新型コロナ2022.12 中国緩和
新型コロナウイルス感染症の「第7波」は減少傾向が続いていたが、下げ止り。10月中旬にはおよそ2か月ぶりに増加に転じた。この冬は季節性インフルエンザと新型コロナの同時流行が懸念されている。11月から「第8波」が緩やかに始まった。11月下旬には北海道がピークを迎え減少に転じ始めるが、地域差はあるものの全国的には増加が続き、重症者数や死亡者数も再び増加傾向にある。
中国の厳しい行動制限に対して広がった抗議活動は、「ゼロコロナ」政策の大幅緩和に向かわせたが、混乱が続いて感染が急拡大を始めた。
2022年12月1日から15日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2022.11 増加続く」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】
【12月1日】
●中国、「ゼロコロナ」見直しか 副首相、政策継続に言及せず
国営の新華社通信によると、中国政府で新型コロナ政策を担当する孫春蘭副首相は11月30日に、公衆衛生の専門家会合に出席した。この中で副首相は「ワクチン接種が普及し、経験が蓄積されるに従って感染対策が新たな局面と任務に直面している」と述べ、感染対策と経済活動を両立する必要性を強調した。一方、これまで繰り返し強調してきた「ゼロコロナ」政策の継続については言及しなかった。
「ゼロコロナ」政策への抗議活動が共産党や習近平国家主席への批判にも発展。住民と警察の衝突が断続的に起きていた南部の広東省広州では、厳しい感染対策が大幅に緩和された。このことから政府が今後、国民の不満を和らげるため、「ゼロコロナ」政策を見直すという見方も出ている。11月30日に確認された新型コロナの感染者はおよそ3万5000人、このうち首都・北京では、はじめて5000人を超えるなど3日連続で過去最多を更新している。
●新型コロナ 感染症法上の扱い 見直し議論本格化へ
新型コロナイウルスの感染症法上の扱いについて、厚労省は30日夜の専門家会合で見直しに向けた議論を本格化していく方針を示し、専門家に対し病原性や感染力、ウイルスの変異の可能性などの検証を行うよう求めた。感染症法では、感染症を「1類」から「5類」に分け、国や自治体が行うことができる措置の内容を定めていて、新型コロナは「2類相当」と位置づけられ、感染拡大を防ぐための厳格な対応が取られている。
こうした中、国会で審議されている感染症法改正案の付則に新型コロナの感染症法上の位置づけについて速やかに検討する規定が追加された。これを受け、厚労省は30日夜開かれた専門家会合で季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への引き下げも含め見直しに向けた議論を本格化していく方針を示し、専門家に病原性や感染力、ウイルスの変異の可能性について検証するよう求めた。
●東京都、コロナ医療提供体制警戒レベル引き上げ 上から2番目に
東京都は12月1日、モニタリング会議を開いた。この中で、11月30日時点で、新型コロナの専用病床の使用率が40.3%と前の週より4.7ポイント上昇したことや、救急搬送が困難なケースが増えていることが報告された。こうした状況を受けて専門家は、4段階ある医療提供体制の警戒レベルを1段引き上げて上から2番目とし、「今後の患者数の増加を見据え、外来を含めた医療提供体制をさらに強化する必要がある」と指摘した。
一方、新規感染者数の7日間平均は1万1047人となって、8月31日以来、1万人を上回った。また、5週連続で前週比が100%を超え、このままのペースで増えれば1日の感染者数が、2週間後には1万5000人、4週間後には2万1000人を上回るとの予測が示された。専門家は「年末年始に向けて、イベントや会食など、人と人との接触機会が増えると感染が急拡大する可能性もあるため、今後の動向に十分な警戒が必要だ」と呼びかけた。
●コロナ、インフル同時検査キット 薬剤師の販売・説明を義務づけ
新型コロナとインフルエンザの同時検査キットの使用は、これまで医療機関でしか認められていなかったが、同時流行が懸念されることから、厚労省は11月に薬局やインターネットでの一般向けの販売を解禁することを決めた。これを受けて1日、厚労省で販売方法について専門家による審議が行われた。その結果、検査キットの販売は必ず薬剤師が行い、使い方などについて購入者に書面などでの説明を義務づけることを決めた。
抗原検査は、ウイルス量が少ない場合は感染していても陰性と判定される「偽陰性」のリスクがある。このため、検体を採取する際に綿棒を適切に使用することや、陽性だった場合は検査結果を写真で残しておくことなどを説明するよう求めている。厚労省によると、同時検査キットの販売は早ければ今月中にも始まる見込みだという。
●改正感染症法が可決・成立 大病院に発生時の対応義務化
新型コロナ対応の教訓を生かして次のパンデミックに備えるため、地域の中核を担う病院に病床確保、発熱外来の設置などを義務付ける改正感染症法などが2日、参院本会議で可決、成立した。2024年4月に施行される。新たな感染症が発生すれば、自治体などが運営する「公立・公的医療機関」(約6500施設)、400床以上で大学病院中心の「特定機能病院」(87施設)、200床以上で救急医療が可能な「地域医療支援病院」(685施設)は、医療提供する義務が課される。
一方、都道府県はすべての医療機関と、医療提供を事前に約束する協定を結べるようになる。都道府県は平時から計画をつくり、病床、発熱外来、人材派遣などの数値目標を盛り込み各医療機関への割り当てを決める。医療機関は協議に応じる義務はあるが、実際に協定を結ぶかは任意。あわせて検疫法も改正。入国後の個人に自宅待機などを指示できるようにしたうえ、待機中の体調報告に応じない場合の罰則をつくった。
●コロナ死者5万人強 国内の第6波と7波で急増 北海道 先月の死者最多に
新型コロナに感染し、国内で亡くなった人の累計が1日、5万人を超えた。午後7時時点で新たに194人の死亡が確認され、5万70人となった。今年初めの「第6波」、夏の「第7波」で感染者が大きく増えたことから、今年だけで3万人を超える死者が出ている。厚労省によると、男性が約57%で、女性よりやや多い。約95%が60代以上。80代以上が約68%、70代が約20%、60代が約7%となっている。
