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2024年5月の4件の投稿

2024年5月16日 (木)

映画「オッペンハイマー」

 2024年5月16日、映画『オッペンハイマー』を観る。

 今年の米アカデミー賞「視覚効果賞」を受賞した『ゴジラ-1.0』を3月に観た後、同賞最多の7部門受賞の本作品は、4月になって観に行くつもりが行きそびれ、最寄りの映画館では今日が上映最終日だった。


 第81回ゴールデングローブ賞最多5部門受賞、第96回アカデミー賞で7部門で受賞するなど世界で注目を集めているクリストファー・ノーラン監督最新作。原爆を開発した米国人物理学者の半生を描いた映画『オッペンハイマー』が、2023年7月21日より全米公開され、約8ヵ月遅れて 今年3月29日から日本で公開された。被爆の実情を知ったオッペンハイマーが苦悩し、核軍拡競争を懸念する姿を描いた。一方で、原爆を落とされた広島、長崎の惨状が映像として伝えられていないなど批判も多い。

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 原子爆弾の開発に成功したことで「原爆の父」と呼ばれたアメリカの天才科学者ロバート・オッペンハイマーを題材に描いた伝記映画。2006年ピュリッツァー賞を受賞した、カイ・バードとマーティン・J・シャーウィンによるノンフィクション「『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」を下敷きに、オッペンハイマーの栄光と挫折、苦悩と没落の生涯を実話にもとづいて描く。

 「『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」<上・下巻>

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 第二次世界大戦下、才能にあふれた物理学者のロバート・オッペンハイマーは、核開発を急ぐ米政府の極秘プロジェクト「マンハッタン計画」において、原爆開発プロジェクトの委員長に任命される。彼は、多くの優秀な科学者たちを率いて、世界初となる原子爆弾の開発に成功する。

 しかし、実験で原爆の威力を目の当たりにし、実戦で投下されると、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するようになる。恐るべき大量破壊兵器を生み出したことに衝撃を受けたオッペンハイマーは、戦後、さらなる威力をもった水素爆弾の開発に反対する。冷戦、赤狩り、激動の時代の波に、オッペンハイマーはのまれてゆくのだった。

 

 オッペンハイマー役は、ノーラン作品常連の俳優キリアン・マーフィ。妻キティをエミリー・ブラント、原子力委員会議長のルイス・ストロースをロバート・ダウニー・Jr.が演じる。第96回アカデミー賞では同年度最多となる13部門にノミネートされ、作品賞、監督賞(クリストファー・ノーラン)、主演男優賞(キリアン・マーフィ)、助演男優賞(ロバート・ダウニー・Jr.)、編集賞、撮影賞、作曲賞の7部門で受賞を果たした。

 左から、クリストファー・ノーラン、キリアン・マーフィ、エミリー・ブラント、ロバート・ダウニー・Jr. 出典:ウキメディア・コモンズ

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 オッペンハイマーは、ドイツからのユダヤ系移民の子としてニューヨークで1904年に生まれた。母もユダヤ系の画家。弟のフランク・オッペンハイマーも物理学者。父は、起業家として成功していたため、オッペンハイマーは裕福な幼少期を過ごした。子供の頃から鉱物や地質学に興味を持ち、数学や化学、詩や数ヶ国の言語を学んだ。最終的には6カ国語を話した。一方で運動神経にはあまり優れず、同世代の子供たちと遊ぶことはあまりなかった

 ハーバード大学に入学し、化学を専攻。1925年に優秀な成績を修めてわずか3年で、かつ首席で卒業した。イギリスのケンブリッジ大学に留学し、物理学や化学を学んだ。ここでニールス・ボーアと出会う。実験を伴う化学が苦手で、理論中心の物理学の世界へと入っていく。彼は実験物理学が発展していたケンブリッジから、理論物理学が発展していたゲッティンゲン大学へ移籍して、博士号を取得した。

 ゲッティンゲン大学での業績には、マックス・ボルンとの共同研究による分子を量子力学的に扱う「ボルン-オッペンハイマー近似」がある。1929年には若くして カリフォルニア大学バークレー校やカリフォルニア工科大学の物理学の助教授となった。1936年には両大学の教授、1930年代末には宇宙物理学の領域で、ブラックホールの研究を行っていた。

 第二次世界大戦が勃発すると、1942年には原子爆弾開発を目指す「マンハッタン計画」が開始される。1943年、ルーズベルト大統領は原爆開発にあたって、優秀な化学者や物理学者が必要であると判断し、ロスアラモスの地に国立研究所を設立、そこへ名だたる優秀な化学者、物理学者を集めた。オッペンハイマーは、ロスアラモス国立研究所の初代所長に任命され、原爆製造研究チームを主導した。

 チームは、世界で最初の原爆を開発し、ニューメキシコで核実験、その後、広島・長崎に投下されることになった。終戦後、オッペンハイマーはその罪を悔い、核兵器撲滅を訴える活動を展開する。「マンハッタン計画」に参加した科学者たちは、終戦後も水爆実験などを積極的に実施したため、オッペンハイマーは彼らと対立。この核兵器廃絶運動にはアインシュタインも賛同、オッペンハイマーも信念を曲げることなく、核廃絶に向けて活動していくのだった。

