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2020年6月の4件の投稿

2020年6月26日 (金)

日産カルロス・ゴーン事件

 2020年6月18日、単行本『ゴーンショック 日産カルロス・ゴーン事件の真相』(朝日新聞取材班、幻冬舎)を読み終えた。

 

 コロナ禍の最中の5月13日、第1刷が発売された本書の”帯”には、次のようなセンセーショナルな活字が浮かぶ。

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 《 世界中が驚愕した前代未聞のスキャンダルの全貌 》

  孤独、猜疑心、金への異常な執着
  カリスマ経営者はなぜ「強欲な独裁者」と化し、
  日産と日本の司法を食い物にしたのか?
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 《 すべて調べ尽くしたのは本書だけ! 》

  ・検察はなぜゴーン逮捕に踏み切ったのか?
  ・ゴーン追放は「クーデター」だったのか?
  ・仏大統領マクロンvs.ゴーン。どんな確執があったのか?
  ・家庭の問題。孤独な青年時代。ゴーンの生い立ちとは?
  ・ゴーンによる恐怖政治と会社「私物化」の実態とは?
  電撃逮捕の世界的スクープを放った
  朝日新聞ならではの圧倒的取材力を駆使。
  迫力の調査報道ノンフィクション。
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書籍『カルロスゴーン 日産カルロス・ゴーン事件の真相』朝日新聞取材班、幻冬舎

 

 「週刊朝日」2020年6月19日号にも、「墜ちたカリスマ カルロス・ゴーン劇場の“全真相”」というタイトルで、本書の朝日新聞取材班の一人が執筆した記事が掲載された。

 日産自動車は5月末、最終赤字が6712億円に上ると発表した。この赤字額は“カリスマ”カルロス・ゴーンが仏ルノーから乗り込んできた20年前の6843億円に匹敵する。日産を舞台にしたゴーン劇場とはいったい、何だったのか? 朝日新聞取材班が迫った深層を明かす。

 

 2018月11月19日、日産のゴーン会長とゴーンの腹心・ケリー代表取締役が乗ったプライベートジェットが、夕暮れの羽田空港に降り立った。同時に2人は、周到に準備していた東京地検に逮捕された。
 「日産自動車のゴーン会長を金融商品取引法違反容疑で東京地検特捜部が逮捕へ」の大スクープ。
 朝日新聞司法クラブの記者たちの、数カ月にわたる取材の結果だった。事情を知らない日本中の、いや世界中の人々が驚愕した。まるでサスペンスドラマだった。

 2018年秋、フランスのルノーが日産自動車を吸収するという経営統合の動きが進んでいた。マクロン大統領は国内製造業の復活を計るため、ルノーと日産のトップを兼ねるゴーンに、退任をちらつかせて統合を進めるように迫っていた。ルノーは日産に比べて規模が小さく、技術力も劣る。電気自動車など先端技術も持つ巨大な日産を吸収することで、ルノーの衰退を食い止めたかった。

 フランスは第2次大戦後、政府が主要企業の株式を持ち、経営トップを送り込むという独特の経済体制をとっている。仏政府は、もともとルノーの株を15%保有していた。ルノーは、業績悪化による倒産の危機に直面した日産を救い、2006年5月から日産株の44%を所有した。しかし再建後は日産が業績を伸ばす一方で、ルノーは低迷。日産は高額な配当でルノーの業績を上げるなど、経営を支援してきた。悪く言えば、日産の巨額の利益がルノーに吸い取られるという構図だった。のちに日産は三菱自動車の34%の株式を取得、ルノー・日産・三菱の連合(アライアンス)は、2017年上半期の自動車販売台数は526万8千台で、トヨタ・グループやフォルクスワーゲン・グループを抑えて、初の世界首位に立った。

 ルノー、日産、三菱自動車のエンブレム 出典:ウキメディア・コモンズ

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 ルノー・日産・三菱アライアンスのロゴ Renault-Nissan-Mitsubishi Alliance logo 出典:ウキメディア・コモンズ

ルノー・日産・三菱アライアンスのロゴ Renault-Nissan-Mitsubishi Alliance logo 出典:ウキメディア・コモンズ

 フランスは、2014年に政府権限を強める「フロランジュ法」を制定、議決権を政府保有株式の2倍にした。これにより事実上、ルノーの経営に強い発言権と拒否権を持つようになっていた。それまでゴーンは、ルノーと日産の双方の利害のバランスをとり、その地位を長く保ってきた。生え抜きの日産幹部たちにとって、ゴーンは仏政府圧力の「防波堤」になってくれるという強い信頼があった。ところがゴーンはマクロンに従い、2018年9月の取締役会でルノーとの経営統合の話を切り出した。ルノー側に軸足を移したゴーンに、日産幹部たちはその変身ぶりに信頼をなくす。議決権を引き上げたフランス政府による経営介入によって、日産は経営の自主性を失いかねない危機に面した。

 

 同じころに別の問題が持ち上がっていた。ゴーンの肝いりで、日産傘下に 「ジーア・キャピタル」という投資会社が、2010年に設立された。しばらくして、この会社の活動実態に不審を抱く者たちが社内に現れた。監査役室でたびたび調査が行われたが、このペーパーカンパニーは怪しげだが、実態がよくわからなかった。そんなとき、今津監査役に内部告発があった。監査役室の動きを知った法務担当のマーレシア出身英国人のハリ・ナダ専務が2017年暮れ、これ以上ゴーンの不正に付き合わされるのがゴメンだと、ジーア社の実態とゴーンの不正を暴露した。

 ジーア社が投資すべき資金は、ゴーンの住宅費として2700万ドルが流用されていた。さらにゴーンの姉に、活動実績もないのにコンサルティング報酬75万ドルを支払っていた。また、本来開示しなければならないゴーンの役員報酬を退任後に受領するように装い、90億円以上も隠蔽していた・・・等など。衝撃的な内容だった。

 ナダ専務から相談された川口専務は驚愕し、さっそく密かに検察OBの弁護士に相談。検察OB弁護士やナダが懇意にしている米国の法律事務所の弁護士たちの協力を得て、ゴーンの不正行為を詳細に調べていった。そして、この問題は社内では解決できない程の重大事件だとして、東京地検特捜部に持ち込まれたのだった。

 写真は、日産自動車グローバル本社(横浜市)2009 ウキメディア・コモンズから転載。

日産自動車株式会社グローバル本社 ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons) 撮影日2009-06-23 Nissan Head Office, at Naka-ku Yokohama Japan, designed by Yoshio Taniguchi & Takenaka Corp in 2009.

 ちょうどその頃、日本に「司法取引制度」が新しく導入された。検察は、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件(障害者郵便制度の悪用事件を担当していた検事が、証拠物のフロッピーディスクを改ざんした)で、検察の威信は地に落ちていた。東京地検の森本特捜部長は、不正の捜査に新しい時代に沿った手法で検察の立て直しを図ろうと、「特捜部の復権」が期待されていた。

 日産からゴーンの不正が持ち込まれて4カ月後の2018年10月、不正に関与したナダ専務、大沼秘書室長と検察は、司法取引に向けて協議を始めた。司法取引は、犯罪に関与していても、証拠の提出や供述の協力によって、罪を問わないことを保証してもらう制度。ナダと大沼は、ゴーンと共謀したジーア社の不正や、役員報酬欄を虚偽記載した金融商品取引法違反を認め、多くの証拠を検察側に提出した。検察との協議が進んでいた2018年10月、今津がこれらの証拠をもとに西川(さいかわ)社長兼CEO(最高経営責任者)にゴーンの不正を説明した。ゴーンの側近だった西川には、有無を言わせぬようお膳立てが整った最後の段階になって、ようやく説明されたのだった。

 カルロス・ゴーン 2008年1月25日:World Economic Forum Annual Meeting Davos 2008 ウィキメディア・コモンズより転載。

カルロス・ゴーン ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>
解説	:DAVOS/SWITZERLAND, 25JAN08<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>
日付:2008年1月25日, 19:27<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>
原典	:World Economic Forum Annual Meeting Davos 2008<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>
作者	:World Economic Forum from Cologny, Switzerland

 
 以上が、朝日新聞取材班がつかんだ事件の「真相」だという。ゴーンが後に主張するような「日産の陰謀」とは違い、ゴーンを日産から追放するために不正が捏造されたのではなく、不正があったので追放されたのだった。朝日新聞社会部の司法クラブ記者たちが、東京地検が司法取引で大事件を捜査していることを感づいたのは、西川社長が知る数ヶ月も前のことだった。それから取材を重ねてたどり着いた先は、世界の大物「ゴーン」だったのだ。

 逮捕されたゴーンは拘置所に留置され、取り調べが続く。やがて、ゴーンの中東にいる友人らを使って「サウジアラビアルート」と「オマーンルート」と呼ばれる特別背任の構図も明らかになった。ゴーンの指示で「中東日産」から友人に送金した金で、ゴーン自身の私的な信用保証や還流を得ていた。ゴーンは保釈を要求をするも認められず、弘中・高野弁護士らの尽力でやっと厳しい監視の上で、異例の釈放が行われた。保釈金は15億円だった。保釈後、日産への忠誠や無実を訴えた。弁護人を付けない取り調べ、テロリストを扱うような人権無視の司法制度、「人質司法」と呼ばれる長期拘留を批判した。しかし保釈中の2019年12月29日、監視されていたはずのゴーンは、驚きの手口で関西空港から出身地のレバノンに逃亡する。またもやサスペンスドラマのように。

 レバノンは、犯罪人引渡しに応じないため、再逮捕・裁判は無理だろう。ゴーンはレバノンで、記者会見を開いた。世界中のマスコミが殺到した中、ゴーンの「独演会」だった。日産と検察の陰謀や日本政府の介入という「もう一つのストーリー」をゴーンは主張した。そして自分は無実で、日本の司法制度を批判した。しかしフランスでも、ゴーンのベルサイユ宮殿での結婚パーティが、ルノーの会社資産の乱用だとして捜査しており、多くのマスコミは冷ややかだった。この記者会見とは別に、朝日新聞はゴーンの独占インタビューを行っている。

 2020年4月頃には共犯者として起訴されたケリー、そして法人の日産に対し、裁判の初公判が開かれる予定だった。新型コロナウイルスの影響もあり、遅れている。主役のいない裁判で、どこまで真相は明らかになるのだろうか。

 

 ★ ★ ★

 このドキュメンタリーは、朝日新聞のスクープや手柄話が強調されているが、事件が公になる前から内密に取材し、詳細に調査されているのはすごい。しかし、カリスマ経営者のゴーンがなぜそういう不正を犯したのか、その原因となる彼の生い立ちや切っ掛けまでも、もっと掘り下げて欲しかった。また海外では、彼の功罪がどう評価されているのかも詳しく知りたかった。

 ゴーンは、ルノー役員たちからは良く思われてないようなことを、本書に書いてあった。やはりフランス人にも、本音と建て前があるのだろうか。ゴーンは日産の経営を建て直して、ルノーよりも技術力、生産力、販売台数で遙かに上回る昔の日産に蘇らせた。ルノーの子会社となった日産は、ルノーの利益の元手にもなった。そういった事に、ルノーの役員たちは敬意を表しながら、どかかで彼へのやっかみや胡散臭さを感づいていたのだろうか。生え抜きの日産幹部は、ゴーンの経営手法に畏敬の念を抱き、更にはルノーからの経営介入の防波堤になってくれていた。そういったことが、日産から信頼され、長くトップに居座り続けたのだろう。

 公私混同を始めたのは、どういう切っ掛けだったのか。莫大な報酬への執着、その開示を免れるようにしたのは何故か。別の情報では、ブラジルの大統領を目指すための資金作りではなかったのか、という話もある。本書では、複数の女性と不倫、長年連れ添った妻リタと2015年離婚。そして不倫相手だったキャロルと2016年結婚。ベルサイユ宮殿を使って結婚パーティと、セレブのような振る舞い。熟年再婚からおかしくなった、妻の影響なのか急に派手になっていったという。のちにジーア社というペーパーカンパニーを利用して、けじめのない私的な金遣いが次々に確認された。湯水のように金を使い、贅沢する様子はルイ16世とマリーアントワネットを彷彿とさせるとも書いてある。また、ゴーンが日産を建て直したときの「リバイバルプラン」のようには、働かなくなったという。しかしその地位を手放さない。

 2007年のリーマンショックの時の慌てようは、目に余ったという。経営目標の未達成は、No 2に責任を取らせ、自らは取らない。部下からの異論や進言を聞かなくなった。気に入らない社員は、飛ばされ。ゴーンに近かった「ゴーン・チルドレン」たちも、彼と少しずつ距離を置くようになる。しかし、それでもズルズルとゴーンをトップに君臨させ続けた。

 本書の第2部「独裁の系譜」では、日産の体質や企業風土がどういうものか、日産コンツェルンの創業者・鮎川義介から始まる日産自動車の社史に、多くのページを割いている。そのなかで全自動車日産分会・益田哲夫会長、興銀出身の川俣克二社長、そして日産労連の塩路一郎会長らの名前が出てくる。塩路一郎については、筆者もよく耳にした。「労働貴族」とか「塩路天皇」と呼ばれた労働組合の独裁者で、日産の経営にも多く口出した。当時は、労働運動のトップにこんな人がいるのかと、違和感を持ったことを思い出す。こういった独裁者が育った風土が、日産の体質なのだろうか。一方の勝ち組のトヨタやホンダは、どこか一本軸が通って、それでまとまっている気がするが、日産は優秀な人材は多いが、どこか軸足がない。

 両親はレバノン人で、ゴーンはブラジルで誕生した。幼少期をリオデジャネイロで過ごすが、6歳の時にレバノンの首都ベイルートに母と姉とで移り住む。レバノンに移住した理由は、父親が殺人を犯したという可能性を否定できない。ベイルートでは、母親の影響でイエズス会に入った。ここは多国籍企業ような色々な人種と多文化性、多様性があったという。イエズス会系の名門校「コレージュ・ノートルダム」で小学校から高校まで10年間学ぶ。家では幼少期に身につけたポルトガル語。学校では3ヶ国語、公用語がアラビア語、フランス語と英語が必須教科だった。ゴーンの国際性は、このときに養われたのだろう。勉強はよく出来、ボーイスカウトにも入り、学校ではリーダー的な存在だったらしい。

 17歳で単身フランスに渡り、名門校の「パリ国立高等鉱業学校」を卒業、大手タイヤメーカーのミシュランに入社し18年間在籍した。ミシュランでの業績が評価され、ルノーの上席副社長としてスカウトされ、同社の再建にも貢献した。しかし、強欲で公私混同や不正を犯したりするのは、少年期や青年期に何かあったのだろうか。本書では、はっきり分からないが、父親の存在が影を落とし、妻キャロルの影響だろうか。

 ルノー会長兼CEO(2005年~2019年1月)カルロス・ゴーン 2009年11月8日 - India Economic Summit 2009 ウィキメディア・コモンズ より転載。

カルロス・ゴーン ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>
解説	:NEW DELHI/INDIA, 08NOV09<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>
日付:2009年11月8日, 06:17<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>
原典:Carlos Ghosn - India Economic Summit 2009<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>
作者	:World Economic Forum from Cologny, Switzerland

 ルノーのルイ・シュバイツァー会長兼CEOは、フランスの名門家の出、エリート官僚だった。筆者は、フランスの植民地だったレバノン出身のゴーンは、保守的なフランス企業のトップにはなれないと思っていた。しかしシュバツァーは、彼の優秀さと多様性、日産での実績を買ってルノーの後継会長にもした。日産にやってきたゴーンの「コミットメント」(必達目標)という言葉は、当時は目新しかったことを思い出す。ゴーン自ら「コミットメント」を掲げ、部下にも「コミットメント」を出させ、自ら達成できなければ日産を辞めるとも言った。こんな経営者は、日本にはいなかった。日本の経営者は、彼の経営手法を見習おうとし、彼は経営の「カリスマ」になっていった。経済の長期低迷に苦しむ日本の大企業に、経営のグローバルスタンダードはこういうものかと、見せつけたのだった。

 ルノー元会長兼CEO(1992年~2005年)ルイ・シュバイツァー 出典:ウキメディア・コモンズ

ルノー前会長 ルイ・シュバイツァー Louis Schweitzer sur le stand Renault lors du Mondial de l'Automobile de Paris 2012. 出典:ウキメディア・コモンズ (シュバイツァー医学博士の従姉の孫、サルトルの親戚)