「第8波」の兆しがあるとされる現在も、死者数は高い水準で推移。11月29日には北海道、群馬県、鳥取県、12月1日には宮城県で過去最多を更新。北海道では11月、月間で過去最多の585人が亡くなっており、第7波のピークだった8月のほぼ倍。感染者が1日に1万人を超える日もあるなど、過去最悪の水準になっていることに加え、医療機関や福祉施設でクラスターも多発。道は、感染対策の徹底やワクチン接種を呼びかけている。
●全国で新たに11万7778人感染 累計死者数は5万70人
国内感染者は1日、新たに11万7778人が確認された。前週の木曜日(24日)より5万9883人増え、7日連続で前週を上回った。この日の死者は194人。新規感染者数が最多は、東京都の1万2332人。次に新規感染者数が多かったのは神奈川県の7879人で、北海道7612人、愛知県7358人と続いた。
12月1日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト
【12月2日】
●マスクなし、観客席 中国で一時映らず ゼロコロナ緩和後、再登場
サッカーのワールドカップ(W杯)は中国でも関心の的。SNSでは、中継のピッチ外の場面が話題になっている。「ゼロコロナ」への抗議活動が各地に広がった後、マスクなしで熱狂する観客のアップが映らなくなった。規制緩和の動きが出ると、観客の姿は再登場。スポーツ観戦に政治の影が見え隠れしている。
●同時流行に備え 一日最大90万人の患者診療体制整う 厚労省
新型コロナとインフルエンザの同時流行に備え厚労省は、国のピーク時の想定を上回る一日最大90万人の患者を診療できる体制が整ったと公表した。この冬に懸念される同時流行について厚労省は、ピーク時には新型コロナが一日45万人、インフルが一日30万人と、一日75万人規模の患者を想定し、都道府県などに診療できる体制を強化した計画を作るよう求めていた。
このほか、重症化リスクの低い人が自主検査で新型コロナの陽性だった場合に登録する健康フォローアップセンターの対応の強化も求めたところ、一日最大で20万人が登録できる体制が整ったという。
【12月3日】
●ゼロコロナ、課題は高齢者 ワクチン接種に抵抗感 緩和足かせに
中国でゼロコロナ政策を緩和する動きがある中、高齢者を中心にワクチンによる免疫が十分に高まっていないことが、政策転換の足かせになっている。政府は2023年1月末までに、60~79歳の3回目接種率を95%とする目標を設定したが、ワクチンの有効性には疑問符が付く。中国で主に使われているのは、従来型の「不活化ワクチン」。欧米などで主流の「mRNAワクチン」に比べ、重症化や死亡を防ぐ有効性が劣るとする研究が複数報告されている。
中国はアジアやアフリカ諸国に対し、「ワクチン外交」を積極的に展開。国産ワクチンの有効性を誇り、外国産ワクチンの輸入を拒んでいたことも、政府の手足を縛っている。外国産ワクチンの輸入にも頼りづらく、課題は多い。11月末の時点で、60歳以上の高齢者のうち2回接種を終えた人は86.4%、3回接種だと68.7%。接種が始まったころに、副作用を巡るうわさやデマが流れ、特に高齢者の間では抵抗感が強い。
●「学生にいらだち」習氏が不満認識 抗議にめぐり、EU首脳に
中国で広がった「ゼロコロナ」政策への抗議活動について、1日に欧州連合(EU)のミシェル首脳会議常任議長と会談した習近平国家主席が「3年間のコロナ禍で、主に学生にいらだちが募っている」と説明していた。習氏が市民の不満を認識したことが、ゼロコロナ政策の緩和する動きに影響した可能性がある。習氏は会談で現在主流のオミクロン株は「致死率が低い」という認識も示し、EU高官は中国がコロナ規制の緩和に向かうという感触を得たという。
●新型コロナとインフル、同時流行懸念 小児発熱外来の受診増える
同時流行が懸念されるインフルの感染に対する不安も強まり、千葉県内の病院では小児科の発熱外来を受診する子どもの数が増加している。病院では、いつもと違う症状がみられたときには迷わず受診してほしいとする一方で、病院では第7波の時のように予約の殺到を懸念している。厚労省によると、今シーズンはインフル流行も懸念されることからワクチンの供給量は、大人の接種分で過去最も多いおよそ7042万回分が出荷される見込み。
【12月4日】
●コロナ致死率、第7波は40歳以上で減少 高齢者の追加接種効果か
全国保健所長会の研究グループは、ことし1月から8月までに大阪府や茨城県など10府県でコロナ感染の40歳以上の55万人余りについて、致死率の変化を調べた。その結果、致死率は「第6波」の1月初めからの4週間では0.62%、2月下旬まででは0.85%。その後、感染者数の減少とともに徐々に下がり、6月中旬までの4週間では0.23%。一方、「第7波」では、感染者数が最も多かった時期の8月中旬までの4週間でも0.39%と「第6波」のピークの時期の半分以下。
致死率は重症化リスクが高い高齢の人でも下がり、オミクロン株の「BA.5」が主流となった8月下旬までの1か月余りでは、60代で0.05%、70代で0.39%、80代以上で1.81%と、「BA.1」の時期の半分以下になっている。高齢者で進んだワクチンの追加接種の効果が大きい。
●出口模索の中国、現場混乱 ゼロコロナ抗議1週間 検査場「再配置」、長蛇の列
中国で1週間前に広がった抗議デモは、「ゼロコロナ」政策の緩和に向かわせたが、現場では混乱が続いている。明確な出口戦略を欠いた場当たり的な対応に、市民は振り回されている。混乱を象徴するのが、PCR検査。北京では2日以降、市内に1万カ所前後あった無料PCR検査場が軒並み閉鎖、残った検査場に市民が集中。酷寒の中、長蛇の列。同様の現象は各地で起きている。
中国ではPCR検査による1~3日以内の陰性証明をスマホのアプリなどで示さなければ、オフィスビルやレストラン、自宅のアパートにも入れない。何の説明もなく閉鎖され、陰性証明の提示の免除は発表されなかったため、混乱が深まった。PCR検査の態勢維持は地方政府の財政負担にもなっているが、高齢者のワクチン接種率が低いまま「脱PCR」を進められるのか。都市ごとにも対応の違いが生じており、迷走が表面化している。
●コロナ自己検査 キットに課題 費用は患者負担 結局外来
