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2023年3月の6件の投稿

2023年3月31日 (金)

新型コロナ2023.03 個人判断

 政府は1月27日、新型コロナの感染症法上の分類を5月8日に、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げることを決めた。マスクの着用については、3月13日から屋内・屋外を問わず「個人の判断」に委ねることになった。一方で、高齢者などへの感染を防ぐため、医療機関を受診する際などは着用を推奨するとしている。

 厚労省の専門家組織の8日会合では、感染状況は全国で減少傾向が続き、感染の第7波が始まる前の去年夏の水準を下回る状況と分析。重症者数や亡くなる人の数も減少傾向が続いている。今後の感染状況については、全国的には横ばい傾向が続くと見込まれるが、年度替わりの行事などを通じて一部地域では今月末にかけて増加に転じる可能性がある。また、4つの県では前週より増加傾向で、注意が必要だとしている。

 2023年3月1日から15日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.02 XBB系統」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

 

【3月1日】

●新型コロナ発生源、「中国の研究所から流出可能性高い」 FBI長官

 FBI(米連邦捜査局)のレイ長官は28日、米国のFOXニュースのインタビューで、新型コロナの発生源について「FBIは、武漢の研究所における事故である可能性が高いと評価している」と初めて公の場で示した。そのうえで、レイ長官は「私には、中国政府が米国政府などによる調査を妨害し、真実をわかりにくくしようとしているように思える」と述べて、中国を批判した。

 FBIの旗 出典:ウキメディア・コモンズ

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●香港、マスク着用義務を撤廃 コロナ対策の規制すべてなくなる

 香港では、3年前の7月から公共の場所でのマスク着用が義務づけられ、違反すれば罰金が科せられるなど取締りの対象となってきた。しかし、現地のメディアは、「香港は着用義務が残る最後の地区になってしまう」などと、批判する論調を伝えていた。こうした中、香港政府は感染が抑えられているとして、屋内・屋外を問わず、3月1日からマスクの着用義務を撤廃、これでコロナ対策による規制はすべてなくなった。

 香港の夜景 出典:ウキメディア・コモンズ

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● コロナ診療報酬増、見直し議論を開始 厚労省

 厚労省によると、発熱などでコロナ感染が疑われる患者が発熱外来を受診したとき、医療機関は感染対策などのために原則4470円(2月末までは5500円)の診療報酬の特例加算を受け取れる。特別加算の対象となった診療は、2022年6月の1カ月間で250万回程度あったという。入院でもコロナ患者には通常よりも高い診療報酬を設定。重症患者への対応では通常の3倍にあたる診療報酬が設定されている。

 1日の中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)では、医療側の委員が「高齢者への対応も必要」などとして、特例の延長を求めた。一方、医療費を負担する健康保険などの保険者側は「特例措置の縮小は可能だ」と主張した。

●生活保護申請、3年連続増 昨年 物価高・コロナ禍の支援終了が影響か

 2022年の生活保護の申請件数は23万6927件で、前年と比べて1850件(約0.8%)増。3年連続の増加。物価高騰に加え、コロナ禍の経済的な支援策が終わったことも件数を押し上げたとの見方もある。厚労省が1日、2022年12月分の調査結果を公表、これをもとに2022年1年間(速報値)の件数を集計した。申請の推移をみると、1~4月は前年同月と比べて減少が続いたが、5月に10.6%増と急拡大。その後も11月まで7カ月連続で前年を上回った。

●東京都、5人死亡 1028人感染確認 前週比167人減

 厚労省は3月1日、都内で新たに1028人が新型コロナの感染確認を発表した。1週間前の水曜日より167人減った。また人工呼吸器か、ECMO(人工心肺装置)を使っている重症の患者は、2月28日より2人減って11人だった。一方、感染が確認された5人が死亡した。

 3月1日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【3月2日】

●外国クルーズ船、東京のターミナルに 3年前の開業以来初入港

 外国のクルーズ船は、横浜港に寄港した船で新型コロナの集団感染が発生した3年前の2月以降、国内での受け入れが停止されていたが、1日、水際対策の緩和後、外国事業者の船として初めてドイツの「アマデア」(日本郵船の旧「飛鳥」)が、静岡市の清水港に入港した。そして2日には、アマデアが江東区の東京国際クルーズターミナルに入港した。今月は外国のクルーズ船6隻が東京国際クルーズターミナルに入港し、来月以降も入港が相次いで予定されているという。

 クルーズ客船「アマディア」 出典:ウキメディア・コモンズ

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【3月3日】

●5類移行後も介護事業者への支援継続へ 厚労省

 厚労省は、新型コロナの感染症法上の位置づけが5月8日に「5類」に移行したあとの医療提供体制について、検討を進めている。こうした中、重症化リスクが高い高齢者への介護サービスを提供する事業所については感染対策の徹底が引き続き必要だとして、現在実施している支援や措置について、「5類」移行後も原則として継続する方向で検討している。

●岸田首相 「5類」移行後 状況変われば「2類相当」に見直しも

 3日の参議院予算委員会で立憲民主党の石垣氏は、新型コロナの「5類」への移行をめぐり「死者の絶対数は増えている。第8波以上に死者が増えた場合は、どう対応するのか」とただした。これに対し首相は「5類に位置づけたあと、オミクロン株とは大きく病原性が異なる変異株が出現するなど、科学的な前提が異なる状況になれば、直ちに対応を見直す。具体的には2類感染症と同様の入院勧告などの各種措置を適用することが考えられる」と述べた。

【3月4日】

●コロナワクチンの重症化予防効果、4回接種で78.2% 長崎大

 長崎大学などのグループは、オミクロン株「BA.5」が広がった去年7月~9月に、9都県11医療機関でコロナの疑いで入院した16歳以上の789人について、ワクチン接種歴や検査結果、症状などを調べた。先月、厚労省の専門家会合で示された結果によると、新型コロナで入院した人が重症化する割合について分析すると、ワクチンを2回接種した人では、接種していない人と比較して16.3%、3回接種した人で56.9%、4回接種した人で78.2%低かったという。

 また別の分析で、入院に至った割合については、2回接種した人で58.2%、3回接種で72.8%、4回接種で84.8%低くなっていた。今回、分析した期間に接種されていたのはほとんどが従来型ワクチン。研究グループは接種回数が多いほど有効性が高まる傾向が見られたとする。同大学の前田特任研究員は「従来型ワクチンでもBA.5に対して重症化予防などで有効だった。2回や3回目で接種が終わり時間がたっている場合、若い人でも追加接種は推奨できる」と話す。

【3月7日】

●「内閣感染症危機管理統括庁」設置の改正案 衆議院で審議入り

 内閣法などの改正案は、7日の衆議院本会議で審議入りした。感染症対策を強化するため、総合調整などの司令塔機能を担う「内閣感染症危機管理統括庁」を内閣官房に新たに設置し、トップに「内閣感染症危機管理監」を置いて官房副長官を充てる。また、感染症の発生や蔓延の初期段階から迅速・的確に対応できるよう、首相による都道府県知事などへの指示権を、政府対策本部を設置した段階で使えるようにすることも盛り込まれている。

●ワクチンの接種、重症化予防軸足 新年度5月8日から

 新型コロナの新年度のワクチン接種について、厚労省は7日、65歳以上の高齢者らを対象にした接種を5月8日から始めることを決めた。全額公費負担の「臨時接種」は来年3月末まで継続し、高齢者だけでなく生後6カ月以上のすべての接種希望者が、1年間は無料で接種できる。同日開かれた厚労省の専門家分科会で方針が正式に了承された。ワクチン接種の目的は、発症予防よりも重症化予防に軸足が置かれる。

 新年度の接種は5月からと9月からの2回。高齢者や基礎疾患があるなど重症化リスクの高い人たち、こうした人に接する機会が多い医療機関や高齢者・障害者施設などの従事者は2回接種する。それ以外の人は5月は対象とならず、9月からの1回接種となる。また、5~11歳を対象にしたオミクロン株対応ワクチンの接種は、3月8日から始めることも決まった。中国・武漢由来の従来型ワクチンを2回以上接種した人への追加接種で使う。

●秋冬 若い世代、ワクチン検討を

 この春以降の新型コロナワクチン接種について、厚労省は「感染による重症者を減らすこと」を第一目的に掲げた。オミクロン株が主流となってワクチンを繰り返しうっても感染は十分に防げなくなった一方、重症化を避ける効果は比較的長く続くことが明らかになってきた。

 ワクチンに詳しい北里大の中山特任教授は「2年ほどたち、mRNAワクチンの限界が見えてきた。その代表が、感染・発症予防効果の早期の減衰」。重症化リスクのない、比較的若い世代の人たちはこの秋冬、「BA.4および5対応の2価ワクチンをうったことのない人には、接種をすすめたい」と話す。

【3月8日】

●5類移行後の診療報酬の特例措置見直し案 厚労省

 政府は、5月8日に「5類」に移行したあとの医療費の負担や医療体制について検討を進めていて、厚労省は、医療機関に支払われる診療報酬の見直し案を、8日の中医協(中央社会保険医療協議会)に提示した。それによると、医療提供体制を維持するために設けられていた「発熱外来」であることを公表した場合の加算を廃止するほか、新型コロナの重症者などを入院させた際の加算も縮小するとしている。

 一方で、一般の医療機関でも入院の受け入れや診察ができることになるため、医療機関内の感染防止対策への加算は維持するほか、これまで自治体が主に担ってきた入院調整の業務が想定されるとして、調整を行った場合の診療報酬を新たに設ける。このほか去年、承認された新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」を保険適用の対象とする。治療1回当たりの薬の価格はおよそ5万1850円で現在は無料だが、公費負担が終了すれば、3割負担で1万5千円余りとなる。

●新規感染者数「一部で増加傾向可能性に注意」 専門家組織

 厚労省の専門家会合が8日に開かれ、現在の感染状況について全国で減少傾向が続き、感染の第7波が始まる前の去年夏の水準を下回る状況になっている。重症者数や亡くなる人の数も減少傾向が続いているとしている。今後の感染状況について専門家組織は、全国的には横ばいの傾向が続くと見込まれる一方で、年度替わりの行事などを通じて一部の地域では今月末にかけて増加傾向に転じる可能性があるという。

 また、4つの県では今週は前の週より増加傾向になっていて、この傾向が続くかどうか注意が必要で、さらにより免疫を逃れやすいとされる変異ウイルスの動向を監視し続けることが必要。季節性のインフルについては全国で前の週と比べて若干減少していて、例年の傾向を踏まえると減少傾向が続くと見込まれるものの、引き続き注意が必要だとしている。

