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2023年7月の3件の投稿

2023年7月 9日 (日)

再び妻沼聖天山

 2023年6月15日(木)、「妻沼聖天山」(埼玉県熊谷市)に行き、10年ぶりに本殿彫刻を観覧する。

 

 妻沼聖天山の本殿「歓喜院聖天堂」 は、「日光東照宮」のような装飾建築で「埼玉日光」と称され、国宝に指定されている。ボランティアガイドの案内で、境内をめぐる。

 

 「聖天山」は「平家物語」、「源平盛衰記」や謡曲「実盛」、歌舞伎「実盛物語」などに、武勇に優れた義理人情に厚い人柄が称えられている斎藤別当実盛が、当地・長井庄(熊谷市妻沼)を本拠とした庄司(荘官、荘園の管理人)として、本尊・聖天様を1179年(治承3年)に祀る「聖天宮」を建立したのが始まりとされる。源頼朝が参拝したほか、中世には忍(おし)城主の庇護を受け、近世初頭には徳川家康によって再興されたが、1670年(寛文10年)の妻沼の大火で焼失した。

 「歓喜院聖天堂」 は、1735年(享保20年)から1760年(宝暦10年)にわたり、20数年をかけて再建された。設計・総棟梁の妻沼の名工・林兵庫正清のもと、その子の正信の代まで、東照宮の修復の参加経験を持つ彫刻師らの優れた技術がつぎ込まれた。彩色は狩野派の絵師によるものだという。建造物の各壁面は華麗な色彩の彫刻で装飾されており、装飾建築成熟期である江戸後期の代表例で、「日光東照宮をしのぐ」ともいわれている。

 2003年(平成15年)から2011年(平成23年)までの修復工事により、当初の極彩色の彫刻が蘇り、2012年(平成24年)国宝に指定された。多くの国宝建築が、権力側によって造られたのに対し、庶民の浄財によって造られたことは、極めて希な事と評価されたという。

●境内にある「斎藤実盛の像」

 右手に筆、左手に鏡を持っているのは、実盛が老兵と悟られないように髪を墨で黒く染めて出陣したという史実にもとづいているという。

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●妻沼聖天山の境内にある「千代桝(ちよます)」

 明治期創業の老舗料亭。『蒲団』、『田舎教師』で有名な田山花袋による小説『残雪』の舞台となった店だそうだ。

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●「貴惣門」(国指定重要文化財)

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 参道の1番目の門。3つの屋根の破風よりなっている。この様式は日本には4棟しか現存しない。規模の大きさでは全国に例がないという。

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 「貴惣門」の精緻に施された立派な彫刻。

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●「仁王門」(国登録有形文化財)

 1658年(万治元年)創立と伝えられる。明治24年台風によって倒壊、明治27年に再建。

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●本殿「歓喜院聖天堂」(国宝)

 本殿は、「奥殿」・「中殿」・「拝殿」よりなる権現造り。

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●拝殿・唐破風下の「琴棋書画」【写真をクリックすると博大表示】

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 「琴棋書画」は、左から「絵を見る子ども」「碁を打つ人々」「琴を弾く男」「読み書きする子ども」の順で配されており、 中国古来の文人の必須の教養や風流事の四芸のこと。日本では室町時代以降、屏風絵や工芸品の図柄などのモチーフとして多く見ることができるという。

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 上の写真の龍の彫刻の左右には、下のような虎とユー モラスな邪鬼がいる。

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 拝観料1人700円を払って、透塀(すかしべい、玉垣)に中に入場。拝殿、中殿、奥殿の外観を参観する。

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●「中殿」金箔貼りの豪華な花頭窓

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 「拝殿」は地味で装飾は少ないが、「中殿」は「奥殿」をつなげ、彫刻・彩色が次第に増え始め、観る人を徐々に高揚させるといった権現造りの特性がよく表現されているという。「奥殿」に接する位置にある花頭窓(かとうまど)は、肉彫彫刻の双龍が互いに尾を絡め、頭を下にして水を吐く迫力溢れる構図。背板の地紋彫りが黒漆仕上げのため、双龍の金箔を浮き上がらせている。

 花頭窓の上部、軒下小壁には、写真では見えないが、狩野派の絵師による牡丹と獅子など絵画が描かれている。

●「鷲に猿」の肉彫り彫刻(奥殿南側)

 「奥殿」の極彩色の豪華な彫刻は、中央部の大羽目彫刻を中心に、軒下・屋根下の上下にも展開されている。

 右側は、激流に落ちた猿を鷲が助けている場面が描かれている。猿は人間の煩悩を表し、鷲は神様に例えられるため、「歓喜天」の慈悲深さを表現しているとされる。左甚五郎作との説もあるが、実際は石原吟八と関口文治郎の両棟梁である。

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●「福禄寿と長寿」(奥殿南側)

 七福神の福禄寿のほか、鶴、亀、竹、梅もがあるが、松が描かれていない。松は木材としても一切使われていないそうだ。これに関しては、妻沼の聖天様に「待つのが嫌い」になった理由があり、その際「松」も嫌いになったというエピソードが伝えられている。

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●「布袋・恵比寿・碁打ち大黒」(奥殿西側)

 中央の彫刻は七福神が酒を飲みながら囲碁に興じており、左の布袋が恵比寿の一手を見守り、傍らで大黒天が観戦している。神様たちがのんびり遊びに興じられる程、平和である世の中を象徴しているそうだ。修復で、棋譜も見事に描き直された。

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 その右の大羽目彫刻では、大黒天の俵で遊ぶ子供たち。

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 左の大羽目彫刻では、布袋の袋で遊ぶ子どもたちが描かれている。

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●「毘沙門天・吉祥天・弁財天の双六」(奥殿北側)

 こちらも神様が遊びに興じている彫刻。左の吉祥天と右の弁財天が双六(すごろく)に興じており、毘沙門天が見つめている。

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 右手にいる赤鬼は、右隣の大羽目彫刻(次の写真)に立つ2人の女性を見て手招きしている。

 琵琶を持つ西王母と仙桃を持つ侍女。西王母は、中国で古くから信仰された女仙、女神。

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●「唐子遊び」:南西北の三面の縁下腰羽目彫刻にある9枚の彫刻。

 いきいきした子供たちが遊ぶ姿により、平和な世が表現されている。見物者の腰の高さに嵌め込まれた彫刻で、子どもでも間近で見やすい位置にある。

・「竹馬遊三人と桜、蘇鉄」(南側右):江戸時代の竹馬は、竹の先端に馬の頭部を付けて、馬に乗る真似をした。

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・「小間取遊び七人と梅」(南側中央):小間取遊びは、日本の手つなぎ遊びの元祖。親は鬼から守り、鬼は子を触るか、列が切れると勝ち。

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・「鶏持三人と牡丹、竹」(南側左):闘鶏のようだ。

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・「凧揚げとツツジ、アヤメ」(西側右):凧の糸も彫刻されている。

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・「魚獲六人と桃」(西側中央):全員が川でフルチンになっいる。

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・「盆踊りと蔦」(西側左)

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・「獅子舞五人と芙蓉」(北側右):右から2番目の子どもは、アカンベをしている。

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・「雪転がしと梅竹」(北側中央)

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・「子ども相撲と椿」(北側左)