コロナ下で発熱外来の逼迫を避けるため、政府は抗原定性検査キットでの自己検査を促すが、利用が広がっていない。価格の高さ(1セット1700~2200円ほど)に加え、医薬品として未承認の「研究用」キットが広く流通。抗原定性検査キットは、鼻腔のぬぐい液や唾液を使い、感染の有無を判定できるが、キットによる自己検査の精度に課題がある。
都内では、検査キットでコロナ陰性だった人が、クリニックでの再検査で陽性になるケースが度々あった。発熱当日にキットを使っても、検出されない「偽陰性」などがある。市販キットで陽性でも「医療機関で正確な診断結果がほしい」「薬を処方してもらいたい」という理由で来る人も一定数いるという。東京都や大阪府では発熱などの症状がある人が、ホームページから申請すれば無料で1~2日後にキットを届ける。
●検査キット、未承認の「研究用」が流通
自己検査を広げる上で混乱を招く一因となっているのが、未承認の「研究用」のキットが薬局やインターネット上で売られていること。研究用は市販が認められているが、性能を担保されてない。コロナ感染の判定精度にも違いがあり、一般用でも感染者が正しく陽性と判定されるのは低くとも6割程度とされるが、研究用には著しく低いものもあるという。このため、自己検査で感染者を登録する場合にも使えない。
厚労省は承認した一般用キットの一覧をホームページに掲載。研究用と混同しないよう呼びかけている。現在9種類の製品がネットで売られているが、ネット上では研究用が広く出回っている。検索しても一般用を見つけにくい。キットが混在していることで、実際の医療現場にも影響が出ている。キットが研究用か医薬品か確認するのに時間が取られるという。
●インフルと同時流行、警戒
政府が今冬の対策として意識するのは、多数の感染者によって発熱外来が逼迫すること。厚労省は2日、自治体への調査結果から、コロナとインフルを合わせて1日最大81万人の患者が出ることを見込んだ対策をとる。感染者に発熱などの症状が出た場合、重症化するリスクが低ければ、まずはキットで自分で検査。解熱鎮痛薬を飲んで自宅療養するよう促す。
インフルとコロナの感染の有無を同時に判定できるキットの市販も解禁。供給は医療機関が優先され、出回る数は限られるものの12月にも購入できるようになる。だが、コロナのキットと同様、自己検査がうまく機能するかは見通せない。新潟大の斎藤教授(公衆衛生学)は「自己検査という言葉やキットの種類をそもそも知らない人の方が多い。基本的なところから知ってもらう工夫が必要だ」と話す。
●新型コロナ、新たに8万8752人感染 前週より減 死者103人
国内感染者は4日、新たに8万8752人が確認された。前週の同じ曜日(11月27日)より8870人減り、3日連続で前週を下回った。死者は103人。都道府県別で最も感染者が多かったのは東京都で、1万454人。神奈川県6498人、埼玉県5389人が続いた。
東京都は、前週の同じ曜日より108人多かった。4日までの週平均感染者数は、1日あたり1万1742.4人(前週1万388.4人)だった。4日に発表された新規感染者の年代別は、40代が1771人と最多、次いで20代1742人、30代1630人と続いた。65歳以上は1036人。病床使用率は42.8%。
12月4日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト
【12月5日】
●「ゼロコロナ」抗議活動の中国、各地で感染対策見直す動き
中国政府は先週、感染対策の適正化をさらに進める考えを示した。こうした中、上海では、地下鉄などの公共交通機関や公園などの屋外の公共施設を利用する際に求められていたPCR検査の陰性証明の提示が5日から不要になった。上海の地下鉄駅では5日朝、乗客が陰性証明が表示されるスマホを職員に見せないままホームに向かう姿が見られた。
北京でも、5日からバスや地下鉄を利用する際に陰性証明を提示する必要がなくなったが、いずれの都市でも商業施設やオフィスビルなどに入るには陰性証明が引き続き求められ、数日おきにPCR検査を受ける必要がある。広東省・広州でも対策が大幅に緩和されるなど各地で見直しは広がっている。感染者増への備えを政府が示さないまま、急な政策修正の動きに市民は戸惑っている。
●同時検査キット、一般販売を承認 富士レビオの製品
新型コロナと季節性インフルの感染の有無を同時に検査できる検査キットは、厚労省は5日、富士レビオの製品を一般用医薬品(OTC)として承認した。薬局やインターネットで販売が可能となる。国内で同時検査キットがOTCとして承認されたのは初めて。
同社の製品は綿棒を使って自分で鼻腔粘膜を採取するタイプ。20分程度でコロナとインフル両方の感染がわかる。医療機関へも供給している。対面やメールなどで薬剤師による説明を理解した人に販売する。ネット販売ができるのは、実店舗をもつ薬局などに限られる。
【12月6日】
●中国・北京などで感染対策さらに緩和、感染者数は高止まり
北京と上海では6日から感染対策がさらに緩和され、商業施設やオフィスビルなど多くの公共の場所に入る時のPCR検査の陰性証明の提示が不要になった。ただ、学校や医療機関、それに飲食店などでは陰性証明の提示が引き続き必要としているほか、商業施設などを訪れた際はスマホで、その場所に掲示されているQRコードを読み込んで、訪問記録を残すよう求めている。
緩和策が各地で広がれば、これまで以上に感染が拡大する可能性がある。5日確認された国内の感染者数は、全国でおよそ2万7000人と高止まりしていて、中国政府が今後も感染対策の緩和を進めるのか注目される。
●中国「ゼロコロナ」見直し、「影響注視し邦人支援」 林外相
中国各地で感染対策を見直す動きが広がっているが、林外務相は記者会見で「引き続き、中国における防疫措置が中国経済や市民活動などに与える影響について、強い関心を持って注視していく」と述べた。そのうえで、中国の日本大使館などから、あらかじめ登録した人などにメールを出して、防疫措置の周知や、食料などの備蓄の呼びかけを行っているほか、現地に滞在する日本人からの相談に応じるなどの支援を行っていると説明した。
【12月7日】
●中国政府 「ゼロコロナ」政策の規制 、「さらに緩和」 と発表
中国政府は7日、感染対策のさらなる適正化として、すべての感染者を病院や隔離施設に移す措置をやめ、無症状や症状の軽い人は自宅での隔離を認めると発表。自宅での隔離期間は原則7日間。また、高齢者施設や医療機関、学校などを除き、PCR検査から抗原検査に切り替えを進め、省や自治区などを越えて移動する際には陰性証明を求めない。このほか60歳以上のワクチン接種を進めるとし、臨時の接種会場を設けたり車で巡回したりする。
