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2020年6月11日 (木)

新型コロナによる肺炎と血栓症

  国内で新型コロナウイルス感染者が初めて見つかったのは、2020年1月16日。それから半年近く6月中旬になったが、まだ先行きは見えない。最近では新型コロナの症状が「肺炎」だけではなく「血栓症」の報告が相次いでいるという。
 

  昨年末に中国に端を発した新型コロナウイルスは、当初は「新型肺炎」とも呼ばれた。重症化した患者が、肺炎を起こして亡くなる例が多かった。しかし最近の報告では、肺だけでなく「血管の炎症」により全身に症状が出ることがわかってきた。

  「血栓症」が増加するとの報告が多く上がり始めている例として、オランダの研究チームはICUに入室したすべての新型コロナ感染患者184名について、4月5日時点で13%が死亡、12%が生存退院、76%が依然ICU入室中であった。全患者のうち31%に血栓性合併症が確認されたという。またドイツでは、新型コロナで死亡した患者12人の病理解剖を実施。7人(58%)の患者に深部静脈血栓塞栓症を認め、凝固異常が死亡に影響している可能性を示した。論文は5月6日に報告された。

   厚生労働省は5月18日、医者向けの「新型コロナウイルス感染症の診療の手引」を改訂した。

 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第2版」(2020年5月18日発行)の表紙 出典:厚生労働省ホームページ

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 「診療の手引き」では、新たな知見を踏まえ、重症化に関連があるとされる「血栓」へ の対応や 重症化を見極める指標となる「重症化マーカー」、 新たに承認された治療薬についてなど、最新の治療のポイントをまとめている。第1版の「手引」は、3月17日に発行したが、その後様々なことが分かってきたため第2版の発行となった。

  新型コロナに感染した人のうち、約8割は症状がないか軽症ですむが、入院が必要になるのは約2割。重症化するのは5%程度とされている。 

 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第2版」(2020年5月18日発行)

 下の図は、国内の年齢別致死率。

 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第2版」(2020年5月18日発行)

 「診療の手引き」には、【重症化のリスク因子】として、「高齢者、基礎疾患(糖尿病・心不全・慢性呼吸器疾患・高血圧・がん)、喫煙歴のある患者では、致死率が高い」としている。

  NHKホームページ 新型コロナウイルス特設サイト「新型コロナ 重症化のメカニズムは? 解明に向け進む研究」 (2020年6月3日)によると、重症化しやすいとみられる人として、アメリカのCDC(疾病対策センター)は65歳以上の高齢者に加えて、慢性の肺の病気や、重い心臓病、糖尿病、肝臓の病気などの持病がある人のほか、慢性の腎臓病で透析治療を受けている人、喫煙者やがんの治療や臓器移植などで免疫力が低下している人、それに重度の肥満の人などをあげている。 

 NHKホームページ「新型コロナ 重症化のメカニズムは? 解明に向け進む研究」2020年6月3日

 また「診療の手引き」の【合併症】の項目には、「若年患者であっても脳梗塞を起こした事例が報告されており、 血栓症を合併する可能性が指摘されている。また、 軽症患者として経過観察中に突然死を起こすことがあり、 これも血栓症との関連が示唆される。」とある。

  新型コロナ感染症では、肺炎とともに肺の血管が詰まる「血栓症」が起き、酸素を体内に取り込めなくなる事例があることが分かってきたそうだ。血栓は、血管内にウイルスが入り込んだり、免疫が暴走して自分自身の体を攻撃する「サイトカインストーム」と呼ばれる症状などのため、 血管の細胞が炎症を起こしている可能性が指摘されている。

 「サイトカイン」は細胞から分泌され、免疫や炎症を調整するタンパク質で、他の細胞に命令を与える。ウイルスの侵入で「サイトカイン」が増えすぎて、ストーム(嵐)のように暴走すると正常な細胞も攻撃する。こうした症状が見られる際には、免疫が患者の関節を攻撃して炎症を起こす病気、リウマチの治療に使われる、免疫の働きを抑える薬の投与が行われる。

  さらに「サイトカイン・ストーム」で血管が傷ついて炎症が起こり血栓ができやすい。その血栓が血管に詰まってしまうと、肺で酸素が取り込めなくなったり酸素が行き渡らなくなったりして、重症化につながると考えられる。また「サイトカイン・ストーム」が、腎臓や肝臓など、複数の臓器で起き、多臓器不全となって死に至ったとみられるケースも、各国で報告されている。

