甲斐駒ヶ岳-その2
2015年8月22日(土)~24日(月)、2泊3日の甲斐駒ヶ岳山行。
本ブログの記事「甲斐駒ヶ岳-その1」の続き。
8月23日(日)午前3:00、仙水小屋のスタッフから起こされる。気持ち良く起きられたので、睡眠時間は十分。宿泊者全員は母屋に集まり、3:30~朝食。昨日の夕食の時と同じ弁当型の食器だ。朝食の写真は、撮り忘れた。
まだ夜が明けない4:30、ヘッドランプを点け予定より1時間早く、山小屋を出発。
樹林帯を抜け、大きな石のガレ場(岩塊斜面)の裾を行くころは、空が白みかける。(写真は4:50頃)
5:10、岩がゴロゴロした仙水峠(標高2264m)に着くころには、すっかり明るくなっている。
5:15頃が日の出だが、周りは濃い霧に囲まれ、太陽はどこにあるか全く見えない。霧が薄くなって見上げると、間近に見える「摩利支天(まりしてん)」の迫力に圧倒される。
摩利支天は、甲斐駒ヶ岳と対をなし、山頂の南東に位置する花崗岩の岩峰、標高2,820m。
15分ほど仙水峠で休憩。ここで、朝食の弁当をとる登山者も多い。
再び樹林の中を急登、高度を上げる。
陽が射してきて、見晴らしの良いところで後ろ振り返ると、雲上に「鳳凰三山」のうちの「地蔵岳」(2,764m)とオベリスクと呼ばれる尖った岩塔がくっきり見える。
6:30頃、朝日を浴びた白い三角錐の甲斐駒ヶ岳とその右手に摩利支天が姿を現す。
眼下には、昨日通って来た長衛小屋そばにあったキャンプ場、カラフルなテント群が雲間から見える。
南アルプスの巨峰、富士山に次ぐ標高の「北岳」(3,193m)の美しい三角形の雄姿を眺望、感激の歓声をあげる。その後方は、第3位の「間ノ岳」(あいのだけ、3,190m)。
やがて樹林が切れ、ハイマツの尾根道が続く。駒津峰まで、相変わらず急登は続く。
甲斐駒ヶ岳の南西方向にある「仙丈ケ岳」(標高3,033m)が姿を出しかける。しかし山頂には雲がかかっていて、この後はまた雲に隠れてしまった。
7:35、駒津峰に到着。ここは甲斐駒ヶ岳の六合目、標高2,752m。休憩17分。写真左手(北西方向)に「鋸岳」(のこぎりだけ、2,685m)。
駒津峰から見える、甲斐駒の白い岩石と白い砂の頂きは、いかにも神々しい。
荒々しい岩石の山頂を望遠撮影。
駒津峰から岩場のやせ尾根の急坂を一旦下る。
更に登ってまた下る。
鞍部には、巨大岩石「六方石」がある。ここからまた岩場の急登が始まる。
途中、岩にペンキで「直」(直進)と「マキ」(巻き道)の文字がある。コースが分かれ、直進は岩稜直登の尾根通しで上級者向け。右の巻き道を行く。
後ろを振り返ると、鞍部にあった「六方石」が見える。
前方を見上げると、ここは白い岩石だらけの山頂の直下。
山頂まで、滑りそうな白砂の急斜面と鎖の無い岩場を息を切らしながら、ゆっくりと登る。
右手に摩利支天を見ながら登る。
山頂は意外と広く、大きな石の祠と一等三角点がある。山頂は晴れているが、周りは一面の雲が出て来て、眺望は全くない。早めの昼食と休憩で40分、ちょっと長く居過ぎた。
祠は石造で、正面には格子扉、わらじが掛けられ、「皇紀二千六百年記念」の文字が見える。隣に「大己貴命」と書かれた石柱があり、周囲にも様々な石碑、石仏など建てられている。
甲斐駒ケ岳山頂の本宮(奥宮)に対して前宮(里宮)は、2ヶ所あるそうだ。甲斐駒ケ岳への山梨県側西麓の登山口、北杜市竹宇(ちくう)地区と横手地区にそれぞれの「駒ケ嶽神社」が鎮座。南アルプス林道が出来る前はこの登山口からがメインの登山コースで、その黒戸尾根には信仰にまつわる石仏や石碑がいくつも残っているそうだ。
10:50、下山開始。
山頂から直下5分ほどの東峰(2,966m)に寄り道してみる。人影のないそこには、様々な石碑や石仏が建てられている。岩陰には山頂(西峰)ほど立派ではないが、小さい白い祠もあり、「大己貴命」と「駒ケ嶽神社本社」(の石柱と鉄剣が立っていた。ここが横手駒ケ嶽神社の本宮(奥宮)か。そうすると、山頂(西峰)は、竹宇駒ケ嶽神社の本宮(奥宮)か。
摩利支天の峰にも、石仏と石碑、小さな祠が建っていて、摩利支天を祀ってあるらしい。
早めに下山したメンバーの一人が、摩利支天に寄り道しようとするが、時間がかかり途中あきらめて引き返す。
12:40、駒津峰で休憩10分。だいぶ予定のスケジュールよりも遅れている。帰りの林道バスに間に合うか、下山を急ぐ。駒津峰から尾根通しに、双児山を経由するコースで下る。
やがて樹林の中の急な登山道となる。アップダウンがあって、13:40双児山(2,649m)で休憩5分、再び樹林の中、ジグザグの登山道が延々と続く。
15:00発の林道バスの発車クラクションが聞こえる。北沢峠はすぐ近くと思われるが、なかなか着かない。
脚、膝の痛みはないが、疲労もそろそろ限界。林道バスの16:00発の最終便に間に合うか心配になる。
