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2018年6月28日 (木)

映画「空飛ぶタイヤ」

 2018年6月20日(金)、映画『空飛ぶタイヤ』を観る。
 

 『空飛ぶタイヤ』は、三菱自動車の「リコール(欠陥製品の回収・無償修理)隠し」事件をモデルとした池井戸潤のベストセラー小説。

 TOKIOの長瀬智也の主演で、12年前の小説を映画化。2018年6月15日に公開。池井戸にとっては、初の映画化作品。

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 小説は、『月刊J-novel』(実業之日本社)に2005年4月号から2006年9月号まで連載。実業之日本社より2006年9月に単行本、2008年8月に新書版が刊行された。第28回吉川英治文学新人賞、第136回直木賞候補作。

 2009年9月に講談社文庫版(上下巻、写真下)、2016年1月実業之日本社の文庫版が刊行。累計発行部数は、180万部。

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 2009年には、WOWOWの『ドラマW』でTVドラマ化されたという。

 なお池井戸潤は、2011年に『下町ロケット』で第145回直木賞を受賞している。

 配役は、「赤松運送」の社長・赤松:長瀬智也、専務:笹野高史、赤松の妻:深田恭子。「ホープ自動車」の狩野常務:岸田一徳、販売部の沢田課長:ディーン・フジオカ。「ホープ銀行」本店営業本部の井崎融資担当:高橋一生。週刊誌の榎本記者:小池栄子。神奈川県警の高幡刑事:寺脇康文、ほか豪華キャストが多数。

 

 ある日、トラックの事故により1人の主婦が亡くなった。事故を起こした運送会社の二代目社長・赤松徳郎(長瀬智也)が警察から聞かされたのは、走行中のトラックが緩いカーブにさしかかった時、突然タイヤが脱落して空を飛んで歩行者を直撃、即死させたという信じられない事実だった。事故原因を一方的に整備不良にされ、「容疑者」と決め付けられた赤松は、警察から執拗な追及を受ける。さらには会社も信用を失い、倒産寸前の状態に追い込まれてしまう。

 世間のバッシングを受け、次々と退職者が出る中、赤松はトラック製造元である「ホープ自動車」に再調査の要求を続ける。しかし、のらりくらりとした対応に苛立った赤松は、自ら調査を開始する。

 顧客の再調査要求を拒み続けていた「ホープ自動車」販売部顧客窓口の沢田課長(ディーン・フジオカ)は、社内の秘密会議の存在を知り、動き出す。またグループ会社「ホープ銀行」の井崎融資担当(高橋一生)は、グループ内でも信用できない会社には融資できないとし、旧知の週刊誌記者(小池栄子)からトラック事故の情報を得る。

 そして赤松は、その週刊誌記者の協力もあって、事故原因は整備不良ではなく事故を起こした車両の構造自体に欠陥があったのではないかと気づく。

 中小企業の運送会社が、泣き寝入りをせずに、正義の旗を掲げて戦う社長は、小説だけどすごい。一方、「ホープ自動車」や「ホープ銀行」の大企業内部にも、小さな正義を社内で伝え広げて行く姿に、観客の心は救われる。

 無実を信じる赤松は、家族や社員たち、被害者の家族のために、トラックの製造元である巨大企業に潜む闇に戦いを挑む。そこで赤松は、大企業による「リコール隠し」という社会に対する重大な罪を知ることとなる。

 赤松運送の倒産ギリギリで、ホープ自動車に警察の家宅捜査が入る最後のシーンは、痛快であり感動する。

 監督は、『超高速!参勤交代』シリーズの本木克英。

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  「信州・佐久と軽井沢の旅」 2018年6月24日投稿
    http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-f7cd.html

 

 ★ ★ ★

 

 実際のタイヤ脱落母子死傷事故は、2002年1月、横浜市瀬谷区で三菱製大型トラックの140kgものタイヤが脱落、ベビーカーを押して歩道を歩いていた母親と子どもを直撃。母親(当時29歳)が死亡するという痛ましい事故だった。ベビーカーにいた二男(1歳)と手を引いていた長男(4歳)は軽傷だった。

 三菱自動車はタイヤが外れた原因を整備不良と主張、運送会社は「人殺し」の中傷ビラを家の壁に貼られ、無言電話の嫌がらせなど、犯罪者の汚名を着せられた。最後は経営が立ち行かなくなり、小説・映画の「赤松運送」とは異なり、廃業に追い込まれたと聞く。

 また2002年10月にも山口県でクラッチ系統の破損でブレーキが利かなくなった冷蔵車が暴走し大破、運転手が死亡する事故があった。これも三菱側は、トラック運転手側の整備不良だと主張した。

 同社は、重大欠陥を隠ぺいするという不祥事を2000年にも起こしている。社員の内部告発によって、リコールにつながるような不具合を20年にわたって隠し続けていたことが明らかになったのだ。本社や岡崎工場などに、運輸省立ち入り検査や警察の家宅捜査が行われた。最終的には、宇佐美元副社長らと法人としての三菱自動車は、道路運送車両法違反の罪で略式起訴されている。河添社長は、引責辞任した。

 同社は再発防止策を発表、これ以上の不祥事には終止符が打たれるかに思えた。しかしこの時の調査対象を過去2年間としたため、それ以前の欠陥問題に手が付けられることは無かった。そして、この事件で三菱の販売台数が激減、経営不振に陥るが三菱グループ会社各社により救済された。2003年1月、三菱自動車工業(株)は分社して、大型車(トラックとバス)部門を三菱ふそうトラック・バス(株)に事業を移管している。

 2003年10月、母子死傷事故で神奈川県警が、業務上過失致死傷容疑で三菱自動車本社などを家宅捜査。2004年1月にも再捜査が行われた。2004年3月、2000年のリコール発表を上回る「リコール隠し」が発覚したのだった。横浜でタイヤが外れた原因を、一転して設計上のミスによる強度不足を認め、国土交通省にリコールを届け出た。母子死傷事故以前にも39件もの同じ原因の事故があったという。

 同年4月、筆頭株主のダイムラー・クライスラーが財政支援の打ち切りを発表。5月、横浜区検と横浜地検は、三菱ふそうの宇佐美前会長ら幹部5人と法人としての三菱自動車を起訴した。前会長らを被告とする道路運送車両法違反(虚偽報告)、業務上過失致死傷事件の刑事裁判が始まったが、遺族へ謝罪しつつ裁判では「無罪」を主張。遺族の怒りはおさまらない。

 また山口県でクラッチ系統の欠陥によって運転手の死亡事故について、2004年7月河添元社長は元役員3人とともに業務上過失致死罪で逮捕・起訴された。

 

 濡れ衣は晴れたものの、実際の運送会社社長と従業員、その家族が過ごした2年間の苦しみは、いかばかりだったのであろうか。そして、最終的には三菱が罪を問われたものの、被害者の遺族にとっては死亡事故の割には「罪が軽すぎる」(執行猶予付きの禁固刑)と無念の思いだったそうだ。主婦の母親が、同社と国を相手に損害賠償訴訟を起こしたが、2007年9月同社に550万円の支払いを命じる判決が最高裁で確定している。

 現実の事件では、罪を押し付けられた会社や大切な家族を失った遺族にとっては、いたたまれない、悲しい結末であったことを、決して忘れてはならない。

 2016年4月、軽自動車の共同開発先の日産自動車の指摘により、三菱自動車は燃費データを改ざんしていた事実が明らかになった。こういった同社の懲りない体質は、古くからの根深い組織的問題だと筆者も感じていたが、これから誠実な会社に変われるのであろうか。

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