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新型コロナ2023.10 ノーベル賞

 新型コロナウイルスが感染症法の5類に移行した5月以降、第9波の感染拡大傾向が続いていた。9月下旬にはピークアウトして、10月は毎週連続で減少している。一方で、インフルエンザ患者は増加傾向にあり、休校や学年・学級閉鎖が全国に広がっている。冬に備え、引き続き感染対策を続ける事が必要。

 そんな中で、今年のノーベル生理学・医学賞に、新型コロナの「mRNAワクチン」の開発で大きな貢献をした米国ペンシルベニア大学の研究者カリコ氏ら2人を選んだと発表があった。

 2023年10月1日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.09 第9波減少」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

 

【10月2日】

●新型コロナワクチンにつながる技術 2氏にノーベル生理学・医学賞

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日、今年のノーベル生理学・医学賞を、独バイオ企業ビオンテック顧問のカタリン・カリコ氏(68)と、米ペンシルベニア大のドリュー・ワイスマン教授(64)に贈ると発表した。新型コロナに対する「mRNAワクチン」の実用化につながる新たな技術を開発したことが評価された。カリコ氏らは人工的に合成した遺伝物質のmRNAをワクチンとして使うための基礎となる方法を開発した。

 ハンガリー出身で米国に渡ってmRNAの研究をしていたカリコ氏は、米国のワクチン研究者ワイスマン氏とともに、mRNAの一部を別の物質に置き換えて「飾り」がついたような状態にすると、免疫反応を回避できることを発見。2005年、米国の免疫学専門誌に論文を発表した。これを発展させたものが、新型コロナに対するワクチンとして使われ、パンデミックが始まってから、わずか11カ月という驚異的なスピードで実用化に至った。

【10月4日】

●海外で感染症発生 省庁の役割明確化 政府、初動方針

 政府の新型インフルエンザ等対策推進会議が4日開かれ、感染症が海外で発生した際の初動方針が示された。国内での発生に備え、テレワークや時差出勤、出入国時の検疫、検査能力の確保などの対応を速やかに実施できるように各省庁の役割を明確化。初動対応は、指定感染症や急速に広がる恐れのある新感染症が海外で発生した段階を想定。厚労省が情報を収集し、司令塔の内閣感染症危機管理統括庁に報告、状況に応じて関係省庁による対策会議を開く。

 WHOが新型インフルの発生を宣言したり、新型コロナのように急速に広がる可能性のある感染症の発生を公表したりした段階で、政府に対策本部を設置する。厚労省は国のコールセンターを設置。統括庁は他省庁と連携し、感染症が起きている国や地域へ国立感染研の専門家の派遣を検討したり、感染が疑われる人への休暇取得や、テレワークの準備を企業に呼びかけたりする。推進会議は来年6月ごろに新たな政府行動計画をまとめる。

【10月5日】

●コロナ給付金「性風俗業は対象外」、憲法に違反せず 東京高裁

 関西地方の性風俗事業者は、新型コロナの影響を受けた事業者に国が支給する「持続化給付金」や「家賃支援給付金」の制度の対象から外されたことについて、「職業差別で法の下の平等を定めた憲法に違反する」と主張、国などに賠償と給付金の支給を求めた。1審の東京地方裁判所は去年、「性風俗業の特徴は、大多数の国民の道徳意識に反するもので、異なる取り扱いをすることには合理的な根拠がある」として、憲法には違反しないと判断、訴えを退けた。

 5日の2審の判決で、東京高等裁判所は「給付対象とすると、国民の理解を得るのが難しいと判断した理由には合理性がある。性のあり方に関する価値観は多様化しているが、性風俗業を公的に認めるのは相当ではない」として、1審に続いて憲法に違反しないと判断、事業者の訴えを退けた。弁護団の亀石弁護士は「なぜ性風俗事業者を給付対象としないことが正当化されるのか、最高裁にはきちんと向き合い検討してほしい」と述べ、上告する方針を明らかにした。

【10月6日】

●新型コロナワクチン「すべての小児に接種推奨」 日本小児科学会

 厚労省の審議会がことし秋以降の新型コロナワクチン接種について、接種を勧める対象を重症化リスクの高い人に限定したことなどを受け、日本小児科学会は、子どもへの接種を推奨するかどうか改めて検討し、その結果を公表した。それによると、現在国内で主流となっているオミクロン株のXBB系統や、さらに変異した「EG.5」と呼ばれる変異ウイルスが広がり、今後流行の拡大が想定されるとしている。

 その上で、この秋以降接種されるワクチンは、従来のワクチンよりも変異ウイルスに対して発症を予防する効果が高いと考えられることから、引き続き「すべての小児に接種を推奨する」としている。安全性については、膨大なデータにもとづき、信頼性の高い安全性の評価が行われているとする。学会は「小児に対する新型コロナの脅威は依然として存在し、感染や重症化を予防する手段としてワクチン接種は有効だ」としている。

●コロナ感染者数、前週比0.8倍 北海道以外は減少 インフル、注意報に迫る

 厚労省は6日、全国に約5千ある定点医療機関に9月25日~10月1日に報告された新型コロナの新規感染者数は計4万3705人で、1定点あたり8.83人だったと発表した。前週の約0.80倍で、北海道をのぞく46都府県で減少した。都道府県別の最多は愛知の12.40人で、熊本11.30人、茨城10.73人と続く。定点医療機関に報告された新規入院患者数は2011人だった。厚労省は「全国的に減少傾向にありピークアウトしたと考えられるが、引き続き感染対策を行って欲しい」としている。

 一方、季節性インフルエンザは、前週の約1.35倍の9.57人に増加、注意報レベルの「10人」に迫る。昨冬からの流行が続いており、例年より患者が多い状態で推移している。前年同時期は0.01人だった。39都道府県で前週から増加、14都県が注意報レベルを超えた。休校や学年・学級閉鎖は全国で計2204校にのぼる。

 10月6日発表の定点把握(9月25日~10月1日)出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【10月11日】

●「コロナ禍企業向け補助金、縮減や効果検証を」 審議会で意見

 財務相の諮問機関「財政制度等審議会」は、11日の会合で財務省の担当者は新型コロナの感染拡大のあと、中小企業対策費が急増していて、事業者の状況をみきわめながら早期に正常化する必要があると提起した。この中では感染拡大を受けて設けられた新たな業種に転換する企業などを支援する「事業再構築補助金」は、これまでにおよそ2兆4000億円の予算が計上された一方で、先月末時点で5600億円程度が具体的な使いみちが決まっていない状況だと説明された。

 委員からは、新型コロナの感染症法の位置づけは、5類に移行していて膨らんだ中小企業対策費を縮減するのは当然ではないかという意見や「事業再構築補助金」について企業の構造転換に、どこまでつながったのか検証が必要だという意見が出された。「財政制度等審議会」の土居部会長代理は、会議のあとの記者会見で「国民の税金が使われていることを踏まえると、コロナ禍で未曽有の水準に達した中小企業対策費は平時に戻していくべきではないかと考えている」と述べた。

【10月13日】

●コロナ感染、全都道府県で減少 インフル、注意報に迫る

 厚労省は13日、全国に約5千ある定点医療機関に2~8日に報告された新型コロナの新規感染者数は計2万5630人、1定点あたり5.20人と発表。前週の約0.59倍で、全都道府県で減少。厚労省は「全国的に減少しており、感染拡大のピークは過ぎたとみられるが感染対策は引き続き行ってほしい」としている。前の週から減少が続くのは5週連続で47の都道府県で減少。都道府県別では最多が北海道8.19人、沖縄県7.52人、石川県7.42人、愛知県7.11人、茨城県6.84人。

 今月8日までの1週間に、全国およそ5千の医療機関から報告された新たに入院した患者の数は1431人で、前の週と比べて580人減少した。一方、季節性インフルエンザは前週の約1.04倍の9.99人で、注意報レベルの10人に迫っている。休校や学年・学級閉鎖は全国で計2275校にのぼる。

 10月13日発表の定点把握(10月2日~10月8日)出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【10月15日】

●新型コロナ後遺症「血液中物質に特定の変化」 米研究チーム発表

 米国イエール大学の岩崎教授らの研究チームは、新型コロナに感染したあと倦怠感や息苦しさなど何らかの症状が長引く「後遺症」が1年以上ある人と、後遺症がない人、感染しなかった人など、合わせて268人の血液成分を分析した。その結果、後遺症がある人たちでは、血液中にあるB細胞やT細胞と呼ばれる特定の免疫細胞が増加していたほか、体内で潜伏していたヘルペスウイルスが活性化するなどの変化が確認されたという。

 さらに、後遺症がある人では、体の状態を一定に保ちストレス反応に関わる「コルチゾール」というホルモンの量が、後遺症がない人や感染しなかった人と比べ、半減していた。チームは、こうした変化を指標にすることで、新型コロナの後遺症の正確な診断や、治療法の開発につながるとしていて、科学雑誌「ネイチャー」に発表した。岩崎教授は「後遺症があることを周りに理解されず悩み続ける人も多いので、原因の解明を目指して研究を進めたい」と話す。

【10月17日】

●新型コロナ変異分析機器 交付金整備の21台 ほとんど使用されず

 厚労省は、全ゲノム解析によってウイルスの変異を調べられる分析機器「次世代シークエンサー」を、都道府県が地方衛生研究所や民間検査機関に整備した際に交付金を出していて、導入された機関は自治体から依頼を受けた際に、ウイルス変異の動向の監視などのため使用する。この機器について、会計検査院は2020年度と2021年度に18道府県が導入した63台の使用状況を調査した。

 その結果、8つの道府県が民間検査機関に整備した21台がほとんど使用されていなかった。21台で合わせておよそ5億8600万円の国の交付金が支出されていた。厚労省は新型コロナの位置づけが「5類」に移行されたあとも、変異状況を確認するよう要請していることから、会計検査院は使い方を自治体に検討させることなどを求めた。厚労省は「事業目的に沿って機器が使われるよう改めて周知する」としている。

【10月18日】

●訪日客消費、コロナ前超す 円安追い風、19年比17%増 7~9月

 観光庁は18日、7~9月の訪日外国人の旅行消費額が1兆3904億円だったと発表。2019年同期より17.7%増、コロナ前の水準を上回った。円安で国内の商品やサービスの割安感が強まり、富裕層の消費も活発になっている。旅行消費額は日本に滞在中の宿泊や交通、買い物、飲食などの合計。中国2827億円で最も多く、台湾2046億円、韓国1955億円で続く。中国は8月に団体旅行が解禁されたが訪日客数は回復しておらず、消費額はコロナ前の6割。

 独立行政法人日本政府観光局(JNTO) が18日発表した9月の訪日外国人客数は218万4300人となり、2019年同月の96.1%に回復した。コロナ前に最多だった訪日中国人は32万5600人で、19年同月の39.8%にとどまった。東京電力福島第一原発の処理水放出を受けて訪日を避ける動きが影響したとみられる。

●倉庫で眠るマスク・ガウン コロナ交付金で自治体が購入 検査院が調査

  コロナ対応の地方創生臨時交付金を使って自治体が購入したマスクや医療用ガウンなどの一部が、活用されないまま残っていることが、会計検査院の調べでわかった。2020~21年度に20府県と505市町村が433億円(交付金397億円)を使い、6674品目を購入。しかし秋田、福島、茨城、熊本の4県と横浜市などの48市町村では、22年度末で、半分以上が使われず在庫の残高が50万円以上になっている物品が90品目(購入額6億円、交付金4億円)あった。

 マスクや医療用ガウン、パーティション、消毒液などだった。購入直後から倉庫で保管され、使用期限が迫っている物品もあるという。検査院は「コロナ拡大の初期段階ではマスクの在庫が逼迫するなどやむを得ない状況もあったが、配布対象者の意向確認をして必要な分量を確保するべきだった」としている。検査院は交付金を所管する内閣府と総務省に対して、「自治体の物品配布事業の見直しを行い、在庫の有効活用を行うべきだ」としている。

【10月19日】

●新型コロナワクチン 新たに1000万回分を追加購入 厚労省

 オミクロン株の派生型「XBB」系統に対応するワクチンは、先月20日から希望する生後6か月以上のすべての人を対象に接種が行われている。厚労省はワクチン廃棄ができるだけ少なくなるよう、接種希望者数の状況を確認しながらメーカーから購入、ことし7月に2500万回分を購入したほか、先月には1000万回分を追加購入。一方、一部の自治体や医療機関では、希望者が当初の見込みよりも多く、接種予約が取りづらい状況が続いている。

 感染が拡大する冬を前に、今後も接種が滞りなく行えるよう厚労省は、ファイザーのワクチン900万回分とモデルナのワクチン100万回分を追加購入したことを19日発表した。ワクチンは来月から年内にかけて自治体や医療機関に配送される予定。厚労省は「打ちたい人が滞りなくワクチンを打てるよう、今後も確実に供給していきたい」としている。

【10月20日】

●コロナ感染者数 香川県以外減少

 厚労省は20日、全国に約5千ある定点医療機関に9~15日に報告された新型コロナの新規感染者数は計1万8587人で、1定点あたり3.76人だったと発表した。前週(5.20人)の約0.72倍で6週連続で減少した。都道府県別では、香川県を除く46都道府県で減少。最多は北海道の6.61人で、岐阜6.13人、石川5.58人と続く。東京2.33人、愛知5.12人、大阪2.77人、福岡2.83人だった。

 また、今月15日までの1週間に、全国およそ500の医療機関から報告された新たに入院した患者の数は1245人で、前の週と比べて265人の減少だった。厚労省は全国の流行状況について「ピークを過ぎて6週連続減少しているが、インフルエンザの患者は増加傾向にあるほか、冬にコロナの感染が拡大することからも引き続き、感染対策は続けてほしい」としている。

 10月20日発表の定点把握(10月9日~15日)出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●インフル患者数 注意報レベル超

 厚労省は20日、全国約5千カ所の定点医療機関から9~15日に報告された季節性インフルエンザの患者数が計5万4709人にのぼり、1医療機関あたり11.07人だったと発表した。10月に注意報レベルの「10人」を超えたのは、新型インフルが流行した2009年を除けば、今の集計方法が始まった1999年以降で初めてという。

 例年なら春までにおさまってきたが、今年は昨年12月からの流行期が続いたまま、次のシーズンに突入する異例の事態。9~15日の患者数は前週の約1.11倍。37道府県で前週から増加し、17都県が注意報レベルを超えた。

【10月23日】

●「感染症や災害 規定なくても国が指示を」地方制度調査会素案

 首相の諮問機関である地方制度調査会は、コロナ禍で浮き彫りになった課題を踏まえ、新しい国と地方の在り方について議論を進めていて、23日の会合で答申の素案を示した。それによると、2020年2月に発生したクルーズ船での集団感染で、県などをまたいで患者を移送する際に、国と自治体との間で調整が難航したことなどに触れ、緊急時に迅速に対応できるよう関係を見直す必要があるとしている。

 このため、国民の安全に重大な影響を及ぼす感染症や災害が発生した場合には感染症法など個別の法律に規定がなくても、患者受け入れの調整などを念頭に、国が自治体に必要な指示を行えるようにすべき、指示する際には関係大臣が判断し、閣議決定を経ることが適当だとしている。地方制度調査会はさらに議論を進め、年内をめどに岸田首相に答申することにしている。

【10月27日】

●全国のコロナ感染者、7週連続減 インフルは注意報、沖縄以外で増加

 厚労省は27日、全国に約5千ある定点医療機関に16~22日に報告された新型コロナの新規感染者数は計1万6075人で、1定点あたり3.25人と発表した。前週の約0.86倍、7週連続で減少した。都道府県別の最多は北海道6.79人で、長野5.17人、福島4.93人と続く。22日までの1週間に定点医療機関に報告された新規入院患者数は1138人だった。前週の1271人から133人減った。集中治療室(ICU)に入院している患者数は41人、前週の68人から27人減。

 厚労省は「新型コロナの患者数は7週連続で減少し、新たに入院した患者も減少傾向であるが、例年、冬になるとコロナの感染が拡大傾向にあることから引き続き感染対策は続けてほしい」としている。一方、季節性インフルエンザは、前週の約1.48倍の16.41人で、沖縄をのぞく46都道府県で前週から増加した。休校や学年・学級閉鎖は全国で計3751校にのぼり、前週の1772校の約2倍となった。

 10月27日発表の定点把握(10月16日~22日)出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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2023年10月31日 (火)

川の博物館と鉢形城公園

  2023年10月22日(日)、東武東上線の鉢形駅から寄居駅まで歩く。

 途中、「川の博物館」と「鉢形城園」を見学。

 
 10:01、東武東上線の鉢形駅に到着。2015年(平成27年)3月に駅舎のリニューアルしたそうだ。近隣の埼玉県立「川の博物館」の水車小屋をイメージしたものだという。10:07、鉢形駅を出発、静かな住宅街を抜ける。

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 坂を下り、右手の寄居町保健福祉総合福祉センターと寄居町総合社会福祉センターの大きな建物を過ぎる。

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 左手に、荒川の「かわせみ河原」が賑わっている。

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 10:30、埼玉県立「川の博物館」(かわはく)着。入場料は、一般410円。

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 65歳以上の入場料は無料だったが、県の条例改正により、2013年(平成25)7月から一般と同じになっている。

 展示室などがある本館。

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 本館前から「荒川大模型」、「レストハウス」と「大水車」。

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 「大水車」は1997(平成9)年8月、「かわはく」の開館に合わせて作られた。埼玉県産のヒノキで作くられ直径は23m、日本一の大きさを誇ったが、2004(平成16)年に岐阜県で直径24mの大水車が完成し、日本第2位となった。2015(平成27)年、木部に老朽化により回転を停止。2017(平成29)年、改修工事が行われ、2019(令和元)年7月に直径24.2mの日本一の「大水車」が完成した。

 11:00~事前に依頼した学芸員による「荒川大模型」の説明を40分ほど受ける。

 荒川の源流(甲武信岳)から河口(東京湾)までの長さ173kmの流れと本流沿いの地形を1000分の1に縮小た大パノラマ。

 秩父山地、甲武信岳(標高2,475m)の山麓、奥秩父の赤い丸が「荒川源流点」とされる。

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 深い谷を刻む荒川は、秩父盆地内を曲流し数段の非対称の河成段丘をつくっている。

 右手前が浦山ダム、その先に秩父市街。

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 2019年(令和元年)の台風19号の当時の「かわはく」の被害状況などの説明があったが、本館の写真やパネルでも紹介されていた。

 11:38、途中、大小の水車を見ながら、レストハウスへ移動。

 園内には荒川流域で使われていた精米水車(上の写真)とコンニャク水車(写真なし)が移築復元されている。

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 11:40、レストハウス2階、レストラン「ウォーターミル」で昼食。かわはくラーメン650円。

 12:00~本館展示室を見学。「鉄砲堰(てっぽうぜき)」の1/4模型。

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 12:20~、大型パノラマスクリーンで実際の「鉄砲堰」を復元する過程と放水が解説、上映され、同時に「鉄砲堰」模型での放水実演が行われた。

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 「鉄砲堰」は、木材運搬のために使われた木製の堰(ダム)。丸太を組んで水を貯めた後、堰を切って伐採した木材を水と一緒に一気に下流へと押し流すもの。 幕末から明治初期にかけて作られるようになり、秩父の中津川などでそう呼ばれていたが、堰を使った木材の流送手段は、全国各地に存在した。林道の建設が進み、トラックの普及により、戦後に「鉄砲堰」は全国から姿を消したという。

 「船車(ふなぐるま)」の実物大模型では、船車の歴史と役割について解説。以下2枚の写真は、「かわはく」のホームページより引用。

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 「船車」は船に水車が付いていて、船の中で小麦などを粉にすることができる船。中には囲炉裏があり休憩や寝泊まりもできるようになっていた。荒川の水の増減にも影響を受けず、船のまま避難もできた。

 本館外壁に、川合玉堂の筆になる重要文化財「行く春」(六曲一双屏風)を、長さ21.6m、高さ5.04mの大陶板画(信楽焼)にして展示してある。「行く春」は、1916(大正5)年に長瀞・寄居方面を訪れた玉堂が、荒川に浮かぶ「船車」をモチーフに描いた傑作で第10回文展出品作。現在は東京国立近代美術館が所蔵、重要文化財に指定されている。

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 「荷船(にぶね)」の実物大模型。「荷船」は荷物の運搬に使われ、年貢米や特産物などの物資の大量輸送を担っていた船。

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 荒川本流や、その支流の新河岸川、入間川、高麗川などにおいて、河川輸送の主役だった。荒川本流では、荷船が辿り着ける最上流の熊谷と、最下流の東京との間の水運を担った。荷船には世辞(せじ)という部屋があり、炊事ができて2~3人が寝泊まりできるようになっていたという。 

 周辺の農村から河岸場に集められた米・麦・さつまいも・しょう油などの農産物は、荷船に積んで東京に運ばれた。秩父山地の木材・炭、川口の鋳物も重要な積荷だった。 東京からは、塩・酒・海産物の干物などの食料品や下肥(しもごえ)が主な荷物。肥船で運ばれた下肥は、貴重な肥料として農産物 の生産向上に役立ったという。


 12:33、「川の博物館」を出発。13:10、浄土宗「浄福寺」で10分ほど休憩。

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 県道30号線を西へ進む。荒川に架かる「正喜橋」の手前の三叉路で、左の坂道へ少し進むと、13:35「鉢形城公園」の北端にある笹曲輪(ささくるわ)。

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 「鉢形城」は、深沢川荒川に合流する付近の両河川が谷を刻む断崖絶壁上の天然の要害に立地する。

 公園の中を通る一般道を南に進み、坂道がゆるくなったあたり、Y字路の手前で左の小径を下る。

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 深沢川に降りて、再び上がると13:45「鉢形城歴史館」に到着。

 2階が受付。入館料は、一般200円。70歳以上、無料。

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 14:00~、ボランティアガイドによる説明を受ける。

 館内1階へ降りると、再現した櫓門が展示室の入口。館内撮影禁止。

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 まず、展示室の鉢形城ワープステージ(鉢形城のジオラマ)で、鉢形城の歴史、城の構造を映像を交えて学ぶ。

 次に、館外へ出て、ボランティア・ガイドの案内で鉢形城趾を巡る。

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 「鉢形城歴史館」は、この外曲輪の一角に建てられている。この広い曲輪は、整備される前は民間の畑だったという。奥に土塁が見える。

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・深沢川

 天然の堀、深沢川にかかる橋を渡る。

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・土塁(どるい)

 左右に土塁が現れる。左の土塁には「カタクリ群生地」の看板がある。

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 この先に、町指定の天然記念物で樹高18m、樹齢150年の大きなエドヒガンサクラ(愛称:氏邦桜)があった。