 ルイ・シュバイツァーは、ノーベル賞のアルベルト・シュバイツァー博士の従孫(いとこの孫)、哲学者サルトルの親戚にあたる。

 ゴーンの腹心と思われた西川社長兼CEOは、逮捕1ヶ月前に知らされたという。ゴーンが逮捕された後は、社長としてマスコミの全面に立って、社内調査の結果を報告し、ゴーン統治の精算を訴えた。事件を起こした日産の経営責任を取るべき、との声も多かったが辞めなかった。真相を明らかにして、ガバナンス(企業統治)と日産再建の道筋を付けたかったのだ。西川が、どうやって日産の信頼を取り戻し経営を建て直すのか、筆者の注目していた。しかし彼は意図的でなかったと釈明したが、自らの役員報酬の不正が見つかって、辞任せざるを得なくなった。

 日産の社長兼CEO(2017年4月~2019年9月)西川廣人 出典:ウキメディア・コモンズ

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 ゴーンが2005年、ルノーと日産のCEOを兼ねた時から「統治不全」は始まっていたともいう。薄情で強欲な独裁者、会社の私物化、まるで中小企業のオーナー社長のように。最後に朝日新聞の単独インタビューで、ゴーンの主張を知ることができる。彼の主張は、自身が強欲でないという証拠に、GMから報酬2倍のCEOのオファーを受けたが断ったこと。多くの学者が、自分を分析して独裁者とは言ってないこと。強欲というのは捏造されたイメージだ。日本人から17年間、「彼はいいやつだった」と言われてきた。なのに検察や西川や豊田(経産省出身の社外取締役)が、「彼は良くないやつだ」と言い出した。日本の司法制度には問題がある。司法制度が公平なら、逃亡しなかったとも答えた。

 ゴーンは、ICPO(国際警察機構)から手配されている。今後も米国、フランス、ブラジル等に渡航することは出来ないだろう。レバノンという拘置所に閉じ込められているのは、皮肉なものだ。しかし、ゴーン逃亡を許した責任は誰が取るのだろうか、誰の責任で保釈中のゴーンを監視すべきだったのだろうか。保釈を要求した弁護士か、保釈を決定した裁判所か、保釈に反対した検察か。おそらく誰も責任を取らないと思うが、今後は海外のように保釈中にGPSを装着するなどの方策がとられるべきであろう。

 2019年1月、ゴーン後任のルノー会長に就任したジャン=ドミニク・スナール 出典:ウキメディア・コモンズ

ジャン=ドミニク・スナール	 Jean-Dominique Senard, directeur général de Michelin, janvier 2015. 2015年1月23日 出典:ウキメディア・コモンズ

  

 今回の赤字額は、ゴーンが来る直前の赤字額に匹敵するという。11年ぶりの赤字の原因はいろいろあると思うが、ゴーン時代の無理な拡大路線が影響したとか、新型コロナが追い打ちをかけたとも言われている。そんな単純なことではないと思う。V字回復の「リバイバルプラン」では、日産村山工場など5工場閉鎖、2万千人の人員削減、傘下の部品メーカの保有株を売却、調達先を半分に絞り込み大量発注する代わりに値下げを求めた。日産というブランド価値を今後も維持していくためには、ゴンの負の遺産を払拭し、こういったリストラが新しい経営陣がどこまで出来るのだろうか。

 5月下旬のロイター通信によると、フランスのルメール経済・財務相が「ルノーは早期支援がないと消滅の可能性がある」と言及した。支援の条件は「国内雇用を最大限維持せよ」、「環境負荷の少ない車を開発せよ」だそうだ。つまりこれらが出来ないと、ルノーは消滅すると、大株主の仏政府が要請している。フランスでは労働者の権利が強く生産性が低いため、市場競争力が低いとされている、また日産のように独自で電気自動車を開発する能力は高くない。ルノーも厳しい局面に置かれている。日産からの支援が “頼みの綱” 、日産という組織を最大限に活用すること解決策だが、日産は今そんな余裕はない。

 

 ★ ★ ★

●三菱自動車、燃費試験の不正事件

 2016年4月、三菱自動車工業は軽自動車の共同開発先の日産自動車の指摘により燃費試験の不正問題が発覚。燃費を実際よりも良く見せるため、国土交通省に虚偽のデータを提出していたことを明らかにした。対象車種は、「eKワゴン」「eKスペース」、日産ブランド「デイズ」「デイズルークス」。これらは即日、販売停止が決まった。

 実際よりも、5〜15%程度良い燃費を算出しており、軽自動車の業界基準であるJC08モードで30km/L以上という水準に見せかけていた。 相川社長は、石井国土交通大臣への報告後の記者会見で改めて謝罪し、「会社の存続に関わる程の大きな事案」と述べた。高市総務大臣は、エコカー減税について「燃費が変わった場合は、自動車重量税や取得税の差額を納めて頂く」と述べている。さらに、軽自動車に限らず1991年以降に発売した三菱自動車の全て車種において、違法な方法で燃費試験をしていたことも明らかになった。

 同年10月、日産自動車が三菱自動車の株式を34%保有する筆頭株主となり、ルノー・日産アライアンスの一員に加わった。12月、当時の日産会長兼社長のカルロス・ゴーンが会長に就任、CEOは三菱自動車の益子社長が継続した。

 

●日産、無資格者の検査問題

 2017年9月6日、日産の約7年ぶりにフルモデルチェンジした新型「リーフ」の発表イベントが、幕張メッセの大ホールで開催された。世界各国から報道陣をはじめ、販売店や取引先など約5000人を招待するという豪華なイベントだった。しかも、イベントから2週間足らずの19日には、新型リーフの生産拠点の追浜工場(横須賀市)で、量産開始のオフライン式と世界生産累計1億5千万台達成を祝う式典が盛大に行われた。

 そんなお祭り気分の最中に不祥事が発覚、社内は一転してお通夜のような雰囲気に包まれた。同年9月18日、国土交通省の抜き打ちの立ち入り検査によって、完成検査を無資格者が行っていたことが発覚したのだった。しかも一カ所に留まらず日産の6工場で常態的に行われていたのだ。この結果OEM供給を含む日本で販売した38車種116万台がリコールとなり、その後も各地の工場で同様の問題が発覚、日産の統治能力のなさが露呈した。

 9月29日夜には緊急記者会見を行ったが、出席したのは部長クラス、経過説明とともに深々と頭を下げて謝罪した。他の自動車メーカーでは、経営にかかわるような不祥事が発覚した場合は、経営トップか、それに準ずる役員が説明するのが普通だ。トヨタ自動車もリコール問題がクローズアップした時、消極的だった豊田章男社長を説得して夜遅くに会見を行ったことがあった。ところが西川社長がやっと記者会見を開いたのは、部長クラスによる会見から3日後の10月2日だった。

 またその後、スバルの群馬工場で同様の「無資格者による完成検査と捺印」が発覚。同社もトップが会見し謝罪、リコールとなった。これまで積み上げてきた、日本の自動車メーカーに対する品質や信頼感が揺らいでしまった。

 

 燃費の改ざん問題は、軽自動車は業界ではJC08モードで、30km/Lというのが定着していた。燃費は、速度・加速、気温・湿度・天候、路面・坂道、エアコン等など様々な条件で変わる。例えば燃費30km/Lとカタログに書いてあっても、実際の燃費はその6~7割だ。消費者には、非常にわかりにくい。もっと実体に近い燃費の測定方法は、ないのだろうか。実態とかけ離れた燃費測定が、不正を生んでしまったとも言える。

 また不正検査の問題は、無資格であっただけで品質には問題は無いという声も多い。完成検査は自動化しており、昔のような熟練者でなければ検査できないわけではない。国で決められたこの形式的な手順が、メーカーでは費用のみがかかる行為だとして軽視していたようだ。日産ではゴーンによるコストカットの行き過ぎで、現場が苦し紛れで起こしたという話もある。外国では、日本だけの不必要な、しかも通常監査される事もない規制を設けていて、それを変えようとしない事が問題だと批判しているマスコミさえもある。

 三菱自動車、日産自動車も、もちろんコンプライアンス(法令遵守)の甘さやガバナンス(企業統治)の低さが、こういった不祥事を起こしてしまったが、カタログの燃費に対する実体と乖離(かいり)や完成検査制度の曖昧さが問題でもあることを記しておきたい。

 

 本ブログの関連記事 映画「空飛ぶタイヤ」

   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-f7cd-1.html

2020年6月16日 (火)

新型コロナ2020.06 要請緩和

 2020年5月14日、政府は新型コロナウイルス感染拡大に一定の歯止めがかかっているとして39県に対し、21日には感染者が十分に減少している関西3府県の「緊急事態宣言」を解除した。また25日、感染者が減少傾向にあるとして首都圏4都県と北海道も解除した。これで 47都道府県のすべてで、「緊急事態宣言」が解除された。本ブログ記事「新型コロナ2020.05 宣言解除」のつづき。

 5月25日夜、東京都の「緊急事態宣言」解除に合わせ、7色にライトアップされたレインボーブリッジ 出典:共同通信社ヘリから。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

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 6月1日から15日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナウイルス宣言解除」の続き。

 

●6月1日

 東京都、ステップ2に移行

 東京都は6月1日午前0時から休業要請などの緩和の段階を「ステップ2」に移行、緩和の対象を広げた。学習塾、劇場や映画館、スポーツジム、それに百貨店などの小売店も再開できるようになった。東京都は「緊急事態宣言」の解除後、休業要請を3段階で緩和することにしていて、5月26日から「ステップ1」に移行していた。今後、感染の推移を見ながら、次のステップに進むかどうかを判断する。

 東京都「休業要請」緩和のステップ 出典:NHK 6/1「新型コロナウイルス」特設サイト

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 首都圏3県と北海道は独自に緩和

 東京都以外の首都圏3県と北海道も、それぞれの独自基準に基づき、休業要請などの緩和を行った。

 神奈川県は感染防止対策を条件に、すでに27日午前0時から全業種で解除した。その後順次拡大する。パチンコ店、ライブハウス、接待を伴うキャバレーなども含まれるため、黒岩知事は「おおむね3週間は接待を伴う飲食店など、クラスターが起きた施設に行かないよう要請しており、決して緩めたわけではない」と説明している。

 千葉県は、休業要請を「A」~「D」の4段階で緩和の対象業種を広げることにしていて、5月22日から第1段階として「A」図書館や博物館などを緩和済み。26日午前0時から「B」映画館などに広げ、6月1日午前0時から「C」水族館やパチンコ店、テーマパークなどに加え、「D」のうちスポーツクラブとカラオケ店も解除、大半の業種への要請が緩和された。「D」の対象施設で残るライブハウスやキャバレーなどについては、この1、2週間の推移をみて判断する。

 埼玉県も3段階により、県内の新規感染者数だけでなく東京都の感染者数など、5つの指標を基準に解除する。5月25日から映画館やパチンコ店などの休業要請を解除、ネットカフェや漫画喫茶はテレワーク利用限定で解禁した。しかしカラオケ店やスポーツジム、ライブハウス、接待を伴う飲食店のキャバレーなどは、当分休業要請を続ける。

 なお飲食店の営業時間は、3県とも東京都と同じ宣言の解除後に20時から22時まで延長、イベントの開催も屋内で100人以下、屋外200人以下の開催を認めている。ただし神奈川県は、東京都に次いで感染者が多いがほぼ全面的に解除して首都圏3県の中では一番ゆるい。埼玉県が東京都の次に厳しい。首都圏4都県の解除対象が異なっているので、東京都との往来に懸念が残る。北海道は5月25日から休業要請を緩和したが、札幌市を含む石狩地方に限り、大規模商業施設や映画館などで継続する。

 米全土で抗議デモ続く

 アメリカでは、白人警察官の暴行による黒人男性死亡事件(5月25日)への抗議デモが全米に広がっている。一部ではデモが暴徒化、放火・略奪・警官隊と衝突といった事態も起こり、各地の州や都市で夜間外出禁止令や州兵が動員された。州兵動員数は、暴動鎮圧目的の作戦ではこの30年余りで最も多い7000人超。6月1日の夜までには、この倍に増える見通し。一方平和的デモ隊に、警官隊が催涙弾を打ち込むというケースも起きている。トランプ大統領は、抗議デモに対し「国内テロ」などと、挑発的な言動を繰り返している。

 デモが始まって6日目の6月1日、やっと国民の前に姿を表したトランプは、連邦米軍の派遣を言及。エスパー米国防長官は3日の記者会見で、デモ鎮圧に政府指揮下の米軍を投入することに反対と表明。米軍派遣には、与野党からも批判の声も強い。

 米国では新型コロナによる死者が10万人を越えるが、黒人死亡率の高さが指摘されている。黒人の人口比率33%に対し、死者の70%が黒人。自宅待機措置に対しテレワークが出来ない労働者など、3,600万人の失業者に黒人が多い。先行き不透明、将来不安、現状不満が、デモで噴出しているそうだ。デモの暴徒化には、一部にあおる者たちがいるという。新型コロナは、米国の根深い人種差別や貧困格差の問題を露呈している。

  
●6月2日

 東京アラートの発動

 東京都は2日、都内で新たに34人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと発表した。1日の感染の確認が30人以上となるのは5月14日以来、19日ぶり。都は感染拡大の兆候が見られるとして、小池東京都知事は警戒を呼びかける、初めての「東京アラート」の発動をした。

 赤く点灯した東京都庁舎 出典:NHK 6/2「新型コロナウイルス」特設サイト

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 国の緊急事態宣言が解除された翌日の5月26日以降、夜の繁華街(特に新宿歌舞伎町)に絡む感染者が目立ち始めていたが、都は慎重な態度を取ってきた。しかし再び市中感染が増加する懸念が高まってきた。アラートの発動は都民に対策を促す目的で、休業要請など新たな措置を伴うものではないという。

(第29回)東京都新型コロナウイルス感染症対策本部会議資料(2020/6/2)  

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 都は「東京アラート」の発動指標として、下表の3項目の数値を示している。2日時点で②と③で数値を超えた。

 「東京アラートの目安と現状」 出典:NHK 6/2「新型コロナウイルス」特設サイト

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 都は、6月1日に休業要請の解除行程の「ステップ2」に移行したばかりだった。「東京アラート」で、「ステップ1」に戻す事はしないという。都は休業を再要請する場合の目安として、「1日あたりの感染者数が50人以上(1週間平均)」などを示している。「東京アラート」が解除されない限り、カラオケ店やパチンコ店などの休業要請解除の「ステップ3」には移行しないという。
 
 持続化給付金受注、不透明

  中小企業向けに、個人事業主に最大100万円、法人に最大200万円を支払う経済産業省の「持続化給付金」が問題となっている。「持続化給付金」の申請は5月1日から始まった。経産省は当初、申請から2週間程度で支払うとしていたが、それ以上に時間がかかるケースも目立つという。申し込みのホームページやコールセンターにつながらない状態も続く。現状で給付済みなのは、申請件数の約6割、約75万件にとどまるそうだ。

 中小企業庁によると、給付金手続きやコールセンター事業など業務を769億円で受託した一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」(サ推協)は、大手広告会社「電通」が749億円で再受託、さらに「電通」の複数のグループ企業や人材派遣の「パソナ」やITサービスの「トランスコスモス」などに外注していたことが、2日分かった。これらの会社は、「サ推協」設立に関わっており、受注の流れが不透明だとし野党は追及を強めている。巨額の費用をかけ、複数の企業が何段階も委託・外注すると、利益が「中抜き」にされる恐れがある。

 また「持続化給付金」の手続き業務で、申請の相談に応じる「申請サポート会場」が、有料で多数借りられているという。約500カ所の運営費は全体で約405億円とされているが、借りる費用や人件費などの内訳を、国や電通などは公表していない。利用状況もはっきりせず、税金が有効に使われているかどうか疑問だという。

 9月入学制の導入、断念
 
 安倍首相は2日首相官邸で、「9月入学制」の導入は困難とする自民党のワーキングチーム座長の柴山前文科相と面会した。首相はその場で「法改正を伴う形での導入は、確かに難しい」と伝えた。また1日には公明党が首相に、拙速な検討に反対すると提言している。5月14日の会見で首相は、「こどもの学びの場を確保していくため、9月入学は有力な選択肢の一つ」と力を込め、官邸と首相側近が主導で検討が進められていた。これで9月入学導入は、事実上の断念に追い込まれた。