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●「高欄を支える猿」

 奥殿周囲の高欄の下に、まるで高欄を支えているような感じに施されている猿はユーモラス。建物を支える斗供(ときょう)に乗る形で、周囲に13頭が巡らされており可愛らしいと人気がある。

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●「瑞雲に鳳凰」(奥殿北側の「鷲と滝」の上):奥殿南側の「鷲に猿」(前掲)とその上にある「瑞雲に鳳凰」(写真なし)と対をなしている。

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 聖天堂の彫刻は、上州花輪村(現在の群馬県みどり市)の彫刻師であった石原吟八郎を中心に制作された。吟八郎は、日光東照宮の修復に参加したほか、北関東を中心とした多くの社寺建築に彫刻を残している。装飾性を含んだ彫刻技術を高めた吟八郎やその弟子たちによって、数多くの聖天堂の彫刻が作られていったという。
 
 その中で、精緻を極めた彫刻の最たる例が、奥殿の外部における南側と北側に施された一対の「鳳凰」。この彫刻は吟八郎の次の世代である名工二人によって彫られたもので、南側を小沢常信が、北側を後藤正綱が手掛けたとされる。

●唐破風下の瓶の彫刻(奥殿南西北側の上部)

・「三聖吸酸(さんせいきゅうさん)」(奥殿南側の上部) 出典:ウキメディア・コモンズ

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 三人の聖人(孔子、釈迦、老子)が酢をなめて、その酸っぱさを共感している様子を表現したもの。中国の故事に由来している。酢が酸っぱいという事実は皆同じであり、儒教、仏教、道教など、宗教や思想が異なっても、真理は一つであるという「三教一致」を意味する。

・「司馬温公の瓶割り」(奥殿西側の上部) 出典:ウキメディア・コモンズ

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 司馬温公が子ども頃、大きくてとても高価な水瓶のあたりで友達と遊んでいたところ、友達の一人がその水瓶の中に落ちておぼれそうになった。温公は、父親からしかられるのを覚悟して石で瓶を割り、友達の命を救った。それを聞いた父親は、温公を褒め称え、命はどのような高価なものよりも尊いものだということを教えた。

・猩猩酒遊図(奥殿北側の上部)

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 親孝行な男が、揚子江のほとりで酒を用意して待っていると、猩猩(しょうじょう、オラウータンに似た海に棲む想像上の動物)が現れ、酒を飲み、踊りを舞って、飲めども飲めども、尽きることのない酒壺を与えて帰ったという縁起の良い話。

 

 本ブログの「妻沼聖天山」の関連記事

 「秩父・熊谷のアジサイ名所」  2019年06月26日投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2019/06/post-5514ab.html
 

 「妻沼聖天山」 2012年12月13日投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-8470.htm
 

 ★ ★ ★

●大聖歓喜天(だいしょうかんぎてん)

 「聖天」(仏教では、しょうでんと読む)は、正しくは「大聖歓喜天」。または「歓喜天」ともいって、象頭人身の仏法守護神で、四天王、帝釈天、吉祥天、弁財天、鬼子母神、大黒天などと同様の天部の一つ。男天・女天2体の立像が向き合って抱擁(結合)しているものが通例だという。「秘仏」として扱われており、一般に公開されることは少ないという。

 「妻沼聖天山」の本尊は、国指定重要文化財。1197年(建久8年)の作で、「秘仏」。錫杖の頭で、中心に歓喜天と二童子の像を表す。小さくて良く見えないが、拡大して見ると右図の「双身歓喜天」(高野山真別所円通寺本『図像抄』)のように、象頭人身の男天と女天が抱き合っているように見える。なお錫杖(しゃくじょう)とは、遊僧が携帯する杖。歩くとシャクシャク(錫々)という音が出る。

 妻沼聖天山の本尊「銅錫杖頭」と「双身歓喜天」の図 出典は、ウィキメディア・コモンズ

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 「妻沼聖天山」は、「日本三大聖天さま」の一つとして知られ、特に縁結び、夫婦の縁、家内安全・商売繁盛・厄除け開運・交通安全・学業進学などのあらゆる良縁を結ぶそうだ。

●庶民の浄財で再建

 「日光東照宮」では、荘厳な彫刻で飾られているが、本殿「聖天堂」の彫刻には特徴がある。つまり、龍などの威厳ある大きな彫刻ではなく、親しみやすい中国故事や七福神、唐子などモチーフにした彫刻は、聖天堂と庶民とのつながりの深さを示す。この社殿の再建には庶民たちの手で行われた。幕府・大名・豪商といった富裕層の手を借りずに、各地を回って金を募り、職人を集め、長い年月をかけて少しずつ造営されていったという。

 七福神が囲碁をしたり、子どもたちが凧揚げをしたり、相撲を取ったりと、登場人物が嬉々として遊戯に興じる場面が多く、盆と正月が一緒に来た様な賑やかさが感じられるという。こういった庶民階層の活力は、村の「お祭り」に似ていて、この「歓喜院聖天堂」が信仰だけでなく、近世庶民の娯楽施設やテーマパークとして機能していたのだろう。

●聖天様の「松」嫌い

 妻沼の聖天様は「松」(待つ)嫌いで知られている。その昔、聖天様は松の葉で目をつつかれたとか、松葉の燻(いぶし)にあったという理由で、とても毛嫌いしている。ゆえに、妻沼の人たちは松を忌(い)んでいるという。正月に門松を立てることはないし、松の木を植えない家もある。また、「松」の名のある人と結婚するとき、わざわざ改名するという。聖天様は、「待つことなく」願いをかなえてくださるそうだ。

 聖天様の「松」嫌いの理由の一つに、太田市「大光院」の呑龍(どんりゅう)様との喧嘩が伝えられている。すなわち、呑龍様との喧嘩中に、聖天様は松葉で目をつつかれたという。よって呑龍様を詣でたあとに聖天様へ行っても、ご利益はないと信じられている。「松が嫌い」という事が、この建物を建てられた江戸中期には確定していて、建築材に松の木や絵画彫刻のモチーフに松は使われていないというのは、おもしろい。

2023年7月 4日 (火)

映画「大名倒産」

 2023年6月30日(金)、映画『大名倒産』を観る。
 

  江戸時代を舞台に、鮭役人の子・小四郎は、思いがけず大名家の家督を継いで藩主となるが、藩が抱える莫大な借金を背負わされた運命を描いた浅田次郎による同名の時代小説を映画化したエンターテイメント。2023年6月23日より全国公開。

 巨額の借金を背負わされる主人公を、現在放映中のNHK連続ドラマ『らんまん』で主人公・槙野万太郎役の神木隆之介が演じ、2020年度後期のNHK連続テレビ小説おちょやん』で、浪花千栄子をモデルにしたヒロインを演じた杉咲花のほか、松山ケンイチ佐藤浩市、キムラ緑子らが共演する。監督は前田哲。

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 江戸時代の越後・丹生山藩(にぶやまはん) 。鮭役人・間垣作兵衛 (小日向文世)と平和に暮らしていたその息子・小四郎(神木隆之介)は、突然大勢の役人が家に現れ、自分が徳川家康の血を引く丹生山藩主の跡継ぎ・松平小四郎であることを知る。家督を継ぐはずの長兄が急逝し、次兄は正室の子(松山ケンイチ)だがうつけ者で江戸屋敷に住み、三兄は側室の子(桜田通)で賢いが生まれつき病弱、国元を離れたことがない。