●1週間の新規感染者数、前週比0.81倍 一部で増加も

 厚労省の専門家組織の会合で示された資料によると、7日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて0.81倍と減少傾向が続いている一方、一部の地域では増加に転じている。首都圏の1都3県では、東京都が0.89倍、神奈川県が0.79倍、埼玉県が0.85倍、千葉県が0.87倍と減少が続いている。一方で、鳥取県が1.11倍、宮崎県が1.08倍、秋田県と沖縄県が1.03倍と4つの県で増加に転じている。

 人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、鳥取県が140.58人と全国で最も多く、次いで島根県が126.80人、徳島県が105.62人となっていて、全国では56.65人となっている。

●医療機関などの感染対策 新たな考え方

 8日の専門家会合では、メンバーらがまとめた「5類」移行にあわせた、医療機関や高齢者施設での感染対策についての新たな考え方を示した文書が提出された。この文書では、新型コロナが「5類」移行後も流行が繰り返し起きることが想定されるとし、病気の人や高齢者など、重症化リスクの高い人が集まる医療機関や高齢者施設では、施設内で感染が広がらないよう感染対策を続けることが求められるとし、必要な対策を一問一答の形式で示している。

●「5類」に変更後、身近な感染対策

 新型コロナの感染症法上の位置づけがことし5月に「5類」に変更されたあとでも求められる身近な感染対策について、厚労省の専門家組織のメンバーらが新たな見解をまとめ、「5つの基本」として示した。身近な感染対策については最初の「緊急事態宣言」が出されていた2020年5月に当時の政府の専門家会議が「新しい生活様式」を示していたが、今回はこれを抜本的に改めている。

 新たにまとめた「5つの基本」は、▼体調不安や症状があるときは自宅で療養するか医療機関を受診すること、▼その場に応じたマスクの着用やせきエチケットの実施、▼3密を避けることと換気、▼手洗い、▼適度な運動と食事。

 「5つの基本」 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●人手不足の観光業界が合同就職面接会 急速に需要回復 東京

 コロナ禍から旅行需要が急速に回復する中、観光業界で人手不足に悩む企業が相次いでいるとして、東京都が「合同就職面接会」を開いた。初日の8日は、バス会社やホテルの運営会社など30社余りが参加。都によると、観光業界では人手不足による影響が広がっていて、参加した企業の中には、客室をおよそ7割しか稼働できないというホテルの運営会社も出ている。企業の担当者は、仕事を求めて訪れた人に働きやすさなどをアピールしていた。

【3月9日】

●「パンデミック」3年、続く変異 終息なお見えず

 新型コロナ感染症について、世界保健機関(WHO)が世界的な流行を意味する「パンデミック」の状態と認定してから、11日で3年となる。最近は大規模な感染拡大は見られず、日本でも対策の緩和が続く。ただ新たな変異株の登場は続いており、このまま終息に至るのか、先行きは不透明。WHOのまとめによると、2020年1月に新型コロナの出現が報告されて以来、今年3月5日までに世界でおよそ7億6千万人が感染し、約687万人が亡くなった。

 WHOの委員会は今年1月、「パンデミックは『移行期』にある」との見方を示した。最も深刻な段階から、世界的なリスクが下がる段階に移りつつあるとの認識。とはいえ、いまでは各国とも感染者数の細かい算定をやめており、正確な実態は分からなくなっている。必要とする世界の人々にワクチンや治療薬が十分行き渡っているとも言えない状況だ。

●JR東海、列車内などでのマスク着用呼びかけ 13日以降取りやめへ

 JR東海はこれまで新幹線や在来線の車内と駅の構内で、マスク着用などを呼びかけるアナウンスをしてきたが、政府の方針を踏まえて今月13日以降、混雑時間帯を含め、こうした呼びかけをやめることになった。また、13日以降は新幹線や在来線の特急で、座席を回転させて向かい合わせで座ることも認める方針。一方、接客にあたる窓口の駅員や列車の乗務員は引き続きマスクを着用するという。

●東京ディズニーランドなどでのマスク、13日以降は個人の判断に

 東京ディズニーランドと東京ディズニーシーは、今月13日から園内でのマスクの着用について来園者、従業員ともに個人の判断に委ねる。そのうえで、人と人との間で一定の距離を確保するなど基本的な感染対策を、引き続き協力を求めることにしている。一方、大阪のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)は、今月13日以降、来園者のマスクの着用は個人の判断に委ねる方針をすでに決めている。園内で働く従業員は、当面マスクの着用を続ける。

● マスク緩和、少しずつ  「客が個人判断」「従業員は当面着用」 慎重な業界も

 13日からマスク着用が個人判断に委ねられることを受け、消費の現場では顧客に対する着用呼びかけをやめるといった運用指針が相次いでいる。鉄道・バス、航空などは、これまでのマスク着用に関する放送をやめる。ただ、政府方針では通勤ラッシュ時など混雑する電車内では着用が推奨されており、混雑時間帯の会話や大声を出す乗客に配慮を求める場合があるという。接客現場の従業員については、大手百貨店など引き続きマスクの着用を求めるところも多い。

 一方、顧客にも引き続きマスクの着用を求めるところもある。歌舞伎座などで劇場内ではマスクの着用を推奨。美容室では、施術時に顧客と美容師との距離が近くならざるを得ず、来店客に着用をお願いする所もある。ただ、政府は高齢者などへの配慮は引き続き必要としており、着用ルールの緩和に慎重な業界も一部に残る。社会全体での「脱マスク」にはまだ時間がかかりそう。

●東京・上野公園など都立公園 飲食伴う花見が4年ぶり可能に

 新型コロナの影響で自粛が求められていた東京・台東区の上野公園などの都立公園での飲食を伴う花見が4年ぶりにできるようになった。都によると、上野公園のメインの「さくら通り」については、混雑を避けるため花見期間となっている今月13日から来月16日までは引き続き自粛を求めるという。

●ライオン2頭コロナ感染後死ぬ 和歌山・白浜

 和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドは9日、飼育していたライオン23頭のうち1月9日に19歳のオス、12日に21歳のメスが死亡、死後の検査でコロナ感染が判明した。ほかにも咳などの症状がみられたライオンがいたため、全頭に検査を実施した。同時期にライオンの飼育員が新型コロナに感染していたことから、飼育員からライオンに感染したとみている。死んだ2頭は高齢で、感染後に肺炎を発症したとみられる。国内の動物園から感染報告は初めて。

【3月10日】

●5類移行後の医療費負担や医療体制、見直し方針公表

 厚労省は10日、「5類」へ移行後の医療費負担や医療提供体制について、具体的方針を明らかにした。現在は窓口負担が無料となっている医療費のうち、検査や陽性が判明したあとの外来診療の費用は、自己負担とする。ただ、急激な負担増加を避けるため、高額な治療薬は引き続き公費で無料とし、入院費は、原則として自己負担を求めるものの、月に最大2万円を軽減する措置を設ける。これらの措置はそれぞれ9月末までと、その後感染状況などを踏まえ検討する。

 一方、幅広い医療機関で受診ができる体制を目指して、来年4月までに段階的に移行を進めていく。具体的には、外来診療は季節性インフル検査をシーズン中に1人でも行った全国のおよそ6万4千の医療機関の受け入れを目指し、入院はおよそ8200あるすべての病院で受け入れを目指す。また医療機関に支払われる診療報酬は、入院に加算していた特例措置を縮小する。入院調整については医療機関の間で行う仕組みに段階的に移行する。

●ワクチン接種後の死亡で初の認定 因果関係「否定できず」

 厚労省の専門家部会は10日、去年11月に「BA.5」対応ファイザーワクチンで4回目接種後に死亡した42歳女性は、ワクチン接種と死亡との因果関係が「否定できない」と評価した。「副反応疑い報告制度」は、新型コロナワクチンの安全性を監視するため、副反応が疑われる場合は医療機関などが国に報告、PMDA(医薬品医療機器総合機構)が評価する 。この制度での死亡例はおよそ2千件、ほとんどが評価不能とされ、因果関係が「否定できない」は今回が初めて。

 一方、本人や家族の申し立てにもとづいて医療費や死亡一時金などの支給を決める「健康被害救済制度」もあり、死亡との因果関係が「否定できない」として死亡一時金が認定された例は30件ある。厚労省によると、この制度は「副反応疑い報告制度」と比べて、厳密な因果関係を必要としないなどの違いがあり、「副反応疑い報告制度」で「評価できない」とされた例でも、認定される場合がある。

●業界2割、マスク着用継続 医療や競技団体など 政府、指針見直し状況調査

 マスク着用について政府は10日、業界団体ごとのガイドライン(指針)の見直し状況を発表した。2割弱の団体が、従業員らに引き続き着用を求めるとしている。指針は政府の要請を受けて195の業界団体が作った。このうちクラシック音楽やエステなどの18団体は着用の対象を従業員のみとする。16団体は従業員と利用者の双方に着用を求める。日本医師会や日本歯科医師会のほか、バスケットとバレーなどのリーグは屋内観客にも着用を要望する。

 スーパーやコンビニなどの小売り、外食、プロ野球、プロサッカー、葬儀など153団体は各事業者に委ねる。8団体は9日時点で見直し作業中という。一方、新型コロナが5月8日に感染症法上の分類で「5類」に引き下げられると、これまでの指針を維持するかどうかは業界団体が判断することになる。オフィスなどのガイドラインを作っている経団連は、廃止する方針だ。

【3月12日】

●世界の感染状況まとめてきた米大学、コロナ特設サイト更新終了

 米国のジョンズ・ホプキンス大学は、特設サイトを2020年1月に立ち上げ、新型コロナの発生状況や死者数などの世界中の最新データを、国や地域ごとにまとめて発信してきた。サイトはインターネット上で公開された各国政府の情報を自動的に収集するなどしてデータの更新を続け、日本や海外のメディアが世界の感染状況を伝えるのに利用するなど、さまざまな形で活用されてきた。

 しかし、最近になり、リアルタイムに公開される情報が少なくなり、正確なデータの把握が難しくなったとして、現地時間の10日午前8時すぎに最後のデータ更新を行った。今後もこれまで集めたデータは公開するとしている。運営に携わった大学の研究者ブラウアー氏は「更新終了は複雑な気持ちだ。パンデミックはまだ終わっていないが、世界が新型コロナを理解するのに重要な役割を果たせたことを誇りに思っている」と話した。

 ジョンズ・ホプキンス大学 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【3月13日】

●マスク着用、きょうから個人の判断に

 新型コロナの感染症法上の位置づけが5月8日に「5類」に移行するのを前に、政府は3月13日からマスクの着用を個人の判断に委ねる。一方で、高齢者などへの感染を防ぐため、医療機関を受診する際などは着用を推奨するとしていて、政府は混乱が生じないように、SNSやテレビCMなども活用して丁寧に周知していく方針。厚労省は「マスクを着用した方がいい場面を示しているので、参考にしてもらいながら、場面に応じて個人で判断してほしい」としている。

