定点把握」に変更。医療機関の逼迫状況の目安となる「入院者数」や「重症者数」は、移行後も医療機関からの報告を一定期間は継続し、その後、「定点把握」に変更する。

●接種予約、水増し請求 近畿日本ツーリスト 東大阪市2.9億円

 近畿日本ツーリスト(KNT)は12日、大阪府東大阪市から請け負った新型コロナのワクチン接種予約の電話受け付け業務で、2年近くにわたって市に委託料を計約2億9千万円を水増し請求していたと発表した。市は今後、KNTの入札参加停止などの処分を決める方針。KNTによると、「関西法人MICE支店」(大阪市)の50代男性社員が2021年3月~2022年12月、市が発注した人数より少ないオペレーターを再委託先の「マケレボ」に発注していた。

 同社員は2022年3月、支店長に過大請求を打ち明けたが、支店長は黙認。支社に報告しなかった。支店長は発覚を免れようと、コールセンターの勤務実績を「マケレボ」に書き換えさせたが、「人数をごまかしている」という匿名通報が市に寄せられ発覚した。市では、2021年5~7月、コールセンターの応答率が10~20%にとどまったこともあったという。

【4月13日】

●モデルナ 変異ウイルス対応ワクチン「柔軟に製造、日本へ提供」

 ワクチンの供給体制について日本政府と協議するため来日しているモデルナのCMO(最高医療責任者)のポール・バートン博士は、12日、「いまはXBB系統の変異ウイルスが拡大していて、今後、新たな流行の波がやってくると考えられる。50歳以上になると重症化リスクは高まり、若い人でも後遺症のリスクがある。みずからを守るためにワクチンの接種を考えてほしい」と述べた。

 今秋以降の新型コロナワクチンの供給体制について「新型コロナは変異し続けていて、日本で別の変異ウイルスが拡大する可能性ある。日本政府が新たな変異ウイルスに対応した専用ワクチンを必要とした場合、我々は提供することができる」と、政府に柔軟にワクチンを製造できると伝えたという。また、バートン氏は、2025年までに新型コロナと季節性インフルなど複数の感染症に対応する混合ワクチンの開発を目指す考えも明らかにした。

●新型コロナ入院給付金「みなし入院」の給付、来月7日で終了へ

 医療保険の加入者が新型コロナに感染した場合に支払われる入院給付金について、現在は感染の診断を受けた65歳以上の高齢者、本来入院が必要な患者、妊婦、新型コロナの治療薬や酸素の投与が必要な患者など、重症化リスクが高い人に限り、自宅などで療養する「みなし入院」でも支払われている。

 13日までに生命保険大手の「日本生命」、「第一生命」、「明治安田生命」、「住友生命」は「みなし入院」給付を来月7日で終了すると発表した。理由について各社は、来月8日から、新型コロナが5類に移行するためだとしている。

【4月14日】

●5類移行後の療養期間、「発症翌日から5日間推奨」 厚労省

 新型コロナに感染した際の療養期間は感染症法に基づいて、症状がある人は発症の翌日から7日間が経過し、症状が軽くなって24時間経過したら解除できるとされ、外出自粛が求められている。しかし、感染症法上の位置づけが5類に移行したあとは、外出を控えるかどうかは個人の判断に委ねられることになるため、厚労省は、判断の参考にしてもらうための目安となる考え方を示した。

 具体的には、発症の翌日から5日間は外出を控えるほか、症状が軽くなってから24時間程度は、外出を控えることが推奨されるとしている。期間の設定にあたっては、発症の翌日から5日間が経過したあとは、体内のウイルス量が大きく減少するという分析結果や、5日間を隔離期間としている海外の事例を踏まえたとしている。そのうえで、10日間が経過するまではウイルスを排出する可能性があることから、マスクの着用や、高齢者などとの接触は控えることなど、周囲の人への配慮を求めている。

●GW予約、9割回復 新幹線・在来線指定

 JRの旅客6社は14日、ゴールデンウィーク期間(4月28日~5月7日)の新幹線と在来線の指定席の予約状況を発表した。予約数は前年比で1.68倍の245万席だった。コロナ禍前の2018年と比べて9割まで回復した。担当者は「コロナの影響はあるものの、実績として前年を上回っており、回復傾向といえる」と説明した。

【4月18日】

●中国GDP、4.5%増 回復進む 1〜3月期 ゼロコロナ終了 市場予想上回る

 中国経済が回復し始めている。中国国家統計局が18日に発表した1~3月期の国内総生産(GDP、速報値)は、物価変動の影響を除いた実質で前年同期比4.5%増。4%前後の市場予想を上回った。中国政府の掲げる年5%前後の目標に向けて回復が加速するかが注目される。前期(昨年10~12月)はロックダウンや移動制限が相次いだこともあり、GDPは同2.9%増にとどまっていた。ゼロコロナ政策後の経済正常化が進んでいることが確認された。

 個人消費は回復が続き、1~3月期の小売総額は前年同期比5.8%増。外出や旅行に繰り出し、特に飲食店収入は13.9%増と大きく伸びた。鉱工業生産額も3.0%増。だが、パソコンや自動車などの販売は伸び悩み、生産量もマイナス。米国の半導体制裁の影響を受ける集積回路も生産量は14.8%減。設備投資などを示す固定資産投資は5.1%増と堅調だったが、民間企業だけでみると増加幅は0.6%。冷え込みが続く不動産開発投資も5.8%減だった。

●新型コロナ、「脳で免疫の働きする神経系の細胞に感染」 慶応大など

 慶応大学の岡野教授らの研究グループは、新型コロナの脳への影響を調べようと、ヒトのiPS細胞から3種類の神経系の細胞と、脳の一部を再現した細胞のかたまりを作り、ウイルスが感染するかどうか調べる実験を行った。その結果、従来の型とデルタ株、それにオミクロン株の特徴を人工的に再現したウイルスは、いずれも脳の中で免疫の働きをする神経系の細胞に感染、一方でほかの細胞には感染しなかったという。

 新型コロナに感染した人では、記憶障害や「もや」がかかったように感じて思考力が落ちる「ブレインフォグ」などが出ることがあるが、こうした異常が出る理由は分かっていなかった。研究グループは、新型コロナはミクログリアに多くあるたんぱく質を足がかりに感染しているとみていて、感染後の症状や後遺症の原因の解明につなげたいとしている。

●新型コロナワクチン、接種後死亡12人に一時金など支給へ 厚労省

 新型コロナのワクチン接種をめぐっては、接種した後に死亡した人について因果関係が否定できないと国が認定した場合には予防接種法に基づいて死亡一時金などが支給され、これまでに20代から90代までの男女41人が認められている。厚労省は17日、接種後に急性心不全や脳出血、突然死などで亡くなった、23歳から93歳の男女12人ついて、新たに救済の対象とすることを決めた。

 このうち11人は高血圧症や糖尿病などの基礎疾患があったということで、厚労省は死亡診断書やカルテの記載などを踏まえて、因果関係が否定できないと判断したとしている。死亡一時金などの支給が認められたのはこれで53人となった。

【4月19日】

●現在の感染状況「全国的に緩やかな増加傾向に」 専門家組織

 厚労省の専門家組織の会合が19日に開かれ、現在の感染状況は全国的に緩やかな増加傾向となっていて、特に大都市部で20代や10代以下の増加が見られる。重症者数や亡くなる人の数は、この冬の「第8波」の時期から大きく減った後、横ばい。今後の感染状況は、緩やかな増加傾向が続くが、これまでの傾向を踏まえると接触機会が多くなる5月の大型連休が明けた後で感染が拡大、いったん減少するものの、再び夏に向けて感染拡大が起きる可能性がある。

 4月19日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 そのうえで専門家組織は、ワクチンや感染でできた免疫が時間とともに下がっていくこと、それに免疫を回避する新たな変異ウイルスの割合が増えることなどによる影響に注意が必要だと指摘した。また、専門家会合は、来月、新型コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行される中でも地域での流行状況に関心を持ち、自主的に感染を防ぐための行動をとって特に重症化リスクの高い高齢者に感染が及ばないようにする配慮が重要だとしている。

●国内新規感染者、多くの地域で増加が続く

 厚労省の専門家会合で示された資料によると、18日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて1.06倍と多くの地域で増加が続いている。首都圏では、東京都が1.05倍、神奈川県が1.02倍、埼玉県が1.11倍、千葉県が1.03倍と増加していて、合わせて33の都道府県で前の週より増加している。

 人口10万あたりの直近1週間の感染者数は、石川県が74.17人と全国で最も多く、次いで福井県が72.63人、山形県が71.16人、鳥取県が68.67人、沖縄県が68.21人などとなっていて、全国では46.33人。

●専門家組織の有志、「第8波」超える「第9波」可能性も

 「第8波」を超える規模の「第9波」が起きる可能性があるという文書を、専門家組織の脇田座長ら4人の有志がまとめた。この中で、現在、感染者数が増加に転じる地域が増えてきていて、今後「第9波」が起きる可能性が高い。そのうえで、国内ではコロナ感染によって獲得した免疫を持つ人は、今年2月から先月の段階での抗体調査で32.1%と低いことなどから、「第9波」は「第8波」より大きな規模になる可能性が残されているとしている。

 また、日本は高齢化率が高く、仮にワクチンの接種率が上がらないまま、感染の規模が大きくなるとすると、亡くなる人の数は高齢者を中心に海外と比べて多い状況で推移する可能性があるとしている。そして、新型コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行されても高齢者などへのワクチンの追加接種、介護や医療現場での感染対策、それにウイルスの遺伝情報の分析などは必要だとしている。

●専門家組織の会合、「定期的開催」が「不定期開催」に

 専門家組織は、新型コロナの感染が国内で広がった初期の2020年2月に設置され、1週間~2週間おきに定期的に開かれてきたが、「5類」移行に伴って次回以降は感染状況に応じて不定期に開かれることになった。専門家組織メンバーは会合が開かれない間も必要に応じて感染状況や医療の状況などを確認して分析する。

【4月20日】

●東京都の新規感染者、4週連続増で警戒呼びかけ

 東京都は20日、専門家によるモニタリング項目の分析結果を公表し、4段階ある警戒レベルのうち、いずれも下から2番目を維持した。新規感染者数の7日間平均は19日時点で1166人と、前の週のおよそ105%となっていて、4週連続で100%を上回った。また、入院患者数は前の週より38人多い553人となり、2週連続で前の週より増えた。専門家は、「現時点では感染拡大のスピードは速くないが、動向を注視する必要がある」として、警戒を呼びかけている。

●東京都、1449人感染確認 前週比268人増

 厚労省は20日、都内で新たに1449人が新型コロに感染していることを確認したと発表した。1週間前の木曜日より268人増えた。また、人工呼吸器かECMOを使っている重症の患者は19日より2人減って5人。一方、感染が確認された1人が死亡した。

 4月20日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【4月21日】

●5類移行後、衆議院本会議の質疑 全議員出席に戻す 

 衆議院では、2020年4月から新型コロナの感染防止対策のため、本会議で密集した状態にならないよう、採決以外の質疑などが行われている際に半数程度の議員が議場の外に出る措置をとっている。これについて、21日午前の議院運営委員会の理事会で与野党が協議し、5類移行の5月8日以降、すべての議員が出席できるように戻すことを確認した。また、あわせて本会議場の演壇に設置されたアクリル板を取り外す。