 庶子である小四郎は、農家から下屋敷に奉公にあがっていた村娘・なつ(宮崎あおい)と、先代藩主の間に産まれた四男坊。間垣作兵衛となつの子として育てられたが、十三代目松平和泉守を継ぐことになった。実父である一狐斎(佐藤浩市)は、小四郎を藩主にしてさっさと隠居。

 庶民から殿様になって幸運をつかんだかのように見えたが、実は丹生山藩は25万両(現在の約100億円)もの借金を抱えていた。困惑する小四郎に一狐斎は、返済日に藩の倒産を宣言する「大名倒産」を命じる。借金を踏み倒してしまえば、武士も領民の皆が救われるというのだった。しかし、実は計画倒産を成し遂げた暁に、小四郎にすべての責任を押しつけ、切腹してもらうというムチャクチャな理由で家督を譲ったのだ。

 以下8枚の写真は、映画『大名倒産』のパンフレットから転載。

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 大名家や幕府役人への贈答品、莫大な費用が掛かる大名行列と、次から次へと難題が降りかかる。一国の大名になった小四郎は、丹生山藩を潰すまい、領民を苦しませることはさせまいと、幼なじみの町娘・さよ(杉咲花)、家臣の平八郎(浅野忠信)、勘定方の佐平次(小手伸也)らの協力を得て奮闘する。やがて、江戸幕府老中(勝村政信、石橋蓮司)に計画倒産を疑われてしまう。

 映画では、ハッピーエンドとなるが、エンドロールの後に「どんでん返し」が待っている。

 

 ★ ★ ★

●殿の節約プロジェクト

 藩の財政を把握しようと、さよと小四郎は算盤を弾いて膨大な帳簿を調べあげる。そして「殿の節約プロジェクト」が始まった。

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➊.使用頻度の少ない武具や家具などは、綺麗さっぱり売払う。武具の鉄は、農具などにリサイクルされた。

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➋.あちこちの藩からもらった贈答品は、入れ替えてお返しにする。意味のない昔からのしきたりは中止。

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➌.来客用の豪華な布団は、必要になった時に借りるという「サブスクリプション」。長屋の町人は、季節の着物や冠婚葬祭の羽織袴、鍋釜、布団など、何でもレンタル。

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➍.近郊の農村の肥料不足に目を付けたさよは、小四郎の排泄物を売る。

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➎.地主から借りていた中屋敷と下屋敷を手放し、小四郎の住む上屋敷に兄たちとシェアハウス。江戸時代の大多数の職人や商人は、長屋のシェアハウス暮らしだった。

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➏.参勤交代では、キャンプ(野宿)で宿代をコストカット。大人数での参勤交代は、藩の財政を大きく圧迫した。いろいろコストカットを検討したが、思い切って「野宿」にした。キャンプのようで楽しい。

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 こういった知恵や工夫を凝らしながら、小四郎らは節約プロジェクトに奮闘する。しかし節約だけで25万両の借金は返せない。物語は、丹⽣⼭藩に⼤⾦を貸す金貸業、大坂の豪商・天元屋のタツ(キムラ緑子)ら一味の悪事を暴くことだ。

●SDGs(持続可能な開発目標)と江戸時代

 「殿の節約プロジェクト」のアイデアは、現代にも通じる節約術でもある。SDGsは、2015年に国際連合によって採択された17の目標。日本では、すでに江戸時代の社会でSDGsのいくつかの概念や実践が存在していた。

 ▼農村社会では「地域の自給自足の経済」が重要な考え方。農民たちは、食料や日用品を自家生産し、地域の需要を満たすことを目指した。▼資源の節約や再利用が重要視された。例えば、木材や布、紙の再利用など「循環型の資源利用」が行われていた。▼「地域の共同体意識」が強く、互助の精神が重んじられ、地域の人々は共同で農作業や災害対策を行い、持続可能な地域社会を築いていた。▼山林の保護や水質管理など、「環境保護」に関する取り組みが行われていた。

 これらの要素は、現代のSDGsと直接的に結びついているわけではないが、持続可能な開発に関する基本的な考え方や実践の一部を見ることができるという。SDGsは、現代の課題や国際的な目標を反映したものだが、我々の先人の経験や知恵からも学ぶことができる。

●歴史劇と時代劇

 映画『大名倒産』のパンフレットの中で歴史学者の磯田道史は、「史伝」、「歴史劇」と「時代劇」に分けて考えるという。史実そのものを追及する「史伝」、その時代がどいうものであったか理解しようとするのが「歴史劇」。ある時代を舞台に人間の悲喜こもごもを描き、それに共感したりするのが「時代劇」だとする。

 『大名倒産』というタイトルに引かれて映画を観覧したが、浅田次郎の時代劇小説を映画化したものだった。財政改革と言えば米沢藩の第9代藩主・上杉鷹山が有名だが、あまり関係はなさそう。 現在のSDGsに通じる話は勉強になった。セリフは現代調、着物も明るくポップ、ストーリー的にもまったく「時代劇コメディ」だった。

 たとえば『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』は、2003年に発刊された磯田道史の著書。ノンフィクションであるが、2010年にこれを原作として映画『武士の家計簿』が製作された。この映画は、江戸時代の下級武士の実際の節約術で、おもしろかった。主演は、堺雅人。

 『決算!忠臣蔵』は、東京大学史料編纂所教授・故山本博文の著書。2012年に新潮社から新書として刊行され、2019年に『決算!忠臣蔵』のタイトルで映画化されている。大阪弁や現代風セリフのコメディで、限られた予算の中で仇討を果たそうとする赤穂浪士たちの奮闘を描いていた。

 一方で、映画『超高速!参勤交代』はフィクション。実際に映画は見なかったがテレビの放映を見た。江戸時代の参勤交代を題材にした土橋章宏の脚本。土橋自身により小説化され2013年に発刊、2014年に映画化された。2015年に続編小説『超高速!参勤交代 老中の逆襲』が刊行され、2016年には映画『超高速!参勤交代 リターンズ』が公開された。時代劇としてはおもしろかった。主演は、佐々木蔵之介。

 映画を見てないが、映画『殿、利息でござる!』は2016年に公開。原作は磯田道史の評伝「穀田屋十三郎」で、仙台藩の吉岡宿場の窮状を救った町人達の記録『国恩記』を元にしている。主演は阿部サダヲ。また映画『引っ越し大名!』は、2019年公開。生涯に7回もの国替えをさせられ、”引っ越し大名”とあだ名された実在の大名・松平直矩をモデルにした土橋章宏の小説『引っ越し大名三千里』の映画化で、土橋が脚本も担当した。主演は星野源。

2023年7月 3日 (月)

新型コロナ2023.06 第9波入口

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。6月16日、厚労省の専門家組織の会合が移行後初めて開かれ、新規患者数は緩やかな増加傾向が続いていて、夏の間に一定の感染拡大が起きる可能性があると分析。また、政府分科会の会長を務めていた尾身氏は26日、岸田首相と面会した後記者団に「全国的に微増傾向、第9波が始まっている可能性がある。高齢者をどう守るかが非常に重要」と述べた。

