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鴻巣の「びっくりひな祭り」

 2023年2月26日(日)と3月3日(金)、埼玉県鴻巣市のひな祭り会場をめぐる。

 

 埼玉県は、ひな人形の出荷額が日本一。岩槻、鴻巣、越谷、所沢が主な生産地。

 2月26日(日)、さいたま市岩槻区の「まちかど雛めぐり」 のあと鴻巣市に移動し、15:00~15:40「花久の里(かきゅうのさと)」を観覧。また、3月3日(金)10:50~12:00、再び、鴻巣市の「花久の里」を訪ねる。

●花久の里

 花と音楽の館かわさと「花久の里」、ここは、「鴻巣ビックリひな祭り」のサテライト会場。「花久の里」の長屋門をくぐる。

 「花久の里」は、旧家・青木家より寄贈された家屋を改装。約1,000本のバラを中心とする庭園のほか、コンサートやそば打ち体験などの催しが行われている。食事処では手打ちうどんや季節の天ぷら、コーヒーやケーキを味わうことができるという。

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 長屋門や母屋、離れなど地方の旧家の佇まいを残していて、母屋のサロンではグランドピアノ常設のコンサート、長屋門には2つの会議室を有し、 離れの和室の食事処「花音里」、茶室(和室)では色々な催しを行える。

 多目的広場には、ひな祭りをモチーフにした関東工業自動車大学校と鴻巣市のコラボレーション『ひなカー』。

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 長屋門を利用した会議室に飾られた吊るし雛。

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 母屋の天井から吊るし雛

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 かぐや雛

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 サロンの雛飾り

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 竹林のコンサート 花久の里交響楽団

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 ひな祭り花火大会

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 六角錐17段のひな壇

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 茶室の吊るし雛

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 2月26日(日)この後、出発地に戻る。また3月3日(金)には、「花久の里」から鴻巣駅前のショッピングモール「エルミこうのす」に移動。


●エルミこうのす

 3月3日(金)12:20~13:45、日本一高いピラミッドひな壇を見物。

 ここは、「鴻巣びっくりひな祭り」のメイン会場。1階、セントラルコートの吹抜けにある、31段、高さ約7mのピラミッドひな壇。「花久の里」のピラミッドひな壇よりはるかに高い。「鴻巣びっくりひな祭り」は、鴻巣市が約380年の伝統を持つひな人形の生産地であることをPRするために2005年から始まり、今年で19回目だという。

 1階から見上げるピラミッドひな壇。

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 1回から19回の「鴻巣びっくりひな祭り」のポスターとピラミッドひな壇に飾りきれないひな人形が並ぶ。

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 2階から眺めるピラミッドひな壇。

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 3階から見下ろす。

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 こんな大きなひな壇をどうやって組み立てて人形を並べるのかと思っていたら、テレビでその作業映像を流していた。跳び箱を積み重ねるようにしてピラミッド形の丈夫なひな壇を組み立てて、大勢の人が登って上から下へと人形を並べていた。もちろん上部の高いところで作業する人は、ヘルメットを被って命綱をつけている。

 「花久の里」にもあったが、鴻巣市内の何ヶ所かのサテライト会場に、こういうピラミッド型のひな壇がいくつかあるようだ。

 「エルミこうのす」は、鴻巣駅東口周辺の再開発における中核ビル。A1街区のビル(商業棟・マンション棟)は、2007年(平成19)10月にに開業、2階で鴻巣駅に直結している。A2街区のビルは2009年(平成21)7月 シネマックス鴻巣」が開業したが、2011年(平成23)12月閉館。その後鴻巣市が映画館を取得、2013年(平成25)7月に日本初の市民ホールと融合した「こうのすシネマ」として再開した。

 モール1階のレストランで昼食後、産業観光館「ひなの里」へ移動する。
 

●ひなの里

 産業観光館「ひなの里」は、「鴻巣びっくりひな祭り」のサテライト会場。3月3日、14:10~15:20まで観覧。

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 「ひなの里」は、ひな人形や「赤物」など鴻巣の歴史を今に伝える展示や、中庭には季節の花などが咲き、市内の観光案内や特産品の販売も行っている。「ひなの里」の蔵は、明治後期に段階的に増築された人形店の蔵を鴻巣市が改装したもの。2013年(平成25)10月に埼玉県の「景観重要建造物」に指定された。

 一般的なひな人形の七段飾り 

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 昭和20年頃

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 御殿飾り 昭和30年代

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 御殿飾り 昭和30年代

 古今雛 九番親王 九番は人形のサイズを表す。

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 享保雛

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 三五芥子15人飾り 三五(さんご)や芥子(けし)は、人形のサイズ

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  (おきな)と媼(おうな)、鶴亀は長寿の縁起物。

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 頭が出来るまでの工程

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 「赤物」(だるま)が出来るまでの工程

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 干支人形、獅子頭、だるま、招き猫などの縁起物、魔除けのお守りを「赤物」と呼んでいる。鴻巣の人形職人が昔ながらの手法で一点一点手作りしている伝統工芸。原材料が紙ではなく、桐の木粉を糊で固めた練り物なのは、鴻巣の赤物ならではの特徴だそうだ。

 格子と五人囃子

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 平安御所庭 武政作

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 等身大の享保雛(復刻)

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 日本一大きい御殿飾り。

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 傘福(かさふく)?。山形県酒田市周辺で飾られるつるし飾り。笠福ともいう。

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 福岡柳川のさげもん、伊豆稲取雛のつるし飾りと、傘福は「三大つるし飾り」と呼ばれるそうだ。

2023年3月20日 (月)

岩槻の「まちかど雛めぐり」

 2023年2月26日(日)、埼玉県さいたま市岩槻区のひな祭り会場をめぐる。

 

 埼玉県は、ひな人形の出荷額が日本一。岩槻、鴻巣、越谷、所沢が主な生産地。3年前にコロナで中止した「岩槻&鴻巣ひな祭りめぐり」の企画を実現。良い天気だったが、風が強くて寒かった。参加者は14名。最寄りの駅前をマイクロバスで出発。

 9:45、「岩槻城趾公園」に到着。

 
●流しびな

 例年、3月3日直前の日曜日に「岩槻城址公園」内の菖蒲池周辺で「流しびな」のイベントが開催。「流しびな」は、子どもたちの無病息災をひな人形の原型とも伝わる「さん俵」(桟俵、米俵の丸い蓋を模したもの)に託して池に流す春の行事で、ひな祭りのルーツともされている。新型コロナウイルス感染防止のため、例年のイベント内容を変更して開催。 

 主催者の挨拶や宮司のお祓いの後、さいたま市の観光大使「さいたま小町」の流し初め。

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 来場者が並んでいて、順に「流しび」なを菖蒲池に流していく。

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 流しびなの「さん俵」は、1個600円で会場で販売されていた。

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 コロナ前は、十二単衣着付実演、琴&鼓笛隊演奏、甘酒&飲み物サービス、模擬店、人形相談、流しびなの無料進呈(先着順)、岩槻特産品の販売もあったそうだが、会場もこじんまりして、やや寂しい。

 1時間ほど見学。岩槻駅前までマイクロバスで移動して、11:00~市街地のひな祭りの見学。
 

●東玉・人形博物館

 駅前にある「東玉(とうぎょく)」岩槻総本店の店内を覗く。「東玉」は人形の町・岩槻で170年続くという人形専門店。多彩な収蔵品は、ひな人形、御所人形、羽子板、五月人形、さらに現代作家名匠の逸品にまで及ぶという。

 「東玉」の店の向かい、東玉総本店ビル4階にある「東玉・人形の博物館」に入館。入館料100円。

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 巻藁(まきわら)に挿した人形の顔。

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●愛宕神社

 東武野田線の岩槻駅東口から徒歩5分の場所にある「愛宕神社」に「大ひな壇飾り」。27段の石段に、約300体の雛人形が展示されている。

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 愛宕神社は、北条氏が豊臣秀吉の小田原攻めに備えて築いた周囲8Kmにわたる土塁と堀に囲まれた大構(おおがまえ)の遺構が唯一残っている場所。愛宕神社は、その土塁の上に建っているという。

●料亭「ほてい家」

 12:00~12:40、老舗料亭「ほてい家」に入店。2階にある御殿飾りと「裃(かみしも)びな」が勢揃い。和菓子店の菓子も供えられている。

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 「裃びな」は、裃を着て童顔で両手を袴のところに行儀良く組んでいる。岩槻でつくられ、明治から大正にかけて関東で流行した。通常のひな人形に比べ作りが簡素で衣装は綿繻珍(めんしゅちん)でつくられているため安価で求めやすいそうだ。 

 予約していた「ほてい家」で、豪華な「ひなまつり膳」をいただく。これに天ぷらと赤だしがプラス。税込み1,870円、全国旅行割りの対象。

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 午後からは、再び市街地のひな祭りをめぐる。

●東玉大正館

 中井銀行岩槻支店として大正後期に建築された、煉瓦造2階建ての洋館建築。2007年、国登録有形文化財(建造物)。

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 ひな祭りの期間、江戸から昭和の人形展が開催されている。

 写真は、江戸時代後期に町人文化が反映したという豪華な「古今びな」。

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 「古今びな」は、女びなは五衣(いつつぎ)・唐衣(からぎ)・裳(も)、いわゆる十二単(じゅうにひとえ)。男びなは束帯と上級公家の正装を模すが、必ずしも古来の礼式に則さず華麗に仕立てている。女びなが単の袖を長く出し、垂髪に宝冠を被るのが特徴。目には水晶やガラスを入れ、人間的な面相でリアルになり豪華な衣裳で人気になった。現代のひな人形の素になったという。

●藩校「遷喬館」(せんきょうかん)

 「岩槻藩遷喬館」は、1799年(寛政11)に、岩槻藩に仕えていた儒者・児玉南柯(こだま・なんか)が開いた私塾。後に藩校となり、岩槻藩の武士の子弟が勉学や武芸の稽古に励んだという。

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 1871年(明治4)に藩校が廃止になった後は、民家として使用されていたが、1939年(昭和14)に埼玉県の史跡に指定。2003年(平成15)から2006年にかけて解体修理・復原工事を行い、公開。埼玉県内では唯一現存する藩校の建物。

 昭和20年代の壇飾り。

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●時の鐘 

 藩校「遷喬館」から「岩槻人形博物館」に行く途中、行き過ぎて岩槻区本町、渋江交差点近くの住宅地にあった「時の鐘」。

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 岩槻城の鐘楼で、1671年(寛文11)当時の岩槻城主阿部正春が領内の人々に時刻を知らせるため渋江口に設置した。以来、1720年(享保5年)の改鋳を経て、現在に至るまで、毎日、朝夕の6時と正午の3回、時を告げる。さいたま市指定の有形文化財。

 10カ所以上あったと言われる幕府公認の江戸の鐘を含め、現在も一日に複数回の時を知らせ続けているのは、上野の「寛永寺の時の鐘」、「川越の時の鐘」、「岩槻の時の鐘」の3カ所だけだそうだ。この中で現存する鐘としては岩槻の鐘が一番古いという。
 

●岩槻人形博物館

 13:30~14:10「岩槻人形博物館」を観覧。

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 「御所人形」 立子(たちご)男子 江戸時代

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 「御所人形」は、観賞用の人形として江戸時代中期に大成され、宮中の慶事や出産、あるいは結婚など、様々な祝事の際に飾られてきた人形。

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 「古今びな」、十七人揃え。

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 「享保びな」は、将軍徳川吉宗の時代(江戸時代中期頃)に京都で生まれた。各地で作られるようになり、明治時代まで広く作り続けられていた。

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 面長の顔に、女びなは唐衣、五衣に似せた意匠で袴は、綿で膨らませてある。男びなは束帯に似た衣装で、袖が横に張っているのが特徴。

 「次郎左衛門びな」。江戸時代。「第20回人形のまち岩槻 まちかど雛めぐり」パンフから転載。

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 「次郎左衛門びな」は、江戸時代中期に雛屋次郎左衛門という人形師が創始したことからこの名があり、団子のような丸顔に引目鉤鼻という、源氏物語絵巻に描かれるような面貌が特徴的。本流として流行に左右されず、公家や大名家に好まれたという。

 「次郎左衛門頭(じろうえもんがしら)」が付けられた「立雛(たちびな)」。

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 「立雛」は、最も古い形式のひな人形とされ、紙で作られた「ひとがた」や形代が変化したものといわれている。江戸時代に描かれたものをみると、屏風などに立て掛けて飾っていたようだ。

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 企画展「描かれた雛祭り」のパンフ。

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 当館が所蔵する人形が描かれた絵画(浮世絵)コレクションの中から特に、ひな祭り、ひな人形が描かれたものを「企画展」として展示されていた。

 

 14:10、「岩槻人形博物館」を出発。このあと鴻巣市に移動して、15:00~15:40「花久の里」の吊しびなを見学。この記事は、本ブログの「鴻巣にひな祭り」に続く。

 当初の交通手段は自家用車の予定だったが、参加者多数によりマイクロバスにして参加費を変更した。今回の旅行費は、3月末迄の「全国旅行割り」が適用できて、マイクロバス代、食事代、入館料が2割引となり、1000円の電子クーポンが付いた。

2023年3月 6日 (月)

新型コロナ2023.02 XBB.1.5株

 政府は1月27日、新型コロナの感染症法上の分類を5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げることを決めた。または2月10日、マスクの着用について3月13日から屋内・屋外を問わず個人の判断に委ねるとした。国内の新規感染者数は、1月前半をピークに減少傾向にある。

 去年12月以降、 米国で感染が広がるオミクロン株「XBB.1.5」について、CDC(米国疾病対策センター)は25日までの1週間に新たに感染した人の推計で、85%がこのウイルスに感染していると発表。一方で「XBB.1.5」による重症度は、直前で主流だった「BQ.1」系統と変わらないとする分析を公表した。米国内で新たに報告される感染者は、減少傾向が続いている。

 2023年2月16日から28日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.02 マスク緩和へ」の続き。なお、感染者数・重症者数・死者数のデータは、厚労省の発表と都道府県などの発表とで異なる場合があり、特に死者数は厚労省のデータを採用しています。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】


【2月16日】

●全国で2万1347人の感染確認 前週比で1万1618人減

 厚労省によると、新型コロナの国内感染者は16日、新たに2万1347人が確認された。前週の木曜日(9日)より1万1618人減った。都道府県別の最多は東京都は1454人、前の週の同じ曜日を下回るのは30日連続。次いで大阪府1354人、愛知県1204人だった。

【2月17日】

●接触確認アプリ「COCOA」、「課題あった」 デジタル庁など報告書

 接触確認アプリ「COCOA」は、感染した人と濃厚接触をした可能性がある場合に通知されるアプリで、不具合が相次いだ。去年11月に停止され、デジタル庁と厚労省は17日、アプリの課題などを報告書にまとめて公表。不具合が起きた一因として、アプリ開発や運用などで体制整備が不十分、感染者と接触した場所や時間が分からない、接触通知の履歴を収集する機能がないためアプリの効果を検証できないなどの課題があったとしている。

 新型コロナ接触確認アプリCOCOAのビラ 出典:厚労省ホームページ

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 そのうえで、アプリを検討する初期段階からデジタル技術の専門家と感染症対策の専門家などが密にコミュニケーションをとり、速やかに対応する必要があったと指摘している。一方、通知を受けた人が他人との接触を避けるなどの行動を取ったとして、一定の効果があったとしている。デジタル庁は、将来のパンデミックに備えて、この報告書を今後のアプリ開発などに活用していく方針。ココアの開発・運用に要した費用は契約額で約13億円。

●5類移行 法令上の名称変更へ 「コロナウイルス感染症2019」案も

 新型コロナは現在、感染症法で1類から5類とは別の「新型インフルエンザ等感染症」に含まれる「新型コロナ感染症」として規定され、入院勧告や就業制限などの厳しい措置がとられてきた。この位置づけが5月8日に「5類」移行にあわせ、厚労省は感染症法上の名称を変更する方針で、「コロナウイルス感染症2019」とする案も含め検討を進めることにしている。

 厚労省は来月以降、専門家による部会で、新型コロナの名称のほか、病原体名の変更について本格的に議論することにしている。また、厚労省は5類に移行したあとの医療提供体制や、患者が支払う医療費の公費負担について段階的に見直す方針で、来月上旬にも具体的な方針を示す。

●アビガン429人に不適切投与 外来のコロナ患者にも処方

 新型コロナ感染症の治療薬として開発が進んだが、後に中止された抗インフルエンザ薬「アビガン」について、厚労省は17日、2021年末までに429人に不適切な投与があったと発表した。大半が認められていない、外来での処方をしていたケースだった。健康被害は確認されていないという。

 アビガンは富士フイルム富山化学が開発していた薬。未承認だが、2020年にコロナ患者に対して同意があれば「観察研究」という枠組みで使えることになった。ただし、動物実験で胎児に奇形が生じる懸念が確認されていたため、妊婦や妊娠可能性のある女性らに使わないよう、管理しやすい入院患者にしか認めていなかった。

【2月18日】

●米CDC 新型コロナ「XBB.1.5」が新規感染者の約8割と推計

 米国CDCは今月18日までの1週間に、国内で新型コロナに新たに感染した人のうち80.2%がオミクロン株の「XBB.1.5」に感染しているとする推計を発表した。前の週の73%と比べるとおよそ7ポイントの増加となり、去年12月以降、米国での感染拡大が続いている。一方、米国で新たに報告された感染者の数は今月15日の時点で1日平均およそ3万7000人と、先月中旬以降、減少傾向を示している。

 また新たに入院する患者の数は今月14日の時点で1日平均3600人、死者の数は今月15日の時点で1日平均およそ400人で、いずれも先月中旬以降、おおむね減少する傾向が続いている。バイデン政権は先月「感染状況が落ち着いてきた」として、2020年以降続けてきた新型コロナをめぐる「国家非常事態宣言」をことし5月11日に解除する方針を明らかにしている。

【2月19日】

●東京都、8人死亡 992人感染確認 33日ぶり前週上回る

 厚労省は19日、都内で新たに992人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の日曜日より193人増えた。前の週の同じ曜日を上回るのは33日ぶり。また、人工呼吸器かECMO(人工心肺装置)を使っている重症の患者は18日より3人減って13人。感染が確認された8人が死亡した。

 2月19日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【2月21日】

●オフィスのコロナ対策、緩和の企業も 政府のマスク着用方針受け

 政府は、3月13日からマスクの着用を個人の判断に委ねる方針。企業ではこうした政府の方針を見ながら、オフィス内感染対策を緩和する動きが出始めている。IT企業のGMOインターネットグループは、今月6日から社内の感染対策を一部、撤廃した。オフィスの中では、マスクの着用を社員の判断に委ね、席と席の間などに置いていた仕切りもすべて撤去。また、社外の人との会食を解禁。一方で、オフィスに入る際の消毒や検温などは続けている。

 またNTTグループは、会話のない状態で2m以上離れるという条件付きで、去年11月からオフィス内でのマスクの着用を不要とするなど、段階的な緩和を進めている。一方、損害保険大手の損保ジャパンは、取り引き先と対面で対応することが多いことなどからオフィス内でのマスク着用の推奨や、会議や研修を原則、オンライン開催にするといった感染対策を当面、継続する。企業の間では、アフターコロナを見据えて模索が続く。

●厚労相、マスク着用以外の対策見直しも検討 アクリル板設置など

 加藤厚労相は、記者団に「マスク着用を見直したあとも感染対策は重要で、3密の回避、人と人との距離確保、手洗い、換気などをお願いする」と述べた。「厚労省の感染症部会から『過剰とも言える感染対策はできるかぎり早期に見直しを行い、有効な方法について情報発信すべき』という意見をもらっている。今後、マスク以外の基本的な対策も専門家から意見を聞いて検討を進めたい」とし、アクリル板の設置など対策の見直し検討の考えを示した。

●訓告の元校長、救済申し立て 松井・大阪市長に「提言書」

 コロナ禍の教育施策をめぐり、批判的な提言書を松井大阪市長らに送って文書訓告を受けた元市立小学校長が21日、訓告は不当だとして大阪弁護士会に人権侵害救済を申し立てた。申立書では「独自の意見を述べたという理由で処分を受けるのであれば、私個人の問題ではなく、すべての人に関わる人権侵害」だと主張。教育専門家は「今回の訓告は、聞いたことがない対応だ。『もの言えば唇寒し』となれば、教員からの声が上がりにくくなる」と言う。

 元校長は2021年5月、「緊急事態宣言」中の小中学校についてオンライン学習を基本とした市の判断を批判する提言を、松井市長と山本教育長(当時)に郵送。通信環境の整備が不十分で現場は混乱を極めたと指摘、改善を求めた。市教委はこれに対して同年8月、「他校の状況等をしん酌することなく、独自の意見に基づき(混乱を極めたと)断じた」などとして地方公務員法上の信用失墜行為にあたると判断。元校長を文書訓告にした。

【2月22日】

●ワクチン無料接種継続 高齢者ら年2回の方針了承 厚労省分科会

 新型コロナのワクチン接種は、蔓延を予防するために緊急の必要があるとして、無料の「特例臨時接種」が今年3月末までを期限に行われている。4月以降の接種について検討する厚労省の専門家による分科会が22日開かれ、今の「特例臨時接種」を来年3月まで継続する方針が了承された。また、接種の時期や回数については、重症化リスクの高い人、医療や介護従事者などに対して、希望する場合は5月~8月にかけてオミクロン株対応の2価ワクチンの接種を行う。

 そして、高齢者なども含めた接種可能なすべての人に対して希望する場合は9月~12月にかけて接種を行う。対象は5歳以上。このほか、予防接種法に基づいた接種の呼びかけについては、重症化リスクが高くない人には自治体を通じて「接種勧奨」や「努力義務」を適用しないとする案が示され、了承された。厚労省は、来月上旬にも正式に決定したうえで必要な法令改正をするほか、秋以降に使用するワクチンについて4月以降の早い時期に決定する。

●5類後の医療体制、インフルエンザと同規模目指す

 厚労省は新型コロナの感染症法上の位置づけが5月8日に「5類」に移行したあとの医療提供体制について、幅広い医療機関で受診できる体制を目指し、必要な感染対策をとりながら段階的な移行を目指すとしている。このうち、外来診療は現在はおよそ4万2千の医療機関で行っているが、移行後は一定の期間の間に感染対策のガイドラインの周知や、パーテーションの設置など院内の感染対策への支援を行い対応できる医療機関を順次拡大する方向。

 季節性インフルの検査をシーズン中に1人でも行った全国のおよそ6万4千の医療機関を念頭に、幅広い医療機関で診療する体制を目指す方向で検討している。また入院については、およそ2千の重点医療機関を中心に受け入れを行っているが段階的に拡大し、現在病床のあるおよそ8千200の医療機関で受け入れる体制を目指す。厚労省は5類移行後の医療提供体制や医療費負担の見直しについて、3月上旬をめどに具体的な方針を示すことにしている。

●「ゾコーバ」服用で半年後の後遺症、リスク半減

 ゾコーバは発熱などの症状が改善するまでの期間が1日早まるとされ、重症化リスクが低い人も使える、新型コロナの初めての飲み薬として、去年11月12歳以上への投与が緊急承認された。塩野義製薬は日本時間の22日、米国で開かれた感染症の学会で発表した最終段階の治験の結果を発表した。

 それによると、治験に参加した1800人余りのうち、新型コロナに感染したあと一定程度の症状があり、ゾコーバを服用した患者で半年後にせきやのどの痛み、けん怠感、味覚障害など、14の症状のうちのいずれかを訴えたのは14.5%。一方、偽の薬を服用した人で症状を訴えたのは26.3%で、後遺症とみられる症状が出るリスクが45%下がった。また、集中力や思考力の低下、物忘れや不眠などの神経症状が出るリスクも33%下がったとしている。

●選抜高校野球、声出し応援OK マスク着用条件 4年ぶり歓声

 3月18日に阪神甲子園球場で開幕する第95回記念選抜高校野球大会の臨時運営委員会が22日、オンラインであり、マスクを着用しての声だし応援を認めることなどを決めた。新型コロナ感染拡大予防ガイドラインをまとめ、「大声を出す場合はマスクを着用する」などと明記した。大会の決勝は31日の予定。組み合わせ抽選会は3月10日にある。

 選抜大会、夏の全国選手権大会ともに2021、22年は大声を出しての応援や合唱を控えるよう求めていた(2020年は両大会とも中止)。また、PCR検査は行わない。体調不良者などが出た時には、必要に応じて実施する。感染者が出た場合は、可能な限り出場校が試合を行えるように、選手の入れ替えや同一回戦の中での試合日程の変更を検討する。

【2月23日】

●「マスク着用」めぐり業界団体の判断は? 対応決めかねる業界も

 政府は3月13日から屋内・屋外問わず、マスク着用を個人の判断に委ねることを決め、各業界団体にガイドラインの見直しを促している。これを受け、業界ごとの計195のガイドラインのうち、オフィス、製造事業場、民間検定試験、ゲームセンターの4つの業界は23日までに見直したガイドラインを公表した。4つの業界では、換気などの感染対策は残し「マスク着用の徹底」という記述を削除、「必ずしも着用を呼びかける必要はない」などを新たに加えたりしている。

 「マスク着用は個人の判断が基本」ポスター(2月10日作成) 出典:厚労省ホームページ

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 飲食業やオフィス、カラオケ、映画館など各業界団体が、ガイドラインの見直しについて検討を進めている。感染への不安の声が残る中で、どのようなルールにしていくか、対応に悩むところも出ている。政府は、おおむね全員の着席が可能な航空機や新幹線、高速バスなどではマスクを外すことを容認するとの考え方を示していて、業界団体の「定期航空協会」は「乗客や従業員、個人の判断に委ねる」としている。

【2月24日】

●小売業界 マスク着用ガイドライン見直し 個人や事業者の判断に

 新型コロナ対策としてのマスクの着用を個人の判断に委ねるとした政府の方針を受けて、デパートやスーパーなど12の小売業界の団体は3月13日以降、統一的なマスクの着用の推奨をやめ、個人や事業者の判断に委ねることを決め、24日連名で公表した。ガイドラインを見直したのは、全国のデパートで作る「日本百貨店協会」や、主なスーパーが加盟する「日本チェーンストア協会」、それにコンビニなどが加盟する「日本フランチャイズチェーン協会」など12の業界団体。

 12団体では共同でガイドラインを定め、店内で来店客と従業員のマスクの常時着用を徹底するとしている。3月13日以降は統一的にマスク着用を推奨することはやめ、個人の判断に委ねる。ただ事業者の判断として、利用者や従業員にマスクの着用を求めることは許容される。そのうえで、「5類」移行の5月8日をもってガイドライン自体を廃止するとし、今後は各社の対応が焦点となる。

【2月25日】

●米「XBB.1.5」、新規感染者の85%に CDC推計  重症度「変化なし」か

 米国で感染が広がるオミクロン株「XBB.1.5」について、CDCは今月25日までの1週間に国内で新たに感染した人の85%がこのウイルスに感染しているとする最新の推計を発表した。前の週の79.2%(18日発表では80.2%)と比べるとおよそ6ポイントの増加となり、去年12月以降、感染者に占める割合が上昇し続けている。

 中でもニューヨーク州を含む地域では、新規感染者のおよそ98%を占め、以前、主流だった「BQ.1」系統からほぼ置きかわった形。一方で、CDCは「XBB.1.5」に感染した場合の重症度は「BQ.1」系統と「変わらないとみられる」とする初期の分析を公表した。また、米国内で新たに報告される感染者や入院患者、それに死者の数は、先月以降、おおむね減少する傾向が続いている。

【2月26日】

●東京都、12人死亡 810人感染確認 前週比183人減

 厚労省は26日、都内で新たに810人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の日曜日より183人減った。また人工呼吸器かECMOを使っている重症の患者は、25日と同じ11人。感染が確認された12人が死亡した。

 2月26日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【2月27日】

●中国対象のコロナ水際措置、3月1日から緩和 入国時検査を限定へ

 政府は、中国での新型コロナ感染が拡大した去年12月以降、臨時の水際措置を続けていて、すべての入国者に対し入国時にPCR検査を実施するとともに、陰性証明の提出を求めるなどしている。松野官房長官は27日午後の記者会見で、この水際措置を3月1日から緩和し、入国時に実施する検査をサンプル調査に切り替えることを明らかにした。

 また、中国からの直行便が到着できる空港を羽田など4つの空港に限定し、増便を行わないよう航空会社に要請した措置はとりやめる。一方、緩和は段階的に進める必要があるとして、入国者に陰性証明を求める措置は継続する。松野氏は、緩和の理由について、中国からの入国者の陽性率が低下傾向にあることを挙げた上で「当面、今回の措置を行いながら、中国の感染状況や各国の水際措置の状況などを見つつ、柔軟に対応していく」と述べた。

●オミクロン株対応ワクチン 国内接種率43.7%

 オミクロン株に対応したワクチンの接種は、従来のワクチンで2回目までを終えた12歳以上の人を対象に去年9月から始まった。政府が27日に公表した最新の状況によると、これまでに国内で新型コロナのオミクロン株に対応したワクチンの接種を受けた人は5506万人で、全人口に対する接種率は43.7%となった。このうち、65歳以上の高齢者は2677万1千人で接種率は74.5%。

 また、5歳から11歳の子どもを対象にした従来ワクチンの接種のうち、去年9月から始まった3回目の接種を受けた人は65万2千人で全体の8.9%。1回目を受けた人は175万7千人で全体の24%、2回目の接種を受けた人は169万5千人で全体の23.2%。このほか、去年10月から始まった生後6か月から4歳の乳幼児を対象にした従来のワクチンの接種で1回目の接種を受けた人は15万9千人で全体の3.6%、2回目の接種を受けた人は13万6千人で全体の3%。

● オミクロン株対応、5〜11歳も接種へ 厚労省部会が了承

 オミクロン株の「BA.5」に対応するファイザーのワクチンは12歳以上を対象に3回目以降の追加接種に使用されているが、去年10月、5歳から11歳も対象に加えるようファイザーが厚労省に申請を出していた。27日、開かれた厚労省の専門家による部会では、12歳以上への接種で発症予防効果が確認されていて有効性が期待できるほか、安全性についても影響を及ぼす可能性は低いとして、5歳から11歳についても対象に加えることが了承された。

 国内で5歳~11歳が、オミクロン株対応ワクチンの対象となるのは初めて。ワクチンに含まれる有効成分の量は12歳以上向けのワクチンの3分の1となる予定。厚労省は今後、無料で受けられる公的接種に位置づけた上で、3月上旬から、接種が始まる見通し。また27日の部会では米国の製薬会社、ノババックスのワクチンの3回目以降の接種について、18歳以上となっていた対象年齢を12歳以上に引き下げることも了承された。

●雇用調整助成金 新型コロナ特例措置が終了 4月から通常運用へ

 厚労省は27日、労使などで作る審議会を開き、コロナ禍で設けられた雇用調整助成金の特例措置の扱いについて議論した。雇用調整助成金は通常、直近3か月間売り上げが前年同期比で10%以上減った企業が対象となるが、特例措置ではコロナの影響でその月の売り上げが感染拡大前の令和元年から去年までのいずれかの年の同じ月と比べて10%減少しているか、過去1年のいずれかの月と比べて10%減少していれば助成を受けられる。

 厚労省は感染拡大後の支払い決定額が6兆3千億円を超え財源不足の深刻化や最近の経済・雇用情勢を踏まえ、特例措置を今年度で終了、新年度から通常運用に戻す方針を説明。審議会委員からは、いまだに厳しい業界はあるもの、財源不足の状況などを考えると移行は妥当といった意見が出され、この方針が正式決定。去年9月には、当面の生活費を無利子で借りられる制度の特例が終了するなど徐々に通常に戻す動きが進んでいる。

【2月28日】

●新型コロナ発生源「中国の研究所から流出の可能性高い」 米報道

 米国のメディアは新型コロナの発生源について、米国・エネルギー省が中国・武漢のウイルス研究所から流出した可能性が高いと結論づけたと伝えた。バイデン政権は最終的な結論は出ていないとしているが、今後、議会を中心に中国に対し、この問題で強い姿勢で臨むべきだとする声が高まることも予想されます。

 これについて、中国外務省の毛報道官は27日の記者会見で「研究所からのウイルス流出の可能性は極めて低いというのが、中国とWHOの専門家が出した権威ある科学的な結論だ」と強調。そのうえで「関係する当事者は、この議論を蒸し返すことや、中国を中傷すること、発生源の問題を政治化することをやめるべきだ」と述べ、米国をけん制した。

●出生数80万人割れ、コロナで減速加速 2022年統計

 2022年に国内で生まれた子どもの数は、統計のある1899年以降、初めて80万人を割り込むことが確実になった。厚労省が28日に公表した昨年の人口動態統計(速報)で、外国人と海外で生まれた日本人の子どもを含む出生数は79万9728人。国内生まれの日本人に絞り込んだ出生数(概数)は6月に公表される。国の推計方法で計算すると77万人台と見込まれる。40年前の1982年の出生数(国内で生まれた日本人の子ども)は151.5万人で、40年間でほぼ半減した。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計(2017年)では、外国人を含む出生数が79万人台になるのは、2033年とされていた。国内の日本人に限った出生数が77万人台になるのも、同じ2033年と見込んでいた。いずれも想定より11年早く少子化が進んだことになる。

●去年1年間 ホテルなどの宿泊者数、コロナ感染拡大前の7割に回復

 観光庁によると、去年1年間に国内のホテルや旅館などを利用した宿泊者は、速報値で延べ4億5千万人となった。前の年と比べて42%増加し、感染拡大前の2019年と比べても、76%の水準まで回復した。このうち、日本人の宿泊者は、旅行代金の割り引きが受けられる「全国旅行支援」が始まった去年10月以降に大幅に増加し、前の年よりも39%多い、延べ4億4千万人となっている。

 また、外国人の宿泊者は、前の年と比べて3.8倍多い、延べ1680万人。コロナ禍前の同じ月よりも90%以上落ち込んでいた9月までから一転し、10月以降は、水際対策の緩和によって大幅に回復した。ことしに入ってからも外国人の宿泊者の増加は続いているが、その一方で、日本人の宿泊者については、全国旅行支援が順次終了する4月以降の動きがどうなるかが焦点となる。

●国内、67人死亡 1万4524人感染

 厚労省によると、28日発表した国内の新たな感染者は空港の検疫などを含め1万4524人。前週の同じ曜日(21日)より4683人減った。累計で3320万5088人。国内で亡くなった人は67人、累計で7万2387人。都道府県別で新規感染者の最多は東京都の1181人、1週間前の火曜日より270人減った。次に大阪府1003人、愛知県991人と続く。また国内の重症者は、28日時点で166人。前日と比べて4人減った。

 以下の図は2月28日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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2023年3月 4日 (土)

比企氏ゆかりの地-岩殿観音

 2023年2月19日(日)午前中、埼玉県東松山市大岡地区の「比企氏ゆかりの地」をめぐった後、午後から高坂地区へ車で移動し「岩殿観音」を拝観。比企氏は、2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に登場した。

 なお写真で「2019年撮影」とあるのは、同年12月6日(金)に撮影したもので、その他の写真は当日撮影のもの。

 「岩殿観音」(いわどのかんのん)で親しまれる「正法寺」(しょうぼうじ)は、東松山市にある真言宗智山派の寺院。山号は「巌殿山」(いわどのさん)で、坂東三十三観音の10番札所。創建は718年(養老2年)、逸海上人が千手観音像を刻み庵を結んだのが始まりとされている。鎌倉時代に比企能員(よしかず)が中興し、観音堂建設や北条政子の守り仏「千手観音」を安置した。 

●大東文化大学

 13:00、物見山の駐車場着、観光ガイドと合流。

 ガイドの案内で、駐車場から坂を下って大東文化大学東松山キャンパスに向かう。比企能員(よしかず)の菩提を弔う「判官塚」が、昔大東文化大学の敷地内にあったそうだ。また、大岡地区「城ヶ谷」の比企の館跡と同様に、この岩殿山一帯のどこかにも比企の館があったという説がある。

 構内の目的地を聞きそびれたが、大学の守衛所で予約なしの学外者の入構を断られた。以前は構内に自由に出入りできたそうだが、新型コロナによる入構制限か、最近起きた都立大学内での教授襲撃事件の影響か。駐車場に戻り、門前通りに向かう。

●丁子屋

 門前通りの仁王門のすぐ下にある、昔の面影を残る「丁子屋」を見る。宿屋や茶屋を営んでいたそうだ。

 岩殿山の麓の家並みは、岩殿観音へ向かう門前町だった。今や、この門前町の代表的存在だった「丁字屋」(数年前に閉店)だけが当時の面影を残している。参道には家が並び参拝客で賑わっていた。観音堂の裏に大きな道(大東文化大学やこども動物自然公園の通り)が出来てからは、皆なそちらから参拝に行ってしまい、門前町並みにはほとんど人が来なくなっている。

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●仁王門

 仁王門は、表参道の「丁子屋」からすぐの石段を少し登った所にある。門の左右には仁王像。右横手に本堂がある。

 仁王像が、ガラスで囲われているのは珍しいし、よく見える。

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 仁王像は運慶の作といわれていたが、平成4年の解体修理の折りに棟札がでて、運慶作のものは江戸時代に焼失、現在の仁王像は文化年間(1808~1814年)に再建されたものだという。現在の仁王像は、平成の解体修理時に漆を塗りなおされ、漆の保護のため紫外線カットのガラスに覆われている。 

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 仁王門の右横手にある本堂の本尊は、三尺ほどの阿弥陀如来立像。室町時代作の木製で、平成になって箔の押し直しがおこなわれた。(写真なし)。

 観音堂は、この仁王門から急な石段を登ったところにある。(2019年撮影)

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 振り返ると門前町の町並みが続く。

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 境内は、岩殿丘陵の最東端に位置し、物見山のすぐ隣にあるため、寺は急傾斜地を切り崩したような場所(昔は石切場だったという)にあり、東方面にだけ開けている。また、多くの樹木に囲まれているので山寺の雰囲気がある。(2019年撮影)

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鐘楼と銅鐘

 鐘楼は1702年(元禄15年)に比企郡野本村(現在の東松山市野本)の大檀家・山田茂兵衛の寄進で建立されたと伝えられる。鎌倉末期の様式を今に伝える。屋根は萱葺きの寄棟作りで、 斗栱 (ときょう、軒を支える組み木)や天井の装飾なども、往時には朱が塗られていたらしく、ところどころにその痕跡が残っているそうだ。東松山市内で最も古い木造建築で、市有形文化財に指定。

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 銅鐘(梵鐘)は、1322年(元亨2年)に鋳造されたもので、外面に無数の傷がある。これは1590年(天正18年)に豊臣秀吉による関東征伐の際に、山中を引き回して打ち鳴らし、 軍勢の士気を鼓舞したといわれ、その時についた傷が残っている。

●石仏

 境内をかこむ石崖には石仏が安置されている。百観音(西国+坂東+秩父札所)、四国八十八ヶ所の写本尊であり、百観音と四国八十八ヶ所を参拝したのと同じ御利益が得られると言われている。(2019年撮影)

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●岩殿観音堂

 養老年間(717年~724年) の創建と伝える。16世紀中頃(永禄年間)松山城合戦の兵火で全山焼失した。その後、何回かの火災の後、寛永、天明、明治と3回再建された。現在の建物は、1871年(明治11年)の火災により観音堂が焼失した為、翌年高麗村白子(現飯能市)の「長念寺」から移築されたもの。江戸後期の建造と推測されており、ところどころに当時の彩色がみられるそうだ。

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 岩殿観音の本尊は、千手観音。全身金色の千手観音は「前立本尊(まえだちほんぞん) 」であり、奥の厨子に秘仏本尊の千手観音菩薩坐像が収められいる。秘仏本尊は、室町時代作の青銅製。12年に一度、午年(うまどし)に「ご開帳」されるという。

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 観音堂の濡れ縁に木像の「おびんずる(賓頭盧)様」が安置。釈迦の弟子の十六羅漢の一人で、病を治す神通力がとても強い。自分の体の悪いところを撫でて、「おびんずる様」の同じところを撫でると除病の功徳があるという。観音堂の切妻装飾の邪鬼の表情もおもしろい。

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●大銀杏

 推定樹齢は700年を越える。周囲は11m、埼玉県内でも最大級の大きさ。江戸時代には健康長寿のご利益がある「養老木」と呼ばれ、多くの女性に安産・子育守護の対象として信仰された。紅葉の見頃は11月下旬から12月。東松山市指定文化財。(2枚とも2019年撮影)

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 14:00、物見山駐車場に戻り解散。

 ★ ★ ★

●比企氏による中興

 源頼朝は観音信仰に篤い人物だった。坂東三十三観音霊場の制定にも深く関わっている。当時札所を制定するにあたり、比企氏のお膝元であり、比企能員自身も深く帰依していた「岩殿観音」が第10番の札所として選ばれた。坂東第9番「慈光寺」(ときがわ町)、第11番「安楽寺」(吉見町)とともに、比企郡では三十三の札所のうち3つが札所、頼朝が厚い信頼を寄せる比企能員の領地から有力寺院が推挙された。

 岩殿観音は開山から300年以上が経ち、諸堂の痛みも激しいものがあった。そこで頼朝の庇護のもと、頼朝の妻政子の守り本尊として比企能員が岩殿観音を復興する。寺伝では比企能員を中興の祖としており、比企能員の深い帰依のもと復興された。頼朝の没後の1200年(正治2年)には、亡き頼朝の意志を継いだ政子によって、堂宇の再建がなされたそうだ。

●判官塚と供養碑

 岩殿観音の表参道を進み、しばらく行った先の細い小路を左手に曲がった先には、「判官塚」(比企明神)がある。比企能員(よしかず)の孫である員茂(かずしげ)が1218年(健保6年)頃岩殿山に居て、能員の菩提を弔うために岩殿観音の南東の地である南新井に塚を築いたという。判官とは比企能員の役職名で、律令制における司法警察の役を担った官職。もとは現在の大東文化大学の敷地内にあったが、キャンパス拡張工事に伴い、現在地に移転した。

 岩殿観音に伝わる江戸時代の古地図には、表参道の入口にある現「鳴かずの池」裏手の丘陵地帯に「比企判官旧地」とあり、比企能員の館があったとも伝わる。現在は、その旧地のほとんどがゴルフ場となってしまい、かつての面影はわずかな土塁と堀跡を残すのみという。

 気がつかなかったが、仁王門から石段を少し登った左側に石碑が残されている。この石碑は、江戸時代の旅行記である『坂東観音霊場記』に記録が残っていて、岩殿別当であった入道覚西が入滅後に追善の石碑を建てた、とある。この入道覚西は能員であり、その菩提を弔うために建立された「比企能員供養碑」と伝わる。しかし近年の調査により、覚西は比企能員ではないとも推定されているが、比企氏と岩殿観音のゆかりを示す史跡となっている。

●松山城合戦で全山焼失

 坂東札所の成立当初は、鎌倉幕府に関係する上級武士や僧侶などの限られた者が参拝していたが、室町時代になると一般の庶民も巡礼に出るようになった。室町末期には西国、秩父と合わせて百観音札所として巡礼が盛んになり、岩殿観音の門前も一段と賑わいを増した。 戦国時代の後期には岩殿観音の本坊の他、66の僧坊を有し、7堂あった伽藍はすべて瓦葺きであったと記録に残るほど隆盛を誇った。

 岩殿観音から10kmほどのところに位置する松山城は、武州のほぼ中央に位置し、北武蔵支配の重要拠点であった。比企丘陵の先端に建てられた松山城は、ふもとを流れる市野川を堀とし、その天然の要害から不落城ともいわれ、戦国時代には上杉謙信、武田信玄、小田原北条氏などが激しい攻防を繰り広げた。

 1561年(永禄4年)、北条氏康(北条氏政の父)が抑えていた松山城は、扇谷上杉氏の家臣・太田資正(すけまさ)に攻め取られ、上杉憲勝(扇谷上杉家当主)を城主とした。これに対して、北条氏康は岩殿観音の隣村である高坂村に陣を敷き、松山城を激しく攻めた。しかし、松山城の堅固な守りで、落城することはなかった。業を煮やした北条は、岩殿観音を始めとする付近の寺社をことごとく焼き払った。この「松山城合戦」の戦火で、7堂あった伽藍は焼失した。

●再興、廃仏毀釈から現代へ

 しかし7年後の1574年(天正2年)、戦火を免れた本尊千手観音とともに、僧・栄俊によって再建。その後、松山城主の上田朝直(ともなお)の庇護を受け、1577年(天正5年)には7堂伽藍をはじめとして復興を果たした。1591年(天正19年)には徳川家康により25石の朱印地を賜り、江戸期には隆盛を極め、観音巡礼も盛んになったので岩殿山の門前町も大いに賑わいをみせた。

 明治維新の後、廃仏毀釈によって岩殿観音も多くの山内社寺が廃され、また寺領であり山岳修行の場であった山林を召し上げられるなど弱体化した。この影響は、観音巡礼にもおよび、参拝者は減少し門前町も急激にに衰退していった。戦後、岩殿山や物見山一帯は観光、大学や住宅として開発が進み、時代とともにその姿を変えて賑わいを取り戻している。

2023年3月 1日 (水)

比企氏ゆかりの地-宗悟寺

  2023年2月19日(日)、埼玉県東松山市の大岡地区の「比企氏ゆかりの地」をめぐる。比企氏は、2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に登場した。

 なお写真で、「2022年撮影」は同年6月13日(月)に撮影、「2015年撮影」は11月1日に撮影したもので、その他の写真は当日撮影。

 

●大岡市民活動センター 10:00~10:30

 東松山市の大岡地区にある「大岡市民活動センター」に10:00集合。大きな風車とオランダ風建物は、オランダ王国ナイメーへン市と東松山市が姉妹都市提携を結んでいることから、オランダの古い町並みをイメージして作られた。(2枚の写真は、2022年撮影)

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 活動センターのコミュニティホールに「比企氏紹介コーナー」を設置、2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に登場する比企氏についてパネル展示されている。10:00集合して、観光ガイドから、比企氏の概要を説明を受ける

 周辺の散策ルート「比企氏ゆかりの地 大岡マップ」。

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●城ヶ谷(じょうがやつ)10:40

 「雷電山古墳」の真南にある奥深い谷が、「城ヶ谷」と呼ばれ、この谷の奥に「城ヶ谷沼」がある。「城ヶ谷」には比企能員(よしかず)の館があったと伝えてられている。残念ながら館の痕跡は、これまで発見されていない。

 この地は、鎌倉の比企が谷(ひきがやつ) によく似た地形で、このあたりは「比企の乱」後、若狭の局に従って落ちて来たと伝える頼家の側近の子孫が住み、谷の西の丘には鎌倉の八幡宮を祀っ ていたと伝わる。(城が谷の説明板は、2022年撮影)

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 鎌倉を囲む丘陵の南東、比企ヶ谷は、鎌倉でも比較的奥行きのある谷(やつ)で、谷の最奥部から尾根を伝えば鎌倉随一の見晴らし、戦略的に重要な場所。鎌倉時代、幕府で重職を担った比企氏がこの地を与えられ、現在も比企氏ゆかりの「妙本寺」が建立されている。


●雷電神社 10:45

 東松山市には多くの古墳があり、大岡地区に三千塚古墳群がある。なかでも「雷電山古墳」は一番大きく、帆立貝型前方後円墳で埼玉県最古の埴輪が出土。古墳の上に「大雷神社」が祀られている。写真右の一対の石灯籠の間に昔の参道があった。(2022年撮影)

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●扇谷山宗悟寺(せんこくさんそうごじ) 10:50~11:10

 「宗悟寺」の参道と案内板(2022年撮影)、山門(2015年撮影)。

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 鎌倉時代初期、若狭局は鎌倉幕府第2代将軍源頼家の妻妾であったが、「比企の乱」による比企氏の滅亡後、夫・頼家の殺害により、修善寺より比企氏の根拠地であった武蔵国大谷村に逃げてきた。若狭の局は、村の名と頼家の法号「寿昌」を用いた「大谷山寿昌寺」(たいこくさんじゅしょうじ)を建立、頼家や自分が産んだ一幡、比企一族の菩提を弔う寺を創建したとされる。

 戦国時代、豊臣秀吉の命により、徳川家康は関東地方に転封され、家康の家臣の森川金右衛門氏俊(うじとし)は当地、大谷村や山田村を所領として与えられた。1592年(天正20年)、氏俊は「比丘尼山(びくにやま)」にあった「大谷山寿昌寺」を現在の扇谷に移し、寺の名を「扇谷山宗悟寺」と変えた。森川金右衛門氏俊の法号は「桐蔭宗悟居士」という。その後、森川氏の嫡流は旗本となった。

 「宗悟寺」の本殿(東松山観光協会のホームページより)

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 「宗悟寺」の祭壇。若狭の局が持ち帰ったと伝わる「頼家公ご位牌」(右手の燭台の後方)、若狭の局が夫頼家を失った苦しみから逃れるために祀った「蛇苦止(じゃくし)観音」(左手燭台の右下)が見える。(2022年撮影)

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 境内に立つ比企氏伝承の品(「頼家公ご位牌」と「蛇苦止観音」)の説明板。

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 森川氏の陣羽織等が、本殿に展示されている。徳川幕府より森川金右衛門氏俊が天下統一の武勲により徳川幕府より賜ったとされ、森川氏の末裔から「宗悟寺」に寄贈された。(2022年撮影)

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 境内には、地元の有志による「比企一族顕彰碑」が設置されている。

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 本殿裏の墓地には、市指定文化財の森川氏の墓地がある(2022年撮影)。

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●梅が谷(うめがやつ)・須加谷(すかやつ)

 宗悟寺の山門から南の方角を望む。

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 中央の小高い森は、火伏の神様の「秋葉神社」。1658年に旗本・森川氏が歓進した。森川氏は江戸森川町(現文京区本郷)の屋敷に分祀し、守り神としていた。江戸の大火から森川氏の屋敷だけは火の難を逃れたことから火伏の神として有名になったとされる。その後は広く周辺の人々からも信仰され、特に例祭(4月18日)や酉の日には賑わい、松山宿からこの神社への経路は「秋葉道」と呼ばれたという。

 「秋葉神社」を中心として西側(右手の谷)を「梅が谷」、東側(左手の谷)を「須加谷」という。「梅が谷」は年老いた若狭の局が隠棲して余生を送ったといわれる場所で、「須加谷」はかつて「菅谷堂」という観音堂があり、若狭の局が作ったとされる「蛇苦止観音」が祀られていたという。現在は「宗悟寺」に祀られている。

●武蔵逍遥乗馬会 11:15

 「宗悟寺」の裏山には、外乗りを主とする乗馬クラブがある(2022年撮影)。完全予約制で、乗馬トレッキング60分コースが8,500円、120分コースで13,000円。

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●串引沼(くしびきぬま)11:30

 「串引沼」には、次のような伝説が伝わっているという。

 その昔、夫頼家を殺された若狭の局は、大谷村に逃れ比丘尼山の草庵に住み、夫頼家の菩提を弔っていましたが、いつまで も夫を殺された悲しみから逃れられず苦しんでいました。それを見かねた祖母比企の尼は、若狭の局に、心の迷いを去らせる為に、鎌倉より持参し肌身離さず持っていた夫頼家から贈られた鎌倉彫の櫛を捨てさせようと心に誓いました。

 夜の明けはじめた早朝、朝の勤行を済ませ、祖母の比企の尼と二人連れだってこの沼に行き、頼家形見の櫛を沼に投げ入れました。櫛はかすかな水音を残して沼底深く沈み、その姿が見えなくなりました。その時若狭の局はもちろん、比企の尼の両眼からも涙がとめどなく流れ落ちていました。時は1205年7月半ば、丁度、夫頼家の命日に当たる日であったと云います。

 「串引沼」は、川越カントリークラブの一部になっている。 

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 土手に並ぶ桜は、修善寺から寄贈された山桜で、真っ白の小さな花が咲く「頼家桜」。

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● 比丘尼山(びくにやま)11:35

 「比丘尼山」は、比企郡司・比企遠宗(とおむね) の妻、比企の尼が遠宗の没後、禅尼となって草庵を営んだところと伝えられている。

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 「比丘尼山」から南は、伊豆の修善寺と同じに、主膳寺と呼ばれている。比企地区には、鎌倉と同じ呼称の土地が多くある。その他にも扇谷、梅が谷、菅谷、滑川、腰越、大蔵などの地名がある。

 「比丘尼山」の南面には横穴墓が造られており、市指定史跡となっている。三千塚古墳群の一部、「比丘尼山」の南斜面に3 、4 段に配列して築造され、40~50基余りの横穴墓が分布していると思われる。うち 3 基が開口しているそうだ。「吉見百穴」と同様の7 世紀頃に造られたものであると思われる。横穴墓群は「吉見百穴」を中心に西に広がっており、この地方に移住した渡来系氏族とのかかわりあいのある墓制とも考えられている。

 12:00、大岡市民活動センター着。

 

 ★ ★ ★

 平安時代末期、比企遠宗(とおむね)は、清和源氏の棟梁・源義朝の家人だった 。義朝は、1147年(久安3)三男・頼朝が生まれると、頼朝の乳母に比企遠宗の妻を任命した。1159年(平治元年)頼朝13歳の時、平清盛と源義朝の源平の戦い「平治の乱」が起った。しかし、源氏は敗れ、頼朝の父・義朝や二人の兄は戦死。初陣の頼朝も平氏に捕らえられ殺されるところ、平清盛の継母・池禅尼(いけのぜんに)の助命により、伊豆の蛭ケ小島に流されてしまった。

 頼朝の監視役には、平氏北条時政と伊東に本拠を置く平氏伊東祐親(すけちか)がなった。頼朝が伊豆に移ると、比企夫婦も頼朝の世話をするために、京都から請所とされた武蔵国比企郡に移る。そして夫・遠宗亡き後、妻の乳母は比企の尼として、伊豆の頼朝を物心両面で支援していく。伊豆の伝承では、月に一度、比企氏からの物資が届いたという。

 比企氏の支援は、 20年に及んだ。頼朝の旗上げ後、比企氏は一族をあげて頼朝の武士政権「鎌倉幕府」に貢献する。頼朝も比企の尼の恩に報いるため、比企家の当主・比企能員(よしかず)を上野や信濃の目代にした。1182年(寿永元年)頼朝の長男・頼家が産まれると能員は頼家の乳母父になり、比企氏の女性達が乳母になる。しかし、次男・実朝が産まれると、政子の妹・阿波の局など北条氏の女性達が乳母になった。