 オッペンハイマー(1944年頃) アインシュタイン(左)とオッペンハイマー(右) 出典:ウキメディア・コモンズ

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 この映画には、カラー映像になったりモノクロ映像に変わったり、2つの映像が出てくることが、映画を観た後で気がつく。カラーがオッペンハイマーの視点、モノクロが原子力委員会議長のストローズの視点だそうだ。そして映画は時系列通りでなく、2つの視点が目まぐるしく入れ替わるので、どの時代を描いているのかがわからなくなる。この映画は、3回観るとよく分かるという人もいるくらい、わかりにくい。

  以下5枚の写真は、映画『オッペンハイマー』のパンフより転載。

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 マンハッタン計画の開始当初は、ユダヤ人であるオッペンハイマーは、原爆をナチスや敵国よりも早く開発することが重要だと感じていた。同時にこの研究が、殺戮を引き起こす可能性もよく理解していたようだった。しかし、原爆の投下がナチスではなく日本であり、自身の予想を超える悲惨な結果を目の当たりにし、強い罪悪感にさいなまれる。彼は戦後、さらなる強力な核兵器「水爆」開発を制限するよう訴えるなど、大きく考え方を変える。

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 「水爆」開発に反対し、協力しないオッペンハイマーは、冷戦下に吹き荒れた「赤狩り」を背景にソ連のスパイ容疑をかけられる。「機密保持許可」(セキュリティ・クリアランス、国の機密情報にアクセスできる許可や資格)を問う「聴聞会」で連日取り調べられる。オッペンハイマーの妻、かつての恋人、弟、友人らが共産党とつながりがあり、過去に彼自身も共産党の集会に参加していたからだった。アメリカの核兵器開発を否定することは、ソ連の核兵器開発を利するともみなされた。

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 オッペンハイマーは「原子力委員会」に顧問として参加していたが、「聴聞会」での追及で「機密保持許可」は、1954年に取り消されることになり、政府公職からの追放が決定した。危険人物と断定され、研究も続けられないため事実上のキャリアは終了、没落の人生を歩む。1967年2月18日、62歳で死去した。映画では、この「聴聞会」のシーンが多く出てきて、テンポも速く、理解するのに疲れてくる。

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 主神ゼウスの火を盗んで、人に与えて鎖でつながれたギリシャ神話の神・プロメテウスの話が出てくる。プロメテウスは、神々の意志に反して人間に火を与え、その結果、人類の文明発展に貢献したが、ゼウスによって厳しい罰を受けた。この物語は、オッペンハイマーとプロメテウスを重ね合わせているのだ。このことは、「科学が果たす、創造・恩恵と危険・破壊」を意味している。本作の原作書籍のタイトルには、オッペンハイマーを「American Prometheus」と表現されている。

 米エネルギー省は2022年12月16日、核兵器を開発する「マンハッタン計画」を率いて「原爆の父」と呼ばれた物理学者ロバート・オッペンハイマー博士を公職から追放することになった1954年の処分を撤回したと発表した。理由について「処分の経過で偏見と不公正さを示す証拠が明らかになった」とした。同省のグランホルム長官は68年ぶりの処分撤回について、「歴史の記録を正し、オッペンハイマー氏の国防と科学事業への貢献をたたえる責任がある」と述べた。

2024年5月14日 (火)

熊谷タウン散策

 2024年4月11日(木)、埼玉県熊谷市の市街地を歩いて巡る。

 

 10:00、JR熊谷駅(筑波二丁目)の北口を出発。

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●星川通り(銀座~鎌倉町) 10:05~

 別名「星川シンボルロード」を北西に向かって歩く。写真は「花園の歌」像(圓鍔勝三 作)。

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 「星川通り」は、熊谷市鎌倉町を起点とし、星川・筑波を経て、同市の銀座へと至る市道の愛称。全区間が星川の両岸に位置する。1975年に「水と緑と彫刻のプロムナード」として、広場や彫刻像が設置されている。

 「星川」は、熊谷市街地北西部の北大通り中央を流れる大里用水から分流、暗渠を経て、鎌倉町の 「星溪園」前で星川なって姿を表す。地上に現れた地点から、星川と呼ばれる。農業用水の取水施設もある。

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●高城神社(宮町) 10:25

 熊谷市宮町にある神社で、旧社格は県社。熊谷郷の総鎮守とされていた。「日本一長いおみくじ」で知られる。高皇産霊尊(たかみむすびのみこと)、別名高木神(たかぎのかみ)と呼ばれ、生成力を神格化した神であるため万物をつくり出す神とされており、「えんむすび」「安産」の神として崇敬されている

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 1590年(天正18年)の兵火で焼失したのを、忍城主・阿部正能が再建した。

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 境内にある樹齢800年ともいわれる巨大なケヤキの御神木。近年洞(ウロ)が広がり、中から外の光がみえるようになった。境内には他にも樹齢600年程度のケヤキが数本あるそうだ。

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●熊谷寺(仲町) 10:40

 「熊谷寺(ゆうこくじ)」は、熊谷市仲町にある浄土宗の寺院。当地(武蔵国熊谷郷)は、平安時代末から鎌倉時代初期の武将・熊谷直実の本拠地であり、出家後の直実が蓮生(れんしょう / れんせい)法師として往生した場所と伝えられている。

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 この寺は珍しく、常時閉門されている。行事の開催などを除き、または特別な許可を得ない限り、参拝等境内への立ち入りはできない。
 

