映画「ゴジラ-1.0」
2024年3月16日(土)、映画『ゴジラ-1.0』(ゴジラ マイナス・ワン)を観る。
第96回米アカデミー賞の授賞式が3月10日(日本時間11日午前)、ロサンゼルスで開かれ、山崎貴監督(59)の『ゴジラ-1.0』が日本映画として初めて「視覚効果賞」を受賞した。2023年12月にはアメリカでも公開され、全米歴代邦画実写作品の興行収入1位を記録するなど、大ヒットを記録していた。また、宮崎駿監督(83)の『君たちはどう生きるか』は、同賞の「長編アニメーション賞」を受賞、日本勢がダブル受賞を果たした。
『ゴジラ-1.0』公開は2023年11月3日、この映画を観るのをすっかり忘れていた。米アカデミー賞の「視覚効果賞」としてノミネートされているニュースを見て、まだ上映していることに気がついた。さっそく最寄りの映画館の上映スケジュールを見ると、夜の21:00~23:17で厳しい。諦めかけていたが、アカデミー賞受賞のニュース。そのせいか15日(金)からは、午後の13:40からと夜21:00からの1日2回の上映になった。
日本が生んだ特撮怪獣映画のレガシー「ゴジラ」の70周年記念作品で、日本で製作された実写のゴジラ映画としては通算30作目だそうだ。『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズをはじめ『永遠の0』などの山崎貴が、監督・脚本・VFXを手がけた。第47回日本アカデミー賞の授賞式も3月8日に東京・高輪で開催され、『ゴジラ-1.0』は「最優秀作品賞」ほか、同年度最多の8部門の「最優秀賞」を受賞している。
神木隆之介が主人公の敷島浩一、浜辺美波がヒロインの大石典子を演じる。そのほかのキャストに山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、 佐々木蔵之介。神木隆之介と浜辺美波は、2023年4月から放送のNHK連続テレビ小説『らんまん』でも夫婦役を演じている。
以下7枚の写真は、『ゴジラ-1.0』のパンフレット(東宝株式会社)から引用。
タイトルに付けられた「-1.0」の読みは、「マイナスワン」。戦争によって何もかもを失い、「戦後、無(ゼロ)になった日本へ追い打ちをかけるように現れたゴジラが、この国を負(マイナス)に叩き落とす」という意味だそうだ。
舞台は戦後の日本。東京は焦土と化して両親を失った敷島浩一(神木隆之介)は、元特攻隊員の生き残り。焼け野原の中で赤ん坊を抱え一人強く生きる女性、大石典子(浜辺美波)に出会う。戦争を生き延びた人々が復興を目指すなか、体高15mの伝説恐竜「呉爾羅(ゴジラ)」は、米軍による核実験で被爆して50mに巨大化、怪獣ゴジラとなって東京に向かう。
圧倒的な力を持つゴジラに、米軍はソ連を刺激するとして軍事行動を控える。終戦後の政府はうまく機能していなく、軍隊を持たないために為す術(すべ)もない。戦争を経験した名もなき民間の有志たちは、ゴジラに対して「生きて抗う(あらがう)」ための策を探っていく。映画の中でゴジラに立ち向かったのは民間人だけ。でも、政治家、官僚、科学者といった人たちが、ストーリーに出てこないのでやや不自然。
3月16日は、土曜日とあって映画館は混雑していた。上映の10分前くらいに窓口に行くと、『ゴジラ-1.0』の座席はほとんど満席に近い。やはりアカデミー賞受賞の影響か。最前列目の席しかチケットが残っていなかったが、なんとか2列目の1席が空いていて入場した。
