新型コロナ2020.11 重症最多
新型コロナウイルス感染拡大の「第2波」は、2020年8月には緩やかに減少していたが、8月下旬以降は減少は鈍化から横ばいへ。10月中旬以降になると増加に転じ、やがて「第3の波」がやって来た。高齢者の割合は増加傾向にあり、重症者数は過去最多を記録した。
11月16日から30日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2020.11 第3波」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】
【11月16日】
●GDP急反発、年率 31.4%増 7〜9月期 回復まだ半ば
内閣府が16日、日本の国内総生産(GDP)の1次速報を公表した。7~9月期の日本のGDPは高い伸び率を記録。物価変動の影響を除く実質(季節調整値)で前期(4~6月)比5.0%増、年率換算では21.4%増。「緊急事態宣言」が5月に解除された後に経済活動の再開が進み、伸び率を大きく押し上げた。戦後最悪の年率28.8%減に沈んだ前期から急反発したが、金額では落ち込みの半分余りしか戻せず、「V字回復」は遠い状況。
個別項目では、個人消費が前期比4.7%増(前期は8.1%減)と急反発。1人10万円の給付金の効果もあり、自動車や家具、家電などの販売を押し上げた。旅行や外食などのサービス消費も一定の回復がみられた。ただ設備投資は3.4%減で、2期連続の減少。先行きが不透明なため、企業が慎重姿勢。一方、輸出は7.0%増と反発。欧米向けの自動車が持ち直した。輸入は9.8%減に急落。輸出から輸入を差し引いた外需がGDPを大きく押し上げ、全体の伸びの6割を占めた。
●東京五輪開催へ連携強化 IOC会長、首相と会談
菅首相は16日、IOCのバッハ会長と約30分会談し、来夏に延期された東京五輪・パラリンピックの開催実現に向けた連携を確認した。観客を受け入れる形での開催をめざすことでも一致。首相は大会開催を「人類がウイルスに打ち勝った証し」と位置づけ、「東日本大震災から復興しつつある姿を世界に発信する。大会を実現する決意だ」と強調した。バッハ会長は「決意を共有する。我々は日本側に立つ」と応じた。首相は観客の参加を想定して大会の準備を進める方針を伝え、バッハ会長も同調したという。
バッハ会長はこの日、小池東京都知事や森大会組織委員会らとも会談。新型コロナワクチンが開発された場合、選手たちが来日前に母国で予防接種を受けられるよう最大限努力する考え。記者会見では、IOCとして接種費用を負担することを明言した。
●ワクチン「効果94.5%」 米モデルナ、暫定結果公表
米バイオ企業モデルナは16日、開発している新型コロナワクチンの臨床試験で、発症を防ぐ有効性が94.5%になったとの暫定的な分析結果を公表した。米製薬大手ファイザーなどが開発するワクチンも90%超の有効性を示しており、期待が高まっている。近く米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請する方針。今後はワクチンの完成に向け、安全面や効果の持続性などの検証が課題となっている。
●GoToイート「5人以上対象外」
菅首相は、16日夕の政府対策本部で、「GoToイート」で5人以上の会食を対象外とすることを感染拡大している地域の知事らに検討するよう求めた。専門家からは、5人以上の会食には感染リスクが高いとの指摘があったり、感染者が増えている北海道や大阪府の知事らが、4人以下の飲食に限定してほしいとの要望を政府に出していた。
【11月17日】
●米で「第3波」感染急増、新規17万人超 バイデン氏「マスクを」
ジョンズ・ホプキンス大によると、新型コロナの「第3波」に見舞われている米国で、13日に過去最多の17万7千人超を記録。17日も16万1千人を超えた。米国の累計感染者数、死者数は共に世界最多。米疾病対策センター(CDC)は、家族や友人同士の小規模な集まりが感染の温床と指摘。日常が戻るのは早くて来春とみる専門家もおり、医療現場からは悲鳴が上がる。入院患者が全土で増え、中西部を中心に18州が医療崩壊の危機にある。
米国は今月26日の感謝祭から来月のクリスマスまで休暇シーズン。バイデン次期大統領は16日の会見で「非常に暗い冬」が迫っていると警告。「マスクを着ければ(就任式の)1月20日までに10万人の命を救うことができる」として、全国の州や地方自治体に対応を求める方針。
米調査機関によると、「マスクを日頃から着用する」と回答した米国人は6月に65%、8月には85%に増加。ただし共和党支持者では低く、今月14日にホワイトハウス周辺に集結した1万人以上のトランプ大統領支持者も大半が未着用だった。
●豪州、感染22人でロックダウン
オーストラリアの南オーストラリア州は18日、ロックダウンを19日から6日間行う。同州では14日に7カ月ぶりに市中感染例が出たばかり。感染者は18日までで計22人にとどまるが、飲食店は持ち帰りサービスも含めて閉鎖し、学校や大学も休校。外出は食料品の買い出しのために1世帯1人限定、運動のための外出も認めない。豪州は、11月以降は国内全体で新規感染者がゼロの日もあるほどになっていた。
●大学生の内定率 急落69.8%
来春卒業予定で就職希望の大学生の内定率は10月1日時点で、前年同期比7.0ポイント減の69.8%だったことが17日、文部科学、厚生労働両省の調査で分かった。近年では、リーマン・ショック後の2009年(平成21年)の7.4ポイント減に次ぐ下落幅。短大や専修学校も大幅に減った。企業には採用人数の抑制や、内定取り消しの動きが出ており、両省は大学生らの卒業から3年以内は新卒扱いで採用するよう求めている。
●札幌ステージ4相当、外出・往来「自粛を」
新型コロナ感染が急拡大している北海道は17日午後の対策本部会議で、感染リスクが回避できない場合は、札幌市内での不要不急の外出自粛や、札幌市と道内他地域との往来の自粛を求めることを決めた。一連の措置は即日開始し、集中対策期間としている今月27日まで行う。
道は現在、独自に定めた5段階の「警戒ステージ」を「3」としているが、札幌市に限り「4」に相当する対策を行う。道内でも人口が集中する札幌市で感染を抑え込み、各地への広がりを防ぐ狙い。道内では寒さが増した10月下旬から感染が再び拡大し、12日から4日連続で200人超の新規感染者が確認され、感染者数の高止まりが続いている。
●クーポン、5人以上の食事不可
「GoToトラベル」で、代金の15%分が配布される「地域共通クーポン」で、観光庁は17日、感染が広がっている地域では原則5人以上(子供は除く)の食事での使用を禁止するとの方針を発表。実際に人数制限は都道府県知事が判断し、早ければ21日以降の食事から適用される。
「GoToイート」でも、一部地域で人数制限を検討するとの方針が16日に発表されている。人数制限が必要と知事が判断した都道府県では、トラベル事業も同様の扱いになる見通し。観光庁はまた、トラベル事業を使った団体のバスツアーで車内の食事を禁止する方針も示した。
●全国で新たに1699人感染 兵庫など6府県で最多更新
新型コロナ国内感染者は17日、新たに1699人が確認。過去3番目の多さ。死者は14人増えた。兵庫107人、茨城55人、京都49人、新潟33人、長野24人、大分11人の6府県で最多を更新した。新潟県では新潟市の介護施設で30人の感染が確認。70~90代の入所者29人と30代の職員。長野県では、14人が長野市内の飲食店関連のクラスター(感染者集団) 。京都府でも、32人が京都市内の病院と老人ホームでクラスターが発生中。
東京都は298人で、2日ぶりに200人台。年代別では20代の81人(27%)が最も多く、65歳以上の高齢者は36人(12%)。大阪府で新たに確認された269人は、14日の285人に次いで過去2番目。北海道で確認された197人のうち、札幌市が150人を占めた。同市内ではこの日、コールセンターや医療機関などでクラスターが発生。厚真町でも北海道電力発電所でもクラスターが確認、道内ではクラスター発生は19日連続。
感染が再び急拡大したことで、感染者の病床が各地で逼迫してきている。重症者や高齢者の感染も相次ぎ、自治体側は病床の確保を急ぐが、医療従事者の人手不足やほかの診療への影響を危惧する声も強まっている。
【11月18日】
●WHO、ワクチン頼みを警戒
新型コロナワクチンについて、世界保健機関(WHO)の緊急対応責任者ライアン氏は18日、「ワクチンが魔法の解決策だと考える人もいるが、そうではない。ワクチンだけに頼って他の抑止策を忘れたら、ウイルスはゼロにならない」と強調した。
●ファイザーワクチン、最終結果「有効性95%」
米製薬大手ファイザーは18日、開発中の新型コロナワクチンについて最終分析での予防効果が95%に達し、重篤な副作用も見られなかったとする最終結果を発表した。数日以内に米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請する。承認されれば年内にもワクチンが実用化される。
ファイザーは、年内に2500万人分に当たる5000万回分のワクチンを製造、2021年には最大で13億回分を製造する予定だと改めて表明。同社のワクチンは、マイナス70℃以下の超低温で保存する必要があるが、通常の冷蔵庫でも最大5日間は保存可能だという。
●高齢者施設検査、首相が強化指示
菅首相は18日夜、新規感染者数が初めて2千人を超えたことを受け、高齢者施設での検査を強化するよう田村厚生労働相らに指示した。首相官邸で感染状況の報告を受け、「感染拡大を防ぐよう全力をあげて取り組むように」などと伝えた。田村氏は、高齢者施設への対策については「感染が広がっている地域は、症状が出ていない方も含めて検査をしていただくとかの対策をやらなければいけない」とした。
●日医会長「我慢の3連休に」 官房長官「自粛要請考えず」
日本医師会の中川会長は18日の記者会見で、感染者数が急増していることを受け、「コロナ慣れしないでください。甘く見ないでください」と国民に呼びかけ、21日からの3連休について「我慢の3連休にしてほしい」と不要不急の外出を控えるよう呼び掛けた。