●星溪園(鎌倉町) 10:45~11:00

 星溪園の正門。出典:ウキメディア・コモンズ

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 「星溪園」は、回遊式庭園、入場無料。熊谷の発展に数々の偉業を成した竹井澹如(たんじょ )によって、慶応年間から明治初年にかけてつくられた。

 澹如は、1839年(天保10年)群馬県甘楽郡南牧村、羽沢の豪族・市川五部兵衛の六男として生まれる。1865年 (慶応元年)27歳の時に熊谷宿で本陣をつとめる竹井家を継ぎ、14代当主となる。 1879年(明治12年)初代の県議会議長。政府の要職をすすめられたが、始終一貫、熊谷地方のために貢献した。

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 竹井澹如 出典:ウキメディア・コモンズ

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 1623年(元和9年)、荒川の洪水により当園の西方にあった土手(北条堤)が切れて池が生じ、その池は清らかな水が湧き出るので「玉の池」と呼ばれ、星川の水源となった。澹如が、ここに別邸を設け、「玉の池」を中心に竹木を植え、名石を集めて庭園とした。

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 昭和初期、この地を訪れた前大徳牧宗禅師(京都の大徳寺僧)が、「星溪園」と命名。1950年(昭和25年)に熊谷市が譲り受け、1954年(昭和29年)に市の名勝に指定された。1990年(平成2年)から1992年(4年)にかけて園内の整備が行われ、老朽化のした建物は数奇屋感覚が取り入れた上で復元。園内には、星溪寮、松風庵、積翠閣(せきすいかく)の3つの建物があり、お茶会などに利用されている。

 中心的な最も大きい建物の星渓寮。出展:星渓寮パンフレット

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 松風庵は、2室からなる庵室。星溪寮と積翠閣の間に位置して数寄屋の建物。積翠閣の2階から望む。

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 積翠閣の2階部分。積翠閣は、松風庵の北に位置し、庭園と玉の池を眺望できる。1階のギャラリーには星渓園や澹如の資料が展示。

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 積翠閣の2階から庭園を望む。

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 竹井澹如は、熊谷県庁の誘致、旧熊谷堤の修築と桜の植樹、養蚕業の振興、私立中学校(セキテイ学社)の創設などの偉業を残し、1912年(大正元年)74歳で永眠した。
 

●片倉シルク記念館(本石二丁目) 11:10~11:55

 ショッピングモール「イオン熊谷店」の隣に2つの古い倉庫があり、これが「片倉シルク記念館」。


 「片倉シルク記念館」は、「片倉工業株式会社」最後の製糸工場であった熊谷工場が1994年(平成6年)に操業停止してから、 の繭倉庫を利用して創設された記念館。入館無料。同社の製糸業121年におよぶ歴史を、末永く保存継承するために、熊谷工場の操業当時に使われていた製糸機械が展示され、繭から生糸になるまでの過程を紹介。2007年(平成19年)には、経済産業省の「近代化産業遺産」に認定された。

 熊谷工場のジオラマ。


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 記念館では、繭倉庫を利用した館内に、操業当時に使われていた製糸機械や貴重な資料が展示され、繭から生糸になるまでの当時の製造工程を見学することが出来る。

 実際に使われていた自動操糸(そうし)機。繭から引き出した繭糸を何本か合わせて目的の太さ、長さに1本の生糸にする工程。

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 糸捻(ねじ)りの前の工程らしいが、何の機械か分からなかった。

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 糸捻り、活(かつ)に束ねる工程の写真展示。

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 メモリアルギャラリー。従業員の寮生活や、工場内の学校生活など、多くの写真が展示。

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 ほかに、片倉工業の歩みの展示、御法川(みのりかわ)直三郎と今井五助との出会いについての展示、御法川式多条製糸機の実物展示(以上、写真なし)など。館内のミニシアターでは「もうひとつのシルクロード」等、製糸工場が実際に稼働していた頃の様子を約15分で放映。

 隣接する繭倉庫の「蜂の巣倉庫」。天井に、蜂の巣状の穴が105個あいている。倉庫の屋根裏部分から繭を入れ、穴の下部にあたる天井部分から古い繭を取り出せる仕組み。ここでは、繭の貯蔵方法や養蚕具、蔵出しの様子が展示されていた。

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 12:00~12:40、レストラン「サイゼリア」(イオン熊谷店1階)で昼食。
 

●熊谷桜堤 13:00~

 イオンモールから南西に進むと、荒川沿いの桜が満開。一旦、国道407号の荒川大橋の下をくぐり、再び桜堤を歩くと花見客や屋台で賑やか。

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 「熊谷桜堤」は、荒川左岸の堤防の内、荒川大橋から下流方向に約2kmにわたって続く。毎年3月下旬から4月上旬に開かれる「熊谷さくら祭」には、約500本のソメイヨシノが桜のトンネルをつくる。江戸時代から桜の名所として親しまれ 「日本さくら名所100選」の一つ。

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 4月8日、熊谷地方気象台より熊谷でさくらの満開(標本木で約80%以上が開花)を観測したと発表があったそうだ。平年より5日遅く、昨年よりも13日遅い。さくら祭は、14日まで開催だという。

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●熊谷市美術展 13:20~14:25

 熊谷市立市民体育館(桜木町二丁目)で、「第55回公募熊谷市美術展」が4月11日(木)~14日(日)の会期で開催中。多くの公募作品の中から入選した作品を展示。出品種目は、絵画、彫刻、工芸、書、写真。

