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2017年5月 3日 (水)

小説「火花」

 2015年の芥川賞を受賞したお笑い芸人・又吉直樹の小説『火花』の文庫版(文春文庫、580円+税)が、2017年2月10日に発売された。

 このベストセラー小説は、文庫版が出たら読もうと思っていたので、販売されるとすぐに買って読み始めた。

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 一方で小説『火花』は、日本のネットフリックス社と吉本興業でドラマとして製作され、2016年春にネットフリックス社から映像が世界に向け配信されたそうだ。

 ネットフリックス社(Netflix, Inc.)は、インターネットを介してDVDレンタルや映像ストリーミング配信事業会社。本拠地は米国カリフォルニア州にあり、世界各国でも運営されている。ストリーミング配信では、既存映画などコンテンツのほかにオリジナルのコンテンツも配信されている。(ストリーミングとは、インターネットを経由して動画データをダウンロードしなくても視聴できるようにするための技術)

 それのコンテンツの再編集版が2017年2月末 から、NHK総合テレビでドラマ『火花』全10話として放送が始まったのだ。放送は、2月26日(日) から毎週日曜午後11時00分。50分番組で、全10話。

 NHKドラマは、日曜夜遅い放送だったこともあって、見逃した回もあったが、4月30日(日)の最終回(第10話)まで見終えた。ドラマは小説にかなり忠実に作ってあり、セリフも小説とほとんど同じだった。

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 ★ ★ ★

 売れない漫才コンビ「スパークス」の徳永(林遣都、写真左)は、営業で行った熱海の花火大会で先輩コンビ「あほんだら」の天才肌の芸人・神谷(波岡一喜、写真右)と出会う。神谷の強烈な漫才にショックを受け、その才能に憧れて師匠になって欲しいと懇願。神谷は、徳永の弟子入りの条件に「俺の伝記を作ってほしいねん」と要求、師弟関係が始まる。

 二人は共に過ごすことが多くなる。居酒屋に行っては「笑い」とは何か、「漫才」、「人生」について熱く語り合う。先輩はお金の余裕はなくても、いつも後輩に飲食を奢るのが芸人世界なのだ。神谷は、「笑い」に対する自分の考え、信念や理想を持っている。その神谷に影響を受け、すべてを吸収しようとする徳永は神谷の元で次第に成長していく。

 少しづつであるが、売れていく徳永のコンビ。自分の信念で誰にも媚びないが、どこか荒唐無稽さは、周囲からは理解されず万事がうまくいかない神谷のコンビ。

 神谷は飲みに行けば、女の子にはモテる。同棲している彼女・真樹(門脇麦)もいたが、男が出来たため、アパートから追い出されてしまう。やがて二人の間で、歯車は少しずつ噛み合わなくなって来る。多額の借金を抱えたまま、苦悩する神谷はいつも間にか姿を消してしまうのだった。

 やっと売れ始めた徳永は、この道に入ってからもう10年が経っていた。やがて徳永に人生の転機がやってくる。コンビ「スパークス」の解散だった。そして1年ぶりに再会した神谷の絶望的な姿を見て、徳永は驚愕する・・・。

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 監督は、寺島しのぶ主演の映画『ヴァイブレータ』 (2003年公開)で知られる廣木隆一。

 

 ★ ★ ★

 この小説は、筆者の身近な人にはあまり評判は良くない。NHKのドラマも、熱心に見たのは最初の回だけで、後は見なくなった。

 ネットでも、内容が無いし全然面白くないという声も多かったようだ。放送前には話題となったが、回を重ねるにつれ視聴率も落ち込んでしまったそうだ。ネット上では、キャストの声が小さくボソボソに聞こえる、ストーリーの展開が遅くて飽きてしまう、 映像が退屈で途中で寝てしまうなどが寄せられていたという。なるほどその通りだ。

 このドラマ作品の廣木監督は「この作品は空気感が肝」と言っているそうだが、映画通でない筆者にはその意味がよく理解できない。確かにカメラの長回しや遠くから撮影する引きの映像が多くて、NHKが作るような大多数の人に分かり易いドラマとは明らかに違う。

 芥川賞のこの作品を読んで最初の印象は、又吉の文章の表現力がすごい。彼には失礼だが、漫才師がよくあんなに素晴らしい文学らしい文章が書けるものだと尊敬してしまった。これまでビジネス文書やブログ記事くらいしか書いたことはない筆者は、彼の文章力に憧れてしまう。このブログもあんなふうな文章で書ければ良いのだが・・・。

 小説を読み始めてから、ダラダラした物語の展開で、著者は何が言いたいのか、何か感動するようなこともなかった。これは「大衆小説」のようだが、確かに「純小説」なのだ。一般的には、筆者のような読書家でない人間には難しい部類の小説なのかもしれない。

 読み終わってみると、「笑い」とは何か、「天才」とは何か、「人生」とは何かを考えさせられた。しゃべりの才能も社交性も乏しかった主人公が、先輩芸人に影響を受けて次第に成長していく。一方で、笑いや人生について語らせると自分の哲学を持っていて、自分の考えをつらぬく、他人に媚びない天才肌の芸人は、結局は周囲に理解されず、人生の裏側へと去って行く。師弟関係だった若者二人が、皮肉にも反対の道を歩むことになる。

 

 ★ ★ ★

 神谷ほどではないが、自分の人生の中でも似たような人は周囲に何人かいた。せっかくその道の才能はあるが、周囲から理解されない、周囲に溶け込んでその中で生きようとしない。徳永のような一部の人には慕われたり尊敬されたりするが、理屈っぽくて自分勝手、自分だけが正しいとする独善的で排他的な人、周囲との社会性が乏しい人。人の立場や痛みが分からない人、約束を守らない人、金銭感覚に乏しい人、酒におぼれる人・・・、そんな人と神谷とが重なる。

 神谷は本当にお笑いの「天才」だったのか、単なる「天才肌」だったのか、才能はあったのか。もし彼が、お笑い芸人ではなく、才能ある芸術家だったら・・・、実力のあるスポーツマンだったら・・・・、名を残すような人になったのだろうか。

 天才の多くは、それと裏腹の何かの欠点を持っているはずだ。コンピュータの実業家スティーブ・ジョブズ、発明家のエジソンや理論物理学のアインシュタイン、そのほか天才音楽家も天才画家も、何らかの発達障害や適応障害があったとされる。このために周囲といろいろと問題を起こしているが、素晴らしい業績を残した天才だ。才能と欠点をうまくバランスしてこそ、天才が人生で成功するのだろう。

 小説の主人公・徳永が書いた「神谷さんの伝記」が、ノート20冊になったとある。実際に著者の又吉直樹は、神谷のような師匠と仰ぐモデルになった先輩(1人でないかもしれない)がいたのだろう。そんな先輩から教わった事、語り合った事、出来事などをノートに書き留め続け、それを元に小説を書いたのではないだろうか。

 なお2017年2月14日、小説『火花』の映画化が発表されたそうだ。2017年11月に公開予定。auのCMの菅田将暉(徳永)と桐谷健太(神谷)、木村文乃(神谷の彼女・真樹)が演じ、監督は板尾創路。もう一つ楽しみが増えた。

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コメント

火花はブームが収まって昨年読みました。冒頭からの文章表現がさすがだな!と思いました。でも確かに後半読む進めていくとちょっと冗長な感じがして退屈な気もしました。

>ローリングウエスト様
又吉直樹の小説第2作『劇場』が、文芸誌「新潮」4月号に掲載され、5月11日には単行本が発売されたようです。書評だけは見ていますが、また文庫版が出るころに読んでみたいとは思います。

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