 その後、比企能員の娘・若狭の局は、頼家に嫁ぎ、1198年(建久9年)に頼家の長男・一幡を産む。1199年(建久10年)1月に頼朝が亡くなる。18 歳の長男・頼家が、二代将軍となり、比企氏が将軍の外戚として勢力を付ける事になる。1203年(建仁3年)頼家が病にかかると、同年9月、比企氏を北条邸で薬師如来の法要があると偽り、比企能員を自分の屋敷に招き殺害。北条氏の軍は、鎌倉・比企が谷の比企の館も襲い、比企一族は滅亡した。

 北条時政は、頼家の将軍職を解き修善寺に幽閉、北条氏が乳母をした実朝を三代将軍にし、後見人として権力を握る。翌年7月、頼家は北条氏により殺される。この時、頼家の側にいた妻の若狭の局は、頼家の位牌(遺骨説もあり)を持ち、武蔵国大谷村に逃げてきたと伝えられている。この争いは「比企の乱」と呼ばれているが、京都の公家や僧侶の日記などから、比企氏から権力を奪取するための北条氏の謀略とされている。

 能員の末子・比企能本(よしもと)は、比企一族滅亡時に2歳だったが助命され、長じて出家し日学上人となった。鎌倉に戻った能本は、1253年(建長5年)日蓮に帰依する。比企一族の菩提を弔うためは、鎌倉の比企氏館跡にあった自らの屋敷を日蓮聖人に献上した。日蓮聖人は、1260年(文応元年)比企能本の父・能員と母に「長興」、「妙本」の法号をそれぞれ授与、この寺を「長興山妙本寺」と名付けたという。

2023年2月27日 (月)

新型コロナ2023.02 マスク緩和へ

 政府は1月27日、新型コロナの感染症法上の分類を5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げることを決めた。または2月10日、マスクの着用について3月13日から屋内・屋外を問わず個人の判断に委ねるとした上で、高齢者施設の訪問や医療機関を受診する際や通勤ラッシュ時といった混雑した電車やバスに乗る際などには、マスクの着用を推奨するなどとした方針を決定した。

 2023年2月1日から15日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.01 5類移行へ」の続き。なお、感染者数・重症者数・死者数のデータは、厚労省の発表と都道府県などの発表とで異なる場合があり、特に死者数は厚労省のデータを採用しています。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

【2月1日】

●全国で新たに5万5013人が感染 前週より約2万3千人減

 国内感染者は1日、新たに5万5013人が確認された。前週の同じ曜日より2万3788人少なかった。全国で発表された死者は265人。都道府県別の新規感染者は東京都の4012人が最多で、愛知県3586人、大阪府3490人と続いた。死者数は愛知県の30人が最多。東京都では、1週間前の水曜日より1922人減った。前の週の同じ曜日を下回るのは15日連続。人工呼吸器かECMO(人工心肺装置)を使っている重症の患者は1月31日より2人増えて34人。感染が確認された19人が死亡した。

【2月2日】

●東京都 コロナ 医療提供警戒レベル 最も深刻から1段引き下げ

 東京都は2日、新型コロナの感染状況と医療提供体制について、専門家によるモニタリング項目の分析結果を公表した。新規感染者数の7日間平均は3999人と、前回に比べ2000人程度減少したが、「十分に下がりきらない状況から再び増加に転じないように、引き続き感染防止対策を徹底する必要がある」として、感染状況の警戒レベルは上から2番目を維持した。

 また1日時点で入院患者数は、前回の先月25日時点に比べて663人少ない、3161人だった。一方、専用の病床使用率は45.5%と、確保病床数が減ったため、前回に比べて3.5ポイント上昇した。専門家は「入院患者数は継続して減少しているが、救急医療の逼迫は継続しており、通常の医療体制はいまだ影響を受けている」と分析し、4段階ある警戒レベルのうち、医療提供体制については、最も深刻なレベルから1段引き下げたものの、上から2番目。

●卒業式マスク着用 発言揺れた文科省相 「家庭で判断」→ 「未決定」

 今春の卒業式でのマスク着用をめぐり、永岡文科相は2日午前の衆院予算委員会の立憲民主党の柚木氏の質問への答弁で、「マスクを外すとご家庭で決められた方は、マスクを外しての参加になろうかと思う」と述べ、卒業式でのマスク着用は家庭や個人の判断とする考えを示した。だが、同日午後になって報道陣の取材に「卒業式のマスクの取り扱いについて決めたという事実はない」と釈明。取り扱いを速やかに検討するとした。

 永岡氏は、政府が1月27日、新型コロナの感染症法上の分類を5月8日に「5類」に引き下げることを決め、マスク着用については原則として個人の判断にゆだねる方針を示したことに言及。予算委での発言は、この政府方針を説明したもので、卒業式でのマスクの扱いは決まっていないと釈明。予算委での発言の修正ではないとも説明した。

●「田辺三菱製薬」 新型コロナワクチン事業から撤退を発表

 田辺三菱製薬では、カナダにある子会社の「メディカゴ」が、英国の製薬会社と共同で開発した新型コロナのワクチンが現地で承認され、日本国内でも臨床試験を進めていた。しかし、ほかの製薬会社が開発したワクチンがすでに普及していることや、大量生産するための体制づくりに課題があるとして、ワクチンの開発から撤退しこの子会社のすべての事業を清算すると3日発表した。

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 開発を進めていたワクチンは、成長が早いタバコ属の植物にウイルスの遺伝子を組み込み、葉の細胞から粒子を抽出する手法で作られていて、2~8℃の温度で保存できるため、運びやすいメリットがあるとされていた。国内の製薬会社が開発を進める新型コロナのワクチンは、塩野義製薬と第一三共がそれぞれ国に承認を求める申請を行っていて、対応が分かれるかたちとなった

●大学病院の院長らの団体「5類移行後も財政支援継続を」

 5月8日に新型コロナが「5類」に移行したあとの医療提供体制について、国は一般の医療機関でも入院や診察に対応する体制に段階的に移行する方針で、財政支援などの措置についても見直しが検討されている。これについて、大学病院の院長などで作る団体が3日、厚労省を訪れ、要望書を提出した。新型コロナの診療は通常よりも人手や時間、物資が必要なほか、高齢者など重症化リスクの高い患者を受け入れる病院では院内での感染対策が今後も必要だとしている。

 そのうえで、適切な医療を提供するため、入院の受け入れや外来診療、看護師の増員などに対する診療報酬の加算のほか、病床確保の費用など、財政支援を継続するよう求めている。「全国医学部長病院長会議」の横手会長は、記者会見で「これまでの財政支援はコロナ診療だけでなく通常診療にも大きく貢献している。患者を地域で守るためにも継続してほしい」と述べた。

【2月3日】

●米IT大手、減速鮮明 コロナ下の急成長、景気不安で鈍化

 コロナ下のデジタル化で急成長してきた米IT大手の減速が鮮明になった。世界的な物価高や主要国の利上げで景気後退の懸念が広がるなか、人員削減を進め、効率化を急ぐ。2日出そろった米IT大手5社の2022年10~12月決算では、アップルの売上高が前年同期比5%減で、2019年1~3月期以来約4年ぶりの減収。中国のゼロコロナ政策で工場が停止に追い込まれ、最新のiPhone14の生産に影響が出た。純利益は13%減で、約3年半ぶりの落ち込みとなった。

 米IT大手はこの数年で人員を大幅に増やしてきたが、感染状況が一服したことで需要が減退。景気後退への懸念も加わり昨年に入り業績の伸びが鈍化。各社とも大幅な人員削減を強いられている。グーグル、アマゾン、メタ(旧FB)、マイクロソフト(MS)の4社が昨年11月以降発表した人員削減は合計5万人を超えた。

●インフル全国で「注意報」1〜9歳の入院目立つ
 
 厚労省は3日、季節性インフルエンザの流行が全国で「注意報」レベルになったと発表した。全国約5千カ所の定点医療機関から報告された直近1週間(1月23~29日)の患者数は、1医療機関あたり10.36人で、注意報レベルの10人を超えた。3年ぶりにインフルの流行が広がっており、厚労省は注意を呼びかけている。

 都道府県別では、沖縄県が41.23人、福井県25.38人、大阪府24.34人。注意報レベルを超えたのは16府県だが、10人を超えるのを待たずに注意報を出している自治体もある。約500の定点医療機関からの入院報告では、1月だけで705人が入院。特に1~9歳が多く、子どもの入院が目立っている。 インフルは昨年末に全国で3年ぶりに流行入りした。新型コロナの感染者もまだ多く、厚労省は感染対策や、コロナやインフルのワクチン接種を呼びかけている。

●集団感染3年 検証訴え クルーズ船乗客

 3年前に新型コロナ集団感染が起きた大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で亡くなった乗客13人を追悼する式典が3日、横浜港の大黒埠頭であった。船では当時、乗客乗員3711人のうち、712人の感染が確認。船は2020年2月3日、横浜港に到着。前日に香港で下船した男性客の感染が判明。船内で検査を進めたところ、ほかにも感染者がわかり、乗客は5日から客室に隔離が続き、乗客乗員全員の下船が完了したのは3月1日だった。

【2月4日】

●新型コロナ 新規感染者の6割余が「XBB.1.5」 米CDC発表

 米国のCDCは今月4日までの1週間に、国内で新型コロナに新たに感染した人のうち、66.4%がオミクロン株の「XBB.1.5」に感染しているとする推計を発表した。前の週の55.9%と比べると10ポイントあまりの増加となり、去年12月以降、米国での拡大が続いている。一方、米国で新たに報告された感染者の数は、今月1日の時点で一日平均およそ4万人と4週連続で減少傾向を示しているが、この中に検査キットを使って自分で調べたケースは含まれていない。

 また新たに入院する患者の数は、1月31日の時点で一日平均およそ3900人、死者の数は2月1日の時点で一日平均およそ490人で、いずれも1月中旬以降は、おおむね減少する傾向を示している。「XBB.1.5」について、WHOは感染した場合の重症度が上がっているという兆候は、今の段階では見られないとする一方、世界的な感染者数の増加につながる可能性があると指摘している。

【2月5日】

●全国で新たに3万2143人が感染 死者は109人確認

 国内感染者は5日、新たに3万2143人が確認された。前週の同じ曜日より1万2162人減った。全国で発表された死者は109人だった。都道府県別の新規感染者数は、東京都の2287人が最多で、大阪府2142人、愛知県2014人、神奈川県1812人と続いた。東京都では、1週間前の日曜日より1140人減った。前の週の同じ曜日を下回るのは19日連続。また、人工呼吸器かECMOを使っている重症の患者は、4日より4人増えて38人。一方、感染が確認された18人が死亡した。

 2月5日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【2月6日】

●中国、国外への団体旅行を一部解禁 中国各地の空港にツアー客

 中国政府は、国外への団体旅行について、新型コロナの感染が最初に拡大した3年前の2020年1月以降、国内の旅行会社に対して制限してきたが6日、解禁した。ただ、行き先はタイやインドネシア、ロシアなど20か国に限られ、日本は含まれていない。今回の措置を受けて中国の旅行各社は国外旅行の商品の拡充を進めていて、このうち広州にある旅行会社では今月、タイやカンボジアなど6か国の団体旅行を企画し、いずれも満員だという。

【2月7日】

●「内閣感染症危機管理統括庁」設置への改正法案を閣議決定

 感染症による危機に備え政府は7日、一元的に対策を行うための司令塔として「内閣感染症危機管理統括庁」を設置するとした内閣法などの改正案を閣議で決定した。今の国会で、改正案の成立を図り、ことし秋ごろの発足を目指す方針。改正案では、感染症対策の企画・立案や総合調整などを一元的に行うための司令塔として「内閣感染症危機管理統括庁」を内閣官房に新たに設置するとしている。トップには「内閣感染症危機管理監」を置き、官房副長官を充てる。

 「感染症危機管理統括庁」では、ふだん、38人の専従職員が、訓練や各府省の準備状況の点検などを担う一方、緊急時には、態勢を101人に拡充して対応に当たることが想定されている。また、改正案には、感染症の発生や蔓延の初期段階から迅速・的確に対応できるよう、現在は、「緊急事態宣言」などが出された時に限られている首相による都道府県知事などへの指示権を、政府対策本部を設置した段階で使えるようにすることも盛り込んでいる。

【2月8日】

●「マスクしないこともありうる」 卒業式・入学式めぐり専門家見解

 厚労省に新型コロナ対策を助言する専門家らは8日、学校の卒業式や入学式でのマスク着用について、参列者同士が距離を空けることなどに配慮した上で「着用しないことも考慮されうる」とする見解を示した。一方、マスクの有効性についても科学的根拠をまとめ、「感染リスクは0.76倍に低下する」などと示した。

 政府はマスク着用について、5類に引き下げる5月8日より前に「個人の判断」に切り替える方針。ただ、学校の卒業式ではさらに早く外せるようにすることを検討中で、専門家に見解を示すよう求めていた。見解は、学校で全員がマスクを着用すれば「感染リスクを減らす効果」が報告されているとした一方で、「一生に一度の行事では外したい気持ちも理解できる」「流行が落ち着いた状況では参列者が着用しなくてもよいことも考慮されうる」とした。

●新型コロナワクチン、「秋から冬」に次の接種 基本方針まとまる

 新型コロナのワクチン接種は、蔓延を予防するために緊急の必要があるとして「特例臨時接種」との位置づけで、無料での接種がことし3月末までを期限に行われている。8日は厚労省の専門家による部会で、来年度以降の接種の在り方について基本方針が取りまとめられた。この中では、重症者を減らすことを目的に高齢者など重症化リスクが高い人を第一の対象とし、それ以外のすべての世代に対して接種の機会を確保することが望ましいとしている。

 また、接種の時期については、これまで年末年始に比較的多くの死者を伴う感染拡大があったことなどから、秋から冬に次の接種を行うべきだとしている。今後の感染拡大や変異株の状況などを踏まえ、重症化リスクの高い人のほか、重症化リスクの高い人に頻繁に接する人には追加して接種を行う必要性にも留意するとしている。厚労省は今後、今の「特例臨時接種」を継続するかについて、来月にも方針を示すことにしている。

●コロナ感染示す抗体、東京や大阪で約3割の人に 大幅に増加

 厚労省は「第8波」の去年11月~12月に、5都府県で合わせて8000人余りを対象に抗体の保有率を調査し、速報値を8日の専門家組織の会合で示した。新型コロナに感染した場合にだけ得られるタイプの抗体保有率は東京都28.2%、大阪府28.8%と、それぞれ前回の調査のおよそ5倍。また、宮城県17.6%、愛知県26.5%、福岡県27.1%で、前回のおよそ9倍~12倍。5都府県ともに去年の間に大幅に増加し、人口に占める累計感染者数の割合と同程度だったという。

 またワクチン接種でも得られるタイプの抗体保有率は、いずれの地域でも97%以上。厚労省は必ずしも感染や発症の予防効果を示すものではないとしている。脇田座長は、「今回の調査では東京や大阪に比べて人口規模の小さい地域でも抗体の保有率が大きく上昇していた。日本の抗体保有率は欧米に比べて低く、今後、感染対策を安易に緩和すれば日本では感染拡大しやすく、重症者や死亡者数の増加につながる恐れがある」と話している。

【2月9日】

●感染者、5月8日から定点把握

 新型コロナの感染動向の把握方法をめぐり、厚労省は9日、感染症法上の「5類」に移行する5月8日から、特定の医療機関に週1回患者数を報告させる「定点把握」に移行する方針を決めた。現在は感染症法などに基づき患者を全数把握しているが、今後は日々の感染者数の集計や発表もなくなり、感染動向を週1回公表する。9日の感染症部会で専門家らが議論した。「定点把握」は、季節性インフルなどの流行を把握するために用いられている仕組み。

 新型コロナでも5類に移行後、全国約5千カ所のインフル定点医療機関が毎週、患者数や年代、性別などを自治体に報告するのを基本とする。国立感染研が週1回、報告数を公表することになる。ただ、専門家からは「注意報」や「警報」のように国民の対策につながる指標も検討すべきだとの意見が出た。インフルでは全国の推計患者数も公表しており、厚労省は今後、具体的な公表内容を検討する。

【2月10日】

●マスク緩和、来月13日 卒業式・新学期 着用求めず

 政府は、10日夕方、新型コロナ対策本部を持ち回りの形式で行った。そして、マスクの着用について、来月13日から屋内・屋外を問わず個人の判断に委ねるとした上で、高齢者施設の訪問や医療機関を受診する際や通勤ラッシュ時といった混雑した電車やバスに乗る際(高速バスやタクシーなどは対象外)などには、マスクの着用を推奨するなどとした方針を決定した。業界団体ごとにつくる感染対策ガイドラインも3月13日までに変更してもらう。

 文科省は10日、学校の授業などは4月1日以降、基本的にマスク着用を求めないとする通知を各地の教育委員会に出した。3月末までは従来通りマスク着用を求める。卒業式では校歌などを歌ったり、生徒らが呼びかけをしたりするときを除き、教職員と児童・生徒は着けないことを基本にすると明記した。基礎疾患などの事情でマスク着用を希望したり、健康上の理由でマスクを着けられない児童生徒もいるとして、着脱を強制しないようにする。

 マスク着用の効果的な場面 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【2月11日】

●米国、「XBB.1.5」新規感染者の7割余に CDC推計

 米国のCDC(米国疾病対策センター)は今月11日までの1週間に、国内で新型コロナに新たに感染した人のうち、74.7%がオミクロン株の「XBB.1.5」に感染しているとする推計を10日、発表した。前の週の65.9%と比べるとおよそ9ポイントの増加となり、去年12月以降、米国での感染拡大が続いている。一方、米国で新たに報告された感染者の数は、今月8日の時点で1日平均およそ4万人と先月中旬以降、減少傾向を示している。

 また、新たに入院する患者の数は、今月7日の時点で1日平均3600人余り、死者の数は、今月8日の時点で1日平均およそ450人で、いずれも先月中旬以降は、おおむね減少する傾向にある。「XBB.1.5」について、CDCは最新のワクチンを追加接種すれば、症状が出るのを抑える一定の効果があると分析し、接種を呼びかけている。

●全国で新たに2万7371人が感染 死者は181人確認

 厚労省によると、国内感染者は11日、新たに2万7371人が確認。前週の同じ曜日(4日)と比べ、1万1240人減った。全国で発表された死者は181人。都道府県別の新規感染者数が最多だったのは大阪府の1916人。次いで愛知県1802人、東京都1752人。東京都では、週間前の土曜日より1240人減った。前の週の同じ曜日を下回るのは25日連続。人工呼吸器かECMOを使っている重症の患者は昨日より8人減って22人、14人が死亡した。

 2月11日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【2月13日】

●オミクロン株対応ワクチン 国内接種率42.9%

 政府が13日に公表した最新状況では、オミクロン株対応ワクチンの接種を受けた人は5406万819人(全人口の42.9%)。このうち、65歳以上の高齢者は2634万人(73.3%)。一方、ワクチン接種を受けた人は、1回目では1億465万人(81.3%)、2回目では1億328万人(80.3%)、3回目では8589万人(68.2%)、4回目では5758万人、5回目では2934万人。 

 また、5歳~11歳の子どもを対象にした従来ワクチンの接種のうち、去年9月から始まった3回目の接種を受けた人は63万3人(8.7%)。1回目を受けた人は175万人(24%)、2回目の接種を受けた人は169万人(23.1%)。このほか、去年10月から始まった生後6か月~4歳の乳幼児を対象にした従来のワクチンの接種で1回目の接種を受けた人は15万人(3.4%)、2回目の接種を受けた人は13万人(2.8%)。

●全国の感染者数 1万人を下回る 約7カ月半ぶり

 厚労省によると、国内感染者は13日、新たに9423人が確認された。1日あたりの感染者数が1万人を下回るのは昨年6月27日(7204人)以来、約7カ月半ぶり。前週の月曜日(6日)の1万5616人から6193人減っており、減少傾向が鮮明となっている。都道府県別の最多は東京都の810人。昨年6月20日(828人)以来、約8カ月ぶりに1千人を下回った12日の799人に続き、2日連続で1千人を下回った。

【2月14日】

●東京都 マスク着用、ラッシュの電車やバスに乗る場合は推奨へ

 新型コロナ対策としてのマスクの着用について、東京都は3月13日から、個人の判断を尊重するものの、重症化リスクの高い人への感染を防ぐため、通勤ラッシュなどで混雑した電車やバスに乗る場合などでは着用を推奨することになった。新型コロナ対策としてのマスクの着用について、東京都は14日に開かれた対策本部会議で、政府の指針を踏まえた、3月13日からの対応をまとめた。

 都は3月13日以降、都民に対し、基本的な感染防止対策を引き続き行ってほしいとしたうえで、マスクの着用については「屋内・屋外を問わず、個人の判断を尊重する」としている。ただ、高齢者など重症化リスクの高い人への感染を防ぐため、医療機関を受診する際や、高齢者施設などを訪れる際、通勤ラッシュなど混雑した電車やバスに乗る際、施設の利用やイベント参加時に事業者から呼びかけられた際は「マスクの着用を推奨する」としている。

●都医師会「屋内でマスク外すなら換気や空気清浄機が必要」

 東京都医師会の尾崎会長は14日の会見で「屋外でマスクの着用は必要ない。ただ、屋内で外すなら、部屋の換気がよくされていることや、ある程度換気が悪くても空気清浄機を置いてウイルスを除去するなど、環境整備が必要」と述べた。また、業界団体ごとのガイドラインの見直しについて「個々人が判断しやすいよう、屋内での換気の状況や空気清浄機の設置など、マスクを外すことができる客観的な根拠を、ガイドラインに盛り込んでほしい」と訴えた。

●検査キット無料配布終了 接種や病棟確保は国次第 東京都「5類」移行で見直し

 東京都は14日、新型コロナ対策として続けてきた無料のPCR検査や濃厚接触者らへの検査キットの無料配布を、5月7日に終えると発表した。感染症法上の分類が5類に引き下げられることに伴う措置。5月8日の5類移行後は、自費でのキット購入・備蓄を呼びかける。また、血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターの貸与や、隔離を目的とした宿泊療養施設の確保なども終える。

 一方、国費で負担されてきたワクチン接種や病床確保については、国の財政支援が続く前提で病床確保料の補助費510億円などを新年度補正予算案に計上した。移行後の国費投入継続を求める要望書も14日に政府へ提出したが、3月上旬に示される政府方針次第で見直す可能性がある。また、高齢者向けの医療支援8施設の運営など、重症化の危険性が比較的高い層への対策は続ける。

【2月15日】

●1月の訪日外国人旅行者149万人 前月比12万人増 水際対策緩和で

 政府観光局によると、先月に日本を訪れた外国人旅行者は、推計で149万7300人と、去年12月と比べて12万人余り増加した。国や地域別では、韓国が56万5200人、台湾が25万9300人、香港が15万1900人で旧正月の影響で、東アジアなどからの旅行者の増加が目立っている。新型コロナの水際対策が徐々に緩和されたことで、去年6月以降、旅行者数は増加傾向が続いているが、感染拡大前の2019年の同じ月と比べると、回復は5割程度となっている。

 政府は「観光立国推進基本計画」の改定に向けた素案の中で、外国人旅行者1人当たりの消費額の目標を、2025年に20万円に引き上げる目標を掲げるなど、人数よりも消費額を重視する方針で、外国人旅行者による経済への波及効果が期待されている。

●新型コロナ「XBB.1.5」に飲み薬の効果確認 研究グループ発表

 免疫の働きを逃れやすいとされる「XBB.1.5」に対して、飲み薬などの効果が確認できたとする実験結果を、東大医科学研究所の河岡特任教授らのグループが発表した。研究グループは、飲み薬の「ラゲブリオ」と「パキロビッド」「ゾコーバ」、それに、点滴の「レムデシビル」を使って、患者から取ったXBB.1.5の増殖を抑えられるか実験した。その結果、ウイルスの増殖を抑える効果は、従来型のウイルスやBA.2に対してと、同程度みられたという。

 ワクチンの効果について、従来型のワクチンを4回接種した人の血液では、XBB.1.5に対する中和抗体の働きは、ほとんど確認できまなかったが、5回目にオミクロン株対応のワクチンを接種した人の血液では、低い水準ながらも中和抗体の働きがみられた。XBB.1.5に対して、オミクロン株対応のワクチンで免疫が高められるほか、抗ウイルス薬は効果があると考えられるとしている。

●全国2万8772人確認 前週比1万2800人減 東京都、29日連続前週比減

 厚労省によると、国内感染者は15日、新たに2万8772人が確認された。前週の水曜日(8日)の4万1572人から1万2800人減った。都道府県別の最多は東京都の1858人。愛知県1814人、大阪府1744人と続いた。東京都は、1週間前の水曜日より754人減った。前週の同じ曜日を下回るのは29日連続。また、人工呼吸器かECMOを使っている重症者は14日より1人減って17人。12人が死亡した。

 以下の図は2月15日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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2023年2月12日 (日)

新型コロナ2023.01 5類移行へ

 1月25日、厚労省の専門家組織の会合で、新型コロナの「第8波」は全国で減少傾向が続き、今後も減少傾向が続くことが見込まれると分析。病床使用率は低下傾向で、亡くなる人の数は高い水準の中でも減少傾向とした。一方、政府は27日、新型コロナの感染症法上の分類を5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げることを決めた。社会経済活動に大きな影響を与えた3年間の「コロナ禍」の政策は大きく転換することになる。

 2023年1月16日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.01 死亡急増」の続き。なお、感染者数・重症者数・死者数のデータは、厚労省の発表と都道府県などの発表とで異なる場合があり、特に死者数は厚労省のデータを採用しています。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

 

【1月16日】

●3府県、死者最多

 国内感染者は16日、新たに5万2623人が確認された。前週の同じ曜日(9日)より4万99人少なかった。16日に発表された死者は計355人。都道府県別の新規感染者が最も多かったのは東京都の4433人で、神奈川県3646人、大阪府3370人、静岡県3132人と続いた。滋賀、京都、大分の3府県で、1日あたりの死者数が最多となった。

【1月17日】

● 中国GDP、3.0% 目標ほど遠く低迷 ゼロコロナ、ひずみ鮮明

 中国政府が17日に発表した2022年の実質成長率は3.0%となり、目標に掲げた「5.5%前後」からはほど遠い数字に低迷した。最大の要因は厳しい移動制限を伴う「ゼロコロナ」政策。同政策が終わったいま、人々は消費や旅行に向かい始めているが、3年近く続いた政策のひずみは深刻。

 中国社会科学院は昨年12月、2023年の成長率が5.1%前後にまで急回復するとの予想を公表した。だが、中国国内の楽観的な見方に対し、国外からは回復に時間がかかるとの見方は少なくない。世界銀行は今月10日、中国の2023年の経済成長率を昨年6月時点から0.9ポイント引き下げて4.3%と予測。理由を「予想よりも長引くコロナ禍による混乱」とした。

●川越えられない、北朝鮮の人々 中国「ゼロコロナ」終了 両国の政策に翻弄され

 中国で感染が広がった2020年1月下旬、北朝鮮は中国との国境を封鎖した。外貨を稼ぐため中国に派遣されていた労働者や貿易関係者らは、北朝鮮との往来ができなくなった。北朝鮮の事情通によると、北朝鮮では中国の「ゼロコロナ」政策が終了したことでウイルスの流入の警戒が強まり、国境地帯の住民には国境の川に近づかないよう指示が出たという。コロナの流行から3年間、帰国を許されていない北朝鮮の人々は、中国、北朝鮮双方のコロナ対策に翻弄されている。

●コロナ類型見直し「環境できてきた」厚労相 移行に「準備期間」

 政府は新型コロナの類型について、季節性インフルエンザと同じ「5類」への移行を念頭に検討を進めている。加藤厚労相は17日の閣議後会見で、専門家組織の有志から段階的に類型を変えるべきだとする見解が示されたこと、また類型を決める同省感染症部会で議論が始まったことに言及。「準備が一つ一つできてきている」と説明した。変更時期については言及は避けたが、新たな医療提供体制などを念頭に「当然、一定の準備期間もいる」と述べた。

●第8波、感染減傾向 専門家組織 死者数なお最高水準

 直近1週間の新規感染者数について、専門家組織は17日、年末年始を除くと2カ月半ぶりの減少傾向になったと分析。ただ、なお死者数は過去最高水準が続いている。今月10~16日の全国の新規感染者数は約90万人で、3~9日の約119万人と比べて0.75倍。先週今週比が1を下回るのは、年末年始を除けば10月26日時点の0.96倍以来となった。

 脇田座長(国立感染研所長)は会見で「まだ年末年始や連休の影響が残っている。ピークアウトするかはもう少し様子を見たい」とした。一方で重症者数と死者数は、なお高い水準。17日発表の死者数は357人で、第7波の最多だった347人を上回った。17日時点の重症者数670人も、第7波で最多だった646人を上回る。第8波の死者が第7波より多い要因について、加藤厚労相は「感染者のうち80代以上の占める割合が昨夏と比べて大きい」と分析した。

●全国旅行支援、地域差あらわ 東京・大阪は独自上乗せ 疑問の声も

 10日に政府の「全国旅行支援」が再開したが、支援には地域差がある。独自に補助を上乗せしている自治体がある一方、対象期間を縮めた県もある。目的は需要の喚起だが、特定の業界に対する支援の長期化に、効果を疑問視する業者もいる。全国旅行支援は、公共交通機関とセットの旅行商品が割り引かれたり(1人1泊5千円、それ以外3千円)、地域で使えるクーポン券が支給されたり(平日2千円、休日千円)する。割引率は12月までの40%から20%になった。

 大阪府は、需要を喚起するため、独自に追加補助をする。1月25日から全国旅行支援と併用できるキャンペーンを始める。東京都も全国旅行支援と併用できる、都民の都内旅行を支援する「もっとTokyo」を独自に続けている。群馬県は2月末までに終え、県独自の財源による「上乗せ」もしていない。担当者は「多額の財源が必要になる。あくまで国の補助金でやる事業だと捉えている」と話す。

●インフルより「後遺症」リスク高い 名古屋工業大

 名古屋工業大学の平田教授らの研究グループは、医療機関を受診したレセプト(診療報酬明細書)の記録をもとに、季節性インフルで医療機関を受診した人(2019年1月から3月)と、第6波(2021年1月~3月)で症状の推移について比較した。 その結果、新型コロナに感染した人はインフルに感染した人と比べ、一定期間たってからも咳や呼吸困難、頭痛などで医療機関の受診に至るリスクが高いことが分かった。

●前週比、死者107人増

 国内感染者は17日、新たに12万9837人が確認された。前週の同じ曜日(10日)より5万5106人多かった。17日に発表された死者は計492人で、同じく107人多かった。

【1月18日】

●去年の外国人旅行者、前年の15倍以上も感染拡大前の約12%

 政府観光局は18日、昨年12月の訪日外国人客が137万人だったと発表した。11月(93万4500人)の約1.5倍となり、2020年2月以来、2年10カ月ぶりに100万人を超えた。去年1年間に日本を訪れた外国人旅行者は推計で383万人余りと、前の年の24万人余りと比べて15倍以上増えた。政府による新型コロナの水際対策の緩和が、本格的に始まった9月から12月の旅行者数が全体の8割近くを占めている。

 国や地域別では韓国が最も多く、101万人余りと全体の3割近く。次いで台湾が33万人余り、米国が32万人余り。ただ、感染拡大前の2019年は全体の3割を占めていた中国からの旅行者はおよそ18万人と少なく、全体の外国人旅行者数も感染拡大前のおよそ12%の水準にとどまっている。

●高齢者施設のクラスターなど減少傾向も依然多い

 厚労省によると、今月15日までの6日間に全国で確認された「高齢者福祉施設」でのクラスターは合わせて712件。前の週の今月9日までの6日間より10件少なく、過去最多となった去年12月25日までの週の954件をピークに減少傾向となっているものの、12月以降は700件を上回る水準が続いている。面会制限など厳しい対策が行われている介護の現場で、依然として逼迫した感染状況となっている。

●8波に加えインフルも流行期 薬不足が深刻な薬局も

 製造上の不正が発覚したジェネリックメーカーへの行政処分が相次ぎ、医薬品の供給不足が続いている。一方で、第8波に加えインフルが全国的に流行期に入り、解熱鎮痛薬やせき止めなどの需要が高まり、一部の医療機関や薬局では入手が難しくなっている。処方箋を受け付けている都内の薬局では、のどの痛み止めなどの薬不足が深刻になっていて、種類を変更したり2回に分けて薬を渡すなどの対応を続けている。

【1月19日】

●世界の旅行者、前年の約2倍に増加 コロナ拡大前比では63%

 UNWTO(国連世界観光機関)が17日発表した報告書によると、去年1年間に旅行で外国を訪れた人の数は世界全体で9億1700万人となり、前年のおよそ2倍に増えた。2019年に比べて63%。地域別に見てみると、万博やサッカーワールドカップなどの大型のイベントが行われた中東は83%、ヨーロッパで80%、アフリカと南北米国は、それぞれ65%になった。一方、アジア太平洋地域は23%にとどまる。

 報告書では、中国の「ゼロコロナ」政策が終了したことによって、アジア地域は今後、短期的には中国からの旅行者が増えるとしている。また今年、旅行で外国を訪れる人は世界全体で、感染が拡大する前の80%~95%の水準に回復すると予測している。

国内感染426人死亡

 国内感染者は19日、新たに9万5979人が確認された。前週の同じ曜日(12日)より8万7257人減った。死者は426人だった。都道府県別で新規感染者が最も多かったのは東京都の7719人で、愛知県の6378人、大阪府の6237人と続いた。

 1月19日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【1月20日】

●新型コロナ、原則今春に「5類」移行検討 岸田首相が指示

 岸田首相は、20日、首相官邸で、加藤厚労相、後藤コロナ対策担当相と会談した。新型コロナが感染症法で行動制限などの厳しい措置がとれる「2類相当」に位置づけられていることについて感染者数の減少も踏まえ、今後の対応を協議した。そして、首相は、新型コロナの位置づけを、原則としてことしの春に、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方向で検討を進めるよう、加藤厚労相らに指示した。

 これを受けて厚労省の感染症部会で、移行に向けた具体的な議論が行われる見通し。「5類」への移行により、一般の医療機関でも患者の受け入れが可能になり、感染者や濃厚接触者の待機などの行動制限もなくなることから、政府は、医療提供体制や医療費の公費負担のあり方を議論する考え。また、屋内でのマスク着用の扱いも含めた感染対策や、今後のワクチン接種のあり方などについても検討していく方針。

【1月21日】

●オミクロン株「XBB.1.5」 コロナ感染者の約半数 米CDC推計

 米国CDC(疾病対策センター)は、21日までの1週間に49.1%がオミクロン株「XBB.1.5」に感染していると推計を発表。前週の37.2%と比べるとおよそ12ポイントの増加、拡大が続いている。米国では、1月17日時点で新型コロナに感染して新たに入院する患者の数が、一日平均およそ4800人と、前の週と比べ2割近く減少。一方、死者の数は1月18日時点で一日平均およそ570人と、前週に続き500人を上回っている。

 WHOは「XBB.1.5」について、免疫から逃れる性質はこれまでのオミクロン株に比べて強く、世界的な感染増加につながる可能性があるとした一方で、重症化しやすいかについては、まだ十分なデータはないとして、調査を続けている。

●いざ故郷へ、都会から続々 中国行動制限ない春節3年ぶり 農村部の感染警戒

 22日の春節(旧正月)を前に、中国では21日から約1週間の大型連休が始まった。8日にゼロコロナ政策を終了してから初めての春節。多くの人びとが家族との団らんのために帰省する見通し。ただ、コロナの拡大には引き続き警戒感が漂っている。

【1月22日】

●コロナ死者7.2万人 中国 ゼロコロナ緩和後 医療機関分

 中国疾病予防コントロールセンターは21日、1月13~19日の新型コロナに関連する「医療機関での死者数」が1万2658人だったと発表した。当局は昨年12月8日~1月12日に亡くなったコロナ関連の死者は5万9938人、合計で7万2千人を超えた。昨年12月7日に政府が「ゼロコロナ」政策の大幅な緩和に踏み切った後、中国では感染者が爆発的に増えた。当局は「医療機関で死亡した人」と限定しており、実態が明らかになっていないとの批判が出ている。

●中国の専門家「人口の約80%感染」 11億人余り感染か

 中国で新型コロナの感染データが発表されない状況が続くなか、中国疾病予防センターで首席専門家を務める呉尊友氏が21日、中国版ツイッター「ウェイボー」で「人口のおよそ80%がすでに感染した」という見解を明らかにした。具体的な根拠は示されていないが、人口14億のうち11億人余りが感染したことになる。

 一方、呉氏は旧正月の春節で大勢の人が移動し局地的に感染者が増えるかもしれないとしたものの「今後2、3か月の間に全国的に大規模なリバウンドや感染の第2波が起きる可能性は低い」という見方を示した。中国政府は「ゼロコロナ」政策を終了させたあと、感染者数などの情報について今月8日のデータを最後に発表をとりやめており、感染の詳しい実態はわかっていない。

●6万3846人が感染 前週比4万人超減

 国内感染者は22日、新たに6万3846人が確認された。前週の同じ曜日(15日)より4万3295人減った。全国で発表された死者は240人だった。都道府県別で新規感染者が最も多かったのは東京都の5110人で、大阪府の4244人、愛知県の4203人と続いた。死者の最多は大阪府の34人で、次いで東京都の31人だった。

【1月23日】

●オミクロン株対応ワクチン、 国内接種率40.1%

 政府が23日の公表によると、国内でオミクロン株対応のワクチンの接種を受けた人は5052万642人で、全人口に対する接種率は40.1%となった。このうち65歳以上の高齢者は、2456万4303人で接種率は68.4%。一方、従来ワクチンやオミクロン株対応ワクチンでこれまでに接種を受けた人は、1回目では全人口の81.4%、2回目80.4%、3回目68%、4回目44%、5回目21%となっている。

 また、5歳から11歳の子どもを対象にした従来のワクチンの接種のうち、去年9月から始まった3回目の接種を受けた人は59万3558人で、全体の8.1%。1回目を受けた人は全体の23.8%、2回目の接種を受けた人は全体の22.9%。このほか、去年10月から始まった生後6か月から4歳の乳幼児を対象にした従来のワクチンの接種で1回目の接種を受けた人は13万8783人で全体の3.1%、2回目の接種を受けた人は全体の2.1%。

●日本版CDC 名称は「国立健康危機管理研究機構」 法案提出へ

 政府は、今後の感染症の蔓延に備え、基礎研究などを行う「国立感染研」と臨床医療を行う「国立国際医療研究センター」を統合し、米国のCDC(疾病対策センター)の日本版の設置を目指す。必要な法案の概要がまとまり、新たな組織名は「国立健康危機管理研究機構」とする。機構は感染症に対する全国的な検査体制を確保し、調査・研究・技術開発とともに総合的な医療の提供や人材の養成などを業務とし、設置時期は2025年度以降、政府が全額出資の特殊法人。

 このほか、感染症対策の司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁」を来年度に内閣官房に設置し、トップは官房副長官が務める。さらに、緊急事態宣言などが出された時に限られている首相から知事らへの「指示権」について、政府対策本部設置の段階で使えるとし、迅速な対応をできるようにする。政府は、こうした法案を通常国会に提出することにしている。

●マスク着用緩和 慎重意見相次ぐ コロナ「5類」 感染症部会

 新型コロナを今春、感染症法上の「5類」に引き下げる政府方針について、厚労省は23日、感染症や医療、行政、法律の専門家らで構成する「感染症部会」を開いた。5類移行におおむね異論は出なかったが、マスク着用の緩和には慎重な意見が相次いだ。27日の部会で、移行を了承するか判断する。政府は4~5月に5類へ移行する方向で医療団体や自治体などと調整中で、1月中にも移行の時期を決める。

●コロナ対策緩和、賛成58% 世論調査 60代以上は反対多数

 21、22日に実施した朝日新聞の世論調査で、政府が今春、新型コロナの感染対策をインフルエンザ並みに緩和する考えの賛否を尋ねたところ、年代差がみられた。全体では「賛成」58%、「反対」37%。年代別では、30代以下では賛成が8割近く、反対は2割程度だった。一方、60代以上では賛成は4割前後で、反対が5割を占めた。

 政府が今春、屋内でのマスク着用を原則不要とする考えについて、春以降で屋内でマスクを着けないが「増える」は24%にとどまり、「変わらない」は74%を占めた。年代差はほとんどなかった。政府のコロナ対応について「評価する」は58%(前回12月調査は55%)とわずかに増えた。「評価しない」は38%(同41%)だった。コロナ対策の緩和に賛成の人は「評価する」が63%で、反対は52%だった。

●休校時助成金、3月で終了 4月から別制度

 厚労省は23日、コロナ禍で子どもが学校や幼稚園を休んだ際に保護者を支援する「小学校休業等対応助成金」を、3月末で終了することを決めた。4月からは対象を絞り、別の制度で助成する。これまでの助成金は、子どもが通う学校や幼稚園が休校・休園した場合や、子ども自身が感染して休んだ際、有給休暇をとった保護者の賃金相当額を企業に1日あたり最大8355円支給してきた。

 4月からの「両立支援等助成金」は、企業がテレワークや短時間勤務、フレックスタイムなどを設けることを条件としたうえで、保護者が休んだ場合に助成する。支給額は日数にかかわらず、1人あたり10万円に変更する。

【1月24日】

●自民コロナ対策本部 「5類」移行でも公費負担継続意見相次ぐ

 24日午後開かれた自民党の新型コロナ対策本部で、山際本部長(前経済再生担当相)は「5類にどのように移行させていくのか、医療提供体制や公費負担の在り方、マスクの取り扱いなど課題は山積み。政府と連携して前に進めていきたい」とあいさつした。出席議員は、5類移行へ賛同する意見が多く出された。一方で、検査や入院などに対する公費負担を継続するよう求める意見が相次いだ。

 全国知事会は、新型コロナ対策本部の会合を開き、ことしの春に5類に移行する方向で検討するとした政府の方針を評価することで一致した。そのうえで、円滑な移行に向けて、国と地方の協議の場を設けることや、財政措置も含めた支援を政府に求めていくことを確認した。

●搬送困難、各地で多発 第8波 拒否32回 227分待機も

 総務省消防庁によると、救急患者の搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」は全国主要52消防本部で、16~22日の1週間に5998件あった。4週連続で過去最多を更新した前週(8161件)より大幅に減少したが、昨年の同じ時期に比べると18%多く、依然高水準。第8波に加え、日常の経済活動が戻りつつあることで、コロナ以外の搬送要請も増えているため。休憩もままならない救急現場では、事故への危機感も高まっている。

●東京都、7306人感染確認 26人死亡

 東京都は24日、新型コロナ感染者を新たに7306人確認したと発表した。前週の同じ曜日より3814人少ない。40~90代の26人の死亡も発表。24日までの週平均の感染者は6458.4人で、前週の59.5%。新規感染者の年代は30代の1151人が最多、65歳以上は999人だった。発表人数以外に、医師の陽性判定を受けていない感染者も少なくないとみられる。病床使用率は43.5%。都基準の重症者は前日から2人減って34人。

 1月24日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【1月25日】

●「コロナ減少傾向、インフルエンザ同時流行に注意」 専門家組織

 厚労省の専門組織の家会合が25日に開かれ、現在の感染状況について全国では減少傾向が続き、今後も全国的に減少傾向が続くことが見込まれると分析。病床使用率は低下傾向で、救急搬送が困難なケースも減少しているものの、非常に多い地域もある。そして、亡くなる人の数は高い水準の中で減少傾向となっている一方、感染者のうち80代以上が占める割合が去年夏の第7波より多い傾向が続いていて、引き続き注意が必要だと指摘した。

 さらにより免疫を逃れやすいとされるオミクロン株の「BQ.1」系統の割合が国内でも増加しているほか、米国を中心に報告され国内でも検出されているオミクロン株の「XBB.1.5」など変異ウイルスの動向を監視し続けることが必要としている。一方で、全国で流行期に入った季節性インフルエンザは今後も増加が続くと見込まれ、新型コロナとインフルの同時流行に注意が必要だと指摘した。

●脇田座長「減少は一過性の集団的免疫か」

 専門家会合のあとの記者会見で脇田座長は、現在の感染減少の理由について「会合の中では、第7波の減少と同じように一過性の集団的な免疫が一定程度ついたことで一旦収束の方向に向かっているのではないかという説明があった。ただ、今後、海外で流行しているXBB系統など、免疫を逃れる能力が強い変異ウイルスに置き換わる可能性もあり、その動きによって今後の感染の動向が左右されると思う」と述べた。

●1週間の新規感染者数 前週比0.59倍 全都道府県で減少傾向

 厚労省の専門家会合で示された資料によると、24日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて0.59倍とすべての都道府県で減少傾向が続いている。首都圏の1都3県では東京都が0.59倍、神奈川県0.61倍、埼玉県0.62倍、千葉県0.63倍で、すべての都道府県でも前週と比べて減少している。

 人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、三重県が761.92人と全国で最も多く、次いで鳥取県702.56人、静岡県690.22人、広島県663.50人、和歌山県651.76人で、1000人を超える地域はなくなった。全国では445.11人。

●今後の身近な感染対策、「個人の選択へ」 専門家組織有志

 専門家組織の有志は、今後の身近な感染対策についての考え方をまとめ、25日の会合で示した。新型コロナ4年目となり、過剰ともいえる、有効性が疑問視される感染対策が見られ、社会経済活動や教育活動、子どもの生活の大きな制限になっている。一方でオミクロン株は感染が広がりやすく、今後も変異ウイルスの流行が繰り返される可能性があるという認識を示している。

 「政府の要請に基づく一律の対策から、個人や集団が流行状況やリスクに応じて主体的に選択して行うことになる」とする。また感染対策は、個人がそれぞれの価値判断で決めることとして、職場や集まりでは話し合いなどで合意が望ましく、対策を行うことや逆に対策をやめることが強要されないよう、個人の選択を尊重する配慮がされるべきとしている。さらに、病院や高齢者施設では、感染を持ち込まれないようにすることは引き続き重要だと指摘した。

●感染者が飲食 県が店名公表「正当」 徳島地裁、ラーメン店側の訴え、棄却

 徳島県は2020年7月、ラーメン店「王王軒(わんわんけん)本店」(徳島県藍住町)で飲食した客1人の感染が判明したとして、感染症法に基づいて店名を公表した。同店などの運営会社は「店名を公表され、店の信用が侵害された」などとして2021年2月、県に計1100万円の損害賠償を求めて提訴した。

 判決は、感染者はほぼ満席の店内でマスクをせずに会話をしていたとし、居合わせた不特定多数の客に注意を喚起するために店名を公表したことは、感染症法の趣旨に沿うと指摘。当時、県内での感染の連鎖を止め、収束を図ることが急務だったとし、公表の方法も相当だったとし、ラーメン店側の請求を棄却した。運営会社の近藤社長は「田舎の小さな飲食店にとって店名公表は残酷だ」と話し、控訴を検討するとした。

【1月26日】

●中国、感染ピーク超え強調 春節賑わい、農村部に懸念

 厳しい移動制限などを伴う「ゼロコロナ」政策が終わった中国では春節(旧正月)の連休中、多くの人たちが各地の観光地に足を運んだ。社会に解放感も広がるなか、中国政府は多くの地域で新型コロナ感染が「ピークアウト」したとのメッセージを送り始めている。中国の衛生当局は「(人口の)8割が新型コロナに感染した」としており、回復した人たちの間では「免疫ができたから、怖いものはない」との解放感も広がっている。

 そんななか、中国当局は事態が収束に向かいつつあると強調し始めた。衛生当局が25日に発表した統計では、PCR検査に基づく1日あたりの新規感染者は昨年12月22日の694万人をピークに、1月23日には1.5万人に減少。重症者もピークの12.8万人(1月5日)から3.6万人(同23日)、死者も4273人(同4日)から896人(同23日)に減ったという。ただ、PCR検査は義務ではなくなっており、数字は実態を反映していないとみられる。

●オミクロン株XBB系統の変異ウイルスに追加接種有効 米CDC分析

 米CDCは25日、感染が急拡大しているオミクロン株の「XBB.1.5」を含むXBB系統の変異ウイルスに対し最新のワクチンの追加接種で、発症を防ぐ一定の効果があるとする分析結果を公表した。

 従来型のワクチンを複数回、接種したあと、オミクロン株の「BA.5」に対応する成分を含むワクチンを追加接種した場合、追加接種しない場合と比べてXBB系統のウイルスによる発症を防ぐ効果は、18歳から49歳で49%、50歳から64歳で40%、65歳以上で43%となり、一定の効果がみられた。米国では去年9月から、「BA.5」対応ワクチンの追加接種が始まっていて、CDCは「可能な人は最新のワクチンの追加接種を受けるべきだ」としている。

●米FDA、コロナワクチン「原則年1回」提案 流行株に対応も想定

 新型コロナワクチンの今後の接種について、米食品医薬品局(FDA)は、原則年1回の接種とする方針を提案した。26日にある諮問委員会でこの提案が議論される見込み。FDAが23日に公表した文書によると、高齢者を除く健康な成人や、ワクチン接種を2回以上済ませた子どもたちは年1回の接種。高齢者や病気などで免疫が十分でない状況の人、2回未満の接種の子どもは年2回の接種とする案を挙げている。

 FDAは「接種する時期をわかりやすくし、どの変異株に対応するかを定期的に更新する必要がある」と指摘している。メディアは、このFDAの提案について、専門家の間でも見解が分かれていることを伝えている。「ややこしいワクチン接種方式によって、ワクチン接種を受けたがらない人たちが出てきている」として年1回接種を歓迎する声や、ワクチン接種後に時間とともに効果が薄れることから「年1回の接種を支持するデータはない」という主張もある。

●専門家ら「年1回接種に」コロナワクチン 4月移行も公費検討 厚労省部会

 新型コロナワクチンの今後の接種のあり方について、厚労省の専門家部会が26日、本格的な議論を始めた。オミクロン株ワクチンの2回目以降の接種の時期や間隔、対象などが焦点で、海外でも議論されている。この会合では、「年に1回ほどで接種するのが望ましい」などの意見が多かった。政府は現在、4月以降も接種費用を全額公費負担する方向で検討している。厚労省は次回の部会で接種対象や回数などをまとめ、来月以降、公費負担の延長を正式に決める方針。

 日本では昨年9月にオミクロン株ワクチンの1回目の接種が始まり、26日時点の接種率は65歳以上69.7%、全人口で40.8%。2回目以降の接種は定まっておらず、海外では年に1回接種する案などが出ている。この日の部会では、海外の動向や、ワクチンの重症化予防効果が半年程度はもつなどの理由から、年1回のほかにも、半年に1回の接種を求める声もあった。接種対象は、重症化リスクの高い高齢者などのほか、医療従事者も含むべきなどの意見があった。

●感染者数の発表、31万人漏れか

 新型コロナの感染者数について、厚労省は26日、昨年9月以降に発表していた65歳以上の感染者数に約31万4千人の漏れがあった可能性があると発表した。漏れがある疑いがあるのは、昨年9月26日~今年1月11日で、この期間の感染者の約3.2%。1日あたり約3千人程度だという。

 厚労省によると、昨年9月26日に全数把握を見直した後、医療機関は65歳以上などの重症化リスクの高い人の情報を書いた「発生届」と、すべての感染者の数だけを記した「日次報告」を両方報告する必要があった。日次報告は厚労省が発表する感染者数になっている。だが、一部の医療機関が65歳以上の感染者の発生届を出せば、日次報告は必要ないと誤解し、65歳以上の感染者の一部が発表数から漏れたという。

●新たに6万135人が感染 前週より3万5775人減る

 国内感染者は26日、新たに6万135人が確認された。前週の同じ曜日(19日)と比べ、3万5775人少なかった。新たな死者は316人だった。都道府県別の新規感染者が最も多かったのは東京都で、5061人。大阪府4012人、愛知県3947人と続いた。死者数は埼玉県が28人で最も多く、大阪府27人、東京都22人と続いた。

【1月27日】

●WHO コロナ「緊急事態」解除できるか検討

 2020年1月30日にWHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言してから、まもなく3年。27日、およそ3か月ぶりに各国の専門家や保健当局の担当者による委員会を開き、宣言の解除について、議論する。去年10月に開かれた委員会では変異ウイルスへの懸念が残っていたことなどから宣言の継続を決めている。WHOが宣言解除した場合、各国の感染対策の緩和などを後押しすることになるとみられ、委員会の議論の行方が注目される。

 新型コロナのデータをまとめているジョンズ・ホプキンス大学によると、1月26日時点で世界の累計感染者数はおよそ6億6900万人、およそ680万人が亡くなっている一方で、ワクチンの接種回数は132億回以上に上る。新型コロナは根絶できず、今後も繰り返し感染拡大が起きるとみられるが治療が進歩し重症化を防ぐ飲み薬も出てきていることから、感染した場合に重症化したり、亡くなったりする人の割合は下がっている。

●新型コロナ「5類」への移行、5月8日に 政府が方針決定

 政府は27日夕方、新型コロナ対策本部を開き、岸田首相は、「厚労省の審議会(感染症部会)の意見を踏まえ、特段の事情が生じないかぎり、5月8日から『5類感染症』とする方針を確認した」と述べた。暮らしや経済活動に大きな影響を与えた「コロナ禍」の政策は、3年あまりで大きく転換する。岸田首相は「ウィズコロナの取り組みをさらに進め、家庭、学校、職場、地域、あらゆる場面で日常を取り戻すことができるよう着実に歩みを進める」と述べた。

 患者が幅広い医療機関で受診できるよう医療提供体制を見直し、医療費は期限を区切って公費負担を継続していく。ワクチンは、必要な接種であれば引き続き自己負担なく受けられる。マスクは、屋内・屋外を問わず、着用を個人の判断に委ねることを基本にするよう見直すとし、具体的な見直し時期を検討。一方、大声を伴うイベント参加人数の上限を撤廃し、感染対策を行えば定員の100%まで入場を可能にすることを決定し、直ちに運用を始める。

●5月8日移行に決まるまでの経緯

 岸田首相が先週20日、この春に新型コロナを「5類」に移行する方向で検討を進めるよう指示したことを受け、政府内では厚労省が中心となり、自治体から話を聞くなどして、移行時期の検討が進められた。そして「5類」に移行した場合に、新たに入院患者を受け入れる医療機関で、感染防止対策を講じる必要があることから、移行までには一定の準備期間が必要だとして、大型連休前後の4月下旬から5月上旬に絞り込んだ。

