さくら堤の彼岸花
2019年10月2日(水)、埼玉県吉見町の「さくら堤公園」へ彼岸花を見に行く。
吉見町の「さくら堤公園」 は、もともと田園風景が広がる中を南北に延びる1本の堤防、そこに1977年~1978年(昭和52~53年)に当時の青年団が、ふるさと歩道の設置とともに約200本の桜の苗木を植栽した比較的新しい桜の名所。
一般的な公園のように広場や遊具があるわけではなく、長さ約1.8kmの桜堤の公園。
春には桜、土手には菜の花。秋には一面に彼岸花が咲く。
堤の上には舗装された遊歩道が整備され、さいたま市の秋ヶ瀬公園と滑川町の武蔵丘陵森林公園とをつなぐ総延長46kmのサイクリングコースの一部となっている。
今年になって、さくら堤の西側土手と農業用水路の文覚川との間にも遊歩道が整備された。
3日後の5日(土)にもう一度行って見ると、盛りを終えて枯れている花が目立っていた。
本ブログの関連記事は、以下の通り。
「吉見さくら堤公園」 2017年4月14日投稿
http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/post-f28d.html
「高麗の里山」 2015年9月10日投稿
http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-b75c.html
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「彼岸花」の名前は、秋の”彼岸”の頃から開花することに由来する。稲作の伝来時に中国大陸から直接または間接的に、持ち込まれたものと考えられている。別名の「曼珠沙華」は、 古代インドのサンスクリット語の「赤い」の意で、manjusaka の音写。『法華経』などの仏典に由来し、「天上の花」という意味がある。
彼岸花の群生は、この世のものとは思えない鮮やかな色で、我々を別世界へと誘う。しかし異名が多く、死人花(しびとばな)、地獄花、幽霊花、蛇花(へびのはな)、剃刀花(かみそりばな)、狐花(きつねばな)などと呼んで、日本では不吉な花と忌み嫌われることもある。
埼玉県内に彼岸花が群生している有名な名所がいくつかあり、最近は観光客が押し寄せて大変混み合っている。
●埼玉県日高市の巾着田(きんちゃくだ)
「巾着田」は、500万本もの彼岸花が咲き誇る国内有数の群生地。ここは、緩やかに蛇行する高麗川が巾着のように大きくカーブさせた場所にできた水田だった所。
下の写真は、日和田山から望む「巾着田」(ウィキメディア・コモンズから転載)
直径約500m、面積約17haの平地の「巾着田」には、春の訪れとともに菜の花が一面黄色に染め、秋は群生した彼岸花が岸辺を真紅に染める。また10月上旬からは、巾着田の中央で約2haのコスモス畑も見頃を迎えるそうだ。
下の写真は、「巾着田」に群生する彼岸花(ウィキメディア・コモンズから転載)
「巾着田」の最寄り駅である西武線高麗(こま)駅に臨時列車が停車すると、駅からは「巾着田」まで観光客の人波ができるほどだそうだ。高麗川沿いの群生地を真っ赤に染め、右手に川の流れを見ながら、林の中の遊歩道を散歩できる。
今年の彼岸(秋分の日)は9月23日、26日が彼岸明け。「巾着田」の「曼殊沙華祭り」は、9月14日から29日。しかし、肝心の彼岸花が咲いたという声はなかなか聞こえない。
10月2日(水)の朝日新聞埼玉版には、「巾着田曼珠沙華公園」では秋の訪れを告げる500万本の「赤いじゅうたん」が、見頃を迎えていると出ていた。今週いっぱいは楽しめる(5、6日ごろ)とある。今年は、長い梅雨の後に猛暑が続いたため、開花は例年より2週間ほど遅れたという。また公式facebook「巾着田曼珠沙華情報」によると、9月30日頃に全体的に見頃を迎えたそうだ。入場料は300円。
●埼玉県幸手市の権現堂堤