中川会長の呼びかけに対し、加藤官房長官は18日の記者会見で「現時点の感染状況を踏まえ、県をまたいだ移動について一律に自粛を要請する必要があるとは考えていない」と述べた。「GoToトラベル」については「感染防止策によって旅行による感染リスクは低減できる」とし、引き続き推進する考え。日本商工会議所の三村会頭も18日、「需要喚起して仕事を創出しなければ倒産、廃業が急増する」と強調し、政府に「GoToキャンペーン」の予算拡充や延長を求めた。
●GoToイート、客4人まで? 飲食店不安 割れる知事
「GoToイート」も人数を4人以下に制限する動きが出て、店側に不安が広がる。感染防止と経済の回復をどう両立すればよいのか。制限を求められた都道府県の知事の間でも、支持と疑問の声が交錯している。
東京・新宿の街では「緊急事態宣言」が出された4月から5月にかけて、多くの店が2カ月間休業、国や都の支援金を受けてしのいできた。「GoToイート」でようやく客が戻ったところに、人数制限。例年は忘年会の予約が殺到する時期。もともと6人以上の団体客は座席を分けており、「4人以下」は唐突感がある。歌舞伎町のある店主は、「コロコロ制度を変えられたら、たまったもんじゃない。だったら給付金でも配ってほしい。それがなければ、生活が苦しくなっていくだけだ」。
東京都の小池知事は18日、「あんまり大人数で行くことは賛成しない。大声になるし、方向性は合っていると思う」と述べた。人数制限を国に求めていた大阪府の吉村知事は、「GoTo」以外でも5人以上の飲み会は自粛するよう求める。18日の会見で「吉村知事が決めた。あいつのせいだ、と言ってもらっていい。批判はこちらで受ける」と話した。埼玉県の大野知事は18日、「21日から子どもや介護者を除く4人までを対象にしたい」。愛知県の大村知事も17日の記者会見で「県として異論は無く、国には同意する」。北海道は17日、食事券が利用できる店に多人数・長時間の会食を避けるよう周知徹底するよう求めた。
一方、神奈川県の黒岩知事は17日、「ピンと来ない。4人だったら安全で、5人だったら危険なのか」と疑問を呈し、現時点で制限する意向はない。飲食時以外はマスクを着ける「マスク会食」の徹底で感染は防げるという。愛媛県の中村知事も18日、人数によって対象から外すことはないとの考え。愛媛でも感染者は増加傾向にあるが、国の目安(警戒ステージ)では「ステージ1」、「2」にあたるためという。
●新規感染、初の全国2000人超 5都県で最多
国内の新型コロナの感染者は、18日過去最多となる2202人が新たに確認。1日あたりの感染者数が2千人を超えるのは初めて。東京のほか、神奈川、埼玉、長野、静岡の計1都4県で最多を更新。大阪や北海道でも、過去最多に迫る200人超の感染が明らかになり、感染の拡大が続いている。死者は北海道などで計14人。
東京都ではこの日、493人の感染が確認された。年代別にみると、65歳以上は77人(16%)と5月1日の69人を上回り、過去最多。高齢者への感染拡大の背景には、家庭内感染の増加がある。18日までの1週間では感染経路別のうち、家庭内が最多の4割。子どもから感染する高齢者が多いという。大阪府でも1日あたりの感染者数としては今月14日285人に次いで、2番目に多い273人。
札幌市で不要不急の外出自粛要請が出されている北海道では、233人が感染、うち札幌市は136人。道内では20日連続でクラスターが発生、この日も札幌市内のグループホームなどで起きた。神奈川県では過去最多147人を大きく上回る226人。県内の入院患者は17日時点で410人で、受け入れ可能な病床の確保を急いでいる。埼玉県は126人、目立ったクラスターがない中で感染者数が増えている。静岡県では今月14日の36人が最多だったが18日は87人、わずか4日で倍以上に増えた。
【11月19日】
●10万人当たり、新規感染2週間で倍 GoTo見直しに言及せず
厚生労働省の「専門家組織」の会合が19日開かれ、過去最多の水準となり感染拡大のスピードが増していると評価した。前回会合と同様にクラスター対策の強化などに加え、飲食の場面を含めたマスク着用や、飲食店などの業種別ガイドラインの徹底を求めた。
人口10万人あたりの全国の新規感染者数は、18日までの1週間で8.95人。2週間前の3.96人から2倍を超えた。特に北海道が突出し、2週間前の約3倍の29.12人だった。大阪府は約2倍の18.86人、東京都は約2倍の16.85人。沖縄県は約1.4倍の16.38人、愛知県は約2倍の11.75人、神奈川県は約2.4倍の10.59人だった。
この日の「専門家組織」の評価では、北海道では「札幌市を中心に病床が逼迫しており、厳しい状況」とされ、「接触機会の削減・行動制限などの強い対策が求められる状況」と評価。 東京都では「社会経済活動が活発化し、若年層を中心に感染拡大のリスクを高める機会が増加」している可能性を指摘。東京都、大阪府、愛知県も北海道と同じ状態に「近づきつつある」とした。
●東京都、警戒レベル最大へ 2カ月ぶり
534人の感染が確認された東京都は19日、専門家を交えた「モニタリング会議」を開き、都内の感染状況について「急速な感染拡大の局面を迎えた」と分析し、警戒レベルを9月10日以来、2カ月ぶりに4段階で最も深刻な「感染が拡大している」(レベル4)に引き上げた。医療提供体制のレベルは、4段階で2番目に深刻な「体制強化が必要」を維持した。
7月15日以降に「レベル4」を維持してきた警戒レベルは、9月10日に「レベル3」に引き下げた。都内の感染者数は高止まりしつつも、10月までは「小康状態」にあった。だが11月に入って増加傾向が強まり、 11月11日に300人台となる317人となっていた。
小池知事は19日夕、緊急会見を開き、感染者に65歳以上の高齢者が増えたとして、「高齢者をはじめ、糖尿病などの基礎疾患がある人は会食をできるだけ避けていただきたい」と要請。年末年始で会食の機会が増えるとして、会食時の対策の徹底を呼びかけた。一方で、夏の「第2波」の際に都民に求めた都外への不要不急の移動自粛や、酒類を提供する飲食店やカラオケ店の営業時間短縮といった要請は求めなかった。
●重症者、第2波超え
「今後、重症化する人が増加する。救急医療の受け入れや手術を抑制しないといけない状況になると想定される」。19日の「専門家組織」の会合後、脇田座長(国立感染症研究所長)は会見で、今の感染状況に危機感を示した。感染拡大の要因には、①基本的な感染予防対策がしっかり行われていない、②人の移動の増加、③気温の低下の三つを挙げた。
●首相、「静かなマスク会食」求める
菅首相は19日午前、18日に新規感染者数が2200人を超え、過去最多となったことを受け、首相官邸で記者団の取材に応じた。「最大限の警戒状況にある」とした上で、担当の西村経済再生相と田村厚生労働相に、19日の厚労省の「専門家組織」と20日の政府の「分科会」の議論を踏まえ、更なる対策を打つよう指示したという。
首相は国民に対し、マスクの着用や3密の回避など基本的な感染防止対策の徹底を呼びかけた。専門家が感染リスクが高いと指摘している点を挙げ、飲食時でも会話する時はマスクをつける「静かなマスク会食」を求め、「私も今日から徹底する」と語った。加藤官房長官は19日午前の記者会見で「静かなマスク会食」について問われ、「分科会」が提言した「感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫」に基づくものと説明。
「静かなマスク会食」 出典:厚生省ホームページ
●会食「小」のルール 小池知事呼びかけ
小池東京都知事は19日夕の緊急記者会見で、「人と人との距離を離して正面に座らないなど、飛沫を避けるための工夫をしてほしい」と強く呼びかけた。留意点についてパネルを示しながら、「小人数」「小一時間程度」「小声」「小皿に(分ける)」「小まめなマスク、換気、消毒」を挙げ、「5つの小(こ)」として徹底を呼びかけた。移動の自粛や飲食店への営業短縮の要請には踏み込まなかった。
会食事の注意事項 出典:東京都防災ホームページ
小池知事が会見で強調したのは、重症化リスクの高い65歳以上の高齢者の感染拡大への危機感。会見前に開かれた都の「モニタリング会議」では「高齢者への感染の機会をあらゆる場面で減らすことが必要」との認識が示された。感染経路別では、高齢者の感染増加の要因とされる家庭内の割合が42.1%と最多だったことが報告され、「職場、施設や飲食店で感染した人が、家庭内にウイルスを持ち込み、同居する家族に感染させた事例が見られる」と注意を呼びかけた。
●新規感染者2387人、3大都市の感染広がり顕著
新型コロナの国内の感染者は19日で2387人が新たに確認、2日連続で過去最多を更新。東京、大阪、北海道、愛知、兵庫、千葉、和歌山、山口の8都道府県で過去最多を更新。3大都市圏などで感染の広がりが目立つが、各地でも感染者が急増している。死者は北海道の7人など計21人が確認された。
東京都の感染者は534人で、2日連続で過去最多を更新。年代別にみると、20代の130人(24%)が最多で、65歳以上の高齢者は69人(13%)。大阪府は、338人の感染が確認され、初めて300人を超え。愛知県でも219人の感染が判明、初めての200人超え。大村知事が記者会見し、県独自の警戒レベルを4段階のうち上から2番目の「厳重警戒(オレンジゾーン)」に引き上げた。
北海道では267人が確認された。このうち札幌市が197人。札幌出入国在留管理局で、20~50代の職員計13人が感染。神奈川県では205人の感染が確認され、2日連続で200人を超えた。
【11月20日】
●ワクチン使用許可「申請」 ファイザー発表 米、来月にも接種か
新型コロナワクチンを共同開発している米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックは20日、米食品医薬品局(FDA)にワクチンの緊急時の使用許可を申請すると発表した。従来と異なる新しいタイプのワクチンで、高い効果が報告されているが、長期的な効果や安全性は未知数な面もある。
●消費者物価、下げ幅9年7カ月ぶり