 2023年6月1日から30日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.05 「5類」移行」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】


【6月1日】

●東京都の定点把握、前週の約1.1倍 3週続けて増加傾向

 東京は6月1日、新型コロナの感染状況のモニタリング項目について発表した。それによると、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、416か所から報告があり、感染者数の合計は5月28日までの1週間で1647人で、1医療機関当たりでは3.96人となった。これは前の週の3.53人の1.12倍で、3週続けて増加傾向にあり、専門家は「今後の動向に十分な注意が必要だ」と指摘している。

 また、免疫を逃れやすい性質が指摘されている「XBB」系統の変異ウイルスの割合が増えて、全体の9割に上った。これについて専門家は、「新たな変異株の出現やその動向に警戒が必要だ」としている。一方、入院患者数は5月29日時点で、前の週より198人多い900人となった。

【6月2日】

●全国の感染状況「緩やかな増加傾向続く」 厚労省

 厚労省は2日、全国に約5千ある定点医療機関に5月22~28日に報告された新型コロナ新規感染者数は計1万7864人で、1医療機関あたり3.63人だったと発表した。前週(3.55人)の約1.02倍と横ばいで、4月上旬からの緩やかな増加傾向が続いている。

 都道府県別では多い順に、沖縄が10.35人、岩手が5.97人、山梨が5.78人、北海道が5.72人、石川が5.58人などとなっていて25の都道府県で前の週より増加。このほか、先月28日までの1週間に新たに入院した人は全国で3235人で、前の週のと比べて117人の減少とほぼ横ばいとなっている。厚労省は全国の流行状況について「比較的低い水準にあるものの、4月以降緩やかな増加傾向が続いていて、今後も感染状況を注視したい」としている。

 6月2日発表の定点把握(5月22日~28日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「発表より多くの感染者いる可能性」
 
 政府分科会のメンバーで、東邦大学の舘田教授は、現在の感染状況について「感染者の数は全国的には横ばいになっているが、検査を受けていない人も大勢いるとみられる。発表された数字よりも、さらに多くの感染者がいる可能性に注意する必要があり、警戒レベルを上げて対応していくことが重要になっている」と話している。

 そのうえで「5類移行に伴って人々の動きが盛んになっていて、感染が広がるリスクは高まっている。子どもたちの間では、コロナ以外にもインフルエンザやRSウイルスなどに感染する患者も増えている。気温が上がってきている中で、対策の徹底は難しいかもしれないが、重症化リスクが高い人を守るために、マスクを効果的に使い、換気を徹底すること、密を避けるなど、日常生活の中で警戒感を高めてほしい」と話している。

●今年度の大学入試 試験中のマスク不要など、コロナ前の形に

 文科省は2日に今年度行われる大学入学共通テストや各大学の試験の指針となる大学入試の実施要項を公表した。新型コロナが5類に移行されたことを受け、「コロナ禍前の形に戻すことを基本とする」としていて、昨年度まで求めていた試験中のマスクの着用は不要となり、4年ぶりに個人の判断でマスクをつけずに受験することが可能となる。

 また「濃厚接触者」の特定も行われなくなるなど、各大学などが自主的な感染対策に取り組むこととされている。一方、大学入学共通テストの追試験の会場の数については、コロナ禍前が2会場であったことも踏まえ、前回の全国47都道府県50会場から大幅に縮小することも検討されている。今年度の大学入試のうち、大学入学共通テストは本試験が来年1月13日と14日、追試験が来年1月27日と28日の日程で行われる。

●夏の甲子園 コロナで制限の選手どうしの握手など容認へ

 高校野球の春夏の全国大会では、新型コロナの感染拡大後、ガイドラインを設け選手をはじめ関係者の感染対策や応援のルールなどを定めてきた。高野連などは2日、大会の臨時運営委員会を開き、新型コロナが5類に移行されたことを踏まえてこうしたガイドラインの廃止を決めた。これにともなって試合終了後に対戦したチームの選手どうしが握手することや、学校の応援団がハイタッチや肩を組むなどの行為などが認められることになった。

【6月9日】

●コロナ感染、増加傾向続く 専門家「死者増加恐らくない」

 厚労省は9日、全国に約5千ある定点医療機関に5月29日~6月4日に報告された新型コロナ新規感染者数は計2万2432人で、1定点あたり4.55人(速報値)だったと発表。前週(3.63人)の約1.25倍、42都道府県で前週より増えた。4月上旬からの緩やかな増加傾向が続いている。最多は沖縄の15.80人で前週比1.53倍。石川6.98人、北海道6.71人、千葉6.66人と続く。香川(1.76倍)、三重(1.66倍)、島根(1.56倍)など一部地域では大幅に増えた。

 国立感染研の鈴木感染症疫学センター長は「第8波ほどではないが、全国で上昇傾向が見られる。特に沖縄は以前の流行に近い状況になっており、注意が必要だ」と話した。5月29日~6月4日の全国の新規入院患者数は4003人で前週(3346人)の約1.20倍。集中治療室に入院している全国の重症患者数は7日間平均で61人で前週(58人)から3人増えた。

●「超過死亡」、例年と比べ増えていない 国立感染研

 「超過死亡」は、過去のデータから統計学的に推計される死亡者数を実際の死亡者数がどれだけ上回ったかを調べる手法で、国立感染研などは今回、全国各地の17の自治体から提供された死亡者数のデータを用いて分析した。ことし3月20日以降、先月中旬までの8週間について、超過死亡が出ているか1週間ごとに調べたところ、全国でも地方ごとでも、過去5年間のデータから推計される死亡者数と比べて顕著に増えた時期はなかったことが分かった。

 分析に当たった専門家は、新型コロナによる死者はいたが、大幅な増加はみられなかったと考えられるとしている。超過死亡は去年、新型コロナの感染が拡大した時期に顕著に増えたことが報告されているが、これまでは自治体から遅れて報告される人口動態調査のデータを使っていたため、分析におよそ3か月かかっていた。

 日本の「超過死亡」の推移 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト(6月23日付)

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●子ども、他の感染症流行 「RSウイルス」 夏風邪「ヘルパンギーナ」

 子どもを中心にコロナ以外の感染症が流行している。国立感染研が9日に公表した感染症週報によると、大型連休明けから、代表的な夏風邪の「ヘルパンギーナ」や、乳幼児が重症化しやすい「RSウイルス」の患者数が増加している。週報によると、5月22~28日の定点当たりの患者数は、ヘルパンギーナが1.33人、RSウイルスが1.95人と、いずれも3週連続で増加。ともに定点医療機関当たりの患者数は過去5年間の同時期の平均を上回る。

 ヘルパンギーナは、発熱やのどの痛みのほか、口の中に水ぶくれができ、痛みにより食事がとりにいこともある。RSウイルスは、多くは風邪のような症状で済むが、初めてかかった乳幼児は肺炎や細気管支炎になりやすい。いずれも飛沫や接触によって感染、手洗いや人混みを避けることが基本的な感染対策。RSウイルスは手指のアルコール消毒も効果がある。通常は冬に流行する季節性インフルエンザも、全国の学校で集団感染が相次いでいる。