「権現堂堤」は大正時代から関東でも桜の名所として有名だったが、1937年(昭和12年)頃より水仙や紫陽花、そして彼岸花も植えられ(現在は500万本)、四季を通じて花を楽しめる。この辺りは江戸時代から水郷で、利根川支流だった権現堂川は江戸川とつながっていて廻船問屋が多く集まっていたという。今では川は消え、堤だけが当時の面影を残している。
春の「権現堂堤」(ウキメディア・コモンズから転載)
●埼玉県横瀬町の寺坂棚田
棚田の畦に100万本の彼岸花が咲く。県内最大級の棚田で、全体面積が約5.2ha、うち田んぼは約4ha。武甲山を中心に連なる秩父の 山々を背景に、初夏の田植、初秋には黄金の稲穂、秋には赤い彼岸花など、里山の風景が楽しめる。7月上旬土曜日には「寺坂棚田ホタルかがり火まつり」が開催。
●秩父市金室の荒川河川敷
10月2日の朝日新聞埼玉版に掲載された新しい彼岸花名所。 6年前から地元の人たちによって河川敷に彼岸花を植栽、周囲を整備し、昨年から本格的な観光地スポットとして売り込み始めた。背景に、秩父市で有名な「秩父公園橋」が見える。
全国の彼岸花の名所は、枚挙にいとまがない。講談社発行『週刊 花百科』2004.9.16号で、彼岸花の名所全国ベスト10というのがあるらしいが、あえていくつかの資料から、埼玉県以外の20名所をピックアップしてみた。彼岸花の名所は、昔から自生していた所のほか、最近では町おこしのため、地元の人たちが植栽したり移植した所も少なくない。
●宮城県大崎市古川の羽黒山公園
「羽黒山公園」は、東北地方の中でも有名な彼岸花のスポット。公園内の丘、南側の斜面約5,000平方mに約15万本の彼岸花が赤じゅうたんを敷き詰めたように咲き誇る。
●栃木県鹿沼市の常楽寺
「常楽寺」は、関東地方で花が有名な寺院を集めた『東国花の寺百ヶ寺』にも選ばれた花の名所。50mほどの距離がある参道の両脇には、真っ赤な彼岸花が咲き誇り、周囲の豊かな自然とのコントラストが美しい。
●長野県松川町の嶺岳寺(れいがくじ)
「嶺岳寺」は、天竜川を望む高台にあるお寺。境内には約3万株の彼岸花が咲き、赤色のほかに白色や黄色い彼岸花も楽しむことができる。
●東京都青梅市の塩船観音寺
国の重要文化財(室町時代)の建造物がある1300年余りの古い歴史を誇る「塩船観音寺」は、つつじの名所として知られる。紫陽花、萩、コスモスなど四季折々の花が咲く。中でも秋には山門から阿弥陀堂に至る参道脇に赤い彼岸花、また隣接する「霞丘陵自然公園」には、赤のほか白や黄色の彼岸花が入り乱れて咲く。
下の写真は、「塩船観音寺」境内のつつじ祭り(ウィキメディア・コモンズから転載)
●神奈川県伊勢原市にある日向薬師(ひなたやくし)付近
丹沢大山国定公園の東端、緑豊かな山々に囲まれた関東有数の古刹「日向薬師」の参道入口付近や、近隣の田んぼの畦や野辺などに彼岸花の群生地が点在。「彼岸花の里」として知られ、山の緑、黄金色に実った稲穂とのコントラストが見事。
下の写真は、「日向薬師堂」の本堂(ウィキメディコモンズから転載)
●愛知県半田市の矢勝川堤防
半田市は、『ごんぎつね』の作者・新美南吉の出身地で、その童話の舞台として有名。市内の岩滑地区を流れる「矢勝川」沿いに、地元の人達に育てられた300万本もの彼岸花が約2Kmに渡って咲く。開花期に合わせて「ごんの秋まつり」が開催。近くに新美南吉記念館がある。
●岐阜県海津市の津屋川堤防
養老山に水源を求める「津屋川」堤防 3kmにわたり10万本の彼岸花が自生。養老山地を背景に川面に深紅の花が写り込み、漁をする小舟とのコラボを楽しめる。
●京都亀岡市の穴太寺(あなおじ)周辺
安寿と厨子王丸の伝説で、厨子王丸をかくまったといわれる「穴太寺」までの道端や田んぼの畝に、群生する彼岸花が真っ赤に色づく。
下の写真は、「穴太寺」の本堂(ウィキメディア・コモンズから転載)
●奈良県明日香村の稲淵棚田