・本曲輪

 公園内を通る一般道に出て少し下った公園西側の本曲輪に進み、寄居の市街を望む。この下の荒川とは断崖絶壁。「正喜橋」のある北東方面を望む。

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 北から北西方面。

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・二の曲輪

 本曲輪の南側には、ニの曲輪がある。

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 二の曲輪から北の方向、日光の男体山がよく見える。

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・堀と畝(うね)<写真なし>

 二の曲輪と三の曲輪を隔てる巨大な空堀と土塁がある。堀は、発掘調査の結果、最大上幅約24m、深さ約12mの大規模な堀であることが判明。堀と土塁は屏風状に折れ曲がり、先が見通しづらい形状。堀底からは、「畝(うね)」と呼ばれる直線状の盛土がある「障子堀」の跡も発見されている。この「畝」は、敵兵が堀底で動き回るのを防ぐためという説と、堀底の水を一定に保つためという説がある。

・石積み土塁、四阿(あずまや)、池、四脚門

 三の曲輪では戦国時代の築城技術を今に伝える石積み土塁、四阿(あずまや)と池や四脚門などが復元されている。以下3枚の写真は、寄居町のホームページから引用。

 復元された石積み土塁。

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 河原の石を使用した全長約100m、高さは約4m。いわゆる江戸時代の城の石垣とはその規模・技法等において見劣りするが、関東地方の石積技術の有様や石積を専門とする技術者の存在を示す重要な発見だという。

 復元された四阿と池。庭園跡とみられ、ここからは茶道具なども出土しているそうだ。

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 復元四脚門。四脚門の前には虎口(こぐち)周辺の状況が復元整備されている。

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・馬出(うまだし)<写真なし>

 城の出入り口である虎口を守る小さな曲輪を意味し、城兵の出入りを安全に行う施設。堀で四方を囲み、土塁は敵兵に面する箇所に設置されている。北条氏系の城郭は、四角い形の「角馬出(かくうまだし)」と呼ばれている。真田幸村が築いた「真田丸」の様な馬出とは異なる。鉢形城内には6箇所の馬出が推定されているという。

・鉢形城復元地形模型

 笹曲輪にもどり、鉢形城復元地形模型を確認。1/250スケールで鉢形城の全貌を模型にしてある。

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 二の曲輪、三の曲輪、笹曲輪は、1997(平成9)年度から2001(平成13)年度にかけて発掘調査が行われ、それをもとに馬出や堀・土塁の復元整備が進められた。また、園内の遊歩道は、深沢川の渓谷やカタクリ群生地、エドヒガン(寄居町指定天然記念物)など四季折々の景観が楽しめる。

 15:15、「鉢形城公園」を後にする。

 新しくなった寄居駅南口前の中央通り線(県道190号)。

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 寄居駅前の再開発事業が、2018年に基本計画が国に認定されてから本格化。町が約25億円を投じ、交流広場や駅前道路などの整備を進めていた。

 15:35、寄居駅南口駅前拠点「Yotteco」(ヨッテコ)に立ち寄り、コーヒータイム。2023年4月に開館したばかり。

 写真は、ウィキメディア・コモンズより引用。

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 16:05 「Yotteco」発、16:19寄居駅発の東上線小川町行きの電車に乗車。

 開業以来約120年ぶりにリニューアルした寄居駅南口。

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 およそ11km、19,000歩。約2万歩を歩いた。秋晴れのさわやかな空気の中、上着を脱いで歩く気持ちの良いウォーキングだった。
 

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 「鉢形城」は、1476年(文明8年)関東管領であった山内上杉氏(上杉氏の諸家のひとつ )の家臣・長尾景春が築城したと伝えられる。その後、この地域の豪族・藤田泰邦に入婿した、小田原の北条氏康の四男・氏邦が整備拡充し、現在の規模となった。関東地方において有数の規模を誇る鉢形城は、北条氏の北関東支配の拠点として、さらに甲斐・信濃からの侵攻への備えとして重要な役割を担った。

 1590年(天正18年)の豊臣秀吉による小田原攻めの際には、北条氏の重要な支城として、前田利家・上杉景勝等の北国軍に包囲され、攻防戦を展開。氏邦は3千の兵とともに1ヶ月余りにおよぶ籠城の後に、城兵の助命を条件に開城した。開城後は城は廃城となり、徳川氏の関東入国に伴い、家康配下の成瀬正一や日下部定好が代官となり、この地を統治した。

 なお、「鉢形城跡」は、1932年(昭和7)に国指定史跡となった。2000年(平成12年)「21世紀に残したい埼玉ふるさと自慢100選」(埼玉新聞社)、2006年(平成18年)「日本100名城」(日本城郭協会)。2007年(平成19年)には、「日本の歴史公園100選」(都市公園法施行50周年等記念事業実行委員会)と「日本の史跡101選」(日本経済新聞社)に選ばれている。
 

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2023年10月 5日 (木)

新型コロナ2023.09 第9波減少

 新型コロナが感染症法の5類に移行した5月以降、感染拡大傾向が続いている。加藤厚労相は9月11日、現状を「第9波」だと事実上認めた。9月3日までの1週間に報告された新規感染者数は1つの医療機関あたり平均20.50人で、5類移行後で最多となっていた。3週間後の9月24日までの1週間では、1つの医療機関あたりの平均11.01人で、前の週の0.63倍となった。厚労省は「減少傾向が続いていてピークアウトの可能性がある。今後も感染対策を続けてほしい」としている。

 2023年9月1日から30日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.08 EG.5系統」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】


【9月1日】

●感染症危機、次への備え 「危機管理統括庁」、きょう発足

 政府の感染症対応の司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁」が9月1日発足した。新型コロナ対応の反省をふまえ、省庁や関係機関とのやりとりを一元化。次の感染症危機に備えた行動計画を策定、訓練などを通じ、次の感染症危機に備える。新組織は、平時は38人の専従職員で構成。有事には各省庁から職員が加わり、101人に増員される。トップの内閣感染症危機管理監には栗生内閣官房副長官、事務総括の内閣感染症危機管理対策官には厚労省の迫井医務技監が就く。

 新型コロナの初動対応では様々な問題が明らかになった。検査が十分に受けられなかったり、保健所に電話がつながらなかったりする事態が発生した。専門的な治療が必要な重症者が入院できない事例も少なくなかった。ワクチン開発も海外から大きく後れをとった。このほか、空港での水際対策や一斉休校による混乱、緊急事態宣言などに伴う飲食店への休業要請などでも関係者は振り回された。

●昨年度の医療費、46兆円 2年連続で過去最高更新

 厚労省のまとめによると昨年度の2022年度の医療費は、概算で46兆円で、前の年度から1兆8000億円、率にして4%増加し、2年連続で過去最高を更新した。このうち、主な病名が新型コロナと診断された人の医療費は推計でおよそ8600億円で、前の年度の2倍近くに増えた。1人あたりの医療費は、前の年度より1万6000円増えて36万8000円となり、年代別では75歳未満が24万5000円、75歳以上は95万6000円となっている。

 厚労省は、医療費が増加した主な要因について、オミクロン株の流行で新型コロナの患者数が増えたことに加え、2020年度の受診控えの反動で医療機関を訪れる人が増えたことなどを挙げている。

●コロナ「XBB」対応ワクチンを承認 20日からの追加接種で使用

 厚労省は1日、新型コロナのオミクロン株の亜系統「XBB」に対応する米ファイザー社製のワクチンを承認したと発表した。全世代を対象に20日から始まる追加接種では、このXBB対応のワクチンが使われる。今春からの65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人らを対象にした追加接種では、オミクロン株「BA.5」などに対応したワクチンが使われていた。今回承認されたワクチンはXBB.1系統に対応、現在増え始めているEG.5系統にも効果があるとしている。

 20日からの追加接種は全世代が対象だが、予防接種法上の「努力義務」や「接種勧奨」は高齢者や基礎疾患のある人に限られる。費用は引き続き全額公費となる。国立感染研の報告によると、8月14~20日に流行している株のうち、XBB.1系統は低下傾向で、EG.5系統が増え始めている。XBB対応のワクチンについては、米モデルナ社も厚労省に製造販売の承認申請をしている。厚労省は自治体を通じ、接種希望者に早めの予約を呼びかけている。

●一昨年の日本人の死亡率、10年ぶり増加 コロナが影響か

 国立がん研究センターのグループは、国が公表している2021年までの27年間の「人口動態統計」をもとに年ごとの死亡率の変化について統計学的な手法で調べた。その結果、2021年の死亡率は人口10万当たり989.6人で、前の年の人口10万当たり968.4人に比べて2.2%増加した。日本人の死亡率はこの数年、減少傾向が続いていて、前の年より増加するのは東日本大震災の影響を受けた2011年以来、10年ぶりだという。

 死因別で、前年から増加が大きかったのは、いずれも人口10万当たりで新型コロナの感染の11.8人、老衰の93.8人、心不全などの心疾患の145.2人。グループでは、新型コロナの流行やコロナ禍で診療体制が制限されたことなどが影響した可能性があるとしている。研究員は「コロナ禍の影響が死亡率にも表れる結果となった。ほかにもがん治療の先延ばしや検診の受診控えなどが今後、がんの死亡率に影響してくる可能性があり、注視していく必要がある」としている。

●新型コロナ 全国の感染状況 前週の1.07倍 2週連続の増加

 厚労省によると、8月27日までの1週間に全国およそ5千の医療機関から報告された新型コロナの患者数は前の週から7036人増えて9万3792人となった。また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は19.07人で前の週の1.07倍となった。前の週から増加が続くのは2週連続となる。都道府県別では多い順に、岩手が31.71人、青森31.3人、宮城29.54人、茨城26.8人、秋田26.73人と、28の都府県で前の週より増加している。

 このほか、8月27日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万3501人で、前の週と比べて168人の減少となった。厚労省は全国の流行状況について「お盆期間も終わり、減少していた患者数が再度緩やかな増加に転じている状況にある。夏休みが終わり、今後は学校が再開されたことによる影響も懸念される状況にあるので、体調管理に留意するなど基本的な感染対策を徹底してほしい」としている。

 9月1日発表の定点把握(8月21日~27日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「子どもたちでの流行 さらに広がる可能性」

 現在の感染状況について、感染症に詳しい東邦大学の舘田教授は「全国的に微増傾向が続いている。年齢別に見ると10歳未満の子どもたちが一番多い状況で、9月に入り学校が本格的に始まると子どもたちでの流行がさらに広がる可能性がある。また、高齢者でも一定の増加が見られているので引き続き注意していく必要がある」としている。

 その上で「かぜのような症状があった場合は、コロナの可能性を考えて無理して出勤や通学などをせず、自宅で療養してほしい。また、高齢者や、基礎疾患があって不安だという人は早めに医療機関を受診してほしい」と述べた。また、ワクチンの接種から時間がたつと発症を予防する効果などが下がってしまうとした上で「高齢者や基礎疾患がある人など重症化のリスクの高い人は今後、必要に応じて次の接種をすることが大事になると思う」と話していた。

【9月4日】

●厚労相「コロナ公費負担継続 知事会の考え聞きながら検討」

 加藤厚労相は4日、全国知事会で新型コロナ対策を担当する鳥取県の平井知事と厚労省で会談し、知事会からの提言を受け取った。提言では、今月末までとなっている高額なコロナ治療薬の費用と入院費用の一部などに対する国の公費負担について、患者が増加傾向であることを踏まえ、継続するよう求めている。また、自治体が医療機関や高齢者施設で実施する検査費用などで負担が生じないよう、国が引き続き全額を負担することも求めている。

 会談では平井知事が、来月以降の公費負担の在り方について、政府と全国知事会との間で協議の場を設けるよう求めたのに対し、加藤大臣は「厚労省として応じていきたい」と述べ、全国知事会などの考えも聞きながら、今後の方針を検討する考えを示した。会談後、平井知事は記者団に対し「コロナ治療薬の自己負担があまりにも高くなると、医師が処方できない事態になるおそれがあるのではないか。負担を常識的な範囲に抑える配慮が最低限必要だ」と述べた。

【9月7日】

●PCR補助、詐取未遂容疑 コロナ検査虚偽、5.3億円 6人逮捕

 新型コロナ検査の無料化事業で補助金の不正申請が相次いだ問題で、警視庁は7日、「大洋商事」(東京都渋谷区)の代表取締役の上嶋容疑者ら男6人を詐欺未遂容疑で逮捕、発表した。6人は共謀し、「東京都PCR等検査無料化事業」の補助金をだまし取ろうと2022年9月中旬ごろ、医療法人「華風会」(大阪市)名義で実施した2022年8月分のPCR検査などの精算額について、約5億3千万円とする虚偽の実績報告書などを都に提出、補助金を交付させようとした。

 都が不正を見抜き、交付されなかった。大洋商事は、華風会に持ちかけて業務委託を受け、事業に参入。逮捕容疑も含め22年6~11月の検査分として、計約12.8億円(約17万件分)を都側に申請していた。捜査2課は8~9割が架空とみている。同課によると、大洋商事は都内4カ所の検査場の運営業務を不動産販売「YELL合同会社」(東京都世田谷区)など4法人に委託。4法人の従業員らのつばや水を入れるなどした検体を大洋商事側が回収し、うその実績報告書を作成していたという。

【9月8日】

●無料臨時接種、今年度末まで コロナワクチン 来年度からは高齢者などに年1回

 新型コロナのワクチン接種について、厚労省の専門家部会は8日、全額公費負担の臨時接種を今年度末で終了する方針を了承した。来年度からは65歳以上の高齢者など重症化リスクの高い人を対象に、秋から冬に年1回の接種にする方向。来年度以降は、高齢者らは季節性インフルエンザなどと同じ一部自己負担が生じる可能性がある定期接種とし、対象者以外は原則自己負担を視野に検討を進める。今年の秋冬の接種は20日から始まる。生後6カ月以上のすべての世代が対象。

●新型コロナ「空床補償」病院への補助金、500億円超過大に支払い

 新型コロナの入院患者を受け入れる病院を支援するため、厚労省は患者の受け入れに備えて病床を空けた場合に、確保しながら患者が入らず空いた病床や、コロナ患者の受け入れで休止した病床に対して、「病床確保料」として1日単位で補助金を支払う、いわゆる「空床補償」を行ってきた。これについて、会計検査院が去年11月、不適切な支出があったと指摘し、その後、厚労省が都道府県に点検するよう求めていた。

 その点検結果によると、2020年度から2021年度までの2年間に「病床確保料」を受け取った医療機関のうち、岩手県と徳島県を除く45の都道府県ののべ1536の医療機関に対して過大に補助金が支払われ、その額はあわせて504億7000万円あまりにのぼるという。厚労省は、過大に補助金を受け取った医療機関に対して、返還手続きを行うよう求めている。

●新型コロナ全国の感染状況、前週の1.07倍 5類後最多に

 厚労省は8日、今月3日までの1週間に全国およそ5千の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から7497人増えて10万1289人と発表した。また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は20.50人で、前の週の1.07倍。前の週から増加が続くのは3週連続となる。都道府県別では、多い順に岩手が35.24人、宮城32.54人、秋田30.61人、千葉県28.68人、茨城27.74人などとなっていて、37の都道府県で前の週より増加。

 このほか、今月3日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万2842人で、前の週と比べて1130人の減少。厚労省は全国の流行状況について「お盆明けから緩やかな増加傾向が続いている。20歳未満の人たちで増えていて学校再開の影響も懸念されることから、引き続き基本的な感染対策を徹底してほしい」としている。

 9月8日発表の定点把握(8月28日~9月3日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「学校が始まってさらに拡大するおそれ」 学級閉鎖も

 感染症に詳しい東邦大学の舘田教授は、「全国的に緩やかな増加傾向が続いている。お盆の時期は医療機関を受診する人や検査を受ける人が少なくなり、見かけ上、感染者が少なくなっていたが、人々の移動に伴って感染が広がっている」と話す。そのうえで「年代別では10歳未満の子どもたちで最も多くなり、学校が始まってさらに拡大するおそれがある。その結果、家庭でも感染が広がって、重症化リスクが高い高齢者の感染者が増えないように注意する必要がある」と指摘した。

 そして「9月の新学期早々、学級閉鎖や休校が相次いでいる。新型コロナもインフルも広がりやすいウイルスなので、発熱やのどの違和感、鼻水が出るなど体調が悪い場合は、感染を疑って無理をせずに自宅療養し、不安があれば医療機関を受診して検査を受けたり、薬を処方してもらったりすることが大事だ」と話していた。

●インフルエンザ 1医療機関当たり2.56人 前週より増加 初の「収束せず」

 季節性インフルの流行が、昨年末から継続したまま、次のシーズンに入ることになった。厚労省が8日発表した。発表によると、全国約5千カ所の定点医療機関から報告された最新1週間(8月28日~9月3日)の季節性インフルの患者数が1医療機関あたり、前の週の1.40人から2.56人になった。「1人」を超すと「流行」とされ、昨年12月19~25日に流行期入りしたあと、これまで一度も下回っていない。

 厚労省はインフルの発生状況について、9月4日以降の週からは新シーズンとして集計。流行が収束しないまま次のシーズンに突入するのは、現在の方法になった1999年以来、初めてという。日本感染症学会インフル委員会の石田委員長は流行が続いている背景として、3年間インフルの流行がなかったことや昨年のワクチン接種から時間がたったことで、1人が感染すると周囲に広がりやすい状況があると指摘する。

【9月11日】

コロナ「第9波」 加藤厚労相、注意呼びかけ

 新型コロナの国内の感染状況について、加藤厚労相は11日、大阪市内での講演で「第9波と言われているものが今回来ている」と述べた。コロナが感染症法の5類に移行した5月以降、感染拡大傾向が続いているが、現状を「第9波」だと事実上認めた。全国約5千の定点医療機関からの報告では、3日までの1週間に報告された新規感染者数は1定点あたり20.50人(速報値)で、5類移行後で最多となっていた。

 加藤厚労相は講演で「政府では1波、2波、3波と波を数えていない」としつつも「一般的に言えば第9波が来ている」と指摘。例年は夏に感染が拡大し、お盆の時期にピークを迎えるが、今年はまだ「ピークアウトという状況ではない」と注意を呼びかけた。

【9月12日】

●米FDA、更新版の新型コロナワクチンを承認 XBB.1.5対応

 米食品医薬品局(FDA)は11日、更新版の新型コロナワクチンを承認した。オミクロン株の亜系統「XBB.1.5」に対応した1価ワクチンで、今秋以降に米国で接種される。日本国内でもすでにこのワクチンは承認され、20日から始まる全世代を対象にした追加接種で使われることになっている。FDAはモデルナとファイザーがそれぞれ製造する新たなワクチンについて、12歳以上に対しては正式に承認、生後6カ月から11歳以下に対しては緊急使用許可を出した。

 米疾病対策センター(CDC)によると、8月下旬現在、新型コロナによる新規入院者数が1週間で約1万7千人。10万人を超えていた2021年1月や2022年1月に比べると大幅に少ないが、6千人台に減った今年6月に比べると増加している。9月初旬の段階で流行しているのは、「EG.5」や「FL.1.5.1」といった系統。新たなワクチンが対応する「XBB.1.5」の割合は減少しているが、FDAは新たな現在流行している系統に対する効果もあるとしている。

●コロナ新変異株、免疫逃れやすく EG.5に置き換わり進む

 国内で感染者の緩やかな増加が続く中、新たな変異株「EG.5」系統への置き換わりが進んでいる。過去には新たな変異株の流行により感染者が急激に増えた事例もあり注意が必要。オミクロン株XBB系統から派生した「EG.5」系統は2月に初めて報告され、WHOが8月に「注目すべき変異株」(VOI)に指定。現時点で重症度が高まっているという知見はないが、これまでのXBB系統と比べて、免疫を逃れやすく、感染しやすくなる可能性がある。

 国立感染研によると国内でも7月ごろから広がり、EG.5系統の一つ「EG.5.1」は8月7~13日時点で200検体のうち29%だったが、9月11日の週には58%を占めると推計。東京都は7日、都内で初めて多数の変異がある「BA.2.86」を8月24日にPCR検査検体から確認したと発表。2022年に主流となったBA.2系統から派生、ワクチンや感染でできた免疫から逃れる可能性があり、WHOは8月24日に「監視下の変異株」(VUM)に指定した。

●新型コロナ感染「ピークアウトしているとは言えず注視」 加藤厚労相

 厚労省によると、新型コロナの患者数は、今月3日までの1週間で1つの医療機関当たりの平均の患者数が20.50人と3週連続で増加した。これについて、加藤厚労相は閣議の後の記者会見で「まだピークアウトしているとは言えず、注視していかなければならない。厚労省としても医療機関の逼迫やウイルスの変異についての状況を、しっかりおさえて必要な対策をとっていきたい」と述べた。

●都医師会「第9波に入っている」 感染対策呼びかけ

 新型コロナの患者数の増加傾向が続いていることを踏まえ、東京都医師会の尾崎会長は記者会見で、感染者の増加傾向が続き医療が逼迫しているとして「5類への移行でもう終わったように思っている人もいるが、今は都内だけで毎日、新たに1万5000人ほどが感染しているような状況だ。第9波に入っており、第8波のピークに近づきつつある」と述べた。

 そして「重症化する人は減っており、以前のように規制をかける必要はないが、コロナとの戦いはまだまだ続いている」とした上で「新たな変異株にも効果があるとされるワクチンの接種が来週20日から始まるので、できるだけ接種して欲しい」と述べ基本的な感染対策の実施を呼びかけた。

●XBB系統対応 モデルナ製承認 厚労省

 厚労省は12日、新型コロナのオミクロン株の亜系統「XBB」に対応する米モデルナ社製のワクチンを承認したと発表した。既に承認されている米ファイザー社製のワクチンとともに、全世代を対象に20日から始まる追加接種で使われる。同社は25日の週から各自治体に配送を始める。

 モデルナ社製のXBB対応ワクチンの対象年齢は6歳以上。同社は、XBB対応ワクチンについて、現在流行しているEG.5.1系統や、東京都で今月初めて確認されたBA.2.86系統に対して細胞への感染を防ぐ力を示す「中和活性」を確認したと発表している。20日からの接種は6カ月以上の全世代が対象だが、予防接種法上の「努力義務」や「接種勧奨」は高齢者や基礎疾患のある人に限られる。費用は引き続き全額公費。