●岸田首相、マスク着用せず官邸入り 着脱の考え方を説明する考え

 岸田首相は午前8時すぎ、マスクを着用せずに首相官邸に入り、記者団に対し「マスクの着脱は個人の判断に委ねることとなるが、個人の着脱を強制するものではない。私自身、マスクを外す場面が増えると考えている」と述べた。そのうえで「換気が難しい場面や、高齢者施設を訪れる際など重症化リスクの高い方々と接するような場面では着用をお願いするが、より具体的な説明を多くの国民が戸惑わないような形でしっかり発信していくことは重要だ」と述べた。

 国会では13日から、政府の方針に合わせてマスクの着用は、個人の判断に委ねられることになった。午前9時過ぎから始まった参議院予算委員会の集中審議では、岸田首相と閣僚がマスクなしで質疑に臨んだ。また、これまで答弁者の前に置かれていたアクリル板も、13日から設置されなくなった。一方、出席した議員の一部や、官僚の多くは、引き続きマスクを着用していた。

●「新型コロナ感染症」 5類移行も法令上の名称変わらず

 13日の厚労省の専門家による部会で、新型コロナが5月8日に「5類」に移行したあとの法令上の名称などについて議論が行われ、当面は今の「新型コロナウイルス感染症」を継続して使用する方針を決めた。法令上の名称について厚労省は、これまで感染症法上の位置づけが5類に移行することに合わせて「コロナウイルス感染症2019」とする案も含め、見直しの検討を進めていた。

 新型コロナは現在、感染症法で「1類」~「5類」とは別の「新型インフルエンザ等感染症」に含まれる「新型コロナウイルス感染症」として規定されている。しかし、名称を変更すると「今後、感染対策は行わなくてよくなった」などと国民に誤った印象を与えかねないという意見が専門家などから寄せられたため、現在の名称を継続すべきと判断した。一方で、将来的にウイルスが弱毒化するなど特性が変化すれば、名称を見直す方針も了承された。

●抗体保有、全国で45%

 新型コロナに自然感染した後にのみできる抗体の保有率が、2月時点で全国で42.3%(速報値)に上ったことがわかった。厚労省が13日の感染症部会で公表した。欧米と比べ低水準だが、昨年11月の28.6%(確定値)から大幅に上がった。地域差も大きく、福岡、沖縄両県で6割弱、岩手県で3割弱だった。抗体保有率の調査は、2月19~27日に全国で献血をした1万3121人を対象に行った。

【3月14日】

●ワクチン接種後死亡の11人に一時金支給 因果関係否定できず

 新型コロナのワクチンを接種後に死亡した人について、予防接種法に基づく 「健康被害救済制度」で国が認定した場合には死亡一時金が支給されるが、これまでに20代~90代の男女30人が認められている。厚労省は14日、接種後にうっ血性心不全や脳梗塞、突然死などで亡くなった52歳~83歳の男女11人ついて、新たに救済対象とすることを決めた。このうち7人は高血圧症や糖尿病などの基礎疾患があった。死亡一時金の支給が認められたのはこれで41人となった。

●東京都医師会会長、「マスクは必要に応じて着用することが大事」


 東京都医師会の尾崎会長は14日の定例会見で、新型コロナ対策としてのマスクの着用が13日から個人の判断に委ねられたことについて「マスクはいるかいらないかではなく、必要に応じて着用することが大事だ」と述べた。また、新型コロナが5月8日に「5類」へ移行することについて、「新型コロナはなくなったわけではない。今後は重症化しやすい高齢者をどうやって見極めるかが大事になる」と述べた。

 「5類」に移行したあとの医療提供体制について、「コロナは発熱などの症状がでる前に感染力をもっていて、インフルと同じように診られるかというと難しい医療機関もあると思う。その場合は地域で連携することで発熱症状のある患者が放置されないようにしたい」と述べた。

●児童・生徒、自殺最多514人 昨年コロナ禍以降3年で3割増

 2022年の自殺者数(確定値)は2万1881人で、2年ぶりに増加した。厚労省が14日に公表した。また児童・生徒(小中高校生)の自殺者数は統計のある1980年以来、過去最多の514人になった。コロナ禍以降、顕著な増加がみられ、この3年間で3割増えた。男子高校生が全体の4割を占めた。自殺の原因や動機は、小中高いずれも「学校問題」が最多。具体的には「学業」「進路」のほか「学友」が目立った。

 自殺者数の全体では、男性が1万4746人(前年比807人増)、女性が7135人(同67人増)でいずれも増えた。男性は2009年以来の増加。女性は3年連続増。年代では50代が4093人(18.7%)と最も多かった。原因や動機は、「健康問題」が最も多く、「家庭問題」、「経済・生活問題」と続く。自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)は全体で17.5。都道府県別では山梨が24.7で最も高く、秋田23.7、宮崎22.7と続いた。

【3月15日】

●中国政府、観光ビザ3年ぶりの再開を発表

 中国外務省の汪報道官は14日の記者会見で、観光を含むあらゆるビザの申請を15日から再開すると発表。中国政府は、2020年3月以降、外交官などを除いて外国人の入国を停止させる措置をとっていたが、その後、ビジネスや留学などを目的としたビザの発給は段階的に再開してきた。観光ビザの発給再開は3年ぶり。中国政府としては海外との往来を活発にして「ゼロコロナ」政策の影響などで停滞した経済を立て直す狙いがあるとみられる。

 ただ旅行や出張などで中国を訪れる日本人がこれまで多く利用してきた15日以内の短期滞在に限ってビザが免除される措置については停止されたまま。一方、中国人の海外への団体旅行も徐々に再開していて、先月、20か国を対象に解禁したのに続いて、15日からはさらに40か国増やして60か国に拡大される、この中に日本は含まれていない。

●東京都、2人死亡 816人感染確認 前週より110人減

 厚労省は15日、都内で新たに816人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の水曜日より110人減った。また、人工呼吸器かECMOを使っている重症の患者は14日より1人減って7人。一方、感染が確認された2人が死亡した。

 3月15日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●国内、61人死亡 9552人感染

 厚労省によると、15日に発表した国内の新たな感染者は空港の検疫などを含め9552人となっている。前週の水曜日に比べ2254人減った。また、国内で亡くなった人は、兵庫県で7人、大阪府6人、埼玉県4人、福岡県4人で、全国合わせて61人。また、感染が確認された人で人工呼吸器やECMOをつけたり、集中治療室などで治療を受けたりしている重症者は、15日時点で119人。14日と比べて4人増えた。

 以下は3月15日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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2023年3月22日 (水)

鴻巣の「びっくりひな祭り」

 2023年2月26日(日)と3月3日(金)、埼玉県鴻巣市のひな祭り会場をめぐる。

 

 埼玉県は、ひな人形の出荷額が日本一。岩槻、鴻巣、越谷、所沢が主な生産地。

 2月26日(日)、さいたま市岩槻区の「まちかど雛めぐり」 のあと鴻巣市に移動し、15:00~15:40「花久の里(かきゅうのさと)」を観覧。また、3月3日(金)10:50~12:00、再び、鴻巣市の「花久の里」を訪ねる。

●花久の里

 花と音楽の館かわさと「花久の里」、ここは、「鴻巣ビックリひな祭り」のサテライト会場。「花久の里」の長屋門をくぐる。

 「花久の里」は、旧家・青木家より寄贈された家屋を改装。約1,000本のバラを中心とする庭園のほか、コンサートやそば打ち体験などの催しが行われている。食事処では手打ちうどんや季節の天ぷら、コーヒーやケーキを味わうことができるという。

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 長屋門や母屋、離れなど地方の旧家の佇まいを残していて、母屋のサロンではグランドピアノ常設のコンサート、長屋門には2つの会議室を有し、 離れの和室の食事処「花音里」、茶室(和室)では色々な催しを行える。

 多目的広場には、ひな祭りをモチーフにした関東工業自動車大学校と鴻巣市のコラボレーション『ひなカー』。

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 長屋門を利用した会議室に飾られた吊るし雛。

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 母屋の天井から吊るし雛

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 かぐや雛

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 サロンの雛飾り

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 竹林のコンサート 花久の里交響楽団

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 ひな祭り花火大会

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 六角錐17段のひな壇

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 茶室の吊るし雛

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 2月26日(日)この後、出発地に戻る。また3月3日(金)には、「花久の里」から鴻巣駅前のショッピングモール「エルミこうのす」に移動。


●エルミこうのす

 3月3日(金)12:20~13:45、日本一高いピラミッドひな壇を見物。

 ここは、「鴻巣びっくりひな祭り」のメイン会場。1階、セントラルコートの吹抜けにある、31段、高さ約7mのピラミッドひな壇。「花久の里」のピラミッドひな壇よりはるかに高い。「鴻巣びっくりひな祭り」は、鴻巣市が約380年の伝統を持つひな人形の生産地であることをPRするために2005年から始まり、今年で19回目だという。

 1階から見上げるピラミッドひな壇。

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 1回から19回の「鴻巣びっくりひな祭り」のポスターとピラミッドひな壇に飾りきれないひな人形が並ぶ。

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 2階から眺めるピラミッドひな壇。

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 3階から見下ろす。

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 こんな大きなひな壇をどうやって組み立てて人形を並べるのかと思っていたら、テレビでその作業映像を流していた。跳び箱を積み重ねるようにしてピラミッド形の丈夫なひな壇を組み立てて、大勢の人が登って上から下へと人形を並べていた。もちろん上部の高いところで作業する人は、ヘルメットを被って命綱をつけている。

 「花久の里」にもあったが、鴻巣市内の何ヶ所かのサテライト会場に、こういうピラミッド型のひな壇がいくつかあるようだ。

 「エルミこうのす」は、鴻巣駅東口周辺の再開発における中核ビル。A1街区のビル(商業棟・マンション棟)は、2007年(平成19)10月にに開業、2階で鴻巣駅に直結している。A2街区のビルは2009年(平成21)7月 シネマックス鴻巣」が開業したが、2011年(平成23)12月閉館。その後鴻巣市が映画館を取得、2013年(平成25)7月に日本初の市民ホールと融合した「こうのすシネマ」として再開した。

 モール1階のレストランで昼食後、産業観光館「ひなの里」へ移動する。
 

●ひなの里

 産業観光館「ひなの里」は、「鴻巣びっくりひな祭り」のサテライト会場。3月3日、14:10~15:20まで観覧。

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 「ひなの里」は、ひな人形や「赤物」など鴻巣の歴史を今に伝える展示や、中庭には季節の花などが咲き、市内の観光案内や特産品の販売も行っている。「ひなの里」の蔵は、明治後期に段階的に増築された人形店の蔵を鴻巣市が改装したもの。2013年(平成25)10月に埼玉県の「景観重要建造物」に指定された。