【6月14日】

●立民、新型コロナ感染後遺症の対策法案 国会に提出

 立憲民主党は、新型コロナ感染による後遺症への対策を進めるための法案を国会に提出した。後遺症について、実態が十分に解明されておらず、適切な医療を受けられていない現状があると指摘。そして対策の実施は、国や地方自治体の責務だと明記したうえで、政府が必要な財政上の措置を講じること、さらに後遺症の診断や治療方法に関する研究を推進し、医療提供体制や相談体制を整備するとしている。

 また、立憲民主党は、新型コロナワクチンの接種によるものと疑われる健康被害などが相次いでいるとして、給付金を速やかに支給することなどを盛り込んだ法案も提出した。党の新型コロナ対策本部を務める小川淳也衆議院議員は、記者団に対し、「コロナは5類に移行したが油断できない。財政支援を含め、さまざまな体制の整備はこれからだ」と述べた。

【6月15日】

●東京都 感染者、5週続け増加傾向 「動向に注意必要」

 東京都は6月15日、新型コロナ感染状況のモニタリング項目について発表した。定点把握対象の都内419の医療機関のうち、415か所から報告があり、感染者数の合計は6月11日までの1週間で2486人、1医療機関あたりでは5.99人。これは、前週の5.29人のおよそ1.13倍で、5週続けて増加傾向にあり、専門家は「感染拡大が続いている。今後の動向に十分な注意が必要」と指摘。また、6月12日時点の入院患者数は、前の週より49人増えて1032人。

●近ツー支店長ら詐欺容疑で逮捕 ワクチン業務で5.9億円を詐取か

 旅行大手の近畿日本ツーリストが、ワクチン接種の関連業務で委託料を自治体に過大請求していた問題で、大阪府警は15日、過大請求で計約5億8900万円をだまし取ったとして15日、大阪市の「関西法人MICE支店」の支店長ら3人を詐欺容疑で逮捕した。府警は1日、過大請求で公金をだまし取った疑いがあるとして、同支店などを詐欺容疑で家宅捜索。近ツーの親会社は同日の決算会見で、判明している過大請求の総額は約14億7千万円と発表していた。

 問題は4月に発覚。近ツーは、自治体からワクチン接種予約のコールセンター業務の委託を受け、指定より少ないオペレーターの人数で別の会社に再委託。委託通りの人数などをもとに自治体に過大請求していた。近ツーの5月の発表では2020~22年度の3年間、大阪府や東大阪市、静岡県焼津市など16自治体に計約5億8400万円を過大請求。東大阪市などから委託を受けたMICE支店長は、再委託先に勤務実態を改ざんするよう指示していたという。

【6月16日】

●5類移行後初 専門家会合「夏に一定の感染拡大可能性」

 厚労省の専門家組織の会合は16日、5類への移行後初めて開かれた。新規患者数は4月上旬以降緩やかな増加傾向で、36の都道府県で前の週より増え、沖縄県では感染拡大の傾向がみられる。新規入院者数や重症者数も増加傾向で、医療提供体制は全国的に逼迫はないものの、沖縄県の状況には注意が必要。また、オミクロン株のうちの「XBB系統」が大部分を占めていて、今月下旬時点には免疫を逃れやすい可能性が指摘されている「XBB.1.16」が49%になると推定。

 さらに今後の感染の見通しについて、過去の状況などを踏まえると夏の間に一定の感染拡大が起きる可能性があり、医療提供体制への負荷が増大する場合も考えられるとしていて、感染やワクチンによって得られた免疫が弱まる状況や、より免疫を逃れやすい可能性がある変異ウイルスの増加、接触する機会の増加によって感染状況に与える影響にも注意が必要だとしている。

●脇田座長「増加傾向の規模など予測は難しい」

 専門家会合のあとの記者会見で、脇田座長は現在の感染状況について「いま増加傾向が続いており、もう少しこの傾向が続くのではないか。この傾向がどこまで続きどのくらいの規模に広がるかは現時点で予測は難しい」。また、医療体制については「それほど逼迫しているわけではないが、入院者数が少し増加している。高齢者は感染による抗体保有率が若い世代に比べて低く、重症化リスクのある人たちに感染が波及し、医療が逼迫する可能性がある」と指摘した。

 脇田座長によると、会合では「第9波の入り口」と指摘する意見も出たという。だが、現時点では今後の「感染拡大の規模を予測するのは難しい」ため、「第9波」についての評価は示さなかった。全国の新規入院者数は1週間で4330人、集中治療室に入院中の重症者数は7日間平均で79人と、ともに前週から増加。脇田座長は「医療提供体制は全国的に逼迫はしていないが、沖縄では注意が必要だ」とした。

●全国の感染状況、前週の1.12倍 「緩やかな増加傾向」

 厚労省によると今月11日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナ患者数は前の週から2731人増えて2万5163人となった。1つの医療機関あたりの平均の患者数は5.11人で前の週の1.12倍。前の週から増加が続くのは10週連続となる。

 都道府県別では多い順に、沖縄18.41人、鹿児島7.37人、石川6.58人、埼玉6.51人、北海道6.47人などとなっていて、36の都府県で前の週より増加している。東北地方は減少している地域が多いが、首都圏や西日本での増加が目立つ。移行直後と比べると全国では約2倍となっている。このほか、今月11日までの1週間に新たに入院した人は全国で4330人で、前の週と比べて208人の増加となった。

●米FDA、「1価ワクチン」の開発を推奨

 米国では、新型コロナの感染状況の変化に伴い、ワクチンの成分をどのようにするか、FDA(米国食品医薬品局)の専門家会議などで議論が重ねられてきた。FDAは16日、米国国内でこの秋以降、使用する新型コロナのワクチンとして、変異株の「XBB.1.5」に対応する「1価ワクチン」の開発を製薬各社に推奨したことを発表した。

 「XBB.1.5」は複数のオミクロン株が組み合わさり、免疫から逃れやすい性質が指摘されている。今月10日現在、米国内の新規感染者の中で最も多く、およそ4割を占めると推定。複数の製薬会社はすでに「XBB」系統に対応する成分のワクチンの開発を進めていて、今回のFDAの推奨は、開発中のワクチンの有効性に関するデータや、製薬各社が供給できる時期の情報などをもとに行った。FDAの推奨を受け、製薬各社は今後、ワクチン開発をさらに加速させるとみられる。

●9月からの接種、「XBB.1」系統対応のワクチン使用へ

 新型コロナのワクチン接種は来年3月まで無料が継続、5月から高齢者などを対象に接種が進められ、9月からは5歳以上のすべての人を対象にした接種が始まる予定。現在の接種は、従来株に対応する成分と、オミクロン株の「BA.5」などに対応する成分を含んだ「2価ワクチン」で行われている。厚労省の専門家分科会は16日、9月から始まる接種では現在流行の主流となっているオミクロン株「XBB.1」系統だけに対応する「1価ワクチン」を使う方針を決めた。

 理由について分科会では、これまでの「2価ワクチン」よりも「XBB.1」系統に対してウイルスの働きを抑える効果が期待できることや、今後、従来株が流行する可能性は極めて低いことなどを挙げている。一方「5歳以上のすべての人」としている接種の対象者について、厚労省は最新の知見や外国の状況などを踏まえ、9月の接種開始を前に改めて分科会で議論したうえで決めることにしている。