【9月14日】

●尾身氏ら専門家3人 退任にあわせ3年半を総括

 14日、都内で開かれた記者会見で、政府の「新型インフルエンザ等対策推進会議」を退任した尾身前議長をはじめ、専門家3人が出席した。尾身氏は、新型コロナ対策に当たった3年半の活動を振り返り、感染対策と社会経済活動の両立を図りながら提言をまとめることの困難さに触れ、「正解がない中で大切にしてきたのは科学的に合理性があり、多くの人が納得できる提言をまとめ、その意図を市民に発信することだった」と述べた。

 また、川崎市健康安全研究所の岡部所長は「日本の死亡者の数は海外よりも低く抑えられ、やるべきことはやれた自負があるが、コロナ対策が教育など社会に深刻な影響を及ぼしたことも事実。こうした課題を乗り越えていくことが必要」と述べた。そして尾身氏は、「第9波と言われる状況でまだピークは見えず、コロナは完全に終わったわけではない。これからも社会活動を維持しながら、高齢者などを感染から守る取り組みが必要」と訴えた。

【9月15日】

●新型コロナの患者支援、10月から見直し

 新型コロナは、ことし5月に「5類」になったが、厚労省はその後も患者や医療機関への支援を一部継続してきた。厚労省は15日、10月から行う支援の縮小の具体的な内容を公表した。このうち、患者への支援の見直しでは、現在、全額公費で負担している高いもので9万円を超える高額なコロナ治療薬について、来月からは一部自己負担を求めることになった。

 年齢や所得に応じて、3000円~9000円の自己負担を求めるという。また、入院医療費については、これまで、1か月当たりの医療費が高額になった場合、「高額療養費制度」を適用したうえで、さらに最大2万円を補助してきたが、来月からは補助額を半額の最大1万円にする。

●医療機関への支援見直し

 一方、医療機関への支援の見直しでは、これまで医療機関が新型コロナ入院患者の受け入れに備えて病床を空けた場合、「病床確保料」として補助金を支払う、いわゆる「空床補償」をしてきた。来月からは感染状況が一定の基準を超えて拡大するまで支給しない。このほか、特例で加算していた診療報酬や、高齢者施設への支援についても見直す。厚労省は、新型コロナへの支援策を、来年4月からは季節性インフルなどの感染症と同様の対応とする方向で見直しを行うことにしている。

 厚労省の感染症部会の委員も務める国立国際医療研究センターの大曲国際感染症センター長は「新型コロナの患者を受け入れる医療機関は、十分に増えているとは言えない。さらに来月から、病床確保料などの支援策が削減され入院患者を受け入れる医療機関が減り、ベッドを探すのが難しくなるおそれがある。新型コロナの患者を受け入れる医療機関の労力は今でもとても大きいので、それに見合う支援策のあり方を今後も検討するべきだ」と指摘した。

 10月以降の患者支援と医療機関支援の見直し 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●コロナ予備費3.7兆円繰り越し 検査院「経緯示すべきだ」 2020、21年度

 会計検査院が2020年度と21年度に政府が新型コロナ対策としてあてた予備費を調べ、15日に公表した。2020年度は7兆9819億円のうち4兆7964億円が翌年度に繰り越された。2021年度は新たに4兆6185億円がついたが、国交省など6府省18事業に配分された約3兆7千億円の全額が翌年度に繰り越されていた。

 検査院は各省庁に予備費の執行状況を公表するよう求めるとともに「全額を翌年度に繰り越した場合は、決定時の想定や繰り越しに至った経緯を丁寧に示すべきだ」と指摘している。予備費は自然災害など「予見しがたい予算の不足」に対応するため、使い道を決めずに計上する予算。国会の事前審議なしで政府が自由に使えるため、「不透明」との批判が出ている。

●コロナ自然感染、高齢者は「4人に1人」 厚労省、年代別の抗体保有率公表

 新型コロナに自然感染した後にできる抗体を保有している人の割合(抗体保有率)について、5~29歳は7割前後で、高齢者は2~3割弱であることが分かった。15歳以下や70歳以上の抗体保有率が明らかになったのは初めて。厚労省が15日に調査結果を公表した。コロナに感染後、体内には抗体ができ、しばらく残る。ワクチンによる抗体と自然感染による抗体は区別でき、抗体保有率を調べれば、どれくらいの人が感染した経験があるのか分かる。

 調査では、今年7~8月の22府県4235人分の血液を調べたところ、全体の抗体保有率は45.3%だった。小中学生にあたる年代の子どもの7割が感染を経験した可能性がある一方で、70歳以上は、4人に1人程度しか自然感染の経験がないことになる。

●新型コロナの感染状況 前の週の0.98倍

 厚労省によると、今月10日までの1週間に全国およそ5千の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から1545人減って9万9744人。また、1つの医療機関当たりの平均患者数は20.19人で前の週の0.98倍でほぼ横ばい。都道府県別では、多い順に宮城が32.47人、岩手29.87人、千葉27.45人、埼玉26.95人など、25の府県で前の週より増加。このほか、今月10日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万1566人で、前の週と比べて1744人減少。

 9月15日発表の定点把握(9月4日~10日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 厚労省は、全国の流行状況について「新型コロナの5類移行後、緩やかな増加傾向が続いていて、前の週からは減少したもののほぼ横ばいだといえる。年齢別では20歳未満が増加している一方でそれ以外は減少していて、学校再開などの影響が続いているとみられる。引き続き、感染対策を徹底してほしい」としている。

●専門家「新型コロナ、減少に転じるか注意して見る必要」

 感染症に詳しい東邦大学の舘田教授は、新型コロナの現在の感染状況について「この夏にかけて感染者数は増加傾向が続いていたが、直近では横ばいとなっていて、ピークが見え始めているように見える。これまでの3年間は8月から9月にかけて感染拡大が続き、その後、収束したが、ことしも同様に横ばいから減少に転じていくのか、これから1週間か2週間は注意して見ていく必要がある」と話した。

 また、インフルエンザが同時に流行している状況については「新型コロナとの同時に検査できるキットが普及し、インフルが以前より見つかりやすくなったことも関係していると考えられるが、コロナ対策でここ数年、流行が抑えられ、免疫を持たない人が多いことが影響している。今の時期、冬のシーズンのように爆発的に患者が増加するリスクは低いと考えているが、流行状況に注意する必要がある」と話していた。

●新型コロナの病床使用率 6つの県で5割上回る

 厚労省は、入院している新型コロナの患者数や、確保されている病床の数、その使用率などを都道府県別に1週間ごとにまとめ、毎週公表している。病床使用率は、最新の今月6日の時点で最も高いのが、福岡で65%、神奈川59%、宮城58%、山形57%、栃木51%、兵庫50%と6つの県で5割を超えている。また、重症患者用の病床の使用率は、和歌山44%、山梨40%、岡山、愛媛、高知、熊本が33%などとなっている。

●オミクロン株の1種「EG.5.1」、最も多い

 国立感染研によると、国内で検出される新型コロナの変異ウイルスの割合はオミクロン株の1種「EG.5.1」が最も多く、来週の時点で63%になると推定されている。そのほか「XBB.1.16」が16%、「XBB.1.9」が9%などと推定されている。EG.5.1を含む系統は、WHOがVOI(注意すべき変異ウイルス)に指定して監視していて、世界的にも先月13日までの1週間で26.1%を占めている。

 東京大学医科学研究所の佐藤教授らのグループが発表した論文によると、EG.5.1は、細胞を使った実験で、細胞への感染力自体は一時、感染の主流となっていた従来の「XBB」系統のウイルスよりも下がっていた一方で、ワクチンの接種や感染によってできる中和抗体が効きにくかったということで、グループは「免疫を逃れる能力が高くなっている」と指摘している。また、世界的には「BA.2.86」という変異ウイルスへの警戒も高まっている。

●インフルエンザ 1医療機関当たりの患者数、前週より増加

 厚労省によると、今月10日までの1週間に全国およそ5千か所の医療機関から報告されたインフル患者数は2万2111人で、前の週から9473人増えた。1医療機関当たりでは4.48人で、前の週から1.92人増えている。前週の2.56人から1.75倍に。コロナとの同時流行により、学級閉鎖は全国で627校に上った。国立感染研によると、このデータを基に推計されるこの1週間の全国の患者数はおよそ15万1000人だという。

 都道府県別では、いずれも1医療機関当たりで、沖縄が13.43人と最も多く、注意報レベルとされる「10」人を超えたほか、長崎8.8人、千葉8.58人、福岡7.56人、宮城7.34人などとなっていて、全国の44の都道府県で前の週より増加した。厚労省では例年この時期からインフルの集計を発表し、1医療機関当たりの患者が1人を上回ると全国的な「流行期入り」の目安としていたが、今年は、去年12月から1人を一度も下回らないまま新たなシーズンとなった。

【9月18日】

●新型コロナ19万人余調査、成人1~2割が「後遺症」  厚労省研究班

 新型コロナのいわゆる「後遺症」について国の研究班が3つの自治体で19万人余りを対象に行ったアンケート調査の結果、成人の1割から2割余りが咳や倦怠感など何らかの症状が感染から2か月以上続いたと答えたことが分かった。調査は厚労省の研究班が東京・品川区、大阪府八尾市、それに札幌市の住民を対象に行った。

 この中で、去年9月までに新型コロナに感染し、咳や倦怠感などが2か月以上続くいわゆる「後遺症」とみられる症状があると答えた人の割合は、成人では札幌市で23.4%、八尾市で15.0%、品川区で11.7%ととなった。一方、5歳から17歳の小児を調査した札幌市と八尾市ではいずれも6.3%と、成人より低い割合。また感染前にワクチンを接種した人は接種していない人に比べて、成人と小児のいずれも症状が続いた人の割合がおよそ25%から55%低かったという。

【9月20日】

●オミクロン株派生型対応ワクチン、全世代で接種開始

 新型コロナは、ことし5月に法的位置づけが5類に変更されたが、厚労省は今年度末まで自己負担なしで接種することができる特例接種を続けている。20日から冬に懸念される感染拡大に備え、希望する生後6か月以上のすべての人を対象にした接種が始まった。全額公費での特例接種は今年度末までで終了することが決まっている。厚労省は、来年度以降の接種については、一部自己負担が生じるケースもある「定期接種」に移行することも含めて、検討している。

 厚労省は自治体が住民に接種を勧める「接種勧奨」や、接種を受けるよう努めなければならないとする「努力義務」について、今回の接種からは高齢者や基礎疾患がある重症化リスクの高い人にのみ適用し、それ以外の65歳未満の健康な人には接種勧奨や努力義務を適用しないことになった。また、多くの自治体で来月から始まるインフルと新型コロナのワクチンを同時に接種しても、安全性や有効性に問題はないとしている。

●「XBB.1.5」対応ワクチンとは  「EG.5.1」への効果は

 20日から接種が始まるワクチンは、オミクロン株の一種「XBB.1.5」対応の成分が含まれたワクチン。国立感染研によると現在、流行の主流となっているのはXBB系統からさらに変異した「EG.5」と呼ばれるウイルスで、今週の時点でこのうち「EG.5.1」が63%を占めると推定されている。「XBB.1.5」対応ワクチンを開発した米製薬会社2社は、臨床試験などで「EG.5」や「BA.2.86」など、新たな変異ウイルスに対しても免疫反応がみられたとしている。

 また、東京大学医科学研究所の佐藤教授が主宰する研究グループによると、培養細胞を使った実験から「EG.5.1」は、感染力がこれまでの「XBB」系統より下がっていた一方で、免疫を逃れる能力は高くなっている可能性があるとしている。また、感染症に詳しい東京医科大学の濱田特任教授は「ワクチンの効果には、重症化予防と感染予防があるが、XBB.1.5対応のワクチンはEG.5に対しても重症化予防の効果は十分に期待できる」と話していた。

●ワクチン接種 これまでに4億700万回余

 政府のまとめによると新型コロナワクチンの接種は、9月17日までの時点で合わせて4億700万回余り行われた。このうち、42%にあたる1億7400万回余りが65歳以上の高齢者に対する接種。また接種した回数別にみると「初回接種」にあたる2回目の接種を終えている人は79.8%、3回目の接種を終えている人は68.8%。一方で高齢者の接種率は高く、3回目の接種を終えている人は91.5%にのぼる。

 国内のワクチン接種人数(9月19日公表) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●これまで使用の従来型対応ワクチン、廃棄へ

 オミクロン株の派生型に対応した新型コロナワクチンの接種が始まるのに合わせて、厚労省は、これまで使っていたワクチンの廃棄について発表した。このうち、従来株に対応したファイザーのワクチンは、購入したおよそ2億7480万回分のうち、使用しなかった830万回分を廃棄する。

 また、オミクロン株に対応した2価ワクチンについては、ファイザーのおよそ1億2510万回分のうち21%余りにあたるおよそ2650万回分と、モデルナのおよそ7000万回分のうち73%余りにあたるおよそ5150万回分は、有効期限を迎えたものから順次廃棄する予定。厚労省は「感染が拡大する中で色々な可能性を視野に入れて必要なワクチンの量を確実に確保できるよう購入を進めてきたので、廃棄されるものもあるが購入した行為自体は無駄ではないと考えている」としている。

【9月22日】

●新型コロナの感染状況 前週の0.87倍

 厚労省によると、今月17日までの1週間に全国およそ5千の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から1万3234人減って8万6510人となった。また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は17.54人で、前の週の0.87倍となった。都道府県別では、多い順に埼玉が24.98人、千葉23.99人、宮城22.77人、愛知22.74人、岩手21.44人などとなっている。このほか、今月17日までの1週間に新たに入院した人は全国で8920人で、前の週と比べて2905人の減少となった。

 厚労省は、全国の流行状況について「緩やかな増加傾向が続いたのち2週連続で前の週から減少したものの、ピークを越えたかどうかは注視が必要だ。特に10代は増加しており、夏休みが明け学校再開の影響が続いているとみられる。引き続き感染対策を徹底してほしい」としている。

 9月22日発表の定点把握(9月11日~17日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●新型コロナ 夏の感染拡大の波はピークを越えたとみられる

 感染症に詳しい東邦大学の舘田教授は、新型コロナの現在の感染状況について「前の週から2週間連続で減少傾向が続き、入院患者の数も減少していることから、この夏の感染拡大の波はピークを越えたとみられている。ただ、人の動きは活発でマスクを着けていない人も増えている中で、ここから急に感染者の数が減少するとは考えにくい」と指摘している。

 また、今月20日からオミクロン株の派生型「XBB」系統に対応するワクチンの接種が始まったことについて「高齢者や基礎疾患のある人たちで、最後にワクチンを打ってから4か月から6か月が経過した人たちは重症化リスクも考えワクチン接種を早めに進めることが大事。ワクチンの接種には感染後に続く『後遺症』を抑える効果があるという報告もあるので、若い人でも重症化リスクのある人と接する機会のある人は接種を検討してもらいたい」と話していた。

●「インフル、4週間以内に大流行の可能性 対策を」小池都知事

 インフルエンザについて、東京都は21日、統計を取り始めた1999年以降、最も早く「流行注意報」を出した。これについて、小池知事は22日の記者会見で「今後4週間以内に、大きな流行が発生する可能性が高いことを教えてくれているので、十分な注意を行ってほしい」と述べ、新型コロナへの感染予防のためにも、換気や手洗いなどの対策を心がけるよう呼びかけた。また、新型コロナについては「若干、落ち着きつつあるのではないか。ただ10代の感染が伸びているという状況」と述べた。

●インフルエンザ患者数、前週の約1.5倍

 厚労省によると、今月17日までの1週間に全国およそ5千の医療機関から報告されたインフル患者数は3万4665人で、前の週からおよそ1.5倍に増えている。1医療機関当たりの患者数は全国で7.03人で、都道府県別では、沖縄が20.85人と最も多く、千葉14.54人、愛媛12.07人、佐賀11.95人、東京11.37人などとなっている。このうちこのうち7つの都県では、今後4週間以内に大きな流行が発生する可能性があることを示す「注意報レベル」の基準値10人を超えている。

 感染症に詳しい東邦大学の舘田教授は、「しばらくは感染拡大が続く兆候がみられている。近く、全国で『注意報レベル』の10人を超える可能性もあり、来週や再来週の推移は特に注意する必要がある」と話している。そして「マスクを必要に応じて使うことや換気、3密を避けることなど基本的な感染対策が、コロナだけでなくインフルエンザの予防にも有効。深刻な同時流行を起こさないために対策を取ってもらいたい」と話していた。

●コロナ患者、労災申請低調 経路不明でも認定例、周知に課題

 業務中の新型コロナ感染で労災認定を受けたあとに、後遺症が続いて傷病補償年金を支給する事例が出てきた。ただ、コロナで労災が認められることへの認知が広がっていない可能性があり、医療関係者は周知する必要を訴える。厚労省によると、コロナ感染に伴う労災は、8月末までに約21万件の申請があり、約20万件が支給された。だが、感染者は全数把握されていた5月までに3300万人超に上り、申請した人は、このうちの0.6%程度にとどまる。

 労災が認められれば、治療費が全額支払われるほか、仕事を休んだ場合は4日目から賃金の8割相当を給付される。死亡時には遺族に補償金が支払われる。さらに治療から1年6カ月が経過しても症状が治らないと、傷病補償年金が受け取れる可能性がある。コロナの後遺症のクリニック院長は「後遺症で倦怠感などが続き、仕事を失う人もいる。経済的負担が大きく、労災保険はまさに『命綱』だ」と説明する。

●コロナ後遺症で傷病年金 初事例か 老人ホーム勤務の女性

 新型コロナに業務中に感染して労災認定を受けた後、後遺症が続いているとして東京都内の女性に傷病補償年金が支給された。女性を支援するNPO法人「東京労働安全衛生センター」が22日に会見を開き、明らかにした。コロナによる労災はこれまでに約20万件が認定されているが、その後の後遺症で傷病年金の支給につながるのは珍しい。同センターは「初めての事例ではないか。国にも今回の先行事例をもとに積極的な認定を考えてもらいたい」と語る。

 女性は、老人ホームの事務職として勤務していた2021年1月に施設内でコロナに感染し、高熱などで一時入院した。退院後も呼吸困難の症状が改善せず、仕事は休職し、在宅で酸素吸入が必要な状態が続いた。青梅労働基準監督署で労災認定されたあとも、在宅で酸素療法を続けざるを得ない状態という。今年5月になって労基署が傷病等級3級に認定し、年金支給を決定したという。

【9月23日】

●7~8月の山岳遭難、統計開始後最多738件、死者・行方不明者61人に

 新型コロナの5類移行を受けてひさしぶりに登山を楽しむ人が増えていることなどから、全国で山岳遭難が増えている。今年7月と8月の山岳遭難は統計を取り始めてから最も多くなり、合わせて738件、809人。死者・行方不明者は61人。9月に入っても死亡事故などが相次いでいて、警察が注意を呼びかけている。

 長野県警山岳安全対策課は、「新型コロナの制限緩和を受けてひさしぶりに登山を再開する人が増える中、難易度が高くない一般登山道でも遭難が相次いでいる。特に加齢や体力不足に伴う疲労で下山中に足下がふらつき、滑落したり転倒したりする事故が多いので、日頃からトレーニングを行い、自分の体力にあった山を選んで登山を楽しんでほしい」。また登山指導者は「いつも行っている山より少しレベルを下げて登り、体調の変化を感じたら早めに下山すること・・・」と話す。

【9月25日】

●北朝鮮、外国人の入国を許可 中国国営テレビが報道 国境開放進む

 中国国営中央テレビ(CCTV)は25日、北朝鮮が同日から外国人の入国を許可したと伝えた。入国後に2日間の隔離を義務づけるという。北朝鮮は8月下旬、新型コロナ対策を理由に約3年7カ月にわたって封鎖した国境の限定的な開放に乗り出したが、外国人の扱いについては明らかにしていなかった。

 長期間、国境を封鎖したことで、北朝鮮の慢性的な食料・物資不足はさらに悪化した。北朝鮮は8月に国外からの自国民の帰国を認めたのに続き、今後は外国人ビジネス関係者らの往来も増やし、経済状況の改善につなげたい考えがあるとみられる。ただ、すぐに観光客を含めた外国人をコロナ禍前と同じ水準で受け入れるのかどうかは不明。

【9月26日】

●ロンドン近郊の空港で管制官が相次ぎコロナ感染 欠航も 

 英国のロンドン近郊にあるガトウィック空港が25日に発表したところによると、管制塔に勤務する管制官のうちおよそ30%が新型コロナに感染するなどして体調を崩し、勤務できない状態となった。その結果、発着便の数を1日800便に制限することになり、10月1日までに合わせて164便の欠航が決まったという。英国政府によると、イングランドでは一時1日に200人程度にまで減っていた新型コロナの新規感染者数が、今月は連日1000人を超えるようになっている。

●人工透析患者 新型コロナ「5類」移行後も感染時の致死率 約2%

 人工透析を行う医師などで作る日本透析医会は、新型コロナが「5類」に移行したあとの透析患者の感染状況について独自に調査を行った。その結果、ことし5月から9月12日までに全国の61の透析施設から報告された新型コロナの感染者257人のうち、亡くなった人は6人で、致死率は2.3%となっていた。また、感染が確認された時点で重症になっていた人は全体の7.4%。

 日本透析医会によると、これらは去年からことしにかけての流行の「第8波」の際とほぼ同じ水準だという。医会では透析を受けている人は「5類」以降後も、引き続き感染に注意が必要だとしている。医会の菊地理事は「5類移行後は感染を気にしなくなった人も増えているが、腎不全や透析の患者など基礎疾患がある人は今も重症化リスクが高いので、ワクチン接種など対策に努めてほしい」と話していた。

●愛知、コロナワクチン接種直後に死亡 調査委が検証結果公表

 去年11月、愛知県愛西市の集団接種会場で、新型コロナワクチンの4回目の接種を受けた女性が接種直後、息苦しさを訴えたあと容体が急変し、死亡した。愛西市は専門家による「医療事故調査委員会」で原因の調査を進め、26日、報告書を公表した。報告書では当時の女性が接種後の経過観察中にせきが出始め、その後、息苦しさを強く訴え、症状が出始めてから10分後に心停止となっていることから、「アナフィラキシーを起こしていた可能性が高い」としている。

 そして、当時、医師がアナフィラキシーの治療薬のアドレナリンを投与しなかったことは標準的ではないと指摘したうえで、「早期にアドレナリンが投与された場合、救命できた可能性を否定できず、投与されなかったことの影響は大きい」としている。また、接種会場の体制について、接種を始める前に、医師と看護師が集まって、急変時の対応の確認などが行われず、救命のためのチームワークが十分実行されなかったと指摘し、再発防止策を提言している。

