映画「東京家族」
2013年2月8日(金)、映画「東京家族」を観る。
先月の1月19日(土)、江東区の文化施設「古石場文化センター」に行くと、深川で生まれた小津安二郎の生誕100周年を記念して、センター内に「小津安二郎紹介展示コーナー」が開設されていた。
映画界の巨匠・小津安二郎監督の代表作は「東京物語」である。映画全盛期の1953年に公開されたが、2012年に世界の映画監督が選ぶ優れた映画第1位に選ばれたそうだ。
映画「東京家族」は、山田洋次監督の監督50周年作品で、その「東京物語」をモチーフにして、60年後の現代にアレンジして製作、先月から公開されている。これは見逃せない作品だと、チェックを入れておいた。
古石場文化センターで、「東京物語」の映画ポスターを探したが、見当たらなかった。キャストの笠智衆、原節子、東山千栄子、山村聰、 杉村春子、香川京子、三宅邦子、大坂志郎の若い頃の顔が懐かしい。
写真は、ウィキペディア「東京物語」より引用(出典:ウィキメディア・コモンズ)。
★ ★ ★
瀬戸内海の小島で暮らす平山周吉(橋爪功)と妻・とみこ(吉行和子)は、3人の子供たちが住む東京へやって来る。迎えに行く次男の昌次(妻夫木聡)は、品川駅と東京駅を間違えてしまい、役に立たない弟に長女の滋子(中嶋朋子)は呆れる。
せっかちな周平は、タクシーで郊外で開業医を営む長男の幸一(西村雅彦)の家へ向かう。幸一の妻・文子(夏川結衣)は、かいがいしく義父母の到着の準備をする。
そして、久しぶりに家族全員が顔を合わせ、夕食の食卓を囲む。
周吉が一番心配しているのが、出来の悪い末っ子の昌次。フリーターからやっと舞台美術の仕事に就いてはいるが、開業医の兄や美容室経営の姉に比べれば、未婚で生活も安定してなさそうだ。
周吉夫妻は2、3泊するうちに、どこか都会には馴染めず、また忙しい生活の子供たちのリズムとズレが生じてくる。そんな中で、昌次の理解者で元気だったとみこが突然倒れ、意識が戻らぬまま家族に看取られ、翌朝帰らぬ人となる。
残念ながら、筆者は「東京物語」を観ていない。
しかし周吉役の橋爪功は、「東京物語」での笠智衆とどこか雰囲気が似た老け役を演じている。吉行和子のとみこ役が東山千栄子で、これもなんとなくのんびりした雰囲気がよく合っていそう。妻夫木は、ちょっといい加減だが、根は優しい今どきの若者をうまく演じていた。
この映画のキーパーソンとなるのが、昌次の婚約者の紀子(蒼井優)。「東京物語」では原節子が紀子役だが、設定が違っていて戦争で夫・昌次を亡くした未亡人だったそうだ。
とみこは、昌次から突然紀子を紹介されて「感じのいい子」と素直に喜び、家族の幸せを一人で感じていた直後に倒れたのだ。
頑固で昌次につらく当たってきた周吉は、一人ぼっちになり、気まずい関係だった紀子にラストシーンで、「昌次のことをよろしくお願いします。」と頭を下げる場面に感動する。
老夫婦の「子供は、なかなか親の思うようにはいかんもんじゃの。」、「うちなんかいい方よ。」という会話は、どんな親子にもどこかで通じるものがある。そして、映画のキャッチフレーズにある「おかしくて、かなしい、あなたの物語です。」は、どこにでもある家族の親子の関係、老い、淋しさ、そして死への共感を得る。
映画のエンディングロールでは、「この作品は、小津安二郎監督に捧げる。」で終わった。
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