感染者が出た場所はこれまで通り「高リスク地区」として行動規制がかかるが、地方当局にその範囲を建物や世帯単位に縮小するよう求め、5日連続で新たな感染者が出なければ規制は解除される。また、高リスク地区以外で移動制限をしたり、店の営業や工場の操業を停止する措置をとったりしてはならない。国家衛生健康委員会は7日に会見を開き、緩和理由としてワクチン接種が進んだことや、変異株の病原性が低いことを挙げた。
●「感染状況に地域差 置き換わりに注意」 厚労省専門家組織
厚労省の専門家組織の会合が7日に開かれ、全国的に増加が続いているが増加速度は低下し、北海道や東北など感染拡大が先行した地域では減少傾向にある。一方、遅れて感染拡大となった首都圏や近畿、四国、九州、沖縄では増加幅が大きく、地域差が見られる。また、全国の重症者数と死亡者の数は直近で横ばいだが、ほとんどの地域で高齢者の感染者数は増加が続き、これからの推移には注意が必要だという。
今後の予測は、地域差があるものの全国的には横ばいから増加傾向が続き、免疫を逃れやすい「BQ.1」系統が国内でも増加しつつあることなどを指摘。年内にオミクロン株対応ワクチン接種を終えることや、自己検査可能な抗原検査キットの活用を求めている。忘年会シーズンを迎え、飲食はできるだけ少人数、飲食時以外はマスク着用、換気の徹底、症状があるときは外出を控えるなど基本的な感染対策の再点検や徹底を改めて呼びかけた。
●1週間の新規感染者数 全国では増加続くも幅は小さく
厚労省の専門家会合で示された資料によると、6日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて1.06倍と増加が続いているが、増加幅は小さくなっている。首都圏では、東京都と神奈川県が1.09倍、埼玉県1.15倍、千葉県1.13倍と増加が続き、34の都府県で増加している。一方、北海道や東北を中心に、11道県では前の週から感染者が減っている。
人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、宮城県が1007.00人と全国で唯一1000人を超えて最も多く、秋田県が940.07人、福島県が925.95人、北海道が900.35人などと、北海道や東北を中心とした地域で多くなっている。全国では595.24人。
●感染症法上の扱い 判断の際に考慮する要素 国が示す
新型コロナの感染症法上の扱いについて、厚労省は7日の専門家会合で判断する際に考慮する要素についてまとめた資料を示した。この中では、判断にあたって考慮する要素は、「病原性」と「感染力」、「今後の変異の可能性」を挙げている。
このうち「病原性」は、オミクロン株でも季節性インフルより致死率が高いとされ、今の時点での「病原性」をどう考えるか判断が必要。「感染力」については、オミクロン株は感染力が強いとされ、国民の生命や健康に対する影響をどのように考えるか。「今後の変異の可能性」は、病原性が大きく上がるような変異が起きる可能性をどうに考えるか。このうえで、患者をどのように医療で受け止めていくかも考える必要があるとしている。
●脇田座長「大都市圏では緩やかな増加も」
厚労省の専門家会合のあと開かれた記者会見で脇田座長は、「夏の第7波に引き続きBA.5が感染の主流になっているが、BQ.1系統の割合も徐々に増えている。また、年末年始に向けて、ふだん合わない人との接触が増えることで、感染が拡大していく可能性も高い」と指摘した。
「高齢者の感染者は緩やかに増加し、重症者数や死亡者の増加に影響する可能性がある。年末年始に高齢者に会う機会がある人は事前検査をするなどの注意が重要」。また感染症法上の扱いの見直しは、「ウイルスの伝播力や重症度、医療へのインパクトをどう評価するか。入院勧告や濃厚接触者の隔離がどこまで必要か、通常の医療と同じレベルに移行していく際に行政からどんな支援が必要なのか評価し、考えていく必要がある」とした。
●「BQ.1」に置き換わり進む オミクロン株BA.5が主流だったが
オミクロン株BA.5系統から派生した「BQ.1」が国内で広がりつつある。夏の第7波からBA.5系統が国内の主流だった。専門家組織の脇田座長は11月30日の会見で、11月に国内の感染増が一度鈍化した後、再び勢いを増しているのは、BQ.1への置き換わりが影響している可能性があると指摘。「7波のようにすんなりと感染者数が下がらないことも予想される」。免疫が効きにくくなり、感染が広がり易くなっているとみられる。重症化しやすさはBA.5と同程度とされる。
国立感染研の推計では、国内では8月上旬以降、BA.5が感染者の9割以上と主流だった。しかし10月上旬から減り始め、12月7日公表の推計では5日からの週には54%。代わりにBQ.1が36%を占めると推計。英国の健康安全保障庁によると、英国では11月19日までの週でBQ.1が50%。米CDCによると、米国でも12月3日の週で63%。ただし、いずれも広がった時期に入院者数が増えるなどの傾向は報告されていない。
●BA.5型ワクチン、BQ.1に「一定の効果期待」
米ファイザー社によると、日本では10月から接種が始まったBA.5型のワクチンを追加接種すると、接種前と比べて、BQ.1に対する中和抗体の量は約9倍増えたという。しかし、感染や発症を防ぐのに十分な量かどうかはわからない。一方、治療薬については、国内で使える中和抗体薬のロナプリーブ(一般名=カシリビマブとイムデビマブ)やゼビュディ(ソトロビマブ)は、もともとオミクロン株全般に効果が低いとされ、同じオミクロン株のBQ.1でも同様とみられる。
東京医大の濱田特任教授(渡航医学)は、欧米では検査が厳密ではなくなっているものの、感染者数の急増はみられず、「BA.5に置き換わったときほどの急激な感染者の伸びはないのではないか」とみる。ただ今後は寒さが増し、クリスマスや年末年始には人々の接触が増える。BA.1に対するワクチンの発症予防効果は現状では明確ではないというが、「重症化しにくくなるなど一定の効果は期待でき、接種を受ける意味はあるだろう」と話す。
【12月8日】
●モデルナのコロナワクチン、追加接種可能 12歳以上に引き下げへ