 その後、人の往来が増える大型連休前に移行すれば、感染拡大のおそれがあり、連休明けにという意見が上がる一方、5月19日からは首相の地元の広島でG7サミットが始まる。自民党内に「記念撮影のときマスク姿では世界に笑われる」との声もあり、厚労省はそれまでの移行をめざした。そして26日夕方、首相は厚労相らと詰めの協議を行い、最終的には感染対策に万全を期すべきという首相判断で、連休明けの5月8日に決まった。

●5類移行 尾身会長「コロナは変化し続けていて、慎重さが必要」

 政府の分科会の尾身会長は、27日夜の記者会見で、「5類」移行の政府方針について、分科会では全員が賛成したとしたうえで「かなり多くの出席者から、新型コロナは変化し続けていて、慎重さが必要だという意見が出た」と述べた。「病原性が大きく強まる変異が起きたり、医療逼迫が起きてしまう事態が起きてしまったりした場合は、対応を見直すことは当然必要。危機管理として最悪の場合に即応できる体制を取っておくことが重要」と指摘した。

 そして、今後の感染対策について「いままでは国や自治体からの一律の要請に応える形だったが、これからは個人や集団がリスクに応じて主体的に選択するということに満場一致だった」と述べで、重症化しやすい人や健康でも感染したくない人、それに高齢者や小さな子どもへの教育上の配慮が必要で、たとえば体調不良の人が気楽に会社などを休める環境作りなど、対策を個人のみの責任にしないことが大事だということについても全員が合意したと説明した。

●専門家「行政の支援、しばらく継続の必要」

 政府分科会メンバーで東邦大学の舘田教授は「いきなり5類へ移行すると現場は混乱し、医療が必要な患者がしわ寄せを受ける可能性もあり、段階的に進めていくことが必要。例えば、治療費やワクチンの公費負担、これまでコロナ患者を診療してこなかった医療機関への対応など、行政や医師会などが連携して、混乱がなく進めていく必要がある」と指摘した。

 そのうえで「類型が見直されても一定の割合で重症の患者は発生し、リスクが高い人たちを受け入れている高齢者施設は、これまでと同じように感染対策を徹底しなければならず、その負担はこれまでと変わらず重いということを認識することが最も大事。クラスターが発生した場合も含めて、施設が医療機関の支援をすぐに受けられるように、行政による支援をしばらく継続する必要がある」と話した。

●専門家「国のセーフティーネットなくなる」

 新型コロナが「5類」に移行で、適切な医療は提供されるのか。課題も多く、準備が急がれる。コロナ患者を一般の医療機関で外来や入院ができるようになる。だが、院内感染リスクが怖い、スタッフ不足などの理由から、コロナを診てこなかった医療機関も少なくない。さらに、コロナ対応の医療機関には診療報酬の加算や確保病床には補助もあったが、今後はなくなることも想定される。「コロナ患者を診る医療機関が減ってしまう」との心配の声も上がる。

 入院調整は保健所が担ってきたが、今後は医療機関同士で行うことになり入院先がみつからなかったり、自宅で病状を悪化する恐れも指摘される。介護度が高い高齢患者を受けた臨時医療施設や、高齢者施設のクラスターを防ぐ一斉検査などの継続を望む声は多い。在宅患者への訪問診療やオンライン診療を拡大する必要もある。大阪大の忽那(くつな)教授は「5類への移行は、国が守ってくれたセーフティーネットがなくなることを意味する」と話す。

●業界のガイドラインの見直し検討も

 政府の今後の方針を踏まえて、小売業界や外食チェーンの団体からは業界としての感染対策のガイドラインの見直しが必要になるという意見が出ている。鉄道各社や国土交通省などでつくる「鉄道連絡会」は、鉄道車内などの感染対策の見直しを検討する。航空会社や空港事業者の団体は、機内や空港での感染対策の見直しを検討することにしている。都内のデパートでは化粧品の売り上げがコロナ禍で落ち込んだことから今後、売り上げの回復につながればと話している。

●2022年入国者、前年比12倍に 入管庁発表 水際緩和で急増 420万人

 出入国在留管理庁は27日、2022年に日本に入国した外国人は、2021年の11.9倍の約420万人だったと発表した。過去最多だった2019年の約3119万人には遠く及ばないが、水際対策が大幅に緩和された昨年10月以降に急増している。2022年の外国人の新規入国者は、段階的な水際対策の緩和に伴って増えた。1~2月はそれぞれ1万人に満たなかったが、3~9月は約5万~約15万人。10月に海外からの個人旅行が可能になり、12月は約133万人に上った。

●新たに5万3864人が感染、前週より減 死者344人 

 国内感染者は27日、新たに5万3864人が確認された。前週の同じ曜日(20日)と比べ、2万8317人少なかった。全国で発表された死者は344人だった。都道府県別の新規感染者が最も多かったのは東京都の4297人で、大阪府3583人、愛知県3529人と続いた。死者数は大阪府が29人で最も多く、福岡県の26人、東京都の25人と続いた。

【1月28日】

●米CDC最新推計 オミクロン株「XBB.1.5」、新規感染者の約6割に

 米国で急速に広がっている「XBB.1.5」について、米CDCは今月28日までの1週間に新型コロナに新規感染者のうち61.3%が「XBB.1.5」に感染しているとの推計を発表した。前週の49.5%と比べると10ポイント以上の増加。先月以降、米国での拡大が続く。米国で新たに報告された感染者の数は、今月25日の時点で1日平均およそ4万2000人と、3週連続で減少傾向を示しているが、検査キットを使って自分で調べたケースは含まれていない。

 一方、新たに入院する患者の数は、今月24日の時点で1日平均およそ4200人と前の週と比べ1割ほど減少し、死者の数は今月25日の時点で1日平均およそ540人と2週連続、減少傾向を示している。「XBB.1.5」についてCDCは、最新の2価ワクチンを追加接種することで、発症を防ぐ一定の効果があると分析していて可能な人は接種するよう呼びかけている。

●中国のコロナ死者、1週間で6300人余 12月上旬から計8万人近くに

 中国疾病予防センターは28日、1月20日から26日までの1週間で6364人が新型コロナに感染して国内の医療機関で死亡したと発表した。このうち、呼吸不全で死亡したのは289人、基礎疾患との合併症で死亡したのは6075人。死者数が1万2000人を超えた前の週と比べると、半数ほどに減った。12月8日から1月26日までの1か月余りの死者数は、合わせて7万8960人。自宅で死亡した人は含まれておらず、実際にはもっと多いという指摘も出ている。

●中国、春節の連休中の旅行者大幅増 「コロナ前の9割近くに回復」

 中国政府は、春節にあわせた今月21日から27日までの7日間の大型連休で、国内の旅行者数がのべ3億800万人と、去年より23%増加したと発表した。新型コロナの感染拡大以前の4年前と比べると9割近い水準まで回復したとしている。ことしは「ゼロコロナ」政策が終了してから初めての春節で、観光地はにぎわいを取り戻したものの、農村部への感染拡大や新たな変異ウイルスの出現などが懸念されている。

 一方、国営の新華社通信は、中国から海外への出国者数が、今月21日から26日までの6日間にのべ119万2000人となり、去年のおよそ2倍になったと伝えた。ただ、中国政府は日本への観光旅行を制限するとともに、両国を結ぶ航空便が感染拡大前と比べて大幅に減少していることから、中国から日本への旅行客は低迷した状況が続いている。

●東京都、25人死亡 4515人感染確認 前週比2092人減

 厚労省は28日、都内で新たに4515人が新型コロナ感染していることを確認したと発表。1週間前の土曜日より2092人減った。前週の同じ曜日を下回るのは11日連続。また、人工呼吸器かECMO(人工心肺装置)を使っている重症の患者は27日より2人増えて33人。一方、感染が確認された25人が死亡した。

 1月28日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【1月29日】

●今月感染死1万人超

 新型コロナに感染し、国内で亡くなった人は29日、191人確認された。1月に亡くなった人は計1万314人で、1カ月の死者数としては初めて1万人を超え、死者数が急激に増えている。国内感染者は、新たに4万4296人が確認された。前週の同じ曜日(22日)よりも1万9553人少なかった。29日の新規感染者が最も多かったのは東京都で3427人。次いで大阪府2903人、愛知県2712人だった。

【1月30日】

●WHO、新型コロナ「国際的緊急事態」の宣言を継続

 WHOは30日、新型コロナの感染拡大を受け「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言について、継続すると発表した。WHOは今月27日、各国の専門家による委員会を開き、2020年1月末に出した宣言を解除できるかどうか検討した。委員会では、今なお死者数が多いことや、発展途上国でワクチン接種が不十分なことなどを懸念する意見が表明されたという。

 さらに、現在感染を広げているオミクロン株の変異ウイルスについては「これまでの変異ウイルスと比べると重症化につながっていない傾向が見られるが、予測不可能な特徴を持つ新たな変異ウイルスに進化する能力を保持している」と指摘し、入院患者数と死者数の報告を続けることなどが必要としている。WHOは各国に対し、ワクチンの追加接種を進めることや、変異ウイルスへの警戒を続け、詳しい感染データをWHOに提供するよう呼びかけている。

●新型コロナ、世界の死者は680万人以上に 警戒と緩和の模索続く

 米ジョンズ・ホプキンス大学のまとめでは、世界全体で新型コロナ感染が確認された人は6億7000万人以上、死者は680万人以上。オミクロン株が世界各地で広がった去年1月ごろには、1日あたりの新規感染者数が200万人を超えた。その後、世界全体では感染者数や死者数の報告は減っているが、多くの国で感染者数の確認が厳密に行われなくなり、実態の把握が困難になっている。

 こうした中、新たな変異ウイルスの出現を把握する監視力が弱まっているという課題も指摘されている。どのように感染対策の緩和を進めるか、各国が模索するなか、WHOのテドロス事務局長は、今月24日の会見で、「私たちはパンデミックが発生した3年前よりも明らかによい状態にあるが、国際社会における対応は再び緊張にさらされている」と述べ、改めて注意を呼びかけた。

【1月31日】

●コロナ非常事態 米、5月に解除 ワクチンや薬、自己負担も

 米国CDCによると、新型コロナ感染で新たに入院する患者の数は、1月28日の時点で一日平均およそ3600人にまで減少。死者の数も、1月25日の時点で一日平均およそ540人となっている。バイデン米政権は1月30日、公衆衛生上の緊急事態宣言と国家非常事態宣言を5月11日で解除すると発表した。ワクチンや検査などに費用が発生するケースが増え、特に医療保険に入っていない人には大きな影響が出そう。

 これまで連邦政府はワクチンや治療薬などを一括買い上げ、各地に配ってきた。約8割の米国人がワクチンを少なくとも1回接種している。多額の財政支出を懸念する野党共和党は、宣言をすぐに解除するための法案を提出していた。ワクチンや検査キット、治療薬は現在、医療保険がない人でも無料だが、今後は自己負担になるケースが出てくる。ファイザー社は自社のワクチン接種は、1回当たり130ドル(約1万7千円)としている。

●都、「5類」移行で医療提供体制の段階的移行など確認

 5月8日に「5類」に移行されることを受け、都は31日に対策本部会議を開いた。必要な保健や医療提供体制を継続しながら段階的に5類の対応へ移行することや、感染が再拡大した場合には、機動的に対応できる体制を維持しておくことを確認した。国に対しては、外来の診療報酬の加算を残すことや、妊婦や重症患者などのための病床の確保、それに治療薬や入院医療費の公費負担の継続など、段階的な移行のために必要な財源の確保について要望していくことなどを確認した。

●246人死亡 5万7264人感染 福島県で死者138人修正増

 厚労省が31日発表の新規感染者は、空港の検疫などを含め5万7264人。都道府県別の最多は東京都の4862人。亡くなった人は、千葉県で24人、長野県21人、東京都20人など、合わせて246人。また、人工呼吸器やECMOをつけたり集中治療室などで治療を受けたりしている重症者は、31日時点で508人、30日と比べて23人減った。

 福島県はこの日、死者数が2022年7月以降、これまでの公表分より計138人多かったと発表し、31日時点の県内死者数の累計は712人に修正した。各保健所に管内の死者数を改めて確認したところ、県が未把握の死者が138人いることが発覚した。

 以下6枚の図は1月31日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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2023年2月 2日 (木)

古墳群と足袋蔵のまち行田

 2023年1年22日(日)、古墳群と足袋蔵のまち行田市の名所をめぐる。

 

 行田市は、埼玉県の北部に位置する人口約8万人の都市。足袋産地(行田足袋)として知られ、「和装文化の足元を支え続ける足袋蔵のまち行田」が「日本遺産」に認定されている。全国有数の大型古墳群である「埼玉(さきたま)古墳群」は国の特別史跡に指定されている。

 

 集合場所を出発する頃は零下1℃。この日の天気は晴れ、最高気温は9℃と10℃に満たないが、風がないので比較的温かい。8:55、埼玉県行田市大字埼玉(さきたま)の「さきたま古墳公園」駐車場に到着。

 

■さきたま史跡の博物館

 9:05、国宝「金錯鉄剣」のある県立「さきたま史跡の博物館」に入館。観覧料200円。

 国宝展示室と企画展示室「ほるたま展『埴輪男子』」を見学。

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  展示室中央に展示されている国宝「金錯銘(きんさくめい)鉄剣」を鑑賞。近づいての撮影は禁止。右の写真は「行田市郷土博物館」観覧券を転載。

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 鉄剣が発見された「稲荷山古墳」の埋葬施設(木棺)の想定図。

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 発掘によって「稲荷山古墳」の埋葬施設から出土したヒスイの勾玉や鏡などの副葬品も、すべて一括で国宝に指定されている。

 企画展示室「ほるたま展『埴輪男子』」に展示された「被りものをする男子」。

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 10:05 博物館を出て、幸手市から移築したという江戸時代末期の稲作農家の建物「遠藤家住宅」を見学(写真省略)。

■埼玉(さきたま)古墳群

 古墳群のエリアに歩いて向かう途中にある「埼玉県名発祥の碑」。この地、行田市大字埼玉(さきたま)が、埼玉県名発祥の地とされている。

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 「埼玉」が県の名称とされたのは、当初の県の管理区域の中で、最も広いのが、埼玉郡であったことによると、説明板に記されている。「埼玉古墳群」に接する「浅間塚」と呼ばれる古墳上に「前玉神社」が、建てられているそうだ。「前玉(さきたま)」が転じて「埼玉(さきたま)」へと漢字が変化し、現在の「埼玉県」になったと云われている。

 「将軍山古墳」へ向かう。墳丘へは、立ち入り禁止。

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 10:25、「将軍山古墳展示館」に入館。実物の横穴式石室を建物の中から見学できる我が国初の施設。埋葬された人物、副葬品等が展示されている。

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 「将軍山古墳」は、1894年(明治27)地元の人々により発掘され。横穴式の石室を発見した。官庁の許可を得て発掘を進めた結果、縦1.5m、横0.8m、厚さ30cmの秩父青石(緑泥片岩)の天井板、側壁は房総半島の富津市付近で産出される房州石が用いられていた。また多数の馬具や武器、武具、須恵器などが出土したという。古墳の全長は90m、高さ8m(推定)。

 騎馬武者を再現。

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 横穴式石室の実物大のレプリカ。

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 10:45、鉄剣が発見された「稲荷山古墳」に登る。写真は、ウィキメディア・コモンズ

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 「稲荷山古墳」は、埼玉県第2位の規模の大型前方後円墳。全長120m、高さ10m。国の特別史跡に指定され、帯金具、まが玉、鏡等多数の出土品は「国宝」に指定されている。金錯銘を有する鉄剣(稲荷山古墳出土鉄剣)が発見されたことで知られる。造営年代は、古墳時代後期の5世紀後半と考えられ、さきたま古墳群中では最初に築造された。

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 鉄剣は1968年(昭和43)の発掘調査の際に出土し、10年後(昭和53年)の保存処理作業の折、X線撮影をしたところ、115文字の銘文を発見。1983年(昭和58)に国宝に指定された。

 「稲荷山古墳」からは、墳丘表面を覆っていた葺石や、円筒埴輪、人物埴輪などの埴輪類が出土しており、これらの出土遺物の型式から築造年代は6世紀の前半と考えられている。1985年(昭和60)~1987年にかけ墳頂部と墳丘東側を中心に整備が行われた。また、周濠の一部が復元されている。

 「稲荷山古墳」の墳頂から東の方角に見える「古代蓮の里」の展望塔。

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 「稲荷山古墳」から見る北の方角。左につならる「白根山」方面、右は「男体山」。

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 「稲荷山古墳」から見る日本最大級の「丸墓山古墳」。

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 11:10「丸墓山古墳」に登る。6世紀前半の国内最大級の円墳。全長105m、高さ17m。出土した埴輪から6世紀前半に造られたと考えられる。

 「丸墓山古墳」から見る北北西の方角に「赤城山」。

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 「丸墓山古墳」から見る北西の方角に「浅間山」、右手前に「忍城趾」が見える。

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 丸墓山古墳から西の方角に「両神山」。

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 1590年(天正18年)小田原征伐に際して、秀吉から忍(おし)城攻略の命を受けた石田三成がこの「丸墓山古墳」の頂上に陣を張った。三成は忍城を水攻めにするため、「丸墓山」を含む半円形の「石田堤」を28 kmほど築いたという。「丸墓山古墳」から南にまっすぐ伸びている道路は、この堤の名残だそうだ。

 なお、埼玉古墳群の中には、武蔵国で最も大きな前方後円墳の「二子山古墳」(全長132m、高さ14m)がある。造られた時期は6世紀前半とされる。

 11:35「さきたま古墳公園」駐車場を出て、「行田市バスターミナル観光案内所」に立ち寄り、12:00「忍城趾・行田市郷土博物館」駐車場に車を駐める。

 

■ゼリーフライ

 駐車場から歩いて県道128号線を横断、「忍東照宮」の西側にある行田名物「ゼリーフライ」の旗が立つ食事処「かねつき堂」に入る。

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 行田のB級グルメ「ゼリーフライ」は、”おからコロッケ”。おからに小麦粉を加え、つぶしたジャガイモのほかタマネギやニンジンなどの刻み野菜を混ぜあわたタネを小判の形に整えて揚げ、ウースターソースにくぐらせる。通常のコロッケと異なり小麦粉・卵・パン粉をつけない。

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 ゼリーフライは、2個セットで220円だが、1個だけ注文。ボリュームのある焼きそば(小) 400円と合わせて合計510円の昼食。

 形が小判(銭)の形をしていて、揚げものという意味で「銭フライ」が訛ったという。また別に、「フライ」という食べものもあるそうだ。溶いた小麦粉にネギや肉などを加え、卵をのせて焼いた薄焼きの”お好み焼き”。これらは、足袋屋の女工さん、家内工業の主婦、子どものおやつや軽食として食べられたという。

 12:30、「かねつき堂」を出て、「忍(おし)東照宮」(忍諏訪神社)で参拝。

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 「忍諏訪神社」は、後鳥羽天皇の建久(1190年頃)年間、忍一族が当郷へ居住した頃に創建されたとも、戦国時代の1491年(延徳3)成田親泰が忍城を構築した際に持田村鎮守諏訪社(持田諏訪神社)を遷座したとも伝えられる。その後、成田氏代々の崇敬があり、江戸時代の1639年(寛永16)城主となった阿部忠秋は城郭を修築、併せて1645年(正保2)本殿を造営、1672年(寛文12)拝殿を新たに建立した。

 1823年(文政6)、松平忠義は伊勢桑名から移封するに当たり、城内字下荒井の地へ「東照宮」を勧請したが、1873年(明治6)城郭取り壊しの際に城内各所にあった他の社もあわせて当社境内に遷座したという。

 

■忍(おし)城趾

 12:50、忍城趾駐車場に戻り、観光ガイドと合流。13:00 駐車場を出発。

 当時の「大手御門」は、忍城内の升形城門から大手橋を渡った先に南面して立っていた。

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 忍城趾のシンボル「御三階櫓」(御三重櫓)。

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 当時の「御三階櫓」は、現在の「水城公園」(当時は忍城の外堀の沼)付近に建っていたが、明治時代の忍城解体にともない破却されたという。現在の「御三階櫓」は、「行田市郷土博物館」の開館に合わせて昭和63年(1988年)、当時を模して鉄筋コンクリート構造により造られたというが、規模も位置も史実とは異なるという。一見して天守閣に見えるが、「行田市郷土博物館」とつながっていて、展示物および展望台となっている内部を見学できる。

 「忍城」は室町時代にあたる15世紀後半に成田氏により築城された城郭。戦国時代の終わりに豊臣秀吉の関東平定に際し、石田三成らによる近くを流れる利根川を利用した水攻めを受ける中、小田原城の降伏後に開城した。のことが、「忍の浮き城」という別名の由来となった。忍城の水攻めを描いた歴史小説『のぼうの城』(和田竜の作)は、2012年に映画化(野村萬斎主演)された。

 家康の関東入部後は、四男の松平忠吉が忍城に配置され、以後、忍藩10万石の政庁となった。1639年(寛永16年)に老中・阿部忠秋が入ると城の拡張整備が行われた。阿部氏の時代には「御三階櫓」が新たに建設されるなど、往事の縄張りは1702年(元禄15年)ごろに完成したと考えられている。

 1823年(文政6年)に阿部氏が白河に移り、桑名から松平忠堯(ただたか、奥平松平氏)が入った。忍城の城下町は、中山道の裏街道宿場町としての機能や、付近を流れる利根川の水運を利用した物流路としての機能を兼ね備えて繁栄。また江戸時代後期からは、足袋の産地として名をはせるようになる。

 

■足袋蔵(たびくら)のまち

 ガイドの案内で「足袋蔵のまち」をめぐる。

 「足袋蔵」は、足袋産業にかかわる蔵造りの建物。古くはおもに足袋の保管庫であった。江戸時代から1957年昭和32年)にかけて建築され、土蔵だけでなく、石蔵、煉瓦蔵、木蔵、コンクリート蔵、モルタル蔵など、年代により様々な建築技術による多種多様な蔵が、行田の町に点在している。

 13:15、「足袋とくらしの博物館」着。ここは「力弥たび」の商標を用いた「牧野本店」の元工場。大正11年に建設された洋風の工場建物。現在は、かつての職人たちが裁断機やミシンを動かし、足袋づくりを実演している様子の見学できる博物館。入館料200円。

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 2005年10月オープン。足袋を作っている現場を見学。

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 13:35「足袋とくらしの博物館」を出て、さらに「足袋蔵のまち」を散策。

 「牧野本店」の店蔵と主屋は1924年(大正13年)棟上、土蔵は1899年(明治32年)棟上の蔵と建築年代不明のものの2棟が現存し、足袋工場は1922年(大正11年)の棟上。 写真は、「牧野本店」の店蔵で工場につながっている。

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 「時田蔵」は、1903年(明治36年)建築と大正初期建築の2棟の土蔵。奥にも土蔵が並んでいる。時田家が明治時代に建設。行田では珍しい袖蔵式で板張りの足袋蔵。

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 「忠次郎蔵」(国登録有形文化財)は、旧小川忠治郎商店の店舗及び主屋。足袋原料問屋の昭和初期の店蔵。1925年(大正14年)棟上の土蔵。現在、蔵を再活用した本格手打ち蕎麦の店。 

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 「牧禎舎」は、昭和初期の旧足袋・被服工場と事務所兼住宅を改装した施設。一日から借りられるレンタルスペースや、中長期的に利用出来るアーティストシェア工房があり、藍染体験工房が併設されているそうだ。

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 13:50「足袋蔵まちづくりミュージアム(栗代蔵)」に入館(無料)。「栗代(くりだい)蔵」は、1906年(明治39年)建築。

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 1階は案内所、2階は「栗代蔵」の歴史を展示(写真)。2009年2月オープン。

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 「保泉蔵」は、1916年(大正5年)建築の土蔵、1932年(昭和7年)棟上の石蔵、昭和戦前期建築のモルタル蔵。

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 「十万石ふくさや行田本店」(国登録有形文化財)は、銘菓「十万石饅頭」で知られる本店。1883年(明治16年)建設の行田を代表する店蔵。

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 「イサミコーポレーションスクール工場」は、1907年3月(明治40)にメーカー「イサミ足袋」として創業。

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 行田最大のノコギリ屋根の足袋工場。現在は、学校企業制服体操着足袋の製造を手がける。2017年のTVドラマ『陸王』(役所広司主演)でこの工場が、劇中で老舗足袋を扱う「こはぜ屋」の外観としてロケに使われた。

 

 「行田八幡神社」は、「封じの宮」と称され、子供の夜泣きやかんの虫を封じる「虫封じ」をはじめ、癌の病、諸病、難病や悪癖の封じ、お年寄りのぼけ封じ等の封じ祈願が秘法として継承されているそうだ。参拝客でにぎわっていた。

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 煉瓦作りの「大澤蔵」(登録有形文化財)は、1926年(大正15年)建築。煉瓦造の足袋蔵は行田市唯一。

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 「足袋蔵ギャラリー門」と「クチキ建築設計事務所」は、1916年(大正5年)建築。ギャラリーは足袋蔵を利用し、絵画展などを不定期で開催。敷地内にあるカフェは、初代行田市長の元住居を「カフェ閑居」として運営。「パン工房KURA」は1910年(明治43年)建築。2017年(平成29)4月にこれらの敷地内建物すべてが、日本遺産構成建物に認定されている。

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 「孝子蔵」は、1951年(昭和26年)棟上の石蔵(大谷石)。

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 升形城門跡、大手門跡などを見て、忍城趾に戻る。

 

■行田市郷土博物館

 観光ガイドと別れ、15:00~「行田市郷土博物館」に入館。観覧料200円。

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 「行田市郷土博物館」は、多くの実物資料が4つのテーマで展示されており、古代から現代にいたる行田の歴史と文化を学ぶことができる。残念ながら、ここの館内は撮影禁止だった。

  1. 古代の行田 ー行田で花開いた古墳文化
  2. 中世の行田 ー北武蔵の武将成田氏の居城
  3. 近世の行田 ー徳川家ゆかりの城郭と城主
  4. 足袋と行田 ー近代の行田を支えた足袋産業

 以下4枚の写真は、「行田市郷土博物館」パンフより転載。

Sakamaki_sekihaniwa

Musashi_oshijo

Tokugawa_ieyasu

Tabi_seizo_fukei

 15:50、忍城駐車場にもどり、解散。

 

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  ・古代蓮の里2017  2017/07/27投稿
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  ・古代蓮の里    2016/07/16投稿
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  ・映画「のぼうの城」2012/12/08投稿
    http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-7de4.html

 

 ★ ★ ★

 前から見たいと思っていた足袋工場の作業風景を見られたのは収穫だった。県立の「さきたま史跡の博物館」では、国宝の金錯銘鉄剣も実物を初めて見た。後で調べると、ケースの中は腐食が進まないように窒素ガスが封入されているという。「金錯」とは、初めて聞く言葉だが金象嵌(きんぞうがん)のこと。昔、新聞などでは「金象嵌」という用語を使っていたと思う。

 各地に郷土博物館があるが、この博物館も立派だった。だが撮影禁止とは残念だ。市内をけっこう歩いた。帰ってから久し振りの歩き疲れで、ぐったり。歩数計では1300歩以上だったので、89Kmほど歩いたことになる。

2023年1月16日 (月)

新型コロナ2023.01 死亡急増

 2023年1月15日で、新型コロナウイルス感染症の初確認から3年になる。「第8波」の新規感染者数は、年末年始に一時的に減ったあと、再び増加傾向が続いていて、特に中国・四国、九州などでは増加幅が大きく、季節性インフルエンザと新型コロナの同時流行が始まっている。死亡者数は、第7波のピークを越え、過去最多を超える急増状況が続いている。一方、中国では「ゼロコロナ」政策の極端な変更によって感染が爆発的に拡大し、各国は水際対策を強化している。

 2023年1月1日から15日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2022.12 中国急増」の続き。なお、感染者数・重症者数・死者数のデータは、厚労省の発表と都道府県などの発表とで異なる場合があり、特に死者数は厚労省のデータを採用しています。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

 

【1月1日】

●全国で8万6447人感染 空港検疫32人中28人が中国滞在歴

 国内感染者は1月1日、新たに8万6447人が確認された。前週の同じ曜日(12月25日)より6万2365人少なかった。新たに発表された死者は180人だった。都道府県別の新規感染者は東京都が9186人で最も多く、次いで大阪府6214人、神奈川県5514人で続いた。一方、空港検疫などで確認された感染者は32人。このうち28人が中国に滞在歴がある人だった。中国での感染拡大を受けて、日本政府は12月30日から水際対策の強化を始めている。

 1月1日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【1月2日】

●7万5885人感染 空港検疫で84人確認

 国内感染者は2日、新たに75885人が確認された。都道府県別では、東京都が7537人で最も多く、次いで神奈川県4987人、大阪府4980人、愛知県4252人。死者は全国で244人。死者が最も多かったのは東京都で24人、大阪府20人、神奈川県17人と続いた。空港検疫などで確認された感染者は84人で、うち82人が中国に滞在歴がある人だった。

【1月3日】

●中国 年末年始の国内旅行客、感染拡大前の4割余にとどまる

 中国政府は、31日から12日までの3連休に国内を旅行した人がのべ5271万人余りと、「ゼロコロナ」政策前の年の同じ時期に比べて0.4%増加したと発表した。しかし、新型コロナ以前の4年前の同じ時期と比べると4割余りにとどまり、依然として低い水準。今月21日からは旧正月の「春節」にあわせた7日間の大型連休が始まり、感染拡大で医療体制の逼迫が深刻になっている地方都市や農村部では、医療機関が薬の調達を急ぐなど対応に追われている。

●9万448人感染 コロナ209人死亡

 国内感染者は3日、新たに9448人が確認された。死亡が確認されたのは209人だった。都道府県別の最多は東京都の9628人。次いで大阪府6355人、愛知県4850人、神奈川県4828人と続いた。空港検疫などで確認されたのは26人で、全員が中国滞在歴あり。中国での感染拡大を受けて政府は昨年1230日から中国からの入国者に感染検査を実施しており、水際対策の強化が影響したとみられる。

【1月4日】

●政府 中国本土からの入国者の水際措置、8日からさらに強化へ

 中国の感染状況などを踏まえ、政府は臨時的な水際措置を今月8日からさらに強化することになった。具体的には中国本土からの入国者について、精度が高い「抗原定量検査」やPCR検査に切り替えるとともに、直行便での入国者に対し、出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明を求めるとしている。また、中国本土からの国際線を成田、羽田、関空、中部空港の4つに限定し、増便を行わないよう航空会社に要請する措置を継続する。

 中国外務省の毛報道官は、4日の記者会見で「政治化したり、差別的なやり方をしたりすべきではなく、正常な人的往来や交流と協力に影響を及ぼすこともすべきでない」と反発した。毛報道官は3日の会見でも、われわれは断固として反対を表明すると反発し、過度な水際措置をとった場合には対抗措置をとる考えを示していた。

【1月5日】

●香港政府 中国本土との往来制限、今月8日から緩和

 香港政府は、新型コロナ対策としておよそ3年にわたって続けてきた中国本土との往来の制限について、今月8日から隔離措置なしでの往来を7か所の境界で再開すると発表した。混乱を避けるため、一日の往来の人数を香港から本土へは6万人、本土から香港へは5万人に制限し、状況を見ながら再開する境界や往来の人数を増やしていくとしている。香港日本人商工会議所の伊藤事務局長は、物流の面でも制限の緩和が進むことに期待を示しました。

●インフルエンザ、全国的な流行期に コロナと同時流行懸念

 インフルの患者数は、先月25日までの1週間で全国で流行期入りの目安を超えた。全国的な流行期に入るのは、新型コロナ感染拡大が始まって以降、今シーズンが始めて。東京都内の小児科クリニックでは、発熱してもどちらに感染しているかわからないという保護者の声が聞かれた。コロナ禍以降インフルの流行がなく、免疫力が落ちているため徐々に感染者数が増えているうえ、このところ乾燥状況が続き、寒さも厳しい影響で、さらに感染しやすい状態になっているという。

 インフル流行期入り(先月25日までの1週間) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●感染12県で最多 正月明け 受診集中か

 新規感染者数は、5日で新たに23万1053人が確認され、西日本を中心に大分県、宮崎県、岐阜県、鹿児島県、群馬県、島根県、岡山県、山口県、佐賀県、熊本県、香川県、愛媛県の12県で過去最多を更新した。死者数は国内過去最多の498人、9県で過去最多だった。ただ、年末年始に多くの医療機関が休業していたため、報告や検査が休み明けに集中した影響が考えられる。都道府県別で感染者数の最多は東京都で2万735人。大阪府1万5772人、愛知県1万3174人と続いた。

 1月5日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 1月5日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【1月6日】

● 中国から日本に入国、陽性408人 年末年始水際対策、明日から強化

 新型コロナの感染が拡大する中国からの入国者について、厚労省は6日、昨年12月30日~今年1月5日の検査結果を公表した。4895人に検査し、408人が陽性だった(陽性率は8.3%)。中国では大規模な感染が続いているとされるが、政府は実態が分からなくなっているとみており、8日から水際対策を強化する。

●新型コロナ感染者の葬儀で新指針 最後の別れができるように

 新型コロナに感染して亡くなった人の葬儀などに関する国のガイドラインについて、厚労省と経産省はこれまでの制限を緩和する見直しを行い、6日に公表した。この見直しで、「納体袋」は必要ないとしているほか、触れたあとに適切に手洗いをすれば遺体に触れることができるとしている。厚労省は新たなガイドラインをホームページに掲載することにしている。加藤厚労相は6日の記者会見で「基本的にはコロナ以外で亡くなった人と同様の対応になる」と述べた。

●死者、最速ペースで6万人目前 正月明け、医療切迫

 新型コロナの感染拡大が止まらない。感染者数は6日、累計で3千万人を超えた。死者数も1カ月余りで1万人近く増え、過去最速のペースで6万人に迫る。専門家は「対策の緩和や気の緩みが影響している」と指摘する。地方での感染拡大も顕著で、医療現場も切迫してきている。死者の大半は高齢者。80代以上が約68%、70代が約20%、60代が約7%だった。

【1月7日】

●米でオミクロン株の1つ「XBB.1.5」、急速に拡大 感染力強いか

 米国CDC(疾病対策センター)はこのほど、今月7日までの1週間に新型コロナに新たに感染した人のうち推計で27.6%が「XBB.1.5」に感染したと発表した。ほかの変異ウイルスが先月下旬から減少する中、「XBB.1.5」は先月3日の時点の推計2.3%からこの1カ月で急速に広がり、中でも東部地域では全体の7割を超えている。ほかの変異ウイルスと比べ感染を広げる力はより強いとみられ、ワクチン接種など対策を続けるよう呼びかけている。

●オミクロン株「XBB」、免疫をすり抜ける力強い 東大など分析

 「XBB」というウイルスは、免疫をすり抜ける力が強い一方、症状を引き起こす力は高まっていないと見られるとする分析結果を東京大学などのグループが発表した。「XBB」は、「BA.2」系統の2種類が組み合わさった「組み換え体」と呼ばれるタイプのウイルス。米国では先月下旬からこの系統のウイルスが検出される割合が増加している。

【1月8日】

●中国 「ゼロコロナ」政策終了 入国後の隔離などの措置を撤廃

 中国政府は、8日から新型コロナの感染対策を大幅に見直し、入国後の隔離や患者の強制的な隔離などの措置を撤廃した。これにより、「ゼロコロナ」政策は終了する。ワクチン接種の推進や医療体制の充実などを通じてこれまでの「予防」から今後は「治療」に重点を置くとしている。一方、中国人の海外旅行については段階的に再開させていく方針だが、中国政府は国内の旅行会社に対して団体旅行の受け付けや旅行商品の販売を禁止したまま。今のところ解禁時期を示していない。

●中国の情報公開に不信感 各国、渡航者の検査厳格化

 中国が8日、入国時の隔離撤廃に踏み切り、中国からの出国が増えると予想される。日本政府は8日、中国本土から直行便で来日する渡航者に対し、出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明の提出を求める措置を始めた。昨年12月30日から入国時に検査をしていたが、より精度の高いPCR検査などに切り替えた。米国や欧州主要国などの主要7カ国(G7)はいずれも、こうした対策をとっている。背景にあるのは、情報公開に消極的な中国への不信感。

●ウルムチの数字重視 新華社 転換の背景説明

 中国国営新華社通信は8日、約3年にわたって続いた「ゼロコロナ」政策を急転換した背景記事を配信した。当時、中国ではロックダウンでも抑えられない地域が出ていた。拡大が深刻だった新疆ウイグル自治区ウルムチ市などで無症状や軽症が9割以上、重症は1%前後にとどまるとのデータも重視され、オミクロン株の抑え込みが限界に来て社会的コストが膨らんでいるとの認識に加え、経済への影響や社会不満の拡大を踏まえ、12月6日の党政治局会議で習近平国家主席ら判断したと強調した。

●専門家「実際にはすでに過去最大の感染状況か」

 新型コロナに感染して亡くなった人の数が連日過去最多となり、急増している。専門家は「全数把握は完全には行われておらず、実際にはすでに第7波のピークを超える過去最大の感染となっていて、高齢者の感染が多いことも死者数も過去最多となっている」と指摘。「増加傾向は今後も続くとみるべき」と述べた。また、米国ではオミクロン株の1つ「XBB.1.5」がこの1か月で急速に拡大や、中国「ゼロコロナ」政策終了など、日本などへの影響が懸念される。

●コロナ死者6万人超す

 新型コロナに感染し、国内で亡くなった人の累計(クルーズ船を含む)が8日、6万人を超えた。8日、新たに301人の死亡が確認され、6万206人となった。国内の死者数は2021年4月に1万人に達し、その後は1万人ごとに3~10カ月のペースで増えてきたが、5万人を超えた先月1日から1カ月余りで6万人に達した。8日の死者の都道府県別の最多は大阪府の29人で、東京都が28人、埼玉県が23人と続いた。宮崎県は11人で、過去最多を更新した。

【1月9日】

●中国 抗原検査キット工場 人員削減で大規模抗議 警察と衝突

 中国で「ゼロコロナ」政策が終了し新型コロナ検査が大幅に減るなか、中国内陸部の重慶にある検査キットを製造する工場で労働者が7日、人員削減などをめぐって大規模な抗議活動を行い警察と衝突する事態となった。中国では8日から感染者を把握するためのPCR検査や抗原検査は行われなくなった。検査は発熱の症状を訴える患者や医療関係者などに限定している。工場の業績の悪化が人員削減などにつながり、今回の抗議活動を招いたとみられる。

●全国で9万2724人が感染、死者は258人

 国内感染者は9日、新たに9万2724人が確認された。前週の同じ曜日(2日)より1万6810人多かった。死者は258人だった。都道府県別で新たな感染者が最も多かったのは東京都で8199人。9日までの週平均の感染者は、1万4941・4人で前週(1万4730・7人)の101・4%だった。神奈川県6755人、大阪府5661人、静岡県5404人と続いた。

 1月9日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【1月10日】

●中国 日本人向けビザ停止、水際対策強化に対抗か

 在日中国大使館は10日夜、日本人に対するビザの発給を同日から一時的に停止すると発表。再開の時期については、改めて通知するという。中国からの渡航者に対して、日本政府が水際対策を強めていることへの対抗措置とみられる。中国外務省の汪副報道局長は10日午後の定例会見で、「一部の国が中国に対し差別的な入国制限措置を取っている。中国は断固として反対し、対等な措置を取る」と述べた。日本と明言しなかったが、入国制限への対抗措置だとにじませた。

●新型コロナ・インフル同時感染 専門家「重症化しやすい」

 専門家はまれなケースとしながらも、仮にコロナとインフル同時感染した場合には重症化しやすいと指摘している。厚労省によると今月1日までの1週間に全国およそ5千か所の医療機関から報告されたインフル患者数は、前の週より3665人多い9768人。インフルは、1医療機関当たりの1週間の患者数が全国で1人を超えると「全国的な流行期」入りとされ、今回は2.05人で前週の1.24人より高くなり、引き続きこの目安を超えている。

 地域別では、沖縄県が9.89人と最も高く、次いで富山県5.96人、福岡県4.19人、大阪府3.73人、神奈川県3.70人、宮崎県3.29人などと30の都道府県で「1人」を上回っている。

●都医師会長「医療など厳しい状況、今からでもワクチン接種を」

 東京都医師会の尾崎会長は、10日の定例会見で、現在の感染状況について「年末年始の休みの影響があす以降に出てくると思うが、まだ油断できない。行動制限のない社会の一方で、医療や救急、介護の現場は非常に厳しい状況が続いている」と説明。感染者数を減らすための対策として、「予防の柱はワクチン接種。若い人をはじめ、打っていない人は今からでも遅くないので、少なくとも3回は接種してほしい」と訴えた。

●「全国旅行支援」再開 旅行代金割引率、20%に引き下げ

 去年10月にスタートし年末年始は外れていた「全国旅行支援」は、10日から再開された。旅行代金の割引率は、これまでの40%から20%に引き下げられる。割引を受けられる金額の上限も引き下げられ、宿泊と交通機関での移動がセットになった旅行商品は、1人1泊当たり5000円、日帰り旅行や宿泊施設のみの利用は3000円が上限。土産物店などで使えるクーポン券は、1人当たり平日は2000円分、休日は1000円分を受け取ることができる。3月までは実施できる見通し。

【1月11日】

●日本、撤回求める 中国、対抗と明言 ビザ発給停止、企業を懸念

 中国政府が日本人へのビザ発給を一時停止した措置を受け、松野官房長官は11日、外交ルートを通じて抗議し撤回を求めたことを明らかにした。だが、中国の国家移民管理局は11日、「中国人に対する差別的な入国制限」と指摘。中国国内でのトランジットの際に日本人に認めてきた72~144時間のビザ免除措置も停止すると追加措置を発表した。

 ビザ停止が長引けば、中国で事業展開する企業などに影響が出かねない。中国の措置に、国際社会や企業から懸念の声があがる。国連の報道官は10日、「旅客審査に関わる決定は科学的根拠に基づくことが重要」と述べ、中国の対応を疑問視した。

●専門家組織「死者数の過去最多続き今後も増加懸念」

 11日の専門家会合は、現在の感染状況について、全国では年末年始に一時的に減ったあと、再び増加傾向が続いていて、特に西日本では、増加の幅が大きくなっているとしている。死亡者数は、過去最多を超える状況が続き、高齢者施設や医療機関での集団感染も増加傾向にある。また病床使用率は、多くの地域で5割を超え、7割を超える地域もみられるほか、救急搬送が困難なケースも去年夏の第7波のピークを超えて、増加傾向が続いており、救急医療体制の確保に注意が必要だとした。

 今後も多くの地域で感染者数の増加傾向が続くと予測され、ワクチンの接種や感染から時間がたって免疫のレベルが下がることや、より免疫を逃れやすいとされるオミクロン株の「BQ.1」系統の割合が国内でも増加していること、それに、中国での感染拡大や、国内に流入した場合に、感染状況に与える影響にも注意が必要だと指摘した。さらに、季節性インフルも全国で流行期に入っていて、学校の再開後に新型コロナとインフル同時流行に注意が必要としている。

●1か月余りで死者1万人超 その背景は

 新型コロナに感染して亡くなった人の数は感染拡大の第8波で急増し、先月以降の1か月余りで全国で1万人を超えている。感染して亡くなった人は10日までで累計6万411人だが、およそ6分の1の人が1か月余りの間に亡くなったことになる。また、先月7日から今月3日までのおよそ1か月間に亡くなった人のうち、高齢者が圧倒的に多い。60代以上の占める割合はこれまでの累計では95.29%だったが、このおよそ1か月の間では97.24%となっている。

 また重症化した人の平均年齢は68.0歳、半数は73歳以上だが、亡くなった人の平均年齢は83.1歳、半数は86歳以上とさらに高齢となっていた。専門家会合では高齢者施設で感染が拡大することで、亡くなる高齢者が今後もより増加するのではないかと懸念が指摘されている。厚労省のまとめでは、先月27日までの8日間に全国で確認されたクラスターの数は1430件、このうち高齢者福祉施設でのクラスターは954件と全体の66%を占めて施設別で最も多くなっている。

●専門家「第7波を超えるような感染 見えなくなっている」

 先月以降、死亡者数が急増していることについて東京医科大学の濱田特任教授は、重症化する割合は以前より低くなっていても感染者数自体が多くなっている。「去年に比べて全数把握が行われなくなり、実際には第7波を超えるような感染が起きている状況が見えなくなっている。死亡者についてはある程度正確に把握できていて、死亡者数が過去最多の状況になっている」と指摘した。

 また高齢者で、コロナに感染することで血管障害が起き、心筋梗塞や脳梗塞が原因で亡くなる事が分っており、持病などが悪化して亡くなるケースが増えていること、高齢者のオミクロン株対応のワクチンの接種率が十分高くなっていないことがあるとしている。

●高齢者施設クラスター、第7波のピーク前後の水準 

 厚労省によると、9日までの6日間に全国で確認された「高齢者福祉施設」でのクラスターなどは合わせて722件。過去最多となった去年12月25日までの週の954件より200件余り減ったが、年末年始を挟んだ今月3日までの週は861件と第7波のピークだった8月の850件を上回っていて、面会制限など厳しい対策が行われている介護の現場で、依然として逼迫した感染状況が続いている。

●BCP研修に介護施設の応募殺到

 クラスターが起きた場合でも、介護サービスを止めないために施設内での感染症の流行を想定したBCP(業務継続計画)の策定が、来年の春からすべての介護施設で義務づけられた。現在は「努力義務」となっていて、すでに計画を作る施設がある一方、「どうすればいいかわからない」という施設も多く、国の調査では全体の4分の3の施設で策定できていないという。そこで、厚労省は12月からコロナ感染症のBCP策定について介護施設向けのオンライン研修を開いている。

●新規感染者数、すべての都道府県で前週より増加

 厚労省の専門家組織の会合で示された資料による、10日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.28倍と増加し、すべての都道府県で前の週より感染者数が増えている。首都圏の1都3県では東京都が1.13倍、神奈川県1.16倍、埼玉県1.23倍、千葉県1.26倍と増加している。西日本を中心に増加の幅が大きくなっていて、すべての都道府県で前の週と比べて増加している。

 人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、宮崎県が1897.76人と全国で最も多く、次いで、佐賀県1701.29人、山口県1541.06人、鳥取県1505.40人などと22の県で1000人を超えていて、そして全国では934.24人となっている。

●コロナ死者 初の500人超え

 国内感染者は11日、新たに20万3393人が確認された。死者は520人で、初めて500人を超え、過去最多となった。これまでの死者の最多は1月5日の498人。11日、死者数が最も多く確認されたのは福岡の45人。死者数が過去最多となったのは、山梨、静岡、三重、滋賀、愛媛、高知、福岡、大分、宮崎の9県。

 死者数の7日間平均は、昨年12月25日に293.1人を記録し、「第7波」ピークだった9月3日の293人を超えた。年末年始に一時減ったが、今年1月7日に333.1人、10日に376.9と過去最多を更新し続けている。

【1月12日】

●「XBB.1.5」米で急増 免疫から逃れる能力高く

 WHOは11日、米国で急速に増えている新型コロナの変異株「XBB.1.5」についてのリスク評価を発表した。比較的感染力が強く、感染力や既存の免疫から逃れる能力が高いとみられ、「世界の症例数増加の要因になるかもしれない」としている。XBB.1.5は、別々の系統のウイルスが組み合わさった「組み換え体」ウイルス。もとになった二つの系統は、オミクロン株「BA.2」から別々に派生したもの。WHOは、XBB.1.5そのものも、オミクロン株のひとつに含めている。

 米国では昨年末から、この変異株への感染者が急増した。米CDCによると、昨年12月10日までの1週間で、米国内での検出割合は4.3%ほどだったが、1月7日までの1週間では27.6%にまで増えた。WHOのリスク評価によると、ワクチン接種などでできた中和抗体が、XBB.1.5に対しては効きにくくなっている、という実験結果も報告されている。

 XBB.1.5初期調査の結果(WHO) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●都内 オミクロン株「BA.5」、割合減少 新たな変異ウイルスに警戒

 12日、東京都のモニタリング会議が都庁で開かれ、専門家は4段階のうち感染状況は上から2番目、医療提供体制は最も深刻なレベルを維持した。また、会議では去年1年間のゲノム解析の最新結果が報告された。それによると、9月には全体の98.4%を占めたオミクロン株「BA.5」の割合が、先月には60.6%にまで減少した一方、新たな変異ウイルスの割合が増えている。

 このうち、米国で急速に感染が広がっているオミクロン株の1つ「XBB.1.5」は、先月1日に初めて都内で確認されて以降、これまでに15例確認されている。専門家は「置き換わりが進む過程で、新規感染者数が急激に増えることに警戒が必要だ」と話している。

【1月13日】

●mRNAコロナワクチン 第一三共が承認を申請 国内の製薬会社で初

 第一三共は、開発を進めてきた新型コロナのmRNAワクチンについて13日、厚労省に承認申請を行ったと発表した。従来型コロナに対応した成分が含まれていて、18歳以上を対象に3回目の接種を想定している。国内の製薬会社が開発したワクチンの承認申請は、塩野義製薬の「組み換えたんぱく質ワクチン」に続いて2例目、ファイザーなどと同様のmRNAタイプの承認申請は初めて。第一三共は「オミクロン株に対応したワクチンの開発も引き続き進める」とコメントしている。

●都内大学病院コロナ病棟 看護師不足、第8波の感染で欠勤相次ぐ

 東京・板橋区にある日大医学部附属板橋病院は、中等症や重症の患者に対応していて、これまでの感染拡大の際には、ほかの病棟を一時的に閉鎖してコロナ対応に当たる看護師を確保し、コロナ病床を最大で60床確保してきた。今回の第8波では、スタッフの感染が相次ぎ、新型コロナの専門病棟で働く看護師が不足し、確保している病床の7割ほどしか入院患者を受け入れられない状況になっている。

【1月13日】

●感染者・死者数、更新止める 中国

 中国疾病予防コントロールセンターが、毎日公表していた新型コロナの新規感染者数と死者数について、今月9日を最後に情報更新を止めた。WHOは「死者数が過少に報告されている」と指摘し、中国で感染拡大が続きデータ共有を求めているが、実態の不透明さがさらに増している。中国当局は昨年12月下旬、コロナの感染状況に応じて発表の頻度を調整し、「最終的には月1回にする」と表明していた。今後、どういったタイミングと頻度で情報を公開するのかは不明。

●コロナ補助金、病院黒字化 検査院調査 病床使用、5割以下で交付も

 新型コロナ関連の補助金を受けた医療機関の収支を会計検査院が調べたところ、2021年度は平均約7億円の黒字だった。病床確保のための補助金が収支改善につながった形。一方、補助金によって確保病床数は増えたものの、看護師不足などで実際に患者を受け入れた病床は多い時でも5~6割にとどまる。病床の稼働率が低い病院にも補助金が交付されていた実態があり、検査院は厚労省に対し、補助金の設定の検証などを求めている。

【1月14日】

●中国コロナ死者、1カ月で6万人と発表 これまでと違う基準で集計

 中国の衛生当局は14日、昨年12月8日~今月12日に医療機関で亡くなった新型コロナに関連する死者数が5万9938人だったと明らかにした。これまでは独自の基準をもとに、この期間の1日あたりの死者数をゼロ~数人と発表していた。WHOから「死者数が過少に報告されている」と指摘されるなど、国際社会から情報公開のあり方に疑義が出ていた。

 中国当局はこれまで、主な死因がコロナ感染後の基礎疾患の悪化だった患者など、コロナ感染によって引き起こされた肺炎や呼吸不全以外が死因だった場合は、死者として集計していなかった。だが14日の会見では、コロナに起因する呼吸不全による死者が5503人、基礎疾患との合併症による死者が5万4435人だとした。

【1月15日】

●新型コロナ国内初確認から3年 「不安だ」、依然84% NHK世論調査

  新型コロナ感染が国内で初めて確認されてから15日で3年となる。NHKは去年11月1日から12月6日にかけて全国の18歳以上3600人を対象に郵送法で世論調査を行った。感染拡大が「不安だ」という人は依然84%と多いものの、3年前に行った調査からは1割ほど減っていて、とくに若い世代では不安を感じる度合いが大きく減少、高齢者は減少の割合が少ないことが分かった。

 NHK世論調査「感染拡大 不安だ」年代別 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●政府への今後の対策 法律上の扱いの賛否 NHK世論調査

 コロナ対策として今後、政府に最も力を入れてほしいことは、「治療薬やワクチンの開発」が49%で最も多く、次いで「経済的な支援」20%、「治療体制の拡充」15%、「検査体制の拡充」5%などとなった。「感染対策」と「経済活動の回復」のどちらに力を入れるべきか聞いた設問では、「感染対策」が39%、「経済活動」が60%だった。特に若い世代ほど経済活動の回復を重視する傾向が見られた。

 新型コロナの法律上の扱いを、季節性インフルと同じ位置づけに引き下げることの賛否について聞いたところ、「賛成」と「どちらかといえば賛成」が合わせて59%、「どちらかといえば反対」と「反対」が合わせて40%。性別や年齢別では、男性は18歳から50代、女性は30代で『賛成』の人が70%以上を占めた。

●国内415人死亡 10万8281人感染

 厚生労働省によると、15日発表した国内の新たな感染者は空港の検疫などを含め10万8281人。また国内で亡くなった人は、大阪府で36人、愛知県で35人、東京都で34人、神奈川県で31人、埼玉県で23人など、あわせて415人、累計で6万2679人。また、人工呼吸器やECMOをつけたり、集中治療室などで、治療を受けたりしている重症者は、672人。14日と比べて21人減った。

 以下6枚の図は1月15日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●東京都、34人死亡 8269人感染確認 4日連続前週比

 厚生労働省は15日、都内で新たに8269人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の日曜日より6855人減った。前の週の同じ曜日を下回るのは4日連続。また、人工呼吸器かECMOを使っている重症の患者は14日より3人減って43人。一方、感染が確認された34人が死亡した。

 1月15日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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2023年1月14日 (土)

新型コロナ2022.12 中国激増

 新型コロナウイルス感染症の拡大「第8波」が、11月から緩やかに始まった。11月下旬には北海道がピークを迎え減少に転じ始めるが、地域差はあるものの全国的には増加が続く。年末年始を迎え、この冬は季節性インフルエンザと新型コロナの同時流行が懸念されている。全国の新規感染者は1日に20万人超、死者数の発表は29日に過去最多の420人、「第7波」を上回るペースで増えている。 