●6月3日

 消費喚起策に批判集中

 新型コロナウイルスの対策として第1次補正予算に盛り込まれた、新型コロナ収束後の消費喚起策「GoToキャンペーン」事業をめぐり、経済産業省が総事業費約1.7兆円の約2割(3095億円)を上限とする事務局委託費として、委託先を公募していることがわかった。3日の国会審議では、委託費の巨額さに批判が集中。公的な事務手続きを民間委託することは、税金の無駄遣いにつながる恐れ。不正のチェックがしにくくなると、今後の予算審議の焦点となりそう。

 「GoToキャンペーン」は、旅行や飲食店での食事などで使えるクーポン券や割引券を配り、観光地や飲食店などでの消費を支援するもの。旅行のほか外食や商店街、イベント業界の支援を目的に4分野があり、経産省が5月26日から6月8日まで全体事務局の事業者を公募している。

 3日の衆院国土交通委員会では、過去の観光支援策でも総事業費に占める事務経費の割合について、赤羽国交相が 「予算ベースで13~23%の幅だった」と説明した。しかし立憲民主党の荒井議員は、事務経費を抑えてその分で経営難に直面する観光業などへの支援を手厚くするべきだと指摘、都道府県を通して観光協会とか商工会議所とかのルートを使うべきだと注文をつけた。

 2次補正予算の予備費10兆円

 今年度の第2次補正予算案について、野党側は3日、あらかじめ使いみちを決めていない予備費が10兆円と歳出全体の3分の1近くを占めており容認できないとし、予備費の減額を求めていく方針で一致した。立憲民主党の安住国対委員長は、記者団に対し「10兆円の予備費を好きに使うことを認めてしまうのは、議会の自殺行為だ。総理大臣が決めたら何でもいいとなったら、民主主義国家ではない」と述べた。

 巨人の2選手、PCR検査陽性

 プロ野球の巨人は、主力の坂本勇人選手(31)とキャッチャーの大城卓三選手(27)が3日、新型コロナに感染していることが確認されたと発表した。球団では先月末に、選手やスタッフを対象に抗体検査を実施、4人に感染歴を示すとされる抗体が確認された。4人は2日にPCR検査を実施。坂本選手と大城選手が、3日午前「陽性」と確認され2人は入院、球界に衝撃が走った。

 その後2人は、3日夜と5日午前にPCR検査を受け、2回とも陰性と判明。最初のPCR検査では陽性だったが、正常値ギリギリの「微陽性」だったという。2人と接触が多かったとされる26人も、全員が陰性だった。

 米株高、予想以上の経済指標を好感

 3日のニューヨーク株式市場で、ダウ平均は3日続けて値上がりし2万6269ドル。2万6000ドル台に乗せたのは3カ月ぶり。市場予想を上回る米経済指標の発表が相次ぎ、米景気が回復に向かっているとの見方が広がった。ハイテク株の多いナスダック市場の総合指数も、史上最高に迫る勢いだった。

 また4日の東京株式市場で日経平均株価は、4日続伸の2万2695円、2月21日以来およそ3カ月半ぶりの高値。前日3日の米株式市場で主要3指数がそろって上昇し、円相場が円安・ドル高に振れたこともあって、景気回復の期待が高まった。しかしこの日米の株価上昇は、景気回復の過剰期待、実体の経済とは全くかけ離れている。
 

●6月4日

 来夏の東京五輪、簡素化

 来夏に延期された東京五輪・パラリンピックを巡り、大会の簡素化など開催方式の見直しについて検討を始めた。大会組織委員会の森会長と小池都知事が4日に会談し、目に見える形で大会運営を簡素化、合理化を進める方針で一致した。
 
 財政豊富な東京都も、東京五輪の延期による大幅な追加費用、東京都の「貯金箱」にあたる財政調整基金9,000億円超の残高も新型コロナで使い切る見込み。おまけに景気悪化で税収予測が1~2兆円は減収、都の台所も苦しくなっている。首相の言う、縮小しない、無観客にしないという「完全な形」の延期は、中止を回避するための代替案として、安心と安全が担保される「完全な形」へと変わってきた。 

 政府では感染予防のための簡素化案について、観客の削減や開会・閉会式の参加者削減、選手・大会関係者や観客へのPCR検査など医療体制整備も対策案として検討している。観客数の削減は、販売済みチケットや収入減などの問題もある。組織委員会とIOC(国際オリンピック委員会)は、来夏開催へとこぎつけるため、すでにコスト削減や新型コロナ対策の観点から、運営計画の見直しを進めているそうだ。

 埼玉県の休業緩和が追加

 4日午後に埼玉県は、県内での新たな感染者の確認が少なくなっているなどとして、スポーツジムやカラオケ店などに対する休業要請を前倒で解除した。いずれも十分な感染防止対策が徹底されることが条件。一方、ライブハウスのほかキャバレーなど接待を伴う飲食店への休業要請については、都内の感染者数が再び増え「東京アラート」が出されていることなどから、今月18日まで継続される。大野知事は「今後も引き続き、可能なかぎり県を越えた移動を控え、特に東京の夜の繁華街は避けてほしい」と改めて呼びかけた。

 麻生大臣、「民度」が違う発言

 麻生財務相は4日の参院財政金融委員会で、日本の新型コロナによる死者が欧米諸国と比べ少ないことについて質問され、「国民の『民度』のレベルが違う」という話を披露した。ロックダウン(都市封鎖)などの厳しい感染防止策を実施した海外に対し、日本は外出・休業を自粛・要請するという緩やかな対応をとった。大臣は、憲法上強制できなかったから、結果として緩やかに要請になっただけとしつつ、「それでも効果があったのがミソだ」と述べ、「国民の協力があったということに尽きる。非常に誇りに思う」と評価した。

 政府のコロナ対策に、日本人の協力を強調する意図があったことは分かるが、欧米市民の感染予防への意識が低いと取られかねない。国会議員として言い方が乱暴だ。他国を見下し侮蔑する暴言、コロナで亡くなった人たちに寄り添ってない、海外に発信して欲しくない、台湾や韓国は日本よりも死亡率が低い、もっと原因を分析すべきなど、多方面から批判が相次いでいる。一方で、大臣の発言の支持する声も多いという。
 

●6月5日

 GoToキャンペーンを大幅見直し

 消費喚起策「GoToキャンペーン」事業について、政府は5日、事務局を委託する事業者の公募をやり直すと発表した。委託費の上限が総事業費の約2割にあたる3095億円と巨額だったことや、手続きをまとめて民間委託することに批判が高まり、見直しを迫られた。

 同事業は総事業費1.7兆円。経産省は全体のまとめ役となる事務局の事業者を、6月8日を締め切りで公募、すでに1社が応募しているという。今回この公募を中止し、改めて支援分野ごとに分ける形で事業者を選ぶ。具体的には観光支援策を担う国交省、飲食店は農水省、商店街とイベント業界は経産省が、それぞれ事務局の事業者を公募する。見直し理由について経産省は、幅広い業界の支援を一つの事務局が担うと事務が複雑になると考えたと説明。委託費の削減につながるかどうかは不明。政府が当初見込んでいた7月中旬ごろのキャンペーン開始は、遅れることになりそう。

 景気動向指数と消費支出、最大の下落

 内閣府が5日発表した4月の「景気動向指数」(2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比7.3ポイント下がって81.5と3カ月連続で低下した。統計を開始した1985年1月以降で最大の下落幅、2009年10月(80.1)以来10年6カ月ぶりの低さだった。

 景気動向指数の一致指数推移 出典:内閣府「景気動向指数令和2(2020)年4月分(速報)の概要」(2020/6/5)

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 総務省が5日発表の4月「家計調査」によると、全世帯(2人以上)の「実質消費支出」(物価変動除く)は1世帯あたり26万7922円、前年同月比11.1%減少。7カ月連続の減少で、比較可能な2001年1月以降で 過去最大の減少率となった。昨年9,10月の消費の変化は、10月からの消費税増税の影響。

 消費支出の推移 出典:総務省「家計調査報告-2020年(令和2年)4月分-」(2020/6/5)

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 全世帯「実質消費支出」や「景気動向指数」がともに大幅に減少したことを受け、西村経済再生相は5日午後の記者会見で、4月は外出自粛や「緊急事態宣言」で経済を人為的に抑制してきたので、その影響で落ち込んだと説明した。10万円の一律現金給付や学生支援など「支援策をしっかりと講じながら、経済活動を再開していく」と強調した。しかし、まだ先行き不透明で、厳しい状況が続く。

 米失業率、予想外の改善

 米労働省が5日発表した5月の雇用統計(速報値)は、失業率が13.3%となり、戦後最悪だった4月(14.7%)から一転して改善した。市場は20%程度の失業率を見込んでいたが、経済活動の一部再開で人材の職場復帰が進んだとみられる。景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数も、前月比250万人増加した。

 米政権は企業の雇用維持を条件に、6600億ドル(約72兆円)という巨額の枠を設けて、従業員の給与支払いを肩代わりする異例の資金供給を続けている。再雇用でも企業は資金を受け取れるため、職場復帰が加速したそうだ。トランプ大統領は急きょ記者会見して「経済再開は極めて順調だ」と主張。ただし改善したといえ、失業率は金融危機時のピーク(2009年10月、10.0%)を超えた。飲食店などは営業制限が残っており、コロナの収束が遅れれば一時解雇が「恒久解雇」になる可能性もある。

 日本スリーデーマーチ、中止

 花火大会や秋祭りなど、各地で大規模イベントの中止情報を聞く。11月1日~3日の3日間、埼玉県比企地域で開催予定の「第43回日本スリーデーマーチ」が、「中止」となった。参加するウォーカー及び大会関係者の健康と安全を第一に、申込受付の開始前に決定をしたという。 2019年の第42回大会は、昨秋の台風19号の影響に続き、中止は2年連続。


●6月6日

 東京都心部の人出、6~8割程度

 NTTドコモが、携帯電話の基地局情報をもとに全国の人出データを集計している。それによると週末6日の東京都心の人出は、感染拡大前と比べて6~8割程度の水準に戻っている。
東京都内の6日午後3時時点の人出は、感染拡大前の今年1月中旬~2月中旬の休日の平均と比べて、渋谷センター街周辺で41.1%、新宿駅周辺で26.6%、銀座周辺で17.8%とそれぞれ減少。

 このほか、首都圏3県と北海道の人出は、感染拡大前と比べて、大宮駅周辺で23.7%、横浜駅周辺で15.5%、千葉駅周辺で10.2%、札幌駅周辺で0.3%の減少。首都圏の3県では、感染拡大前の7割~9割の水準に、北海道ではほぼ感染拡大前の水準に戻った。
 

●6月7日

 郵便局のアベノマスク回収箱

 群馬県太田市にある21の郵便局で、政府が配布している布マスクの寄付を市民に呼びかけ、回収箱を置いた。アベノマスクは「大人には小さい」という声があったことから、小中学生にマスクの寄付を募る太田市の呼びかけに、1人の郵便局長が設置の口火を切ったという。ところが6日から7日にかけて、わずか1週間ほどで全局から回収箱が姿を消した。

 日本郵便では、回収箱の撤去と、政府の布マスクの寄付の呼びかけを禁じる指示を出した。新聞社の取材に対し、広報部の責任者は「国の方針に反し、不用品のように扱うことは見過ごせない。『アベノマスク』などと揶揄する表現も好ましくない」と話したという。

 世界の死者40万人

 米ジョンズ・ホプキンス大学による7日午後時点の集計によると、新型コロナ感染による世界の死者が40万人を超えた。欧州は減少傾向にある一方、ブラジルなど南米諸国で急増している。国別では、米国が最多で10万9000人超で全体の約4分の1を占める。2番目が英国が4万人超、ブラジルが3万5000人超と続く。3番目のブラジルが、英国を抜くのは時間の問題。

 ロイター通信によると過去5カ月の新型コロナによる死者数は、1年間でマラリア感染で亡くなる人数と並んだという。世界の感染者の累計は690万人超。米国192万人が最も多く、ブラジル67万人、ロシア47万人の順。ペルーが19万人で8番目、チリが13万人で13番目。

 コロナ軽視のブラジル

 ブラジルの感染拡大が止まらない中、ボルソナロ政権は7日夜、新型コロナの新規死者数を1382人と発表していたが、後に525人に修正した。6日までは、1日1000人程度で推移していたが、事態の矮小化を狙った可能性がある。また累計死者数などのデータを非公開とするなど、透明性を欠く対応を続けている。

 新型コロナを「ただの風邪」とうそぶくボルソナロ大統領は、一貫して新型コロナを軽視している。メディアが過剰に騒いでいると非難し、経済活動の即時再開を主張して、各州知事と対立している。2日、大統領公邸で支持者を前に「すべての死を気の毒に思うが、あらゆる人は死ぬ宿命にある」と述べた。大統領の対応に批判を浴びている中、WHOからの脱退も示唆している。
 

●6月8日

 第2次補正で審議入り

 政府は8日、新型コロナ感染拡大に対応するため、2020年度第2次補正予算案を国会に提出した。総額は31兆9114億円。民間投資を含めた追加対策の事業規模は、4月に成立した第1次補正予算と並ぶ117兆1千億円となる。予算の全額を国の借金で賄い、雇用や中小企業などの支援を厚くする。

 衆参両院で本会議が開かれ、財政演説と代表質問が行われ、同日午後から審議に入りする。予備費は、異例の10兆円。まず財政演説で麻生財務大臣は、野党が指摘している「巨額予備費の白紙委任」との批判に対し、雇用調整助成金などに1兆円程度、持続化給付金や家賃支援などに2兆円程度、地方向けの医療・介護などに2兆円程度と5億円の「大まかな使い道」を示した。安倍首相は「様々な事態に迅速にかつ十分に対応できるように計上した。予備費の使用は、適時適切に国会に報告する」と述べた。

 第2次補正予算案をめぐり野党は、例外的に政府の裁量で支出を決められる予備費の必要性は認めるも「桁が大きすぎる」、「国会のチェックが働かない」など、政府に見直しを求めている。野党側は「持続化給付金」、「GoToキャンペーン」なども追及姿勢を強めて、激しい論戦が繰り広げられそうだ。政府・与党は、参院審議を経て11日の成立をめざす。

 持続化給付金、月内にも検査

 持続化給付金をめぐり、事業の不透明な再委託などに疑念を深めているため、梶山経済産業相は8日、委託先や外注先を含め支出が適切かどうか 、急きょ監査法人など 外部の専門家を入れて月内にも検査を始めると発表した。不必要な支出を確認できれば、委託先にに返還を求めるという。梶山大臣は、「契約の中身、非常に明快」だとして契約は適切だったと強調。しかし具体的な検査のやり方がはっきりしないため、不透明な委託がどこまで本気で実態解明につながるかは不明。

 電通とサ推協が会見
 
 持続化給付金の支給業務を受注した「サービスデザイン推進協議会」(サ推協)と、その業務を再受託した「電通」が8日、都内で記者会見を開いた。野党から実態が不透明で「幽霊会社」と指摘されている「サ推協」の平川業務執行理事は、「中小企業支援を目的に設立され、電子申請のノウハウを持つ本協議会がやるべきと考えた」と説明した。

 「電通」の榑谷(くれたに)副社長は、再委託は「多額の公金を会社の貸借対照表に反映させることは、経理部門が不適切だと判断した」からと説明。また「通常と比べ低い営業利益になる見通しで、非常に難しい業務に取り組んでいる」と強調、中抜きで巨利を得ているという批判を否定した。詳しく説明をしてこなかったこと、決算公告が出されていなかった法令違反、システムやコールセンターがつながりにくいなどを認め謝罪したが、国民の疑問は晴れそうもない。

 6月1日午前、野党議員が「サ推協」の本部事務所を訪ねると、不在。張り紙には、「コロナ感染症対策の徹底および強いご主張をされる申請者の直接来訪から職員を守るため、リモートワークを行っている」と記載されていた。会見の翌9日には事務所を公開し、本部業務を再開したと説明、電通やパソナなどから出向する職員5人が書類を作成するなどしていた。「サ推協」の広報担当理事は「この事務所では総務や経理、人事などを担当している。都内に複数の拠点があり、150人体制で支払い業務などを行っている」と説明した。更に翌日の10日午後、再び野党議員が訪ねると、またも無人だった。9日の事務所公開は、パフォーマンスだったのか。