【9月27日】

●医療費1回7841円、コロナ禍急増 報酬抑えたい財務省、医療界は反発

 財務省は27日の財政制度等審議会の分科会で、全国にある診療所の1回の受診あたりの医療費が2022年度に7841円だったとの試算を発表した。コロナ前の2019年度比13%増と、コロナ禍で急増した。物価上昇率を上回る伸びとなり、「診療単価のあり方などの見直しが必要」と提言した。財務省によると、高齢化が進んだことや、医療の高度化で医療費のかかる処置が増えたとみている。今回の試算では、新型コロナの補助金に関わる費用は除いた。

 2024年度は医療サービスを受ける時の料金である診療報酬の改定年にあたり、年末の決定に向けて日本医師会などは、物価高を診療報酬に反映させるよう求めている。だが、財務省は診療所の売上高は伸びていると主張しており、診療報酬を抑えたいねらいがある。財務省が慎重なのは、診療所の医療費が増えていることに加えて、新型コロナ対策による病床確保料やワクチン接種など 補助金で病院の利益が増えていることがある。

埼玉県内の新型コロナ感染者数、前週の約半分に減少

 埼玉県が27日発表した新型コロナの感染状況によると、今月18日から24日までの1週間に定点把握の対象となっている261の医療機関から報告のあった新たな感染者数は3268人。1医療機関当たりでは12.62人で、24.98人だった前の週と比べておよそ半分に減少した。

 世代別にみると、10代が844人と最も多く、10歳未満が521人と続いているが、すべての世代で前の週よりも減少したという。県は感染者数が減少傾向に転じているものの、高齢者や基礎疾患がある人にとっては重症化リスクが高いとして、体調が悪いときは外出を控えるなど引き続き感染対策を徹底するよう呼びかけている。

【9月28日】

●東京都の新型コロナ感染者数、前週より大きく減少も基本的対策を

 東京都は28日、都内の新型コロナの感染状況について、モニタリング項目を発表した。それによると、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、415か所から報告があり、9月24日までの1週間の感染者数は合わせて3688人で、1医療機関当たり8.89人。これは前の週の16.04人のおよそ55%となり、大きく減少した。また、9月25日時点での入院患者数は1769人で、前の週より483人減った。

 専門家は「祝日に伴い定点医療機関の診療日数が減り低めの数値となっている可能性があり注意が必要だ。インフルエンザなどの受診者が増加してきており、医療提供体制への負担が長期化している」などと指摘し基本的な感染対策の継続を呼びかけた。

【9月29日】

●新型コロナ感染状況 全都道府県減少、前週比0.63倍 「ピークアウト可能性」

 厚労省によると、9月24日までの1週間に全国およそ5千の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から3万2164人減って5万4346人となった。また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は11.01人で前の週の0.63倍。前の週から減少が続くのは3週連続で、すべての都道府県で減少した。

 都道府県別では多い順に、愛知16.61人、岐阜15.24人、茨城14.53人、千葉14.43人、熊本12.74人などとなっている。このほか、9月24日までの1週間に新たに入院した人は全国で7685人で、前の週と比べて2288人の減少。厚労省は全国の流行状況について「3週連続で前の週から減少しているほか、今回はすべての都道府県で減少していてピークアウトの可能性がある。引き続き感染対策を続けてほしい」としている。

 9月29日発表の定点把握(9月18日~24日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「都市部でも明確に減少 ピーク超えたといえる」

 感染症に詳しい東邦大学の舘田教授は、新型コロナの現在の感染状況について「感染者の数は東京都など都市部でも明確に減っていて、減少傾向が9月以降続いていることから、ピークを超えたといえる状況」。そのうえで「現在、主流となっているのはオミクロン株のXBB系統となる『EG.5』で、新たな変異ウイルスが広がっている状況ではないので、減少傾向はしばらく続くと考えられる。ただ、いつまで減少が続くか注意して見る必要がある」と話していた。

 そのうえで「この冬にコロナとインフルエンザの感染拡大が重なって、同時流行が起きないかが懸念される。10月からはインフルワクチンの接種が始まり、コロナでは、XBB系統に対応するワクチンの接種がすでに始まっている。特に高齢者や基礎疾患があり重症化しやすい人は、いずれのワクチンも接種し、そのほかの人も希望する人は早めに接種を済ませてほしい」と話していた。

●インフルエンザ感染広がる 「ワクチン積極的な接種推奨」 日本感染症学会

 日本感染症学会は、インフルワクチンなどの接種についての文書をウェブサイトで公開した。2020年以降、インフルの大きな流行がなかったことから子どもや高齢者を中心に抗体の量が減って感染しやすい状態の人が増えている可能性があると指摘。ことしは、例年の流行しやすい時期に限らず流行し、規模も大きくなる可能性があること、新型コロナとの同時流行が懸念されることから、「インフルワクチンの積極的な接種を推奨する」としている。

 また、ワクチンの供給量は例年以上となる見込みのため、子どもや高齢者、それに基礎疾患がある人など重症化のリスクが高い人だけでなく、リスクが低い人も含めてより積極的に接種の推進が可能とした。一方、高齢者や基礎疾患がある人などについてはインフルにかかった後の肺炎の予防も重要だとして、肺炎の原因となる肺炎球菌ワクチンの接種も推奨するとしたほか、新型コロナワクチンの接種も推奨するとした。

2023年9月25日 (月)

古賀志山

 2023年9月23日(土)、宇都宮市の「古賀志山」に登る。

 
 古賀志山(こがしやま)は栃木県宇都宮市の北西にある山で、標高は582.8m。「日本百低山」、「関東百名山」に選定されている。低山ながらも北関東屈指の名山とされる。

 昨夜からの雨が今朝も続くが、現地に着く頃には曇りの予報。

 7:00、車2台に分乗して出発。東北道の鹿沼ICから、9:15「宇都宮市森林公園」駐車場に到着(写真はGoogleマップ)。

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 ここでは、毎年10月に森林公園周回コースで「ジャパンカップ・サイクルロードレース」(Japan Cup Cycle Road Race)が開催される。

 9:30、「宇都宮市森林公園」駐車場を出発。

 森林公園内にある「赤川ダム湖」。公園内には、休憩所、食堂、キャンプ場、バーベキュー場、魚釣り場、サイクリングコースなどが整備されており、市民の憩いの場となっている。

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 細野ため池として建設され、当初「細野ダム」とも呼ばれていたようだ。「赤川ダム」より赤川に沿って約800mほど北には、「細野ダム」という名の砂防ダムがあるので紛らわしい。 

 森林公園通りを歩くと、「古賀志山」が顔を出す。手前にダム湖の湖畔に「少年自然の家」の建物が見える。

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 森林公園の奥、左手にオートキャンプサイトの「ロッキーズ」(The Rockys)。子どもたちと遊べるアウトドア施設。

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 道路脇に立つ「古賀志山周辺地図」。(写真をクリックすると拡大表示されます)

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 「ロッキーズ」の入口付近で、森林公園通りは左へ折れて芝山林道(古賀志林道)へ。

 9:55、車両通行禁止の「北登山道」(北コース)入口に直進する。

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 沢沿いに上流に向かって林道を進む。

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 10:00、細野ダムの手前で「古賀志山」への北登山道(北コース)と「中尾根」の分岐。

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 杉林の中の砂利道の林道を歩く。

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 沢に架かる木橋を渡る。

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 10:10、コップが置いてある水場。

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 再び木橋を渡る。

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 10:35、丸太のベンチがある広場に到着。10分ほど休憩。

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 広場からは、勾配が急になる。

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 「富士見峠」直下は、岩ゴロゴロ。息が切れそうな急登。最後は丸太の階段。

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 11:15、ベンチのある「冨士見峠」に到着し、尾根に出る。ここで5分ほど休憩。

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 この先も急登が続き、ロープや鎖も設置されている。

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 11:50、「古賀志山」の山頂に到着。ベンチで昼食、休憩。

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 周囲には樹木が茂っていて、見晴らしは良くない。携帯電話の電波塔がある。

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 12:20山頂を離れて、「富士見峠」に戻る途中、「東陵見晴台」への分岐。

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 12:30、狭い岩棚の「東陵見晴台」に到着。

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 「東陵見晴台」からの眺望。写真ではわかりにくいが、眼下の左端に赤川ダムや森林公園。その先に広がる宇都宮市街。中央の木陰に「多気山」(たげさん、377m)、中央より右手に「筑波山」(877m)が遠くに霞む。

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 見晴台には、寒暖計が木にくくりつけられていて、20℃を指している。

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 東陵分岐まで戻り、「富士見峠」から往路を下る。

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 14:05、往路で通り過ぎた「ロッキーズ」(The Rockys)に入場。

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 「ロッキーズ」は、車が乗り入れられるオートキャンプサイト。BBQ、電動バイクや電動アシスト付きのマウンテンバイク(自転車)の貸し出し、​森林公園の周辺のサイクリング、遊具やプールの水遊び場などがある。アイスクリーム(400円)を食べながら休憩。

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 14:20、森林公園駐車場着。14:50出発、帰路へ。

 17:10、出発地着。

 朝から雨だったが現地に着く頃は雨が上がり、青空も見え始めて時々薄日が射す。しかし、結局夕方まで曇り。少し蒸し暑さはあったが、気温は20℃と最近の残暑と違って低くかった。標高600mも満たない低山と軽く見ていたが、久し振りの本格的な登山になった。

 下山時には、小雨か霧雨が降り始めたがすぐに止み、無事下山。トレイルランニングの男女をたくさん見かけ、健康のために週に2,3回は登っている単独の高齢の女性、犬の散歩と思われる軽装の男性などに遭遇。標識があんまり無くてよそ者にはわかりにくい山だが、やはり宇都宮市の「市民の山」、「日本百低山」にふさわしい山だった。

 

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 「大谷石とカルビー」 2019年06月18日投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2019/06/post-a364de.html

 「宇都宮と大谷石」 2018年10月22日投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/post-46a2.html

 

 ★ ★ ★ 

 「古賀志山」(標高582.8m)のほか、「御岳」(御嶽山、546m)、「赤岩岳」(536m)は一体の山塊として、これらをまとめて「古賀志山」と呼ぶこともあるそうだ。「御岳」山頂には石の祠(ほこら)があり、御嶽神社が祀られている。「古賀志山」の東側ピークにある「東稜見晴台」や西側ピーク「御岳」からは北西から北東にかけて日光連山、那須連山、東に多気山と宇都宮市街、遠くに筑波山。南に鹿沼市街、秋から冬にかけては富士山を遠望出来るという。

 「古賀志山」は低山ながら、辺り一帯は岩山が多く、切り立った岩場も多い。鎖場や岩場が連続するコースもある刺激的な山で、初級者から上級者まで楽しめる。もともと「古賀志山」は「初心者コース」と言われていたが、近年、滑落や転落などの山岳遭難が相次いで発生しているという。これは、登山道が多いため道に迷ってしまったり、上級者向けの危険なコースを未経験者が通ってしまうことなどから、栃木県山岳遭難防止対策協議会では「中級者コース」に指定した。

 一帯の数あるコースの中でも、広い駐車場のある森林公園側から出発する2つのコース(北登山道コースと南登山道コース)がお勧めだという。「古賀志山」周辺はレジャー施設として利用されており、「御岳」には切り立った奇岩を利用したロッククライミングのゲレンデとして知られ、「赤岩山」山頂にはパラグライダーの出発場となっている。

 また山麓東南側の森林公園周辺には、日本で唯一、国際自転車競技連合(UCI)よりワールドツアーに次ぐ「プロシリーズ」に認定された、アジア最高位のワンデイロードレースが開催される。大会は3日間、初日には全出場チームが顔をそろえる「チームプレゼンテーション」。2日目は宇都宮市中心部の大通りを周回するハイスピードレース「ジャパンカップクリテリウム」。最終日が、標高差185mの古賀志林道を疾走する「ジャパンカップ・サイクルロードレース」。

 2016年ジャパンカップサイクルロードレース(赤川ダム周辺) 出典:ウキメディア・コモンズ

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 森林公園駐車場に戻る途中、ジュニアクラブと思われる競技用のユニフォームを着た子どもたちが、ロードバイクに乗って森林公園周辺の坂道でタイムトライアルをやっていた。宇都宮は、渡辺貞夫を輩出した「ジャズのまち」、市民のソウルフード「餃子のまち」、そして宇都宮競輪やジャパンカップの「自転車のまち」だ。

2023年9月10日 (日)

映画「こんにちは、母さん」

 2023年9月8日、映画『こんにちは、母さん』を観る。

 2023年9月1日公開。9月13日で満92歳を迎え、これが監督作90本目という山田洋次監督の最新作。ヒロインは、吉永小百合。『男はつらいよ柴又慕情』(1972)をはじめ、『母べえ』(2008)、『おとうと』(2010)、『母と暮せば』(2015)など、約50年間に渡って数々の山田監督作品に出演する日本映画の国民的大女優は、本作で映画出演123本目だそうだ。下町に暮らす母・福江を演じる。

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 福江の一人息子・昭夫を演じるのは、昨年2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも好演した人気俳優・大泉洋。山田監督映画への出演、吉永小百合との共演はともに初めてだという。原作は、劇作家・永井愛の同名の戯曲、2001年と2004年に新国立劇場で上演された。2007年5月26日~6月16日、NHK総合テレビ「土曜ドラマ」(主演:加藤治子、共演:平田満)でも放送されている。今回の映画化の脚色は、山田監督と朝原雄三。

 舞台は東京・向島。隅田川沿いの下町。主人公は、亡夫の後を継いで一人で足袋店を営む福江(吉永小百合)。一人息子で大会社の人事部長として日々神経をすり減らす神崎昭夫(大泉洋)に、学生時代からの親友で同期入社の木部(宮藤官九郎)が、会社からリストラされそうになってからんくる。家庭では妻と別居し離婚問題、大学生になった娘の舞(永野芽郁)のわがままに頭を悩ませる。

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 ある日、昭夫は久しぶりに母・福江(吉永小百合)が暮らす東京下町の実家を訪れる。

 しかし、迎えてくれた母の様子が、おかしいことに気づく。いつも割烹着を着ていたはずの母親が、髪を染めたりして若作り、艶やかな装いでいきいきと暮らしている様子。福江はホームレスの支援活動をしていて、仲間の牧師・荻生(寺尾聰)に恋愛感情を抱いていることを知り、昭夫は戸惑ってしまう。娘は、大学も母も嫌って家出し、福江のところに転がり込んできた。

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 ほかの共演者は、昭夫の部下に加藤ローサ、ホームレスのイノさん役の田中泯(みん)、福江のボランティア仲間のタレントYOUや枝元萌ら。

 久々の実家にも自分の居場所がなくなってしまう昭夫。下町の住民たちの温かさや、今までとは違う母との出会いを通し、次第に見失っていた大事なことに気付かされてゆく。

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 やがて福江と昭夫に、思いがけない結末がやって来る。そしてエンディングでは、「母と息子」が一緒に新しい生活を始めることになるのであった。

 

 ★ ★ ★

 吉永小百合の乙女のようなかわいらしい演技を通じて、老いらくの恋が描かれている。まるで「寅さん」のような実らぬ恋。それは決してベタベタとしたものではなく、心に秘めたまま。プラトニックで安易に好きだと口にせず、そのせつなさがこの映画の恋愛を美しく、深いものにしている。

 いかにも軽い感じの宮藤官九郎は、リストラ寸前の社員の木部役を演じる。木部のキャラクターはダメ男で、しばしばコミカルな要素を持ちながらも、そのリストラに困り抜いた昭夫は、彼を見放すことなく現実の世界では信じられないほどの友情を見せる。会社のリストラという重くて生々しさは、この映画のぬくもりや笑いと感動で打ち消された。

 福江が、昭夫の子どもの頃のことを語るシーンがある。親子の役作りのため吉永は大泉の実際の子ども時代の写真を借りて、イメージを膨らませたという。鍵もかけずに近所の人たちが勝手に上がってきて茶の間でお茶を飲むという下町の、また古き良き時代への郷愁が見る人に爽やかに心を和ませ、温かい気持ちにさせる。

2023年9月 4日 (月)

新型コロナ2023.08 EG.5系統

 厚労省は8月18日、全国に約5千ある定点医療機関に8月7~13日に報告された新規感染者数は計6万7070人で、1定点あたり14.16人だったと発表。4月上旬から緩やかな増加が続いていたが、 前の週の約0.90倍で2週連続の減少となった。一方、世界的に広がり、WHOが9日に「注目すべき変異株」に指定した「EG.5.1」が、国内でも増えている。

 ところが8月25日、14~20日までに報告された患者数は、前の週から1万9686人増え8万6756人。1定点当たり17.84人、前の週の1.26倍の増加に転じた。厚労省は「お盆期間に人に会う機会が増えた影響などもあり、緩やかな増加に転じた。例年、お盆が明けた時期に感染拡大のピークを迎える傾向があり、増加傾向が続くかどうか注視したい」とした。


 2023年8月1日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.07 漸増続く」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】

【8月1日】

●コロナワクチン、「定期接種」に変更するか本格検討へ厚労省

 新型コロナワクチンの接種については、接種費用を全額公費で負担する「特例臨時接種」で行われ、ことし5月に感染症法上の位置づけが5類に変更されたあとも、今年度の接種については、無料で受けることができる。来年度以降の接種について、厚労省は「特例臨時接種」ではなく、はしかや季節性インフルエンザなどと同様に「定期接種」に変更するかどうか、今月から本格的に検討を始める方針。

「定期接種」には、費用を自治体が負担し実質無料となるケースもあるが、一部自己負担となるケースもある。厚労省は、今月開催予定の専門家の会議で議論を始め、ワクチンの効果が継続する期間などを見極めた上で「定期接種」として実施する場合の費用負担のあり方や、接種の対象者などについて、検討していくことにしている。

【8月3日】

●東京都の感染者数、前週の1.19倍 6週連続で増加

 3日、東京都庁で感染症の対策会議が開かれ、都内の新型コロナの感染者数が公表された。定点把握対象の都内419の医療機関のうち、415か所から報告があり、先月30日までの1週間で合わせて4613人で、1医療機関当たりでは11.12人となった。これは、前の週の1.19倍と、6週続けて増えていて、このうち60歳以上は1.82人と前の週の1.36倍。

【8月4日】

●新型コロナ専門家組織「夏の間、感染者数が増え続ける可能性」

 厚労省の専門家組織の会合が4日、7月7日以来およそ1か月ぶりに開かれ、最新の感染状況の分析結果が示された。それによると、新規患者数は全国的には4月上旬以降、緩やかな増加傾向が続き、5類移行後も11週連続で増加している。地域別では、先行して感染が拡大した沖縄県で減少傾向がみられるものの、42の都府県で前の週より増えている。

 新たな入院患者や重症患者は全国的に増加傾向が続いているものの、医療提供体制の逼迫はみられていないという。ただ、救急搬送が困難なケースは増加が続いているとしている。また、オミクロン株のうちの「XBB系統」が大部分を占めていて、中でもより感染を広げやすいとされる「EG.5.1」が増加しているという。

●脇田座長「重症者数の増加の詳細の解析必要」

 厚労省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田座長は現在の感染状況について「感染者数は11週連続で増加していて、感染が拡大していることは間違いない。夏休みで人出が増え、ふだん会わない人と接する機会が多くなることは流行が広がるきっかけになる」と述べた。

 そのうえで、先月中旬以降、重症者数が増えていることについて「免疫を逃れやすい新たな変異ウイルスの割合が増えてきている。重症者数の増加が、ウイルスのタイプが変わったからなのか、感染が拡大して入院者数自体が増えたからなのか、詳しい分析はできていない。モニタリングをしっかりして、研究や解析をすることが必要ではないか」と述べた。

●42都府県で前の週より増加

 厚労省によると、先月30日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナ患者数は、前週から9901人増えて7万8502人となった。1つの医療機関当たりの平均患者数は15.91人、前週の1.14倍。17週連続の増加。都道府県別では佐賀31.79人、長崎30.29人、宮崎27.21人、鳥取25.52人、熊本24.66人など、42の都府県で増加。先月30日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万1146人で、前の週と比べて1751人の増加。

 8月4日発表の定点把握(7月24日~7月30日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 厚労省は全国の流行状況について「全国的に緩やかな増加傾向が続いているほか、夏の間に感染が拡大する可能性もあり、医療提供体制への負荷が増えることも懸念される。定期的に換気するほか必要な場面でマスクを着用するなど基本的な感染対策を行って欲しい」としている。また、今後の医療の逼迫を防ぐため、厚労省は各都道府県が住民への注意喚起を行う際に参考にしてもらうための目安を作成する方向で検討することになった。

 夏の感染対策のポイント 出典:厚生労働省ホームページ

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【8月5日】

●東京 じわり入院増、身構える 「1カ月で倍」「既に第8波の半分」

 7月末現在、都内には約1750人の入院患者がいる。直近3回の流行の波のピーク時には、都内の入院患者は約4千~4500人。この水準が都内のベッド数の限界とされる。連日の猛暑で熱中症患者も増える中、医療現場はコロナ感染者の急増に警戒を強めている。都立多摩総合医療センターは7月からコロナ入院患者が増え始め、いまは1カ月前の約2倍の20~30人。高齢者は発熱や倦怠感、基礎疾患の悪化などの症状が多く、若い人も喉の痛みで食事できない人がいる。

 東京医科歯科大病院には、3日時点で重症2人、中等症11人が入院。同病院の植木室長は「7月に入ってじわじわ入院が必要な患者が増えてきた」と話す。熱中症患者が増えたこともあり、救急車は1日に平均30台ほど受け入れる。室長は「前回の第8波が急峻な山だったのに対して、今はゆっくりとじわじわ。現状は(第8波)ピーク時の半分ぐらいではないか」。過去3年の夏の流行は一気に感染者が増え、医療の逼迫につながった。

【8月7日】

●委託費詐取容疑、社員2人追送検 近ツー、新たに1.7億円

 近畿日本ツーリストによる新型コロナワクチンの業務委託費をめぐる詐欺事件で、大阪府警は7日、新たに2自治体から計約1億7千万円をだまし取ったとして、関西法人MICE支店(大阪市浪速区)の元支店長と元グループリーダーを詐欺容疑で追送検したと発表した。別の社員3人も詐欺容疑で書類送検した。府警は同支店と静岡支店の計7人を立件し、2支店で詐取したとされる総額は約12億8800万円となった。

 捜査2課によると、容疑者らはそれぞれ共謀してワクチン接種などのコールセンターの業務委託費を過大請求。大阪府から2022年4~11月に約9370万円、同府羽曳野市から2021年10~11月に約7690万円をだまし取った疑いがある。