 中国の厳しい行動制限「ゼロコロナ」政策が終了し、大幅緩和による極端な政策変更によって感染が爆発的に拡大している。来月の「春節」の大移動に警戒が広がっている。

 2022年12月16日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2022.12 中国緩和」の続き。なお、感染者数・重症者数・死者数のデータは、厚労省の発表と都道府県などの発表とで異なる場合があり、特に死者数は厚労省のデータを採用しています。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

 

【12月16日】

●コロナ対策緩和の中国で感染拡大 日本人多い上海で警戒広がる

 中国では先週、政府が新型コロナの感染対策の緩和に踏み切ったあと、各地で感染者が増加しており、中国で最も多くの日本人が暮らす上海でも感染が広がり始めている。今のところ現地の日系企業では、感染対策として在宅勤務に切り替える動きが広がっている。上海の日本人学校は、14日からオンライン授業に切り替えた。中国では来月、人々の移動が活発になる旧正月の「春節」の時期を迎えることから、各地で感染拡大への警戒が広がっている。

●「BA.1」対応ワクチン副反応、従来型と割合「大差なし」 厚労省

 新型コロナのオミクロン株「BA.1」に対応するワクチンの副反応について厚労省の研究班は、「BA.1」対応ワクチンの調査対象者は従来型と比べてまだ少ないものの、現時点では副反応が起きる割合に大きな差はないとし、「感染や重症化を防ぐ効果が期待されるのでオミクロン株対応ワクチンの接種を検討してほしい」としている。

 また厚労省は、オミクロン株対応ワクチンを接種した17人の男女が死亡したと、16日明らかにした。いずれも接種との関連は評価中だとしている。オミクロン株対応ワクチンを接種後の死亡事例について、これまでに国が発表したのは合わせて19人。また、5歳から11歳の子どもを対象にした3回目のワクチン接種で今月13日、11歳の男子児童が死亡したと発表。子どもの3回目ワクチン接種で死亡事例を国が発表したのは合わせて3人。

●全国で新たに15万3477人確認 前週比11日連続増

 国内感染者は16日、新たに15万3477人が確認された。前週の同じ曜日(9日)より2万6196人多く、11日連続で前週を上回った。死者は259人。都道府県別で最多の東京都は新たに1万6273人が確認された。16日までの週平均の感染者数は1日あたり1万5191.0人で前週の121.8%。次いで神奈川県が1万61人、愛知県が9422人、大阪府が8725人と続いた。

 12月16日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【12月17日】

●中国政府、年末年始の帰省で農村部の感染拡大に警戒

 中国政府は今月7日、新型コロナの感染対策の緩和に踏み切り、省をまたいだ移動の制限がなくなった。17日から年末年始の3連休の鉄道の切符の販売が始まったが、中国メディアによると、大手旅行サイトでは、来月の旧正月の「春節」にかけての鉄道や飛行機のチケットを予約しようと、アクセス件数が急増しているという。帰省する人が大幅に増えるとみられ、国内で感染者の急増が続く中、中国政府は、医療体制がぜい弱な農村部への感染拡大に警戒を強めている。

●オミクロン株対応ワクチン 発症防ぐ効果71%

 国立感染研などはオミクロン株「BA.5」が主流となった9月から11月にかけて、関東地方の医療機関で新型コロナ検査を受けたおよそ4千人を対象に、陽性だった人と陰性だった人のワクチン接種歴を比較、分析した。その結果、従来型ワクチンを2回以上接種しオミクロン株対応ワクチンを追加接種した人は、発症を防ぐ効果は71%だった。「BA.1」と「BA.4」「BA.5」対応ワクチンとでは有効性に大差なく、今後はどのくらいの期間、効果が持続するのか調べる。

●感染15万人8809人 東京1万7020人

 国内感染者は17日、新たに15万8809人が確認された。前週の同じ曜日(10日)より2万2559人多く、12日連続で前週を上回った。都道府県別で最多の東京都は、新たに1万7020人が確認され、17日までの週平均の感染者数は、1日あたり1万5542.7人で前週の122.9%だった。次いで神奈川県が1万414人、愛知県が9908人、埼玉県が9219人。

【12月18日】

●中国、「働かされた」医学生が死亡 北京の火葬場、「パンク状態」

 四川省・成都の病院では13日、臨床実習を受けていた23歳の男子学生が突然倒れ、翌日死亡した。病院側は心疾患が原因としているが、地元メディアは人手不足の中、学生は発熱が続き陽性の疑いがあったにもかかわらず働かされていたと伝えている。江蘇省・南京でおよそ100人の学生が医師と同じ水準の待遇を求めるなど、抗議活動が各地で起きている。中国政府は、死者の人数を「ゼロ」と発表し続けているが、医療現場では混乱が広がっている。

 中国で、コロナ関連死とみられる死者が増えている模様。火葬場からは「パンク状態だ」と悲鳴が上がる。中国政府の18日の発表によると、前日の全土の新規感染者数は2097人。11月下旬の約4万人をピークに減少傾向だが、これは義務的なPCR検査をやめた影響が大きく、実態を反映していない。政府の感染症専門家は、国内のコロナ関連死が最大で67万人に達するとの見通しを示した。

●解熱鎮痛薬やせき止め、感染拡大で入手難しく 厚労省が供給支援

 医薬品の供給をめぐっては去年、ジェネリックへの業務停止命令などの行政処分が相次ぎ、薬局や医療機関で大規模な医薬品の供給不足が続いている。さらに新型コロナの感染拡大で医療用の解熱鎮痛薬やせき止めなどの需要が高まり、一部の医療機関や薬局では入手が難しくなっている。こうした中、厚労省は薬の安定供給に向けた支援として医療機関や薬局を対象にした相談窓口を新たに設けた。在庫があるほかの業者に販売を依頼するなど支援にあたる。

●コロナとインフルの同時検査、市販キットに課題

 新型コロナと季節性インフルの感染の有無を同時に検査できるキットについて、インターネットや薬局を通じた販売が解禁された。政府は重症化リスクが低い若い人に対し、まずコロナの抗原検査キットで自主検査し、陽性なら自宅療養、陰性で受診を希望する場合もオンライン診療などを活用するよう呼びかける。発熱外来の受診者が減ることを期待するが、使用方法や検査精度、流通量にそれぞれ課題があり、どこまで効果があるかは見通せない。

●感染13万5524人

 国内感染者は18日、新たに13万5524人が確認された。前週の同じ曜日(11日)より1万7011人多く、13日連続で前週を上回った。死者は232人だった。

【12月19日】

● 岸田内閣支持、急落31% 防衛増税「反対」、66%

 朝日新聞社は17、18の両日、全国世論調査(電話)を実施した。岸田内閣の支持率は31%(前回11月調査は37%)で、昨年10月の内閣発足以降最低となった。不支持率は57%(同51%)で、菅内閣、第2次~第4次安倍晋三内閣までさかのぼっても最高。防衛費の拡大については「賛成」46%、「反対」48%と割れた。1兆円増税に「反対」は66%で、このうち70%が岸田内閣を「支持しない」と答えた。

●雇用保険料0.2ポイント、来春に引き上げ 厚労省 コロナで財源枯渇

 厚労省の有識者検討会は19日、雇用保険料率を現在の1.35%から4月に1.55%へ引き上げる案を了承した。かつては雇用保険財政に余裕があったため暫定的に引き下げていたが、コロナ禍を受け、企業に休業手当を助成する雇用調整助成金の支出が急増し財源が枯渇したため、原則の料率に戻す。保険料率の引き上げは、月内にも労働政策審議会を開き、正式に決める。

【12月20日】

●重症化リスク低い患者はオンラインに

 厚労省は、重症化リスクが低い人は抗原検査キットで自分で検査し、陽性だった場合は各自治体の「健康フォローアップセンター」に登録して自宅療養することになるが、体調に変化を感じた場合は電話やオンラインでの受診を検討し、症状が重いと感じる場合などは発熱外来やかかりつけ医を受診するよう呼びかけている。オンラインでの診療を行っている医療機関は、都道府県や各自治体のウェブサイトに掲載されている。

●インフル同時流行に備え一日90万人診療できる体制に

 新型コロナとインフルの同時流行が起きた場合に備え、厚労省は一日に最大90万人の患者を診療できる体制が整ったとしていて、このうちの2万3000人の患者について電話やオンライン診療で対応するとしている。厚労省によると、同時流行のピーク時には都道府県の推計で81万人の患者が想定され、先月の時点で、一日最大で90万人の患者を診療できる体制が整ったという。

【12月21日】

●コロナ致死率、低下続く 今夏の60、70代 専門家会議で報告

 厚労省は21日、オミクロン株が流行した7、8月の60、70代の致死率が0.18%だったと公表した。デルタ株が流行した第5波(2021年7~10月)が1.34%、オミクロン株に変異した初期の第6波(2022年1、2月)は0.70%だったが、致死率は大きく下がってきている。コロナの致死率が下がった要因としては、ウイルスの変異やワクチン接種率の上昇があげられる。

 この日の資料では、季節性インフルの同年代の致死率も参考値として示され、0.19%だった。これに対し、専門家組織の脇田座長(国立感染研所長)は、「インフルと直接比較するのはデータのとりかたが違うため適切ではない」と話した。

●全国感染者、約4か月ぶりに20万人超

 厚労省によると、21日に発表した国内の新たな感染者は、空港の検疫などを含め20万6943人で、前の週の同じ曜日より1万6100人多くなった。国内の感染者が20万人を超えるのは、およそ4か月前の8月25日以来。また、国内で亡くなった人は、北海道で36人、東京都で20人、埼玉県で18人、大阪府で17人、福岡県で16人などの合わせて296人、累計で5万4026人となっている。また、重症者は、21日時点で530人、前日と比べて37人増えた。

 12月21日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 感染拡大の要因として、免疫をすり抜ける変異株への置き換わりや夜間の滞留人口の増加など。インフルの広がりも心配される。直近の1週間(5~11日)に全国約5千の医療機関から報告された患者数の平均は0.25人で流行期入りの目安となる1.00人を下回るが、前年同期の0.01人を大きく上回る。

●鳥取県、1582人感染確認 過去最多

 鳥取県は21日、過去最多となる1582人が新型コロナに感染していることが確認されたと発表。今月14日に発表された1365人を大きく上回った。これで県内の感染確認は10万人を超え、10万144人となった。また80代と90代の合わせて3人が死亡したと発表。県内で感染後に死亡した人は141人。入院している人は20日時点で163人で、重症はいない。病床使用率は46.4%。

 都道府県別の新規感染者の最多は、東京都で2万1186人。14日の感染者を2374人上回った。21日までの1週間の1日当たりの平均感染者数は1万6324.9人で前週の114.2%だった。2番目に多かったのは愛知県の1万2894人で、その次は大阪府の1万2225人だった。

 12月21日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【12月22日】

●東京都の医療提供体制、「最も深刻」 警戒レベル引き上げ

 東京都は22日、専門家によるモニタリング項目の分析結果を公表した。病床使用率は、21日時点で51.9%となり、今月14日以降50%を上回る日が続いている。専門家は「入院患者数は高い水準で推移し、重症患者数も大きく増加した」と分析。そのうえで、医療従事者の感染者や、一般の救急患者が増えていることも踏まえ、およそ3か月前の9月中旬以来の「医療提供体制が逼迫し始めている」として、4段階ある警戒レベルを1段引き上げ最も深刻なレベルとした。

 一方、感染状況については上から2番目を維持したものの、新規感染者の7日間平均は、21日時点で1万6324人と、先週に比べ2千人余り増。8週間連続して増えている。小池知事は都庁で記者団に対し、「コロナとインフルのツインデミックが懸念されており、まさに今、その入り口に入ったということだ」と述べ、ワクチンの接種や換気などの対策を呼びかけた。

【12月23日】

●中国、感染20日間で2.5億人? 内部会議で指摘「あくまで推計」

 中国政府が21日に開いた内部会議の議事録がSNSで出回り、12月1~20日の国内の感染者数が2億4800万人に達するとの推計が示された。会議で演説した国家衛生健康委トップの馬主任は「重症者の治療状況は非常に厳しい。特に来年1月下旬の「春節」の帰省者が増えることで、感染は医療基盤が弱い農村部へと広がる」と危機感を表明。各地の医療機関で発熱外来や入院患者を最大限受け入れるための準備を進めるよう指示した。

 さらに、政府が連日発表しているコロナ死者数が実態より少ないとの指摘についても言及。「死者が出ることは避けられないが、死因は医学の原則に基づき判定されなければならない。陽性を理由に、他の病気で亡くなった人すべてをコロナ死として申告することはできない」などと述べた。中国政府はコロナ政策を大幅に緩和した後、無症状感染者の公表をとりやめており、感染者数の全体像が示されなくなっている。

●中国の風邪薬不足、日本にも波及 都内で買いだめ 購入制限の店も

 中国で起きている新型コロナの感染爆発の余波が、日本にも及び始めた。症状の緩和に役立つとされる風邪薬が中国国内で品切れが深刻。親戚や友人のために海外で買いだめする動きが起きている。日本国内でも風邪薬などの買い占めが増えている。あるドラッグストアによると、12月以降、都内の店舗を中心に中国人とみられる外国人客が複数購入する動きが目に付くという。風邪薬の中でも、品薄感が強い「パブロンゴールドA」は訪日中国人に人気が高い。

●全国知事会 年末年始 コロナで医療逼迫懸念 国に緊急提言へ

 感染者数の増加傾向が続いている。こうした中、全国知事会は対策本部の会合を開き、年末年始に医療逼迫が懸念されることからワクチン接種の促進や、自宅療養者への支援体制の強化などを国に求める緊急提言をまとめた。

●「救急車の適正利用や自己検査を」 厚労省 年末年始、コロナとインフルに備え

 厚労省によると、年末年始は休診などで診療できる医療機関が平時の2割程度に減る見込み。冬場は救急搬送も多くなるため、加藤厚労相は23日、「年末年始に同時流行や感染拡大が生じた場合、一時的に発熱外来にかかりにくい状況も懸念される」と述べた。緊急性がなければ救急車ではなく、かかりつけ医や電話窓口「#7119」に相談。重症化リスクが低ければ、自己検査で療養、解熱鎮痛剤やキットの事前購入、帰省前の検査などを呼びかけた。

 コロナの病床使用率は全国的に上昇傾向で、北日本や関東を中心に5割を上回る。インフルは青森県、岩手県、東京都、神奈川県、富山県、熊本県の1都5県でで1週間の定点医療機関あたりの感染者数が1人を超えて流行期入りし、医療逼迫の懸念が高まっている。

●死者371人、1日あたり最多 岐阜県、「対策強化宣言」

 国内感染者は23日、新たに17万4082人確認された。死者は315人。感染者は1週間前(16日)より2万657人多かった。岐阜県は23日、感染レベルを「レベル3」に引き上げ、知事が独自に出せる「対策強化宣言」を全国で初めて発出した。期間は1月22日までで、強制力はない。

【12月24日】

●中国・青島、1日50万人感染 当局が異例の数字発表

 中国東部の山東省青島市の衛生当局幹部は23日、同市の1日あたりの新型コロナの新規感染者が50万人前後にのぼるとの推計を明らかにした。当局が数字を公に示すのは異例。今後、数日でさらに増加するとみている。青島市の人口は約1千万人(2020年時点)で、その5%前後が毎日感染していることになる。広東省東莞市の衛生当局も23日、SNSで市内の感染者が1日あたり25万~30万人の規模で増えているとの推計を明かした。

●コロナ、感染症法上の分類見直し 病原性など総合的に判断

 新型コロナは感染症法で「2類相当」に位置づけられるが、国は社会経済活動への影響を考慮し、季節性インフルなどと同じ「5類」への引き下げも含め議論を進めていている。これについて、自治体や医療関係者などが参加する厚労省の感染症部会が持ち回りで開かれ、事務局側が見直しに向けて考慮すべき要素を提示した。厚労省は年末年始の感染状況などを見極めたうえで、年明け以降見直しの方向性を判断する見通し。

【12月25日】

●中国政府 感染者数や死者数の情報、発表取りやめ

 中国の保健当局、国家衛生健康委員会は、毎日発表してきた新型コロナ感染者数や死者数の情報について、25日から発表を取りやめる。理由は明らかにしていない。中国政府は「多くの無症状の感染者がPCR検査を受けておらず、正確に実際の数を把握できない」として、今月14日から無症状の感染者数の発表を取りやめていた。

● 中国、コロナ「ゼロ」の反動 人口の50%感染予測

 ネットに出回った中国政府の内部資料によると、12月1~20日の感染者数の推計値は、14億人口の約18%に当たる2億4800万人。現在は、3億人を大きく超える計算。香港大学のコーリング教授(感染症学)は、「近いうちに全人口の50%が感染するだろう」、理由は「ゼロコロナ政策によってほとんどの人が感染したことがなく、免疫を持っていない」と解説。感染症専門家は、1人の感染者が平均何人にうつすかの「基本再生産数」は16~18と分析する。

 中国政府は、人口の9割以上がワクチンを2回接種したと強調する。しかし北里大の中山教授は、「武漢由来の株から作った中国製の不活化ワクチンは、いまのオミクロン株には効果がない」と見る。欧米などの「mRNA」に比べ、重症化や死亡を防ぐ有効性が劣るとされる。北京の主流は「BF.7」、全国的には「BA.5.2」の地域が多い。農工大の水谷教授は、「日本ではオミクロン対応の接種率も上がっており、日本に流入しても大勢に影響はない」と話す。

●春節に地方拡大を懸念

 上海のデータバンクは、中国の大手検索サイト「百度」のデータを用いて、都市ごとの感染の進行状況を予測している。北京市では12月17日に感染の第1波のピークが来て、25日までに人口の約55%が感染したと見込む。ただ、これから感染が広がる都市もある。浙江省の衛生当局は25日の会見で、省内の1日あたりの感染者はすでに100万人を超え、元日前後には200万人に達するとの見方を示した。

 懸念されるのが、医療体制がさらに脆弱な農村部に感染が拡大すること。中国疾病予防コントロールセンターの疫学専門家の呉氏は、今冬に計3回の流行の波があるとの見方を示す。現在の第1波は都市部が中心で、来年1月中旬まで続く。春節に合わせて人びとが地方に帰省する1月下旬~2月中旬に第2波が、人びとが帰省から戻る2月下旬~3月中旬に第3波が襲うと予測した。

●コロナ感染、全国で新たに14万8810人 20日連続で前週上回る

 国内感染者は25日、新たに14万8810人が確認された。前週の同じ曜日(18日)より1万3286人多く、20日連続で前週を上回った。新たに発表された死者は全国で306人。福島県では1日あたりの死者数が過去最多の8人となった。新規感染者が都道府県別で最も多かったのは、東京都で1万5403人。次いで、神奈川県が9784人、大阪府が8912人だった。

 12月25日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●院内感染相次ぎ、「超過入院」の医療機関も 熊本県

 熊本県では1日に4000人を超える感染者が確認されるなど急激に感染拡大している。コロナ以外の理由で入院している人に「院内感染」が広がるなどして「超過入院」の状態となっている医療機関は、22日の時点で21。コロナ患者のために確保していた病床の数をおよそ850から1000以上に増やすなど体制を強化してきたが、年末年始を含めた今後の医療提供体制を協議するため、25日、熊本市と合同で専門家で作る会議を開いた。

【12月26日】

●習氏、感染爆発後初の発言 毛沢東の「愛国衛生運動」呼びかけ

 習国家主席は26日、「愛国衛生運動を的を絞って展開しなければならない。人民が主体的に健康を学び、良好な衛生習慣を身につけるよう導く」と指示を出した。この中で、「現在、わが国の新型コロナ対策は新たな情勢と任務に直面している」との認識を示した。中国全土で感染が広がる中、毛沢東時代のスローガンを掲げて国民に一体になるよう呼びかけた。「愛国衛生運動」のスローガンは1952年に毛が呼びかけた歴史がある。

●年末逼迫に備え、オンライン診療 拡大急ぐ 同時流行も懸念

 厚労省は2日、同時流行に備えて「全国で1日最大90万人を診療できる態勢が整った」とした。その一つがオンライン診療の拡充。薬の処方も可能としている。東京都は、12日「臨時オンライン発熱診療センター」を開設した。千葉県は5日に「オンライン診療センター」を開設。福岡県も21日に自宅療養者向けに設けた。神奈川県は、オンライン診療拡充のため医療機関向けに最大30万円の補助を決めた。自治体のセンター開設とは別に、各医療機関でもオンラインが広がる。

●オンライン「一辺倒」、危惧も

 「オンライン一辺倒」を危惧する声もある。都医師会は、発熱する疾患は新型コロナやインフル以外にもあるため、まずは対面の受診を試み、予約できない場合にオンライン診療を受ける補完的活用を呼びかけている。心音確認などができず、医師が正確に症状をつかめない場合もあるから。同時流行が現実味を帯びる中、各地で自治体が協力金を支払い、年末年始に診療する医療機関を増やそうともしている。

●看護師などの感染増、医療逼迫の懸念も

 感染が再び拡大する中、埼玉県川越市の「埼玉医科大学総合医療センター」 など、医療機関の中には看護師などスタッフの感染が増え、入院患者の受け入れが困難になっているほか、新型コロナ以外の一般の診療にも影響が出て、医療の逼迫が懸念される事態になっている。さらに、回復傾向にある新型コロナの患者を転院させようとしても、ほかの医療機関でもスタッフや病床が足りないなどから、受け入れてもらえない状況が続いているという。

【12月27日】

●中国を襲う、医療逼迫 置き場ないベッド あふれる遺体安置室

 中国では感染が爆発的に広がる中で、医療逼迫に見舞われている。北京の病院には重症化した高齢者らが駆け込む例が増えているが、人手や病床が追いついていない。当初は1~2割ほどだった患者に占める高齢者の割合が、4~5割に増加。感染から1週間程度経って重症化するケースが多く、感染よりも重症患者のピークが遅れて訪れている様だが、備えは脆弱なまま。

 医療従事者や病床など医療資源の不足は、医療体制が十分ではない農村部でさらに深刻になるとみられている。感染は全国の都市部に蔓延しており、多くの人びとが帰省する1月末の春節の時期に、地方にも拡大する懸念が強い。中国政府は12月初旬の通知で、医療機関にICU病床を拡充するよう求めた。ただ、手遅れとの感は否めない。

●中国人の海外旅行、順次再開 経済回復狙い 来月8日から

 中国政府は26日夜、水際対策として入国者に義務づけてきた隔離を来年1月8日から撤廃すると発表した。政府はこれまで、入国者に対してホテルなど指定施設で5日間、さらに自宅などで3日間の計8日間の隔離を義務づけていた。一方で、搭乗前の48時間以内に受けたPCR検査の陰性証明の提示や、搭乗する際のマスク着用も求める。国内の規制緩和に加えて出入国時の制約もほぼなくなり、国民に移動制限を強いてきた「ゼロコロナ」政策は、終了となる。

 発表では、中国訪問を希望する外国人に対して仕事の再開、商用、留学などのビザの提供を進める。中国人の海外旅行も国際的な感染状況などに基づき、順次再開する。今回の水際対策の変更は、新型コロナの感染症分類の引き下げに伴うものだという。中国政府は2020年1月下旬以降、新型コロナは、ペストやコレラと同レベルの最も厳しい措置を求めてきた。だが、「オミクロン株が主流になったことで病原力が弱まった」として、レベルを引き下げた。

●水際対策緩和の日本 「ゼロコロナ」終了の中国 「お得意様」訪日に期待感

 今年10月11日以降、日本政府は水際対策を大幅緩和した。訪日外国人に対し、3回のワクチン接種証明書、もしくは出国前72時間以内の陰性証明書があれば、入国時のPCR検査や入国後の待機期間を課さない。11月以降、訪日外国人は回復傾向にある。2019年の訪日外国人は過去最多の3188.2万人。このうち、中国人は959.4万人(全体の3割)と最も多かった。一方、今年1~11月に訪日中国人は、2019年の同じ期間と比べ98%減で極端に低迷している。

 最大の「お得意さま」だった中国人旅行客は日本に戻るのか。しかし急激な政策転換は、感染爆発を招いている。中国社会は今、なし崩し的に進む「ウィズコロナ」がもたらす混乱に直面している。

●岸田首相、中国コロナ感染拡大で緊急水際措置 30日から実施へ

 岸田首相は、27日午後、首相官邸で記者団に対し、中国での新型コロナの感染状況を踏まえ、できるかぎり速やかに体制を構築し、12月30日の午前0時から緊急の水際措置をとると明らかにした。具体的には、中国本土からの渡航者と中国本土に7日以内の渡航歴のある人すべてに対し入国時の検査を行い、陽性となった人についてはすべてゲノム解析の対象とし、待機施設で原則7日間の隔離措置を講じるとしている。

 また今後は、日本と中国を結ぶ便について増便などの制限を行うとしている。そして、首相は「中国本土では感染が急拡大しているとの情報がある一方、中央と地方、政府と民間の間の情報が大きく食い違い、国内でも不安が高まっている。こうした状況を踏まえ、臨時的な特別措置を講じる」と説明した。また「国際的な人の往来を止めないよう可能なかぎり配慮し、中国の感染状況などを見つつ柔軟に対応していく」と述べた。

●オミクロン、感染で心臓や血管の病気のリスク高まる 名古屋工大

 名工大の平田教授らは、125万人分のレセプト(診療報酬明細書)をもとに、新型コロナに感染した人と感染していない人で、心臓や血管の病気などで医療機関を受診する人の割合がどの程度異なるか調べた。その結果、心筋梗塞・心不全・静脈血栓症・糖尿病の受診歴が過去1年間なく、重い持病がないとみられる人でリスクを比較すると、第1波から去年夏の第5波までは、感染後2か月の間にこれらの病気で受診していた人は、感染していない人の数倍~数10倍だった。

 一方、オミクロン株が拡大したことし初め以降の第6波では、リスクの差はほとんどみられなかった。平田教授は「海外でもコロナにかかった人で心臓や血管の病気のリスクの上昇が報告されていたが、日本でも同様の結果となった。第6波ではワクチン接種の普及などで重症化の割合が低下したことで、リスクが大幅に下がった可能性がある」と分析している。

●死者438人、1日過去最多 371人から大幅増

 国内感染者は27日、新たに20万8235人が確認された。死者は271人。感染者は1週間前より1万8249人多かった。都道府県別の1日あたりの死者数がこの日最も多かったのは北海道の38人。神奈川県33人、埼玉県26人、愛知県22人、東京都21人と続いた。新規の感染者数では東京都が2万2063人で最も多く、次いで愛知県が1万5443人、大阪府が1万3962人だった。

【12月28日】

●「軽症なら働いて」 中国一変、地方政府人手不足で 「経済」優先

 新型コロナの爆発的な感染が続く中国で、重慶市は18日、「無症状と軽症の人は通常通り出勤できる」との通知を出した。浙江省など、同様な通知を出す地方政府が相次いでいる。人手不足が深刻になり、「経済を回す」ことが優先され始めた。感染封じ込めのため1人の陽性者も見逃すまいとしていた社会から、職場での感染を防ぐことすら「二の次」となる状況へと様変わりしている。こうしたやり方は医療現場も例外ではない。

●中国、コロナ水際対策を見直し 旅券申請再開も旅行解禁は示さず

 中国政府は26日、新型コロナの水際対策を見直し、国際的な感染状況などに応じて、中国人の海外旅行を秩序ある形で再開させていく方針を示した。これを受け、中国の出入国管理当局は、中国人が海外旅行に行くためのパスポート申請の手続きを、1月8日から再開すると発表。中国メディアによると、水際対策の見直しが発表された直後、大手旅行予約サイトでは、日本やタイといった人気の旅行先に関するアクセス件数が10倍に増えたという。

●台湾、中国からの直行便の乗客にPCR検査義務づけ 1月1日から

 中国で感染が急拡大していることを受け、台湾当局は来月1日から31日までの間、香港とマカオを除く、中国からの直行便で台湾に到着した乗客に対し、PCR検査を義務づけることを明らかにした。その理由は、「中国で感染が拡大しているが情報が不透明。感染者数が多いためウイルスが変異する可能性も高い。変異株の探知を強化する」と説明。台湾域内の新規感染者の数も、28日まで8日連続で前の週の同じ曜日を上回っていて、当局は感染再拡大に警戒を強めている。

●香港からの訪日客帰国便制限で影響 日本の水際強化受け

 中国政府は26日、感染が爆発的に広がるなか、1月8日から中国に入国する際の隔離撤廃などを発表。中国人の海外渡航が急増する可能性が高まる中、日本政府は中国からの直行便を成田、羽田、関西、中部の4空港に限定、増便しないよう航空会社に要請した。10月から往来が正常化していた香港は、4空港のほか札幌、福岡、那覇にも直行便が運航。そこに突然、香港便も制限されることになり、多くの旅行客が欠航の影響を受けたという。

●全国、新規感染者の増加続く 前週比1.1倍

 厚労省の専門家組織の会合は28日、現在の感染状況について全国では感染者数の増加速度は低下しているものの、高い感染レベルとなっていて中国・四国、九州などでは増加幅が大きくなっているとしている。会合で示された資料によると、27日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて1.10倍と増加が続いていて、北海道や東北などを除く35の都府県で前の週より感染者数が増えている。28日発表の新たな感染者は、21万6219人。

 12月27日迄の新規感染者数の前週比 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●死者415人、過去最多  未把握の感染者増加

 専門家組織は28日の会合で、全国で重症者や死者の増加傾向が続き、一日の死者数は過去最多だった今夏「第7波」のピークを超え、今後も増加が続くことに懸念を示した。オミクロン株が流行した第6波以降、肺炎で亡くなる人の割合が減る一方、心臓や腎臓の持病が悪化し、衰弱して亡くなる高齢者が増えている。死者が第7波のピーク時よりも多くなっている理由は、はっきりしていない。自治体が未把握の感染者の増加の可能性や医療逼迫の影響の可能性などが指摘されている。

 28日発表の全国死者数は415人、9月2日の347人を上回った。医療体制については全国的に病床使用率が上昇傾向で、救急搬送が困難なケースがコロナとコロナ以外でも第7波のピークを超えていて、年末年始の救急医療体制の確保に注意が必要だとした。また、専門家組織有志はこの日、第8波の被害を最小限にするための提言を出した。集団感染がおきやすい高齢者・障害者施設や慢性期の患者が入院する病院での被害をいかに減らすかが重要と訴えている。

●「5類」見直しの見解案まとめる

 新型コロナの感染症法上の位置づけを「5類」に引き下げた場合、どのような影響が出るか。専門家組織メンバーらが見解案をまとめ、28日の会合に示された。見解案では、現在のオミクロン株になって感染が広がりやすく、死亡者数が多いなど「季節性インフルと同様の対応が可能になるには、もうしばらく時間がかかる」と評価。患者が増加したときに入院調整が行われなくなる、治療費が公費負担されなくなり感染者が検査や治療を受けなくなるなどの懸念がある。

 一方で、濃厚接触者に法律に基づいた行動制限の呼びかけができなくなる影響は、少ないとしている。そして今後も、医療が逼迫したときに調整を行う機能を維持することや、新たな変異ウイルスによって感染者や死亡者が激増する場合は接触機会を減らす対策を考慮することが求められるとしていて、位置づけの変更は必要な準備を進めながら行うべきだとしている。

  感染法上の分類と「5類」変更の見解案 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●感染者の葬儀制限、納体袋不要 遺体と接触可能に コロナ対応指針改定へ

 新型コロナに感染して亡くなった人の葬儀や火葬をめぐり、政府は感染対策をまとめたガイドラインを改定、制限を大幅に緩和する方針。これまでは遺体を「納体袋」で包むことを推奨し、遺体に触れることを控えるよう求めていたが、コロナ禍前に近い形での最後のお別れが可能になる。遺体の鼻などに詰め物をして体液が漏れ出ないようにすれば、接触による感染リスクは極めて低くなり、通常の遺体と同様に取り扱うことができるとする。年明けの早い時期に改定される見通し。

●コロナ休業支援、今年度末で終了 手当支給や補助

 厚労省は、休業しても勤め先から休業手当が支払われなかった人に支給する「休業支援金・給付金」と、企業が雇用保険の被保険者以外に支払った休業手当を補助する「緊急雇用安定助成金」を、今年度末で終了する。いずれも、コロナ禍で解雇や雇い止めが広がる恐れが生じた2020年4月以降の休業分を対象に新設された。雇用保険の被保険者への休業手当を補助する雇用調整助成金の特例も来月末で終わり、コロナ下で続けてきた雇用を守る施策に区切りをつける。

●「コロナとインフル同時流行が現実味、警戒強めて」 都の専門家

 東京都は28日、モニタリング会議を開いた。新規感染者の7日間平均は27日時点で1万7423人で、前週比でおよそ109%となり、9週連続で増加傾向が続き、減少の兆しが見られないと報告された。また、27日時点の入院患者数は4184人と、4か月前のことし8月下旬以来となる4千人台になるなど、通常の医療との両立に支障が生じつつあり、医療提供体制が逼迫してきていると報告された。

 専門家は、4段階ある警戒レベルについて、感染状況は上から2番目を、医療提供体制は最も深刻なレベルをそれぞれ維持した。「コロナとインフルの同時流行が現実味を帯びている」と指摘したうえで、年末年始は警戒感が薄れるおそれがあるとして、暖房使用中の定期的な換気や場面に応じたマスクの着用など、対策や警戒を強めるよう呼びかけた。

●21.5万人感染 1日あたりの死者数、4県で過去最多

 国内感染者は28日、新たに21万5966人が確認された。前週の同じ曜日(21日)より9522人多かった。新たに発表された死者は415人で、過去最多。28日に発表された死者数を都道府県別にみると、最多は北海道の31人。神奈川28人、東京23人、愛知、大阪、福岡が各20人と続いた。16人の宮城、5人の山形、6人の山梨、10人の宮崎は1日あたりの死者数としては過去最多だった。

 新規感染者数は、東京が2万243人、次いで愛知が1万4310人、大阪が1万3415人。5075人の茨城、4956人の三重、2389人の和歌山、3041人の大分は過去最多を更新した。

●インフルは流行期入り

 厚労省は28日、全国的に季節性インフルエンザの流行期に入ったと発表した。新型コロナが発生してからは季節性インフルの流行はなかったため、3年ぶりの流行。新型コロナも拡大しており、今後の同時流行の影響が懸念される。全国約5千カ所の定点医療機関から報告された最新の1週間(12月19~25日)の患者数が、1医療機関あたり「1.24人(速報値)」となり、流行開始の目安となる「1人」を超えた。

【12月29日】

● 国産コロナ薬、低調 塩野義1ヵ月で処方7700人のみ 重症化予防効果、未確認

 緊急承認された塩野義製薬の新型コロナ感染症の飲み薬「ゾコーバ(一般名・エンシトレルビル)」が、医療現場で広がっていない。処方されたのは11月末~12月27日で約7700人。重症化を予防する効果は確認されていないことなどから使用対象は限られ、医師らの間では慎重な受け止めが多い。

 重症化リスクのない軽症者の多くは、自然に回復したり市販の解熱鎮痛剤で症状が改善したりする。一方、高齢者や持病のある人に重症化予防の目的で飲み薬を使う際は、効果が確認されている米ファイザー社の「パキロビッドパック(同・ニルマトレルビル/リトナビル)」や米メルク社の「ラゲブリオ(同・モルヌピラビル)」になる。緊急承認はあくまで「仮免許」で、有効性は「推定」された段階。塩野義は1年以内に追加データを提出する必要がある。

●コロナ死者420人で過去最多 感染19万2063人 29日厚労省まとめ

 29日に発表された新型コロナによる全国の死者数は、神奈川県で33人、北海道で31人、東京都で23人など合わせて420人で、28日の415人を上回って1日の発表としてはこれまでで最多となった。栃木県16人、島根県6人、熊本県15人は、1日あたりの死者が過去最多となった。累計で5万6648人。重症者は、29日時点で565人。28日と比べて12人減った。

 国内の新規感染者は29日、新たに19万1948人が確認された。前週の同じ曜日(22日)より8200人多かった。新規感染者の最多は東京都の1万8372人で、2番目が愛知県の1万2281人、その次は大阪府の1万1725人だった。

【12月30日】

●中国からの入国、30日から臨時的な水際措置 成田空港で検査

 中国で感染が急拡大していることを受けて、政府は30日から、中国本土から直行便で日本に入国した人や、中国本土に7日以内に渡航歴があり日本に入国した人に対し、入国時に抗原検査キットなどで新型コロナの検査を実施する臨時的な水際措置をとっている。

 成田空港では、上海からの直行便が到着すると乗客は待機スペースに移動、入国時の検査を受けていた。検査の結果は1時間ほどで出て、陰性だった人たちは順次、到着ロビーへ。陽性となった人は、症状がある場合は7日間、無症状の場合は5日間、待機施設で隔離する。政府はこうした臨時的な水際措置をいつまで続けるかは、中国の感染状況を見ながら判断したいとしている。

●発熱外来、患者相次ぐ 薬が不足も 「感染対策徹底を」

 東京品川区のクリニックの発熱外来では、年内最後の診察日の28日は、発熱などを訴える患者が次々と訪れている。このクリニックでは2週間ほど前から患者が増え始め、ほとんどが軽症のため、せきや鼻の薬、解熱剤が必要な患者が多いが、処方しても薬局に在庫がないケースもあり、薬が不足するところも出てきているという。医師は医療体制が手薄になる年末年始は、特に基本的な感染対策を徹底してほしいと呼びかけている。

●全国で14万8076人が感染 死者は258人

 新型コロナの国内感染者は30日現在、新たに14万8076人が確認された。都道府県別では、東京都が1万4525人で最も多く、次いで大阪府が9527人、福岡県が8869人だった。新たに発表された死者は全国で326人。死者数が最も多かったのは大阪府の23人。東京都21人、神奈川県11人と続いた。

【12月31日】

英仏などヨーロッパ各国 中国からの入国者対象 水際措置強化へ

 英国政府は30日、1月5日以降中国から英国へ直行便で入国する乗客は、出発前の2日以内に受けた新型コロナ検査の陰性証明の提示を義務づけると発表した。対策強化の理由は、中国から包括的な衛生情報が共有されていないなど情報不足を指摘。このほか1月8日からは、新たな変異株に感染している人がいないか確認するため、到着時にも検査を行う。

 フランス政府も30日、中国から航空便で入国する乗客は、出発前の2日以内に受けた検査の陰性証明の提示を1月以降、義務づけると発表。ほかの国を経由して到着した場合も対象。機内ではマスクの着用も義務づける。旧正月を迎える1月、中国からの入国者の増加が見込まれることや、新たな変異株が出現する懸念が高まっていることなどの理由をあげている。このほかスペインやイタリアなど欧州各国が水際措置を強化している。

●新型コロナ 感染により抗体持つ人は3割弱 高齢者ほど低い結果

 新型コロナ感染によってできる抗体を持つ人は、ことし11月時点で全国で28.6%だったことが、国立感染研などが献血の血液を分析した結果、分かった。ことし3月時点で東京都や大阪府など5都府県の住民で感染した人の割合は4.3%と推定されたのに比べて高く、第7波以降、感染した人が大きく増えた可能性を示すとしている。年代別では、16歳から19歳が38.9%、20代が40.4%、・・・60代が17.0%と年代が上がるほど低い傾向がみられた。

 また、沖縄県が45.1%、大阪府43.0%、東京都34.5%などと高かった一方、長野県9.2%、徳島県13.2%、新潟県14.2%などと差が見られた。国立感染研の鈴木感染症疫学センター長は「免疫は時間とともに弱まり、感染で得られる免疫に期待することはリスクが高い。高齢者など重症化リスクの高い人たちはワクチン接種を続けていくことが必要」としている。

●全国で新たに10万6413人 水際対策強化の影響も

 国内感染者は31日、新たに10万6413人が確認された。都道府県別では、東京都が1万1189人で最も多く、次いで大阪府6929人、神奈川県6855人だった。新たに発表された死者は全国で292人だった。死者数が最も多かったのは東京都の21人、大阪府20人、北海道17人と続いた。一方、空港検疫などで確認された感染者は92人で、前日の4人から大幅増。92人のうち90人が中国に滞在歴がある人だった。

 12月31日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 以下の図は12月31日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●2022年、新型コロナ対策は大きく転換

 この1年で政府の新型コロナ対策は大きく転換した。オミクロン株が広がった2022年初めからの「第6波」では亡くなる人も増えたが、それ以上に感染者数の増加が大きく、致死率や重症化率は以前と比べて低下した。これを受けこの夏の「第7波」では、夏休み中で人の移動が活発になり感染者数も連日、過去最多を更新したが、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の行動制限は行わず、濃厚接触者に求める待機期間が短縮された。

 9月からオミクロン株対応のワクチン接種が開始。海外で社会経済活動の動きが進んでいることなどを踏まえ、感染者の全数把握を簡略化、患者の療養期間の短縮、水際対策の緩和など、感染防止と社会経済活動の両立を図る対策が出された。さらにインフルとの同時流行が懸念された「第8波」では、重症化リスクの低い人は自宅で抗原検査キットで検査を行い、陽性だった場合はオンラインや電話で受診するなど、医療の逼迫を避けるための対策が本格化した。

・感染者数、去年の約18倍 死者数、去年の約2.5倍

 2022年、国内の新型コロナの感染者数はオミクロン株の影響などで爆発的に増加し、年明けと夏、秋以降の3回にわたって感染が拡大し、1年間の感染者数は28日の時点でおよそ2704万人と、およそ150万人だった去年のおよそ18倍となった。ワクチン接種が進んだこともあり、オミクロン株の感染拡大以降、重症化する割合や致死率は下がったが、感染者数が爆発的に増加したことで、亡くなった人は多くなった。

 国内感染者数と死者数 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 2022年、新型コロナで亡くなった人数は28日時点で3万7843人。アルファ株やデルタ株が広がった2021年の1万4926人のおよそ2.5倍。感染の第7波のピークだった2022年8月には1か月間に7295人が亡くなり、第8波の今月も、28日までに6584人が亡くなった。政府分科会メンバーで東邦大学の舘田教授は「致死率は低くなってきているが、感染者数がさらに増えれば亡くなる人もさらに増える」と指摘した。

・オミクロン株系統の変異ウイルス

 2022年の初め以降、感染力が強いオミクロン株系統の感染が主流となっていて、現在はオミクロン株のうち、さらに免疫から逃れる性質が加わった新たな変異ウイルスの割合が増加してきている。2022年前半には、オミクロン株の「BA.1」や「BA.2」が主流となり、感染の第6波を引き起こした。その後、感染が爆発的に広がった夏の第7波ではオミクロン株の「BA.5」が主流となり、7月から10月ごろまでは検出される新型コロナのほぼすべてを占めていた。

 「BA.5」は、国立感染研の推定では今週の時点で全国で50%ほどに割合が下がっているとしている。現在は、これまでの感染やワクチン接種で得た免疫からより逃れやすいオミクロン株の「BQ.1」が35%ほどにまで増加していると推定、今後も増えるとみられている。

・今後の懸念と年末年始の感染対策

 WHOによると、12月4日までの1週間で世界中でゲノム解析された新型コロナの中で、最も多くなっているのは「BQ.1」で42.5%、続いて「BA.5」系統13.4%、「BA.2.75」9.8%、オミクロン株の複数のタイプのウイルスが組み合わさった「XBB」が6.1%など。感染急拡大の中国で極めて多くの人の感染で変異を繰り返して、性質の異なる新たな変異ウイルスが生まれる恐れがあると専門家は指摘している。

 年末年始に向けて政府分科会は、オミクロン株対応のワクチンを接種、定期的に窓を開けるなど十分な換気、帰省する人は高齢の親族と接する機会が多くなるため事前に検査を受けること、などを呼びかけている。さらに医療の逼迫を避けるため、重症化リスクが低い人は発熱などの症状が出た際、自分で抗原検査キットを使った検査することや、自分の住む地域の医療機関をあらかじめ確認して検査キットや解熱薬を事前の購入を求めている。

2023年1月 2日 (月)

新型コロナ2022.12 中国緩和

 新型コロナウイルス感染症の「第7波」は減少傾向が続いていたが、下げ止り。10月中旬にはおよそ2か月ぶりに増加に転じた。この冬は季節性インフルエンザと新型コロナの同時流行が懸念されている。11月から「第8波」が緩やかに始まった。11月下旬には北海道がピークを迎え減少に転じ始めるが、地域差はあるものの全国的には増加が続き、重症者数や死亡者数も再び増加傾向にある。

 中国の厳しい行動制限に対して広がった抗議活動は、「ゼロコロナ」政策の大幅緩和に向かわせたが、混乱が続いて感染が急拡大を始めた。

 2022年12月1日から15日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2022.11 増加続く」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】


【12月1日】

●中国、「ゼロコロナ」見直しか 副首相、政策継続に言及せず

 国営の新華社通信によると、中国政府で新型コロナ政策を担当する孫春蘭副首相は11月30日に、公衆衛生の専門家会合に出席した。この中で副首相は「ワクチン接種が普及し、経験が蓄積されるに従って感染対策が新たな局面と任務に直面している」と述べ、感染対策と経済活動を両立する必要性を強調した。一方、これまで繰り返し強調してきた「ゼロコロナ」政策の継続については言及しなかった。

 「ゼロコロナ」政策への抗議活動が共産党や習近平国家主席への批判にも発展。住民と警察の衝突が断続的に起きていた南部の広東省広州では、厳しい感染対策が大幅に緩和された。このことから政府が今後、国民の不満を和らげるため、「ゼロコロナ」政策を見直すという見方も出ている。11月30日に確認された新型コロナの感染者はおよそ3万5000人、このうち首都・北京では、はじめて5000人を超えるなど3日連続で過去最多を更新している。

●新型コロナ 感染症法上の扱い 見直し議論本格化へ

 新型コロナイウルスの感染症法上の扱いについて、厚労省は30日夜の専門家会合で見直しに向けた議論を本格化していく方針を示し、専門家に対し病原性や感染力、ウイルスの変異の可能性などの検証を行うよう求めた。感染症法では、感染症を「1類」から「5類」に分け、国や自治体が行うことができる措置の内容を定めていて、新型コロナは「2類相当」と位置づけられ、感染拡大を防ぐための厳格な対応が取られている。

 こうした中、国会で審議されている感染症法改正案の付則に新型コロナの感染症法上の位置づけについて速やかに検討する規定が追加された。これを受け、厚労省は30日夜開かれた専門家会合で季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への引き下げも含め見直しに向けた議論を本格化していく方針を示し、専門家に病原性や感染力、ウイルスの変異の可能性について検証するよう求めた。

●東京都、コロナ医療提供体制警戒レベル引き上げ 上から2番目に

 東京都は12月1日、モニタリング会議を開いた。この中で、11月30日時点で、新型コロナの専用病床の使用率が40.3%と前の週より4.7ポイント上昇したことや、救急搬送が困難なケースが増えていることが報告された。こうした状況を受けて専門家は、4段階ある医療提供体制の警戒レベルを1段引き上げて上から2番目とし、「今後の患者数の増加を見据え、外来を含めた医療提供体制をさらに強化する必要がある」と指摘した。

 一方、新規感染者数の7日間平均は1万1047人となって、8月31日以来、1万人を上回った。また、5週連続で前週比が100%を超え、このままのペースで増えれば1日の感染者数が、2週間後には1万5000人、4週間後には2万1000人を上回るとの予測が示された。専門家は「年末年始に向けて、イベントや会食など、人と人との接触機会が増えると感染が急拡大する可能性もあるため、今後の動向に十分な警戒が必要だ」と呼びかけた。

●コロナ、インフル同時検査キット 薬剤師の販売・説明を義務づけ

 新型コロナとインフルエンザの同時検査キットの使用は、これまで医療機関でしか認められていなかったが、同時流行が懸念されることから、厚労省は11月に薬局やインターネットでの一般向けの販売を解禁することを決めた。これを受けて1日、厚労省で販売方法について専門家による審議が行われた。その結果、検査キットの販売は必ず薬剤師が行い、使い方などについて購入者に書面などでの説明を義務づけることを決めた。

 抗原検査は、ウイルス量が少ない場合は感染していても陰性と判定される「偽陰性」のリスクがある。このため、検体を採取する際に綿棒を適切に使用することや、陽性だった場合は検査結果を写真で残しておくことなどを説明するよう求めている。厚労省によると、同時検査キットの販売は早ければ今月中にも始まる見込みだという。

●改正感染症法が可決・成立 大病院に発生時の対応義務化

 新型コロナ対応の教訓を生かして次のパンデミックに備えるため、地域の中核を担う病院に病床確保、発熱外来の設置などを義務付ける改正感染症法などが2日、参院本会議で可決、成立した。2024年4月に施行される。新たな感染症が発生すれば、自治体などが運営する「公立・公的医療機関」(約6500施設)、400床以上で大学病院中心の「特定機能病院」(87施設)、200床以上で救急医療が可能な「地域医療支援病院」(685施設)は、医療提供する義務が課される。

 一方、都道府県はすべての医療機関と、医療提供を事前に約束する協定を結べるようになる。都道府県は平時から計画をつくり、病床、発熱外来、人材派遣などの数値目標を盛り込み各医療機関への割り当てを決める。医療機関は協議に応じる義務はあるが、実際に協定を結ぶかは任意。あわせて検疫法も改正。入国後の個人に自宅待機などを指示できるようにしたうえ、待機中の体調報告に応じない場合の罰則をつくった。

●コロナ死者5万人強 国内の第6波と7波で急増 北海道 先月の死者最多に

 新型コロナに感染し、国内で亡くなった人の累計が1日、5万人を超えた。午後7時時点で新たに194人の死亡が確認され、5万70人となった。今年初めの「第6波」、夏の「第7波」で感染者が大きく増えたことから、今年だけで3万人を超える死者が出ている。厚労省によると、男性が約57%で、女性よりやや多い。約95%が60代以上。80代以上が約68%、70代が約20%、60代が約7%となっている。

 「第8波」の兆しがあるとされる現在も、死者数は高い水準で推移。11月29日には北海道、群馬県、鳥取県、12月1日には宮城県で過去最多を更新。北海道では11月、月間で過去最多の585人が亡くなっており、第7波のピークだった8月のほぼ倍。感染者が1日に1万人を超える日もあるなど、過去最悪の水準になっていることに加え、医療機関や福祉施設でクラスターも多発。道は、感染対策の徹底やワクチン接種を呼びかけている。

●全国で新たに11万7778人感染 累計死者数は5万70人

 国内感染者は1日、新たに11万7778人が確認された。前週の木曜日(24日)より5万9883人増え、7日連続で前週を上回った。この日の死者は194人。新規感染者数が最多は、東京都の1万2332人。次に新規感染者数が多かったのは神奈川県の7879人で、北海道7612人、愛知県7358人と続いた。

 12月1日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【12月2日】

●マスクなし、観客席 中国で一時映らず ゼロコロナ緩和後、再登場

 サッカーのワールドカップ(W杯)は中国でも関心の的。SNSでは、中継のピッチ外の場面が話題になっている。「ゼロコロナ」への抗議活動が各地に広がった後、マスクなしで熱狂する観客のアップが映らなくなった。規制緩和の動きが出ると、観客の姿は再登場。スポーツ観戦に政治の影が見え隠れしている。

●同時流行に備え 一日最大90万人の患者診療体制整う 厚労省

 新型コロナとインフルエンザの同時流行に備え厚労省は、国のピーク時の想定を上回る一日最大90万人の患者を診療できる体制が整ったと公表した。この冬に懸念される同時流行について厚労省は、ピーク時には新型コロナが一日45万人、インフルが一日30万人と、一日75万人規模の患者を想定し、都道府県などに診療できる体制を強化した計画を作るよう求めていた。

 このほか、重症化リスクの低い人が自主検査で新型コロナの陽性だった場合に登録する健康フォローアップセンターの対応の強化も求めたところ、一日最大で20万人が登録できる体制が整ったという。

【12月3日】

●ゼロコロナ、課題は高齢者 ワクチン接種に抵抗感 緩和足かせに

 中国でゼロコロナ政策を緩和する動きがある中、高齢者を中心にワクチンによる免疫が十分に高まっていないことが、政策転換の足かせになっている。政府は2023年1月末までに、60~79歳の3回目接種率を95%とする目標を設定したが、ワクチンの有効性には疑問符が付く。中国で主に使われているのは、従来型の「不活化ワクチン」。欧米などで主流の「mRNAワクチン」に比べ、重症化や死亡を防ぐ有効性が劣るとする研究が複数報告されている。

 中国はアジアやアフリカ諸国に対し、「ワクチン外交」を積極的に展開。国産ワクチンの有効性を誇り、外国産ワクチンの輸入を拒んでいたことも、政府の手足を縛っている。外国産ワクチンの輸入にも頼りづらく、課題は多い。11月末の時点で、60歳以上の高齢者のうち2回接種を終えた人は86.4%、3回接種だと68.7%。接種が始まったころに、副作用を巡るうわさやデマが流れ、特に高齢者の間では抵抗感が強い。

●「学生にいらだち」習氏が不満認識 抗議にめぐり、EU首脳に

 中国で広がった「ゼロコロナ」政策への抗議活動について、1日に欧州連合(EU)のミシェル首脳会議常任議長と会談した習近平国家主席が「3年間のコロナ禍で、主に学生にいらだちが募っている」と説明していた。習氏が市民の不満を認識したことが、ゼロコロナ政策の緩和する動きに影響した可能性がある。習氏は会談で現在主流のオミクロン株は「致死率が低い」という認識も示し、EU高官は中国がコロナ規制の緩和に向かうという感触を得たという。

●新型コロナとインフル、同時流行懸念 小児発熱外来の受診増える

 同時流行が懸念されるインフルの感染に対する不安も強まり、千葉県内の病院では小児科の発熱外来を受診する子どもの数が増加している。病院では、いつもと違う症状がみられたときには迷わず受診してほしいとする一方で、病院では第7波の時のように予約の殺到を懸念している。厚労省によると、今シーズンはインフル流行も懸念されることからワクチンの供給量は、大人の接種分で過去最も多いおよそ7042万回分が出荷される見込み。

【12月4日】

●コロナ致死率、第7波は40歳以上で減少 高齢者の追加接種効果か

 全国保健所長会の研究グループは、ことし1月から8月までに大阪府や茨城県など10府県でコロナ感染の40歳以上の55万人余りについて、致死率の変化を調べた。その結果、致死率は「第6波」の1月初めからの4週間では0.62%、2月下旬まででは0.85%。その後、感染者数の減少とともに徐々に下がり、6月中旬までの4週間では0.23%。一方、「第7波」では、感染者数が最も多かった時期の8月中旬までの4週間でも0.39%と「第6波」のピークの時期の半分以下。