15:30、北沢峠にやっとのことで無事到着。
すでに10数人ほどの登山者がバスのりばに並んでいる。行きに買ってあった往復乗車券を利用し、臨時バスに乗り込む。定員しか乗せないので全員座れるが、かさばる重いザックもあって座席は窮屈。
15:38、臨時便が出発。最終便は16:00発だが、この後も続々と登山者が下山して来ていたので、臨時便が増発されていたようだ。16:18 、約40分で仙流荘バスのりばに到着。
16:30、「仙流荘」にチェックイン。すぐに温泉に入り、2日分の汗を流し、疲れを癒す。
18:00~夕食、下山祝いに生ビールで乾杯。飲みながら登山の反省を語り合う。
新館和室2室に分宿。疲れで、夜9時頃には寝てしまう。
★ ★ ★
「駒ヶ岳」という山は、全国に18座もあるそうだ。その中で、甲斐の駒ヶ岳が最高峰で2,967m。木曽の駒ヶ岳がこれに続き、2,956 m。甲斐駒ヶ岳と木曽駒ヶ岳に挟まれる長野県伊那谷周辺の人々は、甲斐駒ヶ岳を「東駒ヶ岳」、木曽駒ヶ岳を「西駒ヶ岳」と呼ぶ。
甲斐駒ヶ岳は花崗岩で出来ていて、山肌が夏でも白く見えることから、古くから名山として讃えられ、また信仰の対象ともなっている。
甲斐駒ヶ岳の本宮(本社、または奥宮)には、「大己貴大神」(おおなむちのおおかみ、大国主命(おおくにぬしのみこと)のこと)と「駒室大神」が、摩利支天の峰には「摩利支天」が、そのほか烏帽子岳(2,594m)、黒戸尾根にある黒戸山(2,245m)などにも様々な神や仏が、神仏習合(神仏混交)で祀られているらしい。
「摩利支天」とは、仏教の守護神である天部の一つで、陽炎(かげろう)や日の光を神格化したものだそうだ。天部には、摩利支天のほかに梵天、帝釈天、四天王、弁財天、大黒天、吉祥天、韋駄天、歓喜天、金剛力士、鬼子母神、十二神将などなどがある。
摩利支天は、常に身を隠し、護身・得財・勝利などをつかさどるとか、念じればすべての災厄を免れることができるとされる。中世、日蓮は行者守護の神として崇敬し、武士の間でも武士の守護神として信仰された。江戸時代には蓄財や福徳の神として大黒天や弁才天とともに人気があったという。
日本の山岳信仰の対象となった山では、その一峰が摩利支天と呼ばれているところがある。ほかに、「木曽御嶽山」(摩利支天山)、「乗鞍岳」(摩利支天岳)がある。
深田久弥氏も、甲斐駒ヶ岳の品格ある山容を讃えている。
以下、登山愛好家のバイブルである氏の著書『日本百名山』(1964年、新潮社から刊行)から、その名文を引用する。
「日本アルプスで一番代表的なビラミッドは、と問われたら、私は真っ先にこの駒ヶ岳をあげよう。その金字塔の本領は、八ヶ岳や霧ヶ峰や北アルプスから望んだ時、いよいよ発揮される。南アルプスの巨峰群が重畳(ちょうじょう)している中に、この端正な三角錐(すい)はその仲間から少し離れて、はなはだ個性的な姿勢で立っている。まさしく毅然(きぜん)という形容に値する威と品(ひん)をそなえた山容である。」
「日本アルプスで一番奇麗な頂上は、と訊かれても、やはり私は甲斐駒をあげよう。眺望の豊かなことは言うまでもないとして、花崗岩(かこうがん)の白砂を敷きつめた頂上の美しさを推したいのである。・・・・」
深田久弥氏については、
2014年9月公開の本ブログ記事「茅ヶ岳と深田久弥」に掲載。
http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-f5ef.html
この後は、本ブログ記事「甲斐駒ヶ岳-その3」に続く。
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甲斐駒ケ岳って凄い岩山なのですね。ビックリです。こんな大変な山を写真に収めたり、
色々な事を調べて記して下さり、、自分も、登っているような気分になりました。
13年の夏、仙丈ケ岳に登り、広河原に車を置き、大変だった事、トイレに起き、星がきれいだった事、お花がきれいだった事思い出しました。
アルプスって空の青さと空気、ほんとうに素敵ですよね。3000m近い山、下界ではとても味わえないですね。
もう、あんな高い山登れません。 写真を眺めて楽しんでいます。
投稿: 雪だるま | 2015年9月 9日 (水) 13時31分
>雪だるまさんへ
甲斐駒ヶ岳の記事を読んでコメントまで頂き、ありがとうございます。以前、千丈ヶ岳に登られたとか。良い思い出ですね。
私も若い時に甲斐駒ヶ岳、翌日仙丈ケ岳と続けて登ったことがありました。今回、28年ぶりに甲斐駒ヶ岳に登り、どんなに厳しいか思い知らされました。もうこの程度の山に次に登るのは、無理かなと思い始めています。
投稿: ものみ・ゆさん | 2015年9月 9日 (水) 16時29分