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●郷土資料展示室 14:30~15:00

 熊谷市立図書館(桜木町二丁目)3階では、常設の「郷土資料展示室」と企画展「市立図書館所蔵美術品展」。

 「郷土資料展示室」の原始・古代コーナーでは、市内の遺跡などから発掘された土器などの資料。中世コーナーは、熊谷直実にまつわる資料と埋蔵銭や板碑など。近世コーナーは、高札などの中山道熊谷宿にかかわる資料。近・現代コーナーは、熊谷空襲や昭和の暮らしを再現。小説家・森村誠一コーナーは、熊谷出身の森村氏と熊谷の資料を展示。熊谷の養蚕コーナーでは、近・現代の熊谷市で主要産業の一つであった養蚕関係資料を展示。

 また、当館所蔵品を中心としたミニ企画展「直実・蓮生の浮世絵展Ⅱ(芝居絵)」が令和6年6月6日(日)まで、開催中。

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 3階の美術展示室では、4月2日(火)から 5月19(日)まで企画展「市立熊谷図書館所蔵美術品展」が開催。郷土ゆかりの作家による美術品を展示。

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 図書館から熊谷駅南口まで徒歩5分。15:20~、熊谷駅ビル2階「ミスタードーナツ」で時間調整(コーヒータイム)。

 16:00~17:50「さくら水産」(熊谷駅ビルAZ 5階)で打ち上げ。

 18:00、熊谷駅で解散。

 

 ★ ★ ★

 「片倉工業」は、1873年(明治6)長野県諏訪郡川岸村(現岡谷市)で片倉市助が、10人取りの座繰り製糸から始まった。1878年(明治11)、家督を受け継いだ片倉兼太郎が、川岸村に垣外(かいと)製糸場を開設。32人繰りの洋式器械を備えた工場だった。1895年(明治28)「片倉組」を、1920年(大正9)「片倉組」を継承する組織「片倉製糸紡績株式会社」を設立した。蚕種の研究と繰糸機の改良に貢献し、朝鮮半島含め最大62カ所の製糸工場まで拡大し、良質な生糸を世界中に届けた。

 1939年(昭和14)に富岡製糸場を譲り受け、1943年(昭和18)「片倉工業株式会社」に改称。富岡製糸場は、1987年(昭和62)年まで操業した。富岡製糸場の歴史的価値を認識し、建物につては保全管理に努めた。1994年(平成6)熊谷工場の操業を休止し、蚕糸業から撤退する。2000年(平成12)「片倉シルク記念館」オープン。2005年(平成17)富岡工場(富岡製糸場)の建物等を富岡市に寄付。翌年、敷地を富岡市に売却した。

 発明家の御法川直三郎は、いくつも山積していた技術的な困難を解決して、1904年(明治37)に20条の多条繰糸機を完成させた御法川の研究に理解し、援助・協力を惜しまなかった片倉製糸紡績副社長の今井五郎(片倉兼太郎の実弟、後に社長)は、その後この機械を採用し、これが繰糸機の技術革新をもたらし、片倉と日本の生糸の品質を高めることになった。

 片倉工業は、1994年(平成6)に伝統事業である蚕糸事業から撤退した後、不動産資産を活かしたショッピングセンター運営・不動産賃貸事業・小売事業の他、終戦後に進出した自動車用部品製造、繊維製品の販売など、経営は多角化している。そのほか、医薬品、農業用機械、産業用機械の製造子会社や消防車製造子会社なども持つ。

2024年5月11日 (土)

川越市立博物館

 2024年3月26日(火)、大雨の中、「川越市立博物館」(埼玉県川越市)へ行く。

 

 もともと天覧山・高麗峠ハイキング(埼玉県飯能市)に参加予定していたが、雨のために中止し、目的地を変更。

 13:00川越駅東口。13:11市内循環バス「川越シャトル」に乗車、13:21博物館バス停着。

 13:30~15:20「川越市立博物館」見学(入館料200円)。

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◆特別展示室

 3月16日(土)から5月12日(日)、 館蔵資料公開「職人の道具」を公開中。

 博物館の収蔵品のなかから職人に関する道具や職人の手による製品を中心に展示。

 ファイルダウンロード 新規ウインドウで開きます。令和5年度館蔵資料公開チラシ

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◆常設展示室

 常設展示パンフレット(写真をクリックすると拡大表示)

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●〈近世〉小江戸川越

 近世展示室。中央に天海僧正座像が見える。

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 「木像 天海僧正座像」(複製) 県指定有形文化財 「喜多院」所有。

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 天海僧正は、徳川家康の側近として江戸幕府初期の朝廷・宗教政策に深く関与した。1599年(慶長4年 )、第27世住職として小仙波村(川越市小仙波町)の「無量寿寺」に入寺し、寺号を「喜多院」と改めた。1643年(寛永20年)に108歳で没したとされる。

 「江戸図屏風」は、3代将軍・徳川家光の功績を称えるために作られたもので、江戸城と川越城が描かれている。江戸城には将軍、川越城には老中などの重鎮が住み、両地は密接につながっていたという。

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 幕末期の様子を復元した城下町模型(1/500) 。上左が川越城、上右は喜多院。 

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 新河岸(しんがし)の舟運

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 高瀬舟模型(縮尺1/16)