 致死率は重症化リスクが高い高齢の人でも下がり、オミクロン株の「BA.5」が主流となった8月下旬までの1か月余りでは、60代で0.05%、70代で0.39%、80代以上で1.81%と、「BA.1」の時期の半分以下になっている。高齢者で進んだワクチンの追加接種の効果が大きい。

●出口模索の中国、現場混乱 ゼロコロナ抗議1週間 検査場「再配置」、長蛇の列

 中国で1週間前に広がった抗議デモは、「ゼロコロナ」政策の緩和に向かわせたが、現場では混乱が続いている。明確な出口戦略を欠いた場当たり的な対応に、市民は振り回されている。混乱を象徴するのが、PCR検査。北京では2日以降、市内に1万カ所前後あった無料PCR検査場が軒並み閉鎖、残った検査場に市民が集中。酷寒の中、長蛇の列。同様の現象は各地で起きている。

 中国ではPCR検査による1~3日以内の陰性証明をスマホのアプリなどで示さなければ、オフィスビルやレストラン、自宅のアパートにも入れない。何の説明もなく閉鎖され、陰性証明の提示の免除は発表されなかったため、混乱が深まった。PCR検査の態勢維持は地方政府の財政負担にもなっているが、高齢者のワクチン接種率が低いまま「脱PCR」を進められるのか。都市ごとにも対応の違いが生じており、迷走が表面化している。

●コロナ自己検査 キットに課題 費用は患者負担 結局外来

 コロナ下で発熱外来の逼迫を避けるため、政府は抗原定性検査キットでの自己検査を促すが、利用が広がっていない。価格の高さ(1セット1700~2200円ほど)に加え、医薬品として未承認の「研究用」キットが広く流通。抗原定性検査キットは、鼻腔のぬぐい液や唾液を使い、感染の有無を判定できるが、キットによる自己検査の精度に課題がある。

 都内では、検査キットでコロナ陰性だった人が、クリニックでの再検査で陽性になるケースが度々あった。発熱当日にキットを使っても、検出されない「偽陰性」などがある。市販キットで陽性でも「医療機関で正確な診断結果がほしい」「薬を処方してもらいたい」という理由で来る人も一定数いるという。東京都や大阪府では発熱などの症状がある人が、ホームページから申請すれば無料で1~2日後にキットを届ける。

●検査キット、未承認の「研究用」が流通

 自己検査を広げる上で混乱を招く一因となっているのが、未承認の「研究用」のキットが薬局やインターネット上で売られていること。研究用は市販が認められているが、性能を担保されてない。コロナ感染の判定精度にも違いがあり、一般用でも感染者が正しく陽性と判定されるのは低くとも6割程度とされるが、研究用には著しく低いものもあるという。このため、自己検査で感染者を登録する場合にも使えない。

 厚労省は承認した一般用キットの一覧をホームページに掲載。研究用と混同しないよう呼びかけている。現在9種類の製品がネットで売られているが、ネット上では研究用が広く出回っている。検索しても一般用を見つけにくい。キットが混在していることで、実際の医療現場にも影響が出ている。キットが研究用か医薬品か確認するのに時間が取られるという。

●インフルと同時流行、警戒

 政府が今冬の対策として意識するのは、多数の感染者によって発熱外来が逼迫すること。厚労省は2日、自治体への調査結果から、コロナとインフルを合わせて1日最大81万人の患者が出ることを見込んだ対策をとる。感染者に発熱などの症状が出た場合、重症化するリスクが低ければ、まずはキットで自分で検査。解熱鎮痛薬を飲んで自宅療養するよう促す。

 インフルとコロナの感染の有無を同時に判定できるキットの市販も解禁。供給は医療機関が優先され、出回る数は限られるものの12月にも購入できるようになる。だが、コロナのキットと同様、自己検査がうまく機能するかは見通せない。新潟大の斎藤教授(公衆衛生学)は「自己検査という言葉やキットの種類をそもそも知らない人の方が多い。基本的なところから知ってもらう工夫が必要だ」と話す。

●新型コロナ、新たに8万8752人感染 前週より減 死者103人

 国内感染者は4日、新たに8万8752人が確認された。前週の同じ曜日(11月27日)より8870人減り、3日連続で前週を下回った。死者は103人。都道府県別で最も感染者が多かったのは東京都で、1万454人。神奈川県6498人、埼玉県5389人が続いた。

 東京都は、前週の同じ曜日より108人多かった。4日までの週平均感染者数は、1日あたり1万1742.4人(前週1万388.4人)だった。4日に発表された新規感染者の年代別は、40代が1771人と最多、次いで20代1742人、30代1630人と続いた。65歳以上は1036人。病床使用率は42.8%。

 12月4日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【12月5日】

●「ゼロコロナ」抗議活動の中国、各地で感染対策見直す動き

 中国政府は先週、感染対策の適正化をさらに進める考えを示した。こうした中、上海では、地下鉄などの公共交通機関や公園などの屋外の公共施設を利用する際に求められていたPCR検査の陰性証明の提示が5日から不要になった。上海の地下鉄駅では5日朝、乗客が陰性証明が表示されるスマホを職員に見せないままホームに向かう姿が見られた。

 北京でも、5日からバスや地下鉄を利用する際に陰性証明を提示する必要がなくなったが、いずれの都市でも商業施設やオフィスビルなどに入るには陰性証明が引き続き求められ、数日おきにPCR検査を受ける必要がある。広東省・広州でも対策が大幅に緩和されるなど各地で見直しは広がっている。感染者増への備えを政府が示さないまま、急な政策修正の動きに市民は戸惑っている。

●同時検査キット、一般販売を承認 富士レビオの製品

 新型コロナと季節性インフルの感染の有無を同時に検査できる検査キットは、厚労省は5日、富士レビオの製品を一般用医薬品(OTC)として承認した。薬局やインターネットで販売が可能となる。国内で同時検査キットがOTCとして承認されたのは初めて。

 同社の製品は綿棒を使って自分で鼻腔粘膜を採取するタイプ。20分程度でコロナとインフル両方の感染がわかる。医療機関へも供給している。対面やメールなどで薬剤師による説明を理解した人に販売する。ネット販売ができるのは、実店舗をもつ薬局などに限られる。

【12月6日】

●中国・北京などで感染対策さらに緩和、感染者数は高止まり

 北京と上海では6日から感染対策がさらに緩和され、商業施設やオフィスビルなど多くの公共の場所に入る時のPCR検査の陰性証明の提示が不要になった。ただ、学校や医療機関、それに飲食店などでは陰性証明の提示が引き続き必要としているほか、商業施設などを訪れた際はスマホで、その場所に掲示されているQRコードを読み込んで、訪問記録を残すよう求めている。

 緩和策が各地で広がれば、これまで以上に感染が拡大する可能性がある。5日確認された国内の感染者数は、全国でおよそ2万7000人と高止まりしていて、中国政府が今後も感染対策の緩和を進めるのか注目される。

●中国「ゼロコロナ」見直し、「影響注視し邦人支援」 林外相

 中国各地で感染対策を見直す動きが広がっているが、林外務相は記者会見で「引き続き、中国における防疫措置が中国経済や市民活動などに与える影響について、強い関心を持って注視していく」と述べた。そのうえで、中国の日本大使館などから、あらかじめ登録した人などにメールを出して、防疫措置の周知や、食料などの備蓄の呼びかけを行っているほか、現地に滞在する日本人からの相談に応じるなどの支援を行っていると説明した。

【12月7日】

●中国政府 「ゼロコロナ」政策の規制 、「さらに緩和」 と発表

 中国政府は7日、感染対策のさらなる適正化として、すべての感染者を病院や隔離施設に移す措置をやめ、無症状や症状の軽い人は自宅での隔離を認めると発表。自宅での隔離期間は原則7日間。また、高齢者施設や医療機関、学校などを除き、PCR検査から抗原検査に切り替えを進め、省や自治区などを越えて移動する際には陰性証明を求めない。このほか60歳以上のワクチン接種を進めるとし、臨時の接種会場を設けたり車で巡回したりする。

 感染者が出た場所はこれまで通り「高リスク地区」として行動規制がかかるが、地方当局にその範囲を建物や世帯単位に縮小するよう求め、5日連続で新たな感染者が出なければ規制は解除される。また、高リスク地区以外で移動制限をしたり、店の営業や工場の操業を停止する措置をとったりしてはならない。国家衛生健康委員会は7日に会見を開き、緩和理由としてワクチン接種が進んだことや、変異株の病原性が低いことを挙げた。

●「感染状況に地域差 置き換わりに注意」 厚労省専門家組織

 厚労省の専門家組織の会合が7日に開かれ、全国的に増加が続いているが増加速度は低下し、北海道や東北など感染拡大が先行した地域では減少傾向にある。一方、遅れて感染拡大となった首都圏や近畿、四国、九州、沖縄では増加幅が大きく、地域差が見られる。また、全国の重症者数と死亡者の数は直近で横ばいだが、ほとんどの地域で高齢者の感染者数は増加が続き、これからの推移には注意が必要だという。

 今後の予測は、地域差があるものの全国的には横ばいから増加傾向が続き、免疫を逃れやすい「BQ.1」系統が国内でも増加しつつあることなどを指摘。年内にオミクロン株対応ワクチン接種を終えることや、自己検査可能な抗原検査キットの活用を求めている。忘年会シーズンを迎え、飲食はできるだけ少人数、飲食時以外はマスク着用、換気の徹底、症状があるときは外出を控えるなど基本的な感染対策の再点検や徹底を改めて呼びかけた。

●1週間の新規感染者数 全国では増加続くも幅は小さく

 厚労省の専門家会合で示された資料によると、6日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて1.06倍と増加が続いているが、増加幅は小さくなっている。首都圏では、東京都と神奈川県が1.09倍、埼玉県1.15倍、千葉県1.13倍と増加が続き、34の都府県で増加している。一方、北海道や東北を中心に、11道県では前の週から感染者が減っている。

 人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、宮城県が1007.00人と全国で唯一1000人を超えて最も多く、秋田県が940.07人、福島県が925.95人、北海道が900.35人などと、北海道や東北を中心とした地域で多くなっている。全国では595.24人。

感染症法上の扱い 判断の際に考慮する要素 国が示す

 新型コロナの感染症法上の扱いについて、厚労省は7日の専門家会合で判断する際に考慮する要素についてまとめた資料を示した。この中では、判断にあたって考慮する要素は、「病原性」と「感染力」、「今後の変異の可能性」を挙げている。

 このうち「病原性」は、オミクロン株でも季節性インフルより致死率が高いとされ、今の時点での「病原性」をどう考えるか判断が必要。「感染力」については、オミクロン株は感染力が強いとされ、国民の生命や健康に対する影響をどのように考えるか。「今後の変異の可能性」は、病原性が大きく上がるような変異が起きる可能性をどうに考えるか。このうえで、患者をどのように医療で受け止めていくかも考える必要があるとしている。

●脇田座長「大都市圏では緩やかな増加も」

 厚労省の専門家会合のあと開かれた記者会見で脇田座長は、「夏の第7波に引き続きBA.5が感染の主流になっているが、BQ.1系統の割合も徐々に増えている。また、年末年始に向けて、ふだん合わない人との接触が増えることで、感染が拡大していく可能性も高い」と指摘した。

 「高齢者の感染者は緩やかに増加し、重症者数や死亡者の増加に影響する可能性がある。年末年始に高齢者に会う機会がある人は事前検査をするなどの注意が重要」。また感染症法上の扱いの見直しは、「ウイルスの伝播力や重症度、医療へのインパクトをどう評価するか。入院勧告や濃厚接触者の隔離がどこまで必要か、通常の医療と同じレベルに移行していく際に行政からどんな支援が必要なのか評価し、考えていく必要がある」とした。

●「BQ.1」に置き換わり進む オミクロン株BA.5が主流だったが

 オミクロン株BA.5系統から派生した「BQ.1」が国内で広がりつつある。夏の第7波からBA.5系統が国内の主流だった。専門家組織の脇田座長は11月30日の会見で、11月に国内の感染増が一度鈍化した後、再び勢いを増しているのは、BQ.1への置き換わりが影響している可能性があると指摘。「7波のようにすんなりと感染者数が下がらないことも予想される」。免疫が効きにくくなり、感染が広がり易くなっているとみられる。重症化しやすさはBA.5と同程度とされる。

 国立感染研の推計では、国内では8月上旬以降、BA.5が感染者の9割以上と主流だった。しかし10月上旬から減り始め、12月7日公表の推計では5日からの週には54%。代わりにBQ.1が36%を占めると推計。英国の健康安全保障庁によると、英国では11月19日までの週でBQ.1が50%。米CDCによると、米国でも12月3日の週で63%。ただし、いずれも広がった時期に入院者数が増えるなどの傾向は報告されていない。

●BA.5型ワクチン、BQ.1に「一定の効果期待」

 米ファイザー社によると、日本では10月から接種が始まったBA.5型のワクチンを追加接種すると、接種前と比べて、BQ.1に対する中和抗体の量は約9倍増えたという。しかし、感染や発症を防ぐのに十分な量かどうかはわからない。一方、治療薬については、国内で使える中和抗体薬のロナプリーブ(一般名=カシリビマブとイムデビマブ)やゼビュディ(ソトロビマブ)は、もともとオミクロン株全般に効果が低いとされ、同じオミクロン株のBQ.1でも同様とみられる。

 東京医大の濱田特任教授(渡航医学)は、欧米では検査が厳密ではなくなっているものの、感染者数の急増はみられず、「BA.5に置き換わったときほどの急激な感染者の伸びはないのではないか」とみる。ただ今後は寒さが増し、クリスマスや年末年始には人々の接触が増える。BA.1に対するワクチンの発症予防効果は現状では明確ではないというが、「重症化しにくくなるなど一定の効果は期待でき、接種を受ける意味はあるだろう」と話す。

【12月8日】

●モデルナのコロナワクチン、追加接種可能 12歳以上に引き下げへ

 モデルナ製ワクチンは、3回目以降の追加接種の対象年齢が18歳以上。モデルナは、年齢引き下げを申請していた。8日、厚労省の専門家による部会が開かれ、製薬会社の臨床試験の結果、有効性や安全性が確認されたとして対象年齢を12歳以上に引き下げることが了承された。現在、接種が進められているオミクロン株「BA.5」などに対応するワクチンや「BA.1」対応ワクチンのほか、従来型ワクチンも対象となりる。今月中にも運用が始まる見通し。

●新たな変異ウイルスに対する飲み薬効果確認 東大研究グループ

 オミクロン「BQ.1.1」などの新たな変異株に対して、飲み薬の効果が確認できたとする実験結果を東京大学の研究グループが発表した。患者からとった「BQ.1.1」と「XBB」の増殖を抑えられるか、さまざまな治療薬を使って実験した。その結果、飲み薬の「ラゲブリオ」と「パキロビッド」、それに点滴で投与する「レムデシビル」では増殖を抑える効果は、従来型のウイルスや「BA.5」に対してと同じ程度だった。

 現在も感染の主流は「BA.5」だが、「BQ.1.1」が検出される割合は東京都で先月中旬までの1週間で7%となるなど、新たな変異ウイルスが増えてきている。

●新たにがんと診断、コロナ前の水準に 昨年 国立がんセンター調査

 2021年にがんと診断された人は、新型コロナ流行前の2018、2019年の平均と比べ1%増えた、と国立がん研究センターが発表した。2020年は新型コロナによる受診控えなどで4%減だったが、コロナ前の水準に戻った。部位別にみると、胃がんと喉頭がんの2021年の患者数はコロナ前から5%以上減ったまま。受診控えなどの影響は依然残っているとみられる。一方、乳がんや膵臓がん、子宮体がんなどの患者数は5%以上増えた。

●新たにな13.2万人 前週を1.5万人上回る

 国内感染者は8日、新たに13万2989人が確認された。前週の同じ曜日(1日)より1万5211人増え、3日連続で前週を上回った。新たに発表された死者は236人だった。新規感染者を都道府県別にみると、最多の東京都は前週より1772人多い1万4104人。8日までの週平均の感染者数は1日あたり1万2136.9人で前週の101.1%だった。次いで神奈川県8413人、愛知県8034人。

【12月9日】

● 中国、感染急増か ゼロコロナ緩和 先行した広州 病院「発熱者の80%陽性」

 「ゼロコロナ」政策の規制が大幅に緩和された中国で、新型コロナ感染が急速に広がっている。緩和が先行した広東省広州市では、病院の発熱外来を訪れる人の大半が陽性で、町工場で従業員の9割が感染した例もある。羊の絵文字を添えた「私も羊になった」というメッセージが、中国のSNS「微博(ウェイボー)」で飛び交っている。中国語の発音で「羊」は「陽」と同じ。新型コロナの陽性を意味する。

 広州市政府によると、市内で12月8日に確認された感染者は1859人。全住民を対象とするPCR検査をやめた11月30日の約6300人から「確認された」感染者数は減少傾向。当局側は大半が無症状か軽症で「心配は無用」と強調。だが、SNS上では「数字とは逆に、日に日に周りの感染者が増えている」との声が多数。9日、発熱者が頻繁に訪れていた市内の第12人民病院の関係者は「発熱して来る人の約80%は陽性」と話した。

●成田空港、国際便数はコロナ前の半分以下 水際対策緩和から半年

 水際対策の緩和による外国人観光客の受け入れ再開から10日で半年。成田空港の国際線の旅客便数はコロナ前の半分以下の47%。路線別で見ると、米国やカナダなどの太平洋線は67%、ベトナムやシンガポールなどのアジア線は66%、韓国線は55%などと回復傾向にある。一方、発着回数が最も多かった中国線は24%に留まり、「ゼロコロナ」政策が続いていた影響とみられる。

 便数の回復の遅れは、飲食店やおみやげ店、日用品店など空港内のテナントにも大きな影響を及ぼしている。コロナ前は、店舗が460余りあったが、今月3日時点で2割近くに当たる87店舗が撤退。残りの店舗も一部が休業のままで、現在、営業している店舗はコロナ前のおよそ6割。関係者は、早く中国の利用客が戻ることを期待している。

【12月11日】

●全国11万8514人、前週比2万9763人増 東京都1万2163人、前週比1709人増

 国内感染者は11日、新たに11万8514人が確認された。前週の同じ曜日(4日)より2万9763人多く、前週を上回るのは6日連続。新たに発表された死者は132人だった。都道府県別で最も多かったのは東京都で、1万2163人。前週の同じ曜日より1709人多い。次いで神奈川県が7691人で、愛知県6879人、大阪府6664人、埼玉県6505人と続いた。

 東京都の11日までの週平均の感染者数は、前週比で109.8%。年代別にみると、最多は30代の1967人で、次いで40代1949人、20代1947人など。65歳以上は1143人。病床使用率は47.3%。都基準の重症者は前日と同じ15人。新たに発表された死者は18人。

 12月11日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【12月12日】

●中国研究者、主張一転 「ウイルスより変異早い」 広がる国民の不信

 「ゼロコロナ」の大幅な緩和が進む中国で、感染症や公衆衛生の研究者たちへの批判や失望が強まっている。ウイルスの脅威を説くことで政府の厳しい規制を正当化。政策が変化すると一転「手のひら返し」、安全さを強調する。7日、会見に臨んだ国家衛生健康委員会の公衆衛生第一人者として知られる梁氏は「変異株の病原性は明らかに弱まった。現在のウイルスはこれまで以上に温和になった」と強調。これまで、コロナ危険性を指摘、ゼロコロナ維持を訴えていた。

 10月の会見では、中国疾病予防コントロールセンターの専門家の呉氏は、後遺症について「数カ月からさらに長く続く」と発言し、人びとの不安を呼んだ。この呉氏も7日にSNSで、感染しても「多くは特別な医療サービスを必要としない」と発信。中国メディアも「後遺症には根拠がない」と他の研究者のコメントを紹介。本来、科学的に提言するべき研究者の姿勢の変化に、SNS上では「中国の専門家はウイルスよりも早く変異する」と不信感が膨らんでいる。

●発熱の受診、1週間で16倍 北京

 北京市衛生当局は12日の定例会見で、11日に市内の医療機関の発熱外来で診察を受けた延べ人数が1週間前の16倍の2.2万人に達したことを明らかにした。政府が「ゼロコロナ」政策を大幅緩和したことを受け、新型コロナの感染が急拡大している。日本の119番にあたる救急通報も9日に3万1千件、通常の6倍。新型コロナと診断された人の数は明らかにしていないが、会見した当局者は「北京で新型コロナが急拡大する流れがなお存在している」と述べた。

 政府は7日、ゼロコロナ政策を大幅に緩和。日常生活に欠かせなかった1~3日おきのPCR検査も極端にゆるんでしまった。PCR検査による新規の感染者(無症状を含む)の数は11日、1100人余りでピーク時の5分の1近くに減ったが、実際の感染者はこれまでにない規模で増えている。政府はこれまでの姿勢を一転、「オミクロン株の病原性は低い」と宣伝し、重症者以外は自宅療養を促しているが、高齢者や子どもを抱える市民は不安を募らせている。

●オミクロン株BQ.1.1、「病原性 同程度か低い可能性」 東大

 免疫から逃れやすいとされ今後の拡大が懸念されるオミクロン株「BQ.1.1」について、感染したときに症状を引き起こす力は、従来の変異ウイルスと同じ程度か低い可能性があるとする動物実験の結果を、東京大学などの研究グループが発表した。それによると、実験で感染した人から取った「BQ.1.1」を細胞に感染させると、周囲の細胞を壊す力は、ことし夏の第7波以降の主流「BA.5」の2.4倍になっていたという。

 一方で、「BQ.1.1」をハムスターに感染させると、体調を示す体重の変化は「BA.5」に感染した場合とほぼ同じで、肺の機能を示す数値は悪化の程度が低かったとしている。これまでの変異ウイルスでは、細胞を壊す力が強いと病原性も高い傾向があったが、「BQ.1.1」は病原性が「BA.5」と同じ程度か下がっている可能性もあるとしている。

【12月13日】

●コロナワクチン、「全額公費」議論 3月期限 自治体から延長求める声

 新型コロナのワクチン接種について、全額を公費の「臨時接種」を来年4月以降も続けるか、厚労省の専門家分科会が13日、議論を始めた。議論の行方によっては、通常のワクチンと同様に自己負担が生じる可能性もある。ただ反対論が根強く、厚労省は延長を視野に検討している。臨時接種は、予防接種法上で「まん延予防上緊急の必要がある」場合のみに認められている。コロナワクチンはこれまで期限を2回延長していて、来年3月にまた期限を迎える。

 「来年度の予算や人員配置を検討している。臨時接種をやめるのは難しい」「4歳以下の接種は10月に始まったばかり。来年3月末までに3回接種が終わらないケースも…」。自治体関係者らからはこの日、臨時接種の延長を求める声。この議論は、コロナの感染症法上の見直しの議論とも関係する。入院勧告などの厳しい措置がとれる「2類相当」のコロナを今後、季節性インフルなどと同じ「5類」に引き下げれば、臨時接種の条件を満たさない可能性がある。

●新型コロナ飲み薬「ゾコーバ」処方できる医療機関拡大へ

 塩野義製薬が開発した新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」は重症化リスクが低い患者でも軽症の段階から服用できるのが特徴。先月22日に国が使用を緊急承認した。安全対策として当初の2週間程度は、薬が働く仕組みが同様のファイザーの飲み薬を処方した実績がある医療機関などから供給を始め、12日の時点でおよそ4800の医療機関などが登録された。

 その後、大きな問題は報告されなかったことから、厚労省は15日から特に条件を設けず都道府県が選定した医療機関での処方や薬局での調剤ができるようにすると発表。そのうえで、安定的に供給できるよう厚労省は塩野義製薬と追加で100万人分を購入する契約を結んだ。処方可能な医療機関について今後、都道府県などのWEBサイトで公開するとしている。

●総務相の記者会見 感染対策のアクリル板、2年ぶり撤去

 閣議のあとに行われている総務大臣の記者会見では、一昨年9月から感染対策のため大臣と記者席の間にアクリル板が設置されていた。13日、2年3か月ぶりにそのアクリル板が外され、記者会見が行われた。総務相は原則、マスクを外して会見に臨んでいるが、総務省は「記者席との間に十分な距離を確保しており、換気も十分で、感染のリスクは低いと判断した」としている。閣僚の記者会見では、加藤厚労相も先週からアクリル板を外している。

●旅行支援 来月10日から、割引率20%に引き下げ

 斉藤国交相は13日、旅行代金を補助する「全国旅行支援」について、現行の旅行支援は12月27日宿泊分まででいったん終了。来年1月10日から再び実施すると発表した。割引率は現行の40%から20%に引き下げる。割引の上限額も公共交通機関とセットの旅行商品は1人1泊8千円を5千円に、それ以外は5千円を3千円に引き下げる。地域で使えるクーポン券は平日2千円、休日千円が支給される。原則、電子クーポンとする。

 各都道府県の準備が整い次第、販売が始まる。販売が始まる前に予約した分には割引は適用されない。各都道府県ごとに予算を使い切ったところから支援策は順次、終了する。

●忘年会・新年会「開催せず」7割 開催派の4割「二次会自粛」

 年末年始の忘年会・新年会を「開催しない」とする企業が7割にのぼることが、東京商工リサーチのアンケートで13日明らかになった。企業の中にはコロナ禍を機に「仕事上のつきあい」を見直す動きが広がっているとみられる。アンケートは1~8日に実施し、国内4766社が回答。「開催しない」は71.1%。1年前より8.3ポイント減少。10月の調査では「開催しない」が61.4%だったが、感染者数が増加したこともあり、開催をとりやめる企業が増えた。

 「開催」とした3割近くの企業のうち、2割超は「緊急事態宣言」などの制限がないことが開催条件。すでに開催したか、開催意向のある企業に尋ねると、42.7%が「二次会を自粛」と答えた。「開催時間を制限(短縮)」(27.8%)、「人数を制限」(27.5%)がほぼ同数。東京商工リサーチ担当者は、会社行事の忘年会・新年会は今後もコロナ前のような活況を取り戻さないとみる。「企業は飲みニケーションにかわるものを見つけないといけない」と話す。

【12月14日】

●専門家会合、「年末に向け接触機会増加など注意必要」

 厚労省の専門家組織の会合が14日に開かれ、直近1週間の新規感染者数は全国平均で、前週比1.2倍の増加傾向。感染拡大が先行した北海道でなど3道県は、前週を割り込んで減少傾向。遅れて拡大した西日本で軒並み増加のペースが大きくなり、特に九州を中心に8県では1.5倍超。東北・北陸・甲信越も減少傾向から増加傾向に転じている。全国で高齢者で感染者数が増加し、重症者数や死亡者数は再び増加傾向にある。

 医療体制は、病床使用率も上昇傾向で、22道府県で50%以上。救急搬送が困難なケースも増え、特にコロナ以外での救急搬送が困難なケースはことし夏の「第7波」のピークと同じレベルに達し、年末年始の救急医療体制の確保に注意が必要。今後の感染状況予測では、多くの地域で増加傾向が見込まれ、より免疫を逃れやすいとされる「BQ.1」の割合が国内でも増加しつつあり、年末年始で接触機会が増えることなどに注意が必要だと指摘した。

●13日まで1週間の新規感染者数、44都府県で前週から増

 厚労省の専門家会合で示された資料によると、13日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.20倍と増加のペースが上がっていて、北海道と山形県、長野県を除き、九州など西日本を中心に44の都府県で、前の週から感染者数が増えている。首都圏では、東京都が1.16倍、神奈川県が1.15倍、千葉県が1.22倍、埼玉県が1.18倍と増加が続いている。

 人口10万人当たりの直近1週間の感染者数は、鳥取県が1112.20人と最も多く、宮城県1067.07人、福島県1034.07人、佐賀県979.49人、新潟県950.72人、秋田県950.70人などと多くなっている。全国では716.43人。

●脇田座長「感染の増加傾向続く可能性高い」

 専門家会合のあとの記者会見で、脇田座長は「自然感染による免疫もワクチンによる免疫も、時間とともに減っているほか、年末年始でふだん会わない人と会う機会も増えるため、全国的に見れば、感染の増加傾向は続いていく可能性が高い」と指摘。その上で、「インフルも年明けから流行が広がる可能性があり、基本的な感染対策の継続や体調の管理は必要。帰省で高齢者に会う機会が増えるので、事前の検査や体調管理の配慮をしてほしい」と呼びかけた。

●「インフル同等と判断できる条件満たしてない」 専門家有志

 新型コロナの感染症法上の扱いについて、季節性インフルと同じ「5類」への引き下げも含めた見直しが議論されているが、専門家有志は、新型コロナはインフルと同等と判断できる条件を現時点で満たしていないとするリスクの評価をまとめた。リスク評価は、東北大学の押谷教授や、京都大学の西浦教授など、専門家4人がまとめ、14日に開かれた厚労省の専門家組織の会合で示した。

 文書では、新型コロナのリスクを、感染の広がりやすさ「伝播性」や、感染した場合の「重症度」、それに「医療や社会への影響」の3項目について評価している。こうしたことから、現時点では、新型コロナは「季節性インフルと同等のものと判断できる条件を満たしていない」と結論づけている。会合のあとの記者会見で、押谷教授は「インフルと全く違う特徴を持っているウイルスと、われわれは対峙していると理解する必要がある」と話していた。

●新型コロナ「後遺症」での受診リスク 感染した人最大6倍ほどに

 名古屋工業大学の平田教授らの研究グループは、およそ125万人分のレセプト(診療報酬明細書)の記録を、感染した人と感染していない人で、「後遺症」の倦怠感や頭痛、呼吸困難など10の症状で医療機関を受診する人の割合を調べた。その結果、重い持病がない人でこれらの症状で受診した人の割合は、第1波から第3波に当たる去年春までの1年間では、感染していない人では3%、感染した人ではその後6か月間で16%と5倍程度高くなっていることが分かった。

 受診した人の割合は「第4波」や「第5波」の時期でも最大で6倍程度高くなっていたが、オミクロン株が拡大した「第6波」のことし1月から3月には3倍にまで低下していたという。平田教授は「ワクチンの効果や変異ウイルスの病原性もあって(後遺症)リスクが低下した可能性がある」と話している。

●中国、「無症状」の発表停止

 中国の国家衛生健康委員会は7日に対策の緩和を発表し、これまでは医療機関や施設での隔離が義務だった軽症と無症状者について、自宅での隔離を認めた。日常生活に組み込まれていたPCR検査の機会が減っており、抗原検査キットで自ら陽性を確認した市民が自宅療養するケースが増えている。同委員会は14日、無症状感染者について、正確に把握できないため今後は人数の発表をとりやめる方針。

 公的なデータが発表されなくなる一方で、中国各地ではコロナの陽性者が激増しているとみられる。病院の発熱外来には連日、大勢の患者が詰めかけ、薬局では薬や抗原検査キットが品薄になっている。13日には、市民の行動を追跡するスマホのアプリも廃止。プライバシーなどを考慮せずに滞在した都市が自動的に表示される仕組みで、直近の訪問先が感染リスクの高い地域だとみなされると、行動が制限されていた。

●5類移行、「インフルとの比較は困難」 専門家ら 難しい時期判断 政府

 新型コロナを季節性インフルと同じ感染症法上の「5類」に変更するかどうか、政府と専門家らの議論が本格化している。医療体制や公費負担のあり方、変更時期が焦点となる。一方、専門家組織の有志は14日、コロナはインフルとの比較が困難だとする見解を公表した。医療現場の逼迫を受け、自治体が5類への早期変更を求める中、政府は難しい判断を迫られる。

 政府は「国民は3年も不自由な生活を送り、もう待ってくれない」と受け止める一方、今冬の感染拡大中に5類変更を打ち出せば、国民に「もう感染対策は不要」と受け取られかねない。また、5類になれば感染者の隔離などさまざまな措置が無くなり、店での飲食やイベント参加が増える。自治体や医療機関も準備が必要なため、5類変更前に一定の周知期間を置かねばならない。5類の変更時期について、来年度の自治体予算成立(来年3月)には間に合わない。

●製造業4期連続悪化 非製造業は改善続く 日銀短観

 日本銀行が14日に発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業・製造業の業況判断指数(DI)が4四半期連続で悪化した。前回9月調査から1ポイント悪化してプラス7。業種別では石油・石炭製品が40ポイント悪化、化学が8ポイント悪化など、産業の「川上」にあたる産業での悪化が目立った。世界経済の減速を見込み、原油や鉄など素材の価格が下落傾向にあり、景況感を落ち込ませている。

 一方、大企業・非製造業はは3四半期連続の改善。5ポイント改善してプラス19。特に宿泊・飲食サービスは28ポイントの大幅改善。「全国旅行支援」や、10月から新型コロナの水際対策が緩和されたことが追い風になったとみられる。3カ月後の景況感を聞いたDIは、大企業・製造業がプラス6と今回から1ポイントの悪化、非製造業もプラス11と8ポイント悪化を見込んでいる。

●コロナ発症1カ月、20人に1人後遺症 豊中市など調査 日常に支障1.6%

 大阪府豊中市などは14日、新型コロナの後遺症調査の結果を発表した。市役所で会見した大阪大学大学院の忽那教授(感染制御学)によると、療養後に何らかの症状があったと回答したのは47.7%。「日常生活の支障」が30日以上続いた人は1.61%に上った。1カ月後も感染者の20人に1人、2カ月後も27人に1人は、何らかの後遺症があった。後遺症が30日以上続いた人では、髪の脱毛が1.41%と最も多く、せき、熱、嗅覚障害、味覚障害と続いた。

 発症時期から推定して、77.3%がオミクロン株に感染。また重症だった人は、軽症の人より後遺症が約5.4倍起きやすかった。ワクチン接種をするほど後遺症が起こりにくい傾向も分かり、忽那教授は「特に重症度リスクの高い人のワクチン接種や感染予防策は引き続き重要」と語った。長内市長は「(症状は)徐々に改善するが、日常生活に支障が出るとわかった。感染予防を徹底し、ワクチンを接種してもらえる環境を提供し、こうした情報を市民に知らせたい」と語った。

【12月15日】

● 中国ゼロコロナ緩和、感染増 「社員ほぼ全滅」 発熱外来受診16倍

 「ゼロコロナ」政策が緩和された中国で、感染が急拡大している。日系を含め多くの企業で部署のほぼ全員が感染するようなケースが相次ぐ。政府が感染者の全数を把握することをやめたために正確な数字は不明だが、取材からは感染の「爆発」に近い実態が見えてきている。中国政府のコロナ対策に影響力のある医師チームなどは、中国メディアに対し、今後の感染のピークは1月中下旬から2月にかけてと予想している。

 中国当局が発表した14日の新規感染者数は、広東省が857人、次に多い北京市が494人。だが、政策の緩和でPCR検査を受ける人が激減しているほか、13日分からは無症状感染者の統計も発表されなくなった。当局発表の感染者数は、実態とはかけ離れている。北京市内の医療機関で発熱外来を受診した延べ人数は11日、1週間前の16倍に上った。

●米国CDC、コロナ後遺症関連の死亡「3500人余」 報告書公表

 新型コロナの「後遺症」は、息苦しさやけん怠感などの症状が長く続き、人によって数か月以上続くケースも報告されている。この後遺症を巡って米国CDC(疾病対策センター)は14日、後遺症に関連して死亡した人がどのくらいいるか、分析した報告書を公表した。分析は、一昨年1月から今年6月までに、米国で新型コロナで死亡したおよそ102万人を対象に行われ、死亡診断書に後遺症を示す「ロング・コビッド」などの単語が含まれるものを調べた。

 その結果、全体のおよそ0.3%にあたる3544人が新型コロナの後遺症に関連して死亡したと特定したという。年代では65歳以上がおよそ8割で、男性のほうが女性よりもわずかに多い傾向のほか、時期でみると今年2月が最も多くなっていた。

●新型コロナ感染者の葬儀、最後の別れができるように 見直しへ

 新型コロナに感染して亡くなった人の遺体の搬送や葬儀などについて、厚労省と経産省はおととし7月にガイドライン案をまとめた。遺体は「納体袋」で包み、遺体に触れることは控えるほか、濃厚接触者の参列については無症状の場合でもオンラインを活用するなど対面を避けるよう推奨していた。遺族からはこれまで、「最後の別れができるようにしてほしい」との声が上がっていた。

 厚労省などがまとめた見直し案は、遺体から一定の対策をとれば「納体袋」は必要ない。「遺体に触れることは控える」という表現を削除し、触れた場合は適切に手を洗うよう求めている。濃厚接触者は基本的な感染対策をとれば葬儀や火葬に参列できる。厚労省などは業界団体などの意見を踏まえて年内にもガイドラインを改定する方針。見直されれば基本的な感染対策をとったうえで、亡くなった家族の体に触れるなど最後の別れができるようになる。

●東京の感染者、4週間後に1日3万人か 専門家らの会議で報告

 東京都は15日、感染者を新たに1万7687人確認したと発表。前週の同じ曜日より3583人多い。同日の都モニタリング会議では、このままのペースで感染者が増え続けると、1月11日には約3万人の新規感染者が予測されると報告された。15日までの週平均の感染者数は1万4802.9人で、前週(1万2136.9人)の122.0%。新規感染者を年代別でみると、最多は20代の3232人、次いで30代3128人、40代3021人など。病床使用率は52.2%。

 モニタリング会議では7週連続で週平均の感染者数が前週を上回ったと報告された。出席者からは「(感染者増加は)寒さで換気が悪くなった影響が大きい。いろんな種類の変異株が同時にはやっていることもある」「医療機関は負荷が増大している」などの指摘があった。年末年始の診療の報告もあり、都立病院12カ所は20日以降、1日あたり計1千人のコロナ患者を診察できる体制を整えたとした。

 12月31日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●全国で16万8491人の感染確認 10日連続で前週上回る

 国内感染者は15日、新たに16万8491人が確認された。前週の同じ曜日(8日)より3万4992人多く、10日連続で前週を上回った。死者は277人。都道府県別の感染者数は、東京都の1万7687人が最多。神奈川県1万1040人、愛知県9810人、大阪府9586人、埼玉県9142人と続いた。

 以下5枚の図は12月31日時点の国内感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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2022年12月22日 (木)

新型コロナ2022.11 増加続く

 新型コロナウイルス感染症の「第7波」は、8月下旬からは減少傾向が続いていたが、10月中旬にはおよそ2か月ぶりに増加に転じた。この冬は季節性インフルエンザと新型コロナの同時流行が懸念されている。11月から「第8波」が始まり増加が続いているものの、その速度は比較的緩やか。北海道ではピークを迎え、減少に転じ始めた。今後の短期的な予測では、地域差や不確実性はあるものの全国的に増加が続くと見込まれる。

 2022年11月16日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2022.11 第8波入口」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

 

【11月16日】

●ゼロコロナ、怒る広州 飲食店従業員「商売にならない」

 中国が続ける厳しいゼロコロナ政策をめぐり、広東省広州市で混乱が広がっている。14日夜、地区封鎖(ロックダウン)や突然の立ち退き通告などに対して住民の怒りが爆発。バリケードをなぎ倒すなどの暴動になり、治安部隊が鎮圧に乗り出す事態になった。暴動が起きたのは、広州市中心部から南へ約7キロの海珠区の下町。政府側は、この地区は人口が密集して衛生状態が悪く、ウイルスが拡散しやすいことを理由にしている。

 広州市当局は16日、前日に新たに確認された感染者が過去最高の6296人になったと公表。国家衛生健康委員会によると、中国全体でも新たな感染者が2万199人となり、上海がロックダウンしていた4月中旬以来の2万人台となった。

●訪日観光客、前月比15倍 10月

 日本政府観光局は16日、10月の訪日外国人客(インバウンド)が49万8600人だったと発表した。9月の20万6500人から約2.4倍。このうち観光目的は約29万人で、9月の約1万9千人から15倍以上に伸びた。新型コロナの水際対策が大幅に緩和されたことを受けて、日本への入国がしやすくなった効果が表れた。

 10月11日から1日あたりの入国者数の上限がなくなり、水際対策がほぼ撤廃された。ビジネス、観光ともに来日しやすくなり、緩和前の10月1~10日の訪日客数は1日平均約2千人だったが、緩和した11日以降は平均約1万3千人と約7倍、11月からは約2万人に増えた。国・地域別では、韓国(12万2900人)、米国(5万3200人)、香港(3万6200人)の順に多かった。2020年3月以来、最多となる。

●新型コロナ「新たな波が始まった」 日本医師会常任理事

 日本医師会の釜萢(かまやち)常任理事は記者会見で「波の定義は明確に決まっていないが、新たな波が始まったと捉えざるをえないのではないか。医療提供体制をできるだけ急いで整えなければならないという危機感を持っている」と述べ、「第8波」が始まったという認識を示した。

 そのうえで「新規感染者は10代から40代の若年層が多いので、こうした世代にオミクロン株に対応したワクチンの接種をお願いしたい。感染リスクの高い行動を、それぞれの方の判断で抑制しないといけない時期に入っている。社会経済活動を回すことは極めて重要だが、行動をどう選択するのかを考えてほしい」と呼びかけた。

●コロナ感染数週間後の子ども、心臓など働き悪くなる「MIS-C」

 新型コロナに感染した子どものうち全国で少なくとも64人が、感染から数週間後に心臓の働きなどが悪くなる「MIS-C=小児多系統炎症性症候群」と診断されていたことが、自治医科大学附属病院などの調査で分かった。「MIS-C」は心臓や肺、消化器系統など複数の臓器に炎症が起きることが知られている。重症化すると、心臓の働きが低下し死亡するケースもある。米国では、一昨年から先月末までに9073人がMIS-Cと診断、このうち74人が死亡している。

 日本小児科学会などによると、これまでに国内での死亡例はないが、ことしに入り、子どもの感染が増えてからは、各地の医療機関でMIS-Cと診断される症例が目立つようになったという。このため、新型コロナに感染した子どもの体調に異変が起きた際は、MIS-Cかどうか早期に診断したうえで、専門的な治療を始められるかが重要になる。

●感染者、2日連続10万人超

 国内で16日、10万6689人の新型コロナ感染者が確認された。2日連続で1日当たりの新規感染者数が10万人を超えた。北海道と長野で過去最多を更新するなど、東日本での増加が目立っている。都道府県別の内訳は、北海道1万1112人、東京1万114人、愛知6841人など。死者は北海道23人、広島10人など計135人が報告された。厚労省によると、重症者は前日から6人増えて263人だった。

 11月16日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●北海道、新型コロナで23人死亡 1万1112人確認 2日連続で最多更新

 16日、北海道内では新たに1万1112人が新型コロナに感染していることが確認され、1日の発表としては15日に続いて、第7波のピークを超えて過去最多を更新した。15日に続いて1万人を超え、過去最多を更新した。また道内の感染者数は先週水曜日に比べても1567人増え、感染が急速に拡大している。また合わせて23人の死亡が発表された。

●長野県、新型コロナで2人死亡 過去最多の3821人の感染確認

 長野県内で16日の新型コロナ感染は、一日の発表者数としてはこれまでで最多の3821人。先週の水曜日より480人増えた。これまでの最多の3649人(8月19日)を172人上回っている。新たな集団感染は高齢者施設10か所と医療機関4か所で確認された。長野県は、医療提供体制の逼迫に伴って出される医療アラートのうち、最も深刻な「医療非常事態宣言」を全県に出し、「屋内の換気を行うなど基本的な感染対策を徹底してほしい」と呼びかけている。

【11月17日】

●対中国、二つの不安 コロナ政策、弊害 半導体、経済安保の影

 17日に3年ぶりとなる首脳会談を実現した日中。岸田首相は会談で「日本企業の正当なビジネス活動が保障されることが重要」と主張した。念頭には、ゼロコロナ政策と経済安全保障の観点から高まるチャイナリスクがあるとみられる。長らく「政冷経熱」と称されてきた経済の蜜月関係を見直す動きが日系企業の間で出始めている。

 突然のロックダウンによるサプライチェーン(供給網)の停止、厳格な移動制限、感染を疑われただけで強制隔離。ここ数年、中国に進出する企業はゼロコロナ政策がビジネスにいかに障害になったかを体験した。経済安全保障上の懸念も強まっている。特に影響を受けるのが、工業製品に欠かせない「特定重要物資」として政府が指定する半導体。経済界に対中警戒感が広がっても、中国市場を無視できないのも現実。

●北海道・東北などで拡大 東京、1月中旬ピークか 専門家組織

 厚労省の専門家組織は17日、全国の直近1週間の新規感染者数は前週比1.24倍となり、前週より伸びは鈍化したものの、感染拡大の増加傾向は続いていると分析。「BA.5」に代わる新たな変異ウイルスへの置き換わりや接触機会の増加の影響に注意が必要だという。名古屋工業大の平田教授らの試算では、東京は1月中旬にピークを迎えるという。ただ、1日最大約3万1千人と第7波ピーク時と同水準にとどまるとした。

 人口10万人あたりの直近1週間の新規感染者数では、最多は北海道1094人で、山形県861人、長野県853人。一方、西日本では沖縄県139人、鹿児島県176人など。内閣官房によると、病床使用率は16日時点で最も高いのは茨城県の57%で、群馬県53%。長野県47%、北海道と山形県45%。専門家組織は、今夏の「第7波」で人口あたりの感染者が多かった西日本では自然感染による免疫獲得者が多く、感染が広がりにくくなっている可能性があると分析した。

●1週間の新規感染者数、前週比1.24倍に 増加傾向続く

 厚労省の専門家会合で示された資料によると、16日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて1.24倍に増加している。増加幅は先週よりも狭まったが、増加傾向が続いている。首都圏の1都3県では、東京都が1.24倍、神奈川県が1.29倍、埼玉県が1.27倍、千葉県が1.31倍と増加が続いている。山口県を除く46の都道府県で増加している。

 人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、北海道が1093.61人と1000人を超えて全国で最も多く、次いで山形県が860.65人、長野県852.58人、宮城県745.96人、福島県722.09人、秋田県700.99人などと、北海道や東北を中心とした地域で多くなっている。全国では435.17人。

●脇田座長 「ワクチンの年内接種の検討を」

 厚労省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田座長は現在の感染状況について「北海道や東北、北陸などが感染者数が多い東高西低のような状況で、大都市は比較的少なく、人口規模が小さい場所で増えている傾向がある。また、第7波のときに感染者数が多かったところが現在は少なく、少なかったところがいま増えてきている。北海道や東北など寒い地域では換気しにくい状況も影響していると思う」と述べた。

 そして「年末に向けて接触が増え、ワクチンや感染したことによる免疫が下がっていくことから、今後、ピークを迎えても感染者数がすんなりと減っていかないのではないか、医療への負荷が増大していくことも危惧されるといった議論があった」と述べた。そのうえで一人一人が自主的に基本的な対策を行うことが重要。ワクチン接種がやはり重要で、インフルやオミクロン対応のワクチンを年内に接種することをぜひ検討してほしい」と呼びかけた。

●「会場の体制に問題」 ワクチン接種直後に死亡 医師会検証

 愛知県愛西市の集団接種会場で、新型コロナワクチンを接種した女性(42)が体調を悪化させて死亡した問題で、県医師会は17日、検証結果を公表した。重いアレルギー反応の「アナフィラキシー」が疑われた状況だったとし、「その場でアドレナリンの筋肉注射をすべきで、体制に問題があった」と指摘した。医師や学識経験者らでつくる県医師会の「医療安全対策委員会」で検証を進め、柵木(ませき)会長や担当者らがこの日、会見した。

 「もし(アドレナリンの筋肉注射を)打っていたら僕はここまで怒りません。打っていないんですよ」「結局、責任の所在をあやふやにしているだけ」。女性の夫(45)は17日、愛西市内で記者会見に応じ、県医師会の検証結果について憤りをあらわにした。

●東京都、「第8波の入り口に」 警戒レベル1段引き上げ

 東京都は17日、都内の感染状況と医療提供体制を専門家が分析・評価するモニタリング会議を開いた。都内の新規感染者数が増えていることなどから、専門家は「第8波の入口にさしかかっている」として、4段階ある感染状況の警戒レベルを1段引き上から2番目「感染が拡大している」に上げた。この中で、新規感染者の7日間平均は、16日時点で8019.7人で、前週比は124%、3週連続で100%を上回っていることが報告された。

 医療提供体制は、「体制強化の準備が必要な状況である」として警戒レベルは下から2番目を維持。ただ、入院患者数は1週間前より435人多い2471人、4週連続で増。また、新型コロナとインフルの同時流行で患者数は最多で9万3000人を想定、発熱外来の逼迫を防ぐため、陽性者登録センターの1日の受付を8千人から4万人に増やす、年末年始の診療や小児科の発熱診療を対象に協力金を支給、臨時のオンライン発熱診療センターを設置する方針などを明らかにした。

【11月18日】

●同時流行「兆し」 インフル、1部地域で増加傾向 厚労省、感染状況1段階引上げ 

 新型コロナと季節性インフルの同時流行の兆しが見えているとして、政府は18日、国民への呼びかけ内容をこれまでより強め、重症化リスクに応じた外来受診や自宅療養を促すことを決めた。厚労省がこの日、同時流行対策の会議を開催した。加藤厚労相は、現在のコロナの感染拡大は「第8波」となる可能性があり、インフルも一部地域で増加傾向にあると説明。「国民への呼びかけの段階を先手先手で引上げる」と述べた。

 同省はコロナとインフルの感染状況について、①落ち着いている、②同時流行の兆しが見える、③同時流行により医療逼迫が懸念されるの3段階に整理している。これまでは①、国民にはワクチンの接種、抗原検査キットや解熱鎮痛剤の事前購入を呼びかけてきた。今回は②に引き上げ、都道府県を通じ、高齢者など重症化リスクが高い人は症状があれば速やかな発熱外来の受診を呼びかけ、若い人などには自主検査した上で自宅療養を促す。今後、テレビCMやネット広告も予定している。

●第8波対応「補償想定せず」 コロナ担当相

 後藤新型コロナ担当相は18日、政府の新型コロナ対策本部の開催後の会見で記者団の質問に対し、「第8波」への対応として都道府県が「医療非常事態宣言」を出してイベントの中止や延期などを要請した場合の政府補償について「想定していない」と答えた。「(開催する)事業者が対応可能な範囲において(延期の)協力要請や呼びかけを行う」とも説明し、要請には強制力がなく主催者の判断に委ねる考えも強調。これらについては21日に都道府県に説明する。

 第8波の対応で、感染力や重症化率が今夏のオミクロン株程度なら、飲食店の営業時短やイベント人数制限などを伴う「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」は出さない。都道府県が病床使用率など医療逼迫度合いに応じて「医療逼迫対策強化宣言」を出し、外出や大人数の会食を控えるよう呼びかける。医療が機能不全に近づくと「医療非常事態宣言」を出し、旅行や帰省の自粛、イベント延期などを都道府県が要請。学校の休校や飲食店の営業自粛は求めない。

【11月19日】

●ファイザー の「BA.5」対応ワクチン  ほかの変異株にも効果確認

 製薬会社のファイザーなどは、新型コロナのオミクロン株「BA.5」に対応するワクチンを追加接種することで、欧米で感染が広がっているほかの変異株に対しても、従来のワクチンと比べウイルスの働きを抑える中和抗体の効果が高くなるとする試験結果を18日、発表した。

 欧米で感染が広がっている変異株「BQ.1.1」に対しては、「BA.5」に対応するワクチンでは8.7倍、従来のワクチンでは1.8倍となり、「BA.5」対応ワクチンのほうが効果が高くなっている。また、変異株の「BA.4.6」でも「BA.5」対応ワクチンのほうが効果が高まることを確認したという。ファイザーは「このワクチンは感染者が増加している新しい変異株に対しても、より感染を防ぐ効果がある可能性がある」としている。

●オミクロン株対応ワクチン「情報の十分な周知を」 教委に通知

 オミクロン株対応のワクチンは、従来の2回目までの接種を終えた12歳以上のすべての人が対象になっており、国は希望する人が年内に接種を終えられるように体制の整備を進めている。一方で、18日に公表された最新の状況では、全人口に対する接種率は12%。こうした中、文科省と厚労省は、ワクチンの効果や副反応、それに相談先など、接種の判断に役立つ情報を十分に周知するよう、全国の教育委員会や自治体の保健部局などに18日付で通知した。

●感染者が増加 面会制限を再び厳しくする医療機関も

 厚労省によると、19日発表した国内の新たな感染者は、先週の土曜日に比べておよそ13%増えている。40の都道府県で1週間前を上回った。感染が拡大傾向となっていることから、医療機関の中にはいったん緩和した入院患者と家族との面会の制限を再び厳しくする動きも出ている。

【11月20日】

●中国、コロナ感染急拡大 約半年ぶりに死者 景気回復進まず

 中国政府の発表によると、中国国内では19日、31ある省や自治区などすべてで新型コロナの感染者が合わせておよそ2万3000人確認された。1か月前は1000人を下回っていたが、感染が急拡大している。このうち北京では、新型コロナに感染した87歳の男性が基礎疾患の症状が悪化して死亡したという。中国で感染した人が死亡するのは、上海で感染拡大して厳しい外出制限がとられていた今年5月下旬以来、およそ半年ぶり。

 北京中心部にある人口340万余りの朝陽区では多くの飲食店が店内での飲食の提供をやめているほか、当局がこの週末はなるべく自宅で過ごすよう求めるなど、各地で感染対策が強化されている。こうした行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策は、消費の停滞につながって景気回復が進まない要因にもなっている。政府は、今月、濃厚接触者の隔離期間を短縮するなど見直しを発表したが、経済と感染対策をどう両立するか難しい舵取りを迫られている。

●全国で7万6938人感染 16日連続で前週上回る 新型コロナ

 国内感染者は20日、新たに7万6938人が確認された。前週の同じ曜日(13日)より8521人多く、16日連続で前週を上回った。死者は57人だった。都道府県別で最も感染者が多かったのは東京都で、7777人。これに、北海道5747人、神奈川県5058人と続いた。

 11月20日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【11月21日】

●磯崎官房副長官、「ワクチン同時接種も可能」 早期接種呼びかけ

 新型コロナとインフルの同時流行が懸念されるなか、磯崎官房副長官は記者会見で、両方のワクチン同時接種も可能だと説明し、早期接種を重ねて呼びかけた。官房副長官は新型コロナの感染状況について「新規感染者数が増加傾向にある。インフルは引き続き低い感染レベルだが増加の兆しが見られ、同時流行が懸念されている」と述べた。また、「同時接種を推奨しているということはないが、厚労省の審議会で安全性と有効性を議論いただき、実施可能」と説明した。

