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2018年12月 1日 (土)

映画「日日是好日」

 2018年11月20日(火)、映画『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』を観る。

 茶道教室に通った約25年について書いた、森下典子のエッセイを映画化。2018年10月13日公開。

 母親の勧めで茶道教室へ通うことになった大学生が、茶道の奥深さに触れ、成長していく。監督は、大森立嗣。主人公の典子を黒木華、彼女と一緒に茶道を学ぶ従姉・美智子を多部未華子、茶道の武田先生を樹木希林が演じる。(映画『日日是好日』のポスターから転載。)

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 原作は、森下典子『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』。飛鳥新社から2002年1月に単行本が出版。

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 やりたいことを見つけられずにいた大学生の典子(黒木華)は、ひょんなことから母親に茶道を勧められる。気が進まないまま、積極的な従姉の美智子(多部未華子)と一緒に、タダモノではないと噂の武田のおばさん(樹木希林)の茶道教室に通うことになる。

 以下3枚の写真は、映画『日日是好日』のパンフから転載。

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 意味も理由も分からない「お茶の世界」の決まりごとや、初めての作法に四苦八苦しながらも奮闘する。一生をかけられるような何かを見つけたいという典子は、見つけられないまま就職に失敗。そして失恋、父の死という悲しみのなかで、いつも不安で自分の居場所を探し続けた。

 大学卒業と同時に貿易会社に就職、二年後には会社もお茶も辞めて開業医と結婚、子供も授かって、どんどん前を進んでいく美智子を羨ましく思う。そして一人でお茶を続けて10年、お点前の正確さや知識で後輩にも抜かれて、不器用な典子は限界を感じて来る。

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 やがてその向こうに、見えてきた自由。通い続けた茶道教室は、「ここにいるだけで良い」という心の安息。いつしか雨が匂うこと、雨の一粒一粒が聴こえること、季節を五感で味わう歓びと感動を知る。お茶を習い始めて二十五年、気がつけば自分のそばに「お茶」があった。

 雨の日には雨を聴く。雪の日は雪を見る。夏には暑さを、冬には身の切れるような寒さを味わう。……どんな日もその日を思う存分味わう。修行は死ぬまで続く。道は終わることはない。頭で覚えたものは忘れやすいが、体で覚えたものは一生ものだ。

 失恋した時、美智子が結婚した時、父を亡くした時も、映画・原作では詳しく表現することもなく、淡々と日常が続く。大きな変化もなく、波瀾万丈やドラマティックでもない物語。お茶の所作、茶道具、茶碗、茶花、和菓子、掛け軸など、お茶を知らない人も知っている人も、その世界に引き込まれる。
 

 森下典子は、1956(昭和31)年横浜市生れ。日本女子大学文学部国文学科卒業。

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 大学時代からアルバイトの取材記者として活躍。筆者は、1978年から始まった「週刊朝日」連載の人気コラム「デキゴトロジー」を毎週笑いながら愛読した。京都の舞子さん修行の体験をまとめた『典奴(のりやっこ)どすえ』(角川書店)を、1987年に出版。女一人で中東へ往くタンカーに乗り込んだ『典奴ペルシャ湾を往く』(1988年、文芸春秋)のノンフィクションは、面白かった。

 ルポライター、エッセイストとして、数々の著書がある。しばらくその活躍ぶりを忘れていたが、茶道を続けていたとは知らなかった。『日日是好日』の映画の評判を聞き、森下典子のことを久しぶりに思い出した。

 森下典子が舞子さんの踊りを皆の前で披露した時、「踊る姿がウルトラマンかロボットが、指をピュッと出しているように感じて・・・」と、「デキゴトロジー」で一緒に仕事をした当時漫画家の夏目房之介が対談で語っている。映画では、武田先生から茶の作法で「手がごつく見えるわよ」と指摘され、典子が落ち込むところがある。どこか彼女の不器用さが、目に浮かぶ。

 今では表千家教授の資格を得て、茶道の魅力を伝える講演も行っているらしい。今回の映画製作では、お茶のシーンのアドバイスや指導をしたという。お父さんを亡くして、お母さんと二人暮らし、猫を飼っている。

 『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』は、10年前の2008年11月に新潮文庫からも文庫版が発売された。今でもロングセラーを続けているという。

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 筆者は、映画を観る前日の11月19日この文庫版を購入、映画を観たしばらくした25日に頁をめくった。映画は、原作に忠実に制作してあって、映画のシーンを思い出しながら読了。全く茶の知識も経験の無い者にも、いくらかでも「茶の世界」のことがボンヤリ分かったような気がする。

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 ★ ★ ★

 この映画・原作の中には、お茶の先生と原作者の名言がいくつかある。

・世の中には、すぐわかるものと、すぐわからないものの二種類がある。‥‥すぐにわからないものは、長い時間をかけて、少しずつ気づいて、わかってくる。

・意味なんかわからなくていいの。お茶はまず形から。先に形を作っておいて、後から心が入るものなの。

・頭で考えないで、自分の手を信じなさい。

・苦手だった掛け軸は、文字を頭で読むのではない。絵のように眺めればいいんだ。

・柄杓を握る込む時の手が、ごつく見えるのよ。そろそろ工夫というものをしなさい。

・お湯の”とろとろ”という音と、”キラキラ”と流れる水音が分かるようになった。

・正月の「初釜」で先生が、「毎年同じことが出来る幸せ。」

・先生が本当に教えていることは、目に見えるお点前の外にある。

・「一期一会」は、千利休の言葉。何度も亭主と客が集って茶事を開いたとしても、一生に一度だと思ってやるという意味。利休が生きた信長・秀吉の時代、昨日元気だった友達が今日殺されたなんてことがいっぱいあって、この人に会うのも今日が最後になるかもしれないという切迫感がいつもあった。

 ・「日日是好日」は、禅語の一つ。「毎日毎日が素晴らしい日だ」という意味。そして、「毎日が良い日となるよう努めるべきだ」、または「日々の良し悪しを考えるのではなく、常にこの日が大切なのだ」とする解釈があるそうだ。典子は、「人間は、どんな日でも楽しむことが出来る」という意味だと気付く。

 

 森下典子『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』の続編となる『好日日記―季節のように生きる』の単行本が、出版社・ パルコから2018年10月7日に発売されたようだ。

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 この映画の公開前の2018年9月15日、樹木希林は全身癌のため75歳没。2018年公開の映画では、沖田修一監督『モリのいる場所』、是枝裕和監督『万引き家族』(カンヌ国際映画祭最高賞受賞)、そして本作品『日日是好日』の3本に出演した。2019年公開予定の『エリカ38』が、彼女の遺作となる。

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