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 新河岸川は荒川に注ぎ、やがて隅田川となる。江戸時代初期から昭和始めまでの約300年間、川越と江戸を結ぶこの流れを数多くの舟が往来した。当初は年貢米の輸送を主としたが、時代が進むにつれて人や、日用品などの物資が行き交うようになった。また、川越と江戸を強く結びつける役目を果たし、川越の江戸の文化はこの舟運によってもたらされた。

●〈原始・古代〉川越のあけぼの

 川越を中心とした発掘調査などにより、縄文時代から平安時代に至る原始・古代の生活文化などを紹介。

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●〈中世〉武士の活躍と川越

 平安末期から戦国期に至る川越地方は、河越氏、上杉氏、太田氏、後北条氏など群雄が活躍する舞台だった。

 「銅造 阿弥陀三尊懸仏」(複製) 県指定有形文化財 古尾谷八幡神社所有 鎌倉時代後期の大型懸仏(かけぼとけ)。

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 「木像 薬師如来座像」(複製) 県指定有形文化財 古谷本郷「灌頂院」所有 12世紀末葉から13世紀初頭に製作。

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 古尾谷八幡神社は1184年、源頼朝によって京都石清水から勧請されたとの由緒をもつ。

●〈近代・現代〉近代都市川越の発展

 蔵造りの町並みは、近代都市川越の象徴。

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 大火の原因となった北風から家を守るため、北側の壁には窓がない。

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●〈民俗〉川越の職人とまつり

 蔵造りに大きくかかわった職人の技術と習俗を展示。

 地面を固めて台づくり。

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 棟上げ式

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 原寸大に復元した蔵造り模型。荒打ちから黒漆喰までの壁づくりの工程が分かる。

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 「川越まつり」の山車模型。

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 「川越氷川祭」は、毎年10月第3日曜日とその前日の土曜日に行われる「川越氷川神社」の祭礼、一般には「川越まつり」と呼ばれている。「常陸國總社宮大祭」(石岡のおまつり)、「佐原の大祭」と並び、「関東三大祭り」の一つとも称される。2日間で80万人以上の人出を数える。

 360年以上にわたり続いてきた祭事で、国の重要無形民俗文化財に指定。また2016年にはユネスコの無形文化遺産に「山・鉾・屋台行事」の1つとして登録された。
 

 次に予定していた「川越城本丸御殿」見学は、時間がなくて割愛。

 15:25博物館バス停発。15:40川越駅東口バス停着。15:50~17:40、焼鳥居酒屋「ビッグ」で打ち上げ。

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 17:45川越駅で解散。この日は、本降りの雨だった。

 

 ★ ★ ★

 「川越市立博物館」は、市制60周年記念事業の一つとして1981年昭和56年)より準備を進めて建設されたもので、 1990年平成2年)3月に開館、地下1階地上3階建。2002年12月には隣接して「川越市立美術館」が開館した。 川越市の考古・歴史・民俗等を中心に扱う人文系総合博物館。

 川越に蔵造りの町並みが形成される切っ掛けは、1893年 (明治26年)の大火。この大火災は、川越商人たちの防火対策への意識の変革をもたらした。川越商人は江戸時代以来、新河岸川の舟運などによる江戸との商いで富の蓄積があり、復興のための財力は十分にあったようだ。同じ惨事を繰り返さないよう、建物そのものを防火建築にすることにした。

 大火の際に焼け残った1軒の家屋「大沢家住宅」が全て耐火建築の蔵造りであったことから、商人たちは競ってコスト的には高く付くものの蔵蔵造り建築による店舗(店蔵)を建てた。この頃、東京では既に耐火建築として、レンガ造りや石積みの近代的な建物が造られていたが、川越商人たちは伝統的な蔵造り建物を選択したという。

 本大火後2~3年に、200棟を上回る蔵作りが建設され、当地のシンボルともなった。当地の蔵造りは赤レンガを地下室や塀に用いており、その色調に合わせて黒漆喰をふんだんに用いているのが特色。黒漆喰は白漆喰より高額で維持費もかかるが、その結果他都市とは異なる独特な蔵作りの家並を形成することになった。

2024年5月 2日 (木)

新型コロナ2024.04 追跡終了

 新型コロナウイルスの感染力の高い新たな変異株「JN.1」が広がって、昨年11月下旬頃からインフルエンザとの同時流行の「第10波」が、緩やかに増加していた。やがて、今年2月初旬からは現在までに、全国的に11週連続で減少、インフルエンザも減少を続けている。

 2024年4月1日から30日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2024.03 全国減少」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】
 

【4月5日】

●全国のコロナ感染者数、8週連続減 前週の0.98倍、インフルも減

 厚労省は5日、全国に約5千ある定点医療機関に3月25~31日に報告された新型コロナの新規感染者数は計2万5179人で、1定点あたり5.10人だったと発表した。前週(5.21人)の約0.98倍で、8週連続で減少。都道府県別の最多は秋田の12.27人で、岩手9.16人、宮城9.07人と続く。東京3.48人、愛知6.39人、大阪3.60人、福岡3.74人だった。26道県で減少した。

 31日までの1週間に定点医療機関に報告された新規入院患者数は1926人で、前週(1955人)から29人減少。集中治療室(ICU)に入院した患者は79人で、前週(89人)から10人減った。季節性インフルエンザの新規感染者数は、1定点あたり11.18人で、前週(14.08人)の約0.79倍に減少した。