 国会では、政府の方針にあわせて3月13日からマスクの着用が個人の判断に委ねられていて、新型コロナの対応はこれですべて終了することになる。

【4月22日】

●新型コロナ、国際的対応考えるシンポ 公平性確保の仕組みを

 国際的なシンポジウムが22日、日本医学会総会の中で開かれた。この中では、WHOで新型コロナ対応にあたった事務局長補の国際医療福祉大学大学院の山本教授は、感染が広がり始めた直後の2020年1月にウイルスの遺伝情報が登録され、ワクチン開発が始まるなど、素早い対応が行われた一方、ワクチンの接種率は「2022年半ばまでにすべての国で70%以上」としたものの、所得の低い国々では行き渡らず、低い接種率に留まっていると振り返った。

 また山本教授は、ワクチンや治療薬に公平にアクセスできる仕組みを作るために「G7議長国の日本のリーダーシップに期待したい」と述べた。また、米国政府の首席医療顧問として対策を主導したファウチ博士はビデオメッセージを寄せ、今後もコロナの根絶や排除はできないとして「最善の対応は社会を混乱させない程度に抑えること。インフルと同様のワクチンの追加接種やマスクの着用といった常識的な感染対策、換気を続けることで達成できると信じる」と話した。

【4月25日】

●中国、入国者に求めるPCR検査 抗原検査に切り替えへ

 中国政府は、新型コロナ対策として、これまで中国への入国者に対し、各地を出発する48時間以内にPCR検査を受けるよう求めてきた。これについて中国外務省の毛報道官は、25日の記者会見で、PCR検査に代わって今月29日からは抗原検査に切り替えると発表。また、これにあわせて、航空会社が搭乗前に行っていた陰性証明の確認も実施しないとしている。

●「5類移行後も医療提供体制の整備を」 与野党が要望

 5月8日に5類に移行されるのを前に25日、政府と与野党の実務者協議が行われた。この中で、与野党は移行されたあとも当面、医療提供や検査体制の整備や強化に取り組むよう政府に要望した。また、会合では、救急搬送が困難な事例の再発防止を図ることや、後遺症に悩む人への相談体制の整備、それに新型コロナ対策の課題や効果の検証などが必要だといった指摘も出された。

 これに対し、政府側は「しっかり対応したい」と応じた。政府と与野党の実務者協議は、25日でいったん終了し、今後、感染が再び急拡大した場合などに開催することを申し合わせた。

●5類移行後の感染者、AIで試算 8月下旬の東京は…

 名古屋工業大学の平田教授のグループは、さらに感染力が強い変異ウイルスが現れず、夏ごろには人出がコロナ前の水準に戻るという想定で、24日までの感染者数や「飲み会」や「バーベキュー」といった社会活動の活発さを示すSNSの投稿の数などのデータをもとに今後の感染者数を最新のデータをもとにAI(人工知能)を使ってを使って試算した。

 東京都の新規陽性者数の推定値 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 5類移行予定の5月8日以降にマスクの着用率が20%、50%、ほとんど100%の場合、いずれの場合でも来月中旬には東京都の1週間平均での1日あたりの感染者数は、およそ3100人となった。その後、感染者数は着用率によって差が出始め、お盆明けの8月下旬には20%だと6900人、50%では5400人、100%では、4100人という結果になった。

【4月26日】

●世界のコロナ死者、「年初から95%減」

 WHOのテドロス事務局長は26日の定例会見で、新型コロナによる死亡の報告件数が今年の初頭から95%減ったと明らかにし、「非常に心強い」と評価した。ただ、一部の国では増えているほか、ウイルスの変異も続いており、引き続き警戒が必要という。テドロス氏によると、感染者の10人に1人に何らかの症状が残ると推定されており、世界で数億人に「長期的なケア」が必要になる可能性があるという。

●水際措置終了、今月29日に前倒しで調整

 新型コロナの水際措置で、政府は、日本への入国者に対し、ワクチンを3回接種した証明書の提出などを求めているが、大型連休明けの来月8日に感染症法上の位置づけを5類に移行するのに合わせて終える予定だった。しかし、この水際措置の終了時期を大型連休に入る今週末、今月29日に前倒しする方向で調整を進めている。ことしの大型連休は、海外への旅行客の増加が見込まれていることから、帰国時の手続きを円滑にして混雑を緩和する対応とみられる。

【4月27日】

●新型コロナ、5月8日に「5類移行」正式決定 厚労省

 新型コロナの感染症法上の位置づけを、5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げることが27日、正式に決まった。病原性の異なる新たな変異株が出ていないことなどをふまえ、厚労省が専門家らに諮り判断した。法的根拠のある入院勧告、患者や濃厚接触者への外出自粛要請はなくなる。外出も個人の判断に委ね、「発症翌日から5日間」は外出を控えることなどを推奨する。

 5類移行後の医療提供体制について、厚労省は幅広い医療機関で受け入れる体制に移行する方針。外来診療は季節性インフル検査にあたった全国の6万4000の医療機関で受け入れる体制を目指す。入院は、夏の感染拡大に備えておよそ8400の医療機関で、最大5万8000人の患者を受け入れる体制を確保、入院調整は原則、医療機関の間で行う仕組みに段階的に移行。また医療費の窓口負担については、検査や陽性が判明したあとの外来診療の費用が自己負担に見直される。

 外来医療費の比較 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●加藤厚労相「平時に向けて大きな一歩を踏み出した」  

 加藤厚労相は記者会見で、「特段の事情が生じていないことを専門家に確認いただいたので、予定どおり5月8日以降は新型コロナを『5類感染症』に位置づけることを決定した」と発表した。そして、「平時に向けて、大きな一歩を踏み出したということになるが、ウイルスそのものは消失するわけではなく、医療機関や高齢者施設、自治体の職員など関係者には必要な対応をお願いすることになる」と述べた。

 一方で、「オミクロン株とは大きく病原性が異なる変異株が出現するなど、科学的な前提が異なる状況になれば、直ちに対応を見直すことにしている」とした。

●専門家 「今後も新しい生活様式続けていくことが大事」

 感染症に詳しい東京医科大学の濱田特任教授は「高齢者や糖尿病や腎臓病といった基礎疾患のある人など重症化リスクが高い人は、外を歩くときにはマスクを外しても、密なところや屋内に入るときにはマスクを着用したほうが良く、集まりが長時間にならないように引き続き注意が必要。若くて健康な人も高齢の親がいる場合は、自宅に感染を持ち込まないように」と話す。

 感染者数が徐々に増えてきたのは、年度替わり時期の人の移動、マスクを外す人が増えた、感染やワクチン接種による免疫が少しずつ下がってきたことにある。そのうえで、接触が増える時期や冬場に感染者数が増えると考えられ、「今年の夏やお盆、11月や12月ごろに大きな流行が起こる可能性が高い」「今後も感染が広がっている時期には、感染を防ぐためにお互いに距離を取るべきで、新型コロナで学んだ新しい生活様式は続けていくことが大事」と述べた。

●医療体制「達成不明」4割 コロナ5類移行 知事アンケート

 政府は5類移行で季節性インフル並みの対応を図るため、外来で現在の4万2千カ所から6万4千カ所、入院で5千カ所から8千200カ所に医療機関を増やす方針を示し、都道府県に働きかけている。政府目標の医療機関の数について、朝日新聞が47都道府県の知事に達成できるか見通しを聞いたところ、「達成できる見込み」との回答は5割超に留まり、「わからない」との回答が4割前後。都道府県はコロナ対応の医療機関を増やす計画を厚労省に提出したが、目標の約7割にとどまる。

 見通しが不明とした知事の多くは、医療機関との調整を理由に挙げた。公費によるコロナ医療への補助は削減され、院内感染への警戒感もなお強く、医療機関側にはコロナ医療に新たに取り組む誘因に乏しい。これまでは、限られた外来に患者が殺到。入院がかなわず、自宅で療養していて亡くなるケースも相次いだ。専門家は「5類に移行しても新型コロナは感染力が強く、高齢者や免疫が弱い人が重症化しやすい病気であることには変わりがない」と警告する。 

●コロナ後遺症、感染1年半後「4人に1人」 軽症でも後に自覚

 新型コロナ感染症にかかった人の4人に1人以上に、感染から1年半の時点でも少なくとも一つの後遺症の症状がみられるとする調査結果を、国立国際医療研究センター病院のチームがまとめた。感染時に軽症でも後遺症を自覚する人が多く、長期間を経ても症状が続いている実態が明らかになった。調査の対象は、2020年2月~2021年11月に感染した20~70歳の1148人。うち502人が、質問表に回答した。393人は、感染した時に軽症だった。

 発症から3カ月以内に、2カ月以上続く症状があると回答した人は212人。症状の内訳は集中力低下と嗅覚障害が20.1%、頭がぼんやりは17.8%、記憶障害、疲労感、気分の落ち込みが続く。感染から1年の時点で症状がある人は30.5%、1年半の時点では25.8%。嗅覚障害や脱毛は女性で長引きやすかった。一方、感染の急性期に抗ウイルス薬「パキロビッドパック」や「ゾコーバ」を内服した患者は、後遺症を抑えられる可能性があるという調査結果も示された。

【4月28日】

●政府、「5類」移行に伴い「新型コロナ対策本部」の廃止を決定

 厚労省は27日、予定どおり5月8日に新型コロナの「5類」移行を正式に決めた。これに伴い、政府は28日の閣議で、「新型コロナの対策本部」を廃止することを決めた。政府の対策本部は、国内で感染が確認されたあとの2020年2年1月30日に、首相を本部長にすべての閣僚をメンバーとして設置された。

 これまで持ち回りも含めてあわせて104回開かれ、感染拡大時に「緊急事態宣言」を発出するかどうかといった判断など、3年あまりにわたって感染対策の司令塔となってきたが、役割を終えることになった。政府は、対策本部の廃止後に、新型コロナの感染が再拡大したり、新たな変異株が発生した場合には「新型インフルエンザ等対策閣僚会議」を開いて対応を検討する方針。

●5類移行、「地方自治体への臨時交付金を見直すべき」 財政審

 「5類」への移行をめぐり、財務相の諮問機関、財政制度等審議会の会合が28日に開かれ、国から地方自治体に交付されてきた「新型コロナ対応地方創生臨時交付金」について議論した。会合で財務省の担当者は、昨年度まで3年間の交付額が18兆円に上っていることを踏まえ、自治体の財政収支がこの3年間で2兆円黒字額を増やしていることや、貯金にあたる「基金」の残高が1.6兆円改善したことを報告した。

 そのうえで、多額の交付金によって自治体の支出が節約された可能性があると指摘し、5類移行後は臨時交付金を見直して地方財政の構造を平時に戻すべきと提起した。これに対して、委員からは臨時交付金を廃止したうえで、交付金を盛り込んだ大型の補正予算や予備費の規模を見直すべきとの意見が出された。会合のあとの記者会見で、審議会の増田会長代理は「地方税収は増えているので、国からの交付金に依存する地方財政からは脱却するべきではないか」と述べた。

●新型コロナワクチン接種後に1歳男児が死亡 厚労省が公表

 厚労省は28日に開いた専門家部会で、ことし2月に3回目のワクチン接種を受けた1歳の男の子が死亡したと医療機関から報告を受けたことを明らかにした。生後6か月から4歳を対象にしたワクチンで接種後に死亡が確認されたのは初めて。男の子は末期の腎不全で透析治療を受けていて、ファイザーのワクチンの3回目の接種を受けた2日後に亡くなった。国の専門家は情報不足などを理由にワクチン接種と死亡との因果関係は評価できないとしている。

【4月29日】

●新型コロナの水際対策、きょうからワクチン証明など提出不要に

 新型コロナの水際対策として政府は、これまで感染症法に基づいて日本への入国者に対し、3回のワクチン接種の証明書や、出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書の提出を求めてきたが、29日から不要になった。また、中国本土からの直行便を対象に入国者の一部に限定して行ってきた「サンプル検査」も終了し、29日に上海からの直行便で成田空港では歓迎する声が聞かれ、到着した人たちは検査を受けずに入国審査に向かっていた。