【8月9日】

●コロナワクチン、定期接種検討 厚労省で協議、年内に結論

 新型コロナワクチン接種の位置づけについて、厚労省が9日、議論を始めた。全額を公費でまかなう現在の「臨時接種」から、自己負担が生じる可能性がある「定期接種」への移行を視野に、年内に結論を出す予定。オミクロン株が流行し、重症化率が低下したことなどから、昨年11月の財務省の財政制度等審議会が定期接種化を検討すべきだとしていた。だが、流行の継続を理由に、今年度末までは期限を延長し臨時接種が続けられている。

 9日に開かれた厚労省の専門家分科会では、「費用対効果なども考える時期」といった意見が出た。今後、別の専門家部会でウイルスの重篤性やワクチンの有効性、費用対効果などについて議論を進める。また、分科会では、9月20日からの全世代を対象にした接種についても議論。現在主流のオミクロン株XBB系統に対応したワクチンの製造販売が承認されれば、これを使用する方針を了承し、「生後6カ月以上」を接種対象とすることを決めた。

●コロナ感染拡大時「注意喚起の目安」 4指標作成 厚労省

 「定点把握」を行っている季節性インフルエンザのように都道府県が「注意報」や「警報」を出すための指標はない。厚労省は、自治体からの求めに応じて感染拡大時に都道府県が住民に注意喚起したり医療提供体制を強化したりする際の参考にしてもらうための目安として、4つの指標を作成し、9日自治体に示した。

 指標は、医療機関が受診者数などを報告するシステムに「外来が逼迫している」と回答した割合が25%を超えたとき、感染者数が直近の感染拡大時に「外来が逼迫している」と回答した割合がピークとなる2週間前の数を超えたとき、入院者数がこれまでのオミクロン株による感染拡大時の半数を超えたとき、それに確保病床の使用率が50%を超えたときの4つ。

【8月14日】

●コロナ後遺症 シニアご注意 うつ・介護リスク

 新型コロナ感染症の後遺症のリスクについて、医療法人「徳洲会」のチームが発表した。1期(2020年1月~2021年6月)、デルタ株が流行した2期(2021年7~12月)、オミクロン株が流行した3期(2022年1~6月)に分け、新型コロナ感染症と診断された約12万人の電子カルテを解析した。診断から2週間以降の「慢性期」の症状を後遺症とした。

 解析の結果、60歳以上は若い人に比べてうつ傾向になる率が高く、要介護度が上がる傾向もわかった。今井プロジェクトリーダーは「高齢者は生活の質の低下につながる後遺症のリスクが高いので、慎重に経過をみてほしい」と話した。

●全国の感染状況、前週比わずかに減少も ほぼ横ばい

 厚労省によると、今月6日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は前の週から565人減って7万7937人。また、1つの医療機関あたりの平均の患者数は15.81人で前の週の0.99倍となり、5月8日に5類に移行してから11週連続で増加が続いていたが、初めて減少となったが微減であり、ほぼ横ばいの状態といえる。

 都道府県別では多い順に佐賀34.69人、長崎28.46人、宮崎25.84人、大分24.86人、石川24.1人、前週比では青森(約1.65倍)など23都道県で増加。最も減ったのは沖縄の約0.60倍だった。このほか、今月6日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万1801人で、前の週と比べて167人の増加。厚労省は「例年、お盆明けは感染拡大のピークとなるので、高齢者と一緒に過ごす際には体調に留意し、マスクを着用するなど引き続き感染対策を行ってほしい」としている。

 8月14日発表の定点把握(7月31日~8月6日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「今月末に向けて再び増加も」

 感染症に詳しい東京医科大学の濱田特任教授は「1週間前に比べてやや減少しているが、夏休み期間で10代の学校での感染が減ったことが要因として考えられる。一方で、60代以上の高齢者は引き続き増加が続いていて、横ばいの状況」と話す。今後の見通しは、お盆で人の移動が活発になっていることで、人と人との接触が増え、感染が広がりやすい状況になっているとして「今月末に向けて再び増加に転じる可能性が高い」と指摘した。

 また現在、オミクロン株のうち、EG.5という変異ウイルスが増加傾向にあることについて「EG.5は従来のオミクロン株よりやや感染力が強いのではないかと懸念されていて、世界的にも感染が拡大している。WHOは病原性は高くないのではないかとしているが、感染力がどの程度なのか注視していく必要がある」と述べた。

【8月16日】

●7月訪日客、コロナ前の77%に回復 中国団体旅行解禁、さらに増か

 日本政府観光局は16日、7月の訪日外国人客が232万600人だったと発表した。コロナ拡大前の2019年同月(299万1189人)の77.6%に回復。中国本土からを除くと、2019年同月を3.4%上回り、コロナ前の水準を初めて超えた。国・地域別では、韓国が62万6800人で最も多く、台湾が42万2300人。中国は31万3300人で、昨年10月の水際対策緩和以降初めて上位3位に入った。2019年同月の3割ほどにとどまるが、今後は大きく回復するとみられる。

 コロナ前は中国の訪日客の約3割を団体客が占め、100万人が訪日する月もあった。2019年に比べると2割ほど円安、来年夏にはその水準に回復するという予測がある。一方で、海外旅行代金はコロナ前より高く、比較的安い団体ツアーを選ぶ客層は中国内旅行に流れるという。日本では人手不足で訪日客の受け入れ態勢が課題。中国からの団体客がコロナ前のように来日すれば、高騰している宿泊料金はさらに上がるとみられる。

【8月18日】

●全国感染状況、前週比減少も「引き続き対策を」

 厚労省によると、今月13日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナ患者数は、前の週から1万867人減って6万7070人。また、1つの医療機関当たりの平均患者数は14.16人で前の週の0.9倍で2週連続減少。都道府県別では佐賀24.59人、石川21.06人、鳥取20.76人、愛知20.7人、大分20.45人など、12道県で前の週より増加している。このほか、今月13日までの1週間に新たな入院患者は全国で1万1696人、前の週と比べて585人の減少。

 厚労省は全国の流行状況について「定点当たりの患者数は減少したものの、例年、お盆明け以降に感染が拡大する傾向がある。お盆期間の接触機会の増加がどのように影響してくるか今後も感染者数の推移には注意が必要だ。体調に留意し、引き続き感染対策を行って欲しい」としている。

 8月18日発表の定点把握(8月7日~13日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「ピークアウトと考えるのはまだ早い」

 感染症に詳しい東京医科大学の濱田特任教授は「全国の定点の感染者数は2週連続で減少しているが、学校が夏休みに入り、子どもたちの学校での感染が減ったことやお盆で休みの医療機関が増え、診断を受ける人が少なかったことなどが影響していると考えられる。ピークアウトしたと考えるのはまだ早いのではないか」と分析している。今後は、「お盆で人が一斉に移動し、人と人との接触が増えたためお盆休み明けに感染者が増加することが予想される」とする。

 その上で「引き続き人の移動が活発な時期が続くほか、部屋を閉めきって冷房をかけることで換気が不十分になることも考えられる。今月いっぱいは感染者が増加する可能性があるので、感染状況に注意していく必要がある」と話す。その上で「感染の拡大を防ぐためにもお盆の休み明けに体調不良を感じたら無理して出勤せず、検査を受けたり、自宅で療養したりすることが大切だ」と注意を呼びかけている。

●注目すべき変異株「EG.5.1」

 世界的に広がり、WHOが9日に「注目すべき変異株(VOI)」に指定した「EG.5.1」が国内でも増えている。国立感染研の報告によると、7月下旬時点でEG.5系統が国内で最も多い23.6%となった。EG.5系統は、XBB.1.9系統にさらに変異が入ったタイプで、WHOの報告では、現時点ではこれまでのXBB系統と比べて、重症度は高くなっていないが、免疫を回避する傾向にあり、今後蔓延する可能性はあるという。

 また、WHOは17日、多数の変異がある変異株「BA.2.86」についても「監視下の変異株」に指定した。まだ日本以外の数カ国でしか見つかっていない。現時点でウイルスの性質はわかっていない。

【8月20日】

●成田空港、帰国ラッシュピーク お盆休みの出入国者、去年の3.6倍

 成田空港では、お盆休みを海外で過ごした人たちの帰国ラッシュがピークを迎え、20日は午前中から大きな荷物を持った家族連れなどで混雑している。空港会社によると、ことしは新型コロナの5類移行後初めてのお盆休みとなり、8月10日から20日までに成田空港から出入国する人は77万人余りと、去年の同じ時期の3.6倍に上ると見込まれているが、新型コロナ感染拡大前の2019年と比べると7割弱にとどまっているという。

●中小倒産、「5類」でも増 コロナ支援終了、「ゼロゼロ」返済本格化

 中小企業の倒産が、コロナ下を上回るペースで増えている。新型コロナが5類移行後も、業界によっては期待されたほど業績が戻っていないため。手厚い公的支援は打ち切られ、物価高が追い打ちをかける。中小企業向けの実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済も本格化しており、今後さらに増える可能性がある。電気、ガス料金の値上げや物価高などの負担も重しになっている。

 東京商工リサーチによると、5月の中小企業の倒産件数は704件(前年同月比34.3%増)、ゼロゼロ融資の返済開始がピークを迎えた7月は758件(53.7%増)だった。7月に倒産件数が最も多かった業種は、「サービス業他」で262件(69.0%増)。全体の34.5%を占めた。そのうち飲食業が71件(73.1%増)と増加が目立った。5類移行後、インバウンド需要の盛り上がりなどを受け、サービス業のうち宿泊業などは回復傾向にあるが、飲食業は厳しい状況が続く。

【8月21日】

●観光庁長官「訪日旅行者、年内にもコロナ前水準回復の見通し」

 日本政府観光局のまとめによると、先月日本を訪れた外国人旅行者は232万人余りと推計され、新型コロナの感染拡大前の2019年との比較で77%の水準まで回復している。

 今月10日に中国から日本への団体旅行が解禁されたことについて、観光庁の高橋長官は「10月の国慶節の時期には中国からの団体旅行客が本格化すると想定。ひと月当たりの訪日客数が年内にもコロナ前の水準に戻ることも視野に入れている」。一方で「観光需要の急速な回復で宿泊施設などで人手不足が顕著になり、宿泊施設では稼働を落とさざるをえない状況も生じている」と述べ、今後、宿泊や旅行業界の人手不足の解消に向けて国として支援を強化する考えを示した。

◆コロナワクチン接種後に死亡、新たに9人に死亡一時金など支給へ

 厚労省は21日、新型コロナワクチン接種後に脳梗塞や呼吸不全、気管支ぜんそくなどで亡くなった49歳から96歳の男女9人について、予防接種法に基づいた健康被害の救済制度で、国が因果関係が否定できないと認定し、新たに認定することを決めた。厚労省は、このほか7月31日にも、21歳から90歳の38人を認定していて、新型コロナのワクチン接種で死亡一時金などの支給が認められたのは、今回の9人を含めて、10代から90代までの合わせて156人となった。

【8月24日】

●尾身会長、退任へ 組織見直しで分科会廃止、内閣感染症危機管理統括庁、発足

 政府は、有識者による「新型コロナ感染症対策分科会」と「基本的対処方針分科会」を廃止する方針を固めた。両分科会は、政府の「新型インフルエンザ等対策推進会議」の下に置かれている。会議の議長、両分科会の会長を務める尾身茂氏は退任する。来月9月1日の「内閣感染症危機管理統括庁」の発足に伴う対応で、近く発表予定。発足に合わせて分科会を廃止し、推進会議に機能を集約する方向。

 「内閣感染症危機管理統括庁」は新型コロナ対応をめぐり、病床確保の遅れなど課題が指摘されたことを教訓に、感染症対策を一元的に担う司令塔として来月1日に発足する。政府は、この新たな組織の担当相に後藤新型コロナ対策担当相を充てることを発表した。また、組織のトップとなる「内閣感染症危機管理監」には、事務の官房副長官の栗生俊一氏を起用するとしている。この人事は来月1日付けで発令される。

 尾身茂分科会会長と後藤茂之新型コロナ担当相 出典:ウキメディア・コモンズ

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【8月25日】

●尾身氏「コロナ禍、葛藤の連続」 分科会長退任 活動、書籍に

 新型コロナ対策を専門家の立場からリードした尾身氏が、政府の感染対策の一線から退く。氏は2020年2月に厚労省にできた専門家会議に参加。密閉・密集・密接の「3密」回避を世界に先駆けて呼びかけ、「第1波」のコロナ政策を主導した。新たに対策分科会の会長に就任、対策のとりまとめを担ってきた。一方で東京五輪を控えた2021年6月、「無観客での開催が望ましい」との提言するなど、政府と対立も辞さない姿勢に政府内には反発もあった。

 尾身氏は25日、取材に「コロナ禍の3年半は葛藤の連続だった。ようやく肩の荷が下りた」と振り返った。「専門家として最も大事なことは、感染状況を分析し、政府に提言すること。提言の根拠は何か、どう考えてつくったのか。これだけ大変な危機を経験したのだから、『次』に少しでも役立てないといけない」とも述べた。この間の活動などを書籍にまとめるという。

●成田空港 お盆休みの国際線利用者、コロナ禍前の76%まで回復

 東京出入国在留管理局成田空港支局によると、8月10日から20日までの11日間に成田空港の国際線を利用した人はおよそ80万3000人だった。お盆の時期に成田空港の国際線を利用した人は、コロナ禍前の2019年は過去最多のおよそ105万7000人だったが、2020年にはおよそ2万2000人と大きく減っていた。今回、コロナ禍前の76%まで回復したという。

 このうち、日本人の利用者は31万7600人でコロナ禍前の5割程度だったのに対して、外国人の利用者は48万5100人で、ほぼ同じ水準にまで回復したという。出国先では韓国が最も多く、16%を占めていて、次いで米国、台湾が多くなっている。

◆全国感染状況、前週比1.26倍 緩やかな増加に転じる

 厚労省によると、今月20日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から1万9686人増えて8万6756人となった。1つの医療機関当たりの平均の患者数は17.84人で、前の週の1.26倍となった。これまで2週連続で前の週から減少が続いていたが、今回、増加に転じた。都道府県別では多い順に、岐阜31.03人、岩手30.42人、秋田28.48人、茨城27.42人、石川26.69人などとなっていて、41の都道府県で前の週より増加している。

 このほか、今月20日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万3135人で、前の週と比べて554人の増加となった。厚労省は「お盆期間や祝日に人に会う機会が増えた影響などもあり、緩やかな増加に転じた。例年、お盆が明けた時期に感染拡大のピークを迎える傾向があり、このまま増加傾向が続くかどうか注視したい」としている。

 8月25日発表の定点把握(8月14日~20日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「さらに感染広がるか抑えられるのか 注意が必要」

 新型コロナ対策にあたる政府の分科会のメンバーで東邦大学の舘田教授は、お盆明けとなった現在の感染状況について「先週は35の地域で減少していたが、今回は九州の一部などを除き、すべてで増加している。これまでもお盆で帰省してふだん会わない人と会ったり食事をしたりすることで感染が広がることがあったが、今回も同じ状況だ。さらに感染が広がるのか、抑えることができるのか、注意して見ていく必要がある」と述べた。

そして「多くの人はかぜ症状で済むが、高齢者や基礎疾患のある人を守るという意識で、できる範囲で感染対策を行うことが大切だ。夏休みも終盤となり、8月最後に予定が入っていて、出かけたいかもしれいないが、喉の調子が悪いとか少し熱っぽいといったかぜの症状がある場合はコロナかもしれないと考えて、無理をせずに自宅で療養してほしい。飲み薬もあるので、心配な場合は医療機関を受診してほしい」と述べた。

【8月27日】

●北朝鮮、自国民の帰国認める コロナ規制を一部解除 経済活動活発化のためか

 北朝鮮がコロナ対策を緩和し、国外に滞在していた国民の帰国を認めた。「国家非常防疫司令部」が26日付で発表。朝鮮中央通信が27日に伝えた。コロナ対策を理由に約3年7カ月前に国境を封鎖した北朝鮮は、今月、自国民の帰国を受け入れ始めていたが、公式に発表した。貿易など経済活動を活発化させたい意向がうかがわれる。北朝鮮で世界的なコロナの感染状況の改善を受けた措置だといい、帰国した人は1週間、施設で隔離される。

 北朝鮮では国境の封鎖後、貿易量が減り、慢性的な食料・物資不足が深刻化した。昨年9月に中国の丹東と北朝鮮の新義州を結ぶ貨物列車の運行が正常化したが、ごく一部の例外を除いて人の往来は厳しく制限してきた。しかし、8月22日以降、北京やウラジオストクと平壌との間で、国営の高麗航空の運航を再開し、自国民を帰国させていた。今回、入国を認めたのは自国民のみ。外国人の入国がコロナ禍前の水準に戻る時期は明らかでない。

【8月28日】

●不適正申請、新たに39.1億円 コロナ無料検査補助金 大阪府

 新型コロナのPCR検査や抗原検査の無料検査事業で不適正な補助金申請が見つかった問題で、大阪府は28日、新たに府内5事業者で計39.1億円の不適正申請があったと発表した。事業者には全額返還を求めており、応じなければ警察への被害届提出などの措置をとる。これまでの発覚分と合わせ、不適正申請は、計81.9億円。府は今年6~8月に355事業者を対象に調査を実施。書面で申請内容の再確認を求め、立ち入り調査、検査の受検者へ電話での聞き取りを進めた。

 府によると、不適正申請では、事業者が登録した検査所以外の福祉施設などで集めた検体を実績として報告したり、検査を受けていないのに受けたように書類を作成したりして、検査数を水増ししていた。

【8月30日】

●コロナ病床補助金 一定の感染拡大まで支給なしで検討 厚労省

 医療機関が新型コロナ患者受け入れに備えて病床を空けた場合、「病床確保料」として国は補助金を支払ってきた。補助金の額は病床の種類によって異なり、1病床あたり1万6千円~43万6千円の空けた日数分。5類移行後も、半額に減らして支給。厚労省は、段階的に通常医療体制に戻すため、10月以降は感染状況が一定の基準を超えて拡大するまで補助金を支給しない、支給する場合も酸素投与や人工呼吸器が必要な重症患者の病床に限ることを検討している。

 病床確保料は2020年度から昨年度までの3年間で、全国医療機関に対して4兆8千億円余りが支払われていた。患者を受け入れなくても支払われるため、仕組みを疑問視する声の一方で、廃止すれば急激な感染拡大時の病床確保が困難になり、医療機関側は継続を求めていた。このほかこれまで全額公費でまかなっていたコロナ治療薬について、一定の自己負担を求める方向。今後、自治体や関係団体と調整をすすめたうえで来月中旬にも、正式決定する方針。

【8月31日】

●新型コロナ感染拡大 仕事休む人が増え、身近なところにも影響

 お盆休みを挟んで全国でも新型コロナの感染が拡大していて、東京や神奈川など首都圏でも先週の定点当たりの感染者数は5類に移行してから最多を更新している。こうした中、感染して仕事を休む人が増えることで身近なところにも影響が広がっている。川崎市にある診療所では、8月中旬ごろから患者が増えていて、一日当たり40人と7月の2倍近くの患者が訪れている。30日も発熱などの症状を訴える患者が相次ぎ、検査した人の7割ほどが新型コロナに感染していた。

 患者は幅広い年代に及んでいて、高齢者も増えているというが、重症化する人はほとんどおらず、人数は多いものの、以前のような切迫感はないという。診療所の院長は、「数だけでいうと第8波と変わらない感じですが、うつりやすいかぜのような感覚で診察できるようになった。ただ、かなり感染しやすいウイルスで、うちのクリニックでも今3人休んでいるが、会社を休む人が増えるなど社会活動への影響は出ていると思う」と話していた。

●バス会社、感染相次ぎ運休 郵便局、職員の感染で休業

 感染の影響は、身近なところにも広がっている。都内では8月、複数のバス会社で運転手の感染による人手不足で路線バスを一部、運休している。このうち、都内などで路線バスを運行する小田急バスではお盆休み明けから運転手の感染が相次ぎ、29日から一日当たり200本近くバスの本数を減らして対応している。31日も24人が欠勤した。

 このほかに、郵便局でも複数の職員の感染で休業を余儀なくされるケースがある。日本郵便によると、都内では8月に入って臨時休業する郵便局も出ていて、24日には10か所が休業、31日も4か所が臨時休業している。

●東京都 新型コロナ感染者数、2週連続増 「感染拡大に警戒を」

 都は31日、都内の新型コロナの感染状況についてモニタリング項目を発表した。それによると、定点把握の対象の都内419の医療機関のうち410か所から報告があり、8月27日までの1週間の感染者数は合わせて5956人で、1医療機関当たり14.53人。これは前の週の10.96人の1.33倍で、増加したのは2週連続。8月28日時点での入院患者数は、前の週とほぼ変わらず2684人だった。

 専門家は「感染者を年代別に見ると、10歳未満や60歳以上の増加が目立っており、特に重症化リスクが高い高齢者などの感染拡大を警戒する必要がある」として、場面に応じたマスク着用や換気などとともに、体調が悪い時は外出を控えるよう呼びかけています。

●東京都 注意喚起の際の参考数値を公表

 新型コロナの感染拡大時に、住民に注意喚起する際の参考にしてもらう目安として国が作成した4つの指標について東京都は31日、都に当てはめた数値を公表した。それによると、①医療機関が「外来が逼迫している」と回答した割合が25%を超えるとき、②感染者数が、1医療機関あたり19.78人を超えるとき、③入院患者数が2230人以上のとき、④確保している病床の使用率が50%を超えるときとしている。

 31日に発表された都のモニタリング項目では、入院患者数が2684人と国の目安を超えているが、都の担当者は「数値はあくまでも参考であり、都内の病床は逼迫している状況ではない。注意喚起にあたっては専門家による医療現場の状況確認や、数値の増加スピードなどを踏まえて総合的に判断していく」としている。

●日本人の死亡率、10年ぶり増加 2021年、新型コロナが影響

 新型コロナ感染症の感染が拡大した2021年は、日本人全体の死亡率が前年と比べ2.2%増えた、と国立がん研究センターの研究グループが発表した。増加は、東日本大震災のあった2011年以来10年ぶり。研究グループは、厚労省が公表する人口動態統計の死亡データをもとに、主要な死因別の死亡率について1955~2021年の推移を調べた。高齢者のほうが一般的に死亡リスクは高くなるため、死亡率は各年の人口構成がそろえられている。

 死亡率は、生活習慣の改善や医学の進歩によって長期的には減少傾向にあったが、2011年の1.4%増に続いての増加となった。2021年は、新型コロナ感染者が149万人で、前年の23万人から大幅に増え、死因別の死亡率にも影響が見られた。新型コロナが前年比380%増で、老衰が9.3%増、心疾患が1.4%増だった。これらが死亡率引き上げの主要因となっていた。コロナ禍で高齢者の衰弱が進んだほか、診療が制限されたことも影響したとみられる。