 一般的なひな人形の七段飾り 

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 昭和20年頃

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 御殿飾り 昭和30年代

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 御殿飾り 昭和30年代

 古今雛 九番親王 九番は人形のサイズを表す。

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 享保雛

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 三五芥子15人飾り 三五(さんご)や芥子(けし)は、人形のサイズ

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  (おきな)と媼(おうな)、鶴亀は長寿の縁起物。

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 頭が出来るまでの工程

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 「赤物」(だるま)が出来るまでの工程

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 干支人形、獅子頭、だるま、招き猫などの縁起物、魔除けのお守りを「赤物」と呼んでいる。鴻巣の人形職人が昔ながらの手法で一点一点手作りしている伝統工芸。原材料が紙ではなく、桐の木粉を糊で固めた練り物なのは、鴻巣の赤物ならではの特徴だそうだ。

 格子と五人囃子

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 平安御所庭 武政作

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 等身大の享保雛(復刻)

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 日本一大きい御殿飾り。

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 傘福(かさふく)?。山形県酒田市周辺で飾られるつるし飾り。笠福ともいう。

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 福岡柳川のさげもん、伊豆稲取雛のつるし飾りと、傘福は「三大つるし飾り」と呼ばれるそうだ。

2023年3月20日 (月)

岩槻の「まちかど雛めぐり」

 2023年2月26日(日)、埼玉県さいたま市岩槻区のひな祭り会場をめぐる。

 

 埼玉県は、ひな人形の出荷額が日本一。岩槻、鴻巣、越谷、所沢が主な生産地。3年前にコロナで中止した「岩槻&鴻巣ひな祭りめぐり」の企画を実現。良い天気だったが、風が強くて寒かった。参加者は14名。最寄りの駅前をマイクロバスで出発。

 9:45、「岩槻城趾公園」に到着。

 
●流しびな

 例年、3月3日直前の日曜日に「岩槻城址公園」内の菖蒲池周辺で「流しびな」のイベントが開催。「流しびな」は、子どもたちの無病息災をひな人形の原型とも伝わる「さん俵」(桟俵、米俵の丸い蓋を模したもの)に託して池に流す春の行事で、ひな祭りのルーツともされている。新型コロナウイルス感染防止のため、例年のイベント内容を変更して開催。 

 主催者の挨拶や宮司のお祓いの後、さいたま市の観光大使「さいたま小町」の流し初め。

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 来場者が並んでいて、順に「流しび」なを菖蒲池に流していく。

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 流しびなの「さん俵」は、1個600円で会場で販売されていた。

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 コロナ前は、十二単衣着付実演、琴&鼓笛隊演奏、甘酒&飲み物サービス、模擬店、人形相談、流しびなの無料進呈(先着順)、岩槻特産品の販売もあったそうだが、会場もこじんまりして、やや寂しい。

 1時間ほど見学。岩槻駅前までマイクロバスで移動して、11:00~市街地のひな祭りの見学。
 

●東玉・人形博物館

 駅前にある「東玉(とうぎょく)」岩槻総本店の店内を覗く。「東玉」は人形の町・岩槻で170年続くという人形専門店。多彩な収蔵品は、ひな人形、御所人形、羽子板、五月人形、さらに現代作家名匠の逸品にまで及ぶという。

 「東玉」の店の向かい、東玉総本店ビル4階にある「東玉・人形の博物館」に入館。入館料100円。

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 巻藁(まきわら)に挿した人形の顔。

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●愛宕神社

 東武野田線の岩槻駅東口から徒歩5分の場所にある「愛宕神社」に「大ひな壇飾り」。27段の石段に、約300体の雛人形が展示されている。

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 愛宕神社は、北条氏が豊臣秀吉の小田原攻めに備えて築いた周囲8Kmにわたる土塁と堀に囲まれた大構(おおがまえ)の遺構が唯一残っている場所。愛宕神社は、その土塁の上に建っているという。

●料亭「ほてい家」

 12:00~12:40、老舗料亭「ほてい家」に入店。2階にある御殿飾りと「裃(かみしも)びな」が勢揃い。和菓子店の菓子も供えられている。

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 「裃びな」は、裃を着て童顔で両手を袴のところに行儀良く組んでいる。岩槻でつくられ、明治から大正にかけて関東で流行した。通常のひな人形に比べ作りが簡素で衣装は綿繻珍(めんしゅちん)でつくられているため安価で求めやすいそうだ。 

 予約していた「ほてい家」で、豪華な「ひなまつり膳」をいただく。これに天ぷらと赤だしがプラス。税込み1,870円、全国旅行割りの対象。

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 午後からは、再び市街地のひな祭りをめぐる。

●東玉大正館

 中井銀行岩槻支店として大正後期に建築された、煉瓦造2階建ての洋館建築。2007年、国登録有形文化財(建造物)。

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 ひな祭りの期間、江戸から昭和の人形展が開催されている。

 写真は、江戸時代後期に町人文化が反映したという豪華な「古今びな」。

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 「古今びな」は、女びなは五衣(いつつぎ)・唐衣(からぎ)・裳(も)、いわゆる十二単(じゅうにひとえ)。男びなは束帯と上級公家の正装を模すが、必ずしも古来の礼式に則さず華麗に仕立てている。女びなが単の袖を長く出し、垂髪に宝冠を被るのが特徴。目には水晶やガラスを入れ、人間的な面相でリアルになり豪華な衣裳で人気になった。現代のひな人形の素になったという。

●藩校「遷喬館」(せんきょうかん)

 「岩槻藩遷喬館」は、1799年(寛政11)に、岩槻藩に仕えていた儒者・児玉南柯(こだま・なんか)が開いた私塾。後に藩校となり、岩槻藩の武士の子弟が勉学や武芸の稽古に励んだという。

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 1871年(明治4)に藩校が廃止になった後は、民家として使用されていたが、1939年(昭和14)に埼玉県の史跡に指定。2003年(平成15)から2006年にかけて解体修理・復原工事を行い、公開。埼玉県内では唯一現存する藩校の建物。

 昭和20年代の壇飾り。

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●時の鐘 

 藩校「遷喬館」から「岩槻人形博物館」に行く途中、行き過ぎて岩槻区本町、渋江交差点近くの住宅地にあった「時の鐘」。

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 岩槻城の鐘楼で、1671年(寛文11)当時の岩槻城主阿部正春が領内の人々に時刻を知らせるため渋江口に設置した。以来、1720年(享保5年)の改鋳を経て、現在に至るまで、毎日、朝夕の6時と正午の3回、時を告げる。さいたま市指定の有形文化財。

 10カ所以上あったと言われる幕府公認の江戸の鐘を含め、現在も一日に複数回の時を知らせ続けているのは、上野の「寛永寺の時の鐘」、「川越の時の鐘」、「岩槻の時の鐘」の3カ所だけだそうだ。この中で現存する鐘としては岩槻の鐘が一番古いという。
 

●岩槻人形博物館

 13:30~14:10「岩槻人形博物館」を観覧。

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 「御所人形」 立子(たちご)男子 江戸時代

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 「御所人形」は、観賞用の人形として江戸時代中期に大成され、宮中の慶事や出産、あるいは結婚など、様々な祝事の際に飾られてきた人形。

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 「古今びな」、十七人揃え。

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 「享保びな」は、将軍徳川吉宗の時代(江戸時代中期頃)に京都で生まれた。各地で作られるようになり、明治時代まで広く作り続けられていた。

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 面長の顔に、女びなは唐衣、五衣に似せた意匠で袴は、綿で膨らませてある。男びなは束帯に似た衣装で、袖が横に張っているのが特徴。

 「次郎左衛門びな」。江戸時代。「第20回人形のまち岩槻 まちかど雛めぐり」パンフから転載。

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 「次郎左衛門びな」は、江戸時代中期に雛屋次郎左衛門という人形師が創始したことからこの名があり、団子のような丸顔に引目鉤鼻という、源氏物語絵巻に描かれるような面貌が特徴的。本流として流行に左右されず、公家や大名家に好まれたという。

 「次郎左衛門頭(じろうえもんがしら)」が付けられた「立雛(たちびな)」。

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 「立雛」は、最も古い形式のひな人形とされ、紙で作られた「ひとがた」や形代が変化したものといわれている。江戸時代に描かれたものをみると、屏風などに立て掛けて飾っていたようだ。

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 企画展「描かれた雛祭り」のパンフ。

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 当館が所蔵する人形が描かれた絵画(浮世絵)コレクションの中から特に、ひな祭り、ひな人形が描かれたものを「企画展」として展示されていた。

 

 14:10、「岩槻人形博物館」を出発。このあと鴻巣市に移動して、15:00~15:40「花久の里」の吊しびなを見学。この記事は、本ブログの「鴻巣にひな祭り」に続く。

 当初の交通手段は自家用車の予定だったが、参加者多数によりマイクロバスにして参加費を変更した。今回の旅行費は、3月末迄の「全国旅行割り」が適用できて、マイクロバス代、食事代、入館料が2割引となり、休日1000円の電子クーポンが付いた。

2023年3月 6日 (月)

新型コロナ2023.02 XBB系統

 政府は1月27日、新型コロナの感染症法上の分類を5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げることを決めた。または2月10日、マスクの着用について3月13日から屋内・屋外を問わず個人の判断に委ねるとした。国内の新規感染者数は、1月前半をピークに減少傾向にある。

 去年12月以降、 米国で感染が広がるオミクロン株「XBB.1.5」について、CDC(米国疾病対策センター)は25日までの1週間に新たに感染した人の推計で、85%がこのウイルスに感染していると発表。一方で「XBB.1.5」による重症度は、直前で主流だった「BQ.1」系統と変わらないとする分析を公表した。米国内で新たに報告される感染者は、減少傾向が続いている。

 2023年2月16日から28日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.02 マスク緩和へ」の続き。なお、感染者数・重症者数・死者数のデータは、厚労省の発表と都道府県などの発表とで異なる場合があり、特に死者数は厚労省のデータを採用しています。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】


【2月16日】

●全国で2万1347人の感染確認 前週比で1万1618人減

 厚労省によると、新型コロナの国内感染者は16日、新たに2万1347人が確認された。前週の木曜日(9日)より1万1618人減った。都道府県別の最多は東京都は1454人、前の週の同じ曜日を下回るのは30日連続。次いで大阪府1354人、愛知県1204人だった。