【4月30日】

●東京都、976人感染確認 前週より162人減

 厚労省は30日、都内で新たに976人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の日曜日より162人減った。前の週の同じ曜日を下回るのは4月16日以来。1週間平均では1485.72人で前の週の1週間平均から173人増加している。また、人工呼吸器かECMOを使っている重症の患者はきのうと同じ4人。死亡した人はいなかった。

 4月30日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●国内6722人感染 14人死亡

 厚労省によると、4月30日発表の国内の新たな感染者は、空港検疫などを含め6722人(累計で3372万739人)。1週間前の日曜日より1853人減った。1週間平均では10,439.58人で、前の週の1週間平均より844.86人増加している。都道府県では、東京都の976人が最多。次が神奈川県の567人、大阪府458人、北海道435人、広島県368人と続く。

 以下は、4月30日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 また、人工呼吸器やECMOをつけたり、集中治療室などで治療を受けたりしている重症者は、30日時点で51人。重症者の数は、29日と比べて2人増えた。

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 国内で亡くなった人は30日時点で、大阪府で3人、長野県で3人、京都府で2人など合わせて14人、累計で7万4542人となっている

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2023年4月 2日 (日)

新型コロナ2023.03 下げ止り

 政府はマスクの着用について、3月13日から「個人の判断」に委ねることになった。しかし7割の人がまだ着用していて  「脱マスク」はほど遠い。新規感染者数や重症者、死亡者とも全国的に減少傾向が続いていたが、月末には全国的に増加の傾向が見られて「下げ止り」の状況がはっきりしてきた。

 2023年3月16日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.03 個人判断」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

 

【3月16日】

●東京都、5類移行後「検査や外来診療は患者の自己負担に」

 東京都は16日、モニタリング会議を開き、新型コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行したあとの、医療費の負担や医療提供体制について、国の方針に基づいた都の施策を示した。この中で、現在は公費で賄われ窓口負担が無料となっている医療費のうち、検査や陽性が判明したあとの外来診療の費用は自己負担にするなどとしている。

 出席した専門家は「5類への移行に向け、幅広い医療機関が新型コロナの患者を診療できるようにするための医療機関への支援が必要」と指摘。一方、会議では、都内の感染状況と医療提供体制の警戒レベルについて、いずれも下から2番目が維持された。会議のあと小池知事は、「高齢者や妊婦のための施設の運営などハイリスクの人を守る取り組みは継続していく。都民の不安や医療現場の混乱を招かないよう具体的な計画を取りまとめて段階的に進めていく」と述べた。

●5類移行後も「マスク着用」、約7割 東京

 東京感染症対策センターは、新型コロナの感染対策への都民の意識について先月、20代から70代までのおよそ1万人を対象にインターネットでアンケート調査を行い、16日のモニタリング会議でその結果を公表した。それによると、5月8日に「5類」へ移行したあとも「マスクを着用する」と回答した人が全体の71.3%に上った。理由は、「感染を防ぐため」などのほか「人の目が気になるから」、「まわりの人がつけているから」などが挙げられた。

 一方やめた方がよいと思う感染対策については、「小・中学校での授業中のマスク着用」が36.9%、「黙食」35.0%、「飲食店でのアクリル板など仕切りの設置」29.1%。小池知事は「コロナ禍の経験がいきて、皆さんとても慎重になっている。マスクが必要な場面に備え是非、ポケットに入れることを励行してほしい」と述べた。

●東京都、6人死亡 680人感染確認 前週より114人減

 厚労省は16日、都内で新たに680人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の木曜日より114人減った。また、人工呼吸器かECMO(人工心肺装置)を使っている重症の患者は15日と同じ7人。一方、感染が確認された6人が死亡した。

 3月16日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【3月17日】

●4月からの学校「マスク着用求めず」 文科省がマニュアルを通知

 文科省は、4月1日から学校教育の現場でマスク着用を求めないとしていることから、現場での具体的な対応を定めた衛生管理マニュアルを改定し、全国の教育委員会などに通知した。児童や生徒、教職員については、マスクの着用を求めないことを基本とした上で、登下校時に混雑した電車などに乗る場合や医療機関や高齢者施設などを訪問する場合はマスクの着用が推奨されるとしている。

 マスク着用を希望している場合や健康上の理由でマスク着用できない児童や生徒に対しては、マスク着脱を強いることがないよう、マスク着用の有無による差別や偏見がないよう、適切に指導することも求めている。さらに理科の実験や観察、合唱や調理実習など感染リスクが高い学習活動を実施する際は、十分な換気など一定の感染症対策を講じるほか、給食のときは「黙食」は必要ないものの、大声での会話を控えるなどの対応を求めている。

【3月19日】

●マスク「着用減らず」 74%

 18、19日に実施した朝日新聞の世論調査で、マスク着用が13日から個人の判断に委ねられていることを受け、「あなた自身はマスクを着けることが減ったか、減らなかったか」と聞いた。「減らなかった」74%が「減った」23%を大きく上回った。「減った」は男女で差があり、男性29%、女性17%だった。また年代別では18〜29歳で33%と多めだった。

 「減らなかった」と答えた人に理由を5択で尋ねると、「感染対策のため」50%、「花粉症だから」21%、「マスクが習慣になったから」15%、「周りが着けているから」10%、「顔を隠せるから」3%の順だった。「感染対策のため」は60代で60%、70歳以上で60%。30代以下では3割程度だった。「花粉症だから」は若年層で多く、18〜29歳の29%、30代の33%が答えた。

【3月20日】

●コロナ禍でテレワーク普及 新時代の労働政策など議論 初会合

 コロナ禍でテレワークの普及が進み、働く場所や時間が多様化、仕事に対する価値観や意識も大きく変わってきている。厚労省は労働問題の研究者や法律の専門家など9人で作る研究会を発足、20日に初会合を開いた。厚労省は研究会の議論を踏まえ、新たな時代の労働政策や制度の在り方について検討を進め、来年の働き方改革関連法の見直しに反映させたい考え。

【3月21日】

●韓国、日本からの修学旅行生受け入れ 約3年ぶりに再開

 韓国では中断していた日本からの修学旅行生の受け入れが21日、およそ3年ぶりに再開され、空港では熊本県から訪れた生徒たちを歓迎する式典が開かれた。韓国政府によると日本からの修学旅行生の受け入れは1972年に始まったが、新型コロナの影響で2020年から中断されていた。韓国政府は日本からの修学旅行生の受け入れを増やしていくために、ことしの夏休みには日本の中学や高校の教職員100人余りを韓国に招待する予定だという。

【3月22日】

●公示地価上昇、地方に波及 2年連続 コロナ影響回復

 国土交通省は22日、2023年1月1日時点の公示地価を発表した。商業地や住宅地、工業地を合わせた全用途の平均は前年より1.6%上がり、2年連続の上昇となった。新型コロナの影響で落ち込んだ経済活動が回復し、住宅や店舗の需要が持ち直した。地価の上昇は都市部から地方に広がっている。全国の最高価格は、17年連続で東京都中央区銀座4丁目の山野楽器銀座本店。1平方mあたり5380万円で、前年から1.5%上がった。

【3月23日】

●「一部地域で増加に転じる可能性」 専門家組織

 厚労省の専門家組織の会合が23日開かれ、現在の感染状況について全国で減少傾向が続き、感染の第7波が始まる前の去年夏の水準を下回る状況になっていて、重症者数や亡くなる人の数も減少傾向が続いていると分析。今後の感染状況については、全国的には横ばいの傾向が続くと見込まれる一方で、年度替わりの行事など、感染リスクの高まる場面を通じて一部の地域では今月末に向けて増加傾向に転じる可能性があるという。

 専門家組織の会合で示された資料によると、22日までの1週間の新規感染者数は、全国では前週と比べて0.75倍とほとんどの地域で減少傾向が続いている。首都圏では、東京都0.79倍、神奈川県と千葉県が0.81倍、埼玉県0.73倍。奈良県は1.07倍と増加しているが、それ以外の46都道府県では減少傾向が続く。人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、鳥取県が74.09人と全国で最多、次いで島根県72.71人、長野県67.24人などで、全国では34.56人。

●飛沫防止の仕切り、撤去なら「保管を」 専門家有志が見解

 厚労省の専門家組織の有志らは23日、飲食店や窓口業務で感染対策に使われているパーティションについて、「エアロゾルについて十分な遮断はできない」としつつ、「今後も活用はあり得る」とする見解を示した。政府は、5月8日の新型コロナの「5類」移行に先立ち、マスク以外の感染対策についても、専門家の意見を聴きながら見直しを進めている。

 パーティションに期待される役割は、口から出る飛沫による感染対策。今後も、窓口業務のように多くの人と対面で接する場、不特定多数が密集して飲食する場などで「飛沫を物理的に遮断するための活用はあり得る」とした。一方、コロナは、飛沫より小さく空気中を漂うエアロゾルからも感染するため、換気の徹底が重要と指摘。パーティションを撤去する場合、地域の流行が高まり再利用するときに備え、当面保管を考慮するよう求めた。

【3月25日】

●茨城空港 新型コロナの影響で運休の国際線、3年ぶりに再開

 茨城空港の国際線は新型コロナの影響で、2020年3月からすべて運休していたが、25日から韓国のインチョン(仁川)空港との間を結ぶチャーター便の運航が始まった。午後4時すぎに、3年ぶりとなる国際線の最初の便が到着し、降り立ったおよそ170人の乗客たちは県の職員や空港の関係者などから歓迎を受けていた。

 茨城空港(百里飛行場)旅客ターミナルビル 出典:ウキメディア・コモンズ

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【3月26日】

●自衛隊のコロナワクチン大規模接種終了 東京と大阪で閉所式

 防衛省が東京と大阪に設置した新型コロナワクチンの大規模接種会場は、利用者の減少や、新型コロナが5類に移行されることなどを受けて、25日で接種を終え閉鎖された。26日は2つの会場で式典が開かれ、東京会場に出席した浜田防衛相は「およそ1年2か月にわたり、国民に安心を与え、信頼と期待に応えることができた」と述べ、関係者の労をねぎらった。

 自衛隊による大規模接種はおととし5月に始まり、その年の11月末で一旦終了したが、オミクロン株の流行を受けて、去年1月から東京で、2月からは大阪で再開されていた。ことし1月ごろからは予約数が減少傾向となり、予約枠の20%前後にとどまっていた。

●マスク着用状況調査 去年からおおむね横ばいの状態

 東京大学の仲田准教授と一橋大学の高久准教授のグループは、去年8月から毎週、マスクの着用状況についてインターネットでアンケート調査を続けていて、着用が個人の判断に委ねられた3月13日より前の今月第1週の時点のデータを公表した。マスクを着用するかどうかの判断に使う情報を複数回答で尋ねると、住んでいる地域の感染状況を参考にしている人が5割にのぼる一方、周囲の人の着用状況を参考にする人も3割いるという。

●米国、マスク「いつも着ける」は12%

 米国ではCDCがマスク着用を推奨しなくなっても、独自ルールで着用を求め続ける店もある。3月初め、ニューヨーク中心部にある地下鉄駅の近くでは、着用している人の姿もみられる。2月の調査によると、米国では「いつも着ける」は12%、「ときどき着ける」「たまに着ける」が44%、「まったく着けない」44%だった。

 専門家は、マスクの着用が個人の判断になった現在も、飛行機やバスなどの公共交通機関でマスクを着用する人がいることを例にあげ、「アメリカで1割から2割の人がマスクを着用しているのは研究者としては喜ばしい。マスクをする習慣がなかったアメリカでマスク着用が『新しい生活様式』になったのかもしれない」と話している。

