武州・越生の梅林
2021年3月1日(月)、越生梅林(埼玉県越生町)に観梅に行く。
この日は、気温18℃、4月上旬並みの暖かさ。コロナ禍の影響で、今年の「梅まつり」(例年2月中旬〜3月下旬)のイベントなどはすべて中止。入園(300円)は無料、ただし駐車料金500円。土日曜は混むと思って月曜に行くが、案の定いくらか混んでいた。
埼玉県入間郡越生(おごせ)町にある約1000本(面積2ha)もの梅が香るという「越生(おごせ)梅林」。水戸偕楽園(茨城県水戸市)、曽我梅林(神奈川県小田原市)とともに「関東三大梅林」に数えられている。曽我梅林の代わりに、熱海梅園(熱海市)とする資料もある。
「越生」は「おごせ」と読む難読地名、その由来は諸説ある。一つには、この地が関東平野の西端で山地に接し、秩父に向かうにも上州に向かうにも尾根を越して行かねばならず、その「尾根越し(おねごし)」が「尾越し(おごし)」、やがて「おごせ」と変化したと言われている。
南北朝時代の1350年頃、九州の「大宰府天満宮」から武蔵国小杉村に「小杉天満宮」(現在の「梅園神社」)に分祀した際、菅原道真公にちなんで梅を植栽したのが起源であると伝えられている。江戸時代から梅の産地として生梅を出荷していたことが知られ、また文化文政年間(1804年〜1829年)に編纂された武蔵国の地誌『新編武蔵風土記稿』にも梅を梅干に加工し、江戸に送られたことが記されているという。
越生梅林入口に立つ越生町教育委員会の説明板。
明治になると観光地としても注目されるようになる。1889年(明治22年)に小杉村などの8か村が合併し、梅にちなんだ梅園村が成立。1900年(明治33年)には地元有志らが「古梅林保勝会」を結成し、翌年には越辺(おっぺ)川岸の一画が、奈良の「月ヶ瀬梅林」にあやかって「新月ヶ瀬豊楽園梅林」と命名された。
絵葉書『武州新月ヶ瀬名所』 越生町教育委員会の説明板より。
1901年(明治34)年、歌人で国文学者の佐佐木信綱が来遊、ほかに田山花袋、野口雨情など多くの文人墨客 も訪れたという。歌人・佐佐木信綱の歌碑がある。
歌碑には、「入間川高麗川こえて都より 来しかひありき梅園のさと」のほか、2首。
1942年(昭和17年)、梅園村の大字堂山字前河原を中心とする約2haが、埼玉県指定名勝に指定され、関東屈指の観梅の名所へと発展する。1955年(昭和30年)に梅園村は越生町と合併、「越生梅林」と改称した。写真は、 「埼玉県指定名勝 越生梅林」の記念碑。
梅の木の足元には福寿草。園内をめぐるミニSLのレール。
本物の石炭で走るミニSLが、「梅まつり」の期間中の土・日曜、祝日には、人を乗せて一周253mを運行。ミニSLは、かつてJR八高線で走っていた国鉄9600形蒸気機関車の10分の1モデル。また期間中、舞台では和太鼓など郷土芸能も披露されるという。
「越生野梅」(おごせやばい)などの保存古木(樹齢200年超)が、100本以上ある。
保存木の「紅梅」(べにうめ)。原種の「越生野梅」の系統らしく、花は白い。後述の梅干し「越生べに梅」と同じものか不明。
樹齢約650年を超えるという古木「魁雪」(かいせつ)は、「越生野梅」。梅の幹のねじれは、古木になると現れるという。
屋台エリアには、屋台が数軒並んでいた。
面積2haの「越生梅林」には、「白加賀」「紅梅」「越生野梅」など約1,000本の梅の木が植えられている。梅林周辺を含めると、2万5000本(栽培面積40ha)が咲き誇る。生産用の梅が主体のため、大半が白梅。園内のほとんどが私有の生産梅林で、6月に梅の実を収穫。「白加賀」(しろかが)は、1960年代の梅酒ブームを背景に植栽された梅。
早春の花のロウバイ(蝋梅)のほかに、サンシュユ(山茱萸)も咲いていた。
梅の特産品の土産屋のほか、梅の盆栽も販売されている。
白梅が多く、紅梅は少ないが目立つ。梅林の中央付近には枝垂れ梅が植えてある。
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近年では梅干しのブランド化のため、越生町に受け継がれ栽培されてきた固有の梅「越生べに梅」が増えているという。「白加賀」より花が小さく、少しピンク色、完熟するとフルーティな香りで表面に紅色がさすことから「べに梅」(「紅梅」ではない)と呼ぶ。薄皮で果肉が厚いという。県内外から、梅干しファンには人気の越生の特産品。
梅干し「べに梅」(300g・1000円)、練り梅「おにぎり梅」(150g・480円)、梅干しをつくる際に抽出されるウメエキス「梅ひとしずく」(30ml・800円) 出典:農林水産省Webサイト https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1404/spe1_04.html
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