2023年8月24日 (木)

白駒の池周辺の山歩き

 2023年8月20日(日)、「白駒の池」周辺(長野県佐久穂町)の山歩き。
 

 上信越自動車道の佐久小諸JCTから、無料区間の中部横断自動車道(長野区間)を車で南下し、終点の八千穂高原ICで降りる。佐久地域と諏訪地域とを結ぶ国道299号(メルヘン街道)を走り、「麦草峠」から少し手前の林の中に「白駒の池」がある。池の入口には、有料駐車場(180台、普通車600円)。バス停、有料トイレ(協力金50円)があり、案内所併設の売店(おみやげ屋)が営業している。

 

 9:10駐車場着。登山装備で「白駒の池」入口の案内所・売店に寄って、9:30出発。

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 「白駒の池」遊歩道の入口。数年前に来た時は、木道は無かった。

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 コメツガ、トウヒやシラビソなど樹木が生い天然林。林床には一面に広がる苔の大群落、神秘の「苔の森」。

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 15分ほどで白駒池分岐。直進は白駒池・高見石方面、右は高見石・丸山方面。左は、白駒池キャンプ場方面。

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 左手の「白駒池キャンプ場」(青苔荘)方面に向かい、池を周遊する木道を歩く。

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 9:50「青苔荘」着、休憩。ここにはキャンプ場(テント場)もある。

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 「青苔荘」の前から「白駒池」を見渡す。写真にはないが、対岸に「白駒荘」が見える。

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 9:55「青苔荘」を出て、再び池を周遊する木道を歩き、10:20「白駒荘」着。

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 白駒池周辺には、セイタカスギゴケ(下の写真)など 485種類もの苔が生息しており、日本蘚苔類学会より「日本の貴重なコケの森」に選定されている。

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 「白駒の森」「カモシカの森」「もののけの森」など名前が付いた 苔の森が10か所あり、それぞれの森で特徴が違っていて、苔の種類も変わっているという。

 11:35「白駒荘」前を出発、池を一周した最初の白駒池分岐に戻り、1時間ばかりかけて「高見石小屋」を目指し、緩やかな登山道を登る。

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 登山道は昨日の雨で、所々でぬかるんでいる。

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 11:45、丸山・麦草峠方面と高見石・中山方面への分岐。

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 11:50「高見石小屋」に到着。

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 「高見石小屋」のすぐ先に、大きな岩が積み重なった小高い岩山の「高見石」。ザックを小屋に預け、ストックを持たず素手で登る。

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 「高見石」の展望台(標高2,225m)から見る「白駒の池」の全貌。遠くは霞んでいる。

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 青空も少し出ているが、遠雷が聞こえ始める。降雨が心配になってくる。

 「丸山」(標高2,330m)へ登り「麦草峠」への下山ルートを中止し、12:25「高見石」を出発。「白駒荘」に向かって大石がゴロゴロした急勾配の登山道を下る。

 昨日の雨で、水たまりやぬかるみ、石の上は滑りやすく、大きな石は段差がきつく、下山は神経も体力も消耗する。

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 13:20、1時間ほどで池を周遊する遊歩道に出る。

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 前に通った「白駒荘」は、分岐からすぐ。

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 しばし休憩、やがてパラパラと小雨が降り出す。レインウエアを着るほどでもないので、13:30傘を差して「白駒荘」前を出発。

 13:45白駒池入口の駐車場着。いつのまにか、雨が止んでいた。
 

 14:05駐車場を出発。もと来たメルヘン街道(国道299号)を北上し、佐久・佐久穂方面へ向かう。途中、Y字路を右へ韮崎・南牧方面(県道480号、八ヶ岳ビューロード)を走る。

 14:30「松原湖」の手前にある「八峰の湯」(ヤッホーのゆ、小海町大字豊里 )に到着。ここは標高約1270mとはいえ、涼しかった2,115mの「白駒湖」に比べれば、夏の暑さを感じる。入館料700円。

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 天然源泉かけ流しの炭酸水素塩泉。ちょっとヌルヌルするが、皮膚をなめらかにする泉質から「美肌の湯」。山の上り・下りでかいた汗を流しサッパリする。露天風呂からは、八ヶ岳連峰を望めるが、あいにく山頂付近は雲隠れ。

 「白駒の池」で雨の場合は早めに切り上げて、この施設に隣接した「小海町高原美術館」(500円)に次に入館する計画もあったが、日曜日で関越道が混みそうなので、省略して早めに帰ることにする。15:25「八峰の湯」を出発。中部横断自動車道(長野区間)の八千穂高原ICから、帰路へ。

 途中、横川SA(上り線)で休憩、夕飯に荻野屋の「峠の釜めし」をテイクアウト。数年前まで1個1,000円だったが、1,300円に値上がりしていた。

 

 ★ ★ ★

 「白駒の池」は、八ヶ岳連峰の長野県佐久穂町と小海町にまたがる北八ヶ岳を構成する山々のうち、「丸山」(標高2,330m)と「白駒峰」(位置、標高不明)に挟まれた標高2,115mに位置する。昔、白駒峰の噴火により大石川(信濃川水系)がせき止められてできた堰止湖で、「池」というが「湖」。八ヶ岳火山湖沼の中では一番大きく、2,000m以上の高地にある湖としては日本最大。周囲長は1,350m、最大深度は8.6m。

 「白駒の池」は、紅葉の名所としても人気の高いスポット。美しい湖面の周辺に赤や黄色の美しい紅葉が彩られ、見ごろは9月下旬から10月下旬 まで。約1.8Kmの遊歩道を徒歩約40分ほどで一周できる。

 往復の途中で通ってきた「八千穂高原」の一角200haに50万本の白樺林があり、近くには28haの「八千穂高原自然園」、「八千穂レイク」がある。八千穂高原の白樺林は「日本一の白樺群生地」。初夏にはヤマツツジ、ミツバツツジ、レンゲツツジ、ドウダンツツジが咲く。

 この日、下界は35℃を越す猛暑。標高2,000m以上の高原は20℃前後で涼しい中のハイキング。下山で濡れた岩道や木道で滑りやすく、だいぶ難儀だったが、何とか無事降りられた。曇り空で、午後から小雨の予報が出ていて、下山時は雷鳴が轟いた。しかし、たいした降雨もなく幸いだった。

 本ブログの関連記事 「八ヶ岳高原の新緑」 2014年6月2日投稿

   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-36fc.html

2023年8月 6日 (日)

新型コロナ2023.07 漸増続く

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。7月7日、厚労省の専門家組織は移行後2回目の会合が開かれ、全国的に緩やかな増加傾向が続いていて、特に沖縄県で感染拡大がみられると指摘した。今後、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性があるとして、基本的な対策が重要だとしている。

 7月28日厚労省は、全国に約5千ある定点医療機関に17~23日に報告された新規感染者数は計6万8601人で、1定点あたり13.91人だったと発表した。前週の約1.26倍で、香川と沖縄をのぞく45都道府県で前週より増え、4月上旬からの緩やかな増加傾向が続いている。

 2023年7月1日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.06 第9波入口」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】
 

【7月1日】

●沖縄で新型コロナ急拡大 状況把握し対策検討 厚労省

 厚労省によると、新型コロナの全国の感染状況は先月25日までの、1週間の医療機関1つあたりの平均患者数が6.13人と前の週の1.09倍となり、12週連続で増加した。このうち沖縄県が39.48人と全国で最も多く、ことし1月の第8波のピークを超える水準で感染が急拡大していて、岸田首相は30日、加藤厚労相や後藤新型コロナ対策担当相らに、沖縄県と連携しながら必要な対策を取るよう指示した。

 厚労省は、今後、沖縄県内の医療提供体制が十分かどうか、県や医療関係者などから聞き取りを行うなど状況の把握に努め、対策を検討する方針。また去年、夏の間に全国で感染が拡大したことも踏まえ、換気の徹底など基本的な感染対策を呼びかけるとともに、沖縄県をはじめ各地で高齢者などへのワクチン接種を進めていきたいとしている。

【7月5日】

●「第9波と判断が妥当」日本医師会

 日本医師会の釜萢(かまやち)常任理事は記者会見で、新型コロナの感染が沖縄県で急拡大していることなどを踏まえ、「現状は第9波と判断することが妥当」と指摘した。この中で、「5類への変更後、一貫して全国で徐々に増えているのは変わらない。ほとんどの県で、5月よりも6月のほうが報告数が増えており、沖縄県の感染者の増加が非常に著しい」と述べた。

 そのうえで、「これまで一時下がって、最も低いところになって、もう一度上がる状態がずっと持続している場合には、新しい波と考えてきた。現状は、第9波という状況になっていると判断することが妥当ではないか」と指摘。そのうえで、沖縄県では、リスクの高い高齢者などへの感染を防ぐ取り組みが最も求められるとし、ほかの地域についても、今後の感染状況を注視していく必要があるという考えを示した。

●詐欺容疑、計9億円に 近ツー元支店長ら再逮捕

 近畿日本ツーリストの支店長ら3人が新型コロナワクチンの業務委託費を詐取したとされる事件で、大阪府警は5日、3人を詐欺容疑で再逮捕し、発表した。3人は2022年5~10月、東大阪市から委託されたワクチン接種のコールセンター業務で、オペレーター数を水増しし市に約7200万円を過大請求、約3億500万円をだまし取った疑い。府警は過大請求分だけでなく、うその請求に基づいて支払われた委託費全体を詐取したと判断した。

 近ツーの親会社によると、過大請求は静岡支店などが担当していた静岡県焼津市や同県掛川市でもあり、総額は約14億7千万円に上る。府警は静岡支店も家宅捜索しており、過大請求の経緯を調べている。

【7月7日】

●米製薬会社 新型コロナ「XBB.1.5」対応ワクチン 厚労省に申請

 米製薬会社、ファイザーとモデルナは、それぞれが開発したオミクロン株の「XBB.1.5」に対応した成分を含むmRNAワクチンについてそれぞれ厚労省に承認を申請した。先月開かれた厚労省の専門家分科会で示された資料によると、モデルナのワクチンは米国で行われた臨床試験で「XBB.1.5」や「XBB.1.16」といった「XBB」系統の変異ウイルスに対して免疫の反応が確認できたという。

 またファイザーのワクチンもマウスを使った実験で「XBB」系統の変異ウイルスに免疫の反応が確認されたとしている。接種の対象となる年齢はファイザーは生後6か月以上、モデルナは12歳以上を想定している。厚労省は、ことし9月から5歳以上の人を対象に行われる予定の追加接種で「XBB.1.5」を含む「XBB.1」系統に対応する、ワクチンを使う方針を示している。

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●「現時点では「第9波」に当たらない」 後藤新型コロナ対策相

 日本医師会の釜萢常任理事は、5日、沖縄県で感染が急拡大していることなどを踏まえ「第9波」と判断するのが妥当だと指摘した。これについて後藤新型コロナ対策担当相は閣議のあとの記者会見で「全国的に少しずつ感染が拡大しているが、数字の伸び方はまださほど大きいという認識は持っていない」と述べた。

 その上で「政府として今の段階で新しい流行の波が発生しているとは特に認識していない」として、現時点では感染の「第9波」には当たらないという認識を示した。一方で沖縄県には職員を派遣するなど、必要な支援を行っているとした上で「今後ともできるかぎり注意しながら基本的な感染対策をとるようお願いしたい」と呼びかけた。

●専門家組織「夏の間に一定の感染拡大生じる可能性」

 厚労省の専門家組織の会合が7日に行われ、現在の感染状況について、全国的に緩やかな増加傾向が続いていて、地域別では46の都道府県で前の週より増えていて、特に沖縄県で感染拡大がみられるとしている。今後、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性があるとして、手洗いや換気、マスクの効果的な場面での着用などの基本的な対策が重要だとしている。専門家会合は、5類に移行後、6月16日以来2回目の開催。

 新規入院者数や重症者数も増加傾向で、医療提供体制は全国的に逼迫はみられていないものの、沖縄県では入院者数の増加や病院内でのクラスターの発生で医療への負荷が増大していると指摘。また、検出されるウイルスの種類はオミクロン株のうちの「XBB系統」が大部分を占めていて、特にインドなどで拡大し免疫を逃れやすい可能性が指摘されている「XBB.1.16」の割合が増加傾向だという。

 7月7日発表の定点把握(6月26日~7月2日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●脇田座長「九州や西日本でも増加続いている 注視する必要」

 専門家組織の会合のあと開かれた記者会見で、脇田座長は現在の感染状況について、「全国でみると沖縄県が突出して感染が広がっている状況だが、九州や西日本でも増加が続いているので、注視する必要がある。沖縄県ではかなりの規模での感染拡大が続き、医療体制も逼迫していると、沖縄県の医師から報告があった」と指摘した。その上で「夏を迎え暑くなり、人々が密閉空間に集まる機会が増えたことで、増加傾向になっていると考えられる」とした。

 「沖縄県で突出しているのは、去年の夏の『第7波』で大きな感染の波があった一方で、この冬の『第8波』は全国に比べると大きくはなく、感染から時間がたっている人が多いことや、ワクチンの接種率が全国と比べて低いこと、観光地であることなどが影響している可能性がある」と話している。一方、現在の感染状況が「第9波」にあたるかどうかについては「いずれ、感染拡大が落ち着いた時に波がどうだったのか評価をすることになる」と述べた。

【7月11日】

●コロナ禍を経験した5歳、平均で4か月余り発達遅い 京大など調査

 新型コロナの流行による生活の変化が幼い子どものに与える影響について京都大学などのグループは、2017年から2019年に1歳と3歳だった首都圏の認可保育所に通う子どもおよそ890人を対象に2年後の発達状況を調べた。運動やことば表現、それに社会性などのおよそ140項目の指標で分析。コロナ禍を経験した5歳の子どもはコロナ禍前に5歳になった子どもに比べて発達が全体で平均4.39か月遅かった。特に運動や言語表現、しつけなどの分野で遅れが大きい。

 グループでは、5歳のころの発達に重要な人との交流が制約を受けたことが遅れにつながったのではないかという。一方、3歳の子どもは明確な差はなかった。逆にコロナ禍を経験した方が、部分的には発達が進んでいた。在宅勤務で親との接触が増えたことが要因ではないかとしている。調査した佐藤助教は「こうした影響はその後の成長で十分に取り返せる。周囲の大人のコミュニケーションのほか、保育環境もコロナ前に戻していくことが大切」と話す。

【7月13日】

●東京都、コロナ感染者3週連続増 「高齢者と接触の場合は対策を」

 13日、都庁で感染症の対策会議が開かれ、この中で都内の新型コロナの感染者数について公表された。それによると、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、416か所から報告があり、感染者数は7月9日までの1週間で合わせて3152人で、1医療機関当たりでは7.58人となった。これは前の週の6.85人の1.1倍と、3週続けて増えている。

 東京都医師会の猪口顧問は「感染者数は緩やかに増加している。夏休みは人の往来が増える時期で、高齢者への感染の機会を減らすことが重要」として、重症化リスクの高い高齢者に接触する場合は状況に応じてマスクをつけるなど、基本的な感染対策をとるよう呼びかけた。このほか会議では、幼い子どもがかかりやすいウイルス性感染症のヘルパンギーナやRSウイルスについても、感染が広がっていると報告があり、換気や手洗いなどの徹底が呼びかけられた。

●コロナ検査不正227億円 5都府県、補助金取り消し

 新型コロナ検査の無料化事業で不正な申請があったとして、6月下旬までに東京や大阪など5都府県が総額約227億円の補助金交付を取り消していたことが分かった。うち約29億円は交付済みで、受給した事業者に返還を命じている。12都府県が不正の調査を始めたり、検討したりしており、金額はさらに膨らむ可能性がある。5月の「5類移行」に合わせて各種のコロナ関連事業が終了したが、こうした不正事案への対応が今後、焦点となる。

 無料化事業は、PCR検査などを希望者が無料で受けられるように、2021年12月~2023年5月に全国で実施された。国の地方創生臨時交付金を財源に都道府県が実務を担当。医療機関や医療関係会社などの事業者から報告された検査件数などをもとに、検査経費などを補助。事業者側が検査件数を水増し、補助金を過大に申請するなどの不正でこれまでに取り消された補助金交付申請は、東京都が計183億円(11事業者)、大阪府計42億8千万円(7事業者)など。

【7月14日】

●全国の感染状況 、45都道府県で前週比増加

 厚労省によると今月9日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から9361人増えて4万5108人。また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は9.14人で前の週の1.26倍となった。前の週から増加が続くのは14週連続。今月8日で、5類に移行して2か月がたったが、今回発表された今月9日までの1週間と、5類移行直後の5月14日までの1週間を比べると3.48倍となった。

 全国の感染者数は、4月上旬からの緩やかな増加傾向が続く。都道府県別では、沖縄41.67人、鹿児島17.18人、宮崎16.0人、佐賀15.33人、熊本11.99人などと、青森、沖縄両県を除く45の都道府県で前の週より増加。厚労省は「全国的に緩やかな増加傾向が続き、特に九州や中国、四国では前の週より増加幅が大きい県が多く、また沖縄県では前週よりは減少したものの依然として高い水準。引き続き感染状況を注視したい」としている。

●コロナ入院、2カ月で2.5倍
 
 9日までの1週間に新たに入院した人は 全国の新規入院患者数は6096人で、前週(5494人)の約1.11倍。5類移行直後(5月8~14日分)の2489人の約2.45倍で増加が続く。感染拡大に備え、厚労省は14日、重症者を優先的に入院させるなどの体制を確認するよう都道府県に事務連絡を出した。

 集中治療室(ICU)に入院している全国の重症患者数は7日間平均で87人で前週(93人)から6人減った。ただ、14日に公表されたコロナ患者の療養状況調査では、12日午前0時時点でICUへの入室や人工呼吸器が必要な全国の重症患者数は208人いた。5類移行直後の5月10日の99人の約2.10倍となっている。

●専門家「8月にかけ感染拡大のリスク高まる」

 政府分科会のメンバーで、東邦大学の舘田教授は、現在の感染状況について「深刻な状況となっていた沖縄では少しピークアウトした様子が見られるが、感染者の数は依然として高いレベルが続いている。全国でも感染者の増加が続き、西日本を中心にはっきりとした増加傾向が見られる地域も増えていて、8月にかけて沖縄のような感染拡大が起きるリスクが高まっている」と指摘した。

 そのうえで「これから夏休みに入り、特にお盆の時期にはふだん会わない人との接触の機会が増えたり、暑さで換気が徹底できなかったりするため、感染が拡大しやすい時期が続く。私たちの周りにウイルスが潜んでいることを思い出してもらって、できる範囲で基本的な感染対策をとってもらうことが大事」と話している。

 7月14日発表の定点把握(7月3日~9日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●ワクチン接種後に死亡 新たに6人に死亡一時金など支給へ

 新型コロナワクチンの接種後に死亡した人については、「予防接種法」に基づいた健康被害の救済制度で、国が因果関係が否定できないと認定した場合には死亡一時金などが支給されている。厚労省は14日、接種後に急性循環不全や急性心筋梗塞、急性心不全などで亡くなった、53歳から89歳の男女6人について、新たに認定することを決めた。

 このうち、5人が高血圧症や慢性心不全などの基礎疾患があったということで、厚労省は、死亡診断書やカルテの記載などを踏まえて、因果関係が否定できないと判断した。厚労省は、このほか、6月26日にも15歳から99歳の31人を認定していて、新型コロナのワクチン接種で死亡一時金などの支給が認められたのは、今回の6人を含め、合わせて109人になったという。

【7月17日】

●コロナで祭りなく、しぼむ暴力団 支援金不正受給容疑、組員24人立件

 東京の下町を縄張りにしてきた「老舗」の暴力団が警視庁に詐欺容疑で捜査され、組員全体の4分の1の24人が立件された。夏祭りなどに露店を出す「テキ屋」を稼業にしてきたがコロナ禍で細り、暴力団員であることを隠し、2020年3月~2021年11月に国のコロナ対策の支援金計約5300万円を不正受給したとして、全員が起訴された。しぼむ暴力団の象徴的な姿と受け止められている。

【7月19日】

●上半期、訪日1071万人 コロナ前の64% 円安追い風に回復、ホテル料金は高騰

 日本政府観光局(JNTO)は19日、1~6月の訪日外国人客が1071万人だったと発表。コロナ前の2019年同期比で64.4%まで戻った。国・地域別では、韓国が最多で約55万人、台湾約39万人、米国約23万人。2019年に訪日客の3割(959万人)を占めていた中国は、約21万人。中国政府が日本行き旅行商品の販売を禁止しているため。円安も追い風に東南アジアや米国、豪州からの訪日客は、コロナ前を上回った。中国以外はコロナ前の水準まで回復している。

 一方、国内旅行の宿泊者数はコロナ前に戻り、予約状況も好調。観光庁の調査では、5月の日本人の延べ宿泊者数は4115万人で、2019年同月と同水準だった。旅行大手JTBによると、夏休みに国内旅行をする人は前年比16.9%増の7250万人となり、2019年並みになる見通し。国内客と訪日客の増加があいまって、都市部の観光地は混雑し、ホテルなどの料金も高騰。人手不足が高騰に追い打ちをかけている。

●羽田第2、国際線再開 コロナ休止後3年超ぶり

 新型コロナの影響で休止していた羽田空港第2ターミナルの国際線施設が19日、営業を再開した。2020年3月のオープン後、わずか13日で休止となって以来、3年3カ月ぶりに国際線が飛び立った。施設を利用する全日本空輸(ANA)では、羽田発着の国際線便数が7月末時点でコロナ前と同水準に回復。第3ターミナルだけでは足りなくなっていた。第2では、台北、上海、香港、ロンドン行きの4路線で1日計5便を運航させる。

 国際線施設は、国内線専用だった第2ターミナルを増築して設けた。同じターミナルで国内線に乗り継ぎできることから、インバウンド(訪日客)を地方に呼び込みたい考え。海外旅行の需要も回復しつつあり、国際線の便数はさらに増える見込み。

【7月20日】

●東京都 新型コロナ感染者数、前週比1.08倍で4週連続増加

 都は、20日、新型コロナの感染状況について、モニタリング項目を発表した。それによると、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、413か所から報告があり、感染者数は今月16日までの1週間で合わせて3407人で、1医療機関当たりでは8.25人となった。これは前の週の7.58人の1.08倍と、4週続けて増えている。また、今月17日時点での入院患者数は、前の週より157人増えて1333人となり、こちらも4週続けて増えている。