【3月28日】

●上海、厳しい外出制限から1年 経済の持ち直し、進むかが課題

 中国の上海では、1年前の3月28日から厳しい外出制限が2か月余り続けられ、住民の生活のほか、経済活動にも混乱が広がった。上海市の去年の域内総生産の伸び率は、前の年と比べてマイナス0.2%と1978年以降で初めてマイナス。上海市のことし1月と2月消費動向は、去年の同じ時期と比べて2.7%の減少と飲食業などでの消費が落ち込んでいて、経済の持ち直しが進むかが課題。上海の今後の動向は、中国経済全体にも大きな影響を与えるとみられる。

【3月29日】

●WHO、コロナワクチン定期接種の推奨対象を公表 高齢者・妊婦など

 WHOは28日、多くの人がワクチン接種や感染で免疫を獲得したことを受け新型コロナのワクチン接種の優先度に関する新たな指針を公表した。それによると、医療従事者のほか、高齢者、糖尿病や心疾患などの基礎疾患がある人、免疫不全の人、それに妊婦については、最も優先度が高いとして、半年または1年ごとの定期的な接種を推奨している。

一方で、60歳未満の健康な成人や、基礎疾患のある子どもや若者については、追加接種は1回までを推奨し、「公衆衛生上の効果は比較的低い」として、定期的接種には推奨はしていない。さらに、健康な子どもや若者への接種については安全で効果はあるものの、感染時に重症化しにくいため「接種による公衆衛生上の効果は、はしかなどの従来の子ども向けワクチンと比べ、はるかに低い」として、接種は各国の判断に委ねている。

●ワクチン確保量、算定根拠 十分に確認できず 会計検査院

 新型コロナのワクチンは、厚労省が複数のワクチン製造販売会社と契約を結び、接種の実施費用を含め、令和2年度と3年度の2年間でおよそ4兆2000億円が支出されている。ワクチンの契約数は最大で8億8200万回分に上ったが、会計検査院が調査した結果、厚労省の当時の資料には確保を決めたワクチンの量の算定根拠が十分に記載されていなかった。

 このため、検査院は「必ずしも適切とは認められない」と指摘し、今後は、緊急時でも、事後に判断の妥当性を検証できるようにするよう求めた。さらに納入前にキャンセルしたワクチンのうちアストラゼネカの6225万回分の返金額について算定根拠の確認をしていなかったことも分かった。別の製造販売会社のものを含めると、キャンセルしたワクチンは合わせて2億回余りに上り、検査院は、今後それぞれと行う返金の交渉では金額の妥当性を確認するよう求めた。

●コロナ禍でパスポート失効多く 旅行業界、取得更新促す取り組み

 政府観光局によると、日本を訪れる外国人旅行者の数は、先月、コロナ禍前の2019年の同じ月と比べ、56%に回復した一方で、出国する日本人は2019年の35%と回復が遅れている。業界団体「日本旅行業協会」では、出国する人の回復が遅れている要因として、コロナ禍で海外旅行の機会が大きく減り、パスポートを更新せず、そのまま失効した人が多いことがあるとみて、パスポートの取得や更新を促す新たなキャンペーンを始めることになった。

【3月30日】

●「ワクチン購入、客観的に妥当性検証できる資料作成」 官房長官

 会計検査院が29日、ワクチンの量の算定根拠が「必ずしも適切とは認められない」と指摘したことについて、松野官房長官は「迅速にワクチン確保を進める必要がある中、当時、購入数量の資料は作成していたものの、一部は口頭で補足的な説明を要する事項があった。今後の購入にあたっては、事後的、客観的に妥当性を検証できるような形で資料を作成するなど、指摘を踏まえた対応を実施する」と述べた。

 その一方で、「世界各国でワクチン獲得競争が継続する中、希望するすべての国民にワクチンを届けられるよう、さまざまな可能性を視野に入れたうえで着実な確保に取り組んできた。確保の取り組みは必要なものであった」と述べ、政府のこれまでの対応に理解を求めました。

●東京都、2人死亡 956人感染確認 前週比48人増

 厚労省は30日、都内で新たに956人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の木曜日より48人増えた。また、人工呼吸器かECMOを使っている重症の患者は29日より1人増えて3人。一方、感染が確認された2人が死亡した。

 3月30日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●東京 コロナ感染者、1月中旬以来増加に転じる 年度末など影響か

 東京都は30日、都内の感染状況と医療提供体制を分析・評価するモニタリング会議を開き、4段階ある警戒レベルについて、いずれも下から2番目を維持。新規感染者数の7日間平均が29日時点で812人、前週の142%となったことが報告された。7日間平均が前の週を上回るのは、ことし1月中旬以来。一方、入院患者数は483人と前の週よりおよそ140人減った。

 また、オミクロン株「XBB.1.5」の増加傾向が続いていて、先月は全体の3.2%が今月は7倍の21.1%に増えた。国立国際医療研究センターの大曲国際感染症センター長は「感染者数が増加に転じたのは変異株への置き換わりや年度末で接触機会が増えていることなどの影響が考えられる」として、今後に警戒感を示すとともに感染対策の継続を呼びかけた。

【3月31日】

●手洗い・3密回避、個人判断に 5類移行後 消毒や換気も

 新型コロナの感染症法上の類型が5類に移行する5月8日以降、手洗いや換気、検温などの基本的な感染対策が個人の自主的な判断に委ねられることになった。加藤厚労相は31日の閣議後会見で、これまで政府が求めてきた対策について、「(5類後は)一律に求めない」と述べた。類型変更に伴い、基本的対処方針は廃止されるため、厚労省は対策の考え方を見直した。

 個人に対してはマスクだけでなく手指消毒、換気、3密回避、人との距離の確保について一律の要請をやめる。ただし、感染流行期は高齢者らに混雑した場所に行くのを避けることは有効だと周知する。事業者に対しては、入場時の検温、消毒液の設置、アクリル板などパーティションの設置について一律の要請をやめる。対策の手間やコストに応じて実施を判断してもらう。重症化リスクの高い人が集まる医療機関や高齢者施設については、引き続き必要な対策を求めていく。

●国内、43人死亡 6730人感染確認

 厚労省が31日に発表した国内の新たな感染者は、空港の検疫などを含め6730人、累計3345万5381人。先週の24日金曜に比べ1915人減った。都道府県別の最多は東京都の854人、次に北海道492人、神奈川県413人、愛知県323人、大阪府316人、埼玉県302人と続く。また亡くなった人は国内合わせて43人、累計7万3908人。また人工呼吸器やECMOをつけたり集中治療室などで治療を受けている重症者は67人で、30日と比べて1人減った。

●新規感染者数 1週間平均 前週比1.12倍 2か月半ぶり増加

 新規感染者数を1週間平均で比較すると、▽3月16日までの1週間では前の週の0.82倍、3月23日は0.80倍と10週連続で減少傾向が続いていたが、3月30日まででは1.12倍と、ことし1月中旬以来、およそ2か月半ぶりに増加に転じた。一日当たりの全国の平均の新規感染者数は、先週よりおよそ750人多い7080人余りで、31の都道府県で前の週より多くなっていて、増加の幅が大きい地域は、▽福井県で1.67倍▽広島県で1.39倍▽茨城県で1.36倍▽東京都で1.35倍などとなっている。人口当たりの感染者数が最も多いのは鳥取県で、人口10万当たり79.87人。

●専門家「下げ止り示す様子、はっきりしてきた」

 政府分科会メンバーで東邦大学の舘田教授は、現在の感染状況について「増加の兆しというより、下げ止りを示す様子がはっきりしてきた」と分析。「直近の東京都のデータでは、全体のおよそ30%が感染力が高く免疫から逃れやすいXBB系統のオミクロン株に感染と報告されている。この変異株への置き換わりが進み、さらに年度替わりで飲食の機会、人と人との接触が増えることで再び増加するリスクが高まっている」と指摘した。

 「多くの人はコロナに感染してもかぜのような症状で治ってしまう人もいるため、検査を受けない人も増え、正確な感染者数の把握が難しくなっている。喉の痛みを感じるなど、風邪をひいていると思ったらコロナ感染の可能性も改めて認識し、体調が悪い時は無理せず療養すること、重症化リスクが高い高齢者などとの面会を控えること、マスクを積極的に着用し、感染を広げないように気を配ってほしい」と話した。

 以下は3月31日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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2023年3月31日 (金)

新型コロナ2023.03 個人判断

 政府は1月27日、新型コロナの感染症法上の分類を5月8日に、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げることを決めた。マスクの着用については、3月13日から屋内・屋外を問わず「個人の判断」に委ねることになった。一方で、高齢者などへの感染を防ぐため、医療機関を受診する際などは着用を推奨するとしている。

 厚労省の専門家組織の8日会合では、感染状況は全国で減少傾向が続き、感染の第7波が始まる前の去年夏の水準を下回る状況と分析。重症者数や亡くなる人の数も減少傾向が続いている。今後の感染状況については、全国的には横ばい傾向が続くと見込まれるが、年度替わりの行事などを通じて一部地域では今月末にかけて増加に転じる可能性がある。また、4つの県では前週より増加傾向で、注意が必要だとしている。

 2023年3月1日から15日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.02 XBB系統」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

 

【3月1日】

●新型コロナ発生源、「中国の研究所から流出可能性高い」 FBI長官

 FBI(米連邦捜査局)のレイ長官は28日、米国のFOXニュースのインタビューで、新型コロナの発生源について「FBIは、武漢の研究所における事故である可能性が高いと評価している」と初めて公の場で示した。そのうえで、レイ長官は「私には、中国政府が米国政府などによる調査を妨害し、真実をわかりにくくしようとしているように思える」と述べて、中国を批判した。

 FBIの旗 出典:ウキメディア・コモンズ

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●香港、マスク着用義務を撤廃 コロナ対策の規制すべてなくなる

 香港では、3年前の7月から公共の場所でのマスク着用が義務づけられ、違反すれば罰金が科せられるなど取締りの対象となってきた。しかし、現地のメディアは、「香港は着用義務が残る最後の地区になってしまう」などと、批判する論調を伝えていた。こうした中、香港政府は感染が抑えられているとして、屋内・屋外を問わず、3月1日からマスクの着用義務を撤廃、これでコロナ対策による規制はすべてなくなった。

 香港の夜景 出典:ウキメディア・コモンズ

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● コロナ診療報酬増、見直し議論を開始 厚労省

 厚労省によると、発熱などでコロナ感染が疑われる患者が発熱外来を受診したとき、医療機関は感染対策などのために原則4470円(2月末までは5500円)の診療報酬の特例加算を受け取れる。特別加算の対象となった診療は、2022年6月の1カ月間で250万回程度あったという。入院でもコロナ患者には通常よりも高い診療報酬を設定。重症患者への対応では通常の3倍にあたる診療報酬が設定されている。

 1日の中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)では、医療側の委員が「高齢者への対応も必要」などとして、特例の延長を求めた。一方、医療費を負担する健康保険などの保険者側は「特例措置の縮小は可能だ」と主張した。

●生活保護申請、3年連続増 昨年 物価高・コロナ禍の支援終了が影響か

 2022年の生活保護の申請件数は23万6927件で、前年と比べて1850件(約0.8%)増。3年連続の増加。物価高騰に加え、コロナ禍の経済的な支援策が終わったことも件数を押し上げたとの見方もある。厚労省が1日、2022年12月分の調査結果を公表、これをもとに2022年1年間(速報値)の件数を集計した。申請の推移をみると、1~4月は前年同月と比べて減少が続いたが、5月に10.6%増と急拡大。その後も11月まで7カ月連続で前年を上回った。