 そのため「診療の手引き」には、「血栓症」対策として、血管の中に血栓ができているかを見る指標「Dダイマー」の数値を「重症化マーカー」として確認することが重要だとし、正常値を超えたら必要に応じて血液が固まるのを防ぐ「ヘパリン」(血液をサラサラにする薬) を投与するなどといった抗凝固療法を推奨している。血栓は、脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなる。それほど重症でなかった患者が、急に亡くなるケースはそういった可能性もあるのではないだろうか。

 一方で、これまで新型コロナで重症化しやすいと考えられてきた喘息(ぜんそく)の患者について、国立成育医療研究センターで中国とアメリカの患者のデータを解析したところ、重症化リスクは高くはないそうだ。また欧米では、子どもがまれに全身の血管に炎症が起きる川崎病のような症状で、中には重症化して死亡したケースも報告されている。今のところ国内では、このようなケースは報告されていないが、日本川崎病学会では今後も注視するとしている。(ちなみに、「川崎病」を発見した小児科医の川崎富作氏は、6月5日老衰のため東京都内の病院で逝去された。)

  
 「診療の手引き」の薬物療法には、現時点では新型コロナに対する抗ウイルス薬による特異的な治療法はないとしながら、日本国内でも臨床研究・試験が開始されている以下のような主な薬剤を紹介している。

 国内で入手できる新型コロナの適応薬として、「レムデシビル」 (RNA 合成酵素阻害薬)は抗エボラウイルス薬として開発中であるが、コロナウイルスにも活性を示すという。2020年5月1日、アメリカで緊急使用を認めた新薬であり、日本では「特例承認制度」を用いて5月7日に正式に新型コロナウイルスへの治療薬として承認された。

 新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 出典:国立感染症研究所ホームページ

新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真。粒状の粒子の上にコロナウイルス特有の冠状のスパイクタンパク質が観察できる。出典:国立感染症研究所ホームページ

 エボラウイルスのビリオン(電子顕微鏡)出典:米CDC ウィキメディア・コモンズ 

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  現在、国内において,治験及び特定臨床が実施されているもの 、以下の薬剤はいずれも有効性・安全性が確立していないため、研究としての適切な手続きを行った上で使用することが原則だそうだ。

 ・「ファビピラビル」(アビガン、適応:インフルエンザ)は、企業治験及び特定臨床研究が実施されているほか、観察研究も実施中。

 ・「シクレソニド」(吸入ステロイド薬、 適応:気管支喘息)は、国内において特定臨床研究が実施されているほか、観察研究も実施中。

 ・「ナファモスタット」(適応:急性膵炎)は、国内において特定臨床研究が実施されている。

 ・「トシリズマブ」(アクテムラ)と「サリルマブ」(ケブザラ)(遺伝子組換え、適応:関節リウマチ)は、国内において治験が実施中。

  このように、新型コロナ感染症は重症化すると肺炎だけでなく、さまざまな臓器で炎症が起きたり、血液の凝固異常がみられたりするなど、「全身性の疾患」だという認識に変わってきている。

 写真は、米疾病予防管理センター(CDC)の作成による新型コロナウィルスの微細構造模型。ウィキペディア・コモンズから転載。

米疾病予防管理センター(CDC)の作成による新型コロナウィルスの微細構造模型。ウィキペディア・コモンズから転載。

 

 ★ ★ ★

 1918年から1919年にかけて流行した「スペイン風邪」では、5千万と推定される死者の中で、健康な若者の死亡数が著しかったようだが、「サイトカイン・ストーム」が発生したのではないかと推測されているそうだ。また2003年の「SARS」流行では、香港での調査によると死因の多くが「サイトカイン・ストーム」によると判明しているという。2009年新型「インフルエンザ (H1N1)」 でも、基礎疾患のない若者の死亡率が高いことも同様な理由として説明されているようだ。

 6月8日のWHOの記者会見で新型コロナ感染症の無症状感染者は伝染力がほとんどない、また別の責任者は9日、感染者のおよそ40%は、無症状感染者からうつされているという見方を明らかにした。矛盾している気がするが、どういうことだろうか。 

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