総務省が20日発表した10月の消費者物価指数(季節調整値)で、生鮮食品を除く指数は前年同月より0.7%低い101.3だった。下げ幅は、東日本大震災のあった2011年3月に0.7%下落して以来、9年7カ月ぶりの大きさ。「GoToトラベル」による宿泊料の割引と、新型コロナ感染拡大を受けた電気代などエネルギー価格の落ち込みが大きい。前年割れは3カ月連続。10月は消費増税から1年が過ぎ、増税による物価上昇分の影響がなくなったことも下げ幅を広げた。
●マスク会食、店も客も困惑 専門家は異論
「GoToイート」を進めてきた国や自治体は、会食時のマスク着用や人数制限を求める。菅首相は「静かなマスク会食」を求め、小池都知事も「5つの小(こ)」を呼びかけ、会食時の対策の徹底を訴えている。飲食店や利用客からは戸惑いの声が上がっている。国も都も現時点では、飲食店の営業時間の短縮までは要請してない。
「静かなマスク会食」に、沖縄県立病院の感染症内科副部長の高山医師は19日、「いや、総理ちがいます。急速に感染が広がっている地域では、一緒に食事をするのは家族など固定された親しい人のみとし、不特定の人との会食については控えましょう。飲食時のマスク着用など(対策としては)ザルですよ」とツイッターなどに投稿した。
高山氏は「感染対策はシンプルでなければ、効果は得られない」と言う。ほかの専門家の間でも「マスク会食」の感染防止効果への疑問や、「GoToイート」を続ければ、感染が拡大すると懸念する声が上がっている。
●分科会、GoTo見直し提言 感染拡大地域で
政府の「分科会」は20日、一部の都道府県が感染急増段階の「ステージ3」に入りつつあるとし、これらの地域で「GoToトラベル」の運用見直しを求める提言をまとめた。西村経済再生相は「分科会」後の会見で、政府が21日に開く対策本部で早急に対応を協議すると言う。
提言では、個人の努力に頼るだけでなく、「より強い対応」を期待したいと言及。3週間程度の期間限定で、感染拡大している自治体には、酒類を提供する飲食店に夜間の営業時間の短縮などを要請してもらい、これらの自治体への財政支援を国に求めた。「トラベル」の運用見直しについては「政府の英断を心からお願い申し上げる」と述べ、政府に決断を迫った。
「分科会」は、「GoToトラベル」や「GoToイート」も「ステージ2」以下で実施するよう、9月に提言していた。これまでは、どの都道府県も「ステージ2」以下とみなされてきた。11月に入って北海道や東京都などでは、「ステージ3」の6つの指標のうち多くで上回るようになり、判断は知事に委ねられ、「分科会」のステージに即した対策の議論は進んでいなかった。
「分科会」がこの日まとめた提言では、いくつかの都道府県では一部地域で「ステージ3」相当の強い対策が必要な状況と指摘。「トラベル」の一部区域の除外を含めて政府に早急な見直しを求め、「イート」についても感染状況を踏まえ、知事が食事券発行の一時停止などを検討するよう国に要請した。「分科会後」の会見で尾身会長は「我々専門家の判断」と断った上で、「ステージ3」相当は北海道、東京都、大阪府、愛知県の地域を例示した。
●分科会、医療崩壊に危機感
政府は経済活動に水を差すとして、「GoTo」キャンペーンの見直しに及び腰。政府の「分科会」は、医療と経済を両立することを目的としており、双方の専門家ら18人で構成。これまで経済に配慮した発信を続けてきた「分科会」が、経済のブレーキにつながる提言に踏み込んだ背景には、医療崩壊の危機がある。医療関係者らの「このままの状態を維持することでは感染拡大を抑えられないどころか、医療の提供が継続できなくなるという大きな節目に来ている」という 危機感を背景に、政府に決断を迫った。
20日、緊急記者会見を開いた東京都医師会の尾崎会長は、人の移動が活発になったことが感染拡大につながっているとの考えを示し、「人の流れを止めてもらうことを真剣にお願いしている。ぜひ耳を傾けてほしい」と「GoToトラベル」の中断を求めた。
●「トラベル」に野党攻勢 政府の対応・責任 追求
「第3波」の感染拡大を受けて、野党は菅政権の目玉政策「GoToトラベル」事業への攻勢を強めている。20日の参院本会議で、立憲民主党議員は「この感染急拡大期で何が一番重要か。トラベル事業の取り扱いを議論すべきだ」と主張。共産党議員も「爆発的な感染は阻止するという発言と、人の移動を促進するキャンペーン継続は全く矛盾している」と攻めた。これに対し、菅首相は「感染対策と経済の回復を両立させていく」と同じ回答を繰り返した。
立憲の枝野代表はこの日、記者団に「観光関連業者を守るためではなくて、メンツの問題」と、首相のこだわりが災いしているとの見方を示した。感染急増の地域を対象に「一旦停止して、キャンセルへ補填を行う方が苦境を支える上で意味がある」と訴えた。さらに西村経済再生相が感染者数について「神のみぞ知る」と発言したことにも、「説明のしようがない状況に政府が陥っている」と批判した。
●感染2400人超 また最多更新
新型コロナの国内の感染者は20日で2426人が新たに確認され、3日連続で過去最多更新。2千人を超えたのも3日連続。大阪、北海道、山口、岩手、大分の5道府県で過去最多となった。死者は新たに14人が確認された。北海道では304人の感染が確認され、初めて300人を超えた。東京都内では522人の感染が確認され、2日連続で500人を超えた。大阪府は370人の感染が確認され、2日連続で過去最多を更新した。
【11月21日】
●G20首脳会議開幕
主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が21日、サウジアラビアを議長国として開幕した。新型コロナ感染拡大や気候変動への対策を主な議題に、オンライン方式で22日まで開かれる。トランプ米大統領も参加する中、主要国や国際機関が足並みをそろえてビジョンを示せるかが焦点。新型コロナ対策では、ワクチンを世界的にどう分配するかも協議される見通し。議長のサルマン国王は開会のスピーチで「すべての人がワクチンや治療を受けられるよう、公平に利用できる状況を整えないといけない」と語った。
サミットに先立ち、国連のグテーレス事務総長は、途上国にも治療薬やワクチンが行き渡るよう、参加国に280億ドル(約2兆9千億円)の資金拠出を要望。WHOや欧州連合(EU)も国際的な枠組みへの資金提供を呼びかけている。ワクチンを国際共同購入する「COVAX(コバックス)ファシリティー」はその一環で、日本を含め186カ国が参加している。
●ワクチン、米は「自国第一」 ロシア、中国は「ワクチン外交」
トランプ政権はワクチン開発に120億ドル(約1兆2450億円)を投じるが、接種は自国民が最優先。WHOから脱退を表明しており、ここでも「米国第一」の姿勢。国際協調を重視するバイデン次期大統領は、COVAXへの参加ははっきりしていない。米国と対立するロシアや中国には、ワクチンを外交に利用しようとする思惑もある。
ロシアは8月に世界で初めて新型コロナワクチン「スプートニクV」を承認したが、COVAXには不参加。10月に2つ目の国産ワクチンを承認したが、国際的に求められている最終段階の臨床試験を後回しにしており、有効性や安全性が疑問視されている。プーチン大統領はG20サミットで、「ロシアは必要な国に提供する用意がある」と表明した。ロシアは、世界50カ国以上から提供の問い合わせを受け、メキシコやブラジル、インドなどに計数億回分を提供することで合意したと公表している。
中国の習国家主席はG20サミットで「ワクチンの研究開発や生産、分配などについて各国との協力を強化したい」と演説した。5種類のワクチンが最終的な臨床試験に入っておりCOVAXへの参加も表明済み。しかし年末までのワクチン生産量見通しは、6億1千万回分。14億人を抱える自国分にも満たせず、分配には優先順位がつく。次に、中国ワクチンの臨床試験を実施しているアラブ首長国連邦やブラジル、パキスタンなどの「協力国」が優先。中国が重視する国際的枠組みの新興5カ国や上海協力機構なども、優先的に考慮される方針。
サルマン・ビン・アブドゥルアズィーズ・サウジアラビア国王 ウラジーミル・プーチン・ロシア連邦大統領 習近平・中華人民共和国主席 出典:ウィキメディア・コモンズ
●GoTo一時停止、首相表明 感染拡大地域への旅行予約、食事券発行停止も
菅首相は21日、新型コロナ感染症が広がっている地域で「GoToキャンペーン」の運用を一部見直すと発表した。「トラベル」では、そうした地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止する。「イート」も都道府県知事に対し、プレミアム付き食事券の新規発行の一時停止などを検討するよう求めた。
「GoTo」は、感染対策と経済の両立をめざす首相の肝いり事業。政府はこれまで、キャンペーン自体が感染の発生源とはみていない。日本医師会が18日に「トラベルが感染者急増のきっかけ」と指摘しても取り合わない。政府「分科会」は20日、いくつかの都道府県が「ステージ3」に入りつつあると指摘。「トラベルの早急な見直し」を求めていた。「トラベル」は7月下旬の開始以降、のべ4千万人以上が使い、感染が判明した利用者は176人だという。「イート」は10月にポイント付与事業が始まった。のべ5千万人が利用し、近く付与は終わる。プレミアム付き食事券も順次販売され、12月には全国各地で利用が本格化する見通し。
●全国2588人感染、4日連続最多 7都道府県で最多更新 行楽地にぎわう
新型コロナ国内感染者は21日で、新たに2596人が確認された。4日連続で過去最多を記録。東京や大阪、埼玉、兵庫、千葉、茨城、愛媛の7都府県で過去最多を更新した。大阪で5人、北海道で3人など12人が亡くなった。
東京都は新規感染者を539人確認。500人を超えたのは3日連続。20代が139人(26%)と一番多く、65歳以上の高齢者は60人(11%)だった。人工呼吸器か体外式膜型人工肺(ECMO、エクモ)を使用とする都基準の重症者数は前日から3人増えて40人。大阪府では、415人の感染者を確認した。20日の感染者370人を上回り、3日連続で過去最多を更新。400人を超えるのは初めて。
埼玉県では、新たな感染者数が173人となり、これまで最多だった18日の126人を大きく上回って過去最多。千葉県でも新たな感染者が109人で、19日の106人を上回って過去最多を更新。直近1週間の新規感染者の1日平均が80人を超え、急増傾向にある。153人を確認した兵庫県では、5日連続で100人を超え。これまで最多だった19日の132人を上回った。