 UFJが3ヶ月ぶり再開

 2月末から臨時休業していたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(UFJ、大阪市)が、8日から約3カ月ぶり営業を開始した。当面は入場者を大阪府在住者に限定。出迎えるキャラクターは、来場者と距離を取って、エアタッチなどで園内の光景は変化している。

 東日本・西日本遊園地協会などが策定したガイドラインによると、入場者が一定数以上にならないよう入場制限、常時マスクの着用、入場ゲートで体温確認、入場前に手指のアルコール消毒、密集を避け他人との距離を確保するよう求めている。ジェットコースターの乗客はマスク着用で「大声での発声を控えるように」、着ぐるみは「来場者にタッチすることのないよう」などと明記。アトラクションでは「1席ずつ空けて着席」、お化け屋敷でお化け役は「できる限り離れて」とリスク軽減に努める。こういった遊園地のスタイルは、全国に広がっていくようだ。

 なお、東京ディズニリゾート(千葉県浦安市)は、現在も臨時休園を継続している。千葉県は、テーマパークの休業要請を1日に解除したが、東京都なや全国から来場者が集まるため、他の自治体の状況を踏まえ、運営準備が整った段階で再開日を決めるという。またハウステンボス(長崎県佐世保市)は、すでに5月16日から6月18日までの予定で入場者を長崎県在住に限定(入場料1,000円)して、一部営業を再開している。6月19日からは、居住地の制限はなくなるという。
 

●6月9日

 持続化給付金をめぐり、国会論戦

 9日、31.9兆円という史上最大規模の第2次補正予算案をめぐり、持続化給付金事業などの「税金のムダ遣い」を焦点に、衆院予算委員会で論戦が始った。持続化給付金の事業の大半が再委託され、多数の下請けが絡む構図が不透明と批判されている。

 持続化給付金の事務を769億円で「サービスデザイン推進協議会」(サ推協)に委託。「サ推協」は、受注額のうち97%の749億円で大手広告会社の「電通」に再委託している。「サ推協」が4月末に提出した事業に関わる業者の体制図には、「電通」が再々委託した「電通ライブ」などの子会社が明記されていたという。しかし実際は、更に「電通ライブ」は「パソナ」や「トランスコスモス」、「大曰本印刷」などに外注しており、これらは記載されてなかった。梶山経産大臣は、業者の全体像を示す資料を経産省が受け取ったのが昨日(8日)だったと答弁、謝罪した。委託・外注先の全容を把握していない状況で、事業が進められていた。野党側の質問に、政府側が答えきれない場面も目立ち、疑念はさらに深まった。  

 立憲民主党の川内議員は、下請け、孫請けなどの会社名を次々と挙げ、こうした委託や外注を重ねれば、利益を「中抜き」される恐れがあるとして、それぞれに残る100億円単位の金額を尋ねた。梶山経産相は、事業の統括をする「電通」が全事業費の約13%にあたる104億円を受け取っていたことを認めた。さらに、「電通」から委託を受けた「電通ライブ」が、そのほとんどを「パソナ」や「トランスコスモス」などに更に委託していたことも明らかにしたが、人員やコストなど詳細の公表を渋った。

 入札については、経産省は4月8曰に公示。「サ推協」ともう1団体が応札したが、「サ推協」が選ばれた経緯も、不透明だという。立憲の大串議員は「適正な入札が行われたのか」、「出来レースだ。談合まがい」と反発。同省が野党側に示した入札時の資料では、多くの情報が黒塗りされていると指摘した。梶山大臣は「公正な競争」を強調したが、電通と経産省癒着の疑惑は残ったまま。

 国会関与に消極的な予備費10兆円

 9日の予算委員会では、野党は内閣の裁量で支出できる10兆円の予備費を問題視し、減額や透明性の確保のため、予算使用前に事前に国会に相談するよう求めた。首相は「内閣の責任として支出し、事後に国会の承認を得るとされている」などとして消極的。「なぜ5兆円、8兆円で足りないのか」との野党の問いには答えない。安倍政権では、首相の最側近とされる今井首相補佐官をはじめ経産省出身者が重用され、財務省の影響力が小さいそうだ。各省庁では何が起きているのか分からないまま、頭越しに官邸側ですべて決まったたという。予算編成過程で本来、事業を精査する財務省の機能が十分かと、疑問視する見方もあるそうだ。

 新型コロナ対応の補正予算は、先に成立した1次と今回の2次補正を合わせ、過去に前例のない規模。首相は「前例にとらわれる対応ではとても雇用を守り抜くことができない」とし、その金額は、雪だるま式に膨らんでいる。自民党幹部は、「どれだけカネを出しても、今批判する人はいない」とうそぶく。コロナ対策に十分な予算は必要だが、予算の透明性や妥当性、執行の公平性は保たれるのだろうか。

 コロナ失職、半月で倍増

 新型コロナの影響で解雇や雇い止め(見込み含む)にあった失職者が2万人超となったことが、厚労省が9日に公表した集計でわかった。直近の5日時点で2万933人、5月は1カ月で約1万3千人増えたが、1万人を超えてからは半月で1万人増えており、雇用情勢が急速に悪化している。

 2月から各地の労働局を通じて集計している。4月末時点では3774人だったが、5月の連休明けから急増。5月21日時点で1万人を超え、5月末時点では1万6723人だった。6月5日までの1週間をみると、4210人増えており、そのうち非正規の働き手が6割超。業種別では、特に飲食業が多く、うち非正規の働き手が8割近くを占めている。業種別の累計では宿泊業、飲食業、製造業の順。都道府県では、東京都、大阪府、北海道の順に多いという。各地の労働局が把握した人数に限られているので、実体はもっと多いとみられている。

●6月10日

 持続化給付金、疑惑まみれ

 立憲民主党の川内議員は9日の衆院予算委員会で、持続化給付金の委託先を選んだ経緯と入札について質した。経産省は4月8日に業者を公募、入札には「サービスデザイン推進協議会」(サ推協)とコンサルティング会社の「デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー」(デロイト)が参加した。ところが、公募開始前の3月30日と4月2日に、すでに経産省が「サ推協」側と面会しており、再委託した「電通」担当者も同席していたと判明。経産省は5月14日に「サ推協」を選定、30日に769億円で事業の委託契約を結んだ。

 経産省は入札調書を公表したが、都合の悪い部分があるのか入札予定価格や「デロイト」の入札価格は黒塗り。入札資格の等級は「デロイト」がAに対して、「サ推協」はC。 「サ推協」は2016年の設立以降、法律で定められた決算公告もしていない。事務所は野党議員が訪ねても不在、会社としての実態は疑問。梶山経産相は「契約に瑕疵はない」とするが、野党は「談合だ」と疑う。「電通」はなぜ直接引き受けなかったのか。榑谷副社長は8日の記者会見で、サ推協が給付金事業の経験を持っていた、巨額の給付金を自社の貸借対照表に計上することに経理部門が不適切と判断したと説明したが、理由にならない。

 「サ推協」は、「電通」や「パソナ」などが2016年に設立。これまでも、経産省事業の計14件約1600億円を受注してきた。立憲の枝野代表は「電通ダミー法人による丸投げ、中抜きという疑惑がある」と批判。電通が受注したことや、自らの取り分を見えにくくするためこうした構図を作ったのではとみる。実際、「サ推協」が事業にかかわる企業の全体像を経産省に提出したのは今月8曰。梶山経産相は予算委員会で、4次下請け以下の業者名は「初めて聞いた」と答弁。事業に関わる企業が何社で、いくらの利益を上げているのかも不明。

 10曰の野党合同ヒアリングでは、今回「電通」子会社から請け負つていたイベント会社「テー・オー・ダブリュー」で2010年、長谷川・元中小企業庁長官が顧問に就任していたことも追及した。長谷川元長官は現在、首相補佐官を務めており、官民癒着の匂いがする。野党統一会派の山井議員は「1ヵ月経つても未入金の方が数万人もいる。本当に中小経営者は厳しい状況になっている」と質した。経産省側は遅れの原因は、主に入力内容の不備だと申請者の責任にしているが、本当の遅れの原因は経産省の委託・外注の複雑な構造にあるのではなかろうか。

 家賃支援942億円、リクルートに委託

 衆院予算委員会では、補正予算案に盛り込まれた家賃支援給付金も議論になった。梶山経産相は委託費が約942億円で、リクルートへの委託を予定していると説明し、「2次補正が成立すれば、速やかに契約を締結する予定」と述べた。国民の玉木雄一郎代表は 「非常に多額だ。適切に執行されるかチェツクしなければならない」と指摘。通常国会を延長せず、17日に閉会しようとする政府・与党の姿勢を批判した。家賃支援給付金事業は売り上げが急減した事業者を支えるため、家賃や地代を最大600万円補助する内容で、予算額は2兆242億円。

 第2次補正予算、衆院通過

 疑惑まみれの持続化給付金に批判が集まるなか、新型コロナ対応の追加対策を盛り込んだ総額31兆9114億円の第2次補正予算案は10日、衆院本会議で与野党の賛成多数で可決された。参院での審議を経て、12日に成立する見通し。

 野党の立憲民主、国民民主、曰本維新の会、社民も新型コロナ対応の必要性を踏まえて賛成。具体的な使い道が決まってない予備費10兆円を問題視した共産党は反対した。審議は参議院に移るが、委託先の選考、委託・外注の構図に問題など、疑惑は晴れない。

 センバツ32校が8月に交流戦

 日本高野連は10日、開催直前の3月11日に中止となった「第92回選抜高校野球大会」に出場予定だった32校の試合機会を設けるため、8月に甲子園に招待する「2020年甲子園高校野球交流試合」を開くと発表した。

 日程は、8月10日~12日、15日~17日の6日間、各チーム1試合ずつ計16試合を行う。組み合わせ抽選会は、7月18日に各校主将が参加してオンラインで行われる。原則「無観客試合」で行うが、控え部員や保護者らの入場は、今後検討する。

 日本高野連の八田会長が、中止決定時に「何かの形で甲子園の土を踏ませてあげたい」として、32校の救済措置を探っていた。会長は、「全国の3年生部員の代表という思いでプレーしてほしい」と語った。すでに8月開催の「第102回全国高校野球選手権大会」と、代表49校を決める地方大会の中止を発表(5月20日)したが、地方独自の大会の開催も決まりつつあることなどを総合的に判断したという。
 

●6月11日

 東京都、アラート解除しステップ3へ

 東京都は11日、新型コロナ感染状況が落ち着いてきたとして、感染拡大への警戒を呼びかける「東京アラート」を解除した。11日の東京都の感染者数は22人だった。

(第30回)東京都新型コロナウイルス感染症対策本部会議資料(2020/6/11) 

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 都がアラートや休業要請緩和を判断する主な3指標は、11日時点で、①1日あたりの感染者数(1週間平均)が17.9人、②感染経路が不明な人の割合(1週間平均)が48.0%、③週単位の感染者数の増加率が0.98倍と、いずれも目安をギリギリ下回った。また10日までに4日連続で新たな感染が20人を下回ったことも評価され、都が病床確保の目安としている入院患者病床1千床、重症患者100床に対し、入院患者237人、重症患者21人と医療提供体制も十分に確保されているという。

 「東京アラート(警報)」解除には… 出典:NHK 6/11「新型コロナウイルス」特設サイト

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 都は「東京アラート」の解除とともに、休業要請の段階的な緩和についても、12日午前0時にカラオケ店やパチンコ店などの遊興施設への要請を解除する「ステップ3」に移行する。「ステップ3」では、ほかに遊園地やゲームセンター、接待を伴わないバーなどへの要請も解除される。また飲食店の営業時間は、現在の22時から24時までに延長可能となる。

 さらに、19日からは適切な感染防止策が講じられる前提で、キャバレーなどの接待を伴う飲食店やライブハウスへの休業要請を解除する。またイベントについても19日以降、千人以下(ただし屋内は、かつ定員の半分以下)で開催できるようになる。

 東京都要請緩和 出典:NHK 6/1「新型コロナウイルス」特設サイト

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 政府の方針を踏まえ、都は6月19日から更に緩和する方針を公表した。適切な感染防止対策を取る前提で、残りのキャバレーなどの接待を伴う飲食店や、ライブハウスも休業要請を解除するほか、飲食店への短縮営業の要請も18日までで終了させる。

 背景にはアラート解除が遅れれば、東京都だけが社会経済活動の停滞が続くという焦りがあったという。「ステップ3」で休業要請緩和し、さらに19日に事実上全面解除へと、感染拡大の防止策を講じて第2波を抑えることで、経済社会活動再開へと舵を切った。小池知事は「今後、われわれは、新型コロナとともに生きる『ウィズコロナ』という新たなステージに立って、第2波に備えた適切な感染拡大の防止策を講じながら、経済社会活動や都民生活を営んでいく必要がある」、また「これまで自粛をお願いしてきたが、これからは自らを守る自衛の時代。自粛から自営の局面だ」と述べた。

 我々は、感染拡大の不安を抱えながら、「新たな日常」のステージに入ることになる。「東京アラート」により、都庁やレインボーブリッジを夜間に赤く点灯させていたが、11日から前と同じ7色になる。

 経産省、委託先と癒着か

 11曰発売の週刊文春は、持続化給付金を担当する経産省の中小企業庁・前田泰宏長官が大臣宣房審議官だった2017年に米テキサス州のイベントに参加した際、近くのアパートを借りて「前田ハウス」と称してパーティーを開いていた。そこに昨年6月まで電通社員で、現在「サービスデザイン推進協議会」(サ推協)の業務執行理事を務める平川健司氏が、出席していたと報じた。平川氏は8曰に、電通副社長らとともに記者会見をした人物。

 11曰の参院予算委員会では早速、立憲民主党の蓮肪議員が前田長官に詰め寄った。報道の真偽を問われると、前田長官は落ち着きのない様子で「パーティーは毎日開き、意見交換はそこでやっていた」と認め、平川氏が参加していたことや、別の場所でも平川氏と会っていたと認めた。蓮肪議員は「国民の疑惑や不信を招く行為はしていないと言えるのか」と質した。前田長官は国家公務員倫理法や省内規などに反する行為はないと釈明。野党は、経産省と「サ推協」が癒着し、そのキーマンが前田長官だったのではとの見方を強めている。

 前田長官は、2015年から大臣官房審議官として「サ推協」と関わるサービス業を所管する商務情報政策局を担当。前田氏と平川氏は、その前から交流を始めたという。「サ推協」は平川氏らの「電通」が中心となって2016年に設立され、設立当日に経産省が公募した事業を受託した。その後も経産省発注の事業を次々と引き受け、これまでに計14件約1576億円分を請け負い、その5割にあたる808億円分が電通などに再委託されている。

 この日の予算委員会で、経産省が入札前に行っていた応札予定者との面談の詳細も明らかになった。「サ推協」は3月30曰と4月2曰、3日の計3曰間、各1時間ずつ中小企業庁側と面会。「サ推協」が事業を再委託した「電通」社員だけでなく、「電通」から外注された子会社の「電通ライブ」の社員まで同席していたという。一方「デロイト」とは、3月30日に電話で接触、面会は4月3日の1時間のみ。他1団体は4月6曰に面会を10分したのみだったという。蓮肪議員は、「平等な情報提供と言えるのか」と疑問視。前田長官は釈明したが、「サ推協」への発注前提の「出来レース」だったのでは、との見方が強まっている。

 実態が見えない「サ推協」

 野党の国会議員らが3人は、11日も都内の「サービスデザイン推進協議会」(サ推協)の事務所を訪れたが、職員とは面会できなかった。入口にある内線電話をかけようとすると、警備員から「メールで連絡してください」と止められた。「サ推協」は電話番号を公開しておらず、議員らがメールしても返信はすぐには来なかった。中小企業庁を通じ面会を依頼していたが、アポイントはなかった。

 「サ推協」は取材に対して、問い合わせはメールで受けている。野党側の面談要求に応じるかどうかは明言せず、ホームページをリニューアルし、会見の情報、設立意義なども含め説明していくとしている。議員らは業務内容などについて聞きたいとしているが、「サ推協」側は応じていない。野党側は「運営が不透明だ」、「実態が見えてこない」と批判している。

 第2次補正予算案における持続化給付金の手続き業務も、約850億円で再び「サ推協」に委託される可能性がある。野党側は見直しを求めているが、最終的には「サ推協」が再び受託しそうだ。経産省は2次補正予算分について6月中の受け付け開始をめざしており、新たに別の事業者を選べば、準備に時間がかかるとし「随意契約」で委託する可能性が高い。