【6月19日】

●新型コロナワクチン接種後に死亡、新たに5人に一時金など支給へ

 新型コロナのワクチンの接種後に死亡した人については、予防接種法に基づいた健康被害の救済制度で、国が因果関係が否定できないと認定した場合には、死亡一時金などが支給されている。厚労省は19日、接種後に間質性肺炎の悪化や急性心不全、急性心筋梗塞などで亡くなった、72歳から91歳の男女5人について、新たに認定することを決めた。

 5人全員が高血圧症や腎臓病などの基礎疾患があったということで、厚労省は、死亡診断書やカルテの記載などを踏まえて、因果関係が否定できないと判断したとしている。接種したワクチンの種類や接種の回数などは明らかにしていない。新型コロナのワクチン接種で、死亡一時金などの支給が認められたのは、今回の5人を含めて20代から90代までの合わせて72人となった。

【6月20日】

●自宅療養で貸し出しのパルスオキシメーター、未返却相次ぐ 千葉

 新型コロナに感染して自宅療養をしていた人に貸し出されていた血液中の酸素の状態をみるパルスオキシメーターについて、千葉県内で返却されないケースが相次いでいて、自治体が速やかな返却を呼びかけている。このうち千葉市は、パルスオキシメーターをおよそ2万2000台所有し、2020年12月から先月まで、新型コロナに感染して自宅療養をしていた人に貸し出してきた。

 療養が終わった段階で郵便で返却することになっているが、市によると、先月末の時点で2割余りにあたるおよそ5000台が返却されていないという。このほか千葉県内では、少なくとも千葉県で1万6200台余り、柏市でおよそ520台、船橋市でおよそ420台が返却されていない。1台の価格は、3500円から1万2000円ほどだという。各自治体は「自治体の財産なので必ず速やかに返してほしい」と呼びかけている。

●外食チェーン、コロナ禍で停滞していた海外進出 再び加速

 外食チェーンの間では、コロナ禍の落ち込みから回復する外食需要を取り込もうと、企業の買収などを通じて海外進出を再び加速する動きが相次いでいる。「丸亀製麺」などを展開するホールディングスは、欧米などで外食需要が回復する中、海外店舗の増加ペースを再び速めていて、昨年度は63店舗の増加。今年度も、この2倍以上にあたる162店舗の増加を計画、英国のピザチェーンなどの買収やカナダでのうどん店の初出店などを予定している。

 回転ずし大手の「くら寿司」は、中国大陸への出店計画を復活させ、6月に上海に初出店した。今後ほかにも、米国を中心に出店を加速し、2030年中に海外店舗を400店舗に増やし、年間1500億円の売り上げを目指す。居酒屋などを展開する「ワタミ」がことし2月以降、台湾と韓国、シンガポールに出店、焼き鳥の「鳥貴族」ホールディングスが、1年以内に米国に出店する方針。コロナ禍で停滞していた外食チェーンの海外進出が再び加速している。

【6月22日】

●RSウイルス感染の子どもが急増 小児病棟では足りず「危機的状況」

 RSウイルスなどの感染症にかかる子どもが急増し、関東では一部の病院で小児病棟が埋まりつつある。医療現場からは「危機的な状況」という声もあがり、医師らは、手洗いなどの感染対策を呼びかけている。RSウイルスは、もともとはインフルエンザと並んで「冬かぜ」の代表と言われていた。近年は流行入りが少し早まる傾向にあり、2021年には夏に大流行した。今年も5月以降、流行の兆しを見せている。

 国立感染研によると、全国3千の定点医療機関から報告された1定点あたりのRSウイルスの患者数は、6月5~11日で2.64人(速報値)で、21年と同程度まで増えている。最多は山口県の7.16人で、奈良県の5.15人と続く。首都圏では東京都が1.72人、千葉県が2.64人、埼玉県が2.53人、神奈川県が1.51人だった。

【6月23日】

●コロナ感染者数、前週比1.1倍 11週連続で増加 沖縄で医療逼迫

 厚労省によると今月18日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は前の週から2451人増えて2万7614人。1つの医療機関あたりの平均の患者数は5.6人で前の週の1.1倍。増加が続くのは11週連続。都道府県別では多い順に、沖縄が28.74人、鹿児島が9.6人、千葉が7.57人、愛知が7.22人、埼玉が7.02人など、32の府県で前の週より増加している。今月18日までの1週間に新たに入院した人は全国で4417人で、前の週と比べて67人の減少した。

 厚労省は全国の流行状況について「全国的に緩やかな増加傾向が続いているほか、5類移行の前後で単純に比較はできないものの沖縄県ではことし1月の第8波のピークに近い水準になっているため引き続き注視したい」としている。

 6月23日発表の定点把握(6月12日~18日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●沖縄で急拡大、搬送困難事例も

 沖縄県内では新型コロナ感染が急拡大している。患者の搬送先を探すのにおよそ1時間かかるケースも発生している。県によると、今月18日までの1週間に県内54の医療機関から報告された新型コロナの患者数は1552人、1医療機関あたりの平均患者は28.74人で、前週から1.56倍に増えた。推計される患者総数は7280人で、全国最悪の水準の感染状況が続いている。県全体の入院者数は今月18日現在で507人で、重症は9人、コロナ専用病床の使用率は57.8%。

 県内の医療機関では医療提供体制が逼迫しはじめ、27の重点医療機関では7か所で救急診療、3か所で一般診療を制限している。また先週、県内では救急車を呼んだ患者の搬送先を探すのに55分かかるケースや病院への照会が10回行われたケースなど、搬送が困難な事例が複数発生しているという。県保健医療部の糸数部長は「感染を防ぐための行動を取ってもらえるよう期待したい。軽症の場合は救急の時間帯の受診は控えてほしい」と呼びかけている。

●専門家「基本的な感染対策、思い出し行動を」

 政府分科会のメンバーで、東邦大学の舘田教授は現在の感染状況について「地域差があるものの感染者の数は全国的に増加している。特に突出している沖縄県では、病床使用率が5割に達し、現場の医師からは『医療体制が極めて逼迫している』と報告されている」と述べた。その上で「小児の診療現場では、RSウイルスやヘルパンギーナなどの患者も増えている。これらの感染症がコロナとともに拡大することで逼迫が起きないよう注意する必要がある」と話している。

 そして「沖縄県以外でも急激な感染拡大が起こる可能性がある。蒸し暑くなる時期を迎えているが、感染リスクが高い場面でのマスクの着用や換気の徹底など基本的な感染対策を改めて思い出し行動してもらうことが大事。高齢者や基礎疾患がある人で、ワクチンを最後に接種してから4か月から半年が経過している人は追加接種を考えてほしい」と話している。

【6月25日】

●コロナ下で高齢者の「フレイル」増加 自粛生活で心身の活力低下

 新型コロナ感染症が流行した2020年と2021年に、高齢者の心身の虚弱(フレイル)が進んでいたとする分析結果を、国際医療福祉大学のグループがまとめた。自粛生活が続く中、懸念されていた「コロナフレイル」の増加が裏付けられたかたちになった。フレイルとは、健康と要介護の中間に位置付けられ、筋力や心身の活力が低下した状態を指す。