●東京都、5人死亡 1028人感染確認 前週比167人減

 厚労省は3月1日、都内で新たに1028人が新型コロナの感染確認を発表した。1週間前の水曜日より167人減った。また人工呼吸器か、ECMO(人工心肺装置)を使っている重症の患者は、2月28日より2人減って11人だった。一方、感染が確認された5人が死亡した。

 3月1日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【3月2日】

●外国クルーズ船、東京のターミナルに 3年前の開業以来初入港

 外国のクルーズ船は、横浜港に寄港した船で新型コロナの集団感染が発生した3年前の2月以降、国内での受け入れが停止されていたが、1日、水際対策の緩和後、外国事業者の船として初めてドイツの「アマデア」(日本郵船の旧「飛鳥」)が、静岡市の清水港に入港した。そして2日には、アマデアが江東区の東京国際クルーズターミナルに入港した。今月は外国のクルーズ船6隻が東京国際クルーズターミナルに入港し、来月以降も入港が相次いで予定されているという。

 クルーズ客船「アマディア」 出典:ウキメディア・コモンズ

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【3月3日】

●5類移行後も介護事業者への支援継続へ 厚労省

 厚労省は、新型コロナの感染症法上の位置づけが5月8日に「5類」に移行したあとの医療提供体制について、検討を進めている。こうした中、重症化リスクが高い高齢者への介護サービスを提供する事業所については感染対策の徹底が引き続き必要だとして、現在実施している支援や措置について、「5類」移行後も原則として継続する方向で検討している。

●岸田首相 「5類」移行後 状況変われば「2類相当」に見直しも

 3日の参議院予算委員会で立憲民主党の石垣氏は、新型コロナの「5類」への移行をめぐり「死者の絶対数は増えている。第8波以上に死者が増えた場合は、どう対応するのか」とただした。これに対し首相は「5類に位置づけたあと、オミクロン株とは大きく病原性が異なる変異株が出現するなど、科学的な前提が異なる状況になれば、直ちに対応を見直す。具体的には2類感染症と同様の入院勧告などの各種措置を適用することが考えられる」と述べた。

【3月4日】

●コロナワクチンの重症化予防効果、4回接種で78.2% 長崎大

 長崎大学などのグループは、オミクロン株「BA.5」が広がった去年7月~9月に、9都県11医療機関でコロナの疑いで入院した16歳以上の789人について、ワクチン接種歴や検査結果、症状などを調べた。先月、厚労省の専門家会合で示された結果によると、新型コロナで入院した人が重症化する割合について分析すると、ワクチンを2回接種した人では、接種していない人と比較して16.3%、3回接種した人で56.9%、4回接種した人で78.2%低かったという。

 また別の分析で、入院に至った割合については、2回接種した人で58.2%、3回接種で72.8%、4回接種で84.8%低くなっていた。今回、分析した期間に接種されていたのはほとんどが従来型ワクチン。研究グループは接種回数が多いほど有効性が高まる傾向が見られたとする。同大学の前田特任研究員は「従来型ワクチンでもBA.5に対して重症化予防などで有効だった。2回や3回目で接種が終わり時間がたっている場合、若い人でも追加接種は推奨できる」と話す。

【3月7日】

●「内閣感染症危機管理統括庁」設置の改正案 衆議院で審議入り

 内閣法などの改正案は、7日の衆議院本会議で審議入りした。感染症対策を強化するため、総合調整などの司令塔機能を担う「内閣感染症危機管理統括庁」を内閣官房に新たに設置し、トップに「内閣感染症危機管理監」を置いて官房副長官を充てる。また、感染症の発生や蔓延の初期段階から迅速・的確に対応できるよう、首相による都道府県知事などへの指示権を、政府対策本部を設置した段階で使えるようにすることも盛り込まれている。

●ワクチンの接種、重症化予防軸足 新年度5月8日から

 新型コロナの新年度のワクチン接種について、厚労省は7日、65歳以上の高齢者らを対象にした接種を5月8日から始めることを決めた。全額公費負担の「臨時接種」は来年3月末まで継続し、高齢者だけでなく生後6カ月以上のすべての接種希望者が、1年間は無料で接種できる。同日開かれた厚労省の専門家分科会で方針が正式に了承された。ワクチン接種の目的は、発症予防よりも重症化予防に軸足が置かれる。

 新年度の接種は5月からと9月からの2回。高齢者や基礎疾患があるなど重症化リスクの高い人たち、こうした人に接する機会が多い医療機関や高齢者・障害者施設などの従事者は2回接種する。それ以外の人は5月は対象とならず、9月からの1回接種となる。また、5~11歳を対象にしたオミクロン株対応ワクチンの接種は、3月8日から始めることも決まった。中国・武漢由来の従来型ワクチンを2回以上接種した人への追加接種で使う。

●秋冬 若い世代、ワクチン検討を

 この春以降の新型コロナワクチン接種について、厚労省は「感染による重症者を減らすこと」を第一目的に掲げた。オミクロン株が主流となってワクチンを繰り返しうっても感染は十分に防げなくなった一方、重症化を避ける効果は比較的長く続くことが明らかになってきた。

 ワクチンに詳しい北里大の中山特任教授は「2年ほどたち、mRNAワクチンの限界が見えてきた。その代表が、感染・発症予防効果の早期の減衰」。重症化リスクのない、比較的若い世代の人たちはこの秋冬、「BA.4および5対応の2価ワクチンをうったことのない人には、接種をすすめたい」と話す。

【3月8日】

●5類移行後の診療報酬の特例措置見直し案 厚労省

 政府は、5月8日に「5類」に移行したあとの医療費の負担や医療体制について検討を進めていて、厚労省は、医療機関に支払われる診療報酬の見直し案を、8日の中医協(中央社会保険医療協議会)に提示した。それによると、医療提供体制を維持するために設けられていた「発熱外来」であることを公表した場合の加算を廃止するほか、新型コロナの重症者などを入院させた際の加算も縮小するとしている。

 一方で、一般の医療機関でも入院の受け入れや診察ができることになるため、医療機関内の感染防止対策への加算は維持するほか、これまで自治体が主に担ってきた入院調整の業務が想定されるとして、調整を行った場合の診療報酬を新たに設ける。このほか去年、承認された新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」を保険適用の対象とする。治療1回当たりの薬の価格はおよそ5万1850円で現在は無料だが、公費負担が終了すれば、3割負担で1万5千円余りとなる。

●新規感染者数「一部で増加傾向可能性に注意」 専門家組織

 厚労省の専門家会合が8日に開かれ、現在の感染状況について全国で減少傾向が続き、感染の第7波が始まる前の去年夏の水準を下回る状況になっている。重症者数や亡くなる人の数も減少傾向が続いているとしている。今後の感染状況について専門家組織は、全国的には横ばいの傾向が続くと見込まれる一方で、年度替わりの行事などを通じて一部の地域では今月末にかけて増加傾向に転じる可能性があるという。

 また、4つの県では今週は前の週より増加傾向になっていて、この傾向が続くかどうか注意が必要で、さらにより免疫を逃れやすいとされる変異ウイルスの動向を監視し続けることが必要。季節性のインフルについては全国で前の週と比べて若干減少していて、例年の傾向を踏まえると減少傾向が続くと見込まれるものの、引き続き注意が必要だとしている。

●1週間の新規感染者数、前週比0.81倍 一部で増加も

 厚労省の専門家組織の会合で示された資料によると、7日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて0.81倍と減少傾向が続いている一方、一部の地域では増加に転じている。首都圏の1都3県では、東京都が0.89倍、神奈川県が0.79倍、埼玉県が0.85倍、千葉県が0.87倍と減少が続いている。一方で、鳥取県が1.11倍、宮崎県が1.08倍、秋田県と沖縄県が1.03倍と4つの県で増加に転じている。

 人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、鳥取県が140.58人と全国で最も多く、次いで島根県が126.80人、徳島県が105.62人となっていて、全国では56.65人となっている。

●医療機関などの感染対策 新たな考え方

 8日の専門家会合では、メンバーらがまとめた「5類」移行にあわせた、医療機関や高齢者施設での感染対策についての新たな考え方を示した文書が提出された。この文書では、新型コロナが「5類」移行後も流行が繰り返し起きることが想定されるとし、病気の人や高齢者など、重症化リスクの高い人が集まる医療機関や高齢者施設では、施設内で感染が広がらないよう感染対策を続けることが求められるとし、必要な対策を一問一答の形式で示している。

●「5類」に変更後、身近な感染対策

 新型コロナの感染症法上の位置づけがことし5月に「5類」に変更されたあとでも求められる身近な感染対策について、厚労省の専門家組織のメンバーらが新たな見解をまとめ、「5つの基本」として示した。身近な感染対策については最初の「緊急事態宣言」が出されていた2020年5月に当時の政府の専門家会議が「新しい生活様式」を示していたが、今回はこれを抜本的に改めている。

 新たにまとめた「5つの基本」は、▼体調不安や症状があるときは自宅で療養するか医療機関を受診すること、▼その場に応じたマスクの着用やせきエチケットの実施、▼3密を避けることと換気、▼手洗い、▼適度な運動と食事。

 「5つの基本」 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●人手不足の観光業界が合同就職面接会 急速に需要回復 東京

 コロナ禍から旅行需要が急速に回復する中、観光業界で人手不足に悩む企業が相次いでいるとして、東京都が「合同就職面接会」を開いた。初日の8日は、バス会社やホテルの運営会社など30社余りが参加。都によると、観光業界では人手不足による影響が広がっていて、参加した企業の中には、客室をおよそ7割しか稼働できないというホテルの運営会社も出ている。企業の担当者は、仕事を求めて訪れた人に働きやすさなどをアピールしていた。

【3月9日】

●「パンデミック」3年、続く変異 終息なお見えず

 新型コロナ感染症について、世界保健機関(WHO)が世界的な流行を意味する「パンデミック」の状態と認定してから、11日で3年となる。最近は大規模な感染拡大は見られず、日本でも対策の緩和が続く。ただ新たな変異株の登場は続いており、このまま終息に至るのか、先行きは不透明。WHOのまとめによると、2020年1月に新型コロナの出現が報告されて以来、今年3月5日までに世界でおよそ7億6千万人が感染し、約687万人が亡くなった。

 WHOの委員会は今年1月、「パンデミックは『移行期』にある」との見方を示した。最も深刻な段階から、世界的なリスクが下がる段階に移りつつあるとの認識。とはいえ、いまでは各国とも感染者数の細かい算定をやめており、正確な実態は分からなくなっている。必要とする世界の人々にワクチンや治療薬が十分行き渡っているとも言えない状況だ。

●JR東海、列車内などでのマスク着用呼びかけ 13日以降取りやめへ

 JR東海はこれまで新幹線や在来線の車内と駅の構内で、マスク着用などを呼びかけるアナウンスをしてきたが、政府の方針を踏まえて今月13日以降、混雑時間帯を含め、こうした呼びかけをやめることになった。また、13日以降は新幹線や在来線の特急で、座席を回転させて向かい合わせで座ることも認める方針。一方、接客にあたる窓口の駅員や列車の乗務員は引き続きマスクを着用するという。

●東京ディズニーランドなどでのマスク、13日以降は個人の判断に

 東京ディズニーランドと東京ディズニーシーは、今月13日から園内でのマスクの着用について来園者、従業員ともに個人の判断に委ねる。そのうえで、人と人との間で一定の距離を確保するなど基本的な感染対策を、引き続き協力を求めることにしている。一方、大阪のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)は、今月13日以降、来園者のマスクの着用は個人の判断に委ねる方針をすでに決めている。園内で働く従業員は、当面マスクの着用を続ける。