 鹿児島国体 ことしの開催断念

 鹿児島県の三反園知事は11日の県議会本会議で、10月3~13日に県内で開催予定の「第75回国民体育大会」について、年内開催を断念する考えを初めて示した。予選となる地方大会の開催の見通しが立たないことや、2万人規模とされる選手や関係者の移動のリスクなどを考慮して、日本スポーツ協会とスポーツ庁、鹿児島県、それに同じ年に全国障害者スポーツ大会を開く日本障がい者スポーツ協会で開催の可否について協議を続けていた。

 知事は、日本スポーツ協会・伊藤会長やスポーツ庁・鈴木長官らと会談し今年の開催断念で一致、1年程度の延期案を関係機関に要望・調整しているという。報道陣の取材に知事は、「何とかして鹿児島国体を開けるように全力で努力している。調整は来週いっぱいくらいはかかる」と語った。しかし、来年以降の開催地である三重県など4県からは、今後の開催に影響が出ないよう求める要望が出されていて、難しい調整が続いているという。国体の本大会の中止や延期は過去に例がない。


●6月12日

 給付・助成事業の遅れ

 政府の新型コロナ対策の給付事務への不信感は、なかなか給付が届かないという不満があるようだ。持続化給付金では、5月1日の申請開始直後に申し込んだが、いまだに給付されていないという人が多いと聞く。一律10万円の特別定額給付金も、10日現在で受給したのはまだ全体の1/3程度らしい。

 13日付の朝日新聞朝刊によると、主な給付・助成事業の現状と問題点は、以下の通り。

 ①一律10万円の給付金:予算額12兆8803億円(1次補正) 対象者1億2730万人のうち支給済みは38%(10日現在) オンライン申請でのトラブルが多い。

 ②持続化給付金:2兆3176億円(1次補正)、1兆9400億円(2次補正) 申請件数199万件のうち支給決定済74%(11日) 業務の再委託、再々委託、再々々委託や外注化など複雑で不透明。政府は、支給遅れは申請書の不備としているが、原因は不明。

 ③雇用調整助成金:690億円(1次補正)、2808億円(2次補正) 申請件数15万5553件のうち支給決定済み56%(11日) 手続きが煩雑、オンライン申請はトラブルで停止。

 ④GoToキャンペーン:当初は7月中旬ごろ開始予定 1兆6794億円(1次補正) 巨額の事務委託費が批判され、事務局事業者の公募がやり直しに。実施時期は遅れる見通し。

 第2補正では、休業手当をもらえない中小企業労働者が国に直接、申請できる休業者向け支援金の創設も盛り込まれた。しかしこれには、派遣先の仕事がなくなり雇用契約の切れた派遣社員、日雇い労働者などは受け取れない。こうした人たちをどう救うかという課題が残っている。

 国会の会期延長に応じず

 持続化給付金の民間委託の不透明や支給の遅れなど、対策をめぐる疑念や不満が続出、紛糾している。野党は、17曰に会期終了する通常国会を大幅に延長するよう求めている。政府・与党は、会期通りに閉会する構えだが、野党は「追及逃れ」だと批判している。

 立憲民主の枝野代表は12曰、党会合で「国会を閉じるということは、感染症対策を放り出して逃げることに他ならない」と主張。参院本会議では、共産党の紙議員が予備費10兆円に対し政府に白紙委任だとし、「『国会を止めるな』。この声に応えることが政治の責任だ」と訴えた。政府・与党は野党の会期延長の要求に応じる考えは全くない。自民党の森山国対委員長は、9日の記者会見で「一番大事なのは、予算成立後、政府にしっかりと執行に向けて頑張ってもらうことだ」と述べ、閉会中審査を必要に応じて行う考えを示している。

 通常国会終盤は、黒川検事長の賭けマージャン問題、コロナ対策では不透明なお金の流れが次々に明るみに出る一方、内閣支持率は下落傾向にある。自民党は、「悪い材料ばかりで、延長しても何も良いことはない」、「政府の裁量で支出できる予算が10兆円もあるから国会を開かなくていい」というのが本音だ。

 経産相、長官の処分せず

 持続化給付金を担当している中小企業庁のトップである前田長官と電通との関係が、12曰も国会で追及された。梶山経産相は参院経産委員会で、前田長官が2017年に視察先の米国でパーティを開き、電通の平川氏が同席していたことについて「軽率だった」と述べた。しかし国家公務員倫理法上の問題はないとして、処分はしない考え。

 2次補正予算、問題抱えたまま成立
 
 新型コロナ対応の追加対策を盛り込んだ第2次補正予算は12日、参院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立した。立憲民主党や国民民主党などの野党は、コロナ対策の必要性を考慮して賛成。共産党は、予備費10兆円を問題にして反対した。政府・与党は、国会を予定通り17日に閉会させる方針。事業委託での「中抜き」、予備費10兆円の「白紙委任」などの問題を抱えたまま、予算の執行策に移る。

 2次補正の支援策の主な対象と規模は、以下の通り。

 ①家賃支援給付金の創設:2兆242億円 家賃の一部を月100万円を上限に最大6ヵ月分支給、休業などで収入が減つた店を支える制度。

 ②持続化給付金の拡充:1兆9400億円 今年創業した事業者らにも対象に拡大。★1次補正に続き、再委託で「中抜き」はないかとの疑念。

 ③企業の資金繰り支援:11兆6390億円 無利子融資を拡大。資本注入も可能に。

 ④雇用調整助成金の拡充:4519億円 休業手当の一部を補助する助成金の日額上限を1万5千円。労慟者が直接申請できる給付金も創設。

 ⑤緊急包括支援交付金の増額:2兆2370億円 検査・医療体制の整備に自治体が使える交付金。

 ⑥地方創生臨時交付金の増額:2兆円 自治体の休業協力金などを支援。

 ⑦予備費の増額:10兆円 政府の裁量で使えるお金を積み増し。★政府に使い方を白紙委任、異例の規模に野党反発。無駄遣いされないか。

 ⑧その他、政府系金融機関などを活用した資金繰り対策に、11兆6390億円を盛り込んだ。

 財源は全額、国の借金である国債の追加発行で賄う。当初予算などを合わせた今年度に新たに発行する国債の額は、リーマンーショツクヘの対応で膨らんだ2009年度の53.5兆円を大きく上回る90.2兆円。予算の56.3%を借金で賄う、国の借金体質はより深刻。

 安倍首相は12曰の予算成立後、首相官邸で記者団に「支援を一日も早く届け、事業の継続と雇用、生活を守り抜く」、「大切なことは、今必要としている方々にスピード感をもってお届けをしていくことだ」と語つた。立憲民主党の福山幹事長は「政府の対応は常に遅くて、小さくて、中途半端で、国民の生活や経済状況はどんどん悪化していった。まだまだ課題は山積している」と批判した。


●6月13日

 39県の人出、8割回復

 「緊急事態宣言」の解除が先行した39県は、5月14日の解除日から1ヶ月。ソフトバンクグループの携帯電話基地局情報から集計したの主要駅周辺の人出調査(12日現在)では、感染拡大前(1~2月)のおおむね8割まで戻っているという。しかし観光地に賑わいはまだまだ。スパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)は、首都圏との往来自粛を18日迄要請する県の求めで、再開できず。感染防止策をとり、営業は7月1日を予定しているという。

●6月14日

 東京都、感染者47人

 東京都は14日、都内で新たに47人が新型コロナに感染していることが確認された。40人以上の感染者数は、5月5日以来。47人のうち37人はこれまでの感染者の濃厚接触者で、その半数にあたる18人が、集団検査を受けた新宿区の「夜の繁華街」にある同じホストクラブの従業員、ほぼ全員は無症状だそうだ。また37人の中には、接客を伴う飲食店の従業員と客が合わせて9人、さらに集団感染が発生した武蔵野中央病院(小金井市)の患者と職員が5人含まれる。

 一方47人のうち残り10人は、今のところ感染経路がわかってないが、この10人のうちにも「夜の繁華街」の関係者が5人いた。よって全体の47人のうち32人が、「夜の繁華街」に関係する人だったという。新宿区では店舗で1人でも感染者が出た場合、関係者全員を濃厚接触者として検査する。これまでホストクラブなど3店舗を対象に集団検査を実施されているという。なお、15日の東京都の感染者は48人だった。

 夜の繁華街ガイドライン

 都内で「夜の繁華街」を中心に新たな感染者の確認が相次いでいるのを踏まえ、西村経済再相は接待を伴う飲食店などでの感染防止を図るためのガイドラインを13日に公表した。14日これを受けて西村大臣は、小池都知事、吉住新宿区長と会談した。会談では、二次感染を防ぐため、ガイドラインの実践や定着を図るのに加え、感染が発生した店舗に来店していた人への情報提供、従業員にPCR検査の受診を呼びかけるなど、連携して進めていくことを確認した。

 会談のあと、西村大臣は記者会見し、「繁華街を有するほかの区や、東京以外の大都市でも展開できるよう、モデルケースとして進めていきたい」、また東京都で14日47人の感染が確認されたことについて、「従業員全員がPCR検査を受けたという、いわば前向きな取り組みの結果でもある。二次感染を防ぐ前向きな取り組みにこれが結果として人数が出てきているので、この数字で19日の段階的引き上げ(接待を伴う飲食店とライブハウスの解除)を変更する考えはない」と述べた。小池都知事は「今回の47人は非常に積極的に検査を行った結果としての数字で、かつての数字とかなり違ってきている」とコメント。きょう第2波対策チームを発足することも明かした。

 11日に「東京アラート」が解除し、休業要請緩和の「ステップ3」へ移行したばかりで、都庁内部からも解除の妥当性を問う声も出ている。さらに接待を伴う飲食店、ライブハウスなどの休業要請も、19日に全面解除される予定。

  安倍首相、ワクチンは早ければ年末

 安倍首相は、14日夜に出演したインターネット番組で、感染の第2波へに関し、「医療提供体制をしっかりと支援していくと同時に、検査体制を拡充していかなければいけない」、また「大変暑いカタールや中東の国でも感染が拡大しているので、夏になったからといって安心はできない」との認識を示した。水際対策については、海外往来の再開に慎重に検討を進める考えを示した。

 またワクチンについては、国内での研究とともに米バイオ企業「モデルナ」や英「アストラゼネカ」で開発が進んでいるとし「すごく早ければ年内に接種できるかもしれない」と述べ、「完成したあかつきには、日本もしっかり確保できるよう、すでに交渉している」と明らかにした。さらに、感染した人と濃厚接触した可能性がある場合に通知を受けるスマホ向けアプリが、今週中のリリースを目指し開発の最終段階だとしたうえで、個人の電話番号や位置情報には触らないので、安心していただきたい」と述べた。

 一方、「持続化給付金」や「GoToキャンペーン」の委託をめぐる指摘に対し、総理は「当然、正しい支出なのかは厳格に運用を実施していかなければならない。必ずしも1つの会社で、全部できる会社はなく、効率が良いとも、安くなるとも限らない。得意な分野の会社にそれぞれ振り分けていく。全部を行える会社がないわけなので、トータルで見なければならない」と説明、「実費が発生しなければ、支払いはしないと明確に申し上げたい」とした。

 北京で感染再燃(NHK)

 中国の北京市では、11日、12日の2日間に7人の新型コロナ感染者が確認、13日、14日の週末2日間であわせて72人の感染が確認された。市内の農産物や水産物を扱う国内有数の食品市場を訪れていた人が、相次いで感染している。地元当局は市場関係者や周辺住民などに大規模なPCR検査を実施している。北京では6月10日まで2か月近くにわたって、新たな感染者が確認されていなかった。

 地元当局は、14日の会見で「北京は非常時に入った」と強調して、市場はすでに閉鎖され、市場の周辺の団地で人の出入りが厳しく管理されているほか、小学校や中学校でも授業を停止したところがあるなど、感染が再び拡大しないよう対策を強化している。また中国では遼寧省や河北省でも、この市場を訪れた人やその家族の感染が確認されていて、中国政府は感染拡大への警戒を強めている。

●6月15日

 参院決算委の議論

  自民党の長峯議員は「新型コロナの第2波や新たな感染症に備え、最後の手段として罰則付きの外出制限や営業停止を実施できるようにするために法律で定めておくべきでないか」と求めた。これに対し安倍首相は「どうしても必要な事態が生じる場合には当然、検討されるべきものだ。ただ私権の大きな制約を伴うことになるので、慎重に考える必要がある」と述べた。

 国民民主党の浜口議員が参院決算委員会で、持続化給付金の申請が始まった5月1日、翌2日に申請した人でも、まだ支給を受けていない例があると指摘、「正直言って遅い。まだ支給されてない方については、いつまでに支給すると明確に言ってもらいたい」と要求した。これに対し安倍首相は「指摘は十分承知しているが、この1か月間で150万件、2兆円を支払っている。申請する方に何も問題がなく、受ける側が怠慢でできていないのではない。書類の中に問題があったのは事実だ」、「申請者と連絡がつかなかったり、要請通りの修正がされなかったりした例がある 」と答え、遅れの原因が申請者の書類の不備を強調した。

 また「経産省側も、相当丁寧に指導している。残っているのはもう少し。これからも必要とされる方に、なるべく1日でも早くお届けすることに全力を傾けていきたい」と述べた。「一生懸命やっているということは評価をして頂きたいし、すべてが経産省側の手落ちでということでもない」と経産省を擁護した。

 会期延長を衆院議長に申し入れ

 国会の会期末が17日に迫る中の15日、自民党・森山、立憲民主党・安住の国会対策委員長が、国会内で会談した。安住氏は、「新型コロナの第2波、第3波の懸念がある中、国会を開いておかなければ、立法府の責任が問われる」と、会期を延長を求めた。これに対し森山氏は、政府が提出した大半の法案がすでに成立したので「延長の必要はない」と応じなかった。

 このあと、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党の国会対策委員長が国会内で会談、感染の第2波に備えた対策などの議論を続けるべきで、国会閉会は認められないという認識で一致した。そのうえで16日午後、与党側に改めて延長を求めるとともに、17日に大島衆議院議長にも申し入れることを決めた。

 安住国会対策委員長は記者団に対し「即応性を持って対応できるようにするには、大幅な会期の延長が必要だ。仮に延長が実現できなくても、実質的に国会を動かすよう呼びかける。関係する委員会を毎週どこかで開く形がベストだ」と述べた。

 「サ推協」の事務所公開できず

 持続化給付金をめぐり、野党側は、委託先のサ推協の協議会とメールでやり取りを続けていて、事務所を公開するよう求めたところ、セキュリティー上の観点から公開できないという回答があったことを、15日の野党合同ヒアリングで公表した。

 GoToキャンペーン観光分野の委託費

 消費喚起策の「GoToキャンペーン」をめぐり、赤羽国土交通大臣は参議院決算委員会で、観光分野の事務委託費についておよそ2200億円を上限とすると明らかにした。「この金額を聞いて高すぎるのではないかという印象を持つ方もいると思う。公募の内容や結果については、透明性をもってしっかりと説明責任を果たしていく」と決意を示した。事務委託費の上限は、観光分野の予算1兆3500億円の16%にあたる。

 委託される主な業務について赤羽大臣は、全国各地での説明会の開催、多くの事業者や店舗に参加してもらうためのサポート業務、旅行先の地域で使えるクーポン券の印刷・配送や不正防止の対策、インターネットなどを通じた広報業務などが想定されていることを明らかにし、委託費は適正だとの認識を示した。しかし具体的な積算根拠や費用削減策についての説明はなかった。

 「GoToキャンペーン」をめぐっては、政府が委託先の公募の手続きをいったん中止して、関係省庁が分野ごとに公募し直すことを決めた。このうち観光分野は、今週中にも観光庁が、改めて公募を開始する方針。

 埼玉県、16日から全面解除

 埼玉県の大野知事は15日、県内の休業要請を16日から全面解除すると発表した。この日県庁で開かれた専門家会議で、キャバレーなど接待を伴う飲食店やライブハウスなどを対象に続けてきた休業要請と、22時までとしている酒類の提供時間の制限について、解除を了承された。16日に開かれる県の対策本部会議で正式に決定する。15日現在の埼玉県の感染者数累計は、1021人。うち入院:21人(重症:4人) 、死亡52人。