【2月17日】

●接触確認アプリ「COCOA」、「課題あった」 デジタル庁など報告書

 接触確認アプリ「COCOA」は、感染した人と濃厚接触をした可能性がある場合に通知されるアプリで、不具合が相次いだ。去年11月に停止され、デジタル庁と厚労省は17日、アプリの課題などを報告書にまとめて公表。不具合が起きた一因として、アプリ開発や運用などで体制整備が不十分、感染者と接触した場所や時間が分からない、接触通知の履歴を収集する機能がないためアプリの効果を検証できないなどの課題があったとしている。

 新型コロナ接触確認アプリCOCOAのビラ 出典:厚労省ホームページ

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 そのうえで、アプリを検討する初期段階からデジタル技術の専門家と感染症対策の専門家などが密にコミュニケーションをとり、速やかに対応する必要があったと指摘している。一方、通知を受けた人が他人との接触を避けるなどの行動を取ったとして、一定の効果があったとしている。デジタル庁は、将来のパンデミックに備えて、この報告書を今後のアプリ開発などに活用していく方針。ココアの開発・運用に要した費用は契約額で約13億円。

●5類移行 法令上の名称変更へ 「コロナウイルス感染症2019」案も

 新型コロナは現在、感染症法で1類から5類とは別の「新型インフルエンザ等感染症」に含まれる「新型コロナ感染症」として規定され、入院勧告や就業制限などの厳しい措置がとられてきた。この位置づけが5月8日に「5類」移行にあわせ、厚労省は感染症法上の名称を変更する方針で、「コロナウイルス感染症2019」とする案も含め検討を進めることにしている。

 厚労省は来月以降、専門家による部会で、新型コロナの名称のほか、病原体名の変更について本格的に議論することにしている。また、厚労省は5類に移行したあとの医療提供体制や、患者が支払う医療費の公費負担について段階的に見直す方針で、来月上旬にも具体的な方針を示す。

●アビガン429人に不適切投与 外来のコロナ患者にも処方

 新型コロナ感染症の治療薬として開発が進んだが、後に中止された抗インフルエンザ薬「アビガン」について、厚労省は17日、2021年末までに429人に不適切な投与があったと発表した。大半が認められていない、外来での処方をしていたケースだった。健康被害は確認されていないという。

 アビガンは富士フイルム富山化学が開発していた薬。未承認だが、2020年にコロナ患者に対して同意があれば「観察研究」という枠組みで使えることになった。ただし、動物実験で胎児に奇形が生じる懸念が確認されていたため、妊婦や妊娠可能性のある女性らに使わないよう、管理しやすい入院患者にしか認めていなかった。

【2月18日】

●米CDC 新型コロナ「XBB.1.5」が新規感染者の約8割と推計

 米国CDCは今月18日までの1週間に、国内で新型コロナに新たに感染した人のうち80.2%がオミクロン株の「XBB.1.5」に感染しているとする推計を発表した。前の週の73%と比べるとおよそ7ポイントの増加となり、去年12月以降、米国での感染拡大が続いている。一方、米国で新たに報告された感染者の数は今月15日の時点で1日平均およそ3万7000人と、先月中旬以降、減少傾向を示している。

 また新たに入院する患者の数は今月14日の時点で1日平均3600人、死者の数は今月15日の時点で1日平均およそ400人で、いずれも先月中旬以降、おおむね減少する傾向が続いている。バイデン政権は先月「感染状況が落ち着いてきた」として、2020年以降続けてきた新型コロナをめぐる「国家非常事態宣言」をことし5月11日に解除する方針を明らかにしている。

【2月19日】

●東京都、8人死亡 992人感染確認 33日ぶり前週上回る

 厚労省は19日、都内で新たに992人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の日曜日より193人増えた。前の週の同じ曜日を上回るのは33日ぶり。また、人工呼吸器かECMO(人工心肺装置)を使っている重症の患者は18日より3人減って13人。感染が確認された8人が死亡した。

 2月19日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【2月21日】

●オフィスのコロナ対策、緩和の企業も 政府のマスク着用方針受け

 政府は、3月13日からマスクの着用を個人の判断に委ねる方針。企業ではこうした政府の方針を見ながら、オフィス内感染対策を緩和する動きが出始めている。IT企業のGMOインターネットグループは、今月6日から社内の感染対策を一部、撤廃した。オフィスの中では、マスクの着用を社員の判断に委ね、席と席の間などに置いていた仕切りもすべて撤去。また、社外の人との会食を解禁。一方で、オフィスに入る際の消毒や検温などは続けている。

 またNTTグループは、会話のない状態で2m以上離れるという条件付きで、去年11月からオフィス内でのマスクの着用を不要とするなど、段階的な緩和を進めている。一方、損害保険大手の損保ジャパンは、取り引き先と対面で対応することが多いことなどからオフィス内でのマスク着用の推奨や、会議や研修を原則、オンライン開催にするといった感染対策を当面、継続する。企業の間では、アフターコロナを見据えて模索が続く。

●厚労相、マスク着用以外の対策見直しも検討 アクリル板設置など

 加藤厚労相は、記者団に「マスク着用を見直したあとも感染対策は重要で、3密の回避、人と人との距離確保、手洗い、換気などをお願いする」と述べた。「厚労省の感染症部会から『過剰とも言える感染対策はできるかぎり早期に見直しを行い、有効な方法について情報発信すべき』という意見をもらっている。今後、マスク以外の基本的な対策も専門家から意見を聞いて検討を進めたい」とし、アクリル板の設置など対策の見直し検討の考えを示した。

●訓告の元校長、救済申し立て 松井・大阪市長に「提言書」

 コロナ禍の教育施策をめぐり、批判的な提言書を松井大阪市長らに送って文書訓告を受けた元市立小学校長が21日、訓告は不当だとして大阪弁護士会に人権侵害救済を申し立てた。申立書では「独自の意見を述べたという理由で処分を受けるのであれば、私個人の問題ではなく、すべての人に関わる人権侵害」だと主張。教育専門家は「今回の訓告は、聞いたことがない対応だ。『もの言えば唇寒し』となれば、教員からの声が上がりにくくなる」と言う。

 元校長は2021年5月、「緊急事態宣言」中の小中学校についてオンライン学習を基本とした市の判断を批判する提言を、松井市長と山本教育長(当時)に郵送。通信環境の整備が不十分で現場は混乱を極めたと指摘、改善を求めた。市教委はこれに対して同年8月、「他校の状況等をしん酌することなく、独自の意見に基づき(混乱を極めたと)断じた」などとして地方公務員法上の信用失墜行為にあたると判断。元校長を文書訓告にした。

【2月22日】

●ワクチン無料接種継続 高齢者ら年2回の方針了承 厚労省分科会

 新型コロナのワクチン接種は、蔓延を予防するために緊急の必要があるとして、無料の「特例臨時接種」が今年3月末までを期限に行われている。4月以降の接種について検討する厚労省の専門家による分科会が22日開かれ、今の「特例臨時接種」を来年3月まで継続する方針が了承された。また、接種の時期や回数については、重症化リスクの高い人、医療や介護従事者などに対して、希望する場合は5月~8月にかけてオミクロン株対応の2価ワクチンの接種を行う。

 そして、高齢者なども含めた接種可能なすべての人に対して希望する場合は9月~12月にかけて接種を行う。対象は5歳以上。このほか、予防接種法に基づいた接種の呼びかけについては、重症化リスクが高くない人には自治体を通じて「接種勧奨」や「努力義務」を適用しないとする案が示され、了承された。厚労省は、来月上旬にも正式に決定したうえで必要な法令改正をするほか、秋以降に使用するワクチンについて4月以降の早い時期に決定する。

●5類後の医療体制、インフルエンザと同規模目指す

 厚労省は新型コロナの感染症法上の位置づけが5月8日に「5類」に移行したあとの医療提供体制について、幅広い医療機関で受診できる体制を目指し、必要な感染対策をとりながら段階的な移行を目指すとしている。このうち、外来診療は現在はおよそ4万2千の医療機関で行っているが、移行後は一定の期間の間に感染対策のガイドラインの周知や、パーテーションの設置など院内の感染対策への支援を行い対応できる医療機関を順次拡大する方向。

 季節性インフルの検査をシーズン中に1人でも行った全国のおよそ6万4千の医療機関を念頭に、幅広い医療機関で診療する体制を目指す方向で検討している。また入院については、およそ2千の重点医療機関を中心に受け入れを行っているが段階的に拡大し、現在病床のあるおよそ8千200の医療機関で受け入れる体制を目指す。厚労省は5類移行後の医療提供体制や医療費負担の見直しについて、3月上旬をめどに具体的な方針を示すことにしている。

●「ゾコーバ」服用で半年後の後遺症、リスク半減

 ゾコーバは発熱などの症状が改善するまでの期間が1日早まるとされ、重症化リスクが低い人も使える、新型コロナの初めての飲み薬として、去年11月12歳以上への投与が緊急承認された。塩野義製薬は日本時間の22日、米国で開かれた感染症の学会で発表した最終段階の治験の結果を発表した。

 それによると、治験に参加した1800人余りのうち、新型コロナに感染したあと一定程度の症状があり、ゾコーバを服用した患者で半年後にせきやのどの痛み、けん怠感、味覚障害など、14の症状のうちのいずれかを訴えたのは14.5%。一方、偽の薬を服用した人で症状を訴えたのは26.3%で、後遺症とみられる症状が出るリスクが45%下がった。また、集中力や思考力の低下、物忘れや不眠などの神経症状が出るリスクも33%下がったとしている。

●選抜高校野球、声出し応援OK マスク着用条件 4年ぶり歓声

 3月18日に阪神甲子園球場で開幕する第95回記念選抜高校野球大会の臨時運営委員会が22日、オンラインであり、マスクを着用しての声だし応援を認めることなどを決めた。新型コロナ感染拡大予防ガイドラインをまとめ、「大声を出す場合はマスクを着用する」などと明記した。大会の決勝は31日の予定。組み合わせ抽選会は3月10日にある。

 選抜大会、夏の全国選手権大会ともに2021、22年は大声を出しての応援や合唱を控えるよう求めていた(2020年は両大会とも中止)。また、PCR検査は行わない。体調不良者などが出た時には、必要に応じて実施する。感染者が出た場合は、可能な限り出場校が試合を行えるように、選手の入れ替えや同一回戦の中での試合日程の変更を検討する。

【2月23日】

●「マスク着用」めぐり業界団体の判断は? 対応決めかねる業界も

 政府は3月13日から屋内・屋外問わず、マスク着用を個人の判断に委ねることを決め、各業界団体にガイドラインの見直しを促している。これを受け、業界ごとの計195のガイドラインのうち、オフィス、製造事業場、民間検定試験、ゲームセンターの4つの業界は23日までに見直したガイドラインを公表した。4つの業界では、換気などの感染対策は残し「マスク着用の徹底」という記述を削除、「必ずしも着用を呼びかける必要はない」などを新たに加えたりしている。