● マスク緩和、少しずつ  「客が個人判断」「従業員は当面着用」 慎重な業界も

 13日からマスク着用が個人判断に委ねられることを受け、消費の現場では顧客に対する着用呼びかけをやめるといった運用指針が相次いでいる。鉄道・バス、航空などは、これまでのマスク着用に関する放送をやめる。ただ、政府方針では通勤ラッシュ時など混雑する電車内では着用が推奨されており、混雑時間帯の会話や大声を出す乗客に配慮を求める場合があるという。接客現場の従業員については、大手百貨店など引き続きマスクの着用を求めるところも多い。

 一方、顧客にも引き続きマスクの着用を求めるところもある。歌舞伎座などで劇場内ではマスクの着用を推奨。美容室では、施術時に顧客と美容師との距離が近くならざるを得ず、来店客に着用をお願いする所もある。ただ、政府は高齢者などへの配慮は引き続き必要としており、着用ルールの緩和に慎重な業界も一部に残る。社会全体での「脱マスク」にはまだ時間がかかりそう。

●東京・上野公園など都立公園 飲食伴う花見が4年ぶり可能に

 新型コロナの影響で自粛が求められていた東京・台東区の上野公園などの都立公園での飲食を伴う花見が4年ぶりにできるようになった。都によると、上野公園のメインの「さくら通り」については、混雑を避けるため花見期間となっている今月13日から来月16日までは引き続き自粛を求めるという。

●ライオン2頭コロナ感染後死ぬ 和歌山・白浜

 和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドは9日、飼育していたライオン23頭のうち1月9日に19歳のオス、12日に21歳のメスが死亡、死後の検査でコロナ感染が判明した。ほかにも咳などの症状がみられたライオンがいたため、全頭に検査を実施した。同時期にライオンの飼育員が新型コロナに感染していたことから、飼育員からライオンに感染したとみている。死んだ2頭は高齢で、感染後に肺炎を発症したとみられる。国内の動物園から感染報告は初めて。

【3月10日】

●5類移行後の医療費負担や医療体制、見直し方針公表

 厚労省は10日、「5類」へ移行後の医療費負担や医療提供体制について、具体的方針を明らかにした。現在は窓口負担が無料となっている医療費のうち、検査や陽性が判明したあとの外来診療の費用は、自己負担とする。ただ、急激な負担増加を避けるため、高額な治療薬は引き続き公費で無料とし、入院費は、原則として自己負担を求めるものの、月に最大2万円を軽減する措置を設ける。これらの措置はそれぞれ9月末までと、その後感染状況などを踏まえ検討する。

 一方、幅広い医療機関で受診ができる体制を目指して、来年4月までに段階的に移行を進めていく。具体的には、外来診療は季節性インフル検査をシーズン中に1人でも行った全国のおよそ6万4千の医療機関の受け入れを目指し、入院はおよそ8200あるすべての病院で受け入れを目指す。また医療機関に支払われる診療報酬は、入院に加算していた特例措置を縮小する。入院調整については医療機関の間で行う仕組みに段階的に移行する。

●ワクチン接種後の死亡で初の認定 因果関係「否定できず」

 厚労省の専門家部会は10日、去年11月に「BA.5」対応ファイザーワクチンで4回目接種後に死亡した42歳女性は、ワクチン接種と死亡との因果関係が「否定できない」と評価した。「副反応疑い報告制度」は、新型コロナワクチンの安全性を監視するため、副反応が疑われる場合は医療機関などが国に報告、PMDA(医薬品医療機器総合機構)が評価する 。この制度での死亡例はおよそ2千件、ほとんどが評価不能とされ、因果関係が「否定できない」は今回が初めて。

 一方、本人や家族の申し立てにもとづいて医療費や死亡一時金などの支給を決める「健康被害救済制度」もあり、死亡との因果関係が「否定できない」として死亡一時金が認定された例は30件ある。厚労省によると、この制度は「副反応疑い報告制度」と比べて、厳密な因果関係を必要としないなどの違いがあり、「副反応疑い報告制度」で「評価できない」とされた例でも、認定される場合がある。

●業界2割、マスク着用継続 医療や競技団体など 政府、指針見直し状況調査

 マスク着用について政府は10日、業界団体ごとのガイドライン(指針)の見直し状況を発表した。2割弱の団体が、従業員らに引き続き着用を求めるとしている。指針は政府の要請を受けて195の業界団体が作った。このうちクラシック音楽やエステなどの18団体は着用の対象を従業員のみとする。16団体は従業員と利用者の双方に着用を求める。日本医師会や日本歯科医師会のほか、バスケットとバレーなどのリーグは屋内観客にも着用を要望する。

 スーパーやコンビニなどの小売り、外食、プロ野球、プロサッカー、葬儀など153団体は各事業者に委ねる。8団体は9日時点で見直し作業中という。一方、新型コロナが5月8日に感染症法上の分類で「5類」に引き下げられると、これまでの指針を維持するかどうかは業界団体が判断することになる。オフィスなどのガイドラインを作っている経団連は、廃止する方針だ。

【3月12日】

●世界の感染状況まとめてきた米大学、コロナ特設サイト更新終了

 米国のジョンズ・ホプキンス大学は、特設サイトを2020年1月に立ち上げ、新型コロナの発生状況や死者数などの世界中の最新データを、国や地域ごとにまとめて発信してきた。サイトはインターネット上で公開された各国政府の情報を自動的に収集するなどしてデータの更新を続け、日本や海外のメディアが世界の感染状況を伝えるのに利用するなど、さまざまな形で活用されてきた。

 しかし、最近になり、リアルタイムに公開される情報が少なくなり、正確なデータの把握が難しくなったとして、現地時間の10日午前8時すぎに最後のデータ更新を行った。今後もこれまで集めたデータは公開するとしている。運営に携わった大学の研究者ブラウアー氏は「更新終了は複雑な気持ちだ。パンデミックはまだ終わっていないが、世界が新型コロナを理解するのに重要な役割を果たせたことを誇りに思っている」と話した。

 ジョンズ・ホプキンス大学 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【3月13日】

●マスク着用、きょうから個人の判断に

 新型コロナの感染症法上の位置づけが5月8日に「5類」に移行するのを前に、政府は3月13日からマスクの着用を個人の判断に委ねる。一方で、高齢者などへの感染を防ぐため、医療機関を受診する際などは着用を推奨するとしていて、政府は混乱が生じないように、SNSやテレビCMなども活用して丁寧に周知していく方針。厚労省は「マスクを着用した方がいい場面を示しているので、参考にしてもらいながら、場面に応じて個人で判断してほしい」としている。

●岸田首相、マスク着用せず官邸入り 着脱の考え方を説明する考え

 岸田首相は午前8時すぎ、マスクを着用せずに首相官邸に入り、記者団に対し「マスクの着脱は個人の判断に委ねることとなるが、個人の着脱を強制するものではない。私自身、マスクを外す場面が増えると考えている」と述べた。そのうえで「換気が難しい場面や、高齢者施設を訪れる際など重症化リスクの高い方々と接するような場面では着用をお願いするが、より具体的な説明を多くの国民が戸惑わないような形でしっかり発信していくことは重要だ」と述べた。

 国会では13日から、政府の方針に合わせてマスクの着用は、個人の判断に委ねられることになった。午前9時過ぎから始まった参議院予算委員会の集中審議では、岸田首相と閣僚がマスクなしで質疑に臨んだ。また、これまで答弁者の前に置かれていたアクリル板も、13日から設置されなくなった。一方、出席した議員の一部や、官僚の多くは、引き続きマスクを着用していた。

●「新型コロナ感染症」 5類移行も法令上の名称変わらず

 13日の厚労省の専門家による部会で、新型コロナが5月8日に「5類」に移行したあとの法令上の名称などについて議論が行われ、当面は今の「新型コロナウイルス感染症」を継続して使用する方針を決めた。法令上の名称について厚労省は、これまで感染症法上の位置づけが5類に移行することに合わせて「コロナウイルス感染症2019」とする案も含め、見直しの検討を進めていた。

 新型コロナは現在、感染症法で「1類」~「5類」とは別の「新型インフルエンザ等感染症」に含まれる「新型コロナウイルス感染症」として規定されている。しかし、名称を変更すると「今後、感染対策は行わなくてよくなった」などと国民に誤った印象を与えかねないという意見が専門家などから寄せられたため、現在の名称を継続すべきと判断した。一方で、将来的にウイルスが弱毒化するなど特性が変化すれば、名称を見直す方針も了承された。

●抗体保有、全国で45%

 新型コロナに自然感染した後にのみできる抗体の保有率が、2月時点で全国で42.3%(速報値)に上ったことがわかった。厚労省が13日の感染症部会で公表した。欧米と比べ低水準だが、昨年11月の28.6%(確定値)から大幅に上がった。地域差も大きく、福岡、沖縄両県で6割弱、岩手県で3割弱だった。抗体保有率の調査は、2月19~27日に全国で献血をした1万3121人を対象に行った。

【3月14日】

●ワクチン接種後死亡の11人に一時金支給 因果関係否定できず

 新型コロナのワクチンを接種後に死亡した人について、予防接種法に基づく 「健康被害救済制度」で国が認定した場合には死亡一時金が支給されるが、これまでに20代~90代の男女30人が認められている。厚労省は14日、接種後にうっ血性心不全や脳梗塞、突然死などで亡くなった52歳~83歳の男女11人ついて、新たに救済対象とすることを決めた。このうち7人は高血圧症や糖尿病などの基礎疾患があった。死亡一時金の支給が認められたのはこれで41人となった。

●東京都医師会会長、「マスクは必要に応じて着用することが大事」


 東京都医師会の尾崎会長は14日の定例会見で、新型コロナ対策としてのマスクの着用が13日から個人の判断に委ねられたことについて「マスクはいるかいらないかではなく、必要に応じて着用することが大事だ」と述べた。また、新型コロナが5月8日に「5類」へ移行することについて、「新型コロナはなくなったわけではない。今後は重症化しやすい高齢者をどうやって見極めるかが大事になる」と述べた。

 「5類」に移行したあとの医療提供体制について、「コロナは発熱などの症状がでる前に感染力をもっていて、インフルと同じように診られるかというと難しい医療機関もあると思う。その場合は地域で連携することで発熱症状のある患者が放置されないようにしたい」と述べた。

●児童・生徒、自殺最多514人 昨年コロナ禍以降3年で3割増

 2022年の自殺者数(確定値)は2万1881人で、2年ぶりに増加した。厚労省が14日に公表した。また児童・生徒(小中高校生)の自殺者数は統計のある1980年以来、過去最多の514人になった。コロナ禍以降、顕著な増加がみられ、この3年間で3割増えた。男子高校生が全体の4割を占めた。自殺の原因や動機は、小中高いずれも「学校問題」が最多。具体的には「学業」「進路」のほか「学友」が目立った。

 自殺者数の全体では、男性が1万4746人(前年比807人増)、女性が7135人(同67人増)でいずれも増えた。男性は2009年以来の増加。女性は3年連続増。年代では50代が4093人(18.7%)と最も多かった。原因や動機は、「健康問題」が最も多く、「家庭問題」、「経済・生活問題」と続く。自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)は全体で17.5。都道府県別では山梨が24.7で最も高く、秋田23.7、宮崎22.7と続いた。

【3月15日】

●中国政府、観光ビザ3年ぶりの再開を発表

 中国外務省の汪報道官は14日の記者会見で、観光を含むあらゆるビザの申請を15日から再開すると発表。中国政府は、2020年3月以降、外交官などを除いて外国人の入国を停止させる措置をとっていたが、その後、ビジネスや留学などを目的としたビザの発給は段階的に再開してきた。観光ビザの発給再開は3年ぶり。中国政府としては海外との往来を活発にして「ゼロコロナ」政策の影響などで停滞した経済を立て直す狙いがあるとみられる。