モデルナ製ワクチンは、3回目以降の追加接種の対象年齢が18歳以上。モデルナは、年齢引き下げを申請していた。8日、厚労省の専門家による部会が開かれ、製薬会社の臨床試験の結果、有効性や安全性が確認されたとして対象年齢を12歳以上に引き下げることが了承された。現在、接種が進められているオミクロン株「BA.5」などに対応するワクチンや「BA.1」対応ワクチンのほか、従来型ワクチンも対象となりる。今月中にも運用が始まる見通し。
●新たな変異ウイルスに対する飲み薬効果確認 東大研究グループ
オミクロン「BQ.1.1」などの新たな変異株に対して、飲み薬の効果が確認できたとする実験結果を東京大学の研究グループが発表した。患者からとった「BQ.1.1」と「XBB」の増殖を抑えられるか、さまざまな治療薬を使って実験した。その結果、飲み薬の「ラゲブリオ」と「パキロビッド」、それに点滴で投与する「レムデシビル」では増殖を抑える効果は、従来型のウイルスや「BA.5」に対してと同じ程度だった。
現在も感染の主流は「BA.5」だが、「BQ.1.1」が検出される割合は東京都で先月中旬までの1週間で7%となるなど、新たな変異ウイルスが増えてきている。
●新たにがんと診断、コロナ前の水準に 昨年 国立がんセンター調査
2021年にがんと診断された人は、新型コロナ流行前の2018、2019年の平均と比べ1%増えた、と国立がん研究センターが発表した。2020年は新型コロナによる受診控えなどで4%減だったが、コロナ前の水準に戻った。部位別にみると、胃がんと喉頭がんの2021年の患者数はコロナ前から5%以上減ったまま。受診控えなどの影響は依然残っているとみられる。一方、乳がんや膵臓がん、子宮体がんなどの患者数は5%以上増えた。
●新たにな13.2万人 前週を1.5万人上回る
国内感染者は8日、新たに13万2989人が確認された。前週の同じ曜日(1日)より1万5211人増え、3日連続で前週を上回った。新たに発表された死者は236人だった。新規感染者を都道府県別にみると、最多の東京都は前週より1772人多い1万4104人。8日までの週平均の感染者数は1日あたり1万2136.9人で前週の101.1%だった。次いで神奈川県8413人、愛知県8034人。
【12月9日】
● 中国、感染急増か ゼロコロナ緩和 先行した広州 病院「発熱者の80%陽性」
「ゼロコロナ」政策の規制が大幅に緩和された中国で、新型コロナ感染が急速に広がっている。緩和が先行した広東省広州市では、病院の発熱外来を訪れる人の大半が陽性で、町工場で従業員の9割が感染した例もある。羊の絵文字を添えた「私も羊になった」というメッセージが、中国のSNS「微博(ウェイボー)」で飛び交っている。中国語の発音で「羊」は「陽」と同じ。新型コロナの陽性を意味する。
広州市政府によると、市内で12月8日に確認された感染者は1859人。全住民を対象とするPCR検査をやめた11月30日の約6300人から「確認された」感染者数は減少傾向。当局側は大半が無症状か軽症で「心配は無用」と強調。だが、SNS上では「数字とは逆に、日に日に周りの感染者が増えている」との声が多数。9日、発熱者が頻繁に訪れていた市内の第12人民病院の関係者は「発熱して来る人の約80%は陽性」と話した。
●成田空港、国際便数はコロナ前の半分以下 水際対策緩和から半年
水際対策の緩和による外国人観光客の受け入れ再開から10日で半年。成田空港の国際線の旅客便数はコロナ前の半分以下の47%。路線別で見ると、米国やカナダなどの太平洋線は67%、ベトナムやシンガポールなどのアジア線は66%、韓国線は55%などと回復傾向にある。一方、発着回数が最も多かった中国線は24%に留まり、「ゼロコロナ」政策が続いていた影響とみられる。
便数の回復の遅れは、飲食店やおみやげ店、日用品店など空港内のテナントにも大きな影響を及ぼしている。コロナ前は、店舗が460余りあったが、今月3日時点で2割近くに当たる87店舗が撤退。残りの店舗も一部が休業のままで、現在、営業している店舗はコロナ前のおよそ6割。関係者は、早く中国の利用客が戻ることを期待している。
【12月11日】
●全国11万8514人、前週比2万9763人増 東京都1万2163人、前週比1709人増
国内感染者は11日、新たに11万8514人が確認された。前週の同じ曜日(4日)より2万9763人多く、前週を上回るのは6日連続。新たに発表された死者は132人だった。都道府県別で最も多かったのは東京都で、1万2163人。前週の同じ曜日より1709人多い。次いで神奈川県が7691人で、愛知県6879人、大阪府6664人、埼玉県6505人と続いた。
東京都の11日までの週平均の感染者数は、前週比で109.8%。年代別にみると、最多は30代の1967人で、次いで40代1949人、20代1947人など。65歳以上は1143人。病床使用率は47.3%。都基準の重症者は前日と同じ15人。新たに発表された死者は18人。
12月11日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト
【12月12日】
●中国研究者、主張一転 「ウイルスより変異早い」 広がる国民の不信
「ゼロコロナ」の大幅な緩和が進む中国で、感染症や公衆衛生の研究者たちへの批判や失望が強まっている。ウイルスの脅威を説くことで政府の厳しい規制を正当化。政策が変化すると一転「手のひら返し」、安全さを強調する。7日、会見に臨んだ国家衛生健康委員会の公衆衛生第一人者として知られる梁氏は「変異株の病原性は明らかに弱まった。現在のウイルスはこれまで以上に温和になった」と強調。これまで、コロナ危険性を指摘、ゼロコロナ維持を訴えていた。
10月の会見では、中国疾病予防コントロールセンターの専門家の呉氏は、後遺症について「数カ月からさらに長く続く」と発言し、人びとの不安を呼んだ。この呉氏も7日にSNSで、感染しても「多くは特別な医療サービスを必要としない」と発信。中国メディアも「後遺症には根拠がない」と他の研究者のコメントを紹介。本来、科学的に提言するべき研究者の姿勢の変化に、SNS上では「中国の専門家はウイルスよりも早く変異する」と不信感が膨らんでいる。
●発熱の受診、1週間で16倍 北京