【7月21日】

●全国の感染状況 43都道府県で前の週より増加

 厚労省によると、今月16日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から9042人増えて5万4150人となった。また、1つの医療機関当たりの平均の患者数が11.04人、前の週の1.21倍。前の週から増加が続くのは15週連続。都道府県別では多い順に、沖縄31.83人、佐賀23.05人、宮崎20.79人、鹿児島19.08人、長崎16.66人などとなっていて、43の都道府県で前の週より増加した。

 7月21日発表の定点把握(7月10日~16日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 このほか、今月16日までの1週間に新たに入院した人は全国で6952人、前の週と比べて632人の増加。厚労省は全国の流行状況について「感染者数の伸び幅は横ばいで、全国的には緩やかな増加傾向が続いている。特に九州や中国、四国では前の週より増加幅が大きい県が多い。一方で、沖縄県では2週連続で減少。各都道府県には夏の感染拡大に備えて医療機関の間の連携などの準備を進めるよう呼びかけていて、引き続き感染状況を注視したいとしている。

●専門家「5類に移行して緩やかな増加続いている」

 新型コロナ対策にあたる政府の分科会のメンバーで東邦大学の舘田教授は現在の感染状況について「5類に移行して2か月近くの間、全国的にみると緩やかな増加が続いている。沖縄以外の地域ではそれほど急激な増加とはなっていない。東京では新型コロナで医療の逼迫が迫っている状況ではないが、小児の感染症やお年寄りの熱中症が重なって、救急医療の現場では少し負荷がかかっている」と分析した。

 夏休みになって人が移動することやクーラーで換気を行いにくいことなど、夏場は感染が広がりやすい状況が重なるとし、「過去3年間、夏に大きな流行があり、この夏も注意が必要。これまでの夏は新しい変異ウイルスが出てきてその急激な増加で感染拡大したが、いま流行しているXBB株は全く新しい変異ウイルスというわけではない。第8波から時間がたって免疫も下がっているので、どこまで感染が広がるか、慎重に見ていく必要がある」と指摘した。

●喉の痛み 水分とれず脱水に注意

 感染症に詳しい新潟大の斎藤教授(公衆衛生学)は「国内はまだコロナに感染した経験がない人が半数近くいるため、ウイルスから見れば、付け入ることができる環境にある。さらに、夏はイベントや旅行など、人の活動性が高まるため、今後も流行が広がる可能性は高い」と指摘する。夏休みで帰省する人が増えると、高齢者世代にも感染が広がるおそれがある。「人が密集する場面でのマスク着用や、冷房をつけながらも適度な換気が効果的」と訴える。

 斎藤氏によると、現在主流の「XBB」というオミクロン株亜系統は、肺より喉に感染しやすいため、喉の痛みで飲食が難しく、脱水で体調不良となるおそれがある。気温も高く、熱中症患者が増える季節と重なることから、患者が医療機関で治療を受けられない懸念もある。「スポーツドリンクや、熱やのどの痛みを抑える市販薬を自宅に備蓄しておくことも重要」と話す。

【7月25日】

●新型コロナ 入院患者や重症者数も「定点把握」へ 9月下旬から

 新型コロナの流行状況をより正確に把握するため、厚労省は新たに入院患者や重症者の数について全国およそ500の指定医療機関から報告を受け、毎週金曜日に公表することになった。新たな入院者数や人工呼吸器を使用しているなどの重症者の数については、すべての医療機関から報告が今も行われているが、9月下旬から指定した医療機関からの報告をもとにした「定点把握」を始める予定。

 入院者数や重症者数の「定点把握」は季節性インフルエンザでも行われていて、厚労省は、1つの医療機関あたりの平均の患者数などとあわせて推移を分析していくことで流行の状況をより正確に把握していくとしている。

【7月26日】

●「すべての人への積極的接種呼びかけは不要」 釜萢常任理事

 ワクチンの無料接種は現在、高齢者と基礎疾患のある人などが対象で、9月からは5歳以上のすべての人を対象にした接種が再開する。日本医師会の釜萢(かまやち)常任理事は記者会見で「65歳以上の人や基礎疾患がある人以外が重症になる割合はそれほど高くはない。全体の感染を抑えるために無理をして接種してもらうよりも、個人で選択してもらう時期に入った」と述べ、すべての人に積極的に接種を呼びかける必要はないという認識を示した。

【7月28日】

●コロナワクチン接種後死亡の女性 「因果関係否定できず」 2例目

 ワクチンの副反応を検討する厚労省の専門家部会は28日、去年8月ファイザーの3回目の新型コロナワクチンを接種した2日後に、心臓の筋肉や膜に炎症が起きる「心筋心膜炎」で亡くなったとされる14歳の女性について、接種との因果関係は「否定できない」とした。女性はアレルギーや別のウイルスの感染がなく、接種後、短い間に心臓を含む多くの臓器で炎症を起こしていることから、ワクチン接種によって、心筋心膜炎が生じたと考えて矛盾しないとしている。

 これまでにワクチン接種後に死亡した事例として2000件以上が部会に報告されている。国の「副反応疑い報告制度」で報告された接種後の死亡例で、接種との因果関係が「否定できない」と評価されたのは去年11月に亡くなった愛知県の女性に続いて2例目。部会では、現時点ではワクチン接種に影響を与える重大な懸念は認められないとしたうえで、厚労省に接種後に胸の痛みや呼吸困難などの症状がある場合は早期の受診を勧めるなど、改めて注意喚起するよう求めた。

●コロナ、5類移行後の死者初公表 5月に死亡診断書など記載1367人

 新型コロナの死者数については、国が全国の死者数を毎日公表してきたが、ことし5月に「5類」に移行してからは行われなくなり、厚労省は、死者数の動向を迅速に把握するため、死亡診断書などに「新型コロナ」と書かれたケースを分析する新たな集計を始めた。28日はことし5月の死者数が公表され、それによると、新型コロナが最も死亡に影響した死者は610人で、前の月と比べて50人増えた。

 また、新型コロナが、死因となった病気の経過に影響を及ぼした人も含めた死者は1367人で、前の月と比べて58人減った。新型コロナが「5類」に移行してから死者数が公表されるのは初めて。厚労省は引き続き動向を注視するとしている。

●新型コロナ感染者数、45都道府県で増加 前週比1.26倍 厚労省

 厚労省は28日、全国に約5千ある定点医療機関に17~23日に報告された新型コロナの新規感染者数は計6万8601人で、1定点あたり13.91人(速報値)だったと発表した。前週(11.04人)の約1.26倍で、香川と沖縄をのぞく45都道府県で前週より増え、4月上旬からの緩やかな増加傾向が続いている。

 都道府県別でみると、最多は佐賀の27.44人で、宮崎24.47人、長崎22.94人と続く。感染が拡大していた沖縄は3週連続で減少、前週比約0.70倍の22.43人だった。前週比では新潟1.65倍、鳥取1.57倍、福井1.56倍と一部の地域で急増した。全国の新規入院患者数は8983人で、前週(7702人)の約1.17倍。集中治療室(ICU)に入院している全国の重症患者数は7日間平均で68人で前週(50人)から18人増えた。

 7月28日発表の定点把握(7月17日~23日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【7月29日】

●療養後の未返却、30万個 血中酸素測定機器、都道府県が貸与

 新型コロナの自宅療養者向けに都道府県が無料で貸し出した血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターが、全国で少なくとも約30万個返されていないことが分かった。未返却の割合は約17%、試算すると計約15億円。貸し出しは市なども実施しており、実際の未返却数はさらに多そう。貸し出し事業は2020年4月に始めた国の新型コロナ感染症緊急包括支援交付金が充てられた。今年5月に原則終了した。

 厚労省担当者は、自宅療養者の健康管理を目的としていた点を踏まえ、「コロナ対応として適切に使われたなら問題ない」。元厚労官僚の教授(行政学)は、急増した自宅療養者の安全確保を優先させたため十分な制度設計の時間がなく「仕方ない部分もある」としつつ、「公共財産。なし崩しに未返却を認めてしまっているのはミス」と指摘する。

【7月31日】

●第一三共が開発のワクチン、国内製薬会社で初承認へ

 新型コロナのワクチンは、ファイザーやモデルナなど海外の製薬メーカーのものが使われているが、ことし1月、第一三共が厚労省に承認申請を行っていた。このワクチンについて、31日に開かれた厚労省の専門家の部会で検討が行われ、有効性や安全性が確認できたとして、使用を認めることを了承した。今後、厚労省の手続きを経て、国内の製薬会社の新型コロナのワクチンとして初めて正式に承認される。

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 開発されたワクチンは、変異ウイルスではなく従来型の新型コロナに対応したもの。人工的に作った遺伝物質mRNAを投与することにより、ウイルスが細胞に感染するときの足がかりとなるスパイクたんぱく質の一部を体内で作り出し、免疫を高める。また31日は、塩野義製薬が開発した新型コロナワクチンについても検討が行われたが、有効性を評価するためのデータが十分でないなどとして、継続審議となった。

●国産ワクチンの開発、迅速に進まず

 新型コロナワクチンは、2020年以降、国内外の製薬会社が開発に乗り出した。ファイザーやモデルナ、アストラゼネカなどの海外製薬会社が開発したワクチンはおよそ1年後には実用化され、国内でも承認、接種が始まった。日本では複数の製薬会社が国産ワクチンの開発を進め、日本医療研究開発機構が研究開発を補助、厚労省が研究や生産体制の整備を支援するなど、国を挙げて開発を後押した。ただ、早期の実用化はかなわず輸入に頼った。

 専門家は「これまで新しいワクチンを作るには、5年~10年はかかってきた。3年での承認は、かなり速いスピード」と述べた。海外に比べ、開発が迅速に進まなかった理由として2021年に政府がまとめたワクチン開発に関する長期戦略では、▽研究機関の機能や人材、産学連携の不足、▽戦略的な研究費配分の不足、▽最終段階の臨床試験を行う難しさなどの課題を挙げ、「平時からの研究開発・生産体制を強化する必要がある」などと指摘している。

2023年8月 5日 (土)

富士見高原リゾート花の里

   2023年7月26日(水)、八ヶ岳山麓の富士見高原リゾート花の里(長野県富士見町)から高原周遊の旅。

 

 関東甲信越地方は7月22日が、梅雨明け。13名の日帰りバス旅行。

 8:00、集合場所の最寄り駅前をバスで出発。関越道から圏央道、中央道を走り、長野県富士見町の富士見高原へ向かう。

 小淵沢インターで降りて、10:45バスは「富士見高原リゾート花の里」駐車場に到着。

 「富士見高原リゾート」は、スキー場、ゴルフ場、花の里やハイキング、温泉のあるホテル旅館、合宿所のあるスポーツ&レクリエーション施設 、貸別荘など、オールシーズン楽しめる天空のリゾート 。

 「天空カート」の駐車場。

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 自動運転の「天空カート」(4人乗り)に分乗、標高1420mの「創造の森」までの約25分のドライブ。

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 「天空カート」はハンドルを握る必要はない。スタートボタンを押すだけで走り出し、道路に埋められた電磁誘導線をセンサーが感知しながら進む。カーブも自分で回り、指定場所で自動的に停止する。1人1,000円、「白樺エリア」入場券と合わせて1,400円。

 「創造の森」の「望郷の丘」展望台

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 展望台からの大パノラマを満喫。左手(南東)に富士山は霞んでいる。毛無山と櫛形山が見える。

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  南の方角。あいにく鳳凰三山、北岳、甲斐駒ヶ岳、鋸岳 は、雲隠れ。雨乞岳が顔を出す。

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 南西の方角は、白岩岳。

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 西の方角は、入笠山、御嶽山が見える。北西の方角には遠く乗鞍岳、諏訪盆地とその奥に奥穂高などの北アルプスが続くらしい。

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 岩石に囲まれた 「ロックガーデン」のお花畑。八ヶ岳連峰の西岳(左、標高2398m)と編笠山(右、2524m)を背景に、色とりどりの花が咲き誇る。

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 再びカートに乗って下山、アジサイや高原キスゲなと色とりどりの夏の花が群生する「白樺エリア」へ。

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 12:55、花の里を後にして清里高原(山梨県北杜市)に移動。

 13:35頃~「釜めしまこと」(北杜市高根町清里)で遅い昼食。

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 客のテーブルで蓋をしないで炊き上げる釜飯。約20分くらい待つと食べられる。一番安い「五目釜飯」、味噌汁お新香が付いて1,080円。

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 午後は長野県南牧村の直売所に立ち寄って新鮮な桃の買い物の後、北八ヶ岳の東麓に広がる佐久穂町の八千穂高原へ。

 16:00から白樺群生地で20分ほど散策。

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 帰りは、八千穂高原インターから、中部横断道、上信越道、関越道を経て、18:20に出発地に帰着した。

 この日の下界は、最高気温40℃に近い猛暑日。陽ざしは強いものの、30℃以下の涼しい八ヶ岳山麓周遊のバス旅を楽しんだ。

2023年7月 9日 (日)

再び妻沼聖天山

 2023年6月15日(木)、「妻沼聖天山」(埼玉県熊谷市)に行き、10年ぶりに本殿彫刻を観覧する。

 

 妻沼聖天山の本殿「歓喜院聖天堂」 は、「日光東照宮」のような装飾建築で「埼玉日光」と称され、国宝に指定されている。ボランティアガイドの案内で、境内をめぐる。

 

 「聖天山」は「平家物語」、「源平盛衰記」や謡曲「実盛」、歌舞伎「実盛物語」などに、武勇に優れた義理人情に厚い人柄が称えられている斎藤別当実盛が、当地・長井庄(熊谷市妻沼)を本拠とした庄司(荘官、荘園の管理人)として、本尊・聖天様を1179年(治承3年)に祀る「聖天宮」を建立したのが始まりとされる。源頼朝が参拝したほか、中世には忍(おし)城主の庇護を受け、近世初頭には徳川家康によって再興されたが、1670年(寛文10年)の妻沼の大火で焼失した。

 「歓喜院聖天堂」 は、1735年(享保20年)から1760年(宝暦10年)にわたり、20数年をかけて再建された。設計・総棟梁の妻沼の名工・林兵庫正清のもと、その子の正信の代まで、東照宮の修復の参加経験を持つ彫刻師らの優れた技術がつぎ込まれた。彩色は狩野派の絵師によるものだという。建造物の各壁面は華麗な色彩の彫刻で装飾されており、装飾建築成熟期である江戸後期の代表例で、「日光東照宮をしのぐ」ともいわれている。

 2003年(平成15年)から2011年(平成23年)までの修復工事により、当初の極彩色の彫刻が蘇り、2012年(平成24年)国宝に指定された。多くの国宝建築が、権力側によって造られたのに対し、庶民の浄財によって造られたことは、極めて希な事と評価されたという。

●境内にある「斎藤実盛の像」

 右手に筆、左手に鏡を持っているのは、実盛が老兵と悟られないように髪を墨で黒く染めて出陣したという史実にもとづいているという。

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●妻沼聖天山の境内にある「千代桝(ちよます)」

 明治期創業の老舗料亭。『蒲団』、『田舎教師』で有名な田山花袋による小説『残雪』の舞台となった店だそうだ。

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●「貴惣門」(国指定重要文化財)

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 参道の1番目の門。3つの屋根の破風よりなっている。この様式は日本には4棟しか現存しない。規模の大きさでは全国に例がないという。

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 「貴惣門」の精緻に施された立派な彫刻。

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●「仁王門」(国登録有形文化財)

 1658年(万治元年)創立と伝えられる。明治24年台風によって倒壊、明治27年に再建。

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●本殿「歓喜院聖天堂」(国宝)

 本殿は、「奥殿」・「中殿」・「拝殿」よりなる権現造り。

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●拝殿・唐破風下の「琴棋書画」【写真をクリックすると博大表示】

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 「琴棋書画」は、左から「絵を見る子ども」「碁を打つ人々」「琴を弾く男」「読み書きする子ども」の順で配されており、 中国古来の文人の必須の教養や風流事の四芸のこと。日本では室町時代以降、屏風絵や工芸品の図柄などのモチーフとして多く見ることができるという。

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 上の写真の龍の彫刻の左右には、下のような虎とユー モラスな邪鬼がいる。

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 拝観料1人700円を払って、透塀(すかしべい、玉垣)に中に入場。拝殿、中殿、奥殿の外観を参観する。

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●「中殿」金箔貼りの豪華な花頭窓

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 「拝殿」は地味で装飾は少ないが、「中殿」は「奥殿」をつなげ、彫刻・彩色が次第に増え始め、観る人を徐々に高揚させるといった権現造りの特性がよく表現されているという。「奥殿」に接する位置にある花頭窓(かとうまど)は、肉彫彫刻の双龍が互いに尾を絡め、頭を下にして水を吐く迫力溢れる構図。背板の地紋彫りが黒漆仕上げのため、双龍の金箔を浮き上がらせている。

 花頭窓の上部、軒下小壁には、写真では見えないが、狩野派の絵師による牡丹と獅子など絵画が描かれている。

●「鷲に猿」の肉彫り彫刻(奥殿南側)

 「奥殿」の極彩色の豪華な彫刻は、中央部の大羽目彫刻を中心に、軒下・屋根下の上下にも展開されている。

 右側は、激流に落ちた猿を鷲が助けている場面が描かれている。猿は人間の煩悩を表し、鷲は神様に例えられるため、「歓喜天」の慈悲深さを表現しているとされる。左甚五郎作との説もあるが、実際は石原吟八と関口文治郎の両棟梁である。

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●「福禄寿と長寿」(奥殿南側)

 七福神の福禄寿のほか、鶴、亀、竹、梅もがあるが、松が描かれていない。松は木材としても一切使われていないそうだ。これに関しては、妻沼の聖天様に「待つのが嫌い」になった理由があり、その際「松」も嫌いになったというエピソードが伝えられている。

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●「布袋・恵比寿・碁打ち大黒」(奥殿西側)

 中央の彫刻は七福神が酒を飲みながら囲碁に興じており、左の布袋が恵比寿の一手を見守り、傍らで大黒天が観戦している。神様たちがのんびり遊びに興じられる程、平和である世の中を象徴しているそうだ。修復で、棋譜も見事に描き直された。

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 その右の大羽目彫刻では、大黒天の俵で遊ぶ子供たち。

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 左の大羽目彫刻では、布袋の袋で遊ぶ子どもたちが描かれている。

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●「毘沙門天・吉祥天・弁財天の双六」(奥殿北側)

 こちらも神様が遊びに興じている彫刻。左の吉祥天と右の弁財天が双六(すごろく)に興じており、毘沙門天が見つめている。

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 右手にいる赤鬼は、右隣の大羽目彫刻(次の写真)に立つ2人の女性を見て手招きしている。

 琵琶を持つ西王母と仙桃を持つ侍女。西王母は、中国で古くから信仰された女仙、女神。

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●「唐子遊び」:南西北の三面の縁下腰羽目彫刻にある9枚の彫刻。

 いきいきした子供たちが遊ぶ姿により、平和な世が表現されている。見物者の腰の高さに嵌め込まれた彫刻で、子どもでも間近で見やすい位置にある。

・「竹馬遊三人と桜、蘇鉄」(南側右):江戸時代の竹馬は、竹の先端に馬の頭部を付けて、馬に乗る真似をした。

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・「小間取遊び七人と梅」(南側中央):小間取遊びは、日本の手つなぎ遊びの元祖。親は鬼から守り、鬼は子を触るか、列が切れると勝ち。

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・「鶏持三人と牡丹、竹」(南側左):闘鶏のようだ。

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・「凧揚げとツツジ、アヤメ」(西側右):凧の糸も彫刻されている。

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・「魚獲六人と桃」(西側中央):全員が川でフルチンになっいる。

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・「盆踊りと蔦」(西側左)

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・「獅子舞五人と芙蓉」(北側右):右から2番目の子どもは、アカンベをしている。

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・「雪転がしと梅竹」(北側中央)

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・「子ども相撲と椿」(北側左)

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●「高欄を支える猿」

 奥殿周囲の高欄の下に、まるで高欄を支えているような感じに施されている猿はユーモラス。建物を支える斗供(ときょう)に乗る形で、周囲に13頭が巡らされており可愛らしいと人気がある。

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●「瑞雲に鳳凰」(奥殿北側の「鷲と滝」の上):奥殿南側の「鷲に猿」(前掲)とその上にある「瑞雲に鳳凰」(写真なし)と対をなしている。

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 聖天堂の彫刻は、上州花輪村(現在の群馬県みどり市)の彫刻師であった石原吟八郎を中心に制作された。吟八郎は、日光東照宮の修復に参加したほか、北関東を中心とした多くの社寺建築に彫刻を残している。装飾性を含んだ彫刻技術を高めた吟八郎やその弟子たちによって、数多くの聖天堂の彫刻が作られていったという。
 
 その中で、精緻を極めた彫刻の最たる例が、奥殿の外部における南側と北側に施された一対の「鳳凰」。この彫刻は吟八郎の次の世代である名工二人によって彫られたもので、南側を小沢常信が、北側を後藤正綱が手掛けたとされる。

●唐破風下の瓶の彫刻(奥殿南西北側の上部)

・「三聖吸酸(さんせいきゅうさん)」(奥殿南側の上部) 出典:ウキメディア・コモンズ

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 三人の聖人(孔子、釈迦、老子)が酢をなめて、その酸っぱさを共感している様子を表現したもの。中国の故事に由来している。酢が酸っぱいという事実は皆同じであり、儒教、仏教、道教など、宗教や思想が異なっても、真理は一つであるという「三教一致」を意味する。

・「司馬温公の瓶割り」(奥殿西側の上部) 出典:ウキメディア・コモンズ

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 司馬温公が子ども頃、大きくてとても高価な水瓶のあたりで友達と遊んでいたところ、友達の一人がその水瓶の中に落ちておぼれそうになった。温公は、父親からしかられるのを覚悟して石で瓶を割り、友達の命を救った。それを聞いた父親は、温公を褒め称え、命はどのような高価なものよりも尊いものだということを教えた。

・猩猩酒遊図(奥殿北側の上部)

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 親孝行な男が、揚子江のほとりで酒を用意して待っていると、猩猩(しょうじょう、オラウータンに似た海に棲む想像上の動物)が現れ、酒を飲み、踊りを舞って、飲めども飲めども、尽きることのない酒壺を与えて帰ったという縁起の良い話。

 

 本ブログの「妻沼聖天山」の関連記事

 「秩父・熊谷のアジサイ名所」  2019年06月26日投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2019/06/post-5514ab.html
 

 「妻沼聖天山」 2012年12月13日投稿
   http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-8470.htm
 

 ★ ★ ★

●大聖歓喜天(だいしょうかんぎてん)