 「マスク着用は個人の判断が基本」ポスター(2月10日作成) 出典:厚労省ホームページ

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 飲食業やオフィス、カラオケ、映画館など各業界団体が、ガイドラインの見直しについて検討を進めている。感染への不安の声が残る中で、どのようなルールにしていくか、対応に悩むところも出ている。政府は、おおむね全員の着席が可能な航空機や新幹線、高速バスなどではマスクを外すことを容認するとの考え方を示していて、業界団体の「定期航空協会」は「乗客や従業員、個人の判断に委ねる」としている。

【2月24日】

●小売業界 マスク着用ガイドライン見直し 個人や事業者の判断に

 新型コロナ対策としてのマスクの着用を個人の判断に委ねるとした政府の方針を受けて、デパートやスーパーなど12の小売業界の団体は3月13日以降、統一的なマスクの着用の推奨をやめ、個人や事業者の判断に委ねることを決め、24日連名で公表した。ガイドラインを見直したのは、全国のデパートで作る「日本百貨店協会」や、主なスーパーが加盟する「日本チェーンストア協会」、それにコンビニなどが加盟する「日本フランチャイズチェーン協会」など12の業界団体。

 12団体では共同でガイドラインを定め、店内で来店客と従業員のマスクの常時着用を徹底するとしている。3月13日以降は統一的にマスク着用を推奨することはやめ、個人の判断に委ねる。ただ事業者の判断として、利用者や従業員にマスクの着用を求めることは許容される。そのうえで、「5類」移行の5月8日をもってガイドライン自体を廃止するとし、今後は各社の対応が焦点となる。

【2月25日】

●米「XBB.1.5」、新規感染者の85%に CDC推計  重症度「変化なし」か

 米国で感染が広がるオミクロン株「XBB.1.5」について、CDCは今月25日までの1週間に国内で新たに感染した人の85%がこのウイルスに感染しているとする最新の推計を発表した。前の週の79.2%(18日発表では80.2%)と比べるとおよそ6ポイントの増加となり、去年12月以降、感染者に占める割合が上昇し続けている。

 中でもニューヨーク州を含む地域では、新規感染者のおよそ98%を占め、以前、主流だった「BQ.1」系統からほぼ置きかわった形。一方で、CDCは「XBB.1.5」に感染した場合の重症度は「BQ.1」系統と「変わらないとみられる」とする初期の分析を公表した。また、米国内で新たに報告される感染者や入院患者、それに死者の数は、先月以降、おおむね減少する傾向が続いている。

【2月26日】

●東京都、12人死亡 810人感染確認 前週比183人減

 厚労省は26日、都内で新たに810人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の日曜日より183人減った。また人工呼吸器かECMOを使っている重症の患者は、25日と同じ11人。感染が確認された12人が死亡した。

 2月26日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【2月27日】

●中国対象のコロナ水際措置、3月1日から緩和 入国時検査を限定へ

 政府は、中国での新型コロナ感染が拡大した去年12月以降、臨時の水際措置を続けていて、すべての入国者に対し入国時にPCR検査を実施するとともに、陰性証明の提出を求めるなどしている。松野官房長官は27日午後の記者会見で、この水際措置を3月1日から緩和し、入国時に実施する検査をサンプル調査に切り替えることを明らかにした。

 また、中国からの直行便が到着できる空港を羽田など4つの空港に限定し、増便を行わないよう航空会社に要請した措置はとりやめる。一方、緩和は段階的に進める必要があるとして、入国者に陰性証明を求める措置は継続する。松野氏は、緩和の理由について、中国からの入国者の陽性率が低下傾向にあることを挙げた上で「当面、今回の措置を行いながら、中国の感染状況や各国の水際措置の状況などを見つつ、柔軟に対応していく」と述べた。

●オミクロン株対応ワクチン 国内接種率43.7%

 オミクロン株に対応したワクチンの接種は、従来のワクチンで2回目までを終えた12歳以上の人を対象に去年9月から始まった。政府が27日に公表した最新の状況によると、これまでに国内で新型コロナのオミクロン株に対応したワクチンの接種を受けた人は5506万人で、全人口に対する接種率は43.7%となった。このうち、65歳以上の高齢者は2677万1千人で接種率は74.5%。

 また、5歳から11歳の子どもを対象にした従来ワクチンの接種のうち、去年9月から始まった3回目の接種を受けた人は65万2千人で全体の8.9%。1回目を受けた人は175万7千人で全体の24%、2回目の接種を受けた人は169万5千人で全体の23.2%。このほか、去年10月から始まった生後6か月から4歳の乳幼児を対象にした従来のワクチンの接種で1回目の接種を受けた人は15万9千人で全体の3.6%、2回目の接種を受けた人は13万6千人で全体の3%。

● オミクロン株対応、5〜11歳も接種へ 厚労省部会が了承

 オミクロン株の「BA.5」に対応するファイザーのワクチンは12歳以上を対象に3回目以降の追加接種に使用されているが、去年10月、5歳から11歳も対象に加えるようファイザーが厚労省に申請を出していた。27日、開かれた厚労省の専門家による部会では、12歳以上への接種で発症予防効果が確認されていて有効性が期待できるほか、安全性についても影響を及ぼす可能性は低いとして、5歳から11歳についても対象に加えることが了承された。

 国内で5歳~11歳が、オミクロン株対応ワクチンの対象となるのは初めて。ワクチンに含まれる有効成分の量は12歳以上向けのワクチンの3分の1となる予定。厚労省は今後、無料で受けられる公的接種に位置づけた上で、3月上旬から、接種が始まる見通し。また27日の部会では米国の製薬会社、ノババックスのワクチンの3回目以降の接種について、18歳以上となっていた対象年齢を12歳以上に引き下げることも了承された。

●雇用調整助成金 新型コロナ特例措置が終了 4月から通常運用へ

 厚労省は27日、労使などで作る審議会を開き、コロナ禍で設けられた雇用調整助成金の特例措置の扱いについて議論した。雇用調整助成金は通常、直近3か月間売り上げが前年同期比で10%以上減った企業が対象となるが、特例措置ではコロナの影響でその月の売り上げが感染拡大前の令和元年から去年までのいずれかの年の同じ月と比べて10%減少しているか、過去1年のいずれかの月と比べて10%減少していれば助成を受けられる。

 厚労省は感染拡大後の支払い決定額が6兆3千億円を超え財源不足の深刻化や最近の経済・雇用情勢を踏まえ、特例措置を今年度で終了、新年度から通常運用に戻す方針を説明。審議会委員からは、いまだに厳しい業界はあるもの、財源不足の状況などを考えると移行は妥当といった意見が出され、この方針が正式決定。去年9月には、当面の生活費を無利子で借りられる制度の特例が終了するなど徐々に通常に戻す動きが進んでいる。

【2月28日】

●新型コロナ発生源「中国の研究所から流出の可能性高い」 米報道

 米国のメディアは新型コロナの発生源について、米国・エネルギー省が中国・武漢のウイルス研究所から流出した可能性が高いと結論づけたと伝えた。バイデン政権は最終的な結論は出ていないとしているが、今後、議会を中心に中国に対し、この問題で強い姿勢で臨むべきだとする声が高まることも予想されます。

 これについて、中国外務省の毛報道官は27日の記者会見で「研究所からのウイルス流出の可能性は極めて低いというのが、中国とWHOの専門家が出した権威ある科学的な結論だ」と強調。そのうえで「関係する当事者は、この議論を蒸し返すことや、中国を中傷すること、発生源の問題を政治化することをやめるべきだ」と述べ、米国をけん制した。

●出生数80万人割れ、コロナで減速加速 2022年統計

 2022年に国内で生まれた子どもの数は、統計のある1899年以降、初めて80万人を割り込むことが確実になった。厚労省が28日に公表した昨年の人口動態統計(速報)で、外国人と海外で生まれた日本人の子どもを含む出生数は79万9728人。国内生まれの日本人に絞り込んだ出生数(概数)は6月に公表される。国の推計方法で計算すると77万人台と見込まれる。40年前の1982年の出生数(国内で生まれた日本人の子ども)は151.5万人で、40年間でほぼ半減した。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計(2017年)では、外国人を含む出生数が79万人台になるのは、2033年とされていた。国内の日本人に限った出生数が77万人台になるのも、同じ2033年と見込んでいた。いずれも想定より11年早く少子化が進んだことになる。

●去年1年間 ホテルなどの宿泊者数、コロナ感染拡大前の7割に回復

 観光庁によると、去年1年間に国内のホテルや旅館などを利用した宿泊者は、速報値で延べ4億5千万人となった。前の年と比べて42%増加し、感染拡大前の2019年と比べても、76%の水準まで回復した。このうち、日本人の宿泊者は、旅行代金の割り引きが受けられる「全国旅行支援」が始まった去年10月以降に大幅に増加し、前の年よりも39%多い、延べ4億4千万人となっている。

 また、外国人の宿泊者は、前の年と比べて3.8倍多い、延べ1680万人。コロナ禍前の同じ月よりも90%以上落ち込んでいた9月までから一転し、10月以降は、水際対策の緩和によって大幅に回復した。ことしに入ってからも外国人の宿泊者の増加は続いているが、その一方で、日本人の宿泊者については、全国旅行支援が順次終了する4月以降の動きがどうなるかが焦点となる。

●国内、67人死亡 1万4524人感染

 厚労省によると、28日発表した国内の新たな感染者は空港の検疫などを含め1万4524人。前週の同じ曜日(21日)より4683人減った。累計で3320万5088人。国内で亡くなった人は67人、累計で7万2387人。都道府県別で新規感染者の最多は東京都の1181人、1週間前の火曜日より270人減った。次に大阪府1003人、愛知県991人と続く。また国内の重症者は、28日時点で166人。前日と比べて4人減った。

 以下の図は2月28日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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2023年3月 4日 (土)

比企氏ゆかりの地-岩殿観音

 2023年2月19日(日)午前中、埼玉県東松山市大岡地区の「比企氏ゆかりの地」をめぐった後、午後から高坂地区へ車で移動し「岩殿観音」を拝観。比企氏は、2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に登場した。

 なお写真で「2019年撮影」とあるのは、同年12月6日(金)に撮影したもので、その他の写真は当日撮影のもの。

 「岩殿観音」(いわどのかんのん)で親しまれる「正法寺」(しょうぼうじ)は、東松山市にある真言宗智山派の寺院。山号は「巌殿山」(いわどのさん)で、坂東三十三観音の10番札所。創建は718年(養老2年)、逸海上人が千手観音像を刻み庵を結んだのが始まりとされている。鎌倉時代に比企能員(よしかず)が中興し、観音堂建設や北条政子の守り仏「千手観音」を安置した。 

