映画「家族はつらいよ2」
2017年6月21日(水)、映画『家族はつらいよ2』を観る。
山田洋次監督の国民的映画『男はつらいよ』シリーズが終了してから20年以上が経つ。山田監督が取り組んだ本格的ホームコメディ・ドラマ『家族はつらいよ』の2作目。
橋爪功と吉行和子が、熟年離婚の危機を迎えた夫婦を演じた『家族はつらいよ』の続編。3年前の『東京家族』で演じた西村雅彦×夏川結衣、中嶋朋子×林家正蔵、妻夫木聡×蒼井優 が、前回、今回もそれぞれの夫婦で配役。
父親の運転免許返上の問題をめぐって家族の騒動が起こるが、運転中に故郷の同級生に偶然再会。その同級生が来訪し、新たな大騒動を引き起こす。
映画のパンフレットの表紙。
離婚騒動から数年後、周造はマイカーでの外出をささやかな楽しみにしていたが、最近車に傷が目立ち始めたことを長男の妻・史江(夏川結衣)が気付く。高齢者の危険運転を心配した家族は、周造から運転免許を返上させようと画策する。
しかし、頑固なオヤジをいったい誰が説得するのか。嫌な役回りを兄妹夫婦でなすりつけ合う。そんな家族を見透かした周造は、「いつの間に俺の家族は言いたいことも素直に言えなくなってしまったんだ!もう崩壊しているな、この家族は!」と大激怒。「俺は死ぬまで車を運転する!」と宣言する始末。平田家は、またもや不穏な空気に包まれる。
そんなある日、富子(吉行和子)が海外旅行に出かけることになり不在に。つかの間の独身生活を楽しむ周造は、お気に入りの居酒屋の女将・かよ(風吹ジュン)を食事に誘い、車を走らせる。その途中、道路工事の現場で交通整理に汗を流す高校時代の同級生・丸田吟平(小林稔侍)と偶然再会する。
その直後にダンプカーと追突事故を起こしてしまうが、かよの機転の利く対応で事なきを得る。しかし、長男夫婦に交通事故と女性とのデートがバレてしまい、大喧嘩に。
同級生の丸太は、大きな呉服屋の跡取り息子。高校時代は背が高くてサッカー部のゴールキーパー、女子生徒にモテた。男子生徒の憧れのマドンナと結婚、その後離婚や事業の失敗、だまされて保証人になり借金に追われる生活で音信不通に。今や独り身で、貧しく寂しい生活を送っていたのだった。
周造は丸太のために同窓会を開き、四十数年ぶりに一緒に酒を飲み、酔っぱらった丸田を自宅2階の留守中の富子のベッドに泊める。翌朝、周造の免許返納について家族会議を開くため、長男・幸之助(西村雅彦)が招集した兄妹夫婦たちが集まった。ところがなんと、泊まっていた丸太が血を吐いて息を引き取っており、平穏な住宅街に救急車や警察がやって来て、平田家は大パニック・・・。
映画のパンフレットから転載。
前回は探偵事務所の小林稔侍は、貧しい孤独老人の役。特別出演の笑福亭鶴瓶と演歌歌手・徳永ゆうきは、チョイ役で出演。刑事役の劇団ひとりと新米巡査の藤山扇治郎(藤山寛美の孫)は、初出演だった。
高齢者ドライバーの問題から端を発して、老々介護、老人の孤独死などのいわゆる高齢化社会の問題点が浮きあがって来る。前回の「熟年離婚」に続いて、「無縁社会」というテーマを背景に、平田家の大騒動、大喧嘩の可笑しさに、劇場の中は私を含め観客も大爆笑だった。丸太という男を通じて、悲哀とか哀愁を感じながら・・・。
今回も庄太(妻夫木聡)の妻・憲子(蒼井優)が、このストーリーのキーパーソン。ドタバタ家族の中でも、一番しっかりしていていて良識もあるまともな人物。看護師をしている。しかし憲子の家族は大変だ。憲子の実家の母親は、寝たきりの認知症の祖母を引き取り、保険営業の仕事をしながら介護をしている。別れた父親は、ペースメーカーをつけているのに酒好き、医者嫌い、博多でひとり暮らしという孤独老人。家族から見放された老人の孤独死は、憲子にとっては他人事ではないというのが伝わって来る。
やっぱり憲子役の蒼井優には、山田監督が尊敬する小津安次郎監督の映画『東京物語』、紀子役の原節子をイメージしてしまう。
周造役の橋爪功は1941年9月生まれの75歳と、ちょうど後期高齢者。免許更新時に認知機能検査や高齢者講習の受講などがあり、映画と同じくそろそろ免許返上の年代か。富子役の吉行和子は、映画ではとても70歳前後くらいにしか見えないが、なんと1935年8月生まれの81歳。80代にしてまだまだ現役女優として活躍しているのは凄い。
1931年9月生まれで85歳の山田洋次監督には、家族コメディシリーズの3作目『家族はつらいよ3』も期待したい。
本ブログの関連記事は以下の通り。
映画「東京家族」 2013年2月9日投稿
http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-1fb5.html
映画「家族はつらいよ」 2016年4月7日投稿
http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/post-009d.html
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橋爪功と吉行和子が、熟年離婚の危機を迎えた夫婦は味がありそうですね~!6月は天気のいい日が続いていましたがいよいよ本格的な梅雨本番という感じになってきました。こんな日は映画鑑賞がいいかも!
投稿: ローリングウエスト | 2017年6月29日 (木) 06時07分
>R/W様
ホームコメディながら、背景に小津安次郎監督の名作映画『東京物語』を意識した作品でした。
投稿: ものみ・ゆさん | 2017年6月30日 (金) 20時20分
素敵なショットと解説から、様子、雰囲気、伝わってきました。
ご紹介、ありがとうございました。
投稿: siawasekun | 2017年7月 1日 (土) 02時55分
>siawasekun様
訪問ありがとうございます。良ければ、本ブログの関連記事『家族はつらいよ』と『東京家族』も参照ください。
投稿: ものみ・ゆさん | 2017年7月 1日 (土) 19時14分
健康で、元気が一番ですね。
平凡な生活が日々送れることが幸せ、・・・・・・。
ですね。
投稿: siawasekun | 2017年7月 8日 (土) 02時58分
この映画面白そうですね!今年4月に葛飾柴又散策で山田洋次ミュージアムを見てきました。毎日暑いですネ~!日本全国で集中豪雨が沢山起きておりますがでもそろそろ梅雨明け宣言が出そうですね。南関東は連日の異常猛暑で殆ど雨は降っておらず、実態はもう10日前に梅雨明けしているのではないかと思いますが・・。
投稿: ローリングウエスト | 2017年7月15日 (土) 09時12分