 そのうえで「すでに一日100万回を超えるペースの接種体制を整備しているほか、関係団体に早期接種に向けた協力を働きかけてきた。接種促進に向けて情報発信に努めるなど、希望するすべての対象者が年内にオミクロン株対応ワクチン接種を受けられるように取り組んでいきたい」と述べた。

●コロナ陽性報告も高速バス運転させる バス会社処分 近畿運輸局

 兵庫県丹波篠山市のバス会社が、運転手から新型コロナの陽性反応が出たと報告を受けていたにもかかわらずそのまま乗務させていたことが分かり、近畿運輸局はこの会社に対して、道路運送法に違反する行為があったとして、11月28日からバス3台を30日間の使用停止処分とした。ことし8月、東京発大阪行きの夜行バスの運行前に、運転手から「新型コロナの陽性反応が出た」という報告を受けたにもかかわらず、そのまま乗務させていた。

● 東京4619人感染

 国内感染者は21日、新たに4万1454人が確認された。前週の同じ曜日(14日)より4873人多く、17日連続で前週を上回った。死者は144人だった。都道府県別で最も感染者が多かったのは東京都で、4619人だった。北海道の3812人、神奈川県の3485人が続いた。

【11月22日】

●北京、コロナ感染者1000人超える 日本人学校はオンライン授業に

 中国政府によると、国内では21日、31ある省や自治区などで、新型コロナ感染者が合わせておよそ2万7000人確認された。このうち、北京では21日、1日の感染者がおよそ1400人と初めて1000人を超え、衛生部門の担当者は「感染が発生してから最も緊迫した状況に置かれている」として、感染対策を徹底するよう呼びかけた。およそ250人の児童と生徒が通う北京の日本人学校では、授業が22日からオンラインに切り替えられ、周囲はひっそりとしていた。

●塩野義製薬の新型コロナ飲み薬の使用を承認 厚労省

 塩野義製薬が開発した新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」について、厚労省の専門家会議が使用を認めることを了承し、厚労省が承認した。重症化リスクの低い患者も軽症の段階から服用できるのが特長。国内製薬会社が開発した初めての飲み薬。この薬は、軽症の段階から服用できる飲み薬で、重症化リスクが高い患者を対象にしていた薬と違い、リスクの低い患者でも服用できるのが特長。コロナの医療費は公費のため、当面、患者の自己負担はない。

 ことし2月に承認申請のあと、「緊急承認の制度」で6月と7月に審議されたが、有効性についての判断が見送られて継続審議となり、塩野義製薬はその後、最終段階の治験の結果を新たに、厚労省などに提出していた。22日開かれた厚労省の専門家会議では、発熱などの症状を改善する効果が認められたことなどから、「有効性が推定される」と評価して使用を認めることを了承した。

●「変異ウイルス拡大や年末の接触機会増加に注意」 専門家組織

 専門家組織は22日、感染状況について、全国的に増加が続いているものの、その速度は鈍化し北海道などでも鈍化の傾向が見られる。人口当たりの新規感染者数は、10代など若い世代ほど多いほか、ほとんどの地域で高齢者の増加が続き、重症者や亡くなる人も増える傾向と指摘。今後ピークを迎える可能性があるが、「BQ.1」や「XBB」などのへの置き換わりの状況や、年末に向けて直ちに減少に向かうことなく、横ばいや再増加する可能性もあると分析している。

 そのうえで専門家会合は、必要な対策として、年内にオミクロン株対応のワクチン接種を終えるよう呼びかけることや、自分で検査を行える抗原検査キットの活用を進めることなどを挙げている。さらに忘年会シーズンを迎えることを踏まえ、改めて、飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用すること、換気の徹底、症状があるときは外出を控えることといった、基本的な感染対策を再点検するよう求めた。

●加藤厚労相「直ちに減少に向かうことにならない」

 専門家組織の会合で、加藤厚労相は「新規感染者数の増加速度は鈍化しているが、変異株の置き換わりや接触機会の増加などによって、直ちに減少に向かうことにはならない。季節性インフルも一部の地域で増加傾向が継続しており、引き続き感染動向に注意が必要」と述べた。そのうえで「同時流行に備えて、ワクチンをまだ接種していない人は接種の検討をお願いしたい。さらに、国が承認した検査キットや解熱鎮痛剤を早めに購入するなどの準備をしてほしい」と呼びかけた。

●1週間の新規感染者数  全国、前週比1.18倍に増加

 厚労省の専門家組織の会合で示された資料によると、11月21日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.18倍に増加している。増加幅は先週よりも狭まったが、増加傾向が続いている。首都圏の1都3県では、東京都が1.17倍、神奈川県1.21倍、埼玉県1.22倍、千葉県1.28倍と増加が続いている。山口県と徳島県を除く45の都道府県で増加している。

 人口10万人当たりの直近1週間の感染者数は、北海道が1120.66人と1000人を超えて全国で最も多く、次いで長野県が907.27人、山形県が895.39人、宮城県が847.74人、福島県が795.41人などと、北海道や東北を中心とした地域で多くなっている。全国では473.60人となっている。

 11月21日までの新規感染者数の前週比 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●脇田座長「変異ウイルスに置き換わるときインフル重なる可能性」

 脇田座長は専門家組織の会合のあとの記者会見で、全国の感染状況について「増加速度はやや鈍化している。感染者は10代以下が中心だったが、少し頭打ちの傾向で、増加していた地域はピークを迎える可能性があるという議論があった。一方、ピークを迎えても今後、別の変異ウイルスのBQ.1やXBBに置き換わり新たな感染拡大の可能性が指摘。また高齢者では感染者数の緩やかな増加が続いていて、重症者や死亡者の増加に注意が必要」と述べた。

 また、インフルと新型コロナの同時流行について「インフルは現在、緩やかな増加傾向で、非常に低い水準にある。年内に大きな流行が来るというよりは、来年、新学期になって、学校活動が始まる時期に流行が大きくなる可能性がある。新型コロナがオミクロン株の別の変異ウイルスに置き換わっていくときの流行拡大に、インフルの流行が重なる可能性もあるといった議論があった」と述べた。

●コロナ・インフル同時検査キット 年内にも一般販売 厚労省

 厚労省は22日、新型コロナと季節性インフルの同時検査ができるキットについて、専門家組織の会合で、インターネットや薬局で一般向けに販売できるよう解禁する方針を明らかにした。同時流行の兆しが見える中、検査目的の受診者を減らし、発熱外来の逼迫を避ける狙いがある。今後、別の専門家部会に正式に諮り、承認を得られれば、早ければ年内にも一般販売が始まる。

 同時検査キットは、自分で鼻腔の粘膜を採取し、15分前後で結果が判明する種類が多い。一方、偽陰性になれば治療が遅れて重症化する懸念が残る。季節性インフルは関西で広がりつつある。7~13日の定点医療機関あたりの患者数は大阪府が0.48(前週0.36)人、京都府0.34(前週0.22)人で、流行開始目安の1以上ではないが増加傾向が続いている。

●接種後死亡、調査委設置へ 愛知・愛西市長「現場対応は適切」

 愛知県愛西市の集団接種会場でワクチン接種後に女性(42)が死亡した問題で、日永市長は22日の定例会見で、外部の有識者による医療事故調査委員会を年内にも設置すると明らかにした。国のマニュアルに沿って集団接種を進め、「現場での対応は適切に行われたと考えている」と説明した。5日に女性が死亡した後、市長が公の場で問題について言及したのは初めて。

●全国で新たに12万4008人が感染 3道県で過去最多を更新

 国内感染者は22日、新たに12万4008人が確認された。前週の同じ曜日(15日)より1万8817人多く、18日連続で前週を上回った。全国で発表された死者は、最も多かった北海道の34人を含め計178人だった。北海道の新規感染者は1万1394人で過去最多に。2115人だった岩手県と、2207人だった山形県でも約3カ月ぶりに過去最多を更新した。都道府県別で最も新規感染者が多かったのは、東京都の1万2758人だった。

【11月23日】

●米ファウチ博士が退任前に会見 コロナワクチンの接種など訴え

 米国の感染症研究の第一人者ファウチ博士は、歴代7人の大統領のもとで感染症対策に取り組み、首席医療顧問として新型コロナ対策にあたってきたが来月、退任を予定。博士は22日、ホワイトハウスで退任前の最後の記者会見に臨み、ワクチンの有効性をデータで紹介したあと、「社会的な分断やイデオロギーの違いから、ワクチンを打たない人を見るのは医師として心が痛む。私はコロナに感染したり、亡くなったりする人を誰も見たくない」と訴えた。

 そして「最後のメッセージになるが、自分自身や家族、地域を守るためにも、打てる人はすぐにワクチンを打ってほしい」と呼びかけた。また疑わしい情報が出回っている現状に対しては「誤った情報やうその情報に対抗するには、正しい情報をできるかぎり多く発信し続けることだ」と述べ、科学的な根拠に基づいた情報発信の重要性を強調した。博士は退任後は、感染症対策に携わる次世代の育成などにあたる意向を示している。

【11月24日】

●中国、1日の感染最多に 初の3万人超 北京「半ロックダウン」

 中国政府は24日、中国本土で23日に新たに確認された市中感染者が3万1444人となったと発表。1日の感染者数が3万人を超えるのは初めて。最も多かった今春の水準も上回った。政府の「ゼロコロナ」政策は、限界に達しつつある。これまでは、上海市がロックダウンされていた今年4月13日の2万9317人が過去最多。今は広東省や重慶市、北京市、四川省などの各地でも比較的感染者が多く、「出口戦略」が示せない。経済への影響も長引きそう。

 北京市では21日に初めて新規感染者が1千人を超え、急増ぶりが際立つ。飲食店の営業停止や出勤制限などの「半ロックダウン」、学校の在宅授業や公共施設の閉鎖も市全域に広がり、規制は初夏以来の厳しさ。市内は春節の連休のような静けさで、人や車の行き来が減った。広東省広州市では、23日に7620人を確認。市内のほとんどの地域で外食禁止、学校休校も続く。上海市は、24日から市外から訪れた人に5日間は商業施設や飲食店への立ち入りの禁止を始めた。

●塩野義製薬、新型コロナワクチンの承認申請 国内開発で初

 塩野義製薬は、開発を進めてきた新型コロナワクチンについて、24日厚労省に承認を求める申請を行った。国内の製薬会社の新型コロナワクチンの承認申請は初めて。塩野義製薬の発表によると、申請したのは新型コロナに対する「組み換えたんぱく質ワクチン」。このワクチンには、当初広がった従来の新型コロナに対応した成分が含まれていて、20歳以上を対象に、1回目と2回目の接種、それに3回目の接種用として承認を求めている。

 国内では他の製薬会社も新型コロナのワクチン開発を手がけるが難航している。第一三共は追加接種用として23年1月、明治ホールディングス傘下のKMバイオロジクスは23年4~6月の承認申請が目標。ファイザーやモデルナはすでにオミクロン対応の新しいワクチンの供給を開始したが、塩野義も変異株向けの開発を進めている。実用化された場合、実績に乏しい塩野義のワクチンが医療現場でどれほど使われるかは未知数。

●コロナとインフル同時検査キット 医療機関向けの出荷増加

 新型コロナとインフルの同時流行が懸念される中、その両方の感染の有無を同時に調べることができる「抗原検査キット」の医療機関向けの出荷が増加している。PCR検査は結果が出るまで1日程度かかるが、抗原検査キットは15分ほど。一般販売が解禁されれば、患者にとっては自宅などで簡単に発熱の原因が推測でき、医療機関受診の参考になるほか、院内感染のリスクが減るほか、オンライン診療の判断材料としても有益だとされる。

 一方で抗原検査はPCR検査と比べて精度が低く、ウイルス量が少ない場合は陰性と判定される「偽陰性」のリスクもある。一般販売にあたっては「偽陰性」による診断や治療の遅れや、重症化や感染蔓延の恐れもあると指摘されている。さらにインフルは発熱から12時間経過しないと結果が陽性にならず、検体を採取したタイミングや採取する技術が結果に影響する点も懸念されている。厚労省は、自宅で検査できる体制の整備を急ぐ。

●全国で新たに5万7895人感染、死者は99人

 国内感染者は24日、新たに5万7895人が確認された。前週の同じ曜日(17日)よりも3万4898人少なかった。前週を下回るのは20日ぶり。前日の23日が検査数の少ない祝日だったことが影響した可能性がある。発表された死者数は99人だった。新規感染者数を都道府県別でみると、最多の東京都は5639人で、前週から4116人減。24日までの1週間は、1日あたりの感染者数が8770.3人で前週の106.0%だった。次に多かったのは北海道で4895人だった。

●東京都内の新規コロナ感染5639人 重症20人、前日より5人増

 東京都は24日、感染者を新たに5639人確認した。前週の同じ曜日(17日)より4116人減った。前日が祝日だったため医療機関からの感染者の報告が少なかったとみている。11人の死亡も発表。24日までの1週間は、1日あたり感染者数が8770.3人で前週(8276.0人)の106%。24日の感染者では、40代の1089人が最も多く、次いで20代1049人、30代1025人、10代727人。65歳以上は360人。病床使用率は37.3%。都基準の重症者は、前日から5人増えて20人。

 11月24時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【11月25日】

●都道府県任せの「医療非常事態宣言」、強制力・財政措置なし

 「第8波」の備えとして政府が、新たな「宣言」を11日に決めた。「医療非常事態宣言」は病床使用率80%超など医療が機能不全に陥る水準に近づいた場合、都道府県が大幅な出勤の抑制や旅行の自粛などを要請できるという内容。その前段階として、大人数の会食への参加見合わせなどを要請できる「対策強化宣言」も設けた。ただし強制力も財政措置もなく、判断は都道府県に委ねられる。社会経済活動の維持を強く打ち出す政府の方針に、知事側の評価はバラバラ。

 感染拡大の状況にあると意識していただくという点で非常に意義があると、神奈川県の黒岩知事は22日の記者会見で高く評価。千葉県の熊谷知事は17日の会見で、財政的な支援がない状態で安易に要請するのは慎重であるべき。東京都の小池知事は18日、「全国旅行支援」も続ける分かりづらさを指摘。愛知県の大村知事も21日、地方に判断を委ねる姿勢に苦言。埼玉県の大野知事は21日、医療機能が不全になる時期は「緊急事態宣言」並みの強制力を伴う措置の必要性にふれた。

●コロナ飲み薬「ゾコーバ」 28日から医療機関に本格供給開始へ

 国内の製薬会社として初めて塩野義製薬が開発した新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」は、今月22日に国が使用を承認し、重症化リスクの低い患者も軽症段階から服用できるのが特長。加藤厚労相は、閣議のあと記者団に対し「契約を締結していた100万人分がすでに納入され、流通システムの準備作業も円滑に進んだ。12月初頭からとお伝えしていたが、週明け28日から本格的な供給を開始することになった」と述べた。

 供給されるのは全国のおよそ2900の医療機関などで、都道府県などのホームページで公開される予定。すでに発注があった一部の医療機関には、早ければ25日にも発送される。また、加藤氏は「ゾコーバ」が新たな「緊急承認制度」で承認されたことをめぐり、専門家から「迅速な承認」と「有効性や安全性の確認」の両立が課題だという指摘が出ていることを踏まえ、「課題を整理し、今後の緊急承認をどう捉えていけばいいのか議論したい」と述べた。

●「全国旅行支援」年明け以降も継続へ 割り引き率は20%に

 斉藤国交相は25日の閣議のあとの会見で、観光需要の喚起策「全国旅行支援」は先月から実施され、期間は当面12月下旬までとされていた。新型コロナの感染状況を見極めたうえで、年明け以降も継続することを明らかにした。観光需要の高い年末年始は対象にはならないということで、年内は12月27日の宿泊分まで。年明けの開始時期は今後決めるとしている。

 旅行代金の割り引き率は現在40%となっているが、年明け以降は20%に引き下げる。割り引きを受けられる金額の上限も年明け以降は引き下げられ、宿泊と交通機関での移動がセットになった商品は、1人1泊当たり5000円に、日帰り旅行などは、1人当たり3000円になる。また、土産物店などに使えるクーポン券は原則電子クーポンとし、1人当たり、平日は2000円分、休日は1000円分を受け取ることができる。

 来年からの全国旅行支援 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【11月26日】

●ゼロコロナに抗議デモ、異例の大規模 中国・新疆ウイグル自治区

 中国の新疆ウイグル自治区ウルムチ市で25日夜、新型コロナ対策に抗議する大規模なデモが起きた。ウルムチ市では8月から断続的に3カ月以上も外出規制が続き、不満がたまっていた。デモの直接の発端は、24日夜に市内の高層住宅で起きた火災。逃げ遅れた10人が煙を吸って死亡する惨事となった。コロナ対策のため火災現場に消防車が近づけず、救助が遅れたとの指摘がインターネット上で相次いでいた。

 「封鎖を解除しろ」「人民に奉仕せよ」。中国のSNSやツイッターに出回った映像では、市役所前など複数の場所に多数の市民が集まり、大声でスローガンを叫んでいた。武装した警察官と市民がにらみ合い、一部では、当局との衝突も起きた模様。市政府は25日深夜に急きょ記者会見を開き、対応の遅れを謝罪。26日午前には、リスクの低い地区から徐々に行動制限を緩める方針を示した。市民の抗議で政策転換に追い込まれた形。

●中国SNS、「万歳」 政府へ皮肉、SNS静かな抵抗

 厳しい移動制限などの「ゼロコロナ」政策を貫く中国。当局は批判を抑え込んでいるが、出口を示せない政府へのいらだちが強まり、市民の静かな抵抗も広がっている。政府は、感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策を堅持する。だが、中国本土の市中感染者は25日まで3日間連続で3万人を超え、過去最多を更新中。経済への影響も長期化が避けられず、コロナ対策は正念場を迎えている。

 中国のSNS微信で25日以降、奇妙な書き込みが相次いだ。「good」にあたる「好」のほか、「支持」、「幸福」、「万歳」、「偉大」、「感恩(ありがたい)」といった肯定的な言葉をひたすら羅列。政府への皮肉が込められているのは明らか。書き込みはすぐに当局に削除された。カタールで始まったサッカーのワールドカップで観客がマスクをせず熱狂する姿は、中国市民に、自国の特殊な立ち位置を強く印象づけている。

●発熱外来の受診者が急増 自己検査の啓発などが急務

 新型コロナの感染者が増加傾向にある中、東京・北区のクリニックでは、発熱外来の受診を希望する患者からの問い合わせが急増していて、医師は「医療の崩壊を防ぐためにも自己検査のさらなる啓発や発熱患者の受け皿の整備が急務だ」と危機感を募らせている。院長は、「自己検査をさらに普及させることが医療の崩壊を防ぐための鍵になる。正しい使い方や検査キットの入手方法など情報を発信していくことが重要だ」と話していた。

●自己検査 陽性だった場合の注意点

 9月に行われた感染者の全数把握の簡略化で詳しい報告の対象外となり、症状がない人や軽い人は、自分で検査を行って陽性だった場合は自治体の「健康フォローアップセンター」に登録し、医療機関を受診せずに療養を開始できる仕組みになった。登録の対象は65歳未満で重症化リスクの低い人など。厚労省は検査キットは薬局で購入できる「医療用」か、薬局のほかインターネットでも購入できる「一般用検査キット」として国が承認したものを使うよう求めている。

 登録を行うことで、希望する場合は宿泊療養のほか自治体によっては配食などの支援を受けることができるほか、健康フォローアップセンターが健康状態についての相談を受け付け、自宅で療養中に症状が悪化した場合などには医療機関につなげる。センターは都道府県ごとにそれぞれの名称で設置されていて、厚労省のホームページでも一覧で連絡先が掲載されているほか、都道府県のホームページなどでも情報を確認できるようになっている。

【11月27日】

●中国ゼロコロナ抗議拡大、習氏母校で数百人集会

 中国各地で、政府が掲げる「ゼロコロナ政策」に対する抗議活動が拡大している。一部では習近平国家主席の辞任を求める声が出るなど、政権批判を厳しく抑え込んでいる習指導部では異例の事態。日常生活の制約が続く現状に市民の不満は高まっており、かじ取りを誤れば混乱が深まりかねない。発端の一つは新疆ウイグル自治区ウルムチ市で24日に起き、10人の犠牲を出したアパート火災。コロナ対策で封鎖され、消防車が入れず被害を広げたとネット上で広がった。

 中国のSNSには27日未明、上海市内にある「ウルムチ」の名を冠した通りに多くの人が集まり、習氏の辞任を求める動画が出回った。一帯を封鎖して参加者を排除しようとする警察と散発的な小競り合いが起きた。27日午後には、習氏の母校でもある北京の清華大学で数百人以上の学生が抗議集会を開催。27日夜には各国大使館や国連機関に近い北京市亮馬橋に100人以上が集まり、白い紙を掲げた。同様の抗議活動は中国各地に広がっている模様。

●コロナ接種、伸び悩む、オミクロン対応型済んだ人16%

 新型コロナのワクチン接種が伸び悩んでいる。オミクロン株に対応したワクチンの接種率は全人口の約16%にとどまる。政府はテレビCMやSNSなども通じ、ワクチンのPRに力を入れるが、呼びかけは、浸透していないのが現状。東京都が10月に20~70代の1千人に実施したアンケートでは、「副反応がつらかった」が最も多く35%、次いで「効果に疑問がある」が31%だった。

 オミクロン型の接種は9月20日に始まり、10月21日には接種間隔を5カ月から3カ月に短縮。10~11月に1日100万回を超える接種が可能な体制を整えるとして、10月末に1日最大168万回の接種体制を確保した。だが、1日平均の接種回数は11月16日の週で約60万回。感染者数の増加に伴って増えつつあり、24日時点で1日の最大接種実績は84万回になったが、接種率は全人口の15.5%で、政府のねらいどおりとは言いがたい。

●接種後、間隔空くと効果低下

 オミクロン型ワクチンには、「BA.1」という系統対応と、「BA.4」と「BA.5」の系統対応の2種類ある。米ファイザー社は4回目接種にBA.5型をうった56歳以上の人で、BA.5系統などへの感染を防ぐ「中和抗体」の増え方が、従来型ワクチンの約4倍にのぼったと発表。米モデルナ社も19~89歳の人で「約5~約6倍に高まった」とした。いずれも新たな「BQ.1.1」の感染を防ぐ反応も示されたという。

 ただ、オミクロン株による感染や発症を防ぐ従来型ワクチンの効果は、接種から3カ月ほどたつと大きく下がってしまうことがわかっている。重症化を防ぐ効果はより長く続くものの、接種から半年ほど過ぎるとやはり効果は下がるとされる。

●みとりケアの高齢者は面会可能に コロナ禍の制限、模索する動き

 新型コロナの感染者の増加傾向が続く中、多くの医療機関や高齢者施設では感染防止を徹底するため面会の制限が続いている。一方、コロナ禍も3年近くに及ぶ中で、人生最後のみとりが近づいた高齢者に限っては対面での面会ができるようにするなど、施設ごとに面会制限の在り方を模索する動きも出ている。

【11月28日】

●新型コロナ飲み薬「ゾコーバ」 医療機関への供給、本格的に開始

 新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」の医療機関への供給が、28日から本格的にはじまった。塩野義製薬が開発した「ゾコーバ」は、重症化リスクの低い患者も軽症段階から服用できるのが特徴で、今月22日に使用が緊急承認された。「ゾコーバ」について、厚労省は100万人分を購入する契約を塩野義製薬と締結していて、ファイザーの飲み薬「パキロビッドパック」の処方実績があるおよそ2900の医療機関などへ、28日から本格的に供給を始め、順次、拡大していく予定。

●新型コロナとインフルの同時検査キット、一般販売解禁へ 厚労省

 新型コロナとインフエンザの感染の有無を同時に検査できる抗原検査キットは、医療機関でしか使用が認められていなかったが、医療機関の逼迫を防ぐため、自宅で検査できる体制を整備すべきだという意見があがっていた。28日開かれた厚労省の専門家による部会では、一般向けの販売解禁について審議され、「セルフチェックという意味では有効」とか、「正しい検体採取の方法や陽性だった場合の対応について周知が必要」といった意見が出された。

 これを踏まえ、厚労省は、医療機関への供給を最優先にすることを前提に、薬局やインターネットでの販売を解禁することを決めた。抗原検査はPCR検査と比べて精度が低く、ウイルス量が少ない場合は感染していても陰性と判定される「偽陰性」のリスクもあるため、厚労省は今後、製造メーカーや販売業者、それに購入した人に向けたガイドラインを通知することにしている。

【11月29日】

●中国、デモ呼びかけ急拡散 「マラソン大会 白い紙持参 リツイート希望」

 「ゼロコロナ」政策への抗議活動が全国的に広がった中国で、各地の市民を動かしたのがSNS。「マラソン大会 11月27日北京時間18時 上海市太倉路のスターバックス 白い紙1枚持参 リツイート希望」。27日、こんなメッセージが上海のネットユーザーを駆け巡った。この夜、少なくとも数百人が市内の通りに集まり、大規模な抗議活動につながった。白い紙は、言論統制への抗議を示している。政権はさらなる連帯の拡大を警戒し、神経をとがらせている。

● ゼロコロナ抗議、市場が懸念 ダウ1時500ドル超下落

 中国でゼロコロナ政策に反対する抗議デモが各地で相次いだことを受け、中国の先行きへの不安が高まっている。ゼロコロナ政策が撤回される見通しはなく、経済の下押し圧力はまだ続くとみて経済成長率の予想を下げる動きも出始めた。抗議デモが一気に広がった翌28日の米ニューヨーク株式市場では、主要企業でつくるダウ工業株平均が一時、前週末より500ドル超下落。抗議デモの広がりで企業の生産など景気減速への懸念が高まり、株式が売られた。

 抗議デモに加え、中国ではコロナ感染者が再び急増。中国の景気が低迷し、供給網の混乱が起きて世界経済に悪影響が出るとの見方が強まっている。香港株式市場のハンセン指数は28日、前週末比で1.6%下落。上海株式市場では代表的な上海総合指数が同0.7%安だった。ただ、同日に中国政府が停滞する不動産業界に対して事業再編や資金調達をしやすくする支援策を発表したこともあり、29日は大きく反発した。

●コロナ「5類」引き下げ視野 インフルと同類 厚労省が議論本格化

 新型コロナの感染症法上の位置づけの見直しについて、加藤厚労相は29日の閣議後会見で「早期に議論を進める」と表明した。ウイルスの重篤性や公費負担のあり方を整理しながら、季節性インフルと同じ「5類」への引き下げも視野に議論を本格化させる。新型コロナは現在、感染症法上の類型のうち、「新型インフル等感染症」に属し、結核などと同じ「2類」以上の強い感染防止策がとられている。入院や外来診療に対応できる医療機関は一部に限られ、医療逼迫が課題となっていた。

 厚労省幹部らは、類型見直しに向けた環境が整ってきたとみている。その理由としては、まず致死率の低下がある。60歳以上の致死率は第5波(デルタ株)の2.50%から、第7波(オミクロン株)は東京都が0.64%、大阪府が0.48%となり、インフルの0.55%と差はなくなった。ウイルスの変異に加え、ワクチン接種が進み、治療方法が確立されてきたことも要因。さらに、海外では脱マスクなど対策緩和が先行し、国内でも機運が少しずつ高まった。

●医療逼迫抑制/ワクチンは有償

 新型コロナが今後インフルと同じ5類になれば、どんなメリットがあるのか。医療機関でコロナとそれ以外の患者を必ずしも分ける必要がなくなる。幅広い医療機関に入院や外来診療の協力を要請できるようになり、医療逼迫を抑えられる。感染者への強制的な入院や自宅療養、就業制限などの厳しい措置もなくなる。

 一方でデメリットは、今後もし病原性の高いウイルスに変異した場合、5類なら「緊急事態宣言」などは発令できない。類型を元に戻すには法改正が必要なため、時間がかかり、対応が遅れる可能性がある。また、5類になれば保険適用以外の費用は原則自己負担。加藤氏は24日に出演したテレビ番組で、「どういう段取りで(5類に)もっていくか色んな考え方がある。激変緩和(措置)、その時の情勢など総合的に判断する」と述べている。

●学校給食 会話OK 感染対策すれば… 文科省が通知

 文科省は29日、小中学校などでの給食中の過ごし方について、座席配置を工夫したり適切に換気したりすれば、児童生徒同士の会話は可能だと各地の教育委員会に通知した。政府の新型コロナの基本的対処方針が変更され、飲食時の「黙食」を求める記述が削除されたことを踏まえた。

 文科省が定めた新型コロナ対応の衛生管理マニュアルでは、「会食にあたって飛沫を飛ばさないよう、机を向かい合わせにしない、大声での会話を控えるなどの対応が必要」と記している。文科省によると、学校に給食時の黙食を呼びかける教委がある一方、大声でなければ会話ができるなどと指導する教委も出てきている。今回の通知では、「従前から黙食を求めていない」としつつ、感染防止策を施せば会話は可能と示した。

●大学入学共通テスト 新型コロナの救済策、今年度行わず 文科相

 昨年度の「大学入学共通テスト」をめぐっては、文科省が、新型コロナの感染拡大の影響で本試験も追試験も受けられなかった受験生を救済するため、個別入試で合否判定するよう、全国の大学などに異例の要請を行った。永岡文科相は閣議のあとの会見で、今年度の共通テストへの対応について、「昨年度かぎりの措置として大学に要請したもので、文科省からは同様の措置を再度要請する予定はない」と述べた。

【11月30日】

●中国、大規模抗議活動 大学はオンライン授業に 政府は学生警戒

 「ゼロコロナ」政策に対する大規模な抗議活動が起きた中国の大学では、授業をオンラインに切り替えたり、冬休みを早めたりする動きが広がり、政府や大学当局が学生の抗議活動に神経をとがらせているとみられる。北京や上海などで起きた「ゼロコロナ」政策に対する大規模な抗議活動には、学生を中心に多くの若者も参加し中国共産党を批判するなどしたことから、政府は大勢の警察官を動員し新たな抗議活動を抑え込んでいる。

 中国では新型コロナの感染拡大が続き、29日はおよそ3万6000人の感染者が新たに確認、うち北京ではおよそ4500人と過去最多を更新した。また、国営の新華社通信は29日、共産党で警察や司法部門を統括する「中央政法委員会」が、「敵対勢力の破壊活動や社会秩序を乱す違法な犯罪行為を法に基づき断固取り締まる」とする方針を確認したと伝えた。習指導部は、共産党の一党支配体制や習主席の批判につながる動きを徹底的に抑え込む方針を改めて示した形。

●デモ封じ、中国政府強硬 姿消す市民 一方で緩和策も PCR検査の拒否、相次ぐ

 ゼロコロナ政策への反発が噴出した中国では、抗議デモの広がりを食い止めようと、習近平指導部が警察力などを動員しての本格的な対応に乗り出した模様。一方で、過剰な隔離や生活面の規制を改めることで、市民の不満解消を図る動きも出ている。ゼロコロナへの不満が政権批判につながらないよう、硬軟織り交ぜた対応で臨む。

 PCR検査を拒否する住民の動きも相次いでいる。検査員を介して感染することに懸念があるほか、地元政府とPCR検査会社に対する不信感がある。オミクロン株が拡大した今年春以降、検査を担う民間企業が乱立、この3年で設立された検査会社は2万社近くにのぼる。ところが、不正やずさんなミスが相次いで発覚。「PCR検査でもうけ続けるために、検査会社と役人が結託して偽の陽性結果を出している」と訴える人も。

●コロナの偽情報 取り締まり撤回 米ツイッター懸念広がる

 起業家のイーロン・マスク氏が買収した米ツイッターが、新型コロナに関する偽情報を取り締まる規約を11月23日をもって、撤回した。ツイッターはコロナ感染が広がった2020年、偽情報対策を打ち出し、これまで10万件近い投稿を削除してきた。コロナに関連した陰謀論や虚偽の情報を投稿した場合、投稿の削除やアカウントの凍結などにつながると説明していた。

 一方、「表現の自由」を掲げるマスク氏は、規約違反で凍結されていたアカウントを復活させている。大規模な人員削減で、投稿の安全対策に関わる担当者らも多く退社している。マスク氏による買収後、マスク氏は投稿への介入を極力減らす方針を示しており、有害投稿が増えることへの懸念から、ツイッターの上位100社の広告主のうち半分が広告を止めたとしており、今回の対応で影響がさらに広がる可能性がある。

●10月の外国人宿泊者数、去年の7倍近くに 水際対策大幅緩和で

 観光庁の発表によると、10月、国内のホテルや旅館などに宿泊した人の数は速報値で延べ4426万人となり、去年の同じ月よりも38%の増加となった。このうち、日本人の宿泊者は延べ4210万人と去年の同じ月より32.5%増えたほか、感染拡大前の2019年の同じ月と比べても5.8%の増加となった。また、外国人の宿泊者は延べ216万人で、去年の同じ時期の7倍近くと大幅に増えた。

 10月は、全国旅行支援が開始されたほか、外国人の個人旅行の解禁や短期滞在のビザ取得が免除されるなど、水際対策も大幅に緩和されたことが増加につながったとみられる。

●宮内庁職員ら10人以上がコロナ感染 宮中祭祀の「新嘗祭」に携わる

 宮内庁によると、11月23日から24日にかけて皇居で行われた宮中祭祀の「新嘗祭」(にいなめさい)に携わった宮内庁の職員5人と、皇室が私的に雇用している職員8人の合わせて13人が新型コロナに感染したことが確認された。いずれも軽症か無症状だという。新嘗祭は、天皇陛下と秋篠宮さまが臨まれたが、感染した職員らとの接触はなかった。宮内庁は、12月1日に行う宮中祭祀「旬祭」について、天皇陛下の拝礼を取りやめ、代理職員が拝礼する形式に変更する。

 宮内庁庁舎 出典:ウキメディア・コモンズ

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●新型コロナの扱い見直し、合意形成し判断を 日本医師会常任理事

 加藤厚労相は29日、新型コロナの感染症法上の扱いについて、季節性インフルと同じ分類への引き下げも含め、見直しに向けた議論を早期に進めていく考えを示した。これについて日本医師会の釜萢常任理事は、記者会見で「今後、大きな感染拡大があった場合に、医療の提供が適切に行われるようにするためには、感染が静かになったところではなく、今の段階からしっかりと議論して、方向性を探っておく必要がある」と、理解を示した。

 一方で「感染防止対策は簡単には緩められない。社会経済活動を回すという視点から、見直しを早めたほうがいいという意見があることは承知しているが、医療を提供する立場からすると慎重に合意形成を行ったうえで、国の政策判断が適切に行われることを願う」と述べた。また、ワクチン接種などの公費負担については「感染者が増えていて、今後の状況が分からない中では大幅にやめるというのは反対」と述べた。

●専門家組織の会合、「感染者、今後も増加続く見込み」

 厚労省の専門家組織の会合が30日に開かれ、現在の感染状況について全国的に増加が続いているものの、その速度は比較的緩やかになっていて、この夏の「第7波」のピークを上回った北海道では、直近で減少に転じているとしている。ただ、首都圏や近畿、九州、沖縄では増加の幅が大きくなっているほか、北海道や長野県など、これまでに感染者数が大きく増加した地域では、亡くなる人の数の増加が見られるとしている。

 今後の感染状況の短期的な予測では、地域差や不確実性はあるものの全国的に増加が続くと見込まれるとしていて、ワクチンや感染によって得られた免疫の減少や、より免疫を逃れやすいとされる「BQ.1」などへの置き換わり、それに年末に向け接触機会が増加することなどによる影響に注意が必要だと指摘した。実際に夜間の繁華街の人出は多くの地域で増加傾向で、去年の同じ時期を上回ったり、コロナが拡大する前の水準まで戻ったりしている地域がある。

●加藤厚労相 「新型コロナの扱い 見直しに向けた議論を」

 加藤厚労相は、専門家会合に出席し、新型コロナの感染症法上の扱いについて、季節性インフルと同じ分類への引き下げも含め、見直しに向けた議論を進めるよう要請した。この中で加藤厚労相は「感染症法改正案の衆議院での審議で、新型コロナの感染症法上の位置づけを速やかに検討する規定が追加された。この修正を踏まえ、専門家の意見も聞きながら、最新のエビデンスに基づき、総合的に早期に議論を進めたいと考えている」と述べた。

 そのうえで「新型コロナの病原性や感染力、変異の可能性についてどう評価するのか、どう考えていくのか、国民と理解を共有することが必要で、その基盤づくりが求められている。深掘りしたうえで、わかりやすい考え方を示してほしい」と述べ、見直しに向けた議論を進めるよう要請した。

●新規感染者数、全国で前週比1.15倍

 専門家組織の会合で示された資料によると、29日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて1.15倍と増加が続いている。一方、人口当たりの感染者数が全国で最も多い状態が続いている北海道では、わずかに減少に転じている。首都圏の1都3県では、東京都が1.21倍、神奈川県と埼玉県が1.16倍、千葉県が1.28倍と増加が続いているなど、46の都府県で増加している一方、北海道では0.92倍とわずかに減少している。

 人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、北海道が1042.62人と全国で最も多く、宮城県が1026.85人、長野県が967.23人、福島県が925.56人などと北海道や東北を中心とした地域で多くなっている。全国では563.62人となっている。

●脇田座長「病気の姿自体の評価をしっかり行うべき」

 専門家組織の会合のあとの記者会見で脇田座長は、新たなBQ.1が検出される割合が増加していると推定にについて「BQ.1の広がりやすさと、免疫をかいくぐる力の両方を合わせた増殖していく力はBA.5を少し上回り、感染者数の押し上げ要因になっていく。複数の変異ウイルスが共存する状況が予想され、少し、状況は複雑かもしれない。感染の波がどのくらい高くなるのか考えるのは難しいが第7波のようにすんなり下がらないことは予想される」と述べた。

 また、加藤厚労相が、感染症法上の見直しに向けた議論を進める要請について「リスク評価の考え方をまとめ、ウイルスの伝播性、症状の重症度、医療へのインパクトを検討すべき」、「流行がオミクロン株中心になり、かなり病態が変わってきている。新型コロナは、呼吸器感染症よりも心血管疾患の合併症の影響が大きい循環器の病気になっているという意見もある」と述べた。

●病床使用率50%以上、18道県、コロナ対策宣言の目安超え

 感染拡大で、東日本を中心に18道県が、大人数の会食自粛などを呼びかける目安の一つ「病床使用率50%以上」となっていることがわかった。感染者数は前週から1.15倍となり、微増傾向が続いている。30日、厚労省の専門家組織や内閣官房が分析した。29日時点の病床使用率は北海道57%、宮城県61%、茨城県61%、埼玉県65%、神奈川県61%、長野県69%など北日本や東日本を中心に上がっている。21日時点の50%以上は9県だった。

 病床使用率50%は、都道府県が医療負荷増大期の「レベル3」と判断する目安の一つ。レベル3は、知事が感染拡大につながる行動の自粛を呼びかける「対策強化宣言」を出す。ただ、感染レベルはほかの医療負荷の状況もみて判断する。重症病床使用率はほとんどの都道府県が20%未満で、レベル3と判断するもう一つの目安の50%を超える地域はない。

●東京都、1万4399人のコロナ感染確認 病床使用率は40.3%

 東京都は11月30日、新型コロナ感染者を新たに1万4399人確認したと発表した。前週の水曜日(23日)より1549人多い。30~90代の14人の死亡も発表した。30日までの週平均の感染者数は1日あたり1万1048.3人で、前週(9358.3人)の118.1%だった。新規感染者を年代別でみると最多は20代の2561人で、40代2467人、30代2421人など。65歳以上は1364人だった。病床使用率は40.3%。都基準の重症者は前日から1人増えて19人となった。

 11月30日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 以下の図は11月30日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 (下図のみが、11月29日までの情報)

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2022年12月 4日 (日)

新型コロナ2022.11 第8波入口

 新型コロナウイルス感染症は、7月には「第7波」となって全国的に急増、8月下旬からは減少傾向が続いていたが、10月中旬にはおよそ2か月ぶりに増加に転じた。この冬は季節性インフルエンザと新型コロナの同時流行「第8波」が懸念されている。11月も新規感染者数が全都道府県で増加が続き、「第8波」の兆しとなっている。

 2022年11月1日から15日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2022.10 増加に転ず」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

 

【11月1日】

◆東京・港区、新型コロナとインフルのワクチン同時接種開始

 厚労省の専門家組織は、インフルエンザが例年より早く流行し、新型コロナとの同時流行が懸念されると指摘している。こうした中で東京・港区は、冬に向けて区内に4つある新型コロナの集団接種会場の1つで、インフルのワクチンも同時に接種する取り組みを、11月1日から始めた。対象は、これまでに2回以上新型コロナのワクチンを接種した65歳以上の区民などで、事前に予約がなしで2つのワクチンを接種できる。

◆「BA.5」対応ワクチン、モデルナも使用承認 11月にも接種開始へ

 モデルナは10月5日に「BA.5」や「BA.4」などに対応するワクチンの承認申請を行っていて、10月31日夜開かれた厚労省の専門家による部会で、18歳以上を対象に国内での使用を承認することが了承された。ワクチンの有効性については「BA.5」を含む変異株に対する予防効果が期待され、安全性については、海外での使用実績で特段の懸念はみられていないという。

 オミクロン株に対応ワクチンは、9月からファイザーとモデルナの「BA.1」対応のワクチン、10月からファイザーの「BA.5」対応ワクチンの接種が始まっている。モデルナの「BA.5」対応ワクチンについて、厚労省は今後必要な手続きを進め、早ければ11月にも接種が始まる見通し。

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◆オミクロン株対応ワクチン、接種進まず 政府は対応策検討へ

 オミクロン株に対応したワクチン接種は、ことし9月下旬から始まり、政府はすべての希望者が年内に接種を終えられるよう、1日100万回を超えるペースの接種体制を整えるとしている。しかし、接種開始から1か月余りが経過した31日に政府が公表した最新の状況では、オミクロン株に対応したワクチンの接種を受けた人の数は国内で595万人余り、割合は4.7%。1日当たりの接種のペースも、最近は30万回前後。

 政府内では「若い世代を中心に当初の想定より接種が進んでいない」という受け止めとともに、感染の第8波の到来やインフルとの同時流行なども懸念される中で、備えが遅れることへの危機感も出ている。接種率の向上に向けて、テレビCMなどによる広報の充実や職域接種の拡充など対応策を検討している。

●同時流行の対策 沖縄県…入院患者数、双方の報告要請 政府…検査キット備蓄

 第8波では、コロナとインフルをあわせて全国で1日最大75万人の感染者数が想定され、政府や自治体は医療逼迫を避けようと対策を講じている。沖縄県は1日、コロナの重点医療機関27カ所にコロナに加えてインフルの入院患者数の報告も求める運用を始めた。これまではインフルは定点に指定された医療機関での診断数を週に1度、保健所に報告してもらってきた。沖縄県の独自の取り組みが注目される。

 厚労省は同時流行による医療機関の逼迫に備え、抗原検査キットや解熱鎮痛剤の備蓄を呼びかけている。政府が念頭に置くのが、今夏の第7波での反省点。行動制限を課さない中、爆発的に増えた感染者が発熱外来に殺到するのに対処しきれなかった。第7波の7月から9月の3カ月間で、新規感染者数は約1196万人、死者は約1万3500人。死者数が8月に入り1日100人超が続き、8月23日に343人と過去最多を更新。オミクロン株が流行した第6波の教訓を生かせなかった。

●航空大手とJR、回復鮮明 コロナ対策緩和で 円安懸念も

 航空大手2社とJR主要3社の2022年9月中間決算が1日、出そろった。日本航空(JAL)は純損益の赤字幅を大きく圧縮し、ほか4社は中間決算としては3年ぶりに黒字に転換した。コロナ禍に伴う行動制限がなくなった影響が大きい。一方、感染再拡大や急激に進む円安を懸念する声もある。

 JALの純損益の赤字は、前年同期の約1千億円から21億円へと大きく改善。ANAホールディングスは純損益が195億円の黒字。水際対策の緩和や国内でのレジャー客の回復で、旅客数は国際線が前年同期の約5.1倍、国内線が約2.1倍に増えた。JR東日本、東海、西日本の3社の純損益は271億~969億円の黒字。各社が運営する駅周辺の商業施設やホテルなどの業績も持ち直してきている。国の観光支援策「全国旅行支援」などが追い風。

【11月2日】

◆コロナとインフル同時流行懸念、ワクチン接種促進 官房長官

 松野官房長官は記者会見で、横ばいだった新規感染者数が増加に転じ、特に北海道や東北などでは増加傾向が顕著だと説明。今後、インフルとの同時流行も懸念されると指摘した。9月から始まったオミクロン株対応のワクチン接種の割合が、1日時点でおよそ5%となっていることに触れ、「オミクロン株対応ワクチンは、従来型を上回る重症化予防の効果などが期待されている。高齢者だけでなく若い世代にも年内の接種を検討してほしい」と呼びかけた。

 そして官房長官は、接種のさらなる促進を図るため、テレビCMやSNSなどを活用した情報発信や、経済界や大学など、関係機関への協力の呼びかけを強化していく考えを示した。

◆コロナワクチン 日本小児科学会 生後6か月~4歳「接種推奨」

 生後6か月から4歳の子どもへの新型コロナワクチンについて、日本小児科学会は「接種を推奨する」とする考え方を2日に示した。それによると、オミクロン株の拡大以降子どもでも感染者数が増え、重症化や死亡するケースが増加しているとしたうえで、ワクチンはオミクロン株が広がった時期でも臨床試験での発症予防効果が、生後6か月から1歳で75.8%、2歳から4歳で71.8%で、重症化予防の効果も期待されるとしている。

 その一方で、接種後にさまざまな症状が出た頻度は、ワクチンではない偽の薬を接種したときと同じ程度で、先行して接種が行われている米国でも重篤な症状はまれだと報告されている。学会はメリットがデメリットを上回るとして、この年代のすべての子どもに対して「接種を推奨する」とした。この年代のワクチン接種は先月から始まり、厚労省は接種を受けるよう保護者が努めなければならない「努力義務」とする。

◆東京都、6346人感染確認 11日連続で前週上回る

 厚労省は2日、都内で新たに6346人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1週間前の水曜日より1999人増え、11日連続で前の週の同じ曜日を上回った。また、人工呼吸器かECMO(人工心肺装置)を使っている重症の患者は1日から2人減り、16人。一方、感染が確認された3人が死亡した。

 11月2日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【11月4日】

◆世界各国の専門家、「脅威終えるための対応」提言

 新型コロナの脅威を終えるためにどのような対応が必要か、世界の112の国・地域の専門家386人が連名で提言をまとめ、科学雑誌の「ネイチャー」に発表した。日本から分科会の東北大学押谷教授が参加。提言では誤った情報やワクチン忌避、世界的な協力不足、装備やワクチンの不平等な分配などの政治的・社会的要因によって世界のコロナ対策は妨害されてきたとし、コミュニケーション、保健医療、ワクチン、予防、治療、不平等の6分野で、41の声明と57の提案が示された。

◆コロナとインフル混合ワクチン、臨床試験開始 ファイザーなど

 製薬会社のファイザーとビオンテックは3日、新型コロナとインフルの両方に効果がある、混合ワクチンについて、米国で臨床試験を開始したと発表した。混合ワクチンは、4つの異なるタイプのインフルに対応するワクチンと、オミクロン株「BA.5」などに対応するワクチンを組み合わせたもの。より多くの人を感染症から守ることがねらい。混合ワクチンは、製薬会社のモデルナやノババックスも開発を進めている。

◆国際線「冬ダイヤ」便数、去年比3倍余に回復 水際対策緩和で

 水際対策の大幅な緩和を受け、先月30日から始まった国際線の「冬ダイヤ」では、日本を発着する旅客便は、5日までの1週間で1920往復と、去年の同じ時期と比べ3.2倍に増えている。日本の航空会社の便はおよそ2倍となったほか、日本と同じように水際対策の緩和が進んだ韓国や台湾の航空会社の便が20倍前後と大幅に回復。ただ、今も厳しい中国との便が回復していないことから、国際線全体の便数はコロナ禍の前と比べると37%にとどまる。

◆新規感染7日間平均、「前週比130%に」 都モニタリング会議

 東京都は4日、モニタリング会議を開き、4段階ある警戒レベルについて、いずれも上から3番目を維持した。会議では、新規感染者数の7日間平均が2日時点で4305.9人と、前の週に比べ130%となっていることが報告された。専門家は「前回の97%から今回は130%と、感染拡大の指標となる100%を上回っていて、今後の急激な増加に注意を払う必要がある」とした。また、入院患者数は1週間前の先月26日より344人多い1654人で、2週連続で増えた。

 感染者が増えていることについて、専門家は「第6波、7波で獲得した免疫が落ちてきていることや、寒くなって部屋の換気がされないこと、また、水際対策の緩和などが要因として考えられる」と分析、換気やワクチンの接種など、感染対策の徹底を呼びかけた。小池知事は記者会見で「1度コロナに感染しても免疫は徐々に下がり、再感染のリスクが高まるということなので、多くの人の命を守るためにも、速やかな接種をお願いしたい」と述べた。

【11月5日】

◆「BA.5」の症状は、「BA.2」と同等 動物実験で

 オミクロン株のうち、今夏の「第7波」以降主流となった「BA.5」は、感染した場合の症状の程度が、ことし初め以降の「BA.2」と同等で、比較的低かったとする動物での実験結果を、東京大学医科学研究所の河岡特任教授らのグループが、科学雑誌の「ネイチャー」に発表した。

● コロナ研究、日本低調 論文数G7最下位 資金力に差

 日本の新型コロナの研究が低調だ。日本の関連研究論文は数でも質でも、G7(主要7カ国)で3年連続で最下位。科学技術振興機構(JST)の調査では、新型コロナ関連の日本からの研究論文数は、2020年は16位、2021年14位、2022年(5月時点)12位。1位は3年連続で米国、2位と3位は中国と英国が入れ替わりながら続く。質の面でも「ネイチャー」や「ランセット」など医学に関する著名5誌に掲載された論文だけに絞ると、日本は2020年18位、2021年30位。

 研究者の数や環境など差は多岐にわたるが、特に資金力が顕著。感染症研究に米国立保健研究所(NIH)が年間約6千億円に対し、日本医療研究開発機構(AMED)は年間約90億円と67分の1。国内の他の医療分野の癌やiPS細胞などを使った再生医療の研究費と比べても、感染症研究は見劣りする。政府の有識者会議(座長・永井自治医科大学長)が6月にまとめた報告書でも、こうした現状が、国産ワクチンや治療薬の開発が進まなかった背景にもあると指摘している。

●感染7万5646人

 国内感染者は5日、全国で新たに7万5646人確認された。前週の土曜日(10月29日)より3万1013人増えた。発表された死者は全国で52人だった。都道府県別で新規感染者が最も多かったのは、東京都で7967人。都内で7千人を超えたのは9月23日以来。

【11月7日】

◆新規感染者数 1週間平均 全都道府県で増加

 新規感染者数を7日までの1週間平均で比較すると、全国では1.42倍と47都道府県すべてで増加し、特に東日本を中心に増加のペースが上がっている。全国の1日当たりの平均の新規感染者数は5万8000人余り、先週の同じ曜日から1万7000人余り増。人口当たりの感染者数が最も多いのは北海道で、7日までの1週間は前の週の1.37倍で、6日までの人口10万当たりの感染者数は803.75人。首都圏1都3県は、東京都は前の週の1.53倍、埼玉県は1.48倍、千葉県1.35倍、神奈川県1.54倍。

 11月7日までの新規感染者数平均の前週比 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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■舘田教授、「第8波近づいている兆候が強まっている」

 政府の分科会のメンバーで東邦大学の舘田教授は現在の感染状況について「新規感染者数が前の週の1.5倍を超える地域が東日本を中心に見られ、全国で前の週を上回る状況も3週間以上続いていて、第8波が近づいている兆候が強まっている。秋の行楽シーズンを迎え、旅行や移動の機会や会食も増え感染対策が緩みがちになっている中で、感染者が増加する傾向はより強まると考えられる」と指摘した。

◆新型コロナワクチン接種後死亡6人に一時金 因果関係否定できず

 厚労省は7日、新型コロナワクチンを接種後にくも膜下出血や心筋梗塞などで亡くなった、44歳の女性1人と80歳から87歳の男女5人の合わせて6人について、新たに救済の対象とすることを決めた。このうち1人は44歳の女性で、60代以下では初めて。ワクチンを接種したあとに死亡した人について、因果関係が否定できないと国が認定した場合には、予防接種法に基づいて死亡一時金が支給され、これまでに70代と90代の男女4人が認められている。

◆「BA.5」対応のモデルナワクチン 今月28日の週から接種開始へ

 オミクロン株のうち「BA.5」に対応するモデルナのワクチンについて、厚労省は国内での使用を承認し、7日に専門家の意見を取りまとめたうえで、無料で受けられる公的接種に位置づける方針を決めた。11月28日の週から自治体に配送し、順次、接種を開始する方針。

●コロナ対策、無駄・不適切102億円 病床確保交付金など

 2019~21年度の新型コロナ対策の事業について、予算の執行状況を会計検査院が調べたところ、2021年度までの支出は総額約76兆5千億円に上り、執行率は80.9%。検査院が国費の無駄遣いや不適切と指摘したのは、病床確保に関する交付金や地方創生臨時交付金などで66件、約102億3千万円。2021年度までのコロナ対策(1367事業)の予算総額は計94兆4920億円。計76兆4921億円が支出され、13兆3254億円が2022年度に繰り越された。

 使う見込みがなくなった「不用額」は全体の約5%の4兆6744億円。不用額が最も多かったのは「GoToトラベル事業」で予算総額約2兆円の約4割(7743億円)。執行率が低かったのは、売り上げが減った中小企業などに支払う「事業復活支援金」(予算総額約2兆8千億円)で18.9%。委託先が審査業務を担う人員を想定の6割強しか確保できず、審査が遅れたことが原因だという。

●コロナ病床交付金55億円過大 病院側「頂けるうちに…」

 新型コロナ患者の受け入れのため、病床を確保した病院に交付金を支払う事業について、会計検査院が調べたところ、32病院に対して約55億円が過大に支払われていた。対象外の病床や区分が不適切な病床が計上されて申請され、自治体の審査もすり抜けていた。検査院は過大額について返還を求めた。都道府県を通じ、病床ごとに日額7万1千~43万6千円が支払われる。

【11月8日】

◆感染症法など改正案、衆院本会議で可決 今国会で成立の見通し

 地域の医療提供体制の強化策を盛り込んだ感染症法などの改正案は、衆議院本会議で新型コロナの感染症法上の位置づけを速やかに検討するなど、付則に修正を加えて採決され、自民党や立憲民主党などの賛成多数で可決された。改正案は今の国会で成立する見通し。感染症法などの改正案は、都道府県が感染症の予防計画を策定したうえで、地域の中核となる医療機関と事前に協定を結び、病床や外来医療の確保などを義務づけるもの。

