2013年9月7日(土)、山梨県の日向山(ひなたやま)に登る。
日向山は、南アルプス北端のある標高1,660mの山。名峰「甲斐駒ヶ岳」(標高2967m)の前衛の山と呼ばれる。
山頂の西に「雁ヶ原(がんがはら)」と呼ばれる花崗岩が露出した白い雪のようなザレ場のがあり、ここから甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳連峰の展望が楽しめる。山梨県北杜(ほくと)市に属するが、旧白州(はくしゅう)町である。
白州町は、山梨県北西部の北巨摩(きたこま)郡にあった。町は、花崗岩でできた山肌が削られて、河川で運ばれた白砂の土地に由来する。ウィスキーの「サントリー白州蒸留所」があるところで有名。平成の大合併で、北巨摩郡の8町村が、新市名の北杜市となった。
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朝の天気は、これから降り出しそうなくもり空。ちょうど昨年もこの時期に山行を計画したが、雨のため中止した経緯がある。雨を覚悟し、参加者6人はワゴン車に同乗して、6:30出発。中央道長坂ICを出て県道606号、国道20号(甲州街道)を経て、狭い尾白川林道の山道を走る。
9:22、矢立岩(1120m)駐車場に着く。拡幅された林道の狭い駐車スペースは、すでに満杯。何とか隙間を見つけ駐車。
登山コースは、ゆるやかな尾白川林道を2kmほど登り、尾白川渓谷の「錦滝」からの山頂へは、梯子やロープ・鎖場などもある急坂。しかし登山口には、2年前の台風災害で崩落個所などがあり足場が悪く、「通行注意、下山は禁止」と掲示されている。

冒険より安全を採って、北側のハイキングコース往復することにする。

9:40、登山口を出発。雑木林のゆるやかな勾配を登る。やがて炭焼釜の跡や三角形の巨大な「矢立石」がある。この辺りは広葉樹が多く、春は新緑、秋は紅葉が美しいという。

途中で、野生の猿の集団と出会う。我々と並行して登って来る。

ハイキングコースには、「10-5」というような標識がある。山頂が10合目とすると、5合目という意味のようだ。

クマザサが現われ樹木が少なくなると、登りもゆるやかになり、やがてなだらかな下りとなる。11:25、気象庁のアメダス「日向山雨量観測所」が設置されている鞍部に到着。ここから、山頂はすぐ。


アメダス(AMeDAS)は、「地域気象観測システム」の通称で、雨、風、雪などの気象状況を時間的、地域的に細かく、自動観測する。現在、降水量を観測する観測所は、全国に約1,300ヶ所もあるそうだ。データは電話回線を通じて、気象庁に送られる。
11:34、日向山の山頂1659.6mの三等三角点に到着する。しかし、樹林の中で展望もなく、山名標識もない。この辺りは、地面が灰色で砂っぽい。

さらに登山道を進み、「雁ヶ原」に向かう。

雨がパラパラ降り出すが、本降りにはならず。
さらに樹林帯の中を進むと、登山道は白い砂が目立ってくる。

11:39、急に開けた「雁ヶ原」に到着。
雪のような花崗岩の砂地、奇岩、そして濃霧。突然の不思議な別世界。思わず歓声が上がる。こんな奇怪な山は、見たことはない!!

消えかけた山名標識には、1660mと書いてある。

この方向に、名峰「甲斐駒ヶ岳」がそびえる立っているはずだが、霧と雲で視界はない。

谷をのぞき込むと、吸い込まれて滑り落ちそうでちょっと怖い。

谷の方には、奇岩がそそり立つ。

見たことがないが、砂地に咲くオオビランジ(大ビランジ、ナデシコ科)。名前の由来は不明。

ビーチのような白砂の上で昼食後、だいぶ霧が晴れてきて、奇岩が露わになる。この下は、神宮川の渓谷で、サントリーの工場の方に下っている。

花崗岩が風化してできた砂地は、こんな感じ。海の砂と違って、貝殻は混じっていない。

霧が晴れてきた。近くの山肌は、一部がはげて花崗岩が露出しているのが分かる。

八ヶ岳の山麓が見えてきた。小渕沢や富士見高原のあたりだろうか。その向うの八ヶ岳連峰は、雲に隠れている。

だいぶ霧が晴れてきたが、これ以上の展望は期待できず。
晴れた日の「雁ヶ原」は、もっと眩しいくらい輝いた白い砂地だという。
12:24下山開始、往路を戻る。

13:48、矢立岩駐車場着。くもり空だったが、たいして雨に降られず、無事下山。
帰り道、14:18~15:35、白州・尾白の森名水公園「尾白の湯」で汗を流す。 大人一人700円だが、往路の中央道双葉SAで休憩した時、割引券を入手しておいた。

白州・尾白の森名水公園「べるが」は、総面積約20haの広大な敷地の水や森とふれあう自然公園。森の散策路、森や水の展示館、森の研修館・宿泊館、レストラン、イベント広場、バーベキュー、ドッグラン、水遊び場の親水池などの施設が盛りだくさん。
そして天然温泉「尾白の湯」(写真中央の建物)が併設されている。広々とした開放的な露天風呂からは、晴れた日は金峰山、八ヶ岳連峰、甲斐駒、鋸山が見えるそうだが、残念。近くには尾白の森キャンプ場もある。
尾白の湯を出ると小雨が降っているが、やがていつの間にか止む。
須玉ICから中央道、19:15自宅着。
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日向山の山頂付近北側と急峻な斜面には樹木が生えず、花崗岩が風化して奇怪な風光が作られている。雪山のような白砂や奇岩の写真だけを見ると、すごく厳しい山に登ったように見える。
しかし、樹林の中を登るハイキングコースは、距離は片道約2km。休憩を入れて、往復で3時間ちょっと。標高差530mもあると思えない、楽なハイキングであった。カップルやファミリーのハイカーも多い。
もうその体力がないが、1987年7月北沢峠から甲斐駒ヶ岳(2967m)、その翌日に仙丈ケ岳(3033m)に登った。3000m級の仙丈ケ岳は女性的ななだらかなで、比較的登りやすい。それに比べ甲斐駒ヶ岳は、男性的な険しい山容をしている。この山が花崗岩でできていて、露わになった山頂付近の山肌は、ちょうど日向山のように、夏でも雪のように白かったことを記憶している。
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