北京市衛生当局は12日の定例会見で、11日に市内の医療機関の発熱外来で診察を受けた延べ人数が1週間前の16倍の2.2万人に達したことを明らかにした。政府が「ゼロコロナ」政策を大幅緩和したことを受け、新型コロナの感染が急拡大している。日本の119番にあたる救急通報も9日に3万1千件、通常の6倍。新型コロナと診断された人の数は明らかにしていないが、会見した当局者は「北京で新型コロナが急拡大する流れがなお存在している」と述べた。
政府は7日、ゼロコロナ政策を大幅に緩和。日常生活に欠かせなかった1~3日おきのPCR検査も極端にゆるんでしまった。PCR検査による新規の感染者(無症状を含む)の数は11日、1100人余りでピーク時の5分の1近くに減ったが、実際の感染者はこれまでにない規模で増えている。政府はこれまでの姿勢を一転、「オミクロン株の病原性は低い」と宣伝し、重症者以外は自宅療養を促しているが、高齢者や子どもを抱える市民は不安を募らせている。
●オミクロン株BQ.1.1、「病原性 同程度か低い可能性」 東大
免疫から逃れやすいとされ今後の拡大が懸念されるオミクロン株「BQ.1.1」について、感染したときに症状を引き起こす力は、従来の変異ウイルスと同じ程度か低い可能性があるとする動物実験の結果を、東京大学などの研究グループが発表した。それによると、実験で感染した人から取った「BQ.1.1」を細胞に感染させると、周囲の細胞を壊す力は、ことし夏の第7波以降の主流「BA.5」の2.4倍になっていたという。
一方で、「BQ.1.1」をハムスターに感染させると、体調を示す体重の変化は「BA.5」に感染した場合とほぼ同じで、肺の機能を示す数値は悪化の程度が低かったとしている。これまでの変異ウイルスでは、細胞を壊す力が強いと病原性も高い傾向があったが、「BQ.1.1」は病原性が「BA.5」と同じ程度か下がっている可能性もあるとしている。
【12月13日】
●コロナワクチン、「全額公費」議論 3月期限 自治体から延長求める声
新型コロナのワクチン接種について、全額を公費の「臨時接種」を来年4月以降も続けるか、厚労省の専門家分科会が13日、議論を始めた。議論の行方によっては、通常のワクチンと同様に自己負担が生じる可能性もある。ただ反対論が根強く、厚労省は延長を視野に検討している。臨時接種は、予防接種法上で「まん延予防上緊急の必要がある」場合のみに認められている。コロナワクチンはこれまで期限を2回延長していて、来年3月にまた期限を迎える。
「来年度の予算や人員配置を検討している。臨時接種をやめるのは難しい」「4歳以下の接種は10月に始まったばかり。来年3月末までに3回接種が終わらないケースも…」。自治体関係者らからはこの日、臨時接種の延長を求める声。この議論は、コロナの感染症法上の見直しの議論とも関係する。入院勧告などの厳しい措置がとれる「2類相当」のコロナを今後、季節性インフルなどと同じ「5類」に引き下げれば、臨時接種の条件を満たさない可能性がある。
●新型コロナ飲み薬「ゾコーバ」処方できる医療機関拡大へ
塩野義製薬が開発した新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」は重症化リスクが低い患者でも軽症の段階から服用できるのが特徴。先月22日に国が使用を緊急承認した。安全対策として当初の2週間程度は、薬が働く仕組みが同様のファイザーの飲み薬を処方した実績がある医療機関などから供給を始め、12日の時点でおよそ4800の医療機関などが登録された。
その後、大きな問題は報告されなかったことから、厚労省は15日から特に条件を設けず都道府県が選定した医療機関での処方や薬局での調剤ができるようにすると発表。そのうえで、安定的に供給できるよう厚労省は塩野義製薬と追加で100万人分を購入する契約を結んだ。処方可能な医療機関について今後、都道府県などのWEBサイトで公開するとしている。
●総務相の記者会見 感染対策のアクリル板、2年ぶり撤去
閣議のあとに行われている総務大臣の記者会見では、一昨年9月から感染対策のため大臣と記者席の間にアクリル板が設置されていた。13日、2年3か月ぶりにそのアクリル板が外され、記者会見が行われた。総務相は原則、マスクを外して会見に臨んでいるが、総務省は「記者席との間に十分な距離を確保しており、換気も十分で、感染のリスクは低いと判断した」としている。閣僚の記者会見では、加藤厚労相も先週からアクリル板を外している。
●旅行支援 来月10日から、割引率20%に引き下げ
斉藤国交相は13日、旅行代金を補助する「全国旅行支援」について、現行の旅行支援は12月27日宿泊分まででいったん終了。来年1月10日から再び実施すると発表した。割引率は現行の40%から20%に引き下げる。割引の上限額も公共交通機関とセットの旅行商品は1人1泊8千円を5千円に、それ以外は5千円を3千円に引き下げる。地域で使えるクーポン券は平日2千円、休日千円が支給される。原則、電子クーポンとする。
各都道府県の準備が整い次第、販売が始まる。販売が始まる前に予約した分には割引は適用されない。各都道府県ごとに予算を使い切ったところから支援策は順次、終了する。
●忘年会・新年会「開催せず」7割 開催派の4割「二次会自粛」
年末年始の忘年会・新年会を「開催しない」とする企業が7割にのぼることが、東京商工リサーチのアンケートで13日明らかになった。企業の中にはコロナ禍を機に「仕事上のつきあい」を見直す動きが広がっているとみられる。アンケートは1~8日に実施し、国内4766社が回答。「開催しない」は71.1%。1年前より8.3ポイント減少。10月の調査では「開催しない」が61.4%だったが、感染者数が増加したこともあり、開催をとりやめる企業が増えた。
「開催」とした3割近くの企業のうち、2割超は「緊急事態宣言」などの制限がないことが開催条件。すでに開催したか、開催意向のある企業に尋ねると、42.7%が「二次会を自粛」と答えた。「開催時間を制限(短縮)」(27.8%)、「人数を制限」(27.5%)がほぼ同数。東京商工リサーチ担当者は、会社行事の忘年会・新年会は今後もコロナ前のような活況を取り戻さないとみる。「企業は飲みニケーションにかわるものを見つけないといけない」と話す。
【12月14日】
●専門家会合、「年末に向け接触機会増加など注意必要」
厚労省の専門家組織の会合が14日に開かれ、直近1週間の新規感染者数は全国平均で、前週比1.2倍の増加傾向。感染拡大が先行した北海道でなど3道県は、前週を割り込んで減少傾向。遅れて拡大した西日本で軒並み増加のペースが大きくなり、特に九州を中心に8県では1.5倍超。東北・北陸・甲信越も減少傾向から増加傾向に転じている。全国で高齢者で感染者数が増加し、重症者数や死亡者数は再び増加傾向にある。