 4月5日発表の定点把握(3月25日~31日) 出典:NHK新型コロナ特設サイト

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【4月8日】
 
◆昨年度倒産件数、前年度比約30%増 「ゼロゼロ融資」返済本格化

 民間の信用調査会社「帝国データバンク」によると、昨年度、全国で1000万円以上の負債を抱え、法的整理の手続きをとった事業者の数は8881件と、前年度と比べて30.6%増えた。これは、新型コロナの感染拡大を受けたいわゆる「ゼロゼロ融資」の返済が本格化したことや社会保険料の支払い猶予が終了したことなどが主な要因だとしている。

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 また昨年度、人手不足で事業の継続が難しくなったことを要因とする倒産件数は313件と、前年度の2倍以上に増えていて、業種別では建設業やサービス業、それに運輸業で目立っているという。日銀は、先月賃金と物価の好循環の実現が見通せる状況になったとして、マイナス金利政策の解除を決めたが、今後、貸出金利が上昇した場合の中小企業への影響が注視されている。

【4月9日】

◆「国立健康危機管理研究機構」、来年4月に設立へ 厚労省

 9日、厚労省が関係者や有識者からなる準備委員会の会合を開き、「国立感染症研究所」と「国立国際医療研究センター」を統合、新たな感染症の流行に備えた専門組織「国立健康危機管理研究機構」を来年4月に設立する方針を決定した。機構の略称は「JIHS」。指揮命令系統を強化するため内部に「危機管理総局」を設置して対応にあたるとしていて、平時から国内外の感染症の情報を収集し、厚労省などに定期的に報告するとしている。

 米疾病対策センター(CDC)のように、国内外の感染症や様々な病気のリスクを分析し、感染拡大時には研究開発や医療支援の部門などとも連携し、薬やワクチンなどの開発につなげるほか、診療対応の手引きなども策定する。会合で、武見厚労相は「新たな機構は世界をけん引する『感染症総合サイエンスセンター』であることが求められる。感染症に不安を抱くことのない社会の実現に向けた第一歩となるようにしたい」と述べた。

【4月11日】

◆大型連休中の旅行者、2332万人の見通し 大手旅行会社まとめ

 大手旅行会社「JTB」は、アンケートや経済指標などをもとに大型連休中の旅行の見通しをまとめた。それによると、4月25日から5月5日までに1泊以上、国内や海外の旅行に出かける人は、去年の同じ時期を1.8%上回る、延べ2332万人となる見通し。これは、コロナ禍前の2019年の9割を超える水準まで回復することになる。

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 内訳をみると、国内旅行は、去年とほぼ同じ2280万人と見込まれ、行き先はやや近場が多いものの、去年に比べると分散傾向にある。海外旅行は、52万人と去年より6割以上増える見通し、円安による旅行費用の高騰を受けて近場の韓国や台湾、東南アジアに人気が集まっている。1人当たりの旅行費用は、国内旅行が3万6100円、海外旅行は26万9000円と、いずれも去年より3%から4%程度、増える見通し。

●コロナ雇調金、6.7億円詐欺か 容疑の会社役員ら4人逮捕 警視庁

 コロナ禍での国の雇用調整助成金(雇調金)などをだまし取ったとして、警視庁は会社役員の徳毛容疑者(46)ら男4人を詐欺容疑で逮捕し、11日に発表した。他に逮捕されたのは会社役員の和泉容疑者(53)と会社役員の男(40)、職業不詳の男(42)の3人。

 組織犯罪対策特別捜査隊によると、4人は共謀して2021年5~12月、会社役員の男の不動産コンサルティング会社で、雇調金や緊急雇用安定助成金を東京労働局に計14回申請し、2022年1月までに計約3522万円をだまし取った疑いがある。同隊は、徳毛容疑者らが関与した雇調金などの不正受給額は計15社164人分で計約6億7千万円に上り、一部は暴力団の資金源になっていた可能性があるとみている。

【4月12日】

●全国コロナ感染者、9週連続で減少 定点あたり0.84倍

 厚労省は12日、全国に約5千ある定点医療機関に4月1~7日に報告された新型コロナの新規感染者数は計2万968人で、1定点あたり4.26人だったと発表した。前週(5.10人)の約0.84倍で、9週連続で減少。都道府県別の最多は秋田の10.83人で、宮城8.96人、岩手8.95人と続く。東京2.74人、愛知5.52人、大阪3.26人、福岡2.84人だった。42都道府県で減少した。

 7日までの1週間に定点医療機関に報告された新規入院患者数は1790人で、前週(2021人)から231人減少。集中治療室(ICU)に入院した患者は80人で、前週(81人)から1人減った。季節性インフルエンザの新規感染者数は、1定点あたり5.10人で、前週(11.18人)の約0.46倍に減少した。

 4月12日発表の定点把握(4月1日~7日) 出典:NHK新型コロナ特設サイト

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【4月14日】

◆岐阜「春の高山祭」始まる 新型コロナ5類移行後、初の開催

 「春の高山祭」は、江戸時代から続く伝統の祭りで「山・鉾・屋台行事」の1つとしてユネスコの無形文化遺産に登録されている。今回の「春の高山祭」は新型コロナの5類移行後、初めての開催。晴天に恵まれたこともあって外国からも含めて多くの観光客が訪れた。14、15日の2日間で、18万人の人出が見込まれている。