北海道と札幌市などは、感染者が新たに234人確認されたと発表した。道内全体の感染者数は過去最多となった前日の304人は下回ったが、4日連続で200人を超え、高止まりが続いている。茨城県66人、愛媛県20人も過去最多を更新した。
【11月22日】
●「ロックダウンで困窮」 欧州に貧困の波
新型コロナで2度目のロックダウンに見舞われた欧州の国々で、貧困の波が静かに押し寄せている。冷え込んだ経済活動が、非正規雇用で働いていた人々の生活を直撃したためだ。政府の経済支援が切れれば、失業者がさらに増える懸念もある。
●コロナワクチン「公平に」 G20首脳宣言 多国間主義を強調
主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が22日、閉幕した。採択された首脳宣言では、新型コロナの診断や治療、ワクチン接種を「すべての人々が手頃な費用で公平にアクセスできるよう努力を惜しまない」としたほか、地球温暖化対策などでも「多国間主義」の重要性を改めて訴えた。
首脳宣言では、ワクチンの国際共同購入する仕組み「COVAXファシリティー」の利用を「完全に支持する」と表明。COVAXは、米国やロシアが参加していない中で、「多国間協調がこれまでになく必要とされているとの信念のもとに結束する」と踏み込んだ。コロナ禍で財政破綻しかねない途上国を支援するため、国同士の借金返済を猶予する措置を来年6月まで延長することも確認した。
●3連休初日の人出 箱根や嵐山は増加、感染増の札幌は減少
3連休初日となった21日の人出が、新型コロナ感染拡大前の1、2月と比べ、箱根湯本で倍増、京都の嵐山で約4倍になっていたことが、スマートフォンの人流データの分析から分かった。この2地点は、昨年同月と比べても1~4割多かった。一方、感染が急拡大している北海道など、多くの観光地や主要駅では人出は少なくなっていた。
この連休は、日本医師会長が「我慢の3連休に」と呼びかけ、政府が「GoToキャンペーン」の運用一部見直しを公表した。宿泊施設のキャンセルが出るなど多くの観光地や駅では人出が減ったが、紅葉シーズンとあって一部の観光地に多くの人が詰めかけた。一方、感染者が急増している北海道は11月に入ってから人出が大きく減っており、札幌駅で38.6%、すすきの駅で50.7%、新千歳空港駅も51.6%減った。
●国内死者2001人 東京479人、大阪277人
新型コロナによる日本の死者が22日、都道府県や国が発表する集計(クルーズ船を含む)で合計2001人と2千人を超えた。東京都479人、大阪府277人、神奈川県185人、北海道149人、埼玉県132人の順に多く、愛知県と福岡県も100人を超えている。国内で初めて死者が確認されたのは2月13日、1千人に達したのは7月20日。死者の増加ペースが速まっている。11月に入り、1日の死者数が10人以上となる日が目立っていた。
年代別の死者は、70代以上の高齢者が大半を占める。厚生労働省が今月18日時点でまとめた死者1857人を見ると、80代以上が59%、70代が26%で計85%。一方、致死率(陽性者のうちの死亡割合)は、死者1千人に迫った7月15日時点より抑えられている。80代以上は14.8%で(-13.5%)、70代は6.2%(-8.0%)。全体の致死率も1.5%で、2.9%低下した。
●国内感染者2168人 重症者331人、過去最多
22日に新たに確認された1日の感染者数は、計2168人。2千人を超えたのは5日連続で、日曜日では、これまでで最も多かった。都道府県別では、大阪府が490人で、4日連続で過去最多を記録。東京都は391人、北海道は245人。
11月に入って重症者は増え続け、16日には272人と「第2波」ピークの259人(8月23日)を超えた。厚生労働省が23日に発表したデータによると、22日時点の全国の入院者数は1万8019人で、そのうちの重症者は前日より8人増えて331人となった。「緊急事態宣言」が出ていた「第1波」ピークの328人(4月30日)を超え、過去最多となった。11月1日時点で163人だったのが、3週間でほぼ倍になった。
無症状や軽症者の若者が多かった「第2波」と比べ、現在の「第3波」は、重症者や高齢の感染者が増えている。重症患者の受け入れには限りがあり、このまま増え続けると救急医療の受け入れや手術の抑制など他の医療への影響が懸念される。11月の死者数も21日時点で208人となり、10月の198人をすでに超えている。
【11月23日】
●英アストラゼネカ・ワクチン 「有効性70%」の暫定結果
新型コロナワクチンを開発している英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大は23日、「有効性は70%」とする最終の臨床試験(治験)の暫定結果を発表した。データは英国、欧州、ブラジルの規制当局に提出し、早期の承認を目指すという。
ワクチンは2~8℃という通常の冷蔵施設の温度で保管できるメリットがある。開発に成功した場合、日本政府は1億2千万回分の供給を受けることで基本合意している。今回の治験には英国、ブラジル、南アフリカで2万4千人以上が参加している。
アストラゼネカのロゴ 出典:アストラゼネカ株式会社(日本法人)のホームページ
●豪、下水調査 コロナ検出なら住民検査
下水から検出された新型コロナを感染対策につなげる取り組みがオーストラリアで活発になっている。各国で状況が深刻化するなかで、感染の抑制に成功している。さらに、感染の芽から摘んでいこうとする「攻め」の対応と言える。豪州は3月に外国人の入国を禁止、外出規制も敷いたことで感染の抑制に成功した。7月から10月にかけてメルボルンで「第2波」が起きたが、11月には、国内全体で新たな市中感染例がゼロの日もあるほどに抑え込んでいる。
ニューサウスウェールズ州の水道公社の水質検査施設には毎週、汚水の瓶が約100本運ばれてくる。州内各地の下水道施設から採取されたもので、PCR検査の機器にかけてウイルスがあるかどうか分析、48時間以内に結果がわかり、州保健局に送られる。保健局が、ウイルスが検出された施設の周辺で「市中感染が起きているかもしれない」と判断すると、住民に検査を呼びかける。
●観光地、回復の矢先 札幌、一時停止へ
新型コロナ感染急拡大を受け、北海道の鈴木知事は23日、札幌市について「GoToトラベル」を一時停止する方針を示した。道内からは客が戻りつつあった観光への影響を懸念する声も出た一方で、理解を示す声も。国から判断を委ねられた形の都道府県知事らは「国が方針を示して」と不満をにじませた。
●GoTo除外の判断「国も協力を」 知事会、緊急提言
「トラベル」除外対象になりそうな他の大都市圏の知事らは、国が明確な基準を示していないことに戸惑いをみせる。東京都の小池知事は23日午後、報道陣の取材に応じ「(運用停止の)詳細がまだよく分かっておらず、国に確認をしているところ」と述べた。24日午後に菅首相と会談し、「トラベル」対応について協議する見通し。愛知県の大村知事は23日、報道陣に「国の事業なので、国に方針を示してもらわないと判断しかねる」と注文をつけた。
全国知事会は23日、「GoToトラベル」について、対象地域からの除外を判断する際に国に協力を求める緊急提言をまとめた。除外対象を都道府県単位ではなく地域限定とする選択肢も求め、国に具体的な仕組みを早急にまとめるよう促した。トラベルの対象地域からの除外は、新型コロナ感染状況が4段階で上から2番目となる「ステージ3」が目安とされ、ステージの認定について西村経済再生相は「まずは知事に判断していただきたい」と述べていた。
知事会のウェブ会議には30府県の知事が出席し、判断を知事に委ねる国の姿勢に異論が相次いだ。伊原・岡山県知事は「県でバラバラに判断するのではなく、国で総合的に判断することが適当」と強調。福田・栃木県知事もトラベルの再開時期などについて「国がリーダーシップを発揮し、丸投げしないように」と釘を刺した。また、井戸・兵庫県知事は、「感染者が大量発生している大阪、東京を除外する必要がある」との指摘も出た。「GoToイート」についても、緊急提言では「国として早急に具体的な取り扱いを明示すること」と求めた。
【11月24日】
●NYダウ、初の3万ドル 政権移行やワクチンへの期待追い風
24日の米ニューヨーク株式市場で、ダウ工業株価平均が大きく続伸、終値は前日比455ドル高い3万0046ドル。史上初めて3万ドルの大台を突破。新型コロナ感染は米国内外で深刻化しているものの、米政権移行の手続きが本格化したことや、ワクチンの早期実用化への期待が株価を歴史に残る水準へと押し上げている。11月に入ってからは3500ドル超も上がった。上昇率は13%を超え、月間では1987年以来の急騰。
米国では新規感染者が1日約17万人と過去最悪のペースで増え続け、連日1千人規模の死者が出ている。新年にかけて経済の急減速を懸念する見方も強まる。市場の関心は半年以上先の回復見通しに集中していると、期待先行のあやうさもある。
●仏の都市封鎖 段階的解除へ
新型コロナの「第2波」に見舞われ、再びロックダウンに踏み切った欧州各国が規制期間の延長を余儀なくされている。経済と感染防止の両立を目指し、春に比べて規制を緩やかにした一方、封じ込めは遅れている。各国ともクリスマス時期での本格緩和を見込むが、懸念もある。
フランスのマクロン大統領は24日、10月30日から全土の外出禁止令を12月半ばにかけて段階的に解除する方針を示した。ただし、現在2万人前後の1日の感染者数を5千人まで下げることなどが条件。大統領は、今月16日に4900人だった集中治療病床の患者が4300人まで下がったとして、「第2波のピークは過ぎた」とした。一方で、連日500人前後が死亡している上、外出禁止解除の目安と位置づけた1日の感染者5千人という目標には「まだ数週間かかる」として、12月1日迄としていたロックダウンを続ける。
ワクチンについては、欧州連合(EU)が購入し、人口数に応じて加盟国に配分する分を高齢者に優先的に割り当てる。年末にも接種が始まる見通しという。
●クリスマス 3世帯まで集まってOK