 ただ旅行や出張などで中国を訪れる日本人がこれまで多く利用してきた15日以内の短期滞在に限ってビザが免除される措置については停止されたまま。一方、中国人の海外への団体旅行も徐々に再開していて、先月、20か国を対象に解禁したのに続いて、15日からはさらに40か国増やして60か国に拡大される、この中に日本は含まれていない。

●東京都、2人死亡 816人感染確認 前週より110人減

 厚労省は15日、都内で新たに816人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の水曜日より110人減った。また、人工呼吸器かECMOを使っている重症の患者は14日より1人減って7人。一方、感染が確認された2人が死亡した。

 3月15日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●国内、61人死亡 9552人感染

 厚労省によると、15日に発表した国内の新たな感染者は空港の検疫などを含め9552人となっている。前週の水曜日に比べ2254人減った。また、国内で亡くなった人は、兵庫県で7人、大阪府6人、埼玉県4人、福岡県4人で、全国合わせて61人。また、感染が確認された人で人工呼吸器やECMOをつけたり、集中治療室などで治療を受けたりしている重症者は、15日時点で119人。14日と比べて4人増えた。

 以下は3月15日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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2023年3月 6日 (月)

新型コロナ2023.02 XBB系統

 政府は1月27日、新型コロナの感染症法上の分類を5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げることを決めた。または2月10日、マスクの着用について3月13日から屋内・屋外を問わず個人の判断に委ねるとした。国内の新規感染者数は、1月前半をピークに減少傾向にある。

 去年12月以降、 米国で感染が広がるオミクロン株「XBB.1.5」について、CDC(米国疾病対策センター)は25日までの1週間に新たに感染した人の推計で、85%がこのウイルスに感染していると発表。一方で「XBB.1.5」による重症度は、直前で主流だった「BQ.1」系統と変わらないとする分析を公表した。米国内で新たに報告される感染者は、減少傾向が続いている。

 2023年2月16日から28日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.02 マスク緩和へ」の続き。なお、感染者数・重症者数・死者数のデータは、厚労省の発表と都道府県などの発表とで異なる場合があり、特に死者数は厚労省のデータを採用しています。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】


【2月16日】

●全国で2万1347人の感染確認 前週比で1万1618人減

 厚労省によると、新型コロナの国内感染者は16日、新たに2万1347人が確認された。前週の木曜日(9日)より1万1618人減った。都道府県別の最多は東京都は1454人、前の週の同じ曜日を下回るのは30日連続。次いで大阪府1354人、愛知県1204人だった。

【2月17日】

●接触確認アプリ「COCOA」、「課題あった」 デジタル庁など報告書

 接触確認アプリ「COCOA」は、感染した人と濃厚接触をした可能性がある場合に通知されるアプリで、不具合が相次いだ。去年11月に停止され、デジタル庁と厚労省は17日、アプリの課題などを報告書にまとめて公表。不具合が起きた一因として、アプリ開発や運用などで体制整備が不十分、感染者と接触した場所や時間が分からない、接触通知の履歴を収集する機能がないためアプリの効果を検証できないなどの課題があったとしている。

 新型コロナ接触確認アプリCOCOAのビラ 出典:厚労省ホームページ

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 そのうえで、アプリを検討する初期段階からデジタル技術の専門家と感染症対策の専門家などが密にコミュニケーションをとり、速やかに対応する必要があったと指摘している。一方、通知を受けた人が他人との接触を避けるなどの行動を取ったとして、一定の効果があったとしている。デジタル庁は、将来のパンデミックに備えて、この報告書を今後のアプリ開発などに活用していく方針。ココアの開発・運用に要した費用は契約額で約13億円。

●5類移行 法令上の名称変更へ 「コロナウイルス感染症2019」案も

 新型コロナは現在、感染症法で1類から5類とは別の「新型インフルエンザ等感染症」に含まれる「新型コロナ感染症」として規定され、入院勧告や就業制限などの厳しい措置がとられてきた。この位置づけが5月8日に「5類」移行にあわせ、厚労省は感染症法上の名称を変更する方針で、「コロナウイルス感染症2019」とする案も含め検討を進めることにしている。

 厚労省は来月以降、専門家による部会で、新型コロナの名称のほか、病原体名の変更について本格的に議論することにしている。また、厚労省は5類に移行したあとの医療提供体制や、患者が支払う医療費の公費負担について段階的に見直す方針で、来月上旬にも具体的な方針を示す。

●アビガン429人に不適切投与 外来のコロナ患者にも処方

 新型コロナ感染症の治療薬として開発が進んだが、後に中止された抗インフルエンザ薬「アビガン」について、厚労省は17日、2021年末までに429人に不適切な投与があったと発表した。大半が認められていない、外来での処方をしていたケースだった。健康被害は確認されていないという。

 アビガンは富士フイルム富山化学が開発していた薬。未承認だが、2020年にコロナ患者に対して同意があれば「観察研究」という枠組みで使えることになった。ただし、動物実験で胎児に奇形が生じる懸念が確認されていたため、妊婦や妊娠可能性のある女性らに使わないよう、管理しやすい入院患者にしか認めていなかった。

【2月18日】

●米CDC 新型コロナ「XBB.1.5」が新規感染者の約8割と推計

 米国CDCは今月18日までの1週間に、国内で新型コロナに新たに感染した人のうち80.2%がオミクロン株の「XBB.1.5」に感染しているとする推計を発表した。前の週の73%と比べるとおよそ7ポイントの増加となり、去年12月以降、米国での感染拡大が続いている。一方、米国で新たに報告された感染者の数は今月15日の時点で1日平均およそ3万7000人と、先月中旬以降、減少傾向を示している。

 また新たに入院する患者の数は今月14日の時点で1日平均3600人、死者の数は今月15日の時点で1日平均およそ400人で、いずれも先月中旬以降、おおむね減少する傾向が続いている。バイデン政権は先月「感染状況が落ち着いてきた」として、2020年以降続けてきた新型コロナをめぐる「国家非常事態宣言」をことし5月11日に解除する方針を明らかにしている。

【2月19日】

●東京都、8人死亡 992人感染確認 33日ぶり前週上回る

 厚労省は19日、都内で新たに992人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の日曜日より193人増えた。前の週の同じ曜日を上回るのは33日ぶり。また、人工呼吸器かECMO(人工心肺装置)を使っている重症の患者は18日より3人減って13人。感染が確認された8人が死亡した。

 2月19日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【2月21日】

●オフィスのコロナ対策、緩和の企業も 政府のマスク着用方針受け

 政府は、3月13日からマスクの着用を個人の判断に委ねる方針。企業ではこうした政府の方針を見ながら、オフィス内感染対策を緩和する動きが出始めている。IT企業のGMOインターネットグループは、今月6日から社内の感染対策を一部、撤廃した。オフィスの中では、マスクの着用を社員の判断に委ね、席と席の間などに置いていた仕切りもすべて撤去。また、社外の人との会食を解禁。一方で、オフィスに入る際の消毒や検温などは続けている。

 またNTTグループは、会話のない状態で2m以上離れるという条件付きで、去年11月からオフィス内でのマスクの着用を不要とするなど、段階的な緩和を進めている。一方、損害保険大手の損保ジャパンは、取り引き先と対面で対応することが多いことなどからオフィス内でのマスク着用の推奨や、会議や研修を原則、オンライン開催にするといった感染対策を当面、継続する。企業の間では、アフターコロナを見据えて模索が続く。

●厚労相、マスク着用以外の対策見直しも検討 アクリル板設置など

 加藤厚労相は、記者団に「マスク着用を見直したあとも感染対策は重要で、3密の回避、人と人との距離確保、手洗い、換気などをお願いする」と述べた。「厚労省の感染症部会から『過剰とも言える感染対策はできるかぎり早期に見直しを行い、有効な方法について情報発信すべき』という意見をもらっている。今後、マスク以外の基本的な対策も専門家から意見を聞いて検討を進めたい」とし、アクリル板の設置など対策の見直し検討の考えを示した。

●訓告の元校長、救済申し立て 松井・大阪市長に「提言書」

 コロナ禍の教育施策をめぐり、批判的な提言書を松井大阪市長らに送って文書訓告を受けた元市立小学校長が21日、訓告は不当だとして大阪弁護士会に人権侵害救済を申し立てた。申立書では「独自の意見を述べたという理由で処分を受けるのであれば、私個人の問題ではなく、すべての人に関わる人権侵害」だと主張。教育専門家は「今回の訓告は、聞いたことがない対応だ。『もの言えば唇寒し』となれば、教員からの声が上がりにくくなる」と言う。

 元校長は2021年5月、「緊急事態宣言」中の小中学校についてオンライン学習を基本とした市の判断を批判する提言を、松井市長と山本教育長(当時)に郵送。通信環境の整備が不十分で現場は混乱を極めたと指摘、改善を求めた。市教委はこれに対して同年8月、「他校の状況等をしん酌することなく、独自の意見に基づき(混乱を極めたと)断じた」などとして地方公務員法上の信用失墜行為にあたると判断。元校長を文書訓告にした。

【2月22日】

●ワクチン無料接種継続 高齢者ら年2回の方針了承 厚労省分科会

 新型コロナのワクチン接種は、蔓延を予防するために緊急の必要があるとして、無料の「特例臨時接種」が今年3月末までを期限に行われている。4月以降の接種について検討する厚労省の専門家による分科会が22日開かれ、今の「特例臨時接種」を来年3月まで継続する方針が了承された。また、接種の時期や回数については、重症化リスクの高い人、医療や介護従事者などに対して、希望する場合は5月~8月にかけてオミクロン株対応の2価ワクチンの接種を行う。

 そして、高齢者なども含めた接種可能なすべての人に対して希望する場合は9月~12月にかけて接種を行う。対象は5歳以上。このほか、予防接種法に基づいた接種の呼びかけについては、重症化リスクが高くない人には自治体を通じて「接種勧奨」や「努力義務」を適用しないとする案が示され、了承された。厚労省は、来月上旬にも正式に決定したうえで必要な法令改正をするほか、秋以降に使用するワクチンについて4月以降の早い時期に決定する。

●5類後の医療体制、インフルエンザと同規模目指す

 厚労省は新型コロナの感染症法上の位置づけが5月8日に「5類」に移行したあとの医療提供体制について、幅広い医療機関で受診できる体制を目指し、必要な感染対策をとりながら段階的な移行を目指すとしている。このうち、外来診療は現在はおよそ4万2千の医療機関で行っているが、移行後は一定の期間の間に感染対策のガイドラインの周知や、パーテーションの設置など院内の感染対策への支援を行い対応できる医療機関を順次拡大する方向。

 季節性インフルの検査をシーズン中に1人でも行った全国のおよそ6万4千の医療機関を念頭に、幅広い医療機関で診療する体制を目指す方向で検討している。また入院については、およそ2千の重点医療機関を中心に受け入れを行っているが段階的に拡大し、現在病床のあるおよそ8千200の医療機関で受け入れる体制を目指す。厚労省は5類移行後の医療提供体制や医療費負担の見直しについて、3月上旬をめどに具体的な方針を示すことにしている。

●「ゾコーバ」服用で半年後の後遺症、リスク半減

 ゾコーバは発熱などの症状が改善するまでの期間が1日早まるとされ、重症化リスクが低い人も使える、新型コロナの初めての飲み薬として、去年11月12歳以上への投与が緊急承認された。塩野義製薬は日本時間の22日、米国で開かれた感染症の学会で発表した最終段階の治験の結果を発表した。