【4月15日】

◆大手デパートの1年間の決算、最終利益は各社コロナ禍前を上回る

 大手デパートの今年2月までの1年間の決算では、外国人旅行者の増加や新型コロナの5類移行を受けて売り上げが伸び、最終的な利益がいずれもコロナ禍前を上回るなど好調な業績が相次いでいる。「高島屋」はことし2月までの1年間のグループ全体の決算で、最終的な利益が前年より13%増の316億円、過去最高を更新した。会社では、人口の増加とともに経済成長が見込めるベトナムで出店を検討するなど海外での売り上げ拡大に力を入れる方針。

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 「大丸松坂屋百貨店」を傘下に持つ「J.フロント リテイリング」は、15日、ことし2月までの1年間のグループ全体の決算を発表し、最終的な利益が299億円で前の年の2倍以上にのぼりコロナ禍前の、4年前を上回った。これは、新型コロナの5類移行で人の流れが回復する中、国内の富裕層向けに高額品の販売が好調だったほか、外国人旅行者が増えて免税品の売り上げが過去最高となったことなどで売り上げが伸びたことが主な要因。

●コロナワクチン廃棄、2億4千万回分 厚労省「無駄とは考えていない」

 厚労省は15日の衆院決算行政監視委員会で、廃棄される新型コロナワクチンが約2億4千万回分になると明らかにした。概算で約6653億円。3月末、全額公費負担の臨時接種の終了に伴い、厚労省は4月以降、速やかにワクチンを廃棄するよう自治体に求めていた。厚労省によると、ワクチン購入の契約量は約9億2840万回分。3月末時点の総接種回数は4億3619万回になるため、海外に供給した分などを除く約2億4415万回分が廃棄対象。

 衆院決算行政監視委員会で、厚労省の担当者は「その時々の状況によって必要なワクチンを購入した。無駄とは考えていない」と説明。一方、武見厚労相は、日本ではmRNAワクチンの研究基盤が育っておらず、海外製品の確保に奔走せざるを得なかったことに言及。「金をかけても作れなかったという、もっと悲惨な状態にあった」と述べた。

【4月17日】

●ワクチン後死亡、遺族ら提訴 「副反応、国は広報せず」

 新型コロナのワクチン接種後に死亡した人の遺族ら13人が17日、被害は国の不適切な対応が原因だとして、1人あたり330万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。原告は、国の予防接種健康被害救済制度に基づき、死亡一時金などの給付認定を受けた遺族8人と、接種後に健康被害が生じて医療費などの給付認定を受けた5人。救済制度では、接種から発症までの時間や他に考えられる原因などを審査し、厳密な医学的因果関係は必要としていない。

 原告側は訴状で、国はワクチン接種を積極的に促す一方、接種による死亡や重篤な症状の副反応報告は広報しなかったと主張。医療行為を自らの意思で選ぶ自己決定権が侵害されたとして、慰謝料などを求めている。また、同居していない子どもを亡くした原告の1人は、死亡一時金の給付対象が「配偶者か、同一生計の遺族」に限られているのは不合理な差別にあたると主張。慰謝料とは別に、約4860万円の損害賠償も求めている。

【4月19日】

●新たな感染者、10週連続減る 新型コロナ

 厚労省は19日、全国に約5千ある定点医療機関に4月8~14日に報告された新型コロナの新規感染者数は計1万8297人で、1定点あたり3.71人だったと発表した。前週(4.26人)の約0.87倍で、10週連続で減少した。北海道や沖縄を除く42都府県で減少した。1医療機関当たりの感染者数が多かったのは秋田8.81人、岩手7.75人、青森7.34人と東北地方が目立つ。少なかったのは愛媛2.28人、広島2.34人、熊本2.35人など。

 14日までの1週間に定点医療機関に報告された新規入院患者数は1611人で、前週(1809人)から198人減少、前週比0.89倍。集中治療室(ICU)に入院した患者は68人で、前週(80人)から12人減った。

 4月19日発表の定点把握(4月8日~14日) 出典:NHK新型コロナ特設サイト

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【4月24日】

◆新型コロナ救急搬送訴訟 「許すことはできない」、母親が意見陳述

 3年前の8月、千葉県船橋市の基礎疾患があった当時23歳の男性が、新型コロナに感染して死亡し、両親は国と千葉県、船橋市に合わせて1億円余りの賠償を求める訴えを起こしている。24日、東京地方裁判所で開かれた裁判で、男性の母親が意見陳述を行った。母親は「『搬送先の調整』という名のもとに、何度も行った救急搬送の要請がかき消され、決して許すことはできない。」と述べた。

 一方、国は「患者の搬送などは地方自治体の業務で、国は責任を負わない」などと主張した。入院先の調整などを担った千葉県は「当時は病床が逼迫していた」、保健所などを運営する船橋市は「適切な対応を行った」などとして、いずれも過失は無かったと主張した。

◆感染症対策の「行動計画」改定案、有識者会議で大筋了承

 政府の感染症対策の「行動計画」は、これまで主に新型インフルエンザを念頭に置いていたが、新型コロナの教訓を踏まえ、10年ぶりに改定案がまとまり、24日、有識者会議に示された。改定案では、医療提供体制の整備や、マスクを含めた必要物資の備蓄など、平時の備えを強化していくことが盛り込まれている。また、感染が確認された後は、水際対策などで拡大を遅らせながら病床確保や検査体制の構築を進め、ワクチンや治療薬の供給を急ぐ。

