栃木県北部の冬景色
2015年2月2日(月)、 栃木県北部、塩谷町と日光市の冬景色を巡る。 天気は晴れ。
未だ夜が明けない早朝、車で出発。埼玉県行田市の「古代蓮の里」に寄ってみる。
●古代蓮の里(6:29~7:24)
古代蓮の水鳥の池。空は白んでいるが、まだ陽は昇らない。3日前の雪がまだ残っている。
6:40頃陽が昇りると、枯れた蓮の茎をオレンジ色に染め、眠っていたカモたちが活動を始める。
「古代蓮の里」は、1992年(平成4)から2000年(平成12)にかけて、整備された公園。園内には、6月下旬~8月上旬、42種類12万株の花蓮が咲く。他にも水生植物園、水鳥の池、牡丹、梅、桜のお花見広場がある。古代蓮会館の高さ50メートルのタワーが目を引く。
古代蓮(行田蓮)は、1,400年~3,000年前の蓮とされている。この付近の公共施設建設工事の際に、多くの蓮の実が出土し、自然発芽して開花しているのが発見された。濃いピンク色で花弁の数が少ない原始的な蓮で、植物学的に極めて貴重なものだそうだ。市の天然記念物。(写真は、行田市生き生き財団のホームページから)
羽生IC(埼玉県)から東北自動車道を走り、8:30大河内スマートIC(栃木県)を出る。
県道63号を北上、塩谷町役場を経て、上寺島のY字路を左折。県道235号線を北西へ向かうと、「西荒川ダム」の人口湖「東古屋湖」がある。
●東古屋湖(9:12~10:00)
東古屋湖(ひがしこやこ)の上流から沿った道を左折し、西荒川に架かる橋(橋の名前は不明)の付近で撮影。
東古屋湖では、ニジマス、大型のニジマス、ヤマメ、サクラマス、イワナなどが棲息している。3月~12月の解禁期間には、多くの釣り客で賑わいを見せるそうだ。
西荒川に沿って、舗装してない西荒川林道がある。
林道入り口には、反対同盟会が立てた看板があった。ここから4.5Km先の塩谷町寺島入は、放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場の候補地とされている。
しばらくすると、地元の人が2名で軽トラックでやってきて、我々よそ者をじろじろ見る。挨拶して話しかけると、今日午後1時ごろ環境副大臣が来て最終処分場を視察するので、これから反対町民が集まるのだそうだ。
最終処分場の手前には、隠れた名所の「大滝」もある。騒ぎにならない今のうちに、行ってみることにする。「西荒川林道」と書かれた錆びた看板が立つ林道を進む。
林道を2~3Km進むと、右脇に「大滝」の看板があって、渓流に下りると大滝があるはずだが、雪で看板も大滝のへ下りる道も確認できず。雪も深く、あきらめて引き返す。
林道入り口に戻ると、すでに町民が十数人くらい集まっていて、我々に何者かと好奇の目で見られた。
この近辺には反対同盟会が作った看板や、沿道には「最終処分地建設 断固反対」の幟(のぼり)が数多く立っている。いかにも町ぐるみで反対しているという感じ。
塩谷町上寺島のY字路まで戻り、県道63号を北東に進み、「東荒川ダム」に向かう。
●尚仁沢はーとらんど(11:00~11:08)
尚仁沢(しょうじんさわ)渓谷は、東荒川ダム下流に流入し、那珂川水系荒川に合流する。塩谷町では町おこし事業として、「尚仁沢湧水」の供給施設を設置し、業者向けに販売。また尚仁沢の清水を導水し、この東荒川ダム湖畔に「東荒川ダム親水公園」(尚仁沢名水パーク)を整備した。
「尚仁沢はーとらんど」は、この東荒川ダム親水公園にあり、地元特産品と軽食、B級グルメ「里芋ふらい」等の販売や四季のイベントを開催する町営施設。
尚仁沢の清水を現地に行かなくても取水できる給水施設(水汲み場)がある。県外からを含め、タンクを持ち込んが人たちがやって来て水を汲む。
水色の黒沢橋の向うに、最高峰の釈迦岳1795mなどのいくつかの峰を有する火山群「高原山」が見える。公園内には、遊歩道や水遊び場、児童遊園などがある。