英国政府は24日、新型コロナ感染抑止策をクリスマス期間中は緩め、最大3世帯で集まって良いとするルールを発表した。重要な祝日を家族や友人と祝えるように配慮した措置。12月23~27日の期間中は、個人の家や礼拝所、屋外の公共スペースで集まることが許され、国内の移動制限も解除される。英国では4つの自治政府が独自の感染抑止策を設けており、ロンドンがあるイングランドは現在、商店閉鎖や外出制限を伴う一律のロックダウン中。
●札幌・大阪、GoTo除外 来月15日まで
北海道と大阪府の知事が24日、「GoTo」事業から札幌市と大阪市を除くよう、政府に要請。これを受け、政府は関係閣僚で協議して正式に決めた。期間は12月15日までの3週間。両市への旅行で、今月24日~12月15日出発分は割引販売を停止し、予約済みの旅行も12月2~15日出発分は割引の対象外にする。利用客は12月3日までは無料でキャンセルができる。ほかの自治体からも要請があれば、除外対象がさらに増える可能性もある。
赤羽国交相は24日の記者会見で、トラベル事業が感染拡大の主因だという証拠はないと強調。今回の対応は、あくまで感染拡大地域の医療負担に配慮した「予防的な措置」と説明した。このため、両市の住民が市外に旅行する場合は、これまで通り割引の対象とする。ただ、感染拡大地域からの旅行に制限をかけないことには批判があり、全国知事会長の徳島県の飯泉知事は24日、西村経済再生相に対し、感染拡大地域を出発する旅行も除外するよう求めた。
一方、政府は同日、飲食店支援策「GoToイート」についても、感染拡大地域ではプレミアム付き食事券の販売の一時停止やポイント利用の自粛呼びかけを検討するよう、各都道府県に改めて要請した。神奈川県は25日から食事券の販売をいったん停止。埼玉県も24日、食事券の販売停止や利用制限を近く実施すると決めた。「GoToイベント」や「GoTo商店街」についても、梶山経済産業相は24日の会見で、開催地の自治体から要請があれば、一時停止を検討する考えを示した。
●1週間で感染者1万5千人、前週の1.5倍に 北海道・東京・大阪で半数を占める
厚生労働省の「専門家組織」の会合が24日夜に開かれ、全国の最新の感染状況を分析した。23日までの1週間の感染者数は全国で1万4919人で、前週から1.46倍に増えた。北海道、東京、大阪の3道都府で半数を占めたものの、すべての都道府県で感染者が確認されており、全国的な広がりが懸念される。
会合の資料によると、実効再生産数(感染者1人が何人に感染させるか)は、全国では5日時点で1.30。北海道は1.24、東北1.12、首都圏1.27、中京圏1.35、関西圏1.41、九州北部1.29、沖縄1.04だった。感染が広がる中、検査の陽性率も上がっている。15日までの1週間でみると、全国では5.5%で前週より1.2ポイント増。北海道では17.4%に上り、兵庫県9.9%、大阪府9.7%、愛知県9.4%で続いた。
●GoTo除外、首相と会談の小池氏 一時停止に慎重
新型コロナ感染が急拡大している東京都で、「GoToトラベル」を大阪市や札幌市のように止めるのか否か。小池都知事は24日、菅首相らと相次いで会談した。都は両市と比べて医療体制が逼迫していないことなどから、現時点での停止には慎重。小池知事は24日夜、報道陣に「トラベル」について「あす都庁内で議論して考えていきたい」と語った。
「トラベル」の一時停止を巡り、政府は「感染状況などを把握している都道府県知事の意向を尊重するのが基本」としている。一方、小池知事は「国に判断する責任がある」などと主張してきた。「トラベル」除外は、感染状況が「ステージ3」を目安とされる。小池知事は24日午後、西村経済再生相とも会談。その際、政府側は現時点で「ステージ3」には該当しないとの「お墨付き」を得たこともあり、都庁内では現時点で除外しなくてもいいのではないかとの声が出ている。
●「国の事業、基準示して」要望も
国の事業でありながら、継続の指標となる警戒ステージの判断は都道府県知事に委ねられているのが「GoToトラベル」。その停止などを誰が主体的に判断すべきなのか。知事の間にも温度差がある。23日に全国で初めて中断を表明した大阪府の吉村知事は、地域の感染状況を把握する知事の権限拡大を訴えてきた。24日も「国が最終判断すべきだ」としつつ、「『知りません』というのは無責任で、意思表示はすべきだ」と強調した。
「判断するのは現場を預かる知事」としている愛知県の大村知事は24日の会見で「国の事業として基準は示してもらわないと対応できない」と念押しした。国が業界団体を通じて事業を直接展開しているため、県はほとんど関わっていないから。北海道の鈴木知事も「最終的に国が判断する」というのが基本姿勢。だが感染急拡大で「医療崩壊」が危ぶまれ、先んじて札幌除外の方針を示した。23日には「知事か国かと言っているうちにどんどん判断が遅くなる」と話し、24日の会議でも「国の責任で事業者に万全の支援を」「混乱を招かないように国として丁寧な説明を」と釘を刺した。
●東京の重症者最多 宣言解除後
新型コロナの国内感染者は24日で、新たに1228人が確認された。2日連続で2千人を下回った。亡くなったのは全国で19人で、秋田県で初めて死者1人が確認された。東京都では新たに186人の感染を確認。8日ぶりに200人を下回った。一方、都基準の重症者数は、前日より10人増えて51人となり、「緊急事態宣言」解除後では最多。大阪府では210人の感染を確認し、重症病床の使用率が50%に達したことも明らかにした。北海道では216人が確認され、7日連続で200人を上回った。
【11月25日】
●バイデン氏「敵はウイルス」 感謝祭休暇の自粛協力求める
バイデン次期米大統領は25日、感謝祭の休暇を前に地元のデラウェア州で演説。新型コロナによる国内の死者が26万人を超えたことに触れ、「我々はお互いとではなく、ウイルスと闘っている」と述べた。自らも今年の感謝祭は親族で集まらず、「自宅で、妻と娘夫婦と過ごす」と語った。
米国では、11月末の感謝祭は親族らで集まることが慣例、例年は大規模な移動が起きる。しかし、現在は新型コロナの感染が再び急増し、疾病対策センター(CDC)は感染拡大を防ぐため、旅行の自粛を呼びかけている。
バイデン氏はこのほか、国民一人ひとりがマスク着用や多人数での集まりを自粛するなどの「愛国的義務」を果たすことが重要として協力を呼びかけた。また、大統領への就任初日から検査数の増加や、経済活動や学校再開に向けたガイドラインの明確化などの具体策を始めると表明した。
●ドイツ、新型コロナ規制を延長
ドイツ政府は25日、2日から月末までの予定で導入していた規制を約3週間、延長することを決めたうえで、公共の場で集まれる人数を「5人まで(14歳未満は除く)」と厳しくした。新規感染者数が高止まりしているため。ドイツは、商店や学校は開けつつ、飲食店や娯楽施設を閉じたり、公共の場で集まれる人数を10人までと制限したりしていた。
一方、クリスマスに遠方の家族や友人らと過ごす貴重な機会に配慮し、12月23日~元日は一度に集まれる人数を「10人まで(14歳未満は除く)」とした。ただ、大勢が集まって年越しを花火で祝う恒例の楽しみは自粛するよう求めた。記者会見したメルケル首相は他人との不必要な接触や旅行などを控えるよう訴えた。
●東京都、20日間の時短要請 28日から 飲食・カラオケ店に
新型コロナ感染防止策として、東京都は25日、酒類を提供する飲食店とカラオケ店に対し、営業時間の短縮を要請すると発表した。28日~12月17日の20日間、島嶼部以外の都内全域を対象に午後10時までに店を閉めるよう求める。重症者が急増する都内の感染状況を受け、春の「第1波」、夏の「第2波」に続き、再び経済活動を制限する措置に踏み切った。
小池知事は25日夕に会見し、「医療崩壊を何としても回避しなければならない。感染対策、短期集中の覚悟で、あらゆる対策を講じていきたい」と述べた。20日間の要請に応じた中小事業者には一律40万円の協力金を支給し、予算規模は200億円を見込む。小池知事は、「できるだけ不要不急の外出を控えていただきたい」とも呼びかけた。
国の飲食店支援策「GoToイート」については、27日からの3週間、食事券の新規発行を一時停止し、発行済みの食事券やポイント利用を控える呼びかけをするよう国に求める。「GoToトラベル」に合わせて都民が都内旅行する際に、都が独自に上乗せしている補助事業は新規販売を停止する。一方で、小池知事は感染拡大地域の観光は目的地に加えて、出発地としても止める必要があるとしたうえで、「国が判断を行うのが筋ではないか」と述べ、都としてトラベル除外を求めない理由を説明した。
●分科会「ステージ3」相当は今後3週間、往来自粛を 医療崩壊に危機感
政府の「分科会」は25日の会合で、政府や都道府県に対応を迫る提言をまとめた。先週20日、政府に「GoToトラベル」の見直しなどを求めた「分科会」が再び会合を開いたのは、「一部の地域では感染拡大のスピードが急激、クラスターが広範に多発、医療提供体制が既に厳しい状況になっている」という認識から。提言では「このままの状態が続けば、通常の医療で助けられる命を助けられなくなる事態に陥りかねない」と強い危機感をあらわにした。
地域の感染状況が、「分科会」基準で上から2番目の「ステージ3」(感染急増)相当の対策が必要な地域への往来を、今後3週間なるべく控えるように求める。また酒類を提供する飲食店の営業時間短縮も早急に検討するべきだとしている。「GoToトラベル」事業で感染が拡大している地域からの出発分も一時停止するよう検討することも求めた。
春の「第1波」収束後、政府は「感染対策と経済の両立」を掲げてイベントの人数制限の緩和や「GoTo」事業を進めてきた。だがこうした取り組みは、人同士の接触機会を増やし、感染拡大のリスクが大きい。このため「分科会」は8月、感染状況を4つのステージに分け、危険水準に達すればブレーキをかける仕組みを提言した。「ステージ3」が経済活動を縛る強い対策に切り替える節目。「ステージ4」になれば、「緊急事態宣言」の検討が求められる。
西村経済再生相は記者会見で、今後3週間で感染増加を抑えられなければ「『緊急事態宣言』が視野に入ってくる」と危機感を示した。西村氏が会見で示したデータによると、23日時点で愛知県、大阪府は「ステージ3」の6つの指標のすべて、東京都、兵庫県、沖縄県は5つ、北海道は4つを満たしている。ただ、ステージを判断するのは都道府県の知事。この間、政府と知事の間で責任の押し付け合いともみえる状況も起き、「分科会」のメンバーからは、早急なステージの判断を求める声が上がっていた。