●大東文化大学

 13:00、物見山の駐車場着、観光ガイドと合流。

 ガイドの案内で、駐車場から坂を下って大東文化大学東松山キャンパスに向かう。比企能員(よしかず)の菩提を弔う「判官塚」が、昔大東文化大学の敷地内にあったそうだ。また、大岡地区「城ヶ谷」の比企の館跡と同様に、この岩殿山一帯のどこかにも比企の館があったという説がある。

 構内の目的地を聞きそびれたが、大学の守衛所で予約なしの学外者の入構を断られた。以前は構内に自由に出入りできたそうだが、新型コロナによる入構制限か、最近起きた都立大学内での教授襲撃事件の影響か。駐車場に戻り、門前通りに向かう。

●丁子屋

 門前通りの仁王門のすぐ下にある、昔の面影を残る「丁子屋」を見る。宿屋や茶屋を営んでいたそうだ。

 岩殿山の麓の家並みは、岩殿観音へ向かう門前町だった。今や、この門前町の代表的存在だった「丁字屋」(数年前に閉店)だけが当時の面影を残している。参道には家が並び参拝客で賑わっていた。観音堂の裏に大きな道(大東文化大学やこども動物自然公園の通り)が出来てからは、皆なそちらから参拝に行ってしまい、門前町並みにはほとんど人が来なくなっている。

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●仁王門

 仁王門は、表参道の「丁子屋」からすぐの石段を少し登った所にある。門の左右には仁王像。右横手に本堂がある。

 仁王像が、ガラスで囲われているのは珍しいし、よく見える。

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 仁王像は運慶の作といわれていたが、平成4年の解体修理の折りに棟札がでて、運慶作のものは江戸時代に焼失、現在の仁王像は文化年間(1808~1814年)に再建されたものだという。現在の仁王像は、平成の解体修理時に漆を塗りなおされ、漆の保護のため紫外線カットのガラスに覆われている。 

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 仁王門の右横手にある本堂の本尊は、三尺ほどの阿弥陀如来立像。室町時代作の木製で、平成になって箔の押し直しがおこなわれた。(写真なし)。

 観音堂は、この仁王門から急な石段を登ったところにある。(2019年撮影)

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 振り返ると門前町の町並みが続く。

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 境内は、岩殿丘陵の最東端に位置し、物見山のすぐ隣にあるため、寺は急傾斜地を切り崩したような場所(昔は石切場だったという)にあり、東方面にだけ開けている。また、多くの樹木に囲まれているので山寺の雰囲気がある。(2019年撮影)

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鐘楼と銅鐘

 鐘楼は1702年(元禄15年)に比企郡野本村(現在の東松山市野本)の大檀家・山田茂兵衛の寄進で建立されたと伝えられる。鎌倉末期の様式を今に伝える。屋根は萱葺きの寄棟作りで、 斗栱 (ときょう、軒を支える組み木)や天井の装飾なども、往時には朱が塗られていたらしく、ところどころにその痕跡が残っているそうだ。東松山市内で最も古い木造建築で、市有形文化財に指定。

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 銅鐘(梵鐘)は、1322年(元亨2年)に鋳造されたもので、外面に無数の傷がある。これは1590年(天正18年)に豊臣秀吉による関東征伐の際に、山中を引き回して打ち鳴らし、 軍勢の士気を鼓舞したといわれ、その時についた傷が残っている。

●石仏

 境内をかこむ石崖には石仏が安置されている。百観音(西国+坂東+秩父札所)、四国八十八ヶ所の写本尊であり、百観音と四国八十八ヶ所を参拝したのと同じ御利益が得られると言われている。(2019年撮影)

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●岩殿観音堂

 養老年間(717年~724年) の創建と伝える。16世紀中頃(永禄年間)松山城合戦の兵火で全山焼失した。その後、何回かの火災の後、寛永、天明、明治と3回再建された。現在の建物は、1871年(明治11年)の火災により観音堂が焼失した為、翌年高麗村白子(現飯能市)の「長念寺」から移築されたもの。江戸後期の建造と推測されており、ところどころに当時の彩色がみられるそうだ。

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 岩殿観音の本尊は、千手観音。全身金色の千手観音は「前立本尊(まえだちほんぞん) 」であり、奥の厨子に秘仏本尊の千手観音菩薩坐像が収められいる。秘仏本尊は、室町時代作の青銅製。12年に一度、午年(うまどし)に「ご開帳」されるという。

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 観音堂の濡れ縁に木像の「おびんずる(賓頭盧)様」が安置。釈迦の弟子の十六羅漢の一人で、病を治す神通力がとても強い。自分の体の悪いところを撫でて、「おびんずる様」の同じところを撫でると除病の功徳があるという。観音堂の切妻装飾の邪鬼の表情もおもしろい。

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●大銀杏

 推定樹齢は700年を越える。周囲は11m、埼玉県内でも最大級の大きさ。江戸時代には健康長寿のご利益がある「養老木」と呼ばれ、多くの女性に安産・子育守護の対象として信仰された。紅葉の見頃は11月下旬から12月。東松山市指定文化財。(2枚とも2019年撮影)

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 14:00、物見山駐車場に戻り解散。

 本ブログの関連記事

  「比企・奥武蔵の紅葉スポット」 2019年12月14日 (土)
    http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2019/12/post-485995.html

 

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●比企氏による中興

 源頼朝は観音信仰に篤い人物だった。坂東三十三観音霊場の制定にも深く関わっている。当時札所を制定するにあたり、比企氏のお膝元であり、比企能員自身も深く帰依していた「岩殿観音」が第10番の札所として選ばれた。坂東第9番「慈光寺」(ときがわ町)、第11番「安楽寺」(吉見町)とともに、比企郡では三十三の札所のうち3つが札所、頼朝が厚い信頼を寄せる比企能員の領地から有力寺院が推挙された。

 岩殿観音は開山から300年以上が経ち、諸堂の痛みも激しいものがあった。そこで頼朝の庇護のもと、頼朝の妻政子の守り本尊として比企能員が岩殿観音を復興する。寺伝では比企能員を中興の祖としており、比企能員の深い帰依のもと復興された。頼朝の没後の1200年(正治2年)には、亡き頼朝の意志を継いだ政子によって、堂宇の再建がなされたそうだ。

●判官塚と供養碑

 岩殿観音の表参道を進み、しばらく行った先の細い小路を左手に曲がった先には、「判官塚」(比企明神)がある。比企能員(よしかず)の孫である員茂(かずしげ)が1218年(健保6年)頃岩殿山に居て、能員の菩提を弔うために岩殿観音の南東の地である南新井に塚を築いたという。判官とは比企能員の役職名で、律令制における司法警察の役を担った官職。もとは現在の大東文化大学の敷地内にあったが、キャンパス拡張工事に伴い、現在地に移転した。

 岩殿観音に伝わる江戸時代の古地図には、表参道の入口にある現「鳴かずの池」裏手の丘陵地帯に「比企判官旧地」とあり、比企能員の館があったとも伝わる。現在は、その旧地のほとんどがゴルフ場となってしまい、かつての面影はわずかな土塁と堀跡を残すのみという。

 気がつかなかったが、仁王門から石段を少し登った左側に石碑が残されている。この石碑は、江戸時代の旅行記である『坂東観音霊場記』に記録が残っていて、岩殿別当であった入道覚西が入滅後に追善の石碑を建てた、とある。この入道覚西は能員であり、その菩提を弔うために建立された「比企能員供養碑」と伝わる。しかし近年の調査により、覚西は比企能員ではないとも推定されているが、比企氏と岩殿観音のゆかりを示す史跡となっている。

●松山城合戦で全山焼失

 坂東札所の成立当初は、鎌倉幕府に関係する上級武士や僧侶などの限られた者が参拝していたが、室町時代になると一般の庶民も巡礼に出るようになった。室町末期には西国、秩父と合わせて百観音札所として巡礼が盛んになり、岩殿観音の門前も一段と賑わいを増した。 戦国時代の後期には岩殿観音の本坊の他、66の僧坊を有し、7堂あった伽藍はすべて瓦葺きであったと記録に残るほど隆盛を誇った。

 岩殿観音から10kmほどのところに位置する松山城は、武州のほぼ中央に位置し、北武蔵支配の重要拠点であった。比企丘陵の先端に建てられた松山城は、ふもとを流れる市野川を堀とし、その天然の要害から不落城ともいわれ、戦国時代には上杉謙信、武田信玄、小田原北条氏などが激しい攻防を繰り広げた。

 1561年(永禄4年)、北条氏康(北条氏政の父)が抑えていた松山城は、扇谷上杉氏の家臣・太田資正(すけまさ)に攻め取られ、上杉憲勝(扇谷上杉家当主)を城主とした。これに対して、北条氏康は岩殿観音の隣村である高坂村に陣を敷き、松山城を激しく攻めた。しかし、松山城の堅固な守りで、落城することはなかった。業を煮やした北条は、岩殿観音を始めとする付近の寺社をことごとく焼き払った。この「松山城合戦」の戦火で、7堂あった伽藍は焼失した。

●再興、廃仏毀釈から現代へ

 しかし7年後の1574年(天正2年)、戦火を免れた本尊千手観音とともに、僧・栄俊によって再建。その後、松山城主の上田朝直(ともなお)の庇護を受け、1577年(天正5年)には7堂伽藍をはじめとして復興を果たした。1591年(天正19年)には徳川家康により25石の朱印地を賜り、江戸期には隆盛を極め、観音巡礼も盛んになったので岩殿山の門前町も大いに賑わいをみせた。

 明治維新の後、廃仏毀釈によって岩殿観音も多くの山内社寺が廃され、また寺領であり山岳修行の場であった山林を召し上げられるなど弱体化した。この影響は、観音巡礼にもおよび、参拝者は減少し門前町も急激にに衰退していった。戦後、岩殿山や物見山一帯は観光、大学や住宅として開発が進み、時代とともにその姿を変えて賑わいを取り戻している。

2023年3月 1日 (水)

比企氏ゆかりの地-宗悟寺

  2023年2月19日(日)、埼玉県東松山市の大岡地区の「比企氏ゆかりの地」をめぐる。比企氏は、2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に登場した。

 なお写真で、「2022年撮影」は同年6月13日(月)に撮影、「2015年撮影」は11月1日に撮影したもので、その他の写真は当日撮影。

 

●大岡市民活動センター 10:00~10:30

 東松山市の大岡地区にある「大岡市民活動センター」に10:00集合。大きな風車とオランダ風建物は、オランダ王国ナイメーへン市と東松山市が姉妹都市提携を結んでいることから、オランダの古い町並みをイメージして作られた。(2枚の写真は、2022年撮影)