 埼玉県は「緊急事態宣言」解除を受けたあと、段階的に休業要請を解除しているが、キャバレーなどの接待を伴う飲食店やライブハウスは、休業要請を続けていた。しかし新たな感染者数などが県の設定した目安を下回っているとして、感染防止対策の徹底を条件に休業要請を解除することになった。これで4月から続いていた埼玉県内の休業要請はすべて解除される。

 

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 10兆円予備費、持続化給付金、GoToキャンペーン、10万円定額給付、雇用助成金・・・など、不透明な予算と支出、システムトラブル続き、滞り遅れる支給、安倍政権の支持率は最低。2月26日の第14回新型コロナウイルス感染症対策本部で「国民の皆様と一丸となって、新型コロナウイルス感染症対策を更に進めていくよう、お願いいたします」と発言した安倍総理。この国のリーダーや官僚は、何が「国民と一丸」なんだろうか。

 スリム化のために行政は、多くの職員を常時雇えない。政府が、事業を民間委託するのは、決して悪いことではない。しかし事業を「丸投げ」、事業費の「中抜き」を許し、業者との「癒着」があってはならない。新型コロナのドサクサ紛れに、まさに「火事場泥棒」のような「税金のムダ使い」は、許すべきでない。

 総額31.9兆円の今年度2次補正予算は、10兆円の予備費を計上したまま成立した。どうやって10兆円という数字が出てきたのだろうか。確かに新型コロナの収束や第2波、第3波も見通せない。対策からこぼれ救済すべき人、投入すべき事業が、まだまだ出て来るだろう。各省庁からの予算要求をよく吟味もせずに積み上げたものか、首相側近や官邸側が「えいやっ」で決めた数字か。いくらなんでも、10兆円もの金額の使い道を政府に白紙委任するのはおかしい。

 憲法は、予算を国会の議決を義務づけており、内閣の責任で支出できる「予備費」は、予見し難い予算の不足にあてるために限った例外措置だ。安倍首相は「100年に1度の国難を乗り越える上においては、前例にないこともやらなければいけない」と言う。そうであればなおさら透明性があり、抑制的に運用しなければならないし、予算の執行に議会の監視が欠かせない。会期を延長して国会を開いていれば、事前に使途を説明でき、さらに追加支出が必要になった場合もすぐ3次補正予算案を提出できる。予備費の白紙委任は、財政民主主義の理念に反する国会の自殺行為と言う声も上がっている。今後どう予備費を執行し、国会、国民に報告していくのか、注視していきたい。

 立憲議員が指摘したように、森友、加計、桜を見る会、検事長の定年延長、(河井参議院議員の選挙資金も)など、首相や側近、官邸など権力に近い人が、不正に優遇され、疑惑を生んでいる。首相は、それは「まったく的外れだ」と語気を強めて否定したが、まったく説得力はない。

2020年6月11日 (木)

新型コロナによる肺炎と血栓症

  国内で新型コロナウイルス感染者が初めて見つかったのは、2020年1月16日。それから半年近く6月中旬になったが、まだ先行きは見えない。最近では新型コロナの症状が「肺炎」だけではなく「血栓症」の報告が相次いでいるという。
 

  昨年末に中国に端を発した新型コロナウイルスは、当初は「新型肺炎」とも呼ばれた。重症化した患者が、肺炎を起こして亡くなる例が多かった。しかし最近の報告では、肺だけでなく「血管の炎症」により全身に症状が出ることがわかってきた。

  「血栓症」が増加するとの報告が多く上がり始めている例として、オランダの研究チームはICUに入室したすべての新型コロナ感染患者184名について、4月5日時点で13%が死亡、12%が生存退院、76%が依然ICU入室中であった。全患者のうち31%に血栓性合併症が確認されたという。またドイツでは、新型コロナで死亡した患者12人の病理解剖を実施。7人(58%)の患者に深部静脈血栓塞栓症を認め、凝固異常が死亡に影響している可能性を示した。論文は5月6日に報告された。

   厚生労働省は5月18日、医者向けの「新型コロナウイルス感染症の診療の手引」を改訂した。

 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第2版」(2020年5月18日発行)の表紙 出典:厚生労働省ホームページ

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 「診療の手引き」では、新たな知見を踏まえ、重症化に関連があるとされる「血栓」へ の対応や 重症化を見極める指標となる「重症化マーカー」、 新たに承認された治療薬についてなど、最新の治療のポイントをまとめている。第1版の「手引」は、3月17日に発行したが、その後様々なことが分かってきたため第2版の発行となった。

  新型コロナに感染した人のうち、約8割は症状がないか軽症ですむが、入院が必要になるのは約2割。重症化するのは5%程度とされている。 

 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第2版」(2020年5月18日発行)

 下の図は、国内の年齢別致死率。

 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第2版」(2020年5月18日発行)

 「診療の手引き」には、【重症化のリスク因子】として、「高齢者、基礎疾患(糖尿病・心不全・慢性呼吸器疾患・高血圧・がん)、喫煙歴のある患者では、致死率が高い」としている。

  NHKホームページ 新型コロナウイルス特設サイト「新型コロナ 重症化のメカニズムは? 解明に向け進む研究」 (2020年6月3日)によると、重症化しやすいとみられる人として、アメリカのCDC(疾病対策センター)は65歳以上の高齢者に加えて、慢性の肺の病気や、重い心臓病、糖尿病、肝臓の病気などの持病がある人のほか、慢性の腎臓病で透析治療を受けている人、喫煙者やがんの治療や臓器移植などで免疫力が低下している人、それに重度の肥満の人などをあげている。 

 NHKホームページ「新型コロナ 重症化のメカニズムは? 解明に向け進む研究」2020年6月3日

 また「診療の手引き」の【合併症】の項目には、「若年患者であっても脳梗塞を起こした事例が報告されており、 血栓症を合併する可能性が指摘されている。また、 軽症患者として経過観察中に突然死を起こすことがあり、 これも血栓症との関連が示唆される。」とある。

  新型コロナ感染症では、肺炎とともに肺の血管が詰まる「血栓症」が起き、酸素を体内に取り込めなくなる事例があることが分かってきたそうだ。血栓は、血管内にウイルスが入り込んだり、免疫が暴走して自分自身の体を攻撃する「サイトカインストーム」と呼ばれる症状などのため、 血管の細胞が炎症を起こしている可能性が指摘されている。

 「サイトカイン」は細胞から分泌され、免疫や炎症を調整するタンパク質で、他の細胞に命令を与える。ウイルスの侵入で「サイトカイン」が増えすぎて、ストーム(嵐)のように暴走すると正常な細胞も攻撃する。こうした症状が見られる際には、免疫が患者の関節を攻撃して炎症を起こす病気、リウマチの治療に使われる、免疫の働きを抑える薬の投与が行われる。

  さらに「サイトカイン・ストーム」で血管が傷ついて炎症が起こり血栓ができやすい。その血栓が血管に詰まってしまうと、肺で酸素が取り込めなくなったり酸素が行き渡らなくなったりして、重症化につながると考えられる。また「サイトカイン・ストーム」が、腎臓や肝臓など、複数の臓器で起き、多臓器不全となって死に至ったとみられるケースも、各国で報告されている。

 そのため「診療の手引き」には、「血栓症」対策として、血管の中に血栓ができているかを見る指標「Dダイマー」の数値を「重症化マーカー」として確認することが重要だとし、正常値を超えたら必要に応じて血液が固まるのを防ぐ「ヘパリン」(血液をサラサラにする薬) を投与するなどといった抗凝固療法を推奨している。血栓は、脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなる。それほど重症でなかった患者が、急に亡くなるケースはそういった可能性もあるのではないだろうか。

 一方で、これまで新型コロナで重症化しやすいと考えられてきた喘息(ぜんそく)の患者について、国立成育医療研究センターで中国とアメリカの患者のデータを解析したところ、重症化リスクは高くはないそうだ。また欧米では、子どもがまれに全身の血管に炎症が起きる川崎病のような症状で、中には重症化して死亡したケースも報告されている。今のところ国内では、このようなケースは報告されていないが、日本川崎病学会では今後も注視するとしている。(ちなみに、「川崎病」を発見した小児科医の川崎富作氏は、6月5日老衰のため東京都内の病院で逝去された。)

  
 「診療の手引き」の薬物療法には、現時点では新型コロナに対する抗ウイルス薬による特異的な治療法はないとしながら、日本国内でも臨床研究・試験が開始されている以下のような主な薬剤を紹介している。

 国内で入手できる新型コロナの適応薬として、「レムデシビル」 (RNA 合成酵素阻害薬)は抗エボラウイルス薬として開発中であるが、コロナウイルスにも活性を示すという。2020年5月1日、アメリカで緊急使用を認めた新薬であり、日本では「特例承認制度」を用いて5月7日に正式に新型コロナウイルスへの治療薬として承認された。

 新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 出典:国立感染症研究所ホームページ

新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真。粒状の粒子の上にコロナウイルス特有の冠状のスパイクタンパク質が観察できる。出典:国立感染症研究所ホームページ

 エボラウイルスのビリオン(電子顕微鏡)出典:米CDC ウィキメディア・コモンズ 

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  現在、国内において,治験及び特定臨床が実施されているもの 、以下の薬剤はいずれも有効性・安全性が確立していないため、研究としての適切な手続きを行った上で使用することが原則だそうだ。

 ・「ファビピラビル」(アビガン、適応:インフルエンザ)は、企業治験及び特定臨床研究が実施されているほか、観察研究も実施中。

 ・「シクレソニド」(吸入ステロイド薬、 適応:気管支喘息)は、国内において特定臨床研究が実施されているほか、観察研究も実施中。

 ・「ナファモスタット」(適応:急性膵炎)は、国内において特定臨床研究が実施されている。

 ・「トシリズマブ」(アクテムラ)と「サリルマブ」(ケブザラ)(遺伝子組換え、適応:関節リウマチ)は、国内において治験が実施中。

  このように、新型コロナ感染症は重症化すると肺炎だけでなく、さまざまな臓器で炎症が起きたり、血液の凝固異常がみられたりするなど、「全身性の疾患」だという認識に変わってきている。

 写真は、米疾病予防管理センター(CDC)の作成による新型コロナウィルスの微細構造模型。ウィキペディア・コモンズから転載。

米疾病予防管理センター(CDC)の作成による新型コロナウィルスの微細構造模型。ウィキペディア・コモンズから転載。

 

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 1918年から1919年にかけて流行した「スペイン風邪」では、5千万と推定される死者の中で、健康な若者の死亡数が著しかったようだが、「サイトカイン・ストーム」が発生したのではないかと推測されているそうだ。また2003年の「SARS」流行では、香港での調査によると死因の多くが「サイトカイン・ストーム」によると判明しているという。2009年新型「インフルエンザ (H1N1)」 でも、基礎疾患のない若者の死亡率が高いことも同様な理由として説明されているようだ。

 6月8日のWHOの記者会見で新型コロナ感染症の無症状感染者は伝染力がほとんどない、また別の責任者は9日、感染者のおよそ40%は、無症状感染者からうつされているという見方を明らかにした。矛盾している気がするが、どういうことだろうか。 

2020年6月 1日 (月)

新型コロナ2020.05 宣言解除

 2020年4月7日、政府は新型コロナウイルス感染増加に対し「緊急事態宣言」を東京都・大阪府などの7都府県に発令。更に4月16日、対象を全都道府県に拡大した。5月14日、政府は感染拡大に一定の歯止めがかかっているとして、39県に対し「緊急事態宣言」を解除した。一方、東京都・大阪府などの大都市圏や北海道では、引き続き事業者への休業要請、施設の使用制限、学校の休校、不要不急の外出自粛、イベントの中止等が続いた。本ブログ記事「新型コロナ2020.04 感染緩和」のつづき。

 

 5月14日首相官邸で、新型コロナウイルス感染症対策本部の第34回会議で右中央が安倍総理。(出典:首相官邸ホームページ)

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 首相はアベノマスク(布マスク)を着用しているが、周囲の大臣や官僚たちは不織布マスクや手作りマスク。


 5月31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナウイルスの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナウイルス感染緩和」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

 

●5月18日

 検察庁改正案の見送り

 マスコミ各社の世論調査では、検察の公正さを失う「検察庁改正法案」に7割近くが反対、改正法の成立を目指す安倍内閣の支持率が急落、不支持が支持を上回る。18日政府は、今国会で「火事場泥棒」と批判された「検察庁改正法案」の見送りを決定した。新型コロナを優先すべきで、世論に背を向けるのは得策でないという。ただし継続審議とし、次期国会での成立を目指す。

 WHO年次総会が開催

 WHO(世界保健機関)年次総会が18日、TV会議方式で2日間の日程で始まった。新型コロナの中国寄りの対応をめぐり、米国などから批判を浴びている。いち早く感染の封じ込めに成功した台湾のオブザーバ参加は、中国の強い反対で見送られた。その後5月29日、米トランプ政権は「WHOが中国に支配されている」として脱退を発表、米中の対立が更に激化しそう。

 ワクチン開発競争

 米バイオ医薬品企業のモデルナ社は18日、開発を進める新型コロナウイルスのワクチンについて、第1段階の臨床試験(治験)で良好な結果を示すデータが確認されたと発表。今後さらに大規模な治験で有効性を検証し、早期の量産を目指すという。

 WHOによると、新型コロナ・ワクチンは現在、世界で100種類以上の研究が進められていて、このうち少なくとも10種類については、実際に人に接種して安全性や効果を確かめる治験が始まっているそうだ。中国でも、複数企業が今秋の実用化を目指し治験を急いでいる。ワクチン開発でも、米中の攻防が続く。

 国内では大手製薬会社やベンチャー企業、それに大学などの研究機関が開発に取り組んでいて、国が基礎研究から臨床試験の一部までを補正予算で支援する。早ければ、今年の夏にも実際に人に投与する治験が始まる見通しだという。

 しかし専門家によると、ワクチンの開発では重大な副作用が起きないか安全性を慎重に確認する必要があり、 実際に一般人が接種できるようになるには、少なくともあと1年~1年半はかかり、早期の実用化を疑問視する声もあるようだ。

 日本のGDP3.4%減、景気後退へ

 内閣府が発表した今年1月~3月のGDP(国内総生産)の1次速報は、前期(昨年10月~12月)の0.9%減、年率換算で3.4%減。もともと3月期は消費増税後の景気影響を回復回復を判断するものであったが、新型コロナで状況は一変。しかし新型コロナの影響が現れるのはこれから。4月~6月のエコノミストの予測はおよそマイナス20%、300万人前後が失業するという。戦後最悪の景気後退は避けられない。元の水準に戻るのは、4~6年先という予測も出ている。
 
   
●5月20日

 黒川検事長が賭けマージャン

 安倍政権は世論の反対に押され、今国会での「検察庁法改正」を断念した。しかし当事者である東京高検・黒川検事長は、緊急事態宣言で外出自粛要請が出る中、都内の産経新聞記者宅で5月1日と13日、賭けマージャンをやっていたという疑惑を5月20日の「週刊文春」が報じた。法務・検察当局は事態を重く見て、黒川検事長を辞職させることで首相官邸との検討に入った。勝手に法律の解釈を変えてまでして、黒川氏の定年延長を決めた安倍政権の責任が問われる。

  夏の甲子園が中止

 高野連(日本高校野球連盟)は、今年8月に甲子園球場で予定していた夏の全国高校野球を中止することを決定。大会が中止となるのは戦後初めて。中止の理由として、長期に及ぶ休校や部活動休止で十分な練習ができないため選手のケガが心配される、夏休みを短縮する動きがある中で地方大会の開催は学業の支障になるなど。さらに、全国から長時間かけて選手と関係者が移動と集団宿泊することなどで、感染リスクは避けられないとしている。今後、各都道府県の高野連では、地方大会を独自で行うかどうか判断をするという。

 アベノマスクが配達された

 20日、やっと我が家にアベノマスクが配達された。

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 国内でのマスク不足を解消するため、安倍首相は4月1日、全国のすべての世帯を対象に2枚ずつ布マスクを配布する方針を発表。4月7日、閣議決定した。発案したのは経済官庁出身の官邸官僚と見られており、首相に対して「全国民に布マスクを配れば不安はパッと消えますよ」と進言したとされる。4月17日より東京を皮切りに配布が始まっていた。