「日本の棚田百選」に選ばれている明日香村の稲渕地区では、畦などにたくさんの彼岸花が咲く。ほかにも石舞台の周辺や橘寺・飛鳥寺の周辺が見事。花の時期には「彼岸花祭り」が開催、中でも「案山子コンテスト」は黄金色の稲穂を背景にユニークな創作案山子が立つ。のどかな里山に咲く彼岸花に日本の原風景を感じながら、明日香村の飛鳥時代の史跡探索を楽しめる。
●奈良県御所市の葛城一言主神社(かつらぎひとことぬしじんじゃ)周辺
「葛城一言主神社」周辺には、のどかな田園風景が広がり、田んぼを守るように咲く彼岸花の姿が見られる。
下の写真は、葛城一言神社の拝殿と銀杏の古木(ウィキメディア・コモンズから転載)
●奈良県宇陀市の佛隆寺(ぶつりゅうじ)
「佛隆寺」 は、三重県との県境に近い宇陀市榛原(はいばら)の伊勢街道と「室生寺」への旧道の分岐する山の麓にある。秋になると山門へと続く約200段の小さい石段の両側を、彼岸花の大群生が真っ赤に覆い尽くす。寺は大和茶の発祥地で、空海が帰朝の際にその種子をもたらし寺内で栽培したという。
下の写真は、佛隆寺の境内(ウィキメディア・コモンズから転載)
●滋賀県高島市の桂浜園地
琵琶湖沿いにある高島市今津町の「桂浜園地」は、関西屈指の彼岸花の名所。琵琶湖を背景に咲く彼岸花の姿は素晴らしい。
●兵庫県加古川市の円照寺
加古川市にある「円照寺」は花の寺として有名で、秋には5色の彼岸花が楽しめる。例年の開花予定は、珍しい紫の彼岸花は8月下旬から、ピンクは9月の上旬、黄と白は9月上旬から中旬、そして赤は9月下旬。
●兵庫県多可町(たかちょう)の間子(まこ)
兵庫県の山間にある多可町間子では、水田の周辺、「思い出川」の堤防沿いなど、あちこちに彼岸花が群生。特に思い出川沿いに作られた水車の近くでは、3色の彼岸花が鑑賞できる。
●広島県三次市(みよしし)吉舎町(きさちょう)辻の馬洗川沿い
中国地方随一と言われ、2,000平方mほどの「馬洗川」沿いの土地に彼岸花が群生。『週刊 花百科』2004.9.16号(講談社)で彼岸花の名所全国ベスト10に選ばれた。
●福岡県うきは市のつづら棚田
「日本の棚田百選」にも選ばれている約400年に築かれたという歴史ある美しい石垣の棚田に、棚田を守るように50万本もの彼岸花が咲く。開花に合わせて「棚田inうきは 彼岸花めぐり&ばさら祭」が開催。
●福岡県築上町の正光寺
「正光寺」は、鎌倉から戦国時代にかけて宇都宮信房(初代)が豊前の地に入国する時、一族の守り本尊の文殊菩薩を招来させ開基した寺。境内には白い彼岸花約4000本。これだけの白い彼岸花の群落も珍しい。「正光寺」周辺の田んぼの畦には、真っ赤な彼岸花の群生も見られる。また紅白の彼岸花が見られる地域は、九州でも珍しいそうだ。開花時期に「白い彼岸花まつり」が開催。
●大分県竹田市の七ツ森古墳
国の史跡にも指定されている「七ツ森古墳」の周辺の広大な敷地に、約20万本とも言われる彼岸花が一斉に花を咲かせる。映画のロケ地としても使われた彼岸花の名所で、多くの観光客が訪れる。
七ツ森古墳群の彼岸花(ウィキメディア・コモンズから転載)
●宮崎県小林市野尻町の萩の茶屋
「萩の茶屋」は、1964年(昭和39年)宮崎交通が野尻町の国道268号沿いにドライブインとして開業。日南海岸とえびの高原を結ぶ中間に位置し、霧島連山を眺める観光施設だった。1998年(平成10年)利用客減少により、飲食施設を閉店。現在は展望所として利用されている。4月には3万本のつつじと2千本の八重桜、6月紫陽花、9月は萩と100万本もの彼岸花が咲き誇る名所。
●長崎県大村市の鉢巻山展望台
大村湾を見下ろし、360度の眺望が広がる標高334mの「鉢巻山」山頂に、約100万本の彼岸花群落が咲く。赤だけでなく白やクリーム色の彼岸花も多い。今から十数年前に田んぼの基盤整備を行なう際、農家の人たちが眺めの良い「鉢巻山」に移植したのが始まり。夕日スポットとしても知られる。開花に合わせて「鉢巻山ひがん花まつり」が開催される。
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