医療体制は、病床使用率も上昇傾向で、22道府県で50%以上。救急搬送が困難なケースも増え、特にコロナ以外での救急搬送が困難なケースはことし夏の「第7波」のピークと同じレベルに達し、年末年始の救急医療体制の確保に注意が必要。今後の感染状況予測では、多くの地域で増加傾向が見込まれ、より免疫を逃れやすいとされる「BQ.1」の割合が国内でも増加しつつあり、年末年始で接触機会が増えることなどに注意が必要だと指摘した。
●13日まで1週間の新規感染者数、44都府県で前週から増
厚労省の専門家会合で示された資料によると、13日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.20倍と増加のペースが上がっていて、北海道と山形県、長野県を除き、九州など西日本を中心に44の都府県で、前の週から感染者数が増えている。首都圏では、東京都が1.16倍、神奈川県が1.15倍、千葉県が1.22倍、埼玉県が1.18倍と増加が続いている。
人口10万人当たりの直近1週間の感染者数は、鳥取県が1112.20人と最も多く、宮城県1067.07人、福島県1034.07人、佐賀県979.49人、新潟県950.72人、秋田県950.70人などと多くなっている。全国では716.43人。
●脇田座長「感染の増加傾向続く可能性高い」
専門家会合のあとの記者会見で、脇田座長は「自然感染による免疫もワクチンによる免疫も、時間とともに減っているほか、年末年始でふだん会わない人と会う機会も増えるため、全国的に見れば、感染の増加傾向は続いていく可能性が高い」と指摘。その上で、「インフルも年明けから流行が広がる可能性があり、基本的な感染対策の継続や体調の管理は必要。帰省で高齢者に会う機会が増えるので、事前の検査や体調管理の配慮をしてほしい」と呼びかけた。
●「インフル同等と判断できる条件満たしてない」 専門家有志
新型コロナの感染症法上の扱いについて、季節性インフルと同じ「5類」への引き下げも含めた見直しが議論されているが、専門家有志は、新型コロナはインフルと同等と判断できる条件を現時点で満たしていないとするリスクの評価をまとめた。リスク評価は、東北大学の押谷教授や、京都大学の西浦教授など、専門家4人がまとめ、14日に開かれた厚労省の専門家組織の会合で示した。
文書では、新型コロナのリスクを、感染の広がりやすさ「伝播性」や、感染した場合の「重症度」、それに「医療や社会への影響」の3項目について評価している。こうしたことから、現時点では、新型コロナは「季節性インフルと同等のものと判断できる条件を満たしていない」と結論づけている。会合のあとの記者会見で、押谷教授は「インフルと全く違う特徴を持っているウイルスと、われわれは対峙していると理解する必要がある」と話していた。
●新型コロナ「後遺症」での受診リスク 感染した人最大6倍ほどに
名古屋工業大学の平田教授らの研究グループは、およそ125万人分のレセプト(診療報酬明細書)の記録を、感染した人と感染していない人で、「後遺症」の倦怠感や頭痛、呼吸困難など10の症状で医療機関を受診する人の割合を調べた。その結果、重い持病がない人でこれらの症状で受診した人の割合は、第1波から第3波に当たる去年春までの1年間では、感染していない人では3%、感染した人ではその後6か月間で16%と5倍程度高くなっていることが分かった。
受診した人の割合は「第4波」や「第5波」の時期でも最大で6倍程度高くなっていたが、オミクロン株が拡大した「第6波」のことし1月から3月には3倍にまで低下していたという。平田教授は「ワクチンの効果や変異ウイルスの病原性もあって(後遺症)リスクが低下した可能性がある」と話している。
●中国、「無症状」の発表停止
中国の国家衛生健康委員会は7日に対策の緩和を発表し、これまでは医療機関や施設での隔離が義務だった軽症と無症状者について、自宅での隔離を認めた。日常生活に組み込まれていたPCR検査の機会が減っており、抗原検査キットで自ら陽性を確認した市民が自宅療養するケースが増えている。同委員会は14日、無症状感染者について、正確に把握できないため今後は人数の発表をとりやめる方針。
公的なデータが発表されなくなる一方で、中国各地ではコロナの陽性者が激増しているとみられる。病院の発熱外来には連日、大勢の患者が詰めかけ、薬局では薬や抗原検査キットが品薄になっている。13日には、市民の行動を追跡するスマホのアプリも廃止。プライバシーなどを考慮せずに滞在した都市が自動的に表示される仕組みで、直近の訪問先が感染リスクの高い地域だとみなされると、行動が制限されていた。
●5類移行、「インフルとの比較は困難」 専門家ら 難しい時期判断 政府
新型コロナを季節性インフルと同じ感染症法上の「5類」に変更するかどうか、政府と専門家らの議論が本格化している。医療体制や公費負担のあり方、変更時期が焦点となる。一方、専門家組織の有志は14日、コロナはインフルとの比較が困難だとする見解を公表した。医療現場の逼迫を受け、自治体が5類への早期変更を求める中、政府は難しい判断を迫られる。
政府は「国民は3年も不自由な生活を送り、もう待ってくれない」と受け止める一方、今冬の感染拡大中に5類変更を打ち出せば、国民に「もう感染対策は不要」と受け取られかねない。また、5類になれば感染者の隔離などさまざまな措置が無くなり、店での飲食やイベント参加が増える。自治体や医療機関も準備が必要なため、5類変更前に一定の周知期間を置かねばならない。5類の変更時期について、来年度の自治体予算成立(来年3月)には間に合わない。
●製造業4期連続悪化 非製造業は改善続く 日銀短観
日本銀行が14日に発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業・製造業の業況判断指数(DI)が4四半期連続で悪化した。前回9月調査から1ポイント悪化してプラス7。業種別では石油・石炭製品が40ポイント悪化、化学が8ポイント悪化など、産業の「川上」にあたる産業での悪化が目立った。世界経済の減速を見込み、原油や鉄など素材の価格が下落傾向にあり、景況感を落ち込ませている。