 しかし今頃になって届いたのでは、あまりにも遅い。厚労省のホームページでは、都道府県別の全戸配布状況が掲載されている。5月27日(水)時点で全国で約25%、6月3日(水)までに約59%の配布見込みだという。

 今更、もう布マスクは要らないという声も多い。これからの夏に向けて、マスク着用による熱中症が心配されているため、冷感マスクが欲しいという人も。またマスクの値下がりが止まらず、1枚78円だった平均価格が、ここ1ヶ月で1/3の26円ほどになっているそうだ。

 アベノマスクに同封されたパンフ。

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●5月21日

 関西3府県の緊急事態宣言解除

 政府は21日、「緊急事態宣言」を継続している8都府県のうち、新規感染者が十分に減少している大阪府・京都府・兵庫県の関西3府県を解除した。政府が示す解除の目安の一つは、「直近1週間の新規感染者数の累計が、人口10万人あたり0.5人程度以下」。

 21日時点では、人口10万人あたり関西3府県は、0.04~0.24人と目安以下。一方埼玉県は0.33人、千葉県0.21人と下回っているものの、東京は0.56人、神奈川1.08人と上回っているので、首都圏として一括して判断。北海道も0.69人と目安を上回る。よって首都圏5都道県と北海道については、宣言を継続する。ただし目安の「0.5人」をやや上回っていても、今後の感染の推移や医療提供体制などを分析した上で、25日に改めて解除を判断する。

 世界の感染者数500万人越え

 米ジョンズ・ホプキンス大学によると、新型コロナの世界の累計感染者数は21日に500万人を超え、1カ月で倍増した。4月3日に100万人、15日に200万人、28日に300万人、5月10日に400万人を記録。感染者が最も多いのは米国で155万人超。約30万人のロシア、約29万人のブラジルと続く。アジアで最多のインドが11万人を越えた。感染が緩和し始めた欧州を、感染が拡大している新興国が上回る状況となっている。

 世界の累計死者数は、約32万8千人。死者も米国が約9万3千人で世界最多。次いで英国が約3万6千人、イタリアが約3万2千人。欧米などは行動制限の緩和など経済活動の再開に動くが、世界全体の感染拡大ペースは衰えていない。

 中国指導部の新型コロナ対策批判

 中国の全人代(全国人民代表大会)開幕を前に、改革派の知識人からネット上で指導部批判が相次いでいる。強権的な取り締まりや情報隠蔽、外国へのマスク提供や医師派遣が政治的利用されていること、全人代が国民の意思を反映する機関でないことなど。
 

●5月22日

 東京都のロードマップ

 小池東京知事は5月22日、「「新しい日常」が定着した社会の構築に向けて」と題して、「緊急事態宣言」解除後の社会経済活動再開のための独自の「ロードマップ」(工程表)を発表。感染状況を見ながらステップ1~3まで徐々に緩和し、段階的な活動再開を目指す。

 東京都のロードマップ 出典:NHK「新型コロナウイルス」特設サイト

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 赤枠は、この後の25日開いた東京都の対策本部会議で、国の「緊急事態宣言」の解除を受けて、26日から「ステップ1」の緩和を始めることが確認された。 

 中国全国人民代表大会が開催

 新型コロナウイルスの流行を受けて延期されていた中国の全人代(全国人民代表大会)が22日に開幕。新型コロナウイルスの感染拡大について「習近平国家主席を核心とする指導部の力強い指導のもと、対策は大きな戦略的成果を収めている」と成果を強調。その一方で「感染症対策の中で多くのぜい弱な部分が表面化し、国民の一部の意見と提案を重視すべきである」と、政府の対応に不十分な点があったことを認めた。

 天安門広場の西端にある人民大会堂(議事堂) 出典:ウィキメディア・コモンズ

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 また例年、全人代で打ち出している年間の経済成長率については、世界の新型コロナの流行や経済・貿易の不確実性が高く、中国の発展が予測困難な要因に直面しているため、具体的な年間目標を提示しなという。中国政府が、全人代で経済成長率の数値目標を示さないのは異例のことだ。

 また中国政府に対する反体制活動を禁止する「国家安全法」の香港への導入を検討する議案が提出された。中国が香港の支配を強化し、これまでの市民の自由と「一国二制度」がさらに脅かされることになる。これに対し、香港市民の抗議活動が繰り広げられていたが、5月28日「香港国家安全法」の制定方針を採択して、全人代は閉幕した。


●5月24日

 政府のコロナ対策を評価せず

 朝日新聞社が23,24日に実施した全国世論調査で、新型コロナの感染が再び拡大することへの懸念を聞いたところ、「大いに心配している」と「ある程度」を合わせて9割を超えた。政府の対応を「評価しない」は57%にのぼり、「評価する」は30%だった。

 また安倍内閣の支持率は29%(前回5月15,16日は33%)で、2012年12月に第2次安倍政権が発足して以来、最低。不支持率は52%(同47%)に増え、5割を超えた。東京高検・黒川検事長は賭けマージャンで辞任したが、定年を延長させた安倍首相の責任を問う質問には、「責任は大きい」68%、「それほどでもない」24%だった。

 毎日新聞は23日、全国世論調査を実施。安倍内閣の支持率は27%で、前回調査(5月6日)40%から急落、不支持率は64%(前回45%)に急上昇。東京高検・黒川弘務検事長については「懲戒免職にすべきだ」が52%と半数を超え、厳しい処分を求める声が強い。

 NHKは、5月15日から3日間、世論調査を行った。安倍内閣を「支持する」と答えた人は、先月調査より2ポイント下がって37%、「支持しない」は、7ポイント上がって45%。

 少し前になるが、読売新聞社が5月8~10日に実施した全国世論調査では、安倍内閣の支持率は42%、不支持率は48%で前回4月調査(4月11~12日)とほぼ同じだった。新型コロナを巡る政府の対応を「評価しない」と答えた人は58%で、前回調査(3月20,22日)の39%から上昇し、「評価する」34%(前回53%)と逆転している。

 大相撲夏場所、中止

 日本相撲協会は、3月の春場所を無観客試合で開催したが、5月24日初日の夏場所(東京・国技館)は中止。夏場所の日程は当初より2週間延期して感染拡大の様子を見守っていた。その後、相撲界で7人が新型コロナに感染したため、力士の稽古を自粛していたが、「緊急事態宣言」延長を受け、5月4日に中止が決定された。7月19日初日の名古屋場所は、会場を愛知県体育館ではなく、東京・国技館に移し無観客での開催をめざす予定。

●5月25日

 5都道県の緊急事態宣言を解除

 政府は25日、新型コロナ感染症対策本部を開き、新規感染者が減少傾向にあるなどとして、北海道・埼玉・千葉・東京・神奈川の5都道県の「緊急事態宣言」を解除することを決めた。4月7日最初に7都府県、16日に全国に広がった「緊急事態宣言」 は、5月14日に39県、21日には関西3府県で相次いで解除。これで 47都道府県すべて、解除されたことになる。

 国内の感染者数の1日ごと発表者数(クルーズ船を除く、ただし帰宅後の感染確認は含む) 出典:NHK「新型コロナウイルス」特設サイト

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 東京都の感染者数の1日ごと発表者数 出典:NHK「新型コロナウイルス」特設サイトDatatokyo1

 首相は会見で「全国で新規の感染者は50人を下回り、一時は1万人近くいた入院患者も2千人を切った」と説明。5月31日の期限を待たずに「一時全国に拡大した『緊急事態宣言』は、わずか1カ月半でほぼ収束させることができた」と胸を張った。解除の目安の一つ「直近1週間の新規感染者が10万人あたり0.5人」 については、24日時点で 東京都0.36人、埼玉県0.18人、千葉県0.11人で目安を下回る。一方、北海道と神奈川県は、それぞれ0.76、0.70人と上回っているが、政府は医療体制の状況などを踏まえて総合的に判断をした。

 政府が示した解除の基準は、①感染の状況(直近1週間の新規感染者が10万人あたり0.5人以下)、②医療提供体制、③PCR検査などの監視体制の3要素を上げていた。

 経済活動段階的に拡大

 安倍首相は「緊急事態宣言」解除を受け、イベントの開催や外出などについて「感染防止対策を講じることを大前提に、本格的に再開していく」と表明。イベントの規模を数千人規模へ順次拡大するとした。

 25日に改定された政府の「基本的対処方針」では、外出自粛やイベントの開催制限、施設の使用制限などについて、6月以降おおむね3週間ごとに3段階、①6月18日まで ②6月19日~7月9日ごろ ③7月10日ごろ以降、で緩和する考えを提示した。

  下表は、「基本的対処方針」からNHKがまとめた「段階的な緩和」 出典:NHK「新型コロナウイルス」特設サイト

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 5月末までは、不要不急の帰省や旅行など都道府県をまたぐ移動は避け、①の期間は、5都道県との移動は慎重にしながら、観光振興は都道府県内から。②の期間から、観光は県外を含めて徐々に、無観客でプロスポーツも開催できるとし、接待を伴う飲食店などに行くことも緩和を検討。イベントの人数上限も①~③の期間に従って、段階的に引き上げるが、いずれも屋内の場合は参加者数を収容定員の半分程度に抑えるよう求めている。

 一方で首相は、「次なる流行のおそれは常にある」と強調。再び感染が拡大した場合は「緊急事態宣言」を再び発令する可能性があるとした。経済活動の再制限する目安について、「直近1週間の新規感染者が10万人あたり2.5人程度」との数値を示した。

 政府の経済対策

 25日の解除決定に先立ち記者会見を開いた安倍首相は、緊急経済対策として今年度第2次補正予算案(事業規模100兆円程度)を27日に閣議決定すると表明した。首相は今年度の2度の補正の事業規模は合計で200兆円を超えるとし、「GDP(国内総生産)の4割に上る空前絶後の規模、世界最大の対策」と自画自賛した。2次補正には、中小事業者などへの家賃補助として最大600万円の給付金の新設、医療従事者への最大20万円の慰労金、地方創生臨時交付金を2兆円上積みし、計3兆円にすることなどを盛り込むことも明らかにした。

 プロ野球、開幕決定

 プロ野球は25日、12球団の代表者による会議で、新型コロナの影響で延期していた今シーズンの開幕日を、来月19日とすることを決めた。当面は観客を入れずに試合を行い、レギュラーシーズン120試合の実施を目指すという。

●5月26日

 東京都、ロードマップを修正

 東京都は26日、スポーツジムやカラオケ店など休業要請について、 前倒しで解除対象にするなど修正したロードマップを発表。最終段階まで休業を求めていたスポーツジムを「ステップ1」、カラオケを「ステップ3」に分類し直した。

 施設への休業要請などを巡っては、国が25日の「緊急事態宣言」の解除に伴って「基本的対処方針」を改定。スポーツジムやカラオケを「感染防止策が徹底されれば一定の安全性が確保できる」として6月1日以降の緩和を認めたことから、都としての対応を見直した。

 東京都のロードマップ 出典:NHK「新型コロナウイルス」特設サイト
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 都の緩和レベルは26日現在の「ステップ1」で、博物館や図書館などへの休業要請を解除。「ステップ2」は、29日に対策本部会議を開き、移行の可否を判断する。コンサート、展示会などのイベント開催の上限人数も国の指針に合わせた。

 北九州市で第2波

 北九州市は26日、新型コロナ感染者を新たに2人確認したと発表。同市は4月30日から23日間連続で新規感染者ゼロだったが、5月23日に3人、24日3人、25日6人、26日2人とあわせ4日連続で計14人。うち11人は感染経路が分かっていない。福岡県内の感染者は計674人となった。市は、再開した公共施設43カ所を再び6月18日まで休館にすることを決めた。期間中の市主催のイベントも中止、もしくは延期する。市内の感染状況次第では、前倒しも検討するという。

 北橋市長はこの日、「緊急事態宣言が解除され、外出の機会が増えている中で感染が増えていると考えられる」と述べ、「第2波の入り口に立っていると思う」との認識を示した。市民には、再び不要不急の外出を控えるよう改めて協力を求めた。
 

●5月27日

 2次補正案に31兆円

 政府は27日、新型コロナウイルスへの対策を盛り込んだ総額31兆9114億円の第2次補正予算案を閣議決定した。対策の規模は、第1次補正予算と並ぶ117兆円に上る。予算の全額を国の借金である国債発行でまかない、医療や雇用、中小事業者などの支援をさらに手厚くする。今国会に提出し、6月中旬ごろの成立をめざす。

 今回の予算では、1次補正の対策で足りないと批判された支援策を拡充。休業などで減収した店舗家賃の支払いを支えるため、最大600万円を支給する制度を新設。検査体制の強化や医療従事者への最大20万円の慰労金などに2兆9892億円。休業手当の一部を補助する雇用調整助成金の日額上限も引き上げ、中小事業者向けの給付金の対象も拡大。大企業の資金繰りも厳しくなる可能性が出てきたため、政府系金融機関などを活用した資金繰り対策に11兆6390億円を盛り込んだ。

 この結果、予算額は1次補正の25.7兆円を大幅に上回った。この全額を国債で賄うため、今年度の新たに発行する国債の金額はリーマン・ショックの2009年度の53.5兆円を大きく上回り、過去最大の90.2兆円に膨らんでいる。予算の56.3%が借金という危機的状況だ。

 この前例のない規模の予算だが、問題は実効性とスピード。まだ使い道の決まっていない「予備費」が10兆円も計上されており、無駄遣いにならないか心配だ。1次補正も、手続きの複雑さや給付事務のトラブルなどで執行が遅れており、必要な人たちに早く届くよう簡素な手続きやきめ細かい対応が問われている。

 北海道で第3波を懸念

 北海道は27日、休業要請の対象としたスポーツクラブやライブハウスなどのほか、石狩地方のみで対象としたネットカフェやパチンコ店などについて、6月以降も当面要請を続ける方向で検討。道内の感染が収まらないためで、29日の道本部会議で決定し、鈴木知事が記者会見で表明する。

 同日までの1週間の新規感染者数は人口10万人当たり0.99人で、宣言が解除された25日(0.8人)から悪化。緊急事態宣言の解除の目安の一つである「0.5人」を超えた。

 9月入学制導入の議論

 新型コロナによる長引く休校の解決策として「9月入学制」、つまり「9月入学・新学期制」の導入についての賛否が割れている。また結論が性急すぎるとし、国民の慎重な議論を望む声も多い。自民党の作業チームは27日の会合で、国民的な合意が必要だとして「今年度や来年度の導入は見送るべきだ」とする提言の骨子案を示した。チームメンバーからは、必要な法改正などを考えると、早期の導入は難しいという意見が相次いだという。

 自民党骨子案では「9月入学制」は、国際化や休校に伴う学習の遅れの取り戻しにつながるメリットの一方で、導入すれば多くの制度や慣行が変わり、社会全体に心理的・経済的な負担を与えるデメリットがあるとしている。導入には国民的な合意や一定期間が必要で、「今年度や来年度などの導入は見送るべきだ」という。

 この問題は、休校が長期に及び、学校再開時期も見通しが立たない中、入学と新学期を半年ずらす「9月入学制」を求める声が、4月頃から現役高校生のSNSや保護者・教育関係者などから上がり始めた。「尾木ママ」こと教育評論家・尾木直樹氏は、「9月入学制」について保護者の方々からも賛成の声が圧倒的に多いとし、制度の検討・研究に着手してほしい」と提言。また国民民主党がワーキングチームを立ち上げるなど、政治的な土俵に上がってきた。

 文部科学省の萩生田大臣は4月24日、「休校長期化の対応策のひとつとして、さまざまなところで声が上がっていることは承知している」と述べた。4月30日 、小池東京知事と吉村大阪府知事は、大胆に社会全体のシステムを転換するときで「9月入学制」導入を求める共同メッセージを発表。一方で全国知事会は同日、「9月入学制」の国民的な骨太の議論を求める提言を行った。

 しかし日本教育学会は5月22日、来年から9月入学に移行し、通常の1.4倍の新小学1年生が入学する形で実施した場合、国や家庭の負担総額が6兆9000億円超に達するとの試算を公表。メリットとされる「グローバル化」は、小さな効果しか望めないと指摘していた

 米国の死者10万人超

 新型コロナ感染による米国の死者が27日、10万人を超えた。米ジョンズーホプキンス大学の集計によると、米国の感染者数は約169万8千人で、感染者数と死者数とも世界で最多。世界全体では27日現在で、約569万人が感染、約35万5千人が死亡。米国に次いで死者が多いのは、イギリス、イタリア、フランス、スペイン、プラジル。