●国内重症者、過去最多376人
新型コロナ国内感染者は25日で新たに1945人が確認された。厚生労働省によると、重症者が前日から31人増えて376人となり、過去最多を更新した。新たな感染者は3日連続で2千人を下回ったが、11月上旬から1千人を超える日が相次いでいる。死者は8都道府県で21人だった。感染者が最も多かったのは東京都の401人。都基準の重症者は前日より3人増の54人で、「緊急事態宣言」解除後の最多を更新した。
【11月26日】
●韓国政府呼びかけ 食事・会合、大学入試まで我慢
新型コロナ感染が再び急増する韓国で、政府が26日、「食事の約束、忘年会はすべてキャンセルして」と国民に異例の呼びかけた。来月3日に日本の大学入学共通テストにあたる大学修学能力試験が予定され、約49万人の受験生の挑戦が無事に終わるように全国民で支えたいとの思い。教育相は記者会見で、「国民全員が受験生を持つ親の気持ちになり、親睦的な集まりはやめるようにお願いする」と訴えた。
韓国では、先週から首都圏を中心に新型コロナの感染が急拡大し、26日には1日の新規感染者数が3月以来となる500人を超えた。韓国政府は24日から、一部のカラオケなどの遊興施設の営業を事実上禁止。食堂も午後9時までに制限した。繁華街は閑散とし、「政府の対応は厳しすぎる。このままでは店をやっていけない」との声も聞かれる。
●新型コロナ感染者 世界6000万人超す
全世界の新型コロナ感染者数は26日までに6千万人を超えた。米ジョンズ・ホプキンス大の集計で明らかになった。死者は141万人を超えている。26日午前11時現在、世界の累計感染者数は約6025万人。6月末に1千万人を超えた後、増加のペースは速まっている。感染者数が最も多いのは米国で1276万人(死者26万人)。次いでインドが922万人(13万人)、ブラジルで611万人(17万人)となっている。
●ひとり親世帯 再び給付金
新型コロナ感染再拡大を受け、政府は生活が苦しいひとり親世帯を支援する「臨時特別給付金」を再度、支給する方向で調整に入った。ひとり親世帯は2016年の推計で141万9千世帯。子育てと仕事を両立するためにパートなどの非正規の仕事に就く親が多く、コロナ禍で仕事を失う例も少なくないとされる。
一般社団法人「ひとり親支援協会」は今月、給付金の再支給を厚労省に要請。立憲民主など野党4党は16日に再支給する法案を国会に提出し、与党・公明党も24日、再支援を求める提言をした。自民党は26日、再支給を求める緊急提言を菅首相に提出し、首相は2度目の支給に応じる意向を示した。予備費の余り7.2兆円の一部の活用を検討する。再支給は年内をめざし、金額や対象者は前回同様とする案を厚生労働・財務両省で詰める。
●「イベント」札幌を一時除外
経済産業省は26日、コンサートなどのチケット販売代金の一部を割り引く需要喚起策「GoToイベント」の対象地域から札幌市を一時的に外すと発表した。28日以降に販売するチケットのうち、12月15日まで市内で開かれるイベントを割引の対象外にする。「GoTo商店街」事業についても、札幌市内の商店街を対象から外す。期間は、11月26日から12月15日まで。
●タクシー窓開け 換気効果「限定的」 スパコン富岳で計算
理化学研究所などのチームは26日、新型コロナ感染症対策の研究で、飛沫がタクシー内でどう広がるか、スーパーコンピュータ「富岳」で計算した結果を発表した。窓開けによる換気は限定的で、エアコンの風量を強める方が効果的。後部座席の人が咳をする場合はマスクが第一の対策として効果があるという。
チームは、カラオケボックスでの飛沫の広がりも調べた。排気口の下で立ってマスクやマウスガードをつけて歌うと、ある程度効果的に排気口から排出された。排気口から顔のあたりまで仕切り板をつけると、部屋全体に飛沫が広がるのをほぼ防ぐことができた。
飛行機内では、機内の空気循環システムの効果で、3分程度で空気が浄化される。乗客が咳をする場合、背もたれを倒して斜め上に咳をした場合は、背もたれを倒さない場合に比べて前方に大きく広がった。どちらの姿勢でも、マスクをつけることで飛沫の数は大幅に減った。マスクの着用による感染リスク低減効果は大きいとしている。
●北海道、集中対策2週間延長
北海道は26日、新型コロナ感染防止のための「集中対策期間」を2週間延長すると発表した。依然として高水準の感染者数を抑えるため、飲食店の対策を強化。接待を伴う飲食店については、札幌市全域での休業要請にまで踏み切る。患者の急増で医療機関が疲弊する中、飲食事業者にさらなる負担を求めざるを得なくなった。
●「イート」食事券 千葉県発行停止
千葉県は26日、「GoToイート」の食事券の新規発行を28日から3週間をめどに一時停止する。購入済みの券は引き続き利用できるが、会食は原則4人以下が求められる。飲食店の営業時間の短縮などの自粛要請は、現時点で想定していない。「GoToトラベル」は変更しない。
●コロナ重症者、半月で倍増 東京や大阪で病床逼迫
新型コロナ感染症の重症者用ベッドが、東京都や大阪府などで逼迫し始めた。厚労省の集計では、重症者は26日時点で全国で435人。半月で約2倍となった。今の感染者の増加ペースでは、重症者がさらに急増する。感染拡大地域の医療現場は、新型コロナ以外の重症者の診療を制限しなければ、対応できない深刻な状況に追い込まれつつある。
朝日新聞の取材では、重症者用ベッドの使用率(26日時点)は、大阪府で52%、東京都40%、神奈川県32%、愛知県31%、兵庫県29%だった。実態は、数字以上に深刻だという。都の基準の重症者は、26日で60人。重症者用に「確保」したベッドは150床。しかし、都で入院ベッドの調整に携わる杏林大高度救命救急センター長の山口医師によると、「確保」は必ずしも今使えることでなない。「実際に使えるのは半分ぐらい、新たな重症者を受け入れられるベッドはほとんどない」と言う。
人工呼吸器やECMOを必要とする重症者の治療は、高度な技術や十分なスタッフが必要。ベッドやスタッフを確保するには、入院中の患者を移動させ、手術や救急患者の受け入れを減らす必要がある。春の「第1波」では、患者を多く受け入れた病院は、手術や救急患者の受け入れを大幅に減らした。通常の医療を削れば経営的にも大打撃、多くの病院は経営問題や院内感染のリスクから、新型コロナ患者の受け入れには依然、消極的だという。
●感染2506人 死者29人
新型コロナ国内感染者は26日、新たに2506人が確認された。亡くなった人は29人増えた。大阪では50~90代の12人の死亡を確認。1日の死者数として最多となった。感染者は神奈川県で254人、兵庫県で184人、三重県で27人が確認され、いずれも過去最多。東京都は481人、大阪府は326人。北海道では256人が感染、6日ぶりに250人を超えた。沖縄県では74人、70人を超えるのは県が独自の「緊急事態宣言」を出していた8月14日以来、104日ぶり。
愛知県の大村知事は、名古屋市繁華街の中区錦三丁目(通称、錦三)と栄地区の飲食店の一部などに、営業時間の短縮か休業を要請すると発表した。29日から12月18日までで最大40万円の協力金を支払う。大阪市では、北区と中央区にある酒を提供する飲食店などへの営業時間の短縮要請が、27日から始まる。
【11月27日】
●コロナ 2度目の抗体検査実施へ
新型コロナの感染歴を調べる抗体検査について、田村厚労相は27日、年内をめどに1万5千人規模で実施すると発表した。今年6月に調査した東京・大阪・宮城に、感染者増加を踏まえ愛知・福岡を加えた計5都府県で調べる。抗体検査はウイルス感染後に体内にできるたんぱく質(抗体)を測定する。国内の感染の広がりや免疫の獲得状況を把握するのが狙い。今回は無作為に選んだ20歳以上の住民を対象に、1都府県につき3千人程度の検査をする方針。
6月の調査は、感染者数が多い東京と大阪、少ない宮城を調査の対象とした。3都府県の住民計約8千人を、二つのメーカーの測定法で検査。いずれも陽性と判定された人は東京が0.10%、大阪が0.17%、宮城0.03%だった。当時、海外で報告されていた抗体検査の陽性率(米ニューヨーク州で12%、スペインで5%など)に比べてかなり低い。
●緊急事態宣言でも「一斉休校せず」
萩生田文部科学相は27日の閣議後記者会見で、新型コロナ感染拡大によって「緊急事態宣言」が出た場合の学校の対応について、「児童生徒の発症の割合は低く、学校を中心に感染が広がっている状況ではない。春先のような全国一斉休業を要請することは考えていない」と述べた。
休校するかどうかの判断は学校設置者に委ねる考えを示したが、「地域一斉の臨時休業は学びの保障や子どもの心身への影響の観点から、必要な場合に限定し、慎重に判断すべきだ」と強調した。また、来年1月の大学入学共通テストも「緊急事態宣言」下であっても、「予定通り実施する方向で準備を進めている」と語った。
●札幌・大阪市発「自粛を」 GoTo 首相呼びかけ
新型コロナ感染症の急拡大を受け、菅首相は27日、「GoToトラベル」について、札幌市と大阪市からの出発分も一時利用を控えるよう呼びかけた。国民向けに自粛を要請した形で、「分科会」の提言を受けた対応。観光庁によると、自粛要請は、12月15日までに出発する旅行が対象。今月27日午後7時以降、12月7日までに予約をキャンセルすれば、利用者負担が生じない。キャンセルされた旅行代金については、政府が一律35%分(上限は1人1泊1万4千円)を事業者に補填するという。
北海道の鈴木知事は27日の記者会見で、利用者や事業者の負担について国が支援することを条件に「運用の変更に同意する」と政府側に伝えたという。大阪府の吉村知事は菅首相の発言後の同日夜、記者団の取材に応じ「国と協力して感染拡大を抑えないといけない。利用自粛を大阪市民にお願いしたい」と述べた。
東京都については「到着分」も「出発分」も利用できる状況が続く。小池知事は27日の定例会見で、感染拡大防止には都内を目的地とする旅行だけでなく、都内発の旅行も止める必要があるとの認識を示す一方で、「全国的な視点が必要であるからこそ、国が判断すべきだ」と発言。都として、トラベル除外をめぐる判断を明らかにしない意向を改めて示した。