 フレイルを防ぐには、運動と栄養、社会参加の三つが重要で、一つでも欠けると衰弱が進むとされる。分析をした同大の広瀬助教(理学療法学科)は「コロナ下で地域活動が中止になり、友人間の交流や外出の機会が減った。社会参加の減少から、健康がドミノ倒しのように崩れている恐れがある」と語る。今後について広瀬助教は「社会活動は継続することが何よりも大事。感染対策に注意しながら、趣味や地域の活動を続けてほしい」と話している。

【6月26日】

●「第9波の可能性」 尾身氏が首相面会 高齢者守る重要性強調

 政府の新型コロナ対策分科会の会長を務めていた尾身氏は26日、岸田首相と首相官邸で面会し、感染状況や今後の見通しについて意見交換した。面会後、尾身氏は記者団に「全国的に微増傾向にあり、第9波が始まっている可能性がある。高齢者をどう守るかが非常に重要になってくる」と述べた。感染状況については、「定点観測のデータをみると、県によって多少の違いはあるが全国的には微増傾向にある」と述べた。

 微増傾向の理由は、新型コロナが「5類」に移ったことで、人同士の接触機会が増えたことだと分析。「(地域的に流行を繰り返す)エンデミックに落ち着いていく可能性もある」とも述べた。尾身氏は「致死率はそんな急激には変わっていない」との見方も示し、社会経済活動を維持しながら、高齢者や基礎疾患のある重症化リスクのある人を守ることが重要だと強調。6回目のワクチン接種を促しつつ、「新規感染者数や死者数を注意深く観察する必要がある」とした。

●松野官房長官「重症化リスク高い方など、積極的に接種検討を」

 松野官房長官は、午前の記者会見で「専門家からは、感染者数が増加傾向にあること、死亡者数の推移を注視する必要があるが、死亡率はG7各国に比べ非常に低い水準にある、定点報告のほか重層的に実態を把握する必要があることなどの指摘があった」と説明した。

 そして「専門家の意見も踏まえ、引き続き感染状況を重層的に把握するとともに、感染拡大が生じても必要な医療が提供されるよう幅広い医療機関で対応する体制への移行を進めていく。また重症化リスクが高い方などに対するワクチン接種を進めており、対象者は積極的に接種を検討してほしい」と述べた。そのうえで「今後、夏に向けて一定の感染拡大が生じる可能性がある。各地域の感染動向を見ながら、自治体や医療関係者と連携し、先手先手で必要な対応を行っていく」と述べた。

【6月27日】

●沖縄、コロナ感染急拡大 専用病床ほぼ満床、患者受け入れ困難に

 沖縄県では、今月25日までの1週間で病院に搬送された新型コロナの患者は157人と前の週のおよそ1.3倍に増え、感染が急拡大している。県内の新型コロナ専用の病床はほぼ満床、多くの病院の救急部門で新たな患者の受け入れが難しくなっている。那覇市消防局によると、搬送先が見つかるまでに照会を4回以上行い、現場に30分以上滞在せざるを得なかった救急搬送困難事案が19~25日に21件、前週から4倍に増えた。

 夏休みの観光シーズンを前に、県内のホテルの中には感染急拡大の影響で予約の申し込みが鈍り、キャンセルが出ているところもある。事業者からは、これ以上の影響の拡大に不安を訴える声があがっている。玉城知事は、26日の記者会見で「このまま感染が拡大し続けた場合、昨年の第7波を超えることも想定しなければならない」と懸念。沖縄を訪れる観光客に対し、「体調不良であれば少し旅行を延期し、十分体調を整えてから来てもらいたい」と呼びかけた。

【6月29日】

●沖縄感染増、シーズン直撃 新型コロナ報告数、突出して最多

 沖縄県は6月29日、19~25日の1週間に報告された1定点医療機関あたりの感染者数が、前週から1.37倍増の39.48人になったと発表。全国で突出している。夏休みシーズンを控え、さらに感染が広がる懸念が強まっている。1週間の感染者の総数(推計値)は1万人に達し、コロナ患者向けの病床使用率は25日時点で65.9%まで上昇。コロナ入院患者は900人前後の高い水準で推移。医療従事者が、感染・濃厚接触で休むケースも相次いでいるという。

 沖縄県医師会は29日に記者会見を開き、「過去にも全国に先行して夏前に沖縄で流行した。今後、全国でも感染拡大が起こる可能性がある」と警鐘を鳴らした。

●沖縄の医師に危機感、5類でも対策訴え

 24時間対応の救命救急センターに勤務する沖縄県立中部病院の山口医師は「昨夏の第7波をしのぐ勢いで感染が拡大している。流行はさらに拡大する可能性がある」と懸念する。第7波では、直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数が全国最多となるなど、沖縄の感染状況は全国で最も深刻となった。

 背景に、「5類」に移行したことに伴う、社会のとらえ方の変化があると山口医師はみる。「5類に移行したからといって、ウイルス自体が変化したわけではないが、『もう5類』と油断してしまっている」と指摘。街でマスクをしない人が増え、換気や手洗いなどが徹底されなくなっていると話す。夏の観光シーズンを控え、「やっと日常に戻ったという人も多いと思うが、今こそ、3年間身につけてきた基本的な個人の感染対策を徹底すべきだ」と語った。

●第8波、自宅での死者1309人 厚労省 70代以上が85%

 厚労省は29日、新型コロナ感染症の流行の「第8波」にあたる昨年11月1日から今年1月31日までの間に、自宅で亡くなった新型コロナ患者が1309人いたと発表した。約85%が70代以上の高齢者だった。厚労省によると、亡くなったのは男性743人、女性566人。80代以上が63.0%で、70代が22.6%、60代が7.3%。

 死亡直前の症状は、軽症か無症状が38.3%、中等症13.4%、重症13.8%だった。死後に陽性とわかった人は31.7%。77.5%の人に基礎疾患があった。ワクチンの接種歴は、0回が16.2%、42.4%は不明。4回接種した人も18.8%いた。自宅療養中に重症化して死亡したケースや、陽性が判明したが、がんや基礎疾患があり自宅での看取りを希望した、高齢者施設内でのクラスターで亡くなった、コロナ以外の要因で亡くなった後に陽性がわかったなどがあった。

【6月30日】

●新型コロナ患者数、緩やかな増加傾向 沖縄、「第8波」超えも

 厚労省によると、新型コロナの全国の感染状況は先月25日までの、1週間の医療機関1つあたりの平均患者数が6.13人と前の週の1.09倍となり、12週連続で増加した。このうち沖縄県が39.48人と全国で最も多く、ことし1月の第8波のピークを超える水準で感染が急拡大している、次いで、鹿児島県11.71人、熊本県8.75人、愛知県8.03人、千葉県7.77人などと、39の都府県で前の週より増加している。

 今月25日までの1週間に新たに入院した人は全国で4567人で、前の週と比べて29人の増加。厚労省は「全国ではゆるやかな増加傾向が続いているほか、沖縄県ではことし1月の第8波のピークを超える水準になっている。去年は夏に全国的に感染が拡大したので引き続き注視したい」としている。

 6月30日発表の定点把握(6月19日~25日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●沖縄、別の感染症も流行 小児専門病院逼迫