 米国では感染拡大が深刻になった3月以降、大半の州で外出制眼などの措置が取られたが、トランプ政権は4月中旬、感染のピークは過ぎたと判断して経済再開に向けたガイドラインを発表。これを受けて各州が、外出制限の緩和や商店の営業許可などを段階的に進めている。メディアは、死者10万人を衝撃的に伝えているが、大統領の反応はないという。

 1955年から75年までの20年間も続いたベトナム戦争で、犠牲になった米兵は5万8千人。4月28日時点で米国のコロナ感染死者数は、ベトナム戦争の戦死者数をはるかに越え、現在はその2倍近くに迫っている。世界のリーダーたる米国がこのザマで、この人類の危機を乗り越えられるのか。共産主義を唱える中国が、このコロナ戦争に早期に勝利し、この機会に世界の覇権を米国から奪おうとしているのは目に見えている。

●5月28日

 特別定額給付金

 筆者が在住する当市では、国民1人10万円の特別定額給付金については、5月8日 から電子申請(マイナンバーカードを使ったオンライン申請)の受付が始まり、筆者は10日に申請した。郵送申請の場合は、5月21日に申請書が発送、同日から申請受付だった。電子申請は、設定手続きのために自治体窓口が混雑したり、書類の不備が多く、また住民台帳との確認に時間を要するという。郵送申請を優先して処理するという自治体が多いと聞いていたが、筆者の場合は当市の第1回目給付開始の5月28日に入金された。

 安倍首相は電子申請が早いと言っていたが、ほとんどの自治体で郵送申請が優先で、人口の多い自治体ほど事務処理に手間がかかり、主要都市の半数以上で給付開始が6月にずれ込むという。

 「特別定額給付金」のほか、個人向けの「休業手当直接給付金」や「学生支援緊急給付金」・・・など、中小企業・個人事業者向けの「持続化給付金」や「雇用調整助成金」、「特別家賃支援給付金 」・・・など、多岐にわたる給付金、助成金などなどが国から用意されてきているが、本当にコロナで困っている人たちに、タイムリーに必要な額が行き届いているのだろうか気になる。

 日産自動車の赤字決算

 日産自動車が28日発表した2020年3月期連結決算は、純損益が6712億円の赤字(前期は3191億円の黒字)だった。赤字転落は11年ぶりで、損失額は2000年3月期に次ぐ過去2番目の規模だという。

 新車投入の遅れなどが響き、主力の北米をはじめ幅広い地域で販売が低迷。世界販売は7年ぶりに500万台を下回る493万台に落ち込んだ。期末にかけては、新型コロナの感染拡大の影響も大きかった。販売不振に加え、ゴーン体制下で膨張した過剰な生産能力の削減など、構造改革費用が収益を圧迫した。立て直しへ海外2工場を閉鎖し、生産能力を20%削減するなどのリストラを実施するという。

●5月29日
 
 東京都、ステップ2に移行
 
 小池東京知事は29日の記者会見で、休業要請などの緩和の段階を現在の「ステップ1」から、次の「ステップ2」に6月1日から移行、緩和の対象を広げることを表明した。
 
 しかし、「ステップ1」から4日しか経ってなく効果を見極めないで、少し急ぎすぎとの懸念は否めない。29日に新感染者は22人と4日連続で前日を上回り、15日ぶりに20人を超えた。感染再拡大の兆候が表れた際に都が出す警戒宣言「東京アラート」の目安を超えている。都は、医療機関の逼迫状況が一時期よりも改善しているとして、休業要請の「ステップ2」の緩和に移行すると説明するが、本当に大丈夫だろうか。

 解除後の専門家会議の会見
 
 政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、5月29日付の「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」を公表した。国内の約2カ月間の感染状況と対策の効果などを振り返り、検査体制や医療体制の強化を提言している。

 5/29専門家会議委員記者会見資料 出典:厚生労働省ホームページ
 
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 日本の対策は、「欧米の先進諸国と比較して、感染者数の増加を抑制し、死亡者数や重症者数を減らすという観点から一定の成果があった」としている。その理由は、①医療へのアクセスや公衆衛生水準が高い、②市民の衛生意識の高さ、③元々の生活習慣のほか、④中国由来・欧州等由来の感染拡大の早期検出と⑤効果的なクラスター対策をあげている。(①~③の理由はよく知られていることで筆者も納得できるが、④⑤についてはややわかりにくいので、詳細は省略する)

 なぜ日本の感染者、死亡者が、欧米に比べ少ないのかは、誰しも気になる。日本は、PCR検査数が極端に少ないという理由を挙げる専門家もいる。 日本のほか、台湾や韓国も欧米に比べ少ない。ちまたでは、日本人はBCG接種をしているが、根拠は不明。上述の②③は、日本人の挨拶は、欧米のような握手やハグのように人との接触をしない。毎日風呂に入って清潔好き。家の中で靴を脱ぐのでコロナを家に入れない。風邪や花粉症防止のためマスクをすることに抵抗がない等など・・・。こういった日本人の生活習慣が、コロナに対して感染防止になっているのだろう。

 専門家会議資料によると、新規感染者数数のピークは報告日ベースで4月10日頃。しかし感染時刻ベースで推測すると、なるほどピークは4月1日頃だそうだ。これは、4月7日の「緊急事態宣言」が遅かったことになる。「緊急事態宣言」前の3月末(つまり、志村けんが亡くなった頃)から、市民の意識や行動が変化し、新規感染者が減少傾向に向かったというは納得できる。

 5/29専門家会議委員記者会見資料 出典:厚生労働省ホームページ
 
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 専門家会議の議事録なし
 
 菅官房長官は29日の閣議後の会見で、「専門家会議」は公文書管理のガイドラインが定める「政策の決定または了解を行わない会議等」に該当し、発言者が特定されない「議事要旨」を作成・公表しているので議事録を残さなくても問題はない主張した。

 専門家会議の尾身茂副座長は29日の会見で、同日の会議でメンバーから発言者の記載がある議事録の作成を求める声があったことを紹介。加藤厚労大臣も3月2日の参院予算委員会で、専門家会議について「1〜3回目は議事概要になるが、4回目以降は速記を入れて一言一句残す。専門家の了解の範囲で、当面は公表させて頂く」と答弁していた。
 何故、議事録を作らないのか。国民に都合の悪いことを、記録として残さないようにしているのか。これまでも問題が起こるたびに、議事録はない、資料は廃棄した、文書を改ざんする等など、記録から逃げ続けている。布マスクの配布や一斉休校を首相の独断で決めた根拠も示さず、権威主義のこの政権はこのような危機においても、国民の声は聞こえない。
 
 Jリーグ、再開決定
 
 Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)は5月29日、7月4日からJ1リーグを再開、6月27日からJ2リーグを再開、J3リーグを開幕することを決定。当面は無観客試合からスタートし、感染拡大状況などの様子を見ながら観客導入の準備を進める。

 Jリーグは、新型コロナ感染拡大を受けて公式戦開催がストップ。その後、選手を含むチーム関係者5人の感染が判明し、感染拡大の収束もなかったことから、4月3日には再開スケジュールを「白紙」としていた。
 
 
●5月30日
 
 G7サミットが延期
 
 トランプ米大統領は30日、ワシントンで6月中の開催を目指していたG7サミット(先進7カ国首脳会議)を、9月以降に延期すると明らかにした。また日本など正規の参加国に加えて、ロシア、韓国、オーストラリア、インドのG7以外の各国を招待する考えを示した。また現在の国際課題に対応する上でG7が「時代遅れの集まりだ」と述べ、新たな枠組みを構築する必要があると指摘した。サミットでは、対中国問題が話し合われるとの見通し。

 G7サミットについて新型コロナウイルスの感染拡大を受けて 、米政府は先にテレビ会議での開催を発表したが、変更して通常形式で6月下旬開催を表明していた。安倍首相やフランス、イギリスの首脳は出席に前向きな一方、ドイツのメルケル首相は新型コロナの感染が収束しておらず参加を辞退の意向、カナダのトルドー首相は時期尚早との慎重判断を示した。もし安倍首相が出席した場合は、帰国後には2週間、首相公邸などで待機するという事態になるはずだった。
 
 世界の感染者600万人越え
 
 米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、新型コロナウイルスの世界の累計感染者数は30日、600万人を突破した。国別では米国が約176万人と最多。急増しているブラジルが続く。世界の死者数は36万7千人超。
 
 
●5月31日
 
 国内の感染判明、止まらず
 
 新型コロナウイルスの国内の感染者は5月31日、新たに37人が確認され、累計で1万6968人になった。1日あたりの感染者数が40人以下となるのは5日ぶり。死者は3人増え、計898人。但し、クルーズ船(ダイヤモンド・プリンセス号)を除く。
 
 増加傾向の著しい北九州市では、31日に新たに12人の感染が判明。市内で感染者が確認されたのは9日連続、この間の累計は97人となった。1日あたりの感染者数が2桁となるのは4日連続。小倉南区の小学校では、新たに児童4人の感染が確認され、これまでと合わせて計5人。小学校でクラスター(感染者集団)が発生したとみられる。 1日あたりの過去最多の感染者数は、5月29日の26人。

 そのほか感染者の判明が止まらない主な都道県は、東京都、神奈川県、北海道。東京都では、31日に新たに確認された感染者は5人。このところ29日の22人をピークに、新規感染者数2桁が続いていたが、1桁となるのは25日の8人以来で6日ぶり。
 
 神奈川県ではこの日、新たに6人の感染が確認された。ここ1週間で29日の10人をピークに、毎日感染者が止まらない。集団感染が起きている小田原市立病院に入院していた70代男性が死亡、同病院関連の死者は7人になった。北海道でもこの日、6人の感染が新たにわかり、このうち5人が札幌市内だった。北海道もこのところ24日の1日当たり15人をピークに、毎日感染者が確認されている。
 
 

 ★ ★ ★

●桜を見る会で告訴状

 安倍首相の後援会が主催する「桜を見る会」前夜に開かれた夕食会をめぐり、全国の弁護士や法学者662人が5月21日、公職選挙法と政治資金規正法に違反した疑いで、安倍首相と後援会幹部の計3人に対する告発状を東京地方検察庁に提出した。

 写真は、「桜を見る会」で中央の安倍首相と昭恵夫人、芸能人ら。2019年4月13日、東京・新宿御苑にて 出典:首相官邸ホームページ

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 告発状によると、夕食会は2018年4月、ホテルニューオータニ東京で開かれ、安倍首相の後援会員約800人が参加していた。1人あたりの飲食代は少なくとも1万1000円程度にもかかわらず、参加費5000円のみを徴収していることから、1人あたり6000円相当を無償で寄付したとされ、「公職選挙法」(寄付行為)違反の疑い。また、後援会の2018年分の収支報告書に、その夕食会に関する収入・支出を記載しなかったとして、「政治資金規正法」違反の疑いがある。

 告発状提出後に開かれた会見で、元最高裁判所判事の濱田邦夫弁護士らは「政権を保持する政治家たちにその使命を再認識してもらう必要がある。政治のあるべき姿というものは、国民の一部の者の富を増大させるというものではなく、国民全体の公平性と生命・生活の安全性と安定性を増大させることにある」。そして東京地検に対し、「政権に忖度することなく、徹底した捜査、真相の究明と刑事責任の追及を迅速におこなうことを強く求める」とコメントした。

 事務局長をつとめる小野寺義象弁護士は、「安倍首相は説明責任を果たしていない。法律家として究明・責任追及したい」。また米倉洋子弁護士は、「国の最高権力者である総理大臣による民主政治を踏みにじる犯罪は許されない。捜査当局による公正で厳正な徹底した捜査に期待したい」と述べた。弁護士有志は、今年2月に「『桜を見る会』を追及する法律家の会」を結成、賛同者は今後も増える見込みだという。

 昨年から今年2月にかけて国会では、「桜を見る会」をめぐり、安倍首相の後援会や自民党の幹部たちの後援会関係者たちが多数、会に招待されていたことが明らかとなり、「税金の私物化」として大きな問題となっていた。野党の追及に、呆れるほどの子供じみた答弁、ちぐはぐな答弁や珍答弁など、国民の誰もがおかしいと思うような答弁を繰り返していた。

 自民党の幹部たちは、私利私欲の「桜を見る会」をやめるよう首相に忠告こともなく、自分たちの支持者もこの会に送り込んでいた。この問題が明るみになってからも、かつての党幹部や党OBたちのように、招待者名簿の廃棄や国会答弁の矛盾を指摘する者もなく、だんまりを決め込んでいる。今の政治はそれほど劣化し、腐敗し、政治の信頼が失われている。

 こんなときに、新型コロナが天から舞い降りてきて、安倍政権は「桜を見る会」の追及からうまく逃げられた。このまま逃げ切れて、なんとかコロナが収束した後は、自分の手柄として総選挙で勝利し、2021年に3期目を終える安倍総裁は、党則を変えての「安倍総裁4選」は不可能ではない。そうすれば、コロナ禍で憲法改正の遅れを取り戻すことが出来る。そう考えているに違いない。

●検事長の定年延長

 東京高検の黒川検事長は、賭けマージャンを新聞記者らとしていたことを認めて辞職した。だが、辞職しても「政治と検察」をめぐる問題は一件落着とは言えない。黒川氏の定年延長の法的根拠の問題は残っている。今国会での成立を見送った「検察庁法改正案」への懸念も消えず、政府が説明責任を尽くさなければならない。

 検察庁舎 出典:検察庁ホームページ

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 この問題は1月31日、安倍内閣は2月7日の定年退官間際だった黒川氏の定年を半年間、延長することを閣議決定したのが発端。その後に現検事総長が定年で退任した後、検事総長に据えるつもりであった。黒川検事長の定年延長については、検察庁法ではなく国家公務員法の延長規定を適用したと説明した。1981年に人事院が、検察官には国家公務員法の定年延長は適用されないとの見解を国会で説明したのを無視、あきらかな違法である。

 それに対して森雅子法務大臣は、法務省幹部たちとの話し合いで、定年延長を人事院が了承したと説明したが、そんな記録は残っていない。そして、森法相の国会での答弁は二転三転。野党は「政権に近い黒川氏を、政権の守護神として検察トップの検事総長するための延長だ」と激しく批判した。

 その後、検察官の定年を引き上げる「検察庁法改正案」は、野党が喜びそうな「国家公務員法等の一部を改正する法律案」と一括して衆議院に提出された。法案をめぐり、5月13日の衆院内閣委員会には森法相は出席させず、何故か武田良太国家公務員制度担当相が答弁に立った。野党の質問に、しどろもどろの答弁を連発、最後は「法務省に聞いてもらったほうが詳しい」などと言い出す始末。何度も答えに窮して、審議はたびたび中断。野党は退席してしまった。このコロナ騒ぎの中で国民の批判の声に押され、結局法案を継続審議として今国会から取り下げた。
 
 そうした状況の中で、わざわざ国民の神経を逆なでするような、「黒川賭けマージャン事件」が起きた。森法相は、「訓告」処分としたうえで、黒川氏が安倍首相に辞表を提出。これを受けて閣議で氏の検事長辞職が承認された。人事院の指針では、賭博をした者は「減給または戒告、常習的に賭博をした職員はさらに重い停職」の「懲戒」処分を定めているが、黒川氏の処分はこれらより軽い「訓告」。この「訓告」処分に関して、安倍首相と森法相の間で説明が大きく食い違った。森法相は内閣と法務省が決めた、首相は検事総長が適切に処分を行ったと強弁した。

 自衛隊員が賭けマージャンで「停職」処分を受けた先例もある中、法を守るべき検察官、しかもそれほどの地位の人間が軽い処分で、国民は納得しない。その処分を誰が決定したか、どうも複数の法務・検察関係者の話では、法務省は国家公務員法に基づく「懲戒」処分が相当と判断していたが、官邸側が「懲戒」にしないと結論づけ、結果的に「訓告」となったようだ。

 新型コロナ騒ぎで「桜を見る会」の問題からなんとか逃げ延びた安倍政権が、国民がウイルスと必死で闘っている最中に、なぜわざわざ急いで黒川問題を正当化する検察庁法改正案を出したのか。それは、「桜を見る会」そののほかのモリ、カケ問題もあるかもしれないが、検事総長という守護神が、自らの刑事訴追を回避しようとしているとしか思えない。

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