 それによると、治験に参加した1800人余りのうち、新型コロナに感染したあと一定程度の症状があり、ゾコーバを服用した患者で半年後にせきやのどの痛み、けん怠感、味覚障害など、14の症状のうちのいずれかを訴えたのは14.5%。一方、偽の薬を服用した人で症状を訴えたのは26.3%で、後遺症とみられる症状が出るリスクが45%下がった。また、集中力や思考力の低下、物忘れや不眠などの神経症状が出るリスクも33%下がったとしている。

●選抜高校野球、声出し応援OK マスク着用条件 4年ぶり歓声

 3月18日に阪神甲子園球場で開幕する第95回記念選抜高校野球大会の臨時運営委員会が22日、オンラインであり、マスクを着用しての声だし応援を認めることなどを決めた。新型コロナ感染拡大予防ガイドラインをまとめ、「大声を出す場合はマスクを着用する」などと明記した。大会の決勝は31日の予定。組み合わせ抽選会は3月10日にある。

 選抜大会、夏の全国選手権大会ともに2021、22年は大声を出しての応援や合唱を控えるよう求めていた(2020年は両大会とも中止)。また、PCR検査は行わない。体調不良者などが出た時には、必要に応じて実施する。感染者が出た場合は、可能な限り出場校が試合を行えるように、選手の入れ替えや同一回戦の中での試合日程の変更を検討する。

【2月23日】

●「マスク着用」めぐり業界団体の判断は? 対応決めかねる業界も

 政府は3月13日から屋内・屋外問わず、マスク着用を個人の判断に委ねることを決め、各業界団体にガイドラインの見直しを促している。これを受け、業界ごとの計195のガイドラインのうち、オフィス、製造事業場、民間検定試験、ゲームセンターの4つの業界は23日までに見直したガイドラインを公表した。4つの業界では、換気などの感染対策は残し「マスク着用の徹底」という記述を削除、「必ずしも着用を呼びかける必要はない」などを新たに加えたりしている。

 「マスク着用は個人の判断が基本」ポスター(2月10日作成) 出典:厚労省ホームページ

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 飲食業やオフィス、カラオケ、映画館など各業界団体が、ガイドラインの見直しについて検討を進めている。感染への不安の声が残る中で、どのようなルールにしていくか、対応に悩むところも出ている。政府は、おおむね全員の着席が可能な航空機や新幹線、高速バスなどではマスクを外すことを容認するとの考え方を示していて、業界団体の「定期航空協会」は「乗客や従業員、個人の判断に委ねる」としている。

【2月24日】

●小売業界 マスク着用ガイドライン見直し 個人や事業者の判断に

 新型コロナ対策としてのマスクの着用を個人の判断に委ねるとした政府の方針を受けて、デパートやスーパーなど12の小売業界の団体は3月13日以降、統一的なマスクの着用の推奨をやめ、個人や事業者の判断に委ねることを決め、24日連名で公表した。ガイドラインを見直したのは、全国のデパートで作る「日本百貨店協会」や、主なスーパーが加盟する「日本チェーンストア協会」、それにコンビニなどが加盟する「日本フランチャイズチェーン協会」など12の業界団体。

 12団体では共同でガイドラインを定め、店内で来店客と従業員のマスクの常時着用を徹底するとしている。3月13日以降は統一的にマスク着用を推奨することはやめ、個人の判断に委ねる。ただ事業者の判断として、利用者や従業員にマスクの着用を求めることは許容される。そのうえで、「5類」移行の5月8日をもってガイドライン自体を廃止するとし、今後は各社の対応が焦点となる。

【2月25日】

●米「XBB.1.5」、新規感染者の85%に CDC推計  重症度「変化なし」か

 米国で感染が広がるオミクロン株「XBB.1.5」について、CDCは今月25日までの1週間に国内で新たに感染した人の85%がこのウイルスに感染しているとする最新の推計を発表した。前の週の79.2%(18日発表では80.2%)と比べるとおよそ6ポイントの増加となり、去年12月以降、感染者に占める割合が上昇し続けている。

 中でもニューヨーク州を含む地域では、新規感染者のおよそ98%を占め、以前、主流だった「BQ.1」系統からほぼ置きかわった形。一方で、CDCは「XBB.1.5」に感染した場合の重症度は「BQ.1」系統と「変わらないとみられる」とする初期の分析を公表した。また、米国内で新たに報告される感染者や入院患者、それに死者の数は、先月以降、おおむね減少する傾向が続いている。

【2月26日】

●東京都、12人死亡 810人感染確認 前週比183人減

 厚労省は26日、都内で新たに810人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の日曜日より183人減った。また人工呼吸器かECMOを使っている重症の患者は、25日と同じ11人。感染が確認された12人が死亡した。

 2月26日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【2月27日】

●中国対象のコロナ水際措置、3月1日から緩和 入国時検査を限定へ

 政府は、中国での新型コロナ感染が拡大した去年12月以降、臨時の水際措置を続けていて、すべての入国者に対し入国時にPCR検査を実施するとともに、陰性証明の提出を求めるなどしている。松野官房長官は27日午後の記者会見で、この水際措置を3月1日から緩和し、入国時に実施する検査をサンプル調査に切り替えることを明らかにした。

 また、中国からの直行便が到着できる空港を羽田など4つの空港に限定し、増便を行わないよう航空会社に要請した措置はとりやめる。一方、緩和は段階的に進める必要があるとして、入国者に陰性証明を求める措置は継続する。松野氏は、緩和の理由について、中国からの入国者の陽性率が低下傾向にあることを挙げた上で「当面、今回の措置を行いながら、中国の感染状況や各国の水際措置の状況などを見つつ、柔軟に対応していく」と述べた。

●オミクロン株対応ワクチン 国内接種率43.7%

 オミクロン株に対応したワクチンの接種は、従来のワクチンで2回目までを終えた12歳以上の人を対象に去年9月から始まった。政府が27日に公表した最新の状況によると、これまでに国内で新型コロナのオミクロン株に対応したワクチンの接種を受けた人は5506万人で、全人口に対する接種率は43.7%となった。このうち、65歳以上の高齢者は2677万1千人で接種率は74.5%。

 また、5歳から11歳の子どもを対象にした従来ワクチンの接種のうち、去年9月から始まった3回目の接種を受けた人は65万2千人で全体の8.9%。1回目を受けた人は175万7千人で全体の24%、2回目の接種を受けた人は169万5千人で全体の23.2%。このほか、去年10月から始まった生後6か月から4歳の乳幼児を対象にした従来のワクチンの接種で1回目の接種を受けた人は15万9千人で全体の3.6%、2回目の接種を受けた人は13万6千人で全体の3%。

● オミクロン株対応、5〜11歳も接種へ 厚労省部会が了承

 オミクロン株の「BA.5」に対応するファイザーのワクチンは12歳以上を対象に3回目以降の追加接種に使用されているが、去年10月、5歳から11歳も対象に加えるようファイザーが厚労省に申請を出していた。27日、開かれた厚労省の専門家による部会では、12歳以上への接種で発症予防効果が確認されていて有効性が期待できるほか、安全性についても影響を及ぼす可能性は低いとして、5歳から11歳についても対象に加えることが了承された。

 国内で5歳~11歳が、オミクロン株対応ワクチンの対象となるのは初めて。ワクチンに含まれる有効成分の量は12歳以上向けのワクチンの3分の1となる予定。厚労省は今後、無料で受けられる公的接種に位置づけた上で、3月上旬から、接種が始まる見通し。また27日の部会では米国の製薬会社、ノババックスのワクチンの3回目以降の接種について、18歳以上となっていた対象年齢を12歳以上に引き下げることも了承された。

●雇用調整助成金 新型コロナ特例措置が終了 4月から通常運用へ

 厚労省は27日、労使などで作る審議会を開き、コロナ禍で設けられた雇用調整助成金の特例措置の扱いについて議論した。雇用調整助成金は通常、直近3か月間売り上げが前年同期比で10%以上減った企業が対象となるが、特例措置ではコロナの影響でその月の売り上げが感染拡大前の令和元年から去年までのいずれかの年の同じ月と比べて10%減少しているか、過去1年のいずれかの月と比べて10%減少していれば助成を受けられる。

 厚労省は感染拡大後の支払い決定額が6兆3千億円を超え財源不足の深刻化や最近の経済・雇用情勢を踏まえ、特例措置を今年度で終了、新年度から通常運用に戻す方針を説明。審議会委員からは、いまだに厳しい業界はあるもの、財源不足の状況などを考えると移行は妥当といった意見が出され、この方針が正式決定。去年9月には、当面の生活費を無利子で借りられる制度の特例が終了するなど徐々に通常に戻す動きが進んでいる。

【2月28日】

●新型コロナ発生源「中国の研究所から流出の可能性高い」 米報道

 米国のメディアは新型コロナの発生源について、米国・エネルギー省が中国・武漢のウイルス研究所から流出した可能性が高いと結論づけたと伝えた。バイデン政権は最終的な結論は出ていないとしているが、今後、議会を中心に中国に対し、この問題で強い姿勢で臨むべきだとする声が高まることも予想されます。

 これについて、中国外務省の毛報道官は27日の記者会見で「研究所からのウイルス流出の可能性は極めて低いというのが、中国とWHOの専門家が出した権威ある科学的な結論だ」と強調。そのうえで「関係する当事者は、この議論を蒸し返すことや、中国を中傷すること、発生源の問題を政治化することをやめるべきだ」と述べ、米国をけん制した。

●出生数80万人割れ、コロナで減速加速 2022年統計

 2022年に国内で生まれた子どもの数は、統計のある1899年以降、初めて80万人を割り込むことが確実になった。厚労省が28日に公表した昨年の人口動態統計(速報)で、外国人と海外で生まれた日本人の子どもを含む出生数は79万9728人。国内生まれの日本人に絞り込んだ出生数(概数)は6月に公表される。国の推計方法で計算すると77万人台と見込まれる。40年前の1982年の出生数(国内で生まれた日本人の子ども)は151.5万人で、40年間でほぼ半減した。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計(2017年)では、外国人を含む出生数が79万人台になるのは、2033年とされていた。国内の日本人に限った出生数が77万人台になるのも、同じ2033年と見込んでいた。いずれも想定より11年早く少子化が進んだことになる。

●去年1年間 ホテルなどの宿泊者数、コロナ感染拡大前の7割に回復

 観光庁によると、去年1年間に国内のホテルや旅館などを利用した宿泊者は、速報値で延べ4億5千万人となった。前の年と比べて42%増加し、感染拡大前の2019年と比べても、76%の水準まで回復した。このうち、日本人の宿泊者は、旅行代金の割り引きが受けられる「全国旅行支援」が始まった去年10月以降に大幅に増加し、前の年よりも39%多い、延べ4億4千万人となっている。

 また、外国人の宿泊者は、前の年と比べて3.8倍多い、延べ1680万人。コロナ禍前の同じ月よりも90%以上落ち込んでいた9月までから一転し、10月以降は、水際対策の緩和によって大幅に回復した。ことしに入ってからも外国人の宿泊者の増加は続いているが、その一方で、日本人の宿泊者については、全国旅行支援が順次終了する4月以降の動きがどうなるかが焦点となる。

●国内、67人死亡 1万4524人感染

 厚労省によると、28日発表した国内の新たな感染者は空港の検疫などを含め1万4524人。前週の同じ曜日(21日)より4683人減った。累計で3320万5088人。国内で亡くなった人は67人、累計で7万2387人。都道府県別で新規感染者の最多は東京都の1181人、1週間前の火曜日より270人減った。次に大阪府1003人、愛知県991人と続く。また国内の重症者は、28日時点で166人。前日と比べて4人減った。

 以下の図は2月28日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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