尚仁沢湧水は、1975年(昭和60)に環境省選定「名水百選」の認定を受けた。栃木県塩谷町と矢板市の境界付近の高原山(釈迦ケ岳1795m)の山麓、標高590mの場所にあり、日量65,000トンにもなる豊富な湧水量を有する。
水源林により伏流し、冬季でも渇水や凍結することがない。水温も年間通じて11℃前後、水質は天然アルカリイオン水、冷たく軟らかいのが特徴。1997年(平成9)にはおいしい水の中で全国第一位の認定を受け、その後も常に上位に並ぶという。
更に県道63号を川治温泉方面に進み、次の豊月平牧場に向かう。
●豊月平牧場(11:21~11:38)
やがて左手に町営の乳牛放牧場が見えてくる。 春から夏の緑の草原は、一面雪で覆われる。 豊月平(ほうげつだいら)牧場は、家畜伝染病予防のため場内には立ち入り禁止。柵外から撮影。
県道63号線を戻り、全国名水百選「尚仁沢湧水群」に向かうが、遊歩道を30分歩くようで、この雪の中ではちょっと無理。11:52、引き返すことにする。
●ふれあいの里(12:22~13:03)
鬼怒川の上平橋のたもとにある農村レストラン「ふれあいの里しおや尚仁」。
尚仁沢の清流と地元産の蕎麦粉を使った蕎麦は、けっこうコシが強い。
再び県道63号線を北上、玉生(たまにゅう)交差点を左折し、国道461号(日光街道)、国道119号、国道120号を走る。
中禅寺湖、戦場ヶ原を経て右折し、光徳牧場方面に向かう。やはり、日光・奥日光の冬の観光客はちらほら。
●光徳沼(14:32~14:51)
道路から100mばかり雪の中を歩き、光徳沼へ着く。
光徳沼は光徳牧場のすぐ近くにある。戦場ヶ原の湿原に流入する逆川(さかさがわ)上流の沼というより、幅広の川のイメージで、水深も浅い。
●龍頭の滝(15:01~15:23)
もと来た道を戻り、龍頭(りゅうず)の滝の滝壺近くにあるお休み処「龍頭之茶屋」へ。
滝は、戦場ヶ原から流出する湯川が中禅寺湖に注ぐ手前にある。凍り付いた滝を見るのは初めてだが、ここはやはり紅葉の時期が一番美しい。
龍頭之茶屋で、お汁粉500円。
●中禅寺湖(15:27~15:48)
中禅寺湖の東側湖岸で見られる冬の風物詩「しぶき氷」を見る。しぶき氷は、冬の北西からの強風で吹きつけられた波しぶきが、木の枝や石に付き、凍ったもの。福島県・猪苗代湖のしぶき氷は、木の枝に付いたのもが多いが、こちらは木の枝が少ないので、水際の石にできるようだ。
国道120号線から、16:15日光宇都宮道路の清滝ICに入る。宇都宮JCT(ジャンクション)を経て東北自動車道、帰路へ。
★ ★ ★
福島第一原発の事故に伴い、環境省は放出された放射性セシウムが付着した焼却灰、稲わら、下水汚泥などの「指定廃棄物」は、発生した県内において処理することとし、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の各県において、それぞれ最終処分場を設置するとしている。
2012年(平成24)9月、栃木県内では指定廃棄物の最終処分場候補地に、矢板市の国有林野が選定されたが、白紙撤回を求める様々な運動が展開。2013年(平成25)2月、環境省は矢板市の候補地を取り下げ、選定のやり方を見直すこととなった。
2014年(平成26)7月、環境省副大臣が塩谷町に来庁、栃木県の指定廃棄物処分場の調査候補地に塩谷町寺島入の国有地がなった旨、町長に伝えた。町長はその場で、反対を表明したという。
8月、塩谷町議会は、候補地の白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決。意見書では候補地が、「尚仁沢湧水」に隣接し不適切であるとしている。また「塩谷町民反対同盟会」が設立、処分場建設に反対する住民集会を開いた。
