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2012年4月24日 (火)

ペテルギウスの超新星爆発

 昨年末に知人のMさんが話題を提供、それを自分と一緒に聞いた聞いた知人のIさんが紹介してくれた書籍を、やっと今月になって買って読んだ。

  『ベテルギウスの超新星爆発 加速膨張する宇宙の発見』 幻冬舎新書 野本 陽代(著)  819円(税込)

 Amazonの内容紹介には、「2012年、人類史上最大の天体ショーが始まる!? 最新ノーベル物理学賞受賞にいたる発見のドラマ!」とある。  

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 Iさんは、「本書の内容もさることながら、慶応法科出身の彼女が超新星爆発に関する本を書くことに感心した。」と言う。
 宇宙のロマンより、浮世の義理人情にも関心がある私は、著者がどんな方なのか興味があって、本書を読む前に少し調べてみた。

★ ★ ★

 著者・野本陽代(はるよ)さんの略歴は、1948年東京都生まれで、慶応法学部卒。「宇宙の膨脹が加速している」ことを発見して、2011年ノーベル物理学賞を受賞した欧米の3人の新進気鋭の学者と昔から親交がある。文科省宇宙開発委員会委員(2004年~11年)の実績を持つサイエンスライターだ。特に宇宙・天文関係の本を多数出している。

 野本陽代さんの夫の野本憲一氏は、1946年生まれ、東京都出身。東大大学院天文学博士課程終了、理学博士。専門は恒星進化論で、現在東大教授(天文学専攻)。後妻は、サイエンスライターの野本陽代である。
 

 野本憲一教授のインタビュー記事が、「東大理学部・大学院理学系研究科」のホームページにあるのを見つけた。ちょっと長いが、読んでみると面白い。
 http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/labo/02.html

 野本教授は高校時代に、「好きだった物理と歴史が、『進化』という観点で結びつく」ということに気付き、東大の天文学教室に進むことにしたそうだ。言われてみれば、天文学とはそういうことかと、気が付く。

 奥さんの野本陽代さんについて野本教授が、「彼女は慶応大法学部出身だったので、NASAに来たときに最初はロースクールに入って国際弁護士になってみようかなどと言っていた・・・」と言っています。
 またインタビュアーが、「(奥様が、)サイエンス関係の本を書くようになったのは、野本先生の研究を宣伝するためだとおっしゃられていて、夫婦二人三脚で素敵だな・・・」とあります。
 

 結婚してNASA研究員になった夫とアメリカに渡り、夫の手伝いをするうちに天文関係の翻訳(彼女は英語が得意らしい)やライターを始められたようだ。結婚後天文学を勉強し、一般の人にも分かり易い本を書いたり、講演したりという、学者の夫をサポートする別の役割を担っておられるすごい才女だということがわかる。

★ ★ ★

 ベテルギウスの超新星爆発に関する話題は、一昨年の2010年1月10日付の朝日新聞に『ベテルギウスに爆発の兆候 大きさ急減、表面でこぼこ』とのタイトルで、「オリオン座の1等星ベテルギウスで、超新星爆発へ向かうと見られる兆候が観測されている。爆発は数万年後かもしれないが、明日でもおかしくない。」と、衝撃的な記事が掲載された。これが日本で、関心を呼ぶきっかけになったという。

本書19頁 オリオン座と冬の大三角形

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 オリオン座の中で明るく輝く赤い星「ベテルギウス」は、最近急激に大きさや質量が減っている。大量のガスを放出し、表面の盛り上がりとみられる二つの大きな白い模様(斑点)が観測され、晩年を迎えている。星の一生の最後には、自らを吹き飛ばす現象「超新星爆発」を起こし、ブラックホールになるとされる。

 「2012年に爆発か!」といった根拠のない情報も広がっているらしい。といっても、2012年には絶対ないとも言い切れない。明日かもしれなし、10万年後かもしれない。星の中をのぞいて確かめるわけにはいかないので、時期の予測は困難だ。
 朝日新聞のきっかけは、NASAのAPOD(今日の天体写真)の2010年1月6日版に、ベテルギウスの画像(パリ天文台提供、写真下)が載ったことらしい。

NASA天文写真 Astronomy Picture of the Day: 2010 January 6
The Spotty Surface of Betelgeuse  Credit: Xavier Haubois (Observatoire de Paris) et al.
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 ベテルギウスの質量は、太陽の20倍、直径は太陽の千倍ある。重いため一生は短く、まだ数百万歳(太陽は46億歳)だが、すでに寿命に近い。過去の超新星爆発は、数々の宇宙の解明に役立ってきた。地球から640光年という近くで起きる爆発は、史上初のことで、宇宙研究の膨大な情報をもたらすだろう。

 もしベテルギウスが超新星爆発したら、冬の大三角形の1つでインパクトがある赤い明るい星が無くなり、オリオン座付近の景色が一変する。超新星爆発の途中は、満月ほどの明るさになり、昼でも見える。我々は、明るさや色の変化など、いまだかつてな天体ショーを楽しむことができるという。

 爆発したら何らかの影響が地球に及ぶのではないか、大量のガンマ線を放出、地球を直撃して生命は絶滅の危機にさらされるのではないかいう心配がある。しかし、その可能性は、色々な理由で否定されており、心配ないそうだ。

★ ★ ★

 本書は6章まであるが、ペテルギウス爆発の話は、第1章のみだ。あとは、星の一生の話や宇宙論の話。

 そして最終章の第6章で、2011年ノーベル賞の「宇宙の加速膨張」の研究内容と、3人の受賞者たちの研究競争の実態が描かれている。

★ ★ ★

 宇宙のビッグバンは、「宇宙は大爆発によって誕生し、その勢いで膨張し続けて現在のようになった。膨張は現在も継続している。」というものだ。そこまでは、何となく自分自身もそう理解していた。

 しかし、膨張は加速しているのか、減速しているのか、それともどちらでもないのか。これまで研究者の間では、減速していると信じられていたそうだ。そうでなければ、宇宙に含まれる物質の量を考えた時、説明が付かないからだ。

 1998年に「宇宙の膨張は加速している!」という、とんでもない発表が飛び出した。遠方の超新星爆発を丹念に観測・解析していた成果だった。この功績で昨年2011年に、パールムッター、シュミット、リースの3氏に、ノーベル物理学賞が与えられた。

 膨張加速の説明は、以下のようだ。

 宇宙には、通常の物質とは違う性質を持つ「ダーク(暗黒)エネルギー」という、まだ誰も実証できてない、よくわからないエネルギーや、観測できない「ダークマター(暗黒物質)」と呼ばれる仮説上の物質が満ち満ちているという。
 このダークエネルギーは、物体に対して斥力の重力(反重力)を及ぼし、宇宙膨張を減速させる通常の物質による引力作用を打ち消してしまうエネルギーだ。
 こういう訳のまだ分からない宇宙のエネルギーのせいで、宇宙は加速膨張しているということらしい。

 このノーベル賞を受賞した発見は、地動説や相対性理論のように、今後の人類の宇宙観を変えるのではと、期待されているのだ。

★ ★ ★

 本書がやさしく解説されているというが、内容を理解できるか、読み切れるか、ちょっと自信はなかった。しかしやはり第1章と6章が面白くて、わくわくしながら宇宙の神秘に引き込まれ、ボンヤリ程度理解して読み終わった。
 宇宙科学が、観測技術や解析技術などの向上で、ここ半世紀で格段に進歩したのはわかる。しかし、「宇宙とは何か」は、ますます分からなくなっている。

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