比企西国札所巡り-その1
2014年12月12日(金)、「比企西国三十三札所」のうちの埼玉県滑川町、嵐山町の7ヶ寺を巡る。
札所巡りは、「四国八十八所」、「西国三十三所」、「坂東三十三所」、「秩父三十四所」などが有名だが、「比企西国三十三所」というのは、ほとんど知られていない。
埼玉県比企郡内の札所巡りは、遠隔地を巡礼できない人々のために江戸享保年間に開設された。江戸時代には地域ごとの札所巡りが、全国各地に数多く作られたそうだ。
当日の天気は、日本付近は冬型の気圧配置となって、東北・北陸は雪。関東は気圧の谷の影響では曇が広がる。北風が冷たい。
東武東上線の森林公園駅西口に集合、9:25出発。
●羽尾寺(現・興長禅寺)
森林公園駅から北西に30分程歩くと、曹洞宗の萬勝山「興長禅寺」(滑川町羽尾)、22番札所。この地の地頭・加藤喜左衛門が、1570年(元亀元年)に開基(寺を創始)したようだが、前身の羽尾寺との関係はよくわからない。
近くには、古墳時代6世紀後半~7世紀初頭に作られたという「五輪沼窯(かま)跡」の登り窯がある。県内最古級の須恵器窯跡で、県指定史跡。現在は砂で埋め戻して保存している。
●福正寺
市野川に架かる学校橋を渡り、月輪神社の近くに天台宗月光山「福正寺」(滑川町月輪)がある。23番札所。境内に鎮座する「勢至堂」には狛犬ならぬ狛兎(うさぎ)だ。
勢至堂は、1196年(建久7年)に創建され、太政大臣・藤原(九条)兼実が日夜礼拝していたという勢至菩薩を祀る。
藤原兼実は、平安末期から鎌倉初期の公卿。従一位、摂政、関白、太政大臣。京都九条殿に住み、九条家を創設。九条兼実、また月輪殿、法性寺殿と呼ばれた。
京にいた兼実は、東国に下って当地に来たのだろうか? この地に「月輪館(つきのわのやかた)」という城跡がある。九条兼実が、月輪殿と呼ばれていたことを関連付けて兼実の居館として誤って伝えられるようになったようだ。この事で兼実が礼拝した勢至菩薩が、このお堂にあるということにしたのだろうか。
●放善寺
市野川に沿って西に向かい、県道175号線を横切り、民家の敷地のような所に入る。墓のそばに小さい観音堂がひっそり立っている。24番札所「放善寺」(滑川町水房)は、廃寺となっていて、観音堂となって残っている。
●御堂山
関越道の下をくぐって滑川町との境にある「御堂山」と呼ばれる小高い山に向かう。南には市野川が流れ、北東に関越自動車道が走る。石段を登ると中腹に小さなお堂、25番札所(嵐山町太郎丸)がある。
●菩薩堂
県道69号を横断、地産団地の北側を流れる市野川に沿って進み、県道296号線沿いに28番札所「菩薩堂」(嵐山町志賀)がある。地元では「観音堂」と呼び、お堂と墓地のみ。
現在の菩薩堂は新しいが、1982年(昭和57年)に建て替えられたそうだ。
道を隔てて志賀堂沼、志賀地区集会場と小さい公園あり。12:10、公園で昼食、休憩。
●千手院
午後からは県道296号を南下、東武東上線と国道254号嵐山バイパスを横切り、約30分で大平山を背にした山麓にある27番札所「千手院」(嵐山町千手堂)。
曹洞宗で山号は普門山。村上天皇の時代、962年(応和2)に千手観音堂が建てられたという。本尊の千手観音像は、949年(天暦3)村上天皇自作のものを賜ったそうだ。
本堂の屋根のてっぺん中央に、葵の御紋があるが、何故だろうか。
●多田堂(現・東昌寺)
もと来た道を戻り、武蔵嵐山駅に近くの市街地に、曹洞宗長慶山「東昌寺」(嵐山町菅谷)がある。
山門を入ると、すぐ左側に観音堂がある。この観音堂は、26番札所の「多田堂」の前身だった。本尊は千手観音で、二代将軍秀忠の乳母を勤めた岡部局(おかべのつぼね)に由来するという。
ここから数分先の武蔵嵐山駅に14:45到着、解散。
師走の寒い日だったが、歩程15Km、約5時間半のウォーキングだった。
★ ★ ★
比企西国札所は、1723年(享保8年)に開かれたといわれる。埼玉県比企郡内の東松山市、吉見町、川島町、滑川町、嵐山町、小川町に、合計33ヶ所のお寺やお堂がある。全行程約60kmだそうだ。
お伊勢参りや、四国・西国・坂東・秩父などといったメジャーな札所巡りは、遠隔地でもあったり、行程、費用もかなりかかったので、裕福な町人や農民以外は、なかなか大変なことであったろう。
その点、比企西国三十三所のようにマイナーでローカルな札所巡りは、行程、費用面でも貧しい庶民にも手が届いたのではないだろうか。
明治維新後の神仏分離政策、仏像・仏具の破壊といった廃仏毀釈によって、比企西国のかつてのお寺やお堂の多くの札所は、廃寺になったり、本尊が他の寺院に移されるなどしたようだ。残念ながら、当時のままに残っているお寺やお堂は、少ない。
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