DIC川村記念美術館
2017年2月26日(日)、佐倉市にある「DIC川村記念美術館」に行く。
午前中に千葉県佐倉市の「国立歴史民俗博物館」を観覧、午後から佐倉城址公園を散策した後、佐倉市郊外にある「DIC川村記念美術館」に移動する。
DIC(ディアイシー)は、旧社名「大日本インキ化学工業株式会社」。「川村記念美術館」はそのDICの創業者・川村喜十郎をはじめとする川村家三代の収集品を公開するため、1990年(平成2年)に開館した民間の美術館。
レンブラントやマネ、ルノアールの印象画、日本画、ピカソやシャガールなどの近代美術、20世紀の現代アートが展示されている。
13:30、美術館の駐車場着。
インフォメーションの建物の右手、入口ゲートの左手にある彫刻家・佐藤忠良のブロンズ作品『緑』(1989年製作)。
広大な自然の庭園の中の散策路を歩く。池の向う林の奥にDIC総合研究所が見えた。
右手の美術館に向かう。
ヨーロッパの城のような美術館。建物の設計は、建築家・海老原一郎氏。
美術館入口の左手にある巨大な赤い椅子のような作品は、彫刻家・陶芸家の清水九兵衛『朱甲面』(1990年製作)。材料は、鋳造アルミニウム、ステンレススチールなど。
美術館の入口の右手にあるフランク・ステラによる作品『リュネヴィル』(1994年製作)。廃材のようにも見えるが、材料はステンレスやアルミナブロンズだそうだ。どこか宮崎駿のアニメ映画『ハウルの動く城』を思い出す。
13:40、美術館に入館。
14:00~15:00、ガイドスタッフによる鑑賞ツアーがあり、展示絵画の解説を1点ずつを聞く。どこの美術館もそうだが、館内は撮影禁止。
以下、主な作品について記す。
なお、「美術館のパンフから転載」と注記された以外の写真の出展は、ウィキペディア「川村記念美術館」のパブリック・コモン。
レンブラント・ファン・レイン『広つば帽を被った男』(1635年); 左方から光が当てられ、生き生きとした顔の表情が光と影で描き出されており、質感をリアルに描写している。
この絵は当初、モデルの妻の肖像画と一対で飾られていたはずだが、子孫の代になって別々に売られたのか、妻の絵はアメリカのクリーヴランド美術館に所蔵。ガイドスタッフの話では、一度だけアメリカから借りて、並べて展示したことがあるそうだ。
クロード・モネ『睡蓮』(1907年); 自宅の庭に造った池の睡蓮を描き、200点以上の作品を残した中の1つ。よく見ると、映り込みで池の外を表現している。水面に写る光と樹木が絵の遠近感を与えている。
オーギュスト・ルノワール『水浴する女』(1891年); 女性の肌の透明感、背景の境界をぼやかして柔らかさを表現しているのが素晴らしい。
ほかに、パブロ・ピカソの『肘掛椅子に座る女』(1927年)を含む2点、など。
マルク・シャガール『赤い太陽』(1979年); シャガールは、20世紀前半にパリで活躍した外国人画家たちの総称「エコール・ド・パリ」のうち特によく知られる一人。闇の黒さを背景に、無重力遊泳するような人物や動物、花束などが浮かび上がる。(美術館のパンフから転載)
他にシャガールの『ダビデ王の夢』1966年; キリストを抱いたマリアとダビデ王の絵は、有名。
長谷川等伯『烏鷺図屏風』1605年; 六曲一双の屏風で、重要文化財。屏風の左隻に烏と右隻に鷺を描いた水墨画で、黒と白、動と静をを対比させているそうだ。
左隻の烏の図
右隻の鷺の図
他に日本画では、尾形光琳の『柳に水鳥図屏風』、加山又造『鶴舞』の作品が各1点が展示。
次のコーナーでは、現代アートが多数展示。幾何学的な線や模様、抽象的な図形などの絵画や壁画、オブジェなど作品は、理解に苦しむ。作品の掲載、解説は省略する。
マックス・エルンスト『入る・出る』1923年; ダイニングのドアに直接描かれた絵。(美術館のパンフから転載)
屋外にも作品『リュネヴィル』があったが、フランク・ステラの大型作品群。(美術館のパンフから転載)
本美術館は千葉県佐倉市坂戸にあり、隣接するDIC株式会社総合研究所の敷地と合わせ、里山を利用した広さ30万平方米(9万坪)の広大な庭園の一角に建つ。近現代美術のコレクションとしては、日本でも有数の規模を持つらしい。収蔵品が1,000点以上もあるそうだが、広い館内にたくさんの作品を詰め込みすぎず、ゆったりしている。特に現代アートの作品は、大きいので天井も高い。
15:15、美術館を退館。出口ゲートを出て駐車場へ。
美術館の外は時間がなくて回れなかったが、池では水鳥が泳ぎ、庭園の林間には散策路が設けられている。野鳥や四季の草花・樹木の花々が楽しめ、芝生広場でくつろげるという。
15:30、美術館を出発。
行きは朝7時半過ぎ出発、佐倉市の「歴博」には、2時間半弱で着いた。
帰りは別ルートで帰ろうとしたが、高速道路が渋滞していて結局4時間半もかかり、帰着したのは20時前。博物館、美術館の2つのミュージアムを午前・午後と観覧して、立ちっぱなしということもあって、けっこう疲れた。
★ ★ ★
DIC株式会社は、印刷インキで世界トップシェアのファインケミカルメーカー。明治41年に印刷インキの製造及び販売会社として創業。今日に至るまで 有機顔料、合成樹脂材料の他、電子情報材料などを製造販売。
「大日本インキ」という名前は聞いたことがあったが、万年筆や硬筆ペンのインクをイメージしていたら違っていた。日露戦争後の明治末期に急伸した印刷業界の印刷用インキ製造・販売が出発点だった。会社の概要は、以下の通り。
沿革: 1908年(明治41年) 「川村インキ製造所」創業。
1937年(昭和12年) 「大日本インキ製造株式会社」設立。
1962年(昭和37年) 「大日本インキ化学工業株式会社」に変更。
2008年(平成20年) 「DIC株式会社」に商号変更。
本社: 東京都中央区、工場;東京都板橋区ほか8ヶ所、総合研究所;千葉県佐倉市。
資本金: 966億円、連結従業員数:2万人、連結売上高7,500億円(2016年12月期)
「現代アート」という定義はないそうだが、「伝統的・古典的なアートではないアートが、現代アート」だそうだ。ともかく現代アートは、鑑賞してもさっぱりわからない。
この分からない作品を権威のある人から評価されたり、お墨付きを与えられたりして、作品が高価で取引されているのもよく分からない。
既成の概念、社会通念や規範を破ってこそ現代アートかもしれないが、倫理観に欠ける作品を発表し、社会問題になることもある。現代アートに、こういったマイナスイメージが付い回るのも、分かりにくくしている。
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DIC(旧 大日本インキ化学工業)は古臭い社名とは裏腹に変化する時代を生き抜いた会社というイメージがあります。文化面の貢献もすごい!
投稿: RW | 2017年3月11日 (土) 14時21分
>ローリングウエスト様
印刷業界には詳しくありませんが、時代を担う業界大手の「凸版印刷」や「東洋インキ」も、「DIC」と同様の明治41年前後の創業、「大日本印刷」はもっと早い明治9年創業で、100年以上の歴史ある会社だということもも知りました。
投稿: ものみ・ゆさん | 2017年3月11日 (土) 21時10分