●食事券、10都道府県中断 東京や大阪
「GoToイート」について、農水省は27日、東京や大阪などがプレミアム付き食事券の販売中断を決めたと発表した。販売を中断するのは、北海道、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、大阪、兵庫の10都道府県。北海道(札幌市内のみ)、埼玉、東京、大阪は、発行済みの食事券やポイントの利用も控えるよう、利用者に呼びかける。
「イート」事業には、購入額の25%分多く飲食できるプレミアム付き食事券の発行や、ネット予約を通じた飲食に対する最大1千円のポイント付与で、飲食業界を支援する狙いがあった。だが、感染の原因になりやすい会食を促すことになりかねないとの懸念が強まっており、中断を決める自治体が今後さらに増える可能性もある。
●国内死者31人 最多並ぶ 東京感染570人
新型コロナ国内感染者は27日で、新たに2530人が確認された。東京都の新規感染者数は570人で過去最多となった。愛知県も最多の234人だった。200人を超えたのは、大阪府383人、北海道252人、神奈川県219人。死者数は、最も多かった5月2日と同じ31人。北海道で過去最多の9人が確認された。
東京都内の65歳以上の感染者数は、86人(15%)で過去最多となり、40代76人や50代67人を上回った。最も多かったのは20代の147人(26%)。また都基準の重症者数は1人増えて61人。感染経路がわかった224人の内訳では、家庭内感染が108人(48%)と最多。職場や施設がそれぞれ37人(17%)だった。
東京感染者(日別)2020/11/27 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト
【11月28日】
●コロナ禍で困窮 休退学 190大学
コロナ禍の影響で、全国の国公私立大のうち少なくとも190大学が、「経済的理由による退学・休学者」が今年度末に増えると予想している。朝日新聞と河合塾の共同調査でわかった。不況による学生の家計悪化が続く。「退学・休学」は、緊急調査時の7月に9%だったが、今回は10月に15%、来年3月予測は30%に急増。特に、国公立より学費が高い私立大は35%に達する。
「経営状態」に影響すると考える大学も増えた。7月は9%、10月は13%だが、来年3月予測は20%に。東京都の中規模私立大では、「除籍・退学者の増加による学生納付金収入の落ち込みが、収支状況を悪化させる」ことを心配する。今後、「経営が困難な大学が増加する」と予想する大学も、回答者の8割を超えた。
●GoTo見直し にらみ合い
新型コロナの感染急拡大が続く中、政府の「分科会」が感染拡大地域での見直しを迫った「GoToトラベル」。大阪市と札幌市を発着する旅行の除外は決まったが、政府と東京都などの自治体のにらみ合いが続き、後が続かない。27日の定例会見で「GoToトラベル」の東京都除外について、小池知事は「出と入りを止めてこそ感染拡大の防止に資する。そうなると全国的な視点が必要で国が判断すべきだ」と強調し、都としての方針を示さなかった。
「分科会」は、感染状況が「ステージ3」相当と判断された地域(札幌市、東京23区、名古屋市、大阪市)は「トラベル」を一時停止するよう提言している。吉村知事や鈴木知事が大阪市や札幌市の除外を容認する中、小池知事は28日夕も「国からの回答をみて今後の対応を考えていきたい」と明言を避けた。愛知県の大村知事も当面、除外対象とすることは求めない考えで「必要があれば国と協議する」と言う。
鈴木知事は、札幌市を目的地から外すことを容認した23日の会見で、「知事が判断するのか、国が判断するのか、そう言っているうちにどんどん判断が遅くなる」と強調した。
●政府、「知事が主体的に」
「トラベル」は全国をまたぐ国の政策で「最終的には国の判断で責任を持って決める」(加藤官房長官)とするものの、知事の要請に基づき対象外の地域を決めるとしており、実質的な判断を知事に委ねる。首相周辺は「小池都知事は『国が判断を』と言うが、政府はあくまで知事が主体的に判断するという立場だ」と話す。
政府は、「GoToキャンペーンは、今日の(感染)拡大と直結していない」(菅首相)との見方。「トラベル」が感染拡大の主因とする科学的根拠は現在のところ存在しないとする見解が、20日の「分科会」の提言にもあったことも支えにする。この1週間の運用見直しについても「専門家があそこまで言うならということで対応したまで」(首相周辺)とし、抜本的な対策よりも自治体からのメッセージの後を追うかのような「小出し」にとどまる。首相自ら「地域経済を支える中で極めて有力だ」(25日の衆院予算委員会)と強調したように、「トラベル」の効果がいまの日本経済に欠かせないと期待をかける。
現状は、国と都など一部の自治体との間で、判断の「お見合い」が起きているのが実態。感染症対策は時間との闘いでもあり、加藤氏自らも27日の会見で「(国と都道府県の)どちらがどうという議論をすること自体が建設的ではない」と指摘するが、国が主導して解決に乗りだす動きはうかがえない。立憲民主党の幹部はこうした現状を「GoToを止めれば、止めたことへの批判も当然でる。責任を追及されたくないから、意地になってとめないのではないか。ずるずる行けば大変なことになる」と懸念する。
●分科会、「個人の努力に頼る段階は過ぎた」
「早晩、通常の医療で助けられる命を助けられなくなる」。25日、「分科会」は医療崩壊への危機感をあらわにした。迅速な対策に乗り出さない政府や都道府県に対しては「必要な対策が取られていない地域がある」「早期に強い措置を」と強い口調で迫った。
11月に入って、「分科会」はたびたび対策を取るよう政府に提言してきた。一部地域の感染状況が、飲食店の人数制限や観光施設の入場制限などを検討する段階とされる「ステージ3」に迫っており、相当する地域も名指した。だがこの間、感染者の急増に歯止めはかかっていない。院内感染や高齢者施設でクラスター発生が相次ぎ、現場からは「もう限界」との悲鳴も。
「分科会」メンバーの一人は政府に対し、「危機感がちっとも伝わらない。国民に「お願い」する形ではもう事態の改善に結びつかない」と業を煮やした。27日には「分科会」の尾身会長が、衆院の厚生労働委員会で「個人の努力だけに頼るステージはもう過ぎた。今の状況を見ると各知事と国がしっかりと判断していただきたい」とさらに踏み込んだ。
感染症に詳しい専門家は「感染拡大を抑えるためには、人の移動と集まりを制限するのが対策の基本的な常識」、「GoTo事業を実施すれば感染者が増えるのは当然。患者が急増している現状で、政府が促進するのは感染抑制の観点からは明らかに誤り」と話す。本格的な冬の到来で、新型コロナとインフルエンザの同時流行が起こる可能性もある。「政府には今は、経済対策よりも医療体制の充実に強いリーダーシップを発揮してもらいたい」と話す。
●時短要請 東京も始まる
東京都では28日、島嶼部を除く都内全域を対象に、酒類を提供する飲食店やカラオケ店の営業時間を午後10時まで短縮する要請が始まった。12月17日までの20日間は、かき入れ時の忘年会シーズン。応じた場合は1事業者当たり40万円の協力金が支払われるが、対応を決めかねたり、「今回は難しい」と営業を続ける店も目立つ。
●GoTo クーポン詐取容疑
「GoToトラベル」の利用を装い、旅先で買い物に使える「地域共通クーポン」を詐取したとして、警視庁は28日、神奈川県藤沢市の職業不詳の男(30)を電子計算機使用詐欺容疑で逮捕した。ホテルの宿泊予約をしてクーポンだけ受け取り、無断キャンセルする手口は、各地のホテルや旅館で被害が相次いでいた。警察によるこうした被害の摘発は、全国初。
「地域共通クーポン」の不正受給は、ホテルで受け取る用紙タイプでなく、「電子クーポン」が狙われた。スマホから専用サイトにアクセスして入手する仕組みだが、虚偽の氏名や連絡先で予約し、クーポンだけ受け取り、宿泊を無断キャンセルする。
「GoToトラベル」の事業費は1兆3500億円。キャンペーンを急ぐあまり、制度設計が甘くなり、「火事場泥棒」を招いた。観光庁は今月25日から、ショート・メッセージを使った「本人認証」などの対策を講じている。
●感染最多、新たに2685人 3日連続2500人超 重症者も最多440人
新型コロナ国内感染者は、28日で新たに2685人が確認され、過去最多を更新、3日連続で2500人を超えた。東京都が561人で最も多く、「GoToトラベル」事業の対象から一部地域が外れた大阪府463人と北海道252人が続く。死者は計14人。東京都の感染者数は累計で4万人を超えた。2万人から3万人になるには約2カ月かかったが、4万人には約1カ月間で到達。スピードがあがっている。
新規感染者数が最多となる県も相次いだ。山形6人、茨城66人、千葉113人、三重29人、大分18人の5県。三重県では県警察学校に入校中の10人の感染が判明し、クラスターが発生。茨城県では県南部での感染拡大を受け、28日から土浦市やつくば市など8市町で、不要不急の外出の自粛要請期間が始まった。要請は12月13日まで。
重症者数も増加傾向にある。厚生労働省によると、27日時点の重症者は前日より5人増え、過去最多の440人。東京都では都基準の28日の重症者数が前日より6人増えて67人となり、5月の「緊急事態宣言」解除後の最多を更新した。
【11月29日】
●五輪コロナ対策費1000億円 延期 追加総額3000億円に
来夏に延期された東京五輪・パラの開催に向け、国、東京都、大会組織委員会がコロナ対策費を1千億円規模と見込んでいることが29日、複数の大会関係者への取材でわかった。このほか人件費や会場の維持などに2千億円ほど新たに必要になり、大会延期による追加経費は現状で総額3千億円規模になる見通し。
ただ対策費は、今後の感染状況やワクチン開発の進展、観客をどう制限するかよって増減する可能性がある。政府主導の調整会議は、観客の入場制限についての判断を来春に先送りしている。
●ファイザー開発のワクチン 英12月初旬にも接種か