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 活動センターのコミュニティホールに「比企氏紹介コーナー」を設置、2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に登場する比企氏についてパネル展示されている。10:00集合して、観光ガイドから、比企氏の概要を説明を受ける

 周辺の散策ルート「比企氏ゆかりの地 大岡マップ」。

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●城ヶ谷(じょうがやつ)10:40

 「雷電山古墳」の真南にある奥深い谷が、「城ヶ谷」と呼ばれ、この谷の奥に「城ヶ谷沼」がある。「城ヶ谷」には比企能員(よしかず)の館があったと伝えてられている。残念ながら館の痕跡は、これまで発見されていない。

 この地は、鎌倉の比企が谷(ひきがやつ) によく似た地形で、このあたりは「比企の乱」後、若狭の局に従って落ちて来たと伝える頼家の側近の子孫が住み、谷の西の丘には鎌倉の八幡宮を祀っ ていたと伝わる。(城が谷の説明板は、2022年撮影)

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 鎌倉を囲む丘陵の南東、比企ヶ谷は、鎌倉でも比較的奥行きのある谷(やつ)で、谷の最奥部から尾根を伝えば鎌倉随一の見晴らし、戦略的に重要な場所。鎌倉時代、幕府で重職を担った比企氏がこの地を与えられ、現在も比企氏ゆかりの「妙本寺」が建立されている。


●雷電神社 10:45

 東松山市には多くの古墳があり、大岡地区に三千塚古墳群がある。なかでも「雷電山古墳」は一番大きく、帆立貝型前方後円墳で埼玉県最古の埴輪が出土。古墳の上に「大雷神社」が祀られている。写真右の一対の石灯籠の間に昔の参道があった。(2022年撮影)

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●扇谷山宗悟寺(せんこくさんそうごじ) 10:50~11:10

 「宗悟寺」の参道と案内板(2022年撮影)、山門(2015年撮影)。

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 鎌倉時代初期、若狭局は鎌倉幕府第2代将軍源頼家の妻妾であったが、「比企の乱」による比企氏の滅亡後、夫・頼家の殺害により、修善寺より比企氏の根拠地であった武蔵国大谷村に逃げてきた。若狭の局は、村の名と頼家の法号「寿昌」を用いた「大谷山寿昌寺」(たいこくさんじゅしょうじ)を建立、頼家や自分が産んだ一幡、比企一族の菩提を弔う寺を創建したとされる。

 戦国時代、豊臣秀吉の命により、徳川家康は関東地方に転封され、家康の家臣の森川金右衛門氏俊(うじとし)は当地、大谷村や山田村を所領として与えられた。1592年(天正20年)、氏俊は「比丘尼山(びくにやま)」にあった「大谷山寿昌寺」を現在の扇谷に移し、寺の名を「扇谷山宗悟寺」と変えた。森川金右衛門氏俊の法号は「桐蔭宗悟居士」という。その後、森川氏の嫡流は旗本となった。

 「宗悟寺」の本殿(東松山観光協会のホームページより)

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 「宗悟寺」の祭壇。若狭の局が持ち帰ったと伝わる「頼家公ご位牌」(右手の燭台の後方)、若狭の局が夫頼家を失った苦しみから逃れるために祀った「蛇苦止(じゃくし)観音」(左手燭台の右下)が見える。(2022年撮影)

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 境内に立つ比企氏伝承の品(「頼家公ご位牌」と「蛇苦止観音」)の説明板。

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 森川氏の陣羽織等が、本殿に展示されている。森川金右衛門氏俊が天下統一の武勲により徳川幕府より賜ったとされ、森川氏の末裔から「宗悟寺」に寄贈された。(2022年撮影)

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 境内には、地元の有志による「比企一族顕彰碑」が設置されている。

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 本殿裏の墓地には、市指定文化財の森川氏の墓地がある(2022年撮影)。

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●梅が谷(うめがやつ)・須加谷(すかやつ)

 宗悟寺の山門から南の方角を望む。

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 中央の小高い森は、火伏の神様の「秋葉神社」。1658年に旗本・森川氏が歓進した。森川氏は江戸森川町(現文京区本郷)の屋敷に分祀し、守り神としていた。江戸の大火から森川氏の屋敷だけは火の難を逃れたことから火伏の神として有名になったとされる。その後は広く周辺の人々からも信仰され、特に例祭(4月18日)や酉の日には賑わい、松山宿からこの神社への経路は「秋葉道」と呼ばれたという。

 「秋葉神社」を中心として西側(右手の谷)を「梅が谷」、東側(左手の谷)を「須加谷」という。「梅が谷」は年老いた若狭の局が隠棲して余生を送ったといわれる場所で、「須加谷」はかつて「菅谷堂」という観音堂があり、若狭の局が作ったとされる「蛇苦止観音」が祀られていたという。現在は「宗悟寺」に祀られている。

●武蔵逍遥乗馬会 11:15

 「宗悟寺」の裏山には、外乗りを主とする乗馬クラブがある(2022年撮影)。完全予約制で、乗馬トレッキング60分コースが8,500円、120分コースで13,000円。

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●串引沼(くしびきぬま)11:30

 「串引沼」には、次のような伝説が伝わっているという。

 その昔、夫頼家を殺された若狭の局は、大谷村に逃れ比丘尼山の草庵に住み、夫頼家の菩提を弔っていましたが、いつまで も夫を殺された悲しみから逃れられず苦しんでいました。それを見かねた祖母比企の尼は、若狭の局に、心の迷いを去らせる為に、鎌倉より持参し肌身離さず持っていた夫頼家から贈られた鎌倉彫の櫛を捨てさせようと心に誓いました。

 夜の明けはじめた早朝、朝の勤行を済ませ、祖母の比企の尼と二人連れだってこの沼に行き、頼家形見の櫛を沼に投げ入れました。櫛はかすかな水音を残して沼底深く沈み、その姿が見えなくなりました。その時若狭の局はもちろん、比企の尼の両眼からも涙がとめどなく流れ落ちていました。時は1205年7月半ば、丁度、夫頼家の命日に当たる日であったと云います。

 「串引沼」は、川越カントリークラブの一部になっている。 

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 土手に並ぶ桜は、修善寺町(現伊豆市)の篤志家から寄贈された山桜で、真っ白の小さな花が咲く「頼家桜」。

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● 比丘尼山(びくにやま)11:35

 「比丘尼山」は、比企郡司・比企遠宗(とおむね) の妻、比企の尼が遠宗の没後、禅尼となって草庵を営んだところと伝えられている。

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 「比丘尼山」から南は、伊豆の修善寺と同じに、主膳寺と呼ばれている。比企地区には、鎌倉と同じ呼称の土地が多くある。その他にも扇谷、梅が谷、菅谷、滑川、腰越、大蔵などの地名がある。

 「比丘尼山」の南面には横穴墓が造られており、市指定史跡となっている。三千塚古墳群の一部、「比丘尼山」の南斜面に3 、4 段に配列して築造され、40~50基余りの横穴墓が分布していると思われる。うち 3 基が開口しているそうだ。「吉見百穴」と同様の7 世紀頃に造られたものであると思われる。横穴墓群は「吉見百穴」を中心に西に広がっており、この地方に移住した渡来系氏族とのかかわりあいのある墓制とも考えられている。

 12:00、大岡市民活動センター着。

 

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  「日本スリーデーマーチ2015」 2015年11月12日 (木)
    http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/2015-3fcc.html

 

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 平安時代末期、比企遠宗(とおむね)は、清和源氏の棟梁・源義朝の家人だった 。義朝は、1147年(久安3)三男・頼朝が生まれると、頼朝の乳母に比企遠宗の妻を任命した。1159年(平治元年)頼朝13歳の時、平清盛と源義朝の源平の戦い「平治の乱」が起った。しかし、源氏は敗れ、頼朝の父・義朝や二人の兄は戦死。初陣の頼朝も平氏に捕らえられ殺されるところ、平清盛の継母・池禅尼(いけのぜんに)の助命により、伊豆の蛭ケ小島に流されてしまった。

 頼朝の監視役には、平氏北条時政と伊東に本拠を置く平氏伊東祐親(すけちか)がなった。頼朝が伊豆に移ると、比企夫婦も頼朝の世話をするために、京都から請所とされた武蔵国比企郡に移る。そして夫・遠宗亡き後、妻の乳母は比企の尼として、伊豆の頼朝を物心両面で支援していく。伊豆の伝承では、月に一度、比企氏からの物資が届いたという。

 比企氏の支援は、 20年に及んだ。頼朝の旗上げ後、比企氏は一族をあげて頼朝の武士政権「鎌倉幕府」に貢献する。頼朝も比企の尼の恩に報いるため、比企家の当主・比企能員(よしかず)を上野や信濃の目代にした。1182年(寿永元年)頼朝の長男・頼家が産まれると能員は頼家の乳母父になり、比企氏の女性達が乳母になる。しかし、次男・実朝が産まれると、政子の妹・阿波の局など北条氏の女性達が乳母になった。

 その後、比企能員の娘・若狭の局は、頼家に嫁ぎ、1198年(建久9年)に頼家の長男・一幡を産む。1199年(建久10年)1月に頼朝が亡くなる。18 歳の長男・頼家が、二代将軍となり、比企氏が将軍の外戚として勢力を付ける事になる。1203年(建仁3年)頼家が病にかかると、同年9月、比企氏を北条邸で薬師如来の法要があると偽り、比企能員を自分の屋敷に招き殺害。北条氏の軍は、鎌倉・比企が谷の比企の館も襲い、比企一族は滅亡した。

 北条時政は、頼家の将軍職を解き修善寺に幽閉、北条氏が乳母をした実朝を三代将軍にし、後見人として権力を握る。翌年7月、頼家は北条氏により殺される。この時、頼家の側にいた妻の若狭の局は、頼家の位牌(遺骨説もあり)を持ち、武蔵国大谷村に逃げてきたと伝えられている。この争いは「比企の乱」と呼ばれているが、京都の公家や僧侶の日記などから、比企氏から権力を奪取するための北条氏の謀略とされている。

 能員の末子・比企能本(よしもと)は、比企一族滅亡時に2歳だったが助命され、長じて出家し日学上人となった。鎌倉に戻った能本は、1253年(建長5年)日蓮に帰依する。比企一族の菩提を弔うためは、鎌倉の比企氏館跡にあった自らの屋敷を日蓮聖人に献上した。日蓮聖人は、1260年(文応元年)比企能本の父・能員と母に「長興」、「妙本」の法号をそれぞれ授与、この寺を「長興山妙本寺」と名付けたという。

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