9月~10月、塩谷町議会は、湧水等の保全地域での処分場設置は、町の許可を要するという条例を可決。反対同盟会は、白紙撤回の住民署名を環境省に提出。町長は、指定廃棄物を福島第一原発周辺に貯蔵すべきと主張した。
11月、環境大臣は県内処理を見直さない方針を表明。栃木県知事は国の方針を支持した。
★ ★ ★
2月3日付の「下野(しもつけ)新聞」(栃木県の地方新聞)朝刊によると(抜粋)、
- 環境省は今年2月2日、塩谷町上寺島の候補地で面積を測る現地確認を行おうとしたが、候補地に通じる林道を約300人の人垣でふさいだ住民の阻止活動に遭い、この日の立ち入りを中止した。
林道につながる県道の沿道では、住民らがプラカードを持つなどして環境省への抗議の意思を示した。午後1時ごろ、同省関東地方環境事務所の職員ら計9人が林道入り口付近に到着。人垣をつくり待機していた塩谷町民指定廃棄物最終処分場反対同盟会役員や住民と相対した。 -
林道入り口で、地元の人から環境副大臣が視察に来ると言ったのは間違いで、環境省職員が現地確認に来るということだったようだ。確かに新聞いあるように、林道入り口だけでなく、県道の沿道でもプラカードを持った町民を大勢見た。なお後で調べると、副大臣は町長に面会のため、何度か塩屋町に来庁している。
★ ★ ★
「放射性廃棄物」は放射性物質を含む廃棄物で、原子力発電所や核燃料製造施設、または放射性同位体 (RI) を使用する実験施設や病院から排出され、「原子力基本法」に取扱いが規定されている。高レベルと低レベル放射性廃棄物に分けられる。
一方、福島第一原発事故により大気中に放出された放射性廃棄物(放射性物質汚染廃棄物)は、「放射性物質汚染対処特措法」に基づき国が処理する対策地域内廃棄物(避難区域など福島原発に近い地域)と指定廃棄物(それ以外の6県)、「廃棄物処理法」に基づき自治体、業者が処理する通常の廃棄物に分類される。
絶対安全と言われた原発は、事故による汚染問題が発生し、今でも福島第一原発では汚染水の処理が進まず、また汚染により今だ帰宅できない多くの避難民がいる。
塩谷町では、高原山から清らかな川や、名水とされる湧水の近くの候補地に最終処分場ができ、もし汚染が広がれば取り返しのつかないことになると訴えている。どの自治体に処分場を持って行っても、この狭い国土で最善の解決策は、なかなか見い出せないだろう。
高レベルの核燃料廃棄物の最終的な処理が、今だに解決できないのと同じように、低レベルであっても安全神話が崩壊した現在、住民を納得させることは困難だ。原発を推進する限り、再びこういった原発事故の汚染問題がつきまとう。
今や核エネルギーは、人類がコントロールできないということを知るべきである。人類の英知を集めて、核兵器や原発を廃絶することができないものだろうか。政府は、原発の再稼働をやめ、再生エネルギーの開発に注力すべきだ。
本ブログの関連記事は、以下の通り。
2013年08月 戦場ヶ原と日光滝巡り-その2
http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-3885.html
2014年01月 猪苗代湖と裏磐梯の冬景色
http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/post-8d9c.html
« 両国・お茶の水界隈-その2 | トップページ | 秩父路の三大氷柱巡り »
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 吉見百穴と武州松山城趾(2025.02.09)
- 寅さんの柴又を巡るウォーク(2025.01.16)
- 再び渋沢栄一ゆかりの地を巡る(2024.12.26)
- 再び新宿御苑と神宮外苑(2024.12.25)
- 再び紅葉の平林寺(2024.12.08)
コメント