◆「コロナ第8波、入りかけか」 今月中の接種訴え 東京都医師会長

 東京都医師会の尾崎会長は8日の定例会見で、今の新型コロナの感染状況について、「第8波に入りかかっている」という見解を示した。今できる対策として、「ワクチンを打つことが大切で感染抑止になる。仮に感染してもワクチンを接種していると症状は軽く、体内でのウイルスの増殖は抑えられ、周りの人に感染させる力が弱くなる」として、第8波の感染者数を増やさないためにも今月中にワクチンを接種してほしいと訴えた。

●第8波「念頭に対策」 加藤厚労相 感染の増加傾向受け

 新型コロナの感染者が全国的に増えていることを受け、加藤厚労相は8日の閣議後会見で、「第8波につながる可能性」も念頭に置きながら対策を進めているとの認識を示した。季節性インフルとの同時流行も踏まえ、抗原検査キットや解熱鎮痛剤の事前購入なども呼びかけた。厚労省によると、7日までの1週間の新規感染者数は前週と比べて1.42倍に増えている。特に北海道や東北地方で増加傾向がみられるという。

●北海道、最多更新の9136人 東京8千人超、一カ月半ぶり

 新型コロナ感染者の増加傾向が各地で強くなっている。北海道では8日の新規感染者が9136人となり、過去最多となった。東京都内の感染者は8665人で、約1カ月半ぶりに8千人超え。大阪府は同日、独自基準「大阪モデル」について、現在の緑信号から、約1カ月ぶりに警戒を呼びかける「黄信号」に引き上げることを決めた。

【11月9日】

●「第8波」入り口か、全国で感染増 救急に影響 「BQ.1」、免疫効きにくい可能性

 厚労省の専門家組織は9日、直近1週間の新規感染者数が全都道府県で増加して前週比1.4倍となり、「第8波」の兆しがあるとした。同時流行が懸念されている季節性インフルは、まだ大規模な流行はみられないと分析。全国の新規感染者数は、直近1週間で1日平均6万3343人。今夏の「第7波」は約2万5千人に減っていたが、9月下旬並みの水準に戻った。ただ増加ペースは「第7波」ほど急激ではないが、感染状況は地域差が大きい。

 特に北海道では第7波のピーク時に迫るほか、東北や北陸、甲信越、中国地方では大きく増加している。感染者数が多い地域で10代以下の子どもの増加幅が大きいく、高齢者の感染者も増えて、重症者数、病床使用率も増加傾向。総務省によると、「救急搬送困難事案」のうち、コロナ感染が疑われる事案は6日までの1週間に全国で823件あり、前週から48%増えた。

 また国立感染研は不確実性が高いとしつつ、現在BA.5が主流だが、12月第1週にはBQ.1が79%を占めると推定している。BQ.1は免疫が効きにくいとみられ、欧州や米国を中心に広がっている。

■加藤厚労相「2週間後に前回のピーク超える可能性」

 加藤厚労相は「新規感染者数は全国で増加傾向となっている。この傾向は今後も継続しいわゆる『第8波』につながる可能性もある。仮に、前回の感染拡大と同様のスピードで継続した場合、2週間後には前回のピークを超える可能性も想定されている」と指摘した。そのうえで「過去の経験も踏まえた対策を取ることが重要。都道府県には地域の実情を踏まえて外来医療体制を強化するよう依頼しており、厚労省としても必要な支援を行っていく」と述べた。

 そして、国民に対し「基本的な感染予防対策の徹底とともに、若い方も含め、ワクチンを接種してもらいたい。発熱などの体調不良時に備えて、検査キットや解熱鎮痛薬を早めに購入しておくなどの準備を改めてお願いしたい」と呼びかけた。

■脇田座長「感染拡大が続く可能性はある」

 専門家組織の会合のあと開かれた記者会見で、脇田座長は今後の感染拡大の見通しについて「オミクロン株対応のワクチンの接種がそれほど進まず、免疫が減弱してきているほか、東京では夜間滞留人口が増えて去年の忘年会シーズンとほぼ同じくらいの人出になるなど、社会活動が活発化している。また、免疫から逃れるとされる新たな系統の変異ウイルスが今後増えるとも予測され、感染拡大が続く可能性はあるといった議論があった」と述べた。

 「第7波の感染者数や死亡者数が十分に下がりきっていない中で、感染者数が増加している。今後、高齢者に広がると、重症者数や死亡者数の増加もありうる。オミクロン株対応ワクチンの接種をしてほしい。また、自宅で抗原定性検査キットや解熱鎮痛剤をぜひ準備し、発熱のときの受診の流れを確認してほしい」と呼びかけた。また「この夏の第7波は西日本中心で東日本は高い波がなかったことが影響して、現在、東日本でかなり大流行になっている可能性がある」と述べた。

■1週間の新規感染者数、前週比1.40倍

 厚労省の専門家組織の会合で示された資料によると、8日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.40倍に増加している。首都圏の1都3県では、東京都が1.51倍、神奈川県と埼玉県が1.48倍、千葉県が1.35倍と増加が続いているほか、すべての都道府県で増加している。

 人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、北海道が850.07人と全国で最も多く、次いで山形県710.00人、長野県688.91人、宮城県557.47人、秋田県552.47人、福島県540.93人などと北海道や東北を中心とした地域で多くなっている。また、東京都は302.93人、大阪府254.69人、全国では338.12人となっている。

◆「感染拡大 オミクロン株と同程度なら行動制限せず」 官房長官

 松野官房長官は記者会見で、「全国の新規感染者数は足元では増加傾向にあり、とりわけ北海道では過去最多となっているほか、病床使用率も増加傾向にある。緊張感を持って動向を注視していく」と述べた。一方、「感染拡大がオミクロン株と同程度の感染力や病原性の変異株によるものであれば、新たな行動制限は行わず、社会経済活動を維持しながら感染拡大防止策を講じることを基本的な考え方」と述べ、基本的には行動制限を行わない考えを重ねて示した。

 また、「全国旅行支援」などの観光需要の喚起策を中断する可能性について、「都道府県が実施の継続の可否を判断するものとなっているが、政府としても感染状況の動向を注意深く見守ったうえで適切に判断していく」と述べた。そして、さらに感染者数が増え、医療の負荷が高まる場合などの具体的な対応策は、近く政府の分科会を開き、専門家の意見を聞きながら検討していく考えを示した。

◆北海道、22人死亡 9545人感染確認 ともに過去最多

 北海道内では9日、新たに9545人が新型コロナに感染していることが確認され、8日に続いて過去最多を更新した。また、一日としてはこれまでで最も多い22人の死亡が発表された。一日の新規感染者数が9000人を超えるのは2日連続で、8日に続いて過去最多を更新した。一日の新規感染者数は、先週の水曜日に比べて1650人増え、感染が急速に拡大している。

【11月10日】

●戻れぬ限界 北京に悲鳴 続く「ゼロコロナ政策」提訴の動きも

 厳格な移動制限を伴う「ゼロコロナ政策」が続く中国で、首都・北京に戻れない人が相次いでいる。当局のシステムが市外に出た人を感染したリスクがあると判定し、市内に戻るのを制限するためで、あまりの厳しさに当局を訴える動きまで出ている。北京市内でいま、感染リスクの判定が他の都市に比べて極端に厳しいことが背景にある。

 スマホの位置情報などの記録から、一人でも感染者が出た市や区を訪れた形跡があれば、健康コードを使えなくして北京に戻れないようにしている。感染者が出ていない場合でもアプリが使えなくなるケースも多い。「法律の根拠なく、北京に入ることを制限し、原告の合法的な権利を侵害している」。中国メディアによると、複数の市民が最近、防疫政策への不満から北京市当局を提訴した。ただ、こうした事態を紹介する記事やネット上の投稿はすぐに削除された。

●米IT大手、人減らしの波 メタ1.1万人 ツイッター3700人…

 SNS世界最大手の米メタ(旧フェイスブック)が9日、全従業員の約13%にあたる1万1千人超を削減すると発表。2004年の創業以来、最大規模の人員削減となる。米IT大手はコロナ下の巣ごもり需要などを背景に急速に人員を増やしてきたが、景気悪化の懸念から人員削減や採用抑制の動きが広がっており、転機を迎えている。メタの9月末の従業員数は約8万7千人で、1年前から約2万人、2019年9月から倍以上に増えた。だが、経済再開で巣ごもり需要は長く続かなかった。

 米IT大手では、人員の数を抑える動きが加速している。米電気自動車大手テスラのマスクCEOが先月買収したツイッターは今月、全従業員の約半分にあたる約3700人の削減を開始。米アマゾンも今月、今後数カ月にかけて採用の抑制を拡大する方針を示した。米調査会社によると、米国のIT業界では今年、10月下旬までに5万2千人以上が削減されたという。

◆政府 新型コロナ「第8波」に備え新方針 外出自粛など要請も

 岸田首相は、加藤厚労相、後藤新型コロナ対策担当相と今後の対応を協議し、新たな方針を決めた。新方針は、現在5段階にわかれている感染状況のレベルのうち、感染者がいない「レベル0」をなくし、4段階に見直す。そして、ことし夏の「第7波」と同じ程度か、それを上回る状況になった場合などを、レベル3の「感染拡大期」と位置づけるとしている。

 「感染拡大期」になれば、都道府県が「対策強化宣言」を出し、住民に対し、症状がある場合の外出や出勤などの自粛や大人数の会食への参加の見合わせなど、慎重な行動を要請できるようにする。また、医療全体が機能不全の状態になるなどした場合は、最も深刻なレベル4の「医療逼迫期」とし、出勤の大幅抑制や帰省・旅行の自粛、それにイベントの延期など、より強力な要請を可能にする。政府は、こうした方針を、11日の政府の分科会に示すことにしている。

 新しい感染状況レベル 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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◆「新しい波に入りつつある」 尾身会長、首相と会談後

 政府分科会の尾身会長は10日午後、厚労省の専門家組織の脇田座長などとともに首相官邸を訪れ、岸田首相と会談した。尾身会長によると、会談では今後も感染者数の増加傾向が全国的に続き、医療体制の逼迫が起こりえると説明した。そして、医療体制の強化やオミクロン株に対応したワクチン接種を進めること、抗原検査キットを自宅で使えるようにするといった対策を進めてきたとしたうえで、換気を含めた基本的な感染対策の徹底を改めて呼びかけるよう訴えたとしている。

 また、対策を取っても医療の逼迫が起きた場合の対応について、11日開かれる政府の分科会で議論するとしたうえで、国民に対して分かりやすく納得感のある情報発信をすることが大事だと岸田首相に伝えたという。会談のあと取材に応じた尾身会長は「北海道など感染拡大が明らかな地域があり、全国的にみてスピードの差はありつつも感染は拡大傾向にある。新しい波に入りつつある」と述べ、感染拡大の第8波の入口にあるという認識を示した。

◆東京都、感染拡大の兆候で警戒 「2週間後に2倍超も」

 東京都は10日、都内での新型コロナの感染状況と医療提供体制について専門家によるモニタリング項目の分析結果を公表した。それによると、新規感染者数の7日間平均は、9日時点でおよそ6452人で、前の週に比べて2100人余り増え、およそ1.5倍になった。また、入院患者数も先週から382人増えて2036人と、3週連続で増えた。

 専門家は、4段階ある感染状況と医療提供体制の警戒レベルについて、いずれも上から3番目を維持したうえで、「感染拡大の兆候があり、今の割合で増加すると、2週間後には現在の2倍を超える新規感染者の発生が予測され、感染の再拡大が危惧される」と指摘した。そして、「重症患者や重症化リスクの高い人などのため、医療提供体制を強化する準備が必要な状況だ」として警戒を呼びかけた。

◆北海道・釧路、市立病院で大規模クラスター 外来診療など制限

 北海道釧路市の市立釧路総合病院によると、今月3日ごろから患者や職員の感染者が急増してクラスターが発生し、10日午後4時までに患者73人、職員36人の合わせて109人の感染が確認されたという。これを受けて、病院では緊急性の低い一部の外来や入院を制限しているほか、市内のほかの病院と交代で24時間患者を受け入れる「2次救急」を今月23日まで原則停止している。

 高度な医療を担当する3次救急については、釧路管内では市立釧路総合病院が唯一の医療機関のため、通常どおり対応するという。病院には、厚労省のDMAT(災害派遣医療チーム)の医師2人が派遣されていて、院内でクラスターの拡大防止にあたっている。釧路保健所では定期的な換気など基本的な感染対策を改めて徹底するよう呼びかけている。高垣所長は「秋になって増えてきたことを考えると、換気がひとつの鍵だと言える」と指摘した。

●迫る「第8波」 そなえる自治体発熱外来拡充 検査キット配布

 兆しがあるとされる新型コロナの「第8波」への備えを、各地の自治体が独自に進めている。この冬は季節性インフルとの同時流行が懸念され、医療の逼迫を回避する手立てが必要だ。これまでの感染の波では、想定を上回る感染者の数で医療の逼迫が繰り返されてきた。自治体が準備を進める軸となるのは、発熱外来の拡充。厚労省によると、コロナを診る全国の医療機関は4月時点の約3万8千カ所から約4万1千カ所に増えた。

 さらに大阪府ではこの冬、臨時の発熱外来を設ける方針。埼玉県では12月以降、休日でも対応する医療機関を増やそうと働きかけ。福島県では内科・小児科の約7割が新型コロナに対応できるようになったが、さらなる上積みには苦戦。滋賀県など、検査キットを配る動きも目立つ。高知県ではクラスターの発生に備え、医療機関や高齢者施設などにあらかじめ配布。山形県では感染者や濃厚接触者が出た中小企業に、大阪府では9歳以下の子どもを対象に配る。

■ワクチン接種促進に躍起 自治体

 第8波への備えでも、感染や重症化を防ぐワクチン接種が重要だと考えられている。ただ、オミクロン株対応のコロナワクチンを打った人は、9日時点で全人口の7.8%と低調。平井知事がワクチン接種を「カギ」と位置づける鳥取県では、県営会場で接種した人に県産米のパックをプレゼント。インフルとの同時接種ができる会場も設けた。東京都も千代田区と立川市の2カ所で高齢者らに同時接種を進める。

 秋田市は秋田大学医学部の体育館に大規模な接種会場を開設。1日600人に接種できる態勢を整えた。担当者は「再流行までに少しでも免疫をもつ人を増やしたい」と話す。一方、広島県三原市では、インフルの予防接種を自己負担なしで受けられる対象を拡大。約8万9千人の住民のうち、半数ほどの4万2300人になるという。

■オンライン診療の活用、懐疑の声

 第8波の対応で、政府が打ち出しているのがオンライン診療の活用。同時流行が起きれば、発熱外来の受診者を1日あたり3万5千人と試算する神奈川県では現状の態勢では約5千人を診きれない。オンライン診療が必要とみて6千人から9千人程度の枠を確保しようと動いている。ただ、電話やオンラインでインフルの診断を出すことには慎重な意見が根強い。

 10月28日に開かれた埼玉県の専門家会議では、参加した医師から「コロナなのかインフルなのか、患者を直接診ずに判断するのは難しい」との意見が出た。奈良県医師会の安東会長は同20日の会見で「検査をせず、(有効な薬の)タミフルを届けるから自宅で待っていなさいというのは、命に関わる問題が次々出てきます」と話した。千葉県や兵庫県の医師会からも懐疑的な見方が出ている。

●「アナフィラキシーか」、愛知県医師会が調査へ ワクチン接種後に死亡

 愛知県愛西市で今月5日に実施された新型コロナワクチンの集団接種で、40代女性が接種後に体調を悪化させて死亡したと市が10日までに明らかにした。市は、「血が混じったものを吐いていたため、現場の医師は肺の異常を疑っていた」と説明。県医師会の柵木会長は同日、「(強いアレルギー反応の)アナフィラキシーの可能性が考えられる」と述べた。県医師会の医療安全対策委員会でアナフィラキシーかどうかや、対応状況について調査するという。

 遺族は市の対応について、「息苦しいと言った時点でアナフィラキシーに対応する処置があれば、助かったかもしれない」と話している。

●戻る訪日客、悩みは人手 水際緩和・旅行支援から1カ月 外国人予約倍増も

 水際対策が大幅に緩和され、同時に政府の観光支援策「全国旅行支援」が始まってから11日で1カ月を迎えた。訪日外国人客(インバウンド)や国内旅行客による予約数は急増している。旅行需要の回復に水を差しかねないのが、人手不足だ。足元ではコロナの第8波の懸念も広がるが、今後も順調に需要が回復するかは、「第8波」の行方と人手不足への対応にかかっている。

●感染者7万8268人 前週から1万人超増

 全国の感染者は、10日現在で新たに7万8268人が確認され、前週の同じ曜日(3日)より1万人以上多かった。9日に過去最多となる9545人の感染が確認された北海道は、全国で最も多い8457人。東京都の7969人、神奈川県の5190人、愛知県の4235人と続いた。

 11月10日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【11月11日】

●中国人入国、隔離期間を短縮 「ゼロコロナ」堅持、不満に配慮

 中国政府は11日、入国者に義務づけるホテルでの隔離期間の短縮などを盛り込んだ新型コロナ対策の新たな方針を発表した。コロナ封じ込めに成功したと宣伝する政権は「ゼロコロナ」政策を堅持する構えだが、厳しすぎる対策への不満の高まりにも配慮せざるを得ない状況。コロナ対策をめぐっては、10日に習総書記(国家主席)が主宰した共産党最高指導部の会議で政策を堅持する考えが示されたばかりだった。

 入国者や感染者の濃厚接触者には従来、ホテルなど指定施設での7日間の隔離の後、体温測定や不必要な外出禁止を課す3日間の「健康観察」を求めていた。今後は指定施設での隔離は5日間とし、その後に自宅などでの3日間の隔離を義務づける。中国行きの航空便の乗客には、搭乗前の48時間以内に2回のPCR検査を求めていたが、1回に減らす。また、住民に1日に2、3回のPCR検査を求める「非科学的なやり方」は改めるべきだとしている。

◆接触確認アプリ「COCOA」、17日から停止 「利用者は機能削除を」

 国が運用する「COCOA」は、新型コロナに感染した人と濃厚接触をした可能性がある場合に通知されるアプリで、ことし9月から感染者の全数把握が簡略化されたことから機能停止が決まっている。デジタル庁は今月17日から順次、機能を停止することになり、利用者に対して、アプリとサーバーがデータのやり取りをする機能の削除を求めることになった。利用者は最新版のアプリにアップデートし、機能の削除の操作を行う必要があるという。

◆オミクロン株「BA.1」対応ワクチン、副反応の分析結果を初公表

 厚労省の研究班は9月から接種が始まったファイザーとモデルナの「BA.1」対応ワクチンについて、接種してから1週間までの副反応を分析、11日に開かれた専門家部会で公表した。それによると、ファイザーを接種した55人の副反応が起きた割合は、接種翌日では全身のけん怠感が61.8%、頭痛43.6%、37.5℃以上の発熱34.5%。また、モデルナを接種した23人では、全身のけん怠感73.9%、頭痛52.2%、37.5℃以上の発熱43.5%だった。

 副反応が出たのは接種の翌日がピークで、2、3日後にはほぼおさまったという。従来のワクチンの3回目接種の副反応と大きな違いは無いとみられるという。

■「BA.5」対応のファイザーのワクチン、接種した2人が死亡

 厚労省は、11日に開かれた専門家部会で「BA.5」対応のファイザーのワクチンを接種した2人の女性が死亡したと、医療機関から報告を受けたことを明らかにした。このうち87歳の女性は、脳梗塞の後遺症などの基礎疾患があり、今月1日に接種し、3日後に亡くなったという。死因は不明、接種と死亡との因果関係は現時点で評価できないとしている。また、42歳の女性は今月5日に集団接種会場で接種した直後に容体が急変し、搬送先の病院で亡くなった。

 厚労省によると、オミクロン株の「BA.5」に対応したワクチンの接種は先月から始まり、今月8日までで全国で286万人余りと推計され、接種後に死亡した事例について国が公表したのは初めて。

●アナフィラキシー、「適切な対応を」 厚労省が通知

 新型コロナワクチン接種後に生じる「アナフィラキシー」について、厚労省は10日、全国の自治体に通知を出した。「疑われる事例が引き続き報告されている」として、接種会場での経過観察や発症した際の対応が適切にできるよう、改めて体制の確認を求めた。アナフィラキシーは血圧低下や意識障害を伴うもので、ワクチン接種後30分以内に起きうる「重大な副反応」と位置づけられている。厚労省によると、12歳以上向けのファイザー製ワクチンで100万回あたり2.6件(10月9日まで)の報告がある。

 愛知県愛西市では5日、40代女性が集団接種会場で接種した約5分後に急変、その後死亡した。この件について、ワクチンの副反応を議論する厚労省の専門家部会で11日、対応した医師による所見などが示された。女性の死因は急性心不全とみられ、高血圧症や糖尿病の病歴もあった。現状ではアナフィラキシーが起きたか不明だが、委員からは「(アナフィラキシー対応で使う注射剤の)エピペンの有効期限の確認など、自治体への啓発をお願いしたい」などの意見が出た。

●全国で新たに7万3887人感染、死者は100人

 国内感染者は11日、全国で新たに7万3887人が確認された。死者は100人だった。

【11月12日】

●全国で新たに7万9993人感染、死者は63人

 国内感染者は12日現在、全国で新たに7万9993人が確認された。前週の同じ曜日(5日)より4334人多かった。発表された死者は63人だった。都道府県別で新たな感染者が最も多かったのは北海道の8932人。続いて東京都が8021人、神奈川県が5127人、愛知県が4488人だった。

【11月14日】

●岸内閣支持率、最低37% 世論調査 初めて4割切る

 朝日新聞社は12、13の両日、全国世論調査を実施。岸田内閣の支持率は37%(前回10月調査は40%)で、昨年10月の内閣発足以降最低となり、初めて4割を切った。不支持率は51%(同50%)で、不支持率が支持率を上回るのは、3カ月連続。年代別で「支持する」をみると、18~29歳が29%、30代が33%で、若年層が他の年代より低かった。

 毎日新聞と社会調査研究センターは先月17、18の両日、全国世論調査を実施。岸田内閣の支持率は29%、前回調査(8月20、21日)の36%から7ポイント下落。30%を切るのは、2021年10月の政権発足以降初めて。不支持率は64%、前回(54%)より10ポイント増加。また、自民党の支持率も前回から6ポイント低下し23%。内閣や自民党の支持率の低下は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題や安倍元首相の国葬が影響しているようだ。

 今月4~6日の読売新聞社の世論調査では、岸田内閣の支持率は内閣発足以降最低の36%(先月5%)で初めて30%台に落ち込んだ。不支持率は50%(先月46%)。NHKの11日から3日間の世論調査では、岸田内閣を「支持する」は、先月調査より5ポイント下がって33%で、4か月連続で最低を更新。「支持しない」は3ポイント上がって46%。新型コロナの政府対応は、「大いに評価」が7%、「ある程度評価」55%、「あまり評価しない」26%、「まったく評価しない」7%。

●年末年始の帰省や旅行 「計画」20%、第8波懸念か

 朝日新聞社が12、13の両日に実施した全国世論調査で、今度の年末年始に帰省や旅行を計画しているか尋ねると、20%が「計画している」、「計画していない」は79%。政府の「全国旅行支援」が始まって1カ月、第8波も懸念されており、状況を見て判断する人が大半を占めているようだ。「計画している」を年代別に見ると、18~29歳が32%、30代38%、40代は27%で、全体結果より前向きな人の割合が高いが、60代は13%、70歳以上は6%にとどまる。

 今回と同じ質問は、感染の第3波に入ったとみられる2020年11月、第5波と第6波の間の2021年11月にも実施している。「計画している」は2020年11月が11%、2021年11月は18%だった。年代別で年ごとの変化を見ると、30代は13%(20年)→26%(21年)と推移し、今回も含めて割合が増えているのが目立つ。40代も17%(20年)→23%(21年)と、少しずつ増えている。

●高齢者施設 第8波への備えは 希望者の入院 第7波は3割 都内調査

 第7波のピークだった7~8月、東京都内の入所型高齢者施設で希望通り入院できた感染者は3割にとどまったという。東京都高齢者福祉施設協議会が9月に調査した結果が明らかになった。調査結果によると、感染を確認した入所者は159施設の計1795人。中等症500人、重症86人。入院希望者869人のうち入院できたのは299人で、残りは受け入れ調整がつかなかった。また、期間中の感染者のうち死者は66人、うち17人は入院調整中に施設で亡くなった。

 感染者がいた施設で困ったことを尋ねた質問への回答(複数可)は、「職員確保」84.9%が最多。次いで「入院ができない」64.8%、「救急要請で受け入れ先が見つからない」56.6%など。都によると、7~8月の都内の病床使用率は最高59.9%。救急搬送先を見つけるのに20分以上かかったりする事例が週平均で1日309.7件(7月24日)まで増えていた。都は12月にかけて受け入れ施設を拡充する計画だが、医療逼迫の再来を避けられるのだろうか。

【11月15日】

●GDP、4期ぶりマイナス 7〜9月 年1.2%減 第7波・値上げ響く

 2022年7~9月期の国内総生産(GDP)は、実質で前期(4~6月期)比0.3%減、年率換算で1.2%減。マイナス成長は4四半期ぶり。輸入の一時的な増加が主因だが、コロナ禍からの個人消費の回復が道半ばであることも響いた。マイナス成長の主な要因は、円安や資源高の影響を受ける石炭や石油製品など輸入が前期比5.2%増と大きく伸びたこと。輸出は1.9%増、自動車や半導体製造装置などが増えた。

 ただ、内需に力強さを欠くのもマイナス成長の背景と言えそう。GDPの半分以上を占める個人消費は0.3%増にとどまり、1.2%増だった前期から伸びは鈍化した。3年ぶりに行動制限のない夏休みとなったが、新型コロナの「第7波」が広がり、宿泊などのサービス消費は0.3%増と伸び悩んだ。さらに家電などの耐久財は3.5%減と2四半期ぶりのマイナスとなった。値上がりしたスマートフォンなどが不振だった。10月以降はさらなる物価上昇が消費に影を落とす恐れがある。

◆「第8波」、AI試算 「第7波」ピーク超えも 名工大

 名古屋工業大学の平田教授グループが、今月10日までの感染者数推移、ワクチン効果、人の移動といったデータをもとに「BQ.1」などの新たな変異ウイルスが増える前提で、AIを使って感染状況を予測した。その結果、東京都では「BQ.1」などの感染力が「BA.5」の1.2倍、感染したことによる免疫効果がないという想定で、1週間平均で1日当たりの感染者数が来月半ばにおよそ3万人、来年1月中旬には「第7波」のピーク超えの3万6000人の予測となった。

◆国際クルーズ船受け入れ再開へ ガイドライン順守条件に 国交省

 海外と日本を行き来するクルーズ船は、横浜港に寄港した船で新型コロナの集団感染が発生した一昨年2月以降、国内の港に寄港していない。こうした中、国際クルーズ船の業界団体が、運航再開に向けて船内での感染対策や感染者が出た場合の対応方法をまとめたガイドラインを作成、国交省はガイドラインの順守を条件に国際クルーズ船の受け入れを再開すると発表しました。

◆東京都、1万1196人感染確認 1万人超は9月14日以来

 厚労省は15日、都内で新たに1万1196人が新型コロナに感染していることを確認したと発表した。1万人を超えるのはおよそ2か月前のことし9月14日以来で、1週間前の火曜日より2531人増えた。また、人工呼吸器かECMO(人工心肺装置)を使っている重症の患者は14日から5人増えて26人だった。一方、感染が確認された5人が死亡した。

 都内の新型コロナの新規感染者数が1万人を超えたことについて、東京都の小池知事は都庁で記者団に対し、「第7波ではピークが4万人という時期もあった。先手先手で、これまでの知見を生かしながら準備を重ねてきていて、フォローアップや発熱相談などの体制は整えている」と述べた。そのうえで、「皆さん自身を守るという観点から、インフルエンザも含めてワクチンの接種をできるだけ早く行ってほしい」と呼びかけた。

 11月15日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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◆北海道、1万906人感染確認 初めて1万人超 過去最多

 15日、北海道内では過去最多となる1万906人が新型コロナ感染を確認、初めて1万人を超えた。また、死者も34人と、1日の発表としてはもっとも多くなった。1日の発表としては、これまでで最も多かった11月9日の9545人を上回って過去最多。また、先週の火曜日に比べても1770人増え、感染が急速に拡大している。一方、道内で発表された1日の死者数は最も多い合わせて34人。

 北海道の鈴木知事は15日の記者会見で、「新規感染者数は全国で最も多い状況が続いており、病床使用率もほかの県に比べて高い水準となっている」と指摘。政府分科会が了承した新たな対応方針を踏まえ、政府の正式な結論を待たず、道民に対しふだんと異なる症状がある場合は出勤や登校を控え、混雑した場所への外出は控えるなど道民に対し、感染対策を強化するよう協力を求めた。

●感染10万人超す 東京1万人超、北海道過去最多

 国内感染者は15日、新たに10万5188人が確認された。前週の同じ曜日(8日)より2万1916人増え、9月14日以来約2カ月ぶりに10万人を超えた。発表された死者は全国で126人だった。感染者の数を都道府県別に見ると、最多は東京都の1万1196人で、約2カ月ぶりに1万人を超え。2番目は北海道。過去最多の1万906人が確認され、初めて1万人を超えた。これに愛知県7455人、神奈川県6298人、埼玉県5476人、大阪府5188人と続いた。

 以下6枚の図は11月15日時点の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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2022年11月29日 (火)

嵐山渓谷の秋2022

 2022年11月25日(金)、埼玉県を代表する景勝地のひとつ、嵐山町(らんざんまち)の「武蔵嵐山渓谷」へ紅葉狩りに行く。

 

 8:40嵐山渓谷駐車場に車を駐め、8:50嵐山渓谷の展望台着。

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 荒川水系、都幾川の支流の槻川(つきがわ)。

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 大平山(標高179m)

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 12:00、終了。

 

 本ブログの「武蔵嵐山渓谷」関連記事

  「武蔵嵐山渓谷の秋」 2020年12月 6日投稿

    http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2020/12/post-360050.html

2022年11月28日 (月)

三渓園と三浦半島

 2022年11月21日(月)、神奈川県の三渓園(横浜市)、三崎漁港(三浦市)、荒崎海岸(横須賀市)を巡るバス旅行。

 前日の関東は雨で、最高気温は14℃の肌寒い日。当日は、朝から昼頃まで弱雨、午後くもり、夕方になって晴れとの天気予報。12人を乗せたマイクロバスは、9:50出発。

 

●三渓園(横浜市中区本牧)

 11:25、「三渓園」に到着する頃は、雨はすっかりやんで曇り空。昼近くなって、青空。この日の神奈川県の最高気温は18℃、秋らしい良い天気。

 「三溪園」は生糸貿易などにより財を成した茶人で実業家・原三溪(本名・原富太郎) によって、1906年(明治39)に外苑が一般公開された。17万5千平米に及ぶ園内には京都や鎌倉などから移築された歴史的価値の高い建造物が配置されている。一般公開の「外苑」と、原家が私庭して使用していた「内苑」のエリアに分かれる。現在は公益財団法人三溪園保勝会が運営している。 

 「三渓園」の正門を入り、「大池」と丘の上の「旧燈明寺三重塔」を望む。

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 「旧燈明寺三重塔」は、室町時代の1457年に建てられた、園内の建造物の中でも 最も古い建物。「三溪園」へは1914年(大正3)に、現在の京都・木津川市の「燈明寺」から移築されて小高い丘に建てられ、「三溪園」のシンボルとなっている。

 三渓が住居として建てた「鶴翔閣」(写真なし)の前にある「睡蓮池」。

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 内苑エリアの「臨春閣」と左手に黄葉した大銀杏。

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 「臨春閣」は、江戸時代初期1649年(慶安2)に、現在の和歌山県岩出市の紀ノ川沿いに建てられた紀州徳川家の別荘「巌出御殿」と考えられている。大阪市此花区に移されていたものを1906年(明治39)に譲り受け、11年をかけて1917年(大正6)に移築が完了した。移築の際には、屋根の形と3棟からなる建物の配置が変更されたが、狩野派を中心とする障壁画と優美な数寄屋風書院造りの意匠が残されているそうだ。重要文化財。

 大銀杏とその後は「旧天瑞寺寿塔覆堂」 (てんずいじじゅとうおおいどう)。

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 「寿塔覆堂」は、1591年(天正19)豊臣秀吉が、病気から快復した母・大政所の長寿を祈って建てた生前墓の寿塔を覆っていた建物。桃山時代らしい豪壮な彫刻や、柱とその上の組物などにはかつて鮮やかな彩色が施されていたが、現在は風化して一部に痕跡を残すのみ。この覆堂があった「天瑞寺」は「大徳寺」内の寺院の一つだったが、明治時代のはじめに廃寺となり現在は存在しない。「三溪園」への移築は1915年(明治38)。重要文化財。

 内苑エリアの沢と紅葉。

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 内苑エリアの「月華殿」 (げっかでん)、「金毛窟」 (きんもくつ)、「天授院」 (てんじゅいん)に向かう小径。

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 南から「大池」を望む。気がつくと青空。

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 「旧矢箆原家(やのはらけ) 住宅」 は、立派な茅葺きやね。大きすぎてカメラに入らない。

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 飛騨白川郷にあった江戸時代後期の入母屋合掌造りの民家。ダム建設の水没地域にあったため、1960年(昭和35)に「三溪園」に移築された。農家ながら、式台玄関や書院造の座敷など立派な接客の空間を備え、寺社で見られる火灯(かとう)窓が付けられるなど、飛騨の三長者の一人といわれた矢箆原家の格式の高さを伝える。現存する合掌造りでは、最大級の建物だそうだ。この建物だけが、内部公開されている。重要文化財。

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 「大池」の東側から望む。近景は「涵花亭」(かんかてい)、遠くは「三渓記念館」。

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 園の中央付近にある「三溪記念館」では、「三溪園」の創設者・原三溪に関する資料、三溪自筆の書画、 ゆかりの作家作品や美術工芸品、臨春閣の障壁画などを展示しているそうだが、入館せず。「三渓園」には、他にも移築された重要文化財が多い。移築によって本来の価値を失うとの意見もあるが、現地で荒廃していた建築物を修復して移築し、保存した意義は大きいと思う。

 13:05、退園。移動中のバスの中で、崎陽軒のシュウマイ弁当の昼食。

 

●三崎漁港(神奈川県三浦市)
  
 14:00、三崎港着。周辺を散策。

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 花暮岸壁に停泊中の遠洋マグロ漁船「第31岬洋丸」(439トン、全長51.2m、住吉漁業株式会社)。遠くの赤い橋は、「城ヶ崎大橋」。

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 港にある産直センター「うらりマルシェ」で買い物。旅行会社から、神奈川県内の観光施設や土産物店で利用できる全国旅行支援のいざ、神奈川! 」の地域クーポン3,000ポイントを入手。金目鯛、アジやカレイの干物、3,000円分を購入。

 15:00、三崎漁港を出発。

●荒崎海岸(神奈川県横須賀市)

 15:30、「荒崎公園」に到着。

 駐車場の北の方から回って西側の岩場に向かい、日が沈むのを待つ。

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 日が沈みかかると、富士山のシルエット。日没は、14:25。

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 このあたりの海岸の岩石は、数千万年前、まだ三浦半島が海底であったころに堆積した黒くて硬い凝灰岩と、白くて軟らかい砂岩・泥岩の2種類の岩石の層で形成され、洗濯岩のような凸凹をした特殊な地形となっている。

 荒崎海岸を17:00出発。19:45出発地に到着。20:10自宅着。

 

 本ブログの関連記事

  「早春の三浦半島めぐり」 2017年3月14日投稿

   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2017/03/post-744e.html

 

 ★ ★ ★

 東京湾を望む横浜の東南部・本牧に広がる広大な土地は、原富太郎の義祖父である原善三郎が1868年(明治元年)頃に購入した。富太郎は岐阜県出身で、横浜の原商店に養子として入り、生糸貿易で財を成した。事業のかたわら仏画、茶道具などの古美術に関心を持って収集、国宝級の美術品を多数所蔵し、日本有数の美術コレクターでもあった。彼は古美術品のみならず、室町時代の「燈明寺三重塔」をはじめ各地の古建築を購入して移築していった。

 1906年(明治39)に市民へ公開し、1914年(大正3)に外苑、1922年(大正11)に内苑が完成するに至った。単に各地の建物を寄せ集めただけではなく、広大な敷地の起伏を生かし、庭園との調和を考慮した配置になっている。戦災により大きな被害をうけ、1953年(昭和28)、原家から横浜市に譲渡・寄贈され、財団法人「三溪園保勝会」が設立され、復旧工事を実施し現在に至っている。国の重要文化財建造物10件12棟、横浜市指定有形文化財が3棟。

 

 戦後、三崎漁港は日本最大のマグロ漁港だった。1960年代の日本の主要マグロ漁港は焼津漁港、清水漁港、三崎漁港で、内地のマグロ総水揚量の78%がこの3港に集中していた。しかしその後、三崎漁港は水揚げ量で他の漁港を下回ることになる。所属漁船が著しく大型化、遠洋化、外国市場が拡大化したことで、三崎漁港に水揚げすることなく大西洋沿岸諸国に水揚げするようになったためだという。

 現在、都道府県別のマグロの漁獲量(水揚げ量)の第1位は、静岡県。焼津、沼津、清水など、水揚げ量トップクラスの漁港がある。2位以下は年によって変るようだが、高知県、宮崎県、鹿児島県、宮城県などが並ぶ。今では、三崎漁港周辺にはマグロ料理、土産屋などの店が並び、東京から気軽に訪れられる日帰り観光地として人気があるようだ。

2022年11月27日 (日)

秋の赤城自然園

 2022年11月9日(水)、「赤城自然園」(群馬県渋川市赤城町)の紅葉狩り。

 

 この日、渋川市の最高気温は19.6℃、天気は晴れ。

 関越道赤城ICから10分。写真は、出入口の総合案内所。

 10:00入園。入園料は1,00円(セゾン、UCカード提示で500円)

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 「セゾンガーデン」から「四季の森」のカエデ。

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 「ナナフシ橋」を通って「自然生態園」を歩くと、まだツツジがあちこちで咲いている。

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 「自然生態園」のカエデ。

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 「ミズスマシの池」は水量も少なく、落ち葉で半分埋まっている。

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 「昆虫館」「トンボ池」付近のベンチで昼食。

 「カタクリの林」「野草のはらっぱ」を経て「四季の森」に戻る。

 「四季の森」の奥の方「アカマツ広場」に進む。

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 「アカマツ広場」を過ぎ、「お花畑」には枯れた紫陽花が物悲しい。

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 再び「セゾンガーデン」に入り、「ツツジの小径」の先に赤い鳥居。

 「十二様」と呼ばれる山の神。狩猟、山仕事や百姓の神様。

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 「シャクナゲの谷」できれいに黄葉する樹木。

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 「シャクナゲ園」の池の鯉。人が来ると鯉たちが集まる。

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 立ち枯れのヤマユリは、あちこちで見かける。

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 「シャクナゲ園」の沢に掛かる小さな橋で、落ち葉の「福笑い」。

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 出入口(総合案内所)前の紅葉。

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 14:10退園。

 帰りの関越道「上里サービスエリア」で、久し振りに懐かしい「峠の釜めし」を購入。

 1,200円に値上がりしていた。(「荻野屋」のホームページから転載)。

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 ★ ★ ★

 「赤城自然園」とは (ホームページから転載)

 赤城自然園は、赤城山西麓の標高600~700mに位置し、花々が咲き誇る春、生命力にあふれる夏、木々が実り色づく秋、野鳥の声が響き渡る冬と、日本の豊かな四季を織りなす美しい自然を感じることができる森です。「人間と自然との共生」の実現を目指し、元はマツやスギの雑木林を、長い年月をかけて植生を入れ替え、植物がいきいきと育ち昆虫や小動物が棲みやすい環境づくりを続けています。

 もとは1980年代に、西武セゾングループの堤清二氏が主導となって、21世紀の課題「人間活動と自然の平和的共存」に挑戦し、自然の存在形態を発見、創出して広く市民活動の発展に寄与することを目的として開発された森で、株式会社クレディセゾンは、「次世代を担うこども達に豊かな自然を引き継ぐ」ため、社会貢献活動のひとつとして赤城自然園を2010年より運営しております。 

 

 本ブログの赤城自然園関連の記事

  「初夏の赤城自然園」 2019年6月21日投稿

   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2019/06/post-7a81a6.html

日本スリーデーマーチ2022

 2022年11月6日(日)、「第45回日本スリーデーマーチ」に参加。


 国内最大のウォーキングイベント「日本スリーデーマーチ」の第45回記念大会は、11月4日、開幕した。

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 2019年は台風の影響で中止、2020年はコロナ禍で中止、2021年は人数制限を余儀なくされ、通常開催は4年ぶり。

 

 11月5日(土)の2日目、吉見百穴・森林公園の20Kmコースに参加予定だった。しかし朝から、1週間前からの腰痛の違和感。

 出発後に不安があって、すぐにリタイア。大事を取ってその日は休養。

 

 11月6日(日)の3日目、唐子中央公園を回る10Kmコースを歩く。

 9:10頃、集合場所の東松山市立松山中学校前を出発。

 市内石橋の住宅街を歩く。

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 関越道の架橋を越え、畑や林が広がる石橋から唐子中央公園へ向かう。

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 第休憩所の唐子中央公園に11時過ぎに到着、昼食後出発。

 下唐子から折り返し、石橋へ。

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 石橋の田園風景。

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 第2休憩所の東松山市立南中学校(東松山石橋)で休憩。ノーベル物理学賞を受賞した東大の宇宙線研究所長・梶田教授は、この中学校の出身者。

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 13:00ころ、市内パレード出発地に到着。10Kmを完歩。

 休憩後、14:00頃~パレードに参加。ぼたん通り。

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 大会会場の松山第一小学校に14:20到着。

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 腰痛の支障はなく、1日大丈夫だった。

 秋晴れの良い天気、最高気温は19℃だった。

 

 「ものみ・ゆさん」の日本スリーデーマーチ関連のブログ記事

  「台風19号と日本スリーデーマーチ」 2019年11月2日投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2019/11/post-42b73b.html

  「日本スリーデーマーチ2018」 2018/11/8日投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/2018-0edb.html

  「日本スリーデーマーチ2017」 2017/11/12投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/2017-24a0.html

  「日本スリーデーマーチ2016」 2016/11/11投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-89c3.html

  「日本スリーデーマーチ2015」 2015/11/12投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/2015-3fcc.html

  「日本スリーデーマーチ2014」 2014/11/10 投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/post-ba9a.html

  「日本スリーデーマーチ」 2012/11/17 投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-ba9a.html

2022年11月13日 (日)

皆既月食と天王星食

 2022年11月8日(火)の夜、皆既月食と天王星食を観察・撮影する。

 

●皆既月食

 11月8日の夜、皆既月食があった。8日は冬型の気圧配置で、太平洋側の地域を中心に晴れて、全国的に観察できたという。月は18時9分から欠け始め、19時16分に皆既食となる。皆既月食になると、月が地球の影に隠れてで真っ黒になるのではなくて、大気がまるでレンズのような役割をして、太陽光が屈折して赤い色だけが届いて「赤銅色(しゃくどういろ)」のブラッドムーン(血の月)になる。

 国立天文台の情報によれば、皆既食は86分間続いて20時42分に終わり、その後は徐々に月は地球の影から抜けて、21時49分に部分食が終わるという。

 皆既月食(2022年11月8日) 出典:国立天文台 ホームページ 

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 夕方6時半頃から皆既月食の最大になる20時頃まで、自宅2階のベランダから観察と撮影した。

 部分月食 18:36 と 18:39

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 部分月食 19:04 と 19:10

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 皆既月食 19:18 と 19:54

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 皆既月食 月の左下に2つある星の上の方が天王星らしい。(写真をクリックすると拡大表示します)

 だんだん同じ姿勢で、眼も疲れてきたし寒いので、残念ながら撮影を止めてしまった。集中力や根気が続きません。

 

●天王星食

 月食の最中に、赤銅食の月が天王星を隠す「天王星食」が起こる。天王星は約6等級で、薄い青色に見える。普段の満月のすぐ近くであれば、明るさに負けてしまうが、天王星の潜入時に月が皆既食中で暗いため、見つけやすい。条件が良いと肉眼でも見えるという。

 天王星食(11月8日東京の予報) 出典:国立天文台 ホームページ

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 撮影できなかったので、国立天文台のライブ映像(YouTube)から引用する。

 20:11:09 皆既月食と左下に天王星 出典:国立天文台 ライブ配信(YouTube) 

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 20:26:38 皆生月食 左下の天王星が月に接近 出典:国立天文台 ライブ配信(YouTube) 

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 20:40:06 天王星の潜入 出典:国立天文台 ライブ配信(YouTube) 

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 21:22:57 天王星の出現 出典:国立天文台 ライブ配信(YouTube) 

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 ★ ★ ★ 

 皆既月食の撮影は、これまで何回か挑戦したが、今回はうまく撮れた方だ。ただ残念なのは月の高度が高くなって、カメラで追いにくくなったり集中力が切れて、天王星食まで待てずに撮影を止めてしまった。あとで他の天王星食の写真を見て、続けていれば撮れたはずだったのだが。

 日本全国で皆既月食が見られたのは、2021年5月26日以来、1年5か月ぶり。このときは、あいにく曇っていてうまく撮影できなかった。次回の皆既月食は、2025年9月8日だそうだ。

 国立天文台によると、日本で皆既月食と「天王星食」が重なるのは過去5千年で一度もなく、極めてまれな現象だという。皆既月食と「惑星食」が同時に観測できるのは、1580年7月以来442年ぶり。「天王星食」は、「惑星食」の一種。日本で皆既食中に「惑星食」が起こったのは、1580年7月26日の「土星食」以来442年ぶり。次回は322年後、2344年7月26日の「土星食」だそうだ。

 

 本ブログの「皆既月食」関連の記事

  「スーパーブラッドムーン2021」 2021/5/28 投稿

    http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2021/05/post-304988.html

  「スーパー・ブルー・ブラッドムーン」 2018/2/1 投稿
    http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/post-c65d.html

  「ブラッドムーン」 2014/10/09 投稿
    http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-9a83.html

  「スーパームーン」 2014/09/11 投稿
    http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-6715.html  

  「赤い月」 2014/04/17 投稿
    http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-66f6.html

2022年11月11日 (金)

渋沢栄一ゆかりの地ウォーク

 2022年10月30日(日)、埼玉県深谷市の渋沢栄一ゆかりの地を巡るウォーキング。

 10:20、JR深谷駅の市営南駐車場に乗用車2台で到着。

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 深谷駅舎は、「関東の駅舎百選」にも選ばれている東京駅の赤レンガ駅舎をモチーフにしたデザイン。大正時代に竣工した東京駅・丸の内口駅舎の建築時、深谷にあった「日本煉瓦製造」で製造された煉瓦が70km以上離れた東京駅まで鉄道輸送されて使われたことに因み、1996年(平成8)に改装された。ただしこの深谷駅は、コンクリート壁面の一面にレンガ風のタイルを貼ることによって東京駅に似せているという。

 深谷駅北口から、渋沢栄一記念館行のコミニティバス「くるりん」に乗車、10:55出発。料金は200円。

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 11:20 、終点の「渋沢栄一記念館」着。バスを降り、「青淵(せいえん)公園」を通って旧渋沢邸「中の家」(なかんち)に向かう。

●青淵公園・青淵由来之跡の碑 11:30~11:35

 深谷の血洗島にあった渋沢栄一の生家の近くの「青淵公園」は、清水川の調整池も兼ねた清水川沿いに広がる9.8haの細長い公園。芝生やこども広場などがあり、市民の憩いの場になっている。11月3日からイルミネーションが点灯するという。

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 旧渋沢家「中の家」のすぐ裏手に、清水川の伏流水が湧く大きな淵があり、1937(昭和12)年、栄一の雅号「青淵」の由来を記念する記念碑が建つ。この碑は皇太子明仁親王の生誕奉祝記念事業として、埼玉県大里郡八基村(やつもとむら)青年団により発起・建設された。

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●旧渋沢邸 「中の家」(なかんち)11:35~12:00

 旧渋沢邸の立派な正門。門をくぐると正面に主屋がある。

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 旧渋沢邸「中の家」主屋は、渋沢栄一生誕地に建ち、栄一の妹の夫・市郎によって1895年(明治28)上棟された。梁間5間、桁行9間の切妻造の2階建、西側に3間×3間の平屋部分等を持つ。また、主屋を囲むように副屋、土蔵、正門、東門が建ち、屋根に「煙出し」と呼ばれる天窓のある典型的な養蚕農家の形を残している。

 栄一は、多忙の合間も時間をつくりたびたびこの家に帰郷した。東京飛鳥山の栄一の私邸は、空襲によって焼失したため、この家は現在残る栄一が親しく立ち寄った数少ない場所という。渋沢家の住宅として使われていたが、1985年(昭和60)より「学校法人青淵塾渋沢国際学園」の学校施設として、多くの外国人留学生が学んだ。2000年(平成12)の同法人解散に伴い深谷市に帰属。県指定旧跡、市指定史跡。

  主屋は、今年1月から~2023年(令和5)4月末予定で改修工事中、外観がネットで覆われて見られない。

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 主屋の写真の出典は、ウィキメディア・コモンズ。

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 藍玉(あいだま)取引の店として使われた副屋。また八基村農業協同組合が設立された折には、事務所として使われた。副屋の左手には東門と土蔵が並ぶ。

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 12:00~12:25、「青淵公園」に戻り、東屋で昼食。清水川の堤防を「渋沢栄一記念館」に向かって歩く。

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 赤城山と榛名山 浅間山、日光連山、秩父連山などの展望が広がる。

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●渋沢栄一記念館 12:40~13:20

 渋沢栄一の生家(血洗島)から東に500mほどの清水川のほとりにあり、渋沢栄一に関する展示を行っている。

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 1995年(平成7)11月11日、栄一の命日に開館した記念館。ガイドの案内で館内の渋沢栄一資料室(撮影禁止)に入る。

 資料室の入口にある栄一の等身大パネルと記念館の北側に建つ銅像。身長は150cmちょっとだったとか。

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最初に、栄一の年譜が掲示。青春時代~尊攘派志士、一橋慶喜の家臣へ。幕臣となり欧州訪問。大蔵省、実業家の時代。引退後の教育・医療・福祉活動などと分かれている。また栄一の遺墨や写真などが展示されていた。体育室では渋沢栄一に関する映像を見ることができ、2階の講義室ではアンドロイド渋沢栄一の講義を聞くことができるが時間の関係でパス。

●尾高惇忠生家 13:40~14:00

 尾高惇忠(じゅんちゅう)は渋沢栄一の従兄であり、栄一はこの尾高家に通い惇忠に論語をはじめ多くの学問を師事した。惇忠は、明治維新後は富岡製糸場の初代場長や第一国立銀行の森岡支店庁舎先代支店長などを務め、幅広く活躍した。

 尾高惇忠と渋沢栄一 出典:ウキメディア・コモンズ

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 この生家は、江戸時代後期に惇忠の曽祖父が建てたといわれ、当時は「油屋」の屋号で呼ばれ、この地方の商家建物の趣を残している。尾高家は 、農業のほかに菜種油、藍玉製造 、販売、 塩、雑貨等を販売しており、使用人も雇っていた。

 尾高惇忠生家 出典:ウキメディア・コモンズ

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 惇忠や栄一らが、高崎城乗っ取り計画を謀議したと伝わる部屋が二階にあるという。市の指定史跡。主屋敷の裏には、煉瓦倉庫も残る。

 惇忠の弟で、渋沢栄一の養子・渋沢平九郎や、惇忠の長女で富岡製糸場伝習工女第一号となるゆう(勇)もここで生まれた。平九郎は、幕臣のとして彰義隊・振武軍に参加して飯能戦争を戦ったが、敗北し自害した。旧渋沢邸「中の家」の裏には、栄一が作らせた平九郎の石碑があった。

 尾高淳忠生家を出て、深谷ネギ畑の農道を歩く。

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 利根川支流の小山川の堤防を右手橋の向こうに見える大寄(おおより)公民館に向かって歩く。

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●誠之堂・清風亭 14:25~14:40

 大寄(おおより)公民館の敷地内にある「誠乃堂」(せいしどう)と「清風亭」に入る。

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 「誠之堂」は1916年(大正5)、「清風亭」は1926年(大正15)の建設。東京都世田谷区にあった「第一銀行」の保養・スポーツ施設「清和園」に建てられていたもので、平成に入り深谷市に移築・復元された。いずれも建築史上、大正時代を代表する重要な建物。

 「誠之堂」は、渋沢栄一の喜寿(77歳)を祝って「第一銀行」(現在みずほ銀行)の行員たちの出資により建築された。外観は英国農家風、室内装飾に東洋的な意匠。栄一は、日本の近代経済社会の基礎を築いた。その拠点が「第一国立銀行」で、1896年(明治29)「第一銀行」となり、栄一は、その初代頭取を務め、喜寿を機に辞任した。2003年(平成15)、国の重要文化財に指定された。

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 「清風亭」は、当時「第一銀行」2代目頭取であった佐々木勇之助の古希(70歳)を記念して、「清和園」内に「誠之堂」と並べて建てられたスペイン風様式鉄筋コンクリート造り。建築資金は、「誠之堂」と同じく行員たちの出資によるもの。 佐々木も栄一と同じく、行員たちから強く慕われていたそうだ。2004年(平成16)、埼玉県指定有形文化財に指定された。

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 小山川の堤防を旧煉瓦製造施設に向かって進む。

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●旧煉瓦製造施設 15:15~15:45

 日本煉瓦製造株式会社の旧事務所(煉瓦資料館)に入る。旧事務所は、ドイツ人煉瓦製造技師チーゼの居宅兼事務所として建築され、当時の西洋建築の様式を残し、現在は資料館として利用されている。当初は別の敷地にあったが、3回の曳家移転がなされた。

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 日本煉瓦製造は、渋沢栄一らによって設立。煉瓦技師チーゼを雇い入れて、1888年(明治21)に操業を開始、当地で製造された煉瓦は、東京駅丸ノ内本屋や旧東宮御所(現迎賓館赤坂離宮)などに使用されており、日本の近代化に大きく寄与した。しかし時代とともに煉瓦需要が減少、安価な外国産の市場拡大で2006年(平成18)、約120年の歴史に幕を閉じた。