米製薬大手ファイザーと独バイオ企業ビオンテックが開発している新型コロナワクチンについて、英新聞が28日、英国政府が近く緊急承認する方針だと伝えた。接種は早ければ12月7日にも始まる見通しだという。
英国政府はこのワクチンを4千万回分確保する契約を結び、うち1千万回分は年内に入手する予定。政府は、接種は高齢者介護施設の入所者と職員を最優先、続いて80歳以上と医療・福祉従事者、その後は年齢層の高い順から接種を進めるものとみられる。英国政府は、アストラゼネカのワクチンは年内、モデルナのワクチンは来年春にも入手できるとの見通しを示している。
●ロシア、ワクチンの国外売り込み 大統領は未接種、国民に不信感
ロシアは8月、国際的に求められている最終段階の大規模な臨床試験を後回しにし、国産のワクチン「スプートニクV」を承認。すでに医師らへの接種を開始、年内に一般国民向けの接種も始まる見通し。また安全性や価格の安さをアピールし、国外への売り込み攻勢をかけている。外国での販売価格は「1回あたり10ドル未満」、米企業開発の「半額以下」だという。ただ、ワクチンの質に対する疑問は国内ですら払拭されておらず、思うように市場を獲得できるかは不透明。
政権与党が10月に発表した世論調査では、73%がワクチンを打ちたくないと回答。医療関係者を対象にした8月の別の調査では、52%が「スプートニクV」を接種しないと答えた。ロシア政府は、閣僚らが相次いで接種して安全性をアピールする。一方で、何故かプーチン大統領が未だに接種を避けていて、国民が不信感を抱く一因と指摘されている。
●中国もワクチンで「途上国を援助」 実用化見通せず
中国では5種類のワクチンが最終の治験に進んでいるが、一般向け接種の時期は具体的になっていない。中国も自国製ワクチンで「途上国を援助する」(習国家主席)として、アジアやアフリカ諸国などへの優先供給を約束するなど「ワクチン外交」に乗り出している。アラブ首長国連邦やパキスタンなどでも臨床試験を始めているが、いつ実用化できるかは見通せない。
中国政府は7月以降、最終段階の臨床試験に進んだワクチンの一部を医療関係者らに緊急投与することを認めるなど実用化を急ぐ。国有製薬会社「中国医薬集団」(シノファーム)は今月18日、緊急投与による接種が100万人近くに達したと発表。国営新華社通信は25日、シノファームが政府にワクチンの販売申請をしたと伝えた。ただシノファームは臨床試験を終えておらず、詳細なデータを公表していない。
●重症者最多462人 国内感染2058人
新型コロナ国内感染者は29日で、新たに2066人が確認された。感染者が2千人を超えるのは4日連続。厚労省によると、28日時点の重症者は前日より22人増え462人となり、7日連続で過去最多を更新。死者は北海道や大阪府など6道府県で計16人増えた。
東京都は418人で、5日連続で400人を超えた。大阪府は381人で5日連続で300人超え。山形県は11人と最多更新。累計の感染者は大阪府が2万人、愛知県が1万人を突破した。愛知県は29日から名古屋市の繁華街のスナックなど接待を伴う飲食店、酒類を提供するカラオケ店などに営業時間の短縮や休業を要請。規制対象外の居酒屋や焼き肉店などにも午後9時までの営業短縮を求めている。
【11月30日】
●ワクチン緊急使用 米モデルナも申請
米バイオ企業モデルナは30日、開発中の新型コロナワクチンについて、米食品医薬品局(FDA)に緊急時使用許可(EUA)を申請した。FDAは外部専門家を交えた諮問委員会の勧告を受けて許可の判断をするが、12月中旬にも米国内で接種が始まる可能性がある。米国でのEUA申請は、製薬大手ファイザーに続き2例目。
●コロナ対策、議論深まらず 臨時国会延長しない方針 野党「特措法見直し必要」
30日の参院本会議で野党側は、菅政権のコロナ対策があまりにも遅いと批判。第2次補正予算で10兆円を積んだ予備費を早期に執行することなどを求めた。またGoToトラベル事業を抜本的に見直し、地域と業界の状況に合わせた直接支援を行うべきだと訴えた。
しかし、首相は「GoTo」については「感染拡大の原因とのエビデンスは現在のところ存在しない」と述べ、事業を継続する考えを主張。予備費についても「緊急に予算の手当てが必要になった場合に活用」と議論は深まらず、新たな対策を示すことはなかった。こうした首相の姿勢について、立憲民主党の枝野代表はこの日の記者会見で「菅内閣は感染の広がりに呆然と立ち尽くしている状況」と批判した。
立憲の安住国対委員長は30日、自民の森山国対委員長と会談し積み残った課題に取り組むため、12月5日に会期末を迎える臨時国会の会期延長を求めた。立憲は、新型コロナ対応の特別措置法には、知事らから不満が出ている休業補償の規定ないことなどから同法の見直しに着手。休業補償の国の負担を明記したり、「緊急事態宣言」の発出を国に対し知事が要請できるようにする改正案を、12月2日にも野党共同で提出する方向で調整に入った。
ただ、首相は法改正に慎重。第3次補正予算案や新年度予算案づくりを優先する政府・与党は、野党が求める延長に応じない考え。今国会のコロナ関連の法案は、ワクチン接種に関する予防接種法の改正案の成立にとどまる見通し。
●首相答弁、メモ頼み 会見は2回のみ
感染者が急増を続けるなか、国会での議論は深まらない状況が続く。共産党の小池書記局長はこの日の会見で「問題は首相の答弁姿勢。質問にまともに答えない、はぐらかす。秘書官がその場で書き、差し出したメモに頼るという答弁能力の欠如が原因だ」と批判した。党首討論は今国会で開催されない見通し。会期延長されなければ、首相自らが国会で答弁する機会は、来年1月に開かれる通常国会までないことになる。
しかも首相は、就任した9月16日に官邸で記者会見をして以来、「会見」は10月に外遊先で開いたのみ。官邸で記者の前に立ち止まることはあっても、一方的に紙を読み上げ、その後の記者からの質問には応じないことが続いている。
●埼玉でも一部地域で時短要請へ
埼玉県は30日、さいたま市大宮区、川口市、越谷市の酒類を提供する飲食店やカラオケ店を対象に、営業時間を短縮するよう求める方針を固めた。東京都が28日から飲食店への営業時間の短縮を要請し始めたことを重視、首都圏一体として取り組む必要性から。期間は12月7~17日。午後10時に閉店するよう求め、応じた場合には28万円の協力金を支払う方向で調整している。
埼玉県では29日現在、4日連続で新規感染者が100人を超え、病床の使用率は同日現在61.5%。県はすでに政府の飲食店支援策「GoToイート」のプレミアム付き食事券の新規発行を停止するなどしている。
●飲食店が「GoTo」不正疑い
「GoToイート」のポイント事業で、東京都内の飲食店2店舗がグルメサイトで、それぞれ店の関係者が客を装って自らの店に予約を繰り返し入れ、飲食したように偽装してポイントを得ようとした疑いで、加盟店から除外された。グルメサイト側が気づき、ポイントは付与されなかった。予約サイトを通じた飲食に、ランチで500円分、ディナーで1千円分のポイントがもらえる。ポイント付与の上限は1回の予約で10人分までで、最大1万円分が付与される。
●重症者472人 8日連続最多 感染者1439人
国内の新型コロナ感染者は30日、41都道府県と空港検疫で新たに1439人が確認された。死者は北海道で5人、大阪府で4人など14都道府県で26人。厚生労働省によると、同日午前0時現在の重症者は前日から10人増えて計472人となり、8日連続で過去最多を更新した。
東京都では、311人の感染が判明。重症者は70人で、「緊急事態宣言」解除後の最多を更新した。自宅療養の感染者は初めて1000人を上回り、1015人に。感染経路別では家庭内が69人(22%)、施設内が45人(14%)など。感染経路が不明な人は137人(44%)。大阪府の感染者は262人で、14日連続で200人を超えた。重症者は124人となり、過去最多。福岡県は27人が感染。「GoToトラベル」を使った大分県へのバス旅行で、参加者21人のうち運転手を含む10が集団感染した。
11月30日現在の日本国内の感染者数、重症者数、死者数(NHKまどめ) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト
11月30日現在の国内発生状況 陽性者数、重症者数、死亡者数(累計) 出典:厚生労働省ホームページ
★ ★ ★
これまでよりも強い対策を求める「分科会」の提言に、政府はどう応じるのか。20日午前、参院本会議で「GoTo」の見直しを野党議員に問われた菅首相は「感染対策と経済の回復を両立させていくのが基本的な考え方だ」と従来の方針を繰り返して強調した。
政府は、旅行など人の移動そのものが感染を拡大させているわけではなく、マスクを外して長時間、密接な会話を交わす会食の場が問題だという。「GoTo」は首相の肝いりで、感染対策と経済の両立をはかる象徴的な事業。「GoToトラベル」について、日本医師会が18日に「感染者急増のきっかけ」と指摘しても、政府耳を貸さない。
大阪府、札幌市に比べて、東京都の小池知事の対応も鈍い。飲食店の営業時間の短縮要請も「効果的な感染防止対策につながるのかどうか疑問がある」とし、「まずはGoToキャンペーンを政府がやめるのが筋だ」と主張を繰り返す。
国と都の足並みがそろわず、地方自治体にも動きがみられないなかで、国内の新規感染者数は連日、過去最多を更新、重症者も増加を続け手止まない。東京五輪が来年あるので、思い切った対策はとれないというのだろうか。「分科会」から強い提言を受けても変わらない背景には、経済や雇用の悪化を避けたい首相官邸の意向や、観光の現場での混乱の恐れもある。
もう個人レベルの努力で済む段階ではない。自治体にお任せしている場合ではない。医師会などの専門家も訴えているように、医療崩壊は目前だ。菅政権のリーダーシップや決断が求められる。首相のメモ頼りに自分の言葉でない国会答弁。同じ回答を繰り返し、言い訳に終始し、かみ合わない議論。記者会見を避けたり、記者の質問にまともに答えない。年末年始に当たって、国民の命がかかっているコロナ対策を、このリーダーに本当に任せて良いのか。この難局を乗り越えないと、総理大臣としての資質、政権運営の能力は無いと国民に判断されるだろう。
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