一方、大企業・非製造業はは3四半期連続の改善。5ポイント改善してプラス19。特に宿泊・飲食サービスは28ポイントの大幅改善。「全国旅行支援」や、10月から新型コロナの水際対策が緩和されたことが追い風になったとみられる。3カ月後の景況感を聞いたDIは、大企業・製造業がプラス6と今回から1ポイントの悪化、非製造業もプラス11と8ポイント悪化を見込んでいる。
●コロナ発症1カ月、20人に1人後遺症 豊中市など調査 日常に支障1.6%
大阪府豊中市などは14日、新型コロナの後遺症調査の結果を発表した。市役所で会見した大阪大学大学院の忽那教授(感染制御学)によると、療養後に何らかの症状があったと回答したのは47.7%。「日常生活の支障」が30日以上続いた人は1.61%に上った。1カ月後も感染者の20人に1人、2カ月後も27人に1人は、何らかの後遺症があった。後遺症が30日以上続いた人では、髪の脱毛が1.41%と最も多く、せき、熱、嗅覚障害、味覚障害と続いた。
発症時期から推定して、77.3%がオミクロン株に感染。また重症だった人は、軽症の人より後遺症が約5.4倍起きやすかった。ワクチン接種をするほど後遺症が起こりにくい傾向も分かり、忽那教授は「特に重症度リスクの高い人のワクチン接種や感染予防策は引き続き重要」と語った。長内市長は「(症状は)徐々に改善するが、日常生活に支障が出るとわかった。感染予防を徹底し、ワクチンを接種してもらえる環境を提供し、こうした情報を市民に知らせたい」と語った。
【12月15日】
● 中国ゼロコロナ緩和、感染増 「社員ほぼ全滅」 発熱外来受診16倍
「ゼロコロナ」政策が緩和された中国で、感染が急拡大している。日系を含め多くの企業で部署のほぼ全員が感染するようなケースが相次ぐ。政府が感染者の全数を把握することをやめたために正確な数字は不明だが、取材からは感染の「爆発」に近い実態が見えてきている。中国政府のコロナ対策に影響力のある医師チームなどは、中国メディアに対し、今後の感染のピークは1月中下旬から2月にかけてと予想している。
中国当局が発表した14日の新規感染者数は、広東省が857人、次に多い北京市が494人。だが、政策の緩和でPCR検査を受ける人が激減しているほか、13日分からは無症状感染者の統計も発表されなくなった。当局発表の感染者数は、実態とはかけ離れている。北京市内の医療機関で発熱外来を受診した延べ人数は11日、1週間前の16倍に上った。
●米国CDC、コロナ後遺症関連の死亡「3500人余」 報告書公表
新型コロナの「後遺症」は、息苦しさやけん怠感などの症状が長く続き、人によって数か月以上続くケースも報告されている。この後遺症を巡って米国CDC(疾病対策センター)は14日、後遺症に関連して死亡した人がどのくらいいるか、分析した報告書を公表した。分析は、一昨年1月から今年6月までに、米国で新型コロナで死亡したおよそ102万人を対象に行われ、死亡診断書に後遺症を示す「ロング・コビッド」などの単語が含まれるものを調べた。
その結果、全体のおよそ0.3%にあたる3544人が新型コロナの後遺症に関連して死亡したと特定したという。年代では65歳以上がおよそ8割で、男性のほうが女性よりもわずかに多い傾向のほか、時期でみると今年2月が最も多くなっていた。
●新型コロナ感染者の葬儀、最後の別れができるように 見直しへ
新型コロナに感染して亡くなった人の遺体の搬送や葬儀などについて、厚労省と経産省はおととし7月にガイドライン案をまとめた。遺体は「納体袋」で包み、遺体に触れることは控えるほか、濃厚接触者の参列については無症状の場合でもオンラインを活用するなど対面を避けるよう推奨していた。遺族からはこれまで、「最後の別れができるようにしてほしい」との声が上がっていた。
厚労省などがまとめた見直し案は、遺体から一定の対策をとれば「納体袋」は必要ない。「遺体に触れることは控える」という表現を削除し、触れた場合は適切に手を洗うよう求めている。濃厚接触者は基本的な感染対策をとれば葬儀や火葬に参列できる。厚労省などは業界団体などの意見を踏まえて年内にもガイドラインを改定する方針。見直されれば基本的な感染対策をとったうえで、亡くなった家族の体に触れるなど最後の別れができるようになる。
●東京の感染者、4週間後に1日3万人か 専門家らの会議で報告
東京都は15日、感染者を新たに1万7687人確認したと発表。前週の同じ曜日より3583人多い。同日の都モニタリング会議では、このままのペースで感染者が増え続けると、1月11日には約3万人の新規感染者が予測されると報告された。15日までの週平均の感染者数は1万4802.9人で、前週(1万2136.9人)の122.0%。新規感染者を年代別でみると、最多は20代の3232人、次いで30代3128人、40代3021人など。病床使用率は52.2%。
モニタリング会議では7週連続で週平均の感染者数が前週を上回ったと報告された。出席者からは「(感染者増加は)寒さで換気が悪くなった影響が大きい。いろんな種類の変異株が同時にはやっていることもある」「医療機関は負荷が増大している」などの指摘があった。年末年始の診療の報告もあり、都立病院12カ所は20日以降、1日あたり計1千人のコロナ患者を診察できる体制を整えたとした。
12月31日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト
●全国で16万8491人の感染確認 10日連続で前週上回る
国内感染者は15日、新たに16万8491人が確認された。前週の同じ曜日(8日)より3万4992人多く、10日連続で前週を上回った。死者は277人。都道府県別の感染者数は、東京都の1万7687人が最多。神奈川県1万1040人、愛知県9810人、大阪府9586人、埼玉県9142人と続いた。
以下5枚の図は12月31日時点の国内感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト
« 新型コロナ2022.11 増加続く | トップページ | 新型コロナ2022.12 中国激増 »
「ニュース」カテゴリの記事
- 新型コロナ2023.02 XBB.1.5株(2023.03.06)
- 新型コロナ2023.02 マスク緩和へ(2023.02.27)
- 新型コロナ2023.01 5類移行へ(2023.02.12)
- 新型コロナ2023.01 死亡急増(2023.01.16)
コメント