秩父・大陽寺(つづき)
2013年5月19日(日)、「大陽寺」宿坊に一泊した翌朝、読経と座禅などの体験修行が続く。
5月18日(土)のブログ「秩父・大陽寺」記事のつづき。
5:30に起床。2~3日前の予報では雨だったが、持ち直して来て今日の天気は、曇り。
朝食前に、読経と座禅がある。
●6:45~、読経
昨日と違って、住職の声に合わせて、『般若心経』とそのほかを参加者全員で唱和する。
参加者用の経文には、ルビがふってあるが、ちょっと目を離すと、どこを読んでいるのかわからなくなってしまう。韻を踏んだようなリズムカルな節回しが、声に出して読んでいて楽しい。
●7:30~8:40、座禅
別棟の坐禅堂の「渓山閣」(写真下)に集まり、座禅を体験する。
「渓山閣」の入口には、「渓声即是廣長舌」、「山色豈非清浄身」の漢文が掲げられていた。大陽寺のホームぺージには、「渓声すなわちこれ広長舌」、「山色あに清浄身あらざらんや」と読み、700年前の創始者・仏国国師の言葉だと書いてあった。
良く調べると、これは「渓声山色」として、北宋の詩人・蘇東坡(1036-1101)の漢詩に出てくる。禅の悟りの境地を現す言葉で、「渓谷の水の音は仏の説法、山の景色は仏の清浄の姿である。山川草木も仏となり、絶えず説法しているのだ。」という意味。宋に留学した道元はこの詩を知り、帰国してから「正法眼蔵」で蘇東坡の詩を引用し、その解説を書いている。
建物の中に入ると、正面には「直心是道場」の書がある。
「直心(じきしん)」、すなわち素直な心をもって精進・修行すれば、どのようなところでも道場であり、修行の場所であるという意味で、禅の言葉だそうだ。
座禅には作法があり、教えがある。座禅は「修行の根本」と言われ、座ることで身体を安定させ、体と心の調和をはかるのだそうだ。「自然のままに、自然と一体となる境地をめざすこと」が大陽寺の方針で、あえてうるさいことは言わないようにしているそうだ。
足と手の組み方、姿勢、口の閉じ方、目の開け方、呼吸の仕方など最低限必要なことを教わる。普通、線香1本の燃え尽きる40分が基本だが、体験では10分×4回と休憩をはさみながら行った。
周りの木々と、遠くの奥深い山々の自然に囲まれて、聞こえてくるのは渓谷の清流の音と小鳥の鳴き声。清々しい朝の冷気の中で、日常から離れて平静な心に清められた気がする。
●巨大な天狗の面
坐禅堂「渓山閣」の手前に「開山堂」の建物がある。よく見るとこれは神社の拝殿だ。
中を覘くと右手のに壁に、この寺を開山した仏国国師をモデルにした巨大な天狗の面が掲げられていた。
かつて断崖絶壁の山奥で、黙々と座禅を組む仏国国師の姿が天狗にも見え、この地が「天狗の住む渓谷」と恐れられた。江戸時代になってから作られ、大陽寺の数々の宝物の中の一つ。
「開山堂」の屋根や祭壇(写真下)などに菊の御紋がある。これは、仏国国師が皇族出身であることに由来している。
●8:45~朝食(精進料理)
やっと食事にありつく。夕食もそうであったが、穀物、野菜中心の素朴な精進料理は、淡白でおいしい。美食に慣れた現代人にとっては特別の料理に思えるが、昔の庶民にとっては、日常食でもあったのだ。
これで、初心者の「大陽寺」宿泊修行体験を終わる。
大陽寺までの約7Kmの道のりを歩き、写経・精進料理・読経・法話・座禅の修行を体験し、新緑の大自然の中で2日間、世俗を離れてゆったりとした時間を満喫した。
10:20、チェックアウト。
1泊2食付の宿泊料金は、9,000円。写経・座禅などは、無料。
★ ★ ★
当初、2日目の計画に2つの登山案があった。
① バスで大輪まで行き、旧三峰山ロープウェイ(2007年12月廃止)と並行した登山道から三峰神社(1,100m)に登る。標高差約700m、歩程約1時間10分。
② 太陽寺(標高800m)から霧藻ヶ岳(1,523m)付近の地蔵峠、妙法ヶ岳分岐を経由し三峯神社(1,100m)までの登山。標高差約700m、歩程約3時間10分。こちらは、かなりハードな登山になりそう。
大陽寺の裏手には、三峯神社・雲取山、霧藻ヶ岳への登山口(計画案②)があった。これを登るのは、かなり厳しそうだった。
修行が終わった後で、参加者はちょっと体力・気力が失せていて、2案とも中止。運よく、住職に三峯神社まで直接、車で送ってもらうことになった。
途中、大陽寺をはるか下に見下ろすポイントで停車。大陽寺の赤い屋根が見える。
登山コースと並行して舗装された狭い林道の「林道大血川線」(県道)ができていた。駆ヶ越(かけごし)トンネル、三峰トンネルを抜けて三峯神社駐車場まで、車でおよそ30分だった。
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 寅さんの柴又を巡るウォーク(2025.01.16)
- 再び渋沢栄一ゆかりの地を巡る(2024.12.26)
- 再び新宿御苑と神宮外苑(2024.12.25)
- 再び紅葉の平林寺(2024.12.08)
- 秋の矢作川上流域(2024.12.07)
大陽寺さん宿坊体験について調べていたら偶然こちらのブログを見つけました。
来週末初めて宿坊体験に行くものです。興味深く読ませていただきました。
1つ教えていただきたいのですが、大陽寺入り口バス停から大陽寺に行くまでの参道は道に迷いそうになることはありますでしょうか。
地図上は道が一本で、あまり難しそうな道ではないようなのですが実際に歩いた方の感想をお聞きしたいです。
よろしくお願いします。
投稿: みすず | 2013年6月13日 (木) 11時47分
>>みすず様
大陽寺入口バス停から、大血川沿いの舗装した広い林道を歩きます。車がほとんど通らない車道で、一本道で迷いません。ここは昔は大陽寺の参道だったようですが、舗装されていてその雰囲気はありません。
1時間50分ほどで「大血川渓流観光釣場」があります。案内板が立っていて、目の前に大陽寺の参道入り口(写真に掲載)がありました。そのまま舗装した林道の方をそのまま辿れば、大陽寺の裏口側に着きますが、我々はここから舗装されない狭い急坂の参道(昔の参道の面影が残る道、というか登山道)を登りました。コースタイムは30分とありましたが、結構きつくて、我々は休憩しながら、45分ほどかかりました。これも1本道で迷うことなく大陽寺の山門側に着き、昔の参拝者が登った参道を辿り、これも良い修行体験でした。
投稿: ものみ・ゆさん | 2013年6月13日 (木) 13時04分
ものみ・ゆ様
ありがとうございました!観光HPだけでは分からないことを教えていただき感謝です。
パートナーとぜひ我々も ものみ・ゆ様たちが辿った道で大陽寺に行こうということになりました。
ちょっと天気が心配ですがそれも一つの修行ですね。ブログを見てますます宿坊が楽しみです。
投稿: みすず | 2013年6月14日 (金) 07時54分