宮崎駿監督のアニメ映画『君たちはどう生きるか』は、太平洋戦争の空襲で母親を失った少年が、疎開先で不思議な世界に迷い込む物語。米アカデミー賞で日本の「長編アニメ賞」受賞は、同じく宮崎監督の『千と千尋の神隠し』が2003年に受賞して以来、2作目。一方、クリストファー・ノーラン監督(53)が「原爆の父」と呼ばれる物理学者の苦悩を描いた『オッペンハイマー』は、「作品賞」や「監督賞」、「主演男優賞」など7部門で受賞した。
2022年のロシアのウクライナ侵攻直後の現地を撮影した『実録 マリウポリの20日間』が「長編ドキュメンタリー賞」。ナチス・ドイツの強制収容所の所長の暮らしを描いた『関心領域』が「国際長編映画賞」と「音響賞」を受賞。今年は、現在の社会情勢を反映した「戦争」をモチーフにした作品の受賞が目立ったという。
『ゴジラ-1.0』は、70年前の1954年のシリーズ第1作目と同様で、水爆実験の影響で生まれた怪獣。今回受賞した山崎貴監督は、授賞式後の会見で「日本人としては『オッペンハイマー』に対するアンサーの映画を作らないといけないと思っています」と述べたという。
映画の舞台が現代ではなく、終戦直後の日本だったことに驚いた。戦争で焼け野原の東京、そしてゴジラが破壊した瓦礫の山は、阪神淡路大震災、東日本大震災、そして最近の能登半島地震の被災地、更にはウクライナやパレスチナの戦災の風景を想起させられる。もっと驚いたのは、銀座をゴジラが破壊するシーンは、広島・長崎に投下された原爆の閃光、爆風、キノコ雲の様なモノを描かれていることだ。
昔のハリウッド映画のように、日本では「戦争」は娯楽映画にはならない。水爆実験で巨大怪獣になったゴジラの襲来は、日本における反戦、反核の映画、疑似戦争の娯楽映画として定着したのだと思う。
岩のような皮膚、天を刺すような鋭い背ビレ。猛禽類を思わせる鋭利な爪先。太い脚と長い尻尾を持つゴジラのビジュアルは、これまでにない怖さ、リアルさを表現している。そして歩くときや、海を泳ぐときの筋肉の動きがリアル。円谷監督時代のぬいぐるみやミニチュア模型で撮影した頃とは、比べものにならない。そして建物がバラバラに破壊される様子、波や飛沫(しぶき)、燃焼や爆発の煙、土煙(つちけむり)のVFX(視覚効果)は見ごたえがあった。
コンピュータ・グラフィックス(CG)などの視覚効果(VFX)を駆使する国内外の映画では、監督のほかにVFX専門の監督がいる。山崎監督は両方を統括し、今回のゴジラでは脚本も書いた。つまり山崎監督は「三刀流」なのだ。過去のハリウッド大作と比べて、「人数の少なさ、期間の短さ、予算の少なさ。自分でやるから、この金額とこの時間で頭の中にあるものをそのままストレートに映像化できる」と山崎監督は語っている。
ゴジラが銀座の街を襲撃し逃げ惑う群衆の中の典子を敷島が見つけて救い出すシーンは、現実離れしている。何故か、戦後に旧軍の戦車や駆逐艦「雪風」など数隻が出てくるのは飛躍しすぎ。旧海軍が試作飛行の段階で、終戦となった幻の戦闘機「震電」が見つかったという設定。先尾翼型の独特な機体を持つこの戦闘機を修復して、敷島が操縦してゴジラと戦うところは、ストーリーとして面白い。
連合国軍の命令により外観のみ修復した震電 出典:ウキメディア・コモンズ
戦時中は技術士官として武器の開発に携わった野田(吉岡秀隆)は、死にきれなかった元特攻隊員の敷島に「私も戦争の頃を思うと、眠れなくなる時があります」と亡くなった人たちへの想いがある。また最後の方で、「この国は、命を粗末にし過ぎてきました」と言う野田は、敷島も含めて戦争で生き残ってきた人々が、ゴジラと自ら進んで戦うこと対する言葉だ。この映画が、エンタメだけではなく、根底には人間ドラマが描いてある。
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