 6月に入り10歳未満や10代の間で新型コロナの感染が急速に広がっているほか、風邪に似た症状を引き起こすRSウイルス感染症や、ヒトメタニューモウイルス感染症も流行している。このため小児専門の病院では対応に追われていて、沖縄本島南部の南風原町にある「県立南部医療センター・こども医療センター」では子ども向けの集中治療室(PICU)が8床あるが、6月29日時点で満床となっている。

 小児感染症内科の張医師によると、6月25日には190人近くの患者が救急外来を利用し、このうちおよそ7割が子どもでその多くが発熱の症状を訴え、5人程度が入院した。「子どものウイルス性感染症は時期に応じて主要な流行が決まっていて同時に流行することは珍しいが、この1か月ほどは新型コロナとRSウイルス感染症などが流行している。3年間行われてきた感染対策が解除され、感染症が広がりやすくなっていることが原因の1つだと思う」と指摘した。

●沖縄の医師「5類への移行で大規模な救急病院に患者集中」

 厚労省の専門家組織メンバーで沖縄県立中部病院の高山医師は、沖縄県内の感染状況について「すべての年齢層に広がり、減少へと転じる兆しはない。免疫を逃避する能力が高まったXBBウイルスが県内流行の主流になっていて、過去に感染をしていても再び感染するリスクが高まっている」。医療の現状について「行政による入院調整機能が無くなったことで、規模の大きな救急病院に患者が集中する傾向が強まり、一部医療機関が逼迫してしまっている」と指摘した。

 そのうえで「院内感染で使用できる病床が減ってしまうことや、コロナ以外の感染症で子どもが重症化する例が増えていることも大きな課題。今後、さらに感染拡大した際やインフル流行と重なるとさらに厳しい状況になることも予想され、高齢者や子どもの重症患者など個別の入院調整のあり方を議論しておく必要があるのではないか」と訴えた。

●都内クリニック「コロナ検査を希望しない患者も」

 東京・渋谷区のクリニックでは大型連休明けの時期は新型コロナの検査を受けて感染が確認された人はほとんどいなかったが、その後、徐々に増加していて、今週は1日に20人ほどに検査を行い、このうち陽性が確認されるのは6人~7人ほどだという。ただ5類移行後、検査の費用は自己負担となっていて、検査を希望しない患者もいるということで、実際にはさらに多くの患者が感染している懸念もあるようだ。

 クリニックの宮田理事長は「学校や職場などさまざまな場所で感染が広がっていることも懸念される」と話す。また、ヘルパンギーナや手足口病などほかの感染症が確認されるケースも増えていることから、のどの痛みを鎮める薬や解熱剤などが入手しにくい状況になっている。理事長は「患者さんが処方箋を持って薬局を回るような状況も発生している。周囲に感染を広げないためにも、まずはしっかりと検査を受けてほしい」と呼びかけている。

●小池都知事「感染者急増でも対応する体制は確保」

 小池知事は6月30日の定例会見で、都内の感染者数は前の週に比べてほぼ横ばいであることなどから、医療提供体制への大きな負荷にはなっていないという認識を示した。そして「コロナの教訓は、急に増える時は一気に増えることであり、もしそのような状況に陥った時でも、機動的に対応するための体制は確保している」と述べ、手洗いなどの基本的な感染防止対策を行うよう呼びかけた。

●政府分科会 舘田教授「第9波となる可能性」

 分科会メンバーで、東邦大学の舘田教授は「全国的には増加傾向はまだ緩やかだが、沖縄県では第8波以上の水準で感染が拡大している。今後ほかの地域でも感染が急増し、第9波となる可能性がある」とし、「なぜ、沖縄で感染者が増えたのか分かっていないが、これまでも全国と比べ早い時期に感染拡大する傾向があった。感染により獲得した免疫が失われたり、暑くてマスクをつけにくかったりして、増加につながった可能性がある」と分析。

 その上で「子どもの感染症が全国的に広がり、入院する子ども患者が増えていて、これがコロナ拡大と重なれば病床逼迫も考えられる。感染状況の最悪リスクに備え、行政が入院調整を支援する取り組みを進めることが重要」。感染拡大への備えとして「高齢者や基礎疾患がある人は、早めの追加接種を検討して欲しい。また重症化リスクの低い人も、風邪を引いたと思ったらコロナ感染を疑い、慎重な行動を取ることが大事」と話す。

●松野官房長官、先手先手で必要な対応 岸田首相、必要な対策取るよう指示
 
 松野官房長官は、午後の記者会見で「今後、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性があり、引き続き先々の感染動向を見据えながら、先手先手で必要な対応を行っていく」。また、沖縄県の状況ついて「入院者の増加や院内クラスターの発生により医療に一定の負荷がかかっている。沖縄県では県民への基本的な感染対策などの呼びかけに加え、医療提供体制の確保に向けた取り組みを進めており、引き続き県と密接に連携をとりつつ適切に対応していく」と述べた。

 岸田首相は30日夕方、加藤厚労相や後藤新型コロナ対策担当相らに、沖縄県と連携しながら必要な対策を取るよう指示した。厚労省は、今後、沖縄県内の医療提供体制が十分かどうか、県や医療関係者などから聞き取りを行うなど状況の把握に努め、対策を検討する方針。また去年、夏の間に全国で感染が拡大したことも踏まえ、換気の徹底など基本的な感染対策を呼びかけるとともに、沖縄県をはじめ各地で高齢者などへのワクチン接種を進めていきたいとしている。

 
 ★ ★ ★

 5類移行後の「定点把握」は、感染状況の傾向や水準を把握する事が目的で、日々の正確な感染者数を表していない。これまでの1日ごとの感染者数を集計する医療機関や保健所の作業も大変であったが、「全数把握」に慣れていたため、定点あたりの数を聞いてもピンとこない。ただし、定点の数から推計患者を出すことはできるので、推計を参考にしてもらえば良いとの考えもあるようだ。

 しかし、オミクロン株が主流となって軽症者や無症状が増え、検査を受けない人も増えているという。5類移行後に、国民の意識も変わってきているので、「9波の可能性」とか「9波の入口」という話もどこか、別の世界かと思ってしまう。

 5類移行後はコロナ死者の日々の公表はなくなり、過去5年のデータから予測される死者数と比べ、どれほど実際の死者が増えたかをみる「超過死亡」の公表に代わっている。死亡届などをもとに厚労省が集計する「人口動態統計」を使うそうだ。従来の方法では超過がわかるのは2カ月後、死因別では5カ月後になるが、厚労省は、迅速にコロナの動向を把握するため、1カ月以内に示すことにしたという。

 6月9日に移行後初となる分析を公表し、「超過死亡は認められなかった」という。つまり深刻な流行拡大は起きていないとされている、これもピンとこない。1カ月後に死者のトレンドがわかっても、対策ができるのかという問題もある。

 6月26日の尾身会長の会見で、英国では感染拡大の波を経るごとに徐々に亡くなる人の数が少なくなり、感染が地域の中で一定のレベルに落ち着く「エンデミック」に移行してきている可能性があると述べた。「日本も第9波による死者数が第8波を下回るようであれば、英国から遅れてエンデミックの方向になっていくのではないか」という発言に期待したい。

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