 そして、医療逼迫のおそれがあれば、科学的な知見が不十分な段階でも、「緊急事態宣言」を含めた強い措置を講じることなどを明記している。一方、こうした強い措置は、社会経済活動への影響も考慮し必要最小限の地域や期間、業態に限定し、状況の変化に合わせて機動的に運用するとしている。改定案は大筋で了承され、政府は今後、パブリックコメントを通じて広く意見も聞いた上で、ことし6月にも閣議決定する方針。

【4月25日】

◆成田空港 出入国あすから11日間、去年同期比1.3倍の見込み

 成田空港会社のまとめによると、大型連休を含む今月26日から来月6日までの11日間に成田空港から出入国する人は、83万5200人と去年の1.3倍になると見込まれている。新型コロナ感染拡大前の2019年の同じ時期と比べると、4分の3程度まで回復する見通し。このうち出国する人は43万8500人で、ピークは27日になるという。一方、入国する人は39万6700人で、ピークは来月6日となる見込み。

【4月26日】

◆ANAホールディングス ことし3月までの決算、最終利益が過去最高

 航空大手「ANAホールディングス」が、ことし3月までの1年間の決算を26日に発表した。売り上げが2兆559億円と前年よりも20%、最終的な利益が1570億円と前年よりも75%増加した。これは、インバウンド需要の回復を背景に、国際線の旅客収入が大きく伸びたことなどが主な要因。

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 一方、来年3月までの1年間の業績予想は、国際線で、各社との競争が激化することに加え、旅客機の整備費用が増えることなどから最終的な利益は30%減って、1100億円になると見込んでいる。好調な国際線に比べて、国内線ではコロナ禍からの回復が遅れていることについて、芝田社長は「レジャー層に訴えかける運賃の設定や、プロモーション施策などを打ち出し需要を取り込んでいきたい」などと話している。

◆オリエンタルランド、1年間の決算 売り上げ・最終利益、過去最高

 東京ディズニーランドなどを運営する「オリエンタルランド」のことし3月まで1年間のグループ全体の決算は、前年と比べて売り上げが28%増えて6184億円、最終的な利益が48.9%増えて1202億円となり、いずれも過去最高を更新した。新型コロナの5類移行のほか、円安を背景に外国人の入園者が増加し、全体の入園者数は2751万人と、前の年より24.5%増えた。

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 さらに、混雑する時期のチケットの値上げするなど一部の料金の見直しを去年10月に行ったことが主な要因。一方、来年3月までの1年間の業績予想については、最大規模の拡張工事を行った東京ディズニーシーの新しいエリアがことし6月にオープンすることなどから、入園者数がさらに増えると見込んでいて、売り上げはおよそ10%伸びる見通しだとしている。

■コロナ感染、11週連続減少 前週比0.98倍

 厚労省は26日、全国約5千の定点医療機関から15~21日の1週間に新たに報告された新型コロナの感染者数が、計1万7937人で1医療機関当たりの感染者数は3.64人だったと発表。前週比0.98倍で、11週連続の減少。1医療機関当たりの人数は岩手7.24人、青森7.07人、秋田6.92人と東北地方で多く、少なかったのは愛媛2.10人、広島2.34人、高知2.70人など。

 全国約500の医療機関から報告された新規入院患者数は1487人で前週比0.90倍だった。同じ1週間に定点医療機関から新たに報告されたインフルエンザの患者数は計9105人だった。前週比0.69倍。

 4月26日発表の定点把握(4月15日~21日) 出典:NHK新型コロナ特設サイト

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【4月29日】

◆「パンデミック条約」、交渉大詰め 途上国と先進国の対立根強く

 「パンデミック条約」は、国際的な感染症対策を強化し、新たなウイルスの流行を予防しようと、各国が2年かけて交渉を進め、5月に開かれるWHO総会での採択を目指している。この条約の策定に向けた、各国間の最後の会合が29日、WHO本部で始まった。会合は非公開で行われていて、条約の草案では、締約国は感染症対策のための包括的な計画を策定し定期的に見直すことや、途上国の対策を支援するため資金を拠出することなどが盛り込まれている。

 さらにワクチンや治療薬を途上国でも生産できるよう、技術の移転を促し、パンデミックの際には、医薬品の製造業者などに対し、特許を緩和したり、妥当な特許使用料を設けたりすることを奨励することも盛り込まれている。会合は、来月10日まで続きるが、交渉関係者によると、医薬品の特許の放棄などを主張する途上国と、製薬会社への影響を懸念する先進国の対立は根強いということで、期間内に合意できるかは予断を許さない状況。

【4月30日】

◆3月の国内宿泊者数、延べ約5486万人 前年同月比8.2%増、過去最高

 観光庁によると、先月、国内のホテルや旅館などに宿泊した人は速報値で延べおよそ5486万人で前年の同月よりも8.2%増加し、この3月としては、過去最高を更新した。このうち、外国人の宿泊者数は延べ1270万人で、前の年の同じ月より68.2%増加、コロナ禍前の2019年の同月を33.4%上回った。また、日本人の宿泊者数は延べ4216万人で、前年同月を2.3%下回ったものの、コロナ禍前の2019年の同月を1.3%上回った。
 

 ★ ★ ★

 新型コロナの感染症法上に位置づけが、いわゆる2類相当から2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ 「5類感染症」に引き下げられ、およそ1年が経とうとしている。2020年3月19日 に最初に投稿した本ブログ記事「新型コロナ2020.01 感染確認」から、およそ4年に渡り新型コロナ感染に関わるニュースを追跡してきたが、これにて終了する。

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