 煉瓦資料館 工場の全体模型

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 明治40年に建設された「ホフマン輪窯」の建物が6棟ある。右上の隅、川のほとりに旧事務所が見える。

 工場の一部として「ホフマン輪窯6号窯」「旧事務所」「旧変電室」が残り、専用線であった「備前渠鉄橋」とともに1997年(平成9)年5月、国の重要文化財に指定され、2007年(平成19)度に深谷市に寄贈された。ホフマン輪窯は、この旧煉瓦製造施設の他には、栃木県、京都府、滋賀県にそれぞれ1基が現存するのみで、全国では4基しか残されていないという。

 煉瓦資料館 明治40年建設のホフマン輪窯(6号窯)の模型。

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 「ホフマン輪窯6号窯」は、保存修理工事のため、2019年(平成31)2月から見学休止中。再開は2024年(令和6)頃の予定。 

 旧日本煉瓦製造のホフマン窯とその内部 出典:ウキメディア・コモンズ

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あかね通り(遊歩道) 15:50~16:30

 日本煉瓦製造が製造した煉瓦の当初の輸送手段は、利根川舟運であった。しかし安定性に欠けるため輸送力向上を目的として、1895年(明治28)に深谷駅から工場までの約4.2kmにわたって、日本初の専用鉄道が敷かれた。やがて煉瓦の出荷量の減少により、1972年(昭和47)から運用休止となり、1975年(昭和50)3月に全線の廃止届が提出され、翌年の3月に線路用地が深谷市に譲渡された。

 廃線跡は、線路が撤去され、歩行者と自転車が通れる遊歩道「あかね通り」となっている。

 15:50、国の重要文化財「備前渠鉄橋」を通過。ここから遊歩道「あかね通リ」を歩き始める。

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 下を流れる「備前渠」(びぜんきょ)は、1604年(慶長9年)に関東郡代の伊奈備前守が江戸幕府の命で開削した埼玉県最古の農業用水路。鉄橋は、「プレートガーター橋」(鋼板の橋桁の意)が採用されている。

 専用鉄道には3ヶ所の鉄道橋(備前渠鉄橋、唐沢川鉄橋、福川鉄橋) が架けられていた、そのひとつが県内最古の農業用水路でもある備前渠用水に設置された「備前渠鉄橋」。1スパンで、全長15.7mと3つの鉄橋でも最長の橋桁。イギリス人の鉄道技師ポーナルが設計。またすぐ脇には、備前渠用水から分水する新井用水の上に架けられた長さ2mの「煉瓦アーチ橋」も遊歩道となっている。 

 何故か廃線跡の遊歩道中央に大きな樹木がある。

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 福川を渡った先にある公園「ブリッジパーク」には、この路線で使用されていた「福川橋梁」やその脇に架けられていた「福川避溢(ひいつ)橋」が移築、保存されている。また「唐沢川鉄橋」は深谷駅の北口から東へ300mの地点に位置し、深谷市へ譲渡されたさいに橋の名は、「つばき橋」に変えられている。

深谷城址公園 16:40~16:45

 深谷城は、1456年(康正2 )に深谷上杉氏の上杉憲房(のりふさ) が古河公方(関東足利氏)の侵攻に備えて築城。1590年(天正18)、秀吉の小田原征伐まで、深谷上杉氏の居城だった。家康の関東入部に伴い、松平康直が1万石で入城し深谷藩となった。その後、藩主が何代か代って酒井忠勝(後の老中・大老)が1万石で入封したが、1627年(寛永4)に川越へ移封となり、深谷藩は廃藩、1634年(寛永11)に廃城となった。

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 ちなみに、武蔵国岡部(旧大里郡岡部町、現深谷市)を本拠としていた安部家の岡部藩領から、豪農から幕末に渋沢栄一、渋沢成一郎(喜作)、尾高惇忠などが輩出した。渋沢栄一と成一郎は一橋家慶喜の下で士分に取り立てられ、慶喜の将軍就任後は直参旗本となった。

 深谷城の城跡一帯が、深谷城址公園として整備されている。 外堀に沿って桜が植えられており、市民の憩いの公園。城跡は埼玉県指定旧跡、また外堀(外濠)の一部が深谷市指定史跡。周辺には深谷市文化会館、県立深谷高校、深谷第一高校、深谷商業高校や深谷市役所などが集まる市の中心街となっている。

 16:40、「深谷城址公園」の中を通過し、深谷駅に17:05着。

 この日の歩数は、22,500歩、距離13.5Km。渋沢ゆかりの地を学び、秋晴れの気持ちの良い、久し振りのウォーキング日和だった。

 

 ★ ★ ★

●韮崎直次郎の富岡製糸工場建設

 「尾高惇忠生家」のガイドの話では、富岡製糸工場ゆかりの深谷出身の偉人として、渋沢栄一、尾高惇忠とともに、あまり知られてない韮崎直次郎がいる。直次郎は、尾高家の住み込みの使用人・久保田熊次郎と同じく使用人であった母・銀の長男で、尾高家の離れで生れた。やがて韮塚家の養子となり、苦労して農業、養蚕、藍玉作り、菜種油の製造・販売に力を注いだ。尾高家の物心両面の力添があったと思われるが、 幕末には豪農としての地位を築いた。

 この直次郎のひたむきに努力する姿を尾高惇忠が見ていて、直次郎に対して深い信頼を寄せたようだ。富岡製糸工場の建設において西洋式建物の資材調達のまとめ役を任された。主な建築資材であった西洋の煉瓦は、製造方法もわかっていない中、地元の瓦職人を束ね、試行錯誤のうえ煉瓦を焼き上げることに成功したという。

●諸井恒平の秩父セメント設立

 諸井恒平は、武蔵国児玉郡本庄宿(埼玉県本庄市)出身の実業家。1878年(明治11)わずか16歳で本庄生糸改所頭取に推され、1886年(明治19)には児玉郡外二郡蚕糸組合の副頭取、同年24歳で本庄郵便局長になった。若い頃から事業家としての才覚があった。遠戚である渋沢栄一の勧めで、1887年(明治20)に日本煉瓦製造(株)に入社。支配人、取締役を経て、1907年(明治40)には専務取締役に昇進。その間、日本工業協会理事、東京毛織(株)専務取締役にも就任する。

 恒平の名を不動にしたのは、秩父鉄道の取締役となった1910年(明治43年)に武甲山の石灰岩に注目し、セメント製造事業の開拓を手掛けたこと。セメントの需要拡大を見込み、栄一の資金援助のゴーサインが出て、日本煉瓦社内に秩父セメント発起準備室が設けられた。1923年(大正12)に秩父セメント会社を設立、1925年(大正14)には秩父鉄道の社長も兼ねた。密接な関係にあったため両会社の発展に寄与した。この他にも大正、昭和を通して次々と要職に就いた。

 近代の諸井家は3家あり、北諸井、南諸井、東諸井と呼ばれた。恒平を世に出した東諸井家は、その他にも多くの逸材を育て、日本の近代化に深く貢献した。恒平の長男である諸井貫一は「経済団体連合会」「経済同友会」の創始者である。また、恒平の弟に当たる諸井六郎は、外交官として条約改正に尽力。他の弟たちも実業家として日本の近代化に貢献している。三男の諸井三郎とその次男諸井誠は、作曲家・音楽評論家として業績を挙げている。

●渋沢栄一の強運

 「近代日本経済の父」、新1万円札の顔ともなる渋沢栄一は、幼少の頃からとても頭が良かったという。また父親の藍玉売りに同行したりして、商才に長けていた。岩崎弥太郎と違い、財閥を作らず戦争に協力しなかった。「渋沢栄一記念館」のガイドは、彼は「強運」の持ち主だったと言う。

 江戸末期から明治へと、日本が近代化をめざして変革しようとする激動の時代においては、井伊直弼、吉田松陰、坂本龍馬、中岡慎太郎、近藤勇土方歳三、西郷隆盛、大久保利通、伊藤博文・・・といったすぐれた人物が、悲運にも次々と倒れた。確かに、栄一もひとつ間違えれば、そういう生涯を送ったかもしれない。確かに彼は、歴史の流れに乗った4つの「強運」を持っていた。しかも長寿で1931年(昭和6)11月11日、老衰のため91歳で逝去した。

➊尊皇攘夷の青年期

 藍の商いをおこなう農家の子として生まれた渋沢栄一は、日本の将来を憂いて過激な尊王攘夷派となった。討幕をめざして武具を買い整え、従兄弟の渋沢喜作ら69人の同志を募り、攘夷蜂起を目的とする同志を組織。1863年(文久3 )年11月に、高崎城を乗っ取って武器・弾薬を奪い、鎌倉街道を南下して横浜を焼き討ち、外国人を切り捨てる、長州藩と連携して幕府を倒すという計画を立た。

 同志との会合の席上で、栄一の従兄弟であり妻の兄である尾高長七郎が、天誅組の失敗を例に挙げて計画の実行を反対した。栄一は決行を主張し議論は平行線。しかし幕府がこの計画を察知し動き出していたため、計画は実行されず栄一と喜作は連れだって京都へ逃れた。血気に走る一歩手前で、反逆者として処刑される危機を切り抜けた。これが1番目の「幸運」だった。

➋幕府側への転身

 一橋家の重臣、開国派の平岡円四郎に出会い、「世界を知らずに、攘夷を論じている自分」を知らされ、眼を開かされる。渋沢栄一と喜作はまさに180度の転身をして、平岡の推挙により喜作と共にかつて敵であった幕府側、一橋家の家臣となった。これが2番目の「幸運」となった。

➌西洋で学ぶ

 幕府の最後の将軍・徳川慶喜の家臣となった栄一は、慶喜の弟、民部公子(徳川昭武)の随行して、中国、シンガポール、エジプトを経由して、パリ万国博覧会が開催されるフランスへ渡る。そこで、渋沢は西洋の文化、社会にじかに触れ、日本より遥かに進んだ鉄道や兵器、科学技術などに驚く。とりわけ、彼の心を揺り動かしたのは、銀行を中心とした経済構造であり、株式会社による近代資本主義だった。3番目の「幸運」は、異国で学ぶ機会を得たこと。

 そして、日本に帰ってきた時には幕府が倒され、明治維新によって江戸幕府は消滅していた。時代の大きな激変の時に、渋沢栄一が外国にいたため、それに巻き込まれなかったことも「強運」であった。、栄一の見立養子(相続人)の渋沢平九郎は、彰義隊に参加して敗北し自害している。

 「近代国家は強力な軍隊だけではなく、自由な取引による商工業によって支えられている。日本も遅れてはならない」。栄一はそのことを痛感し、日本に戻ってきたあと、慶喜が身を寄せていた静岡藩で、商法会所(株式会社)を始め、順調に発展する。栄一は慶喜に「私はこれからもあなたをお支えしたい」と伝えるが、慶喜からは「私に仕えなくていい。自分の人生を生きなさい」と諭される。明治政府に呼ばれ、大隈重信に説き伏せられて、大蔵省の役人となった。

➍自分を生かす道は実業家

 大蔵省の役人となった栄一は、日本の近代化をめざして、財政、地方行政、殖産興業等を精力的に進めた。しかし障害が多く、「自分の生きる道は、ここではない」と悟り、自力で切り開く決意を固めたことも第四の「幸運」となった。自分をもっとも生かす道、実業家となった栄一は、少年期に学んだ孔子の『論語』の精神を生かして、「私利私欲を追求し、ひたすら営利をむさぼる実業家ではなく、たくさんの人に利益をもたらす、仁愛の精神を持った実業家」になろうとした。

 国家や社会のための「公益」を大切にするという考えのもと、栄一は第一国立銀行や東京商法会議所を設立、王子製紙、日本郵船、帝国ホテル、札幌ビール、東京電力、東京ガスなど500社におよぶ株式会社を立ち上げ、会社の経営に携わった。さらに「経済活動だけでなく、社会公共事業が大切」と医療や教育を支援し、東京慈恵会、日本赤十字社、聖路加病院、理化学研究所等の設立に関わり、一橋大学や同志社大学、二松学舎、早稲田大学、日本女子大学等の設立を助けた。

 特に力を注いだのは、養育院。明治維新により社会体制が大きく変わり、職を失う人、孤児や老人、障害者など多くの生活困窮者がいた。養育院は1892年(明治5)、明治政府が生活困窮者の保護施設として設立。渋沢は1874年(明治7)から事業に関わり、1879年(明治12)初代養育院長となって運営に携わり、死ぬまでの50年余り院長を務めた。「怠け者など税金で養うべきではない」との議論に、栄一は「政治は仁愛に基いて行なうのは当然」と、公的支援を訴えた。

●論語と算盤

 渋沢栄一は、「なによりも良心と思いやりを大切にしなければ」と、労働組合を助け、貧しい人のための「生活保護法」をつくり、社会福祉にも尽力した。その信念を、『論語と算盤』という著書にまとめている。栄一は経済人・実業家であるだけでなく、確固とした哲学をもった思想家でもあった。

 道徳と経済とは、孔子の教えである論語から、「道徳なくして経済なし 経済なくして道徳なし 」という考え方。「徳で収める儒教の考え方を経済に取り入よう」と考えた。そして、ただお金儲けをするのではなく、世のため、人のため、または日本の繁栄のために『徳』を積むようなビジネスを、相反する働き方と融合しようと「道徳経済合一主義」を試みた。この考え方は、道徳に欠け、金儲け主義や自己中心的な働き方が多い現代社会にも必要だ。

 岩崎弥太郎は三菱財閥の創始者で同時代に活躍したが、事業を独占しすることで、富も独占しようと考えた。栄一は自ら財閥を立ち上げるという、出世欲や名誉欲というものは全くなかった。 事業を大きくして得た利益は社会に還元し、「公益」を追求することで日本を豊かにしようと考えた。道徳的に正しいことを続けることが公益になり、やがて自分にも返ってきて豊かになると考えた。このような論語思想から、教育・福祉事業への投資・寄付を惜しまなかったという。

 ところで、後にキリスト教の洗礼を受けた大原孫三郎は、倉敷紡績、倉敷絹織、倉敷毛織、銀行、電力会社などの社長を務め、大原財閥を築き上げた。孫三郎は、石井十次の社会福祉事業の影響もあり、工員の教育や環境改善、農業改善のほか、社会・文化事業にも熱心に取り組んだ。倉紡中央病院、大原美術館、大原奨農会農業研究所、倉敷労働科学研究所、大原社会問題研究所、私立倉敷商業補習学校を設立した。孫三郎と渋沢栄一が、社会へ還元する経済の考え方が共通することを知って、改めて当時の実業家の偉大さを思う。

2022年11月 6日 (日)

新型コロナ2022.10 増加に転ず

 新型コロナウイルス感染症は、7月には「第7波」となって全国的に急増、8月10日の全国の新規感染者は過去最多の25万人超、自宅療養の感染者も10日時点で過去最多の154万人、重症者や死者も増加した。8月下旬からは減少傾向が続いているが、この冬は季節性インフルエンザと新型コロナの同時流行「第8波」が懸念されている。今月19日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.35倍と8月下旬以来およそ2か月ぶりに増加に転じた。

 2022年10月16日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2022.10 第8波懸念」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

 

【10月16日】

●「宿泊料金が軒並み高く‥」 全国旅行支援で 「便乗値上げ」?

 新型コロナの水際対策が大幅に緩和され、街中には海外からの旅行客の姿が多くみられるようになった。一方、水際対策の緩和とともに始まった「全国旅行支援」の影響で、SNS上にはホテルや旅館の宿泊料金について「どこのホテルも軒並み金額が高くなっている」、「予約を取り直そうとしたら金額が2倍以上になっている」などと、割引きを前提とした値上げ、いわゆる「便乗値上げ」をしているのではないかという声が上がっている。

 宿泊予約サイトの担当者によると、「全国旅行支援」が始まってから全体的に予約が増加し、宿泊料金が高くなる傾向がみられるという。観光庁の担当者は、「料金設定の方法や考え方は事業者によって異なるため、どこからが不当な値上げなのかを一律に定めることはできない。ただ、割引きを前提にした不当な値上げがされないよう都道府県を通じて事業者に周知していく」と話している。

●雇調金、企業の不正135億円 手続き簡素化背景に コロナ下 920件

 企業が従業員に支払った休業手当を国が補助する「雇用調整助成金」(雇調金)をめぐり、コロナ下での不正受給が9月末までに920件、総額135億円にのぼることが分かった。迅速に支給するため、手続きを簡素化したことなどが背景にある。雇調金の支給対象は、売上高が一定程度減るなどした企業。従業員の休業手当を補助することで、解雇を防ぐ狙いがある。

 厚労省はコロナ禍を受けて雇調金を拡充した2020年以降、雇用保険に非加入の非正規労働者らの休業手当を補助する「緊急雇用安定助成金」も含めた不正受給額を集計。135億円のうち、102億円は回収済みで、残りも回収を続けている。

●全国で新たに2万9416人が感染 5日連続で前週を上回る

 国内感染者は16日、新たに2万9416人が確認された。前週の同じ曜日(9日)より6802人多く、5日連続で1週前の感染者数を上回った。死者は15人。16日の新規感染者が都道府県別で最も多かったのは東京都の2714人で、大阪府2318人、北海道2089人、神奈川県1690人と続いた。

 10月16日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【10月17日】

●ゼロコロナ、経済停滞続く 中国GDP発表延期 習体制に忖度

 17日午前、中国の経済政策を担う国家発展改革委員会の幹部は記者会見で、「目前で把握している状況を見ると、7~9月期の経済は明らかに回復している」と強調した。その数時間後、 国家統計局は18日に予定されていた7~9月期の国内総生産(GDP)の発表延期を公表。延期理由の説明はなく、主要国営メディアは延期の事実すら報じない。 開会中の共産党大会への影響を懸念したとみられる。

 3期目入りを果たす習総書記の政策によって中国経済は停滞が続いている。9月中旬にはゼロコロナ政策で移動を制限された人は約3億人に上った。文化旅行省の発表によると、中国の長期連休である10月の国慶節では、コロナ禍前の2019年に比べ旅行者は6割減った。消費動向を示す小売総額も2021年ごろから低調が続く。低迷する経済指標を前に、発表延期は「習1強体制」が完成する党大会に水を差さないよう忖度が働いた可能性もある。

●コロナとインフル同時流行に備え、「わかりやすい周知重要」

 この冬に懸念される感染拡大について、政府は、新型コロナが一日45万人、インフルエンザが一日30万人の規模で同時に流行し、ピーク時には一日75万人の患者が発生する可能性を想定して対策を進める。こうした中、東京都は17日、都内の医療提供体制の整備など対策を検討する会議を開き、出席した専門家からは「同時流行が起きると発熱外来の混乱が懸念される。相談窓口や検査・受診体制を準備し、都民への分かりやすい周知が重要」とする指摘が相次いだ。

 また会議では「検査キットや解熱剤などを備蓄する重要性を都民により理解してもらう方法が必要」とか「オンライン診療の拡充とともに、コロナの患者を診療できる医療機関の数をさらに増やすべき」などといった意見も出された。都は、同時流行に備え、陽性者登録センターの受け付け枠の引き上げや、インフルの治療薬を迅速に受け取れる仕組みなどを検討しており、17日の専門家の意見も踏まえ具体的な対策を取りまとめることにしている。

●オミクロン対応 職域接種始まる

 オミクロン株に対応したワクチンの職域接種が17日、始まった。社会経済活動を回す方向へかじを切るなか、政府は現役世代への接種加速をめざす。だが、実際には職域接種は進んでいない。自治体での接種も進んでいることもあり、コロナワクチンとしては4回目となる今回の職域接種を申し込んだのは12日時点で731会場。1~2回目は約4千会場を設置して約970万人が接種を受けたが、3回目は約3千会場で約430万人に減っていた。

●自治体向け交付金、7.3億円が「不適切」 20年度コロナ対応 検査院調べ

 新型コロナ対応で国が地方自治体に交付する「地方創生臨時交付金」(コロナ交付金)について、会計検査院が検査したところ、約7億3千万円の不適切な支出が確認された。効果が把握できないケースも多数あるとして、検査院は17日、内閣府などに改善を求めた。コロナ交付金は、2020年4月に閣議決定されたコロナ対応の「緊急経済対策」に位置づけられた。感染拡大の防止、雇用の維持と事業の継続、経済活動の回復、などを目的とした事業が対象となる。

 自治体の「実施計画」に基づいて交付され、2020~21年度に予算計上された総額は約15兆2千億円。生活支援などを目的に、8県と596市区町村が行った商品券の無償配布事業では、30市区町村で未使用の商品券(交付金額約6695万円)が精算されず、活用されないまま。また、中小企業などが融資を受ける際の保証料の補助事業では、3県と82市区町村で約5億4750万円が自治体に滞留。水道料の減免事業で、対象にならない公共施設が含まれているところもあった。

【10月18日】

●米、新型コロナとインフル、両方のワクチン接種を呼びかけ

 新型コロナとインフルエンザの同時流行が懸念される中、米国では来月下旬の感謝祭の時期を前に両方のワクチンを接種するよう呼びかけが行われている。日本とは季節が逆で、インフルの流行の時期が半年ずれる南半球のオーストラリアでことし、コロナが拡大する前と同じ程度のインフルの流行が起きた。

 バイデン政権で新型コロナ対策調整官をつとめるアシシュ・ジャー氏は、今月、同時流行への危機感を示したうえで「インフルと新型コロナの両方のワクチンを打ちに行ってほしい。皆さんがそうすれば、この冬、一日に何百人もの命が救われることになるだろう」と述べ、両方のワクチンの接種を呼びかけた。米国CDC(疾病対策センター)は今月14日「インフルの増加が多くの地域で報告されている」として、ワクチンの接種を早めに済ませるよう呼びかけている。

●同時流行、3段階で呼びかけ 政府 感染状況別後リスク者を意識

 今冬懸念される新型コロナと季節性インフルエンザの同時流行について政府は18日、感染状況を3段階に分けて対策を呼びかける方針を決めた。段階が進むにつれ、重症化リスクが高い人への速やかな発熱外来の受診や、リスクが低い人への自宅療養を促すメッセージを強めていく。厚労省がこの日、同時流行対策の会議を開催した。想定では感染状況を、①落ち着いている、②同時流行の兆しが見える、③同時流行により医療逼迫が懸念される、の3段階に分けた。

 ①では、双方のワクチン接種を促し、コロナの抗原検査キットと解熱薬の事前購入を呼びかける。②では、症状が出た高齢者や小学生以下の子どもなど高リスク者に発熱外来の受診を、自主検査で陽性となった高リスク者以外には「健康フォローアップセンター」の活用を呼びかける。③では「医療機関が速やかに受診できない状況」「高リスク者を守るため一層のご協力を」と呼びかけ、自宅療養中の体調悪化に対応する相談窓口も周知する。

 10月18日時点の国内の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【10月19日】

●WHO、新型コロナ「緊急事態」宣言、当面続ける方針

 WHOは19日、本部のジュネーブで記者会見を行い、2020年1月から新型コロナの感染拡大に出している「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言について、解除できるか今月13日に専門家による委員会を開き、初めて本格的に検討したことを明らかにした。委員会では、世界での死者数が依然として多いことや、変異ウイルスのリスクがまだよくわからないといった意見が出たことで、「緊急事態の宣言を解除するには早すぎる」という判断で一致した。

 WHOのテドロス事務局長は「いまのパンデミックは私たちを驚かせたが、今後再び驚かせる可能性がある」と述べ委員会の判断に従って宣言を当面、続ける方針を明らかにした。世界の新規の感染者数や死者数は減少傾向にあるが、ドイツやフランスなどでは感染者数や入院者数が再び増えるなど、新たな感染拡大への警戒も出ている。

●9月の外国人旅行者、コロナ感染拡大以降初めて20万人上回る

 先月、日本を訪れた外国人旅行者は新型コロナ感染拡大以降、初めて20万人を上回った。観光局によると先月、観光客を含めて日本を訪れた外国人旅行者は推計で20万6500人。20万人を上回るのは2020年2月以来で、前の月に比べて3万6700人、率にして21.6%増。国別では、韓国が3万2700人、次いでベトナムが3万900人、米国が1万8000人、中国が1万7600人となっている。

 先月7日に、3回目のワクチン接種を条件にすべての入国者に求めていた陰性証明書の提出の免除や、添乗員を伴わないツアーも認めるなど、水際対策が緩和されたことで、ビジネスや観光目的での入国が増えた。水際対策は、今月11日にさらに緩和されて、観光目的の個人旅行も解禁されたほか、さらに円安で外国人にとっては日本への旅行が割安になっていることから、今後も外国人観光客の増加が期待されている。

●「感染症危険情報」、全世界をレベル1に 渡航自粛要請国なくなる

 外務省は、新型コロナの感染状況が世界で総じて改善してきていることや、G7(主要7か国)の各国もすでに国や地域別のレベルの指定を取りやめていることなどを踏まえ、「感染症危険情報」のレベルを見直し、19日付けで、全世界を渡航に際して十分注意するよう呼びかける「レベル1」とした。これまで76の国と地域を「不要不急の渡航」をやめるよう渡航自粛を要請する「レベル2」としていたが、今回の見直しで、渡航自粛を要請する国などがなくなった。

●ワクチン3回目以降の接種、5か月の間隔を3か月に短縮へ

 オミクロン株に対応したワクチンで行われている3回目以降の接種について、少なくとも5か月としている前回の接種からの間隔を少なくとも3か月に短縮することが、19日に開かれた厚労省の専門家による部会で了承された。3か月に短縮してもウイルスの働きを抑える「中和抗体」の値の上昇が確認されたほか、安全性についても特段の懸念はないという。早ければ10月下旬にも運用が始まる見通し。

 米国や欧州の多くの国では2か月もしくは3か月と定めていて、日本でも短縮するべきだという意見が上がっていた。対象となるのは10月に接種が始まったオミクロン株「BA.5」などの対応ワクチンや、9月に接種が始まった「BA.1」対応ワクチン、さらに従来型のワクチンと、日本で打つことができるファイザーとモデルナのワクチンが対象。冬場の感染拡大や季節性インフルとの同時流行が懸念される中、年内により多くの人が接種できるようにする。

【10月20日】

●オミクロン株対応ワクチン、接種間隔を3か月に

 オミクロン株対応ワクチンは、12歳以上を対象にした3回目以降の追加接種として、先月20日から「BA.1」対応ワクチン、今月13日から「BA.5」対応ワクチンの接種が始まっている。

 19日に厚労省の専門家による部会で少なくとも3か月に短縮することが了承され、20日に開かれた分科会で、21日から運用を開始する方針を決めた。厚労省は、年末年始に懸念される感染拡大に備え、希望する人全員が年内に接種を行えるようにする方針。ファイザーの「BA.1」対応ワクチンと「BA.5」対応ワクチン、モデルナの「BA.1」対応ワクチン、合わせておよそ9908万回分を来月下旬にかけて自治体に配送する計画。

●専門家会合、新規感染者数増加続く可能性 「第8波」も

 厚労省の専門家組織は20日、全国の1週間の感染者数が8週間ぶりに増加に転じたと報告した。ほぼすべての地域で増加に転じ、特に北海道や東北で大きく増加している。高齢者の新規感染者数も増加に転じていて、減少が続いていた重症者や亡くなる人の数は下げ止まり。また、ワクチン接種や感染によって獲得した免疫は時間とともに低下すると考えられ、60代以上では感染による免疫の獲得は少ないことから、今後、高齢者での感染拡大が懸念されると指摘した。

 そして、大都市などでの短期的な予測では増加傾向が続く可能性があるほか、インフルエンザとの同時流行も懸念される。会合では、専門家が今後の感染拡大の「第8波」のリスクについての評価を示し、国内の多くの地域で感染者数が増加に転じていることや、ヨーロッパやアジアの一部の国々で感染拡大が起きている状況などから「第8波の流行が起こる可能性は非常に高いと考えられる」と分析した。

●新規感染者数、前週比1.35倍 およそ2か月ぶりに増加

 20日の専門家組織の会合で示された資料によると、19日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.35倍と8月下旬以来およそ2か月ぶりに増加に転じている。1週間前時点では前週比で感染者数が増えた都道府県はゼロだったが、状況が一変した。首都圏では、東京都が1.25倍、神奈川県が1.16倍、埼玉県が1.23倍、千葉県が1.20倍と増加。前週比が最も高いのは和歌山県で1.75倍。北海道と香川県が1.60倍など、沖縄県を除く46の都道府県で増加している。

人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、山形県が426.49人と全国で最も多く、次いで北海道が396.93人、秋田県が336.63人、長野県が325.63人、全国では196.71人となっています。

●東海道新幹線 この先1か月指定席予約、コロナ拡大前の約90%に

 JR東海によると、10月1日から19日までの東海道新幹線の指定席と自由席を合わせた利用者数は、新型コロナの感染拡大前の2018年の同じ時期と比べて75%となった。一方、10月20日から11月19日までの1か月間の指定席の予約数は、2018年の同じ時期と比べて90%程度まで回復しているという。10月11日には政府の新たな観光需要の喚起策「全国旅行支援」が始まるなど、旅行により新幹線を利用する動きが広がったためとみられる。

【10月21日】

●変異株、世界で続出 免疫効きにくなる方向か

 世界各地でオミクロン株の派生系統が確認されている。国立感染研が21日に評価をまとめた。9月にナイジェリアで見つかった「BQ.1」は、英・仏など欧州を中心に増えている。ワクチンや感染で得た免疫の一部が効きにくいとみられる。9月にシンガポールで、二つの変異株の遺伝子が混ざった組み換え体と呼ばれる「XBB」が確認された。同国では感染者の半数を占め、バングラデシュでも増加傾向。ほかの系統よりも広がりやすい可能性が指摘されている。いずれも日本でも確認され、今月17日時点でBQ.1とその派生系統が検疫と国内で計17人、XBBは計7人。今後増えるおそれがあるという。

 5月に米国で見つかった「BA.4.6」は北米を中心に増加傾向で、米国では現在11%を占める。6月にインドで見つかった「BA.2.75」はBA.5からの置き換わりが一時的に進んだ。いずれも国内で100人以上の感染者が見つかっているが、BA.5が主流の状況は変わっていない。これらのオミクロン株の派生系統は重症度が上がったという明確な報告はない。ただ、細胞への感染しやすさよりも、既存の免疫が効きにくくなる方向への変異が進んだとみられる。

●新型コロナワクチン、大規模接種会場で5回目開始 東京

 オミクロン株対応ワクチンの3回目以降の追加接種について、厚労省は少なくとも5か月としていた前回の接種からの間隔を3か月に短縮する方針を決めた。これを受け、ことし7月に接種を受けた人も21日から追加の接種を受けられるようになり、都の大規模接種会場の1つの都庁の北展望室では訪れた人が何回目の接種になるかなどをスタッフに伝えていた。最多となる5回目の接種も可能となり、来週の25日からは専用のウェブサイトで予約もできるという。

●ワクチンどっち接種? BA.1とBA.5 戸惑う自治体
 
 新型コロナワクチンの接種間隔が21日、「5カ月以上」から「3カ月以上」に短縮された。ただ、オミクロン株に対応したワクチンは2種類あり、政府が「どちらを接種してもよい」などと説明していることで、住民や自治体に混乱が広がっている。オミクロン対応ワクチンは先行して接種が始まったBA.1型と、BA.5型がある。いま流行中のものに対応しているBA.5型の接種希望が増えていて、今回の短縮により、今後さらに希望が増えると各自治体はみている。

【10月23日】

●接種後の症状、「ワクチン」によるものか検証できるシステム開発

 ワクチンの効果や副反応を、接種した人としていない人で比較して検証できるシステムを九州大学のグループが開発した。欧米やアジアの国々で、こういったシステムはすでに導入されている。国内には、接種後に出た症状がワクチンによるものかどうか正確に調べられるシステムがなかったが、予想外の副反応が起きた場合にも対応可能になるとしていて、ワクチンに対する信頼を高めるのに役立てたいとしている。

 開発した福田准教授らは、各地の自治体の協力を得て、およそ130万人分の予防接種台帳などの情報と国民健康保険のレセプト情報からデータベースを作り、接種した人としていない人でワクチン対象の病気になったり、副反応の疑いがある症状が起きたりした割合を比較できるシステムを作った。実際に調べると、従来型ワクチンは「BA.1」が多かった時期に感染を防ぐ効果が56.5%、肺炎球菌ワクチンでは皮膚の炎症が起きる確率が2.5倍だったことが確認できたという。

●全国で新たに3万824人の感染確認 死者37人

 国内感染者は23日、新たに3万824人が確認された。前週の同じ曜日(16日)よりも1408人多かった。全国で発表された死者は37人だった。都道府県別で新規感染者が最も多かったのは東京の2805人。北海道2487人、大阪府2146人、神奈川県1807人、埼玉県1363人、兵庫県1348人と続いた。

 10月23日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【10月24日】

●中国GDP3.9%増 7〜9月期 年間目標5.5%は困難

 中国国家統計局は24日、18日の発表予定をいったん延期していた7~9月期の国内総生産(GDP、速報値)を発表した。物価変動の影響を除く実質成長率は前年同期比3.9%だった。1~9月期でみると同3.0%で、習近平(シーチンピン)指導部が今年の目標に設定した「5.5%前後」の達成は困難となった。中国政府関係者は「延期を指示したのが誰かはわからない。ただ、党大会期間中に前向きではない数字を発表することなどできるわけがない」という。

 4~6月期は厳しい移動制限を伴うゼロコロナ政策によって上海が2カ月以上もロックダウンされ、北京などでも移動が制限された。そのため、前期に比べ7~9月期は改善したものの、足元で回復が広がっているとは言いがたい。人々の消費の状況を示す小売総額は、同2.5%増と8月から減速した。いまだに各地でロックダウンが断続的に実施され、先行き不安で人々が財布のひもを緩められないためだ。不動産も低調な数字が続く。

●NY メトロポリタン歌劇場など、マスク着用義務撤廃

 新型コロナの感染状況が落ち着いたとして、米ニューヨーク市はことし3月、レストランや劇場などでのワクチンの接種証明の提示や、公共施設の屋内でのマスク着用について義務化を撤廃し、多くの施設が対応を緩和したが、一部の劇場では、その後も独自に接種証明の提示やマスクの着用義務を続けてきた。

 24日、ワクチンの接種が進んだことなどを受けて、世界有数のオペラハウス、メトロポリタン歌劇場や、「音楽の殿堂」とされるカーネギーホールなどでマスクの着用義務が撤廃された。

●山際経済再生相が辞任 教団と接点、追及受け引責 首相、任命責任認める

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関わりが相次いで表面化していた山際経済再生相(54)は24日夜、首相官邸で岸田首相に辞表を提出した。首相は受理し、事実上更迭した。山際氏は首相と会談後、記者団に教団の問題について「後追いの説明となり、結果として政権に迷惑をかけることになった」と述べた。岸田政権が昨年10月に発足してから、不祥事などで閣僚が辞任するのは初めて。教団の問題をめぐって、政府や党の役職を辞任するケースも初めて。

 首相は8月、教団と自民党の関係が問われる中、内閣改造で山際氏を留任させた任命責任が問われる。首相は記者団に「任命責任は当然感じている。職責をしっかり果たすことによって責任を果たしていきたい」と述べた。後任は25日に発表する。

 

●生後6か月~4歳対象のワクチン 、「努力義務」 他の接種と調整 重要に

 生後6カ月~4歳を対象にした新型コロナワクチンが、24日から接種できるようになる。5歳以上と同じ予防接種法上の「努力義務」がついた。基礎疾患のない子どもでも重症化する例が報告される中、小児科医は接種する意義を指摘している。努力義務は義務とは異なり、本人や保護者が納得したうえで接種を判断することになる。24日から来月下旬にかけておよそ700万回分のワクチンが自治体に配送、準備が整った自治体から順次、接種が開始される。

 ワクチンは、有効成分の量が大人の10分の1で、3回の接種が必要。3週間開けて2回目を接種したあと、少なくとも8週間開けて3回目を接種する。接種を希望する場合、悩ましいのがほかの予防接種とのスケジュール調整。とくに生後6カ月~1歳ごろは、4種混合や麻疹・風疹など、定期接種のワクチンが多い。コロナワクチンは、インフルワクチンと同時接種ができるが、それ以外は原則、前後2週間の接種間隔をあけるとされている。

【10月25日】

●更迭、異例の首相説明 衆院本会議 山際氏後任に後藤前厚労相

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関わりが相次いで表面化した山際経済再生相(54)は24日夜、首相官邸で岸田首相に辞表を提出した。首相は受理し、事実上更迭した。首相は25日、山際氏の後任に後藤茂之・前厚労相(66)を起用した。同日午後に開かれた衆院本会議では経緯を説明し、「国会開会中に、大臣が辞任する事態となり深くおわびを申し上げます」と謝罪した。与党内でも更迭は遅いという批判も出ている。

 山際氏は、当選6回。昨年10月の岸田政権発足時に経済再生相に就任、看板政策「新しい資本主義」のほか新型コロナ対策も担当。後任の後藤氏は大蔵官僚を経て、当選7回。自民党政調会長時代の首相を政調会長代理として支えた。経済や社会保障分野、特に年金政策に詳しく、昨年10月の岸田政権発足時に厚労相として入閣。新型コロナ担当相だった山際氏とともに、感染者が急増した「第7波」への対応など、新型コロナ対策の司令塔を担った。

 山際大志郎氏と後藤茂之氏 出典:ウィキメディア・コモンズ
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【10月26日】

●「感染者横ばいも、接触増の影響注意」 厚労省専門家組織

 厚労省の専門家組織の会合が26日に開かれ、全国の新規感染者数は増加に転じた先週から変わって、直近では横ばいになっている。一方、北海道や東北、中国地方などでは増加がみられ、感染状況には地域差があると指摘。また、重症者や亡くなる人の数は下げ止まり。多くの地域で夜間の繁華街などでの人出が増加していて、年末に向けて社会経済活動が活発化することで、人と人との接触機会が増えることによる影響に注意が必要だとしている。

 60代以上では感染による免疫獲得は少なく、今後は高齢者での感染拡大が懸念される。年内にオミクロン株対応ワクチン接種を完了するよう呼びかけることが重要。さらにインフルとの同時流行も懸念され、発熱外来やオンライン診療の強化、自己検査キットの確保などの対策を進めるよう求めている。そのうえで、場面に応じた不織布マスク着用、換気、飲食は少人数、飲食時以外はマスク着用。症状があるとき外出を控えるといった基本的感染対策を続けるよう呼びかけた。

●1週間の新規感染者数 全国では前週比0.96倍

 厚労省の専門家会合で示された資料によると、25日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて0.96倍と増加傾向だった先週から変わってほぼ横ばい。首都圏では、東京都と埼玉県が0.94倍、神奈川県が0.97倍、千葉県が0.95倍、また香川県と愛媛県が1.20倍、岩手県が1.16倍、北海道が1.13倍など合わせて10の道県で増加。一方、徳島県は0.68倍、鹿児島県0.74倍、沖縄県0.78倍などと、地域によって感染状況に差が見られる。

 人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、山形県が455.04人と全国で最も多く、次いで北海道が450.73人、秋田県が329.65人、長野県が301.51人などとなっているほか、大阪府が186.35人、東京都が163.77人、全国では190.93人。

●脇田座長「感染落ち着くも注意を」

 専門家組織の会合のあと開かれた記者会見で、脇田座長は、現在の感染状況について「連休の影響で北海道や東北など感染者が増加している地域があったが、全国的にみれば感染状況は少し落ち着いてきた。第7波での感染者が少なかった地域では、自然感染などによる免疫が落ちているため、増加しやすく、逆に、沖縄県のように感染者の多かった地域では、拡大しにくいというデータも示された」と指摘した。

 また、新型コロナとインフルエンザとの同時流行について「インフルの流行の兆しはまだ見えず、いつ流行が始まるかは分からない。ただ、コロナと同時流行する可能性は十分にあり、備えとしてはオミクロン株対応のワクチン、インフルワクチンの両方の接種を進めること、自宅でできることとしてコロナの抗原検査キットや解熱剤などの準備を進めておくことが大事だ」と述べた。

●「第8波」、800万人感染の試算 ワクチン接種で3割減も 西浦教授

 新型コロナの「第8波」について数理疫学が専門の京都大学の西浦教授は26日に開かれた厚労省の専門家組織の会合で、来年2月までに800万人程度が感染する一方、ワクチンの接種が順調に進めば感染者数を30%近く減らすことができるとするシミュレーションの結果を示した。

 西浦教授は「ワクチンの接種を確実に進めることで、入院者数を2割程度減らすことができるなど、インパクトは大きい。実効再生産数が低く流行がゆっくりと進むときにはワクチンの接種が間に合いやすい傾向があり、感染予防対策と組み合わせられると、より効果が期待できる」としている。

●発熱外来設置の医療機関への診療報酬加算 来年3月末まで延長へ

 この冬は、新型コロナとインフルエンザの同時流行の可能性が指摘されていて、厚労省は日本医師会などに発熱外来の設置に協力を求めている。こうした中、厚労省は、今月末が期限となっている発熱外来を設置している医療機関への診療報酬の加算を延長することを決め、26日関係者に通知した。

 具体的には、新たに発熱外来を設置したり、今の診療体制を拡充したりすることを要件に、加算を来年3月末まで延長する。また、自宅や宿泊施設で療養している重症化リスクの高い患者に対し、電話などで診察を行う医療機関への加算についても、土曜・日曜の診察や、インフルにも対応できる体制があることなどを新たな要件にして、来年3月末まで延長する。

【10月27日】

●葬儀などのガイドライン、早急に見直しへ 厚労相

 加藤厚労相は、新型コロナで亡くなった人の葬儀などに関する国のガイドラインについて、遺族の思いに沿った形になるのが望ましいとして、専門家らの意見を聞きながら、早急に見直す考えを示した。国はおととし7月に、新型コロナで亡くなった人の搬送や葬儀に関するガイドラインをまとめ、遺体が適切に管理されれば感染リスクは極めて低くなるとした一方で、遺体に触れることは控えるよう呼びかけている。

 これについて参議院厚労委員会の審議で「病室で対面できない、火葬場にも入れてもらえないということが全国で起きている。見直すべきだ」という指摘が出された。これに対し加藤厚労相は「亡くなった方を送ることは大変大事な儀式で、できるだけ遺族の思いに沿った形で行われることが望ましい。ガイドライン作成から2年以上が経過し、有識者からも見直すべきだという指摘が出ていて、私もそのように実感している」と述べた。

● 特例貸付け、3割返済不能 コロナ困窮世帯向け 79万件免除申請

 新型コロナの影響で困窮した世帯に政府が無利子・保証人なしでお金を貸した「特例貸し付け」。返済できずに免除を求める申請が、判定の締め切りを今年度中に迎える貸付総数の3割超の79万1千件余りにのぼることがわかった。このうち少なくとも約31万5千件(総額約1047億円)で免除が決定。自己破産も7500件以上確認されており、返済が本格化すれば、生活に行き詰まる人が増える恐れが出てきた。

 特例貸し付けは2020年3月に始まり、一時は最大200万円まで借りることができた。受け付けは今年9月末で終わり、貸付総数は約335万件、総額は約1兆4268億円。この返済が来年1月から始まる。政府はこれまで返済の開始時期を延ばしてきたが同月以降、借り入れた人に対し、貸付時期に応じて順次、返済を求めていく。ただ、生活が苦しい人は返済免除の申請が必要で、多くの社会福祉協議会は今夏までに案内を送付。免除申請の締め切りを8月末などとした。

●小中の不登校、最多24万人 文部省調査 コロナ禍のストレス指摘

 2021年度に30日以上登校せず「不登校」とされた小中学生は、前年度から24.9%(4万8813人)増え、過去最多の24万4940人だったことが文科省の全国調査で分かった。初めて20万人を超え、増え幅も過去最大。小中高校などのいじめの認知件数も過去最多を更新。文科省は、長引くコロナ禍に起因する心身の不調やストレスが影響していると分析している。調査は全国の国公私立の小中高校と特別支援学校、各教育委員会に実施。27日に結果を公表した。

 不登校やいじめの増加について、文科省はコロナ禍の影響を指摘。2021年度は一斉休校はなかったが、夏の感染「第5波」や冬の「第6波」で休校や学年・学級閉鎖、分散登校が相次いだ。このため生活リズムが崩れたり欠席することに抵抗が薄くなったりして不登校になった事例が見られた。また、感染対策で運動会や遠足といった行事が中止され、グループ活動も制限されたことが登校意欲の低下につながったり、ストレスに起因するいじめにつながったとみている。

【10月28日】

●オミクロン株の新たな変異ウイルス、「リスク変化なし」 WHO

 新型コロナの変異やそのリスクについて調査しているWHOの専門家グループは28日、オミクロン株の新たな変異ウイルス「BQ.1」と「XBB」について、最新の知見を公表した。欧米を中心に感染が拡大している「BQ.1」については、これまでのオミクロン株に比べて感染者に占める割合が増える傾向にあり、免疫から逃れる能力が高い可能性があるものの、まだ明確なデータはない。現時点では、さらなる調査が必要だとしている。

 また、シンガポールなどで感染が広がっている「XBB」についても、一部の国で感染力の高さが指摘されているものの、これまでのオミクロン株に比べ、今の段階では免疫から逃れる能力や重症化率が高いとはいえないという。こうしたことからWHOは、これら2つの新たな変異ウイルスについて、現時点ではこれまでのオミクロン株と比べ、大きなリスクの変化は見られないと指摘、今後も評価を続けるとともに、各国に対して監視の継続を呼びかけている。

●規模ありきのバラマキ 経済対策39兆円

 岸田政権が支持率浮揚の目玉にすえた総合経済対策は、28日に閣議決定、財政支出が39兆円にのぼる巨額の対策となった。編成が「規模ありき」で進んだ結果、中身は物価高への対応のみならず、公共事業など、あれもこれものバラマキ色の濃いものがめだつ。チェック機能が甘くなる予備費も4.7兆円積み上げ、財政規律の緩みも避けられない。

 目玉となるのは、電気料金や都市ガス料金の高騰分を抑える激変緩和策で、ガソリンへの補助金なども合わせて総額6兆円をつぎ込む。岸田首相は標準的な世帯で4万5千円の家計支援になることを強調したが、対象や支援の上限を設けずに富裕層でも恩恵を受ける。経済対策をめぐっては、コロナ禍の2020年度以降、膨張が続いている。今回の対策でも編成当初から大規模な財政支出を求める声が与党から相次ぎ、最終局面で4兆円規模で国費が上積みされた。

●巨額予備費、「国会軽視」の声

 補正予算案の一般会計は29兆円で、土壇場で4兆円超が積み増され、大半が予備費だった。経済対策の文書には「コロナ禍や物価高に万全を期す」「経済危機に機動的・弾力的に対応」など、予備費計上を正当化する文言が急きょ加わった。財務省関係者は「兆円単位の事業を突然積み上げられない中、財務省は使わなければ戻ってくる予備費を計上することで、自民党や官邸が求める30兆円に近づけ、体裁をつくろった」と読み解く。

 ただ、予備費は緊急的な支出を想定したもの。憲法は国の予算について国会の事前の審議と決議を得る必要があるとした上で、災害など「予見しがたい予算の不足に充てるため」に計上を認めている。コロナ禍で巨額化した予備費は「国会軽視」との批判は根強い。5月に成立した第1次補正予算で1.5兆円の予備費を積み増した時も、野党からは「財政民主主義を踏みにじる」「政権が自由に使える財布じゃない」との声が相次いだ。

●オミクロン株の新たな変異ウイルス「XBB」、東京都内で初確認

 東京都は27日、モニタリング会議で新型コロナのオミクロン株のうちの複数のタイプのウイルスが組み合わさった「XBB」と呼ばれる新たな変異ウイルスが6件確認されたと発表した。都によると「XBB」は10月17日時点で検疫で7件検出されていたが、都内での確認は初めてだという。シンガポールで「XBB」は先月中旬には感染者全体の17.3%だったのが、10月中旬には60.7%を占めているという。重症度については現時点で分かっていない。

◆コロナ影響企業 雇用調整助成金の特例措置、12月から原則通常に

 雇用調整助成金は、企業が従業員を休業させた時に休業手当の一部を助成する制度で、新型コロナの影響を受けた企業には助成金の上限や助成率を引き上げる特例措置が設けられている。経済の回復や雇用情勢などを踏まえて縮小されてきていて、厚労省は28日に開いた審議会で12月から原則、通常に戻すことを決めた。特例措置が設けられて以降、支給決定額は6兆円を超え、雇用保険財政が圧迫され、労働移動の妨げになっているという指摘も出ていた。

 一日当たりの上限額は8355円で現時点と変わらないが、助成率は大企業が75%から50%に、中小企業が90%から67%に戻る。一方で、特に影響が続く企業は来年1月末までにかぎって経過措置を設け、一日当たりの上限額は現在の1万2000円から9000円とし、通常時の8355円は上回る水準とする。特例措置は最も手厚い時には企業の規模にかかわらず、一日の上限が1万5000円、助成率は中小企業で100%だった。

【10月30日】

●水際対策緩和、外国人旅行客増加 人手不足が課題に

 水際対策が大幅に緩和されてからまもなく3週間。都内のホテルの中には、外国人旅行客の増加などによって予約が大幅に増えている。先月7日に1日当たりの入国者数の上限が5万人に引き上げられたほか、今月11日には入国者数の上限が撤廃、個人の外国人旅行客の入国も解禁されるなど、大幅に緩和された。観光局によると先月、日本を訪れた外国人旅行者は推計で20万6500人、新型コロナ以降初めて20万人を上回る。

 ホテルの中には外国人の宿泊客が増える一方、従業員が足りずにレストランが営業できないなど、人手不足の影響を受けている。信用調査会社「帝国データバンク」の先月時点での調査結果によると、「旅館・ホテル」業界で「正社員が不足している」と答えた企業の割合が62.5%。また、非正規の社員についても業界では62.3%が「不足している」と答えている。

●全国で4万408人の感染確認 8日連続で前週上回る

 国内感染者は30日、全国で新たに4万408人が確認。前週の同じ曜日(23日)より9583人多く、8日連続で前週より増えた。発表された死者は全国で26人だった。都道府県別で新規感染者が最も多かったのは東京都の3687人。北海道3658人、大阪2415人と続いた。

 10月30日時点の東京の感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【10月31日】

●上海ディズニーランド、31日から閉鎖を発表 コロナ感染対策で

 上海ディズニーリゾートは、中国版ツイッター「ウェイボー」の公式アカウントで、新型コロナ感染拡大を防ぐ対策に沿って10月31日から上海のディズニーランドを一時、閉鎖すると発表した。上海市によると、31日に感染が確認された女性がディズニーランドに行っていたという。また、上海市はSNSで、「現在、園内にいる人はPCR検査が陰性でないと出られない」と説明するなど、警戒を強めている。

 施設では10月28日から、ハロウィーンにあわせたイベントが行われていたが、感染対策でスタッフの数などを減らすため、29日からは一部のアトラクションを取りやめていた。上海ディズニーランドでは、去年も感染者1人が確認されたことを受けて休園したほか、上海市内で感染が相次いだことし3月中旬以降も、3か月余りにわたって休園していた。中国では、「ゼロコロナ」政策のもと、引き続き厳しい感染防止対策が続いている。

●BA.5ワクチン、モデルナ製承認へ 厚労省部会了承

 米モデルナ社が開発したオミクロン株の一つ「BA.5」対応ワクチンについて、厚労省の専門家部会は31日、特例承認を了承した。現在、モデルナ製ではオミクロン株の「BA.1」対応のワクチンが自治体に配送されているが、今後切り替える。了承されたワクチンは、従来ワクチンと同じ武漢株のmRNA、オミクロン株のBA.4とBA.5の両方に共通するmRNAを含む「2価ワクチン」。対象は18歳以上で3回目以降の接種に使う。3カ月以上の間隔を空けて接種する。

 部会では、すでに承認されているモデルナ製のBA.1対応ワクチンのデータや、マウスに試したBA.5対応ワクチンのデータをもとに議論した。感染を防ぐ中和抗体の量が増えることから、有効性を確認。安全性もBA.1対応ワクチンと成分に大差がなく、海外での使用実績からも問題はないと判断。BA.5対応ワクチンは、米ファイザー社製が5日に特例承認され、13日から使われ始めている。モデルナ製は、早ければ11月に自治体に配送を始める。

●塩野義「年内には承認申請」 開発中の新型コロナワクチン

 塩野義製薬は31日、開発中の新型コロナワクチンについて、11月末から12月に厚労省に承認申請する考えを示した。2020年に臨床試験(治験)を開始し、昨年後半の時点では今年3月末までの申請を目指していた。しかし、治験の遅れや量産体制の確保などに問題があり、今春以降、数度にわたり申請目標の時期を遅らせていた。開発しているワクチンは「組み換えたんぱく」という手法で、4月に承認された米ノババックスと同じタイプ。

 この日、2022年9月中間決算の説明会で手代木社長が「ワクチンは本当に遅れていて、国民のみなさまからお叱りをいただいている。どんなに遅くても年内には承認申請したい」と述べた。製造準備や、治験での情報開示調整に時間がかかっているという。すでに治験のデータなどは厚労省に提出を始めているという。想定通りに承認されれば、国内メーカーが開発した初の「国産ワクチン」となる。

●プロ野球とJリーグ コロナ対策連絡会議、今シーズンで終了へ

 プロ野球とJリーグの連絡対策会議は、新型コロナの感染拡大に連携して対応するため、一昨年3月に設置された。31日に開かれた対策連絡会議後の記者会見で、Jリーグの野々村チェアマンは「この3年間でさまざまな知見が蓄積され、コロナを知ることがだいぶできた。いろんな勉強をしながら前に進め、1つのチームとしてやってきたものがあり、各球団やクラブでいろんなことができるようになってきた」と話し、11月の2回の会議を最後に、今シーズンで終了する方針。

●国内2万2341人感染 23人死亡

 厚労省によると、31日に発表した国内の新たな感染者は空港の検疫などを含め2万2341人(累計2229万5592人)。前週の同じ曜日(24日)に比べ5489人多い。都道府県別での最多は、北海道の2485人。次いで東京都2019人、神奈川県1659人、大阪府1171人、広島県1221人と続く。また人工呼吸器やECMOをつけたり、集中治療室などで治療を受けたりしている重症者は、31日時点で129人(前日に比べ1人増)。発表された死者は、23人(累計4万6659人)。

 以下6枚は10月31日時点の国内感染状況 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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