 「聖天」(仏教では、しょうでんと読む)は、正しくは「大聖歓喜天」。または「歓喜天」ともいって、象頭人身の仏法守護神で、四天王、帝釈天、吉祥天、弁財天、鬼子母神、大黒天などと同様の天部の一つ。男天・女天2体の立像が向き合って抱擁(結合)しているものが通例だという。「秘仏」として扱われており、一般に公開されることは少ないという。

 「妻沼聖天山」の本尊は、国指定重要文化財。1197年(建久8年)の作で、「秘仏」。錫杖の頭で、中心に歓喜天と二童子の像を表す。小さくて良く見えないが、拡大して見ると右図の「双身歓喜天」(高野山真別所円通寺本『図像抄』)のように、象頭人身の男天と女天が抱き合っているように見える。なお錫杖(しゃくじょう)とは、遊僧が携帯する杖。歩くとシャクシャク(錫々)という音が出る。

 妻沼聖天山の本尊「銅錫杖頭」と「双身歓喜天」の図 出典は、ウィキメディア・コモンズ

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 「妻沼聖天山」は、「日本三大聖天さま」の一つとして知られ、特に縁結び、夫婦の縁、家内安全・商売繁盛・厄除け開運・交通安全・学業進学などのあらゆる良縁を結ぶそうだ。

●庶民の浄財で再建

 「日光東照宮」では、荘厳な彫刻で飾られているが、本殿「聖天堂」の彫刻には特徴がある。つまり、龍などの威厳ある大きな彫刻ではなく、親しみやすい中国故事や七福神、唐子などモチーフにした彫刻は、聖天堂と庶民とのつながりの深さを示す。この社殿の再建には庶民たちの手で行われた。幕府・大名・豪商といった富裕層の手を借りずに、各地を回って金を募り、職人を集め、長い年月をかけて少しずつ造営されていったという。

 七福神が囲碁をしたり、子どもたちが凧揚げをしたり、相撲を取ったりと、登場人物が嬉々として遊戯に興じる場面が多く、盆と正月が一緒に来た様な賑やかさが感じられるという。こういった庶民階層の活力は、村の「お祭り」に似ていて、この「歓喜院聖天堂」が信仰だけでなく、近世庶民の娯楽施設やテーマパークとして機能していたのだろう。

●聖天様の「松」嫌い

 妻沼の聖天様は「松」(待つ)嫌いで知られている。その昔、聖天様は松の葉で目をつつかれたとか、松葉の燻(いぶし)にあったという理由で、とても毛嫌いしている。ゆえに、妻沼の人たちは松を忌(い)んでいるという。正月に門松を立てることはないし、松の木を植えない家もある。また、「松」の名のある人と結婚するとき、わざわざ改名するという。聖天様は、「待つことなく」願いをかなえてくださるそうだ。

 聖天様の「松」嫌いの理由の一つに、太田市「大光院」の呑龍(どんりゅう)様との喧嘩が伝えられている。すなわち、呑龍様との喧嘩中に、聖天様は松葉で目をつつかれたという。よって呑龍様を詣でたあとに聖天様へ行っても、ご利益はないと信じられている。「松が嫌い」という事が、この建物を建てられた江戸中期には確定していて、建築材に松の木や絵画彫刻のモチーフに松は使われていないというのは、おもしろい。

2023年7月 4日 (火)

映画「大名倒産」

 2023年6月30日(金)、映画『大名倒産』を観る。
 

  江戸時代を舞台に、鮭役人の子・小四郎は、思いがけず大名家の家督を継いで藩主となるが、藩が抱える莫大な借金を背負わされた運命を描いた浅田次郎による同名の時代小説を映画化したエンターテイメント。2023年6月23日より全国公開。

 巨額の借金を背負わされる主人公を、現在放映中のNHK連続ドラマ『らんまん』で主人公・槙野万太郎役の神木隆之介が演じ、2020年度後期のNHK連続テレビ小説おちょやん』で、浪花千栄子をモデルにしたヒロインを演じた杉咲花のほか、松山ケンイチ佐藤浩市、キムラ緑子らが共演する。監督は前田哲。

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 江戸時代の越後・丹生山藩(にぶやまはん) 。鮭役人・間垣作兵衛 (小日向文世)と平和に暮らしていたその息子・小四郎(神木隆之介)は、突然大勢の役人が家に現れ、自分が徳川家康の血を引く丹生山藩主の跡継ぎ・松平小四郎であることを知る。家督を継ぐはずの長兄が急逝し、次兄は正室の子(松山ケンイチ)だがうつけ者で江戸屋敷に住み、三兄は側室の子(桜田通)で賢いが生まれつき病弱、国元を離れたことがない。

 庶子である小四郎は、農家から下屋敷に奉公にあがっていた村娘・なつ(宮崎あおい)と、先代藩主の間に産まれた四男坊。間垣作兵衛となつの子として育てられたが、十三代目松平和泉守を継ぐことになった。実父である一狐斎(佐藤浩市)は、小四郎を藩主にしてさっさと隠居。

 庶民から殿様になって幸運をつかんだかのように見えたが、実は丹生山藩は25万両(現在の約100億円)もの借金を抱えていた。困惑する小四郎に一狐斎は、返済日に藩の倒産を宣言する「大名倒産」を命じる。借金を踏み倒してしまえば、武士も領民の皆が救われるというのだった。しかし、実は計画倒産を成し遂げた暁に、小四郎にすべての責任を押しつけ、切腹してもらうというムチャクチャな理由で家督を譲ったのだ。

 以下8枚の写真は、映画『大名倒産』のパンフレットから転載。

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 大名家や幕府役人への贈答品、莫大な費用が掛かる大名行列と、次から次へと難題が降りかかる。一国の大名になった小四郎は、丹生山藩を潰すまい、領民を苦しませることはさせまいと、幼なじみの町娘・さよ(杉咲花)、家臣の平八郎(浅野忠信)、勘定方の佐平次(小手伸也)らの協力を得て奮闘する。やがて、江戸幕府老中(勝村政信、石橋蓮司)に計画倒産を疑われてしまう。

 映画では、ハッピーエンドとなるが、エンドロールの後に「どんでん返し」が待っている。

 

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●殿の節約プロジェクト

 藩の財政を把握しようと、さよと小四郎は算盤を弾いて膨大な帳簿を調べあげる。そして「殿の節約プロジェクト」が始まった。

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➊.使用頻度の少ない武具や家具などは、綺麗さっぱり売払う。武具の鉄は、農具などにリサイクルされた。

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➋.あちこちの藩からもらった贈答品は、入れ替えてお返しにする。意味のない昔からのしきたりは中止。

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➌.来客用の豪華な布団は、必要になった時に借りるという「サブスクリプション」。長屋の町人は、季節の着物や冠婚葬祭の羽織袴、鍋釜、布団など、何でもレンタル。

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➍.近郊の農村の肥料不足に目を付けたさよは、小四郎の排泄物を売る。

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➎.地主から借りていた中屋敷と下屋敷を手放し、小四郎の住む上屋敷に兄たちとシェアハウス。江戸時代の大多数の職人や商人は、長屋のシェアハウス暮らしだった。

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➏.参勤交代では、キャンプ(野宿)で宿代をコストカット。大人数での参勤交代は、藩の財政を大きく圧迫した。いろいろコストカットを検討したが、思い切って「野宿」にした。キャンプのようで楽しい。

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 こういった知恵や工夫を凝らしながら、小四郎らは節約プロジェクトに奮闘する。しかし節約だけで25万両の借金は返せない。物語は、丹⽣⼭藩に⼤⾦を貸す金貸業、大坂の豪商・天元屋のタツ(キムラ緑子)ら一味の悪事を暴くことだ。

●SDGs(持続可能な開発目標)と江戸時代

 「殿の節約プロジェクト」のアイデアは、現代にも通じる節約術でもある。SDGsは、2015年に国際連合によって採択された17の目標。日本では、すでに江戸時代の社会でSDGsのいくつかの概念や実践が存在していた。

 ▼農村社会では「地域の自給自足の経済」が重要な考え方。農民たちは、食料や日用品を自家生産し、地域の需要を満たすことを目指した。▼資源の節約や再利用が重要視された。例えば、木材や布、紙の再利用など「循環型の資源利用」が行われていた。▼「地域の共同体意識」が強く、互助の精神が重んじられ、地域の人々は共同で農作業や災害対策を行い、持続可能な地域社会を築いていた。▼山林の保護や水質管理など、「環境保護」に関する取り組みが行われていた。

 これらの要素は、現代のSDGsと直接的に結びついているわけではないが、持続可能な開発に関する基本的な考え方や実践の一部を見ることができるという。SDGsは、現代の課題や国際的な目標を反映したものだが、我々の先人の経験や知恵からも学ぶことができる。

●歴史劇と時代劇

 映画『大名倒産』のパンフレットの中で歴史学者の磯田道史は、「史伝」、「歴史劇」と「時代劇」に分けて考えるという。史実そのものを追及する「史伝」、その時代がどいうものであったか理解しようとするのが「歴史劇」。ある時代を舞台に人間の悲喜こもごもを描き、それに共感したりするのが「時代劇」だとする。

 『大名倒産』というタイトルに引かれて映画を観覧したが、浅田次郎の時代劇小説を映画化したものだった。財政改革と言えば米沢藩の第9代藩主・上杉鷹山が有名だが、あまり関係はなさそう。 現在のSDGsに通じる話は勉強になった。セリフは現代調、着物も明るくポップ、ストーリー的にもまったく「時代劇コメディ」だった。

 たとえば『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』は、2003年に発刊された磯田道史の著書。ノンフィクションであるが、2010年にこれを原作として映画『武士の家計簿』が製作された。この映画は、江戸時代の下級武士の実際の節約術で、おもしろかった。主演は、堺雅人。

 『決算!忠臣蔵』は、東京大学史料編纂所教授・故山本博文の著書。2012年に新潮社から新書として刊行され、2019年に『決算!忠臣蔵』のタイトルで映画化されている。大阪弁や現代風セリフのコメディで、限られた予算の中で仇討を果たそうとする赤穂浪士たちの奮闘を描いていた。

 一方で、映画『超高速!参勤交代』はフィクション。実際に映画は見なかったがテレビの放映を見た。江戸時代の参勤交代を題材にした土橋章宏の脚本。土橋自身により小説化され2013年に発刊、2014年に映画化された。2015年に続編小説『超高速!参勤交代 老中の逆襲』が刊行され、2016年には映画『超高速!参勤交代 リターンズ』が公開された。時代劇としてはおもしろかった。主演は、佐々木蔵之介。

 映画を見てないが、映画『殿、利息でござる!』は2016年に公開。原作は磯田道史の評伝「穀田屋十三郎」で、仙台藩の吉岡宿場の窮状を救った町人達の記録『国恩記』を元にしている。主演は阿部サダヲ。また映画『引っ越し大名!』は、2019年公開。生涯に7回もの国替えをさせられ、”引っ越し大名”とあだ名された実在の大名・松平直矩をモデルにした土橋章宏の小説『引っ越し大名三千里』の映画化で、土橋が脚本も担当した。主演は星野源。

2023年7月 3日 (月)

新型コロナ2023.06 第9波入口

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。6月16日、厚労省の専門家組織の会合が移行後初めて開かれ、新規患者数は緩やかな増加傾向が続いていて、夏の間に一定の感染拡大が起きる可能性があると分析。また、政府分科会の会長を務めていた尾身氏は26日、岸田首相と面会した後記者団に「全国的に微増傾向、第9波が始まっている可能性がある。高齢者をどう守るかが非常に重要」と述べた。

 2023年6月1日から30日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.05 「5類」移行」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】


【6月1日】

●東京都の定点把握、前週の約1.1倍 3週続けて増加傾向

 東京は6月1日、新型コロナの感染状況のモニタリング項目について発表した。それによると、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、416か所から報告があり、感染者数の合計は5月28日までの1週間で1647人で、1医療機関当たりでは3.96人となった。これは前の週の3.53人の1.12倍で、3週続けて増加傾向にあり、専門家は「今後の動向に十分な注意が必要だ」と指摘している。

 また、免疫を逃れやすい性質が指摘されている「XBB」系統の変異ウイルスの割合が増えて、全体の9割に上った。これについて専門家は、「新たな変異株の出現やその動向に警戒が必要だ」としている。一方、入院患者数は5月29日時点で、前の週より198人多い900人となった。

【6月2日】

●全国の感染状況「緩やかな増加傾向続く」 厚労省

 厚労省は2日、全国に約5千ある定点医療機関に5月22~28日に報告された新型コロナ新規感染者数は計1万7864人で、1医療機関あたり3.63人だったと発表した。前週(3.55人)の約1.02倍と横ばいで、4月上旬からの緩やかな増加傾向が続いている。

 都道府県別では多い順に、沖縄が10.35人、岩手が5.97人、山梨が5.78人、北海道が5.72人、石川が5.58人などとなっていて25の都道府県で前の週より増加。このほか、先月28日までの1週間に新たに入院した人は全国で3235人で、前の週のと比べて117人の減少とほぼ横ばいとなっている。厚労省は全国の流行状況について「比較的低い水準にあるものの、4月以降緩やかな増加傾向が続いていて、今後も感染状況を注視したい」としている。

 6月2日発表の定点把握(5月22日~28日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●専門家「発表より多くの感染者いる可能性」
 
 政府分科会のメンバーで、東邦大学の舘田教授は、現在の感染状況について「感染者の数は全国的には横ばいになっているが、検査を受けていない人も大勢いるとみられる。発表された数字よりも、さらに多くの感染者がいる可能性に注意する必要があり、警戒レベルを上げて対応していくことが重要になっている」と話している。

 そのうえで「5類移行に伴って人々の動きが盛んになっていて、感染が広がるリスクは高まっている。子どもたちの間では、コロナ以外にもインフルエンザやRSウイルスなどに感染する患者も増えている。気温が上がってきている中で、対策の徹底は難しいかもしれないが、重症化リスクが高い人を守るために、マスクを効果的に使い、換気を徹底すること、密を避けるなど、日常生活の中で警戒感を高めてほしい」と話している。

●今年度の大学入試 試験中のマスク不要など、コロナ前の形に

 文科省は2日に今年度行われる大学入学共通テストや各大学の試験の指針となる大学入試の実施要項を公表した。新型コロナが5類に移行されたことを受け、「コロナ禍前の形に戻すことを基本とする」としていて、昨年度まで求めていた試験中のマスクの着用は不要となり、4年ぶりに個人の判断でマスクをつけずに受験することが可能となる。

 また「濃厚接触者」の特定も行われなくなるなど、各大学などが自主的な感染対策に取り組むこととされている。一方、大学入学共通テストの追試験の会場の数については、コロナ禍前が2会場であったことも踏まえ、前回の全国47都道府県50会場から大幅に縮小することも検討されている。今年度の大学入試のうち、大学入学共通テストは本試験が来年1月13日と14日、追試験が来年1月27日と28日の日程で行われる。

●夏の甲子園 コロナで制限の選手どうしの握手など容認へ

 高校野球の春夏の全国大会では、新型コロナの感染拡大後、ガイドラインを設け選手をはじめ関係者の感染対策や応援のルールなどを定めてきた。高野連などは2日、大会の臨時運営委員会を開き、新型コロナが5類に移行されたことを踏まえてこうしたガイドラインの廃止を決めた。これにともなって試合終了後に対戦したチームの選手どうしが握手することや、学校の応援団がハイタッチや肩を組むなどの行為などが認められることになった。

【6月9日】

●コロナ感染、増加傾向続く 専門家「死者増加恐らくない」

 厚労省は9日、全国に約5千ある定点医療機関に5月29日~6月4日に報告された新型コロナ新規感染者数は計2万2432人で、1定点あたり4.55人(速報値)だったと発表。前週(3.63人)の約1.25倍、42都道府県で前週より増えた。4月上旬からの緩やかな増加傾向が続いている。最多は沖縄の15.80人で前週比1.53倍。石川6.98人、北海道6.71人、千葉6.66人と続く。香川(1.76倍)、三重(1.66倍)、島根(1.56倍)など一部地域では大幅に増えた。

 国立感染研の鈴木感染症疫学センター長は「第8波ほどではないが、全国で上昇傾向が見られる。特に沖縄は以前の流行に近い状況になっており、注意が必要だ」と話した。5月29日~6月4日の全国の新規入院患者数は4003人で前週(3346人)の約1.20倍。集中治療室に入院している全国の重症患者数は7日間平均で61人で前週(58人)から3人増えた。

●「超過死亡」、例年と比べ増えていない 国立感染研

 「超過死亡」は、過去のデータから統計学的に推計される死亡者数を実際の死亡者数がどれだけ上回ったかを調べる手法で、国立感染研などは今回、全国各地の17の自治体から提供された死亡者数のデータを用いて分析した。ことし3月20日以降、先月中旬までの8週間について、超過死亡が出ているか1週間ごとに調べたところ、全国でも地方ごとでも、過去5年間のデータから推計される死亡者数と比べて顕著に増えた時期はなかったことが分かった。

 分析に当たった専門家は、新型コロナによる死者はいたが、大幅な増加はみられなかったと考えられるとしている。超過死亡は去年、新型コロナの感染が拡大した時期に顕著に増えたことが報告されているが、これまでは自治体から遅れて報告される人口動態調査のデータを使っていたため、分析におよそ3か月かかっていた。

 日本の「超過死亡」の推移 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト(6月23日付)

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●子ども、他の感染症流行 「RSウイルス」 夏風邪「ヘルパンギーナ」

 子どもを中心にコロナ以外の感染症が流行している。国立感染研が9日に公表した感染症週報によると、大型連休明けから、代表的な夏風邪の「ヘルパンギーナ」や、乳幼児が重症化しやすい「RSウイルス」の患者数が増加している。週報によると、5月22~28日の定点当たりの患者数は、ヘルパンギーナが1.33人、RSウイルスが1.95人と、いずれも3週連続で増加。ともに定点医療機関当たりの患者数は過去5年間の同時期の平均を上回る。

 ヘルパンギーナは、発熱やのどの痛みのほか、口の中に水ぶくれができ、痛みにより食事がとりにいこともある。RSウイルスは、多くは風邪のような症状で済むが、初めてかかった乳幼児は肺炎や細気管支炎になりやすい。いずれも飛沫や接触によって感染、手洗いや人混みを避けることが基本的な感染対策。RSウイルスは手指のアルコール消毒も効果がある。通常は冬に流行する季節性インフルエンザも、全国の学校で集団感染が相次いでいる。

【6月14日】

●立民、新型コロナ感染後遺症の対策法案 国会に提出

 立憲民主党は、新型コロナ感染による後遺症への対策を進めるための法案を国会に提出した。後遺症について、実態が十分に解明されておらず、適切な医療を受けられていない現状があると指摘。そして対策の実施は、国や地方自治体の責務だと明記したうえで、政府が必要な財政上の措置を講じること、さらに後遺症の診断や治療方法に関する研究を推進し、医療提供体制や相談体制を整備するとしている。

 また、立憲民主党は、新型コロナワクチンの接種によるものと疑われる健康被害などが相次いでいるとして、給付金を速やかに支給することなどを盛り込んだ法案も提出した。党の新型コロナ対策本部を務める小川淳也衆議院議員は、記者団に対し、「コロナは5類に移行したが油断できない。財政支援を含め、さまざまな体制の整備はこれからだ」と述べた。

【6月15日】

●東京都 感染者、5週続け増加傾向 「動向に注意必要」

 東京都は6月15日、新型コロナ感染状況のモニタリング項目について発表した。定点把握対象の都内419の医療機関のうち、415か所から報告があり、感染者数の合計は6月11日までの1週間で2486人、1医療機関あたりでは5.99人。これは、前週の5.29人のおよそ1.13倍で、5週続けて増加傾向にあり、専門家は「感染拡大が続いている。今後の動向に十分な注意が必要」と指摘。また、6月12日時点の入院患者数は、前の週より49人増えて1032人。

●近ツー支店長ら詐欺容疑で逮捕 ワクチン業務で5.9億円を詐取か

 旅行大手の近畿日本ツーリストが、ワクチン接種の関連業務で委託料を自治体に過大請求していた問題で、大阪府警は15日、過大請求で計約5億8900万円をだまし取ったとして15日、大阪市の「関西法人MICE支店」の支店長ら3人を詐欺容疑で逮捕した。府警は1日、過大請求で公金をだまし取った疑いがあるとして、同支店などを詐欺容疑で家宅捜索。近ツーの親会社は同日の決算会見で、判明している過大請求の総額は約14億7千万円と発表していた。

 問題は4月に発覚。近ツーは、自治体からワクチン接種予約のコールセンター業務の委託を受け、指定より少ないオペレーターの人数で別の会社に再委託。委託通りの人数などをもとに自治体に過大請求していた。近ツーの5月の発表では2020~22年度の3年間、大阪府や東大阪市、静岡県焼津市など16自治体に計約5億8400万円を過大請求。東大阪市などから委託を受けたMICE支店長は、再委託先に勤務実態を改ざんするよう指示していたという。

【6月16日】

●5類移行後初 専門家会合「夏に一定の感染拡大可能性」

 厚労省の専門家組織の会合は16日、5類への移行後初めて開かれた。新規患者数は4月上旬以降緩やかな増加傾向で、36の都道府県で前の週より増え、沖縄県では感染拡大の傾向がみられる。新規入院者数や重症者数も増加傾向で、医療提供体制は全国的に逼迫はないものの、沖縄県の状況には注意が必要。また、オミクロン株のうちの「XBB系統」が大部分を占めていて、今月下旬時点には免疫を逃れやすい可能性が指摘されている「XBB.1.16」が49%になると推定。

 さらに今後の感染の見通しについて、過去の状況などを踏まえると夏の間に一定の感染拡大が起きる可能性があり、医療提供体制への負荷が増大する場合も考えられるとしていて、感染やワクチンによって得られた免疫が弱まる状況や、より免疫を逃れやすい可能性がある変異ウイルスの増加、接触する機会の増加によって感染状況に与える影響にも注意が必要だとしている。

●脇田座長「増加傾向の規模など予測は難しい」

 専門家会合のあとの記者会見で、脇田座長は現在の感染状況について「いま増加傾向が続いており、もう少しこの傾向が続くのではないか。この傾向がどこまで続きどのくらいの規模に広がるかは現時点で予測は難しい」。また、医療体制については「それほど逼迫しているわけではないが、入院者数が少し増加している。高齢者は感染による抗体保有率が若い世代に比べて低く、重症化リスクのある人たちに感染が波及し、医療が逼迫する可能性がある」と指摘した。

 脇田座長によると、会合では「第9波の入り口」と指摘する意見も出たという。だが、現時点では今後の「感染拡大の規模を予測するのは難しい」ため、「第9波」についての評価は示さなかった。全国の新規入院者数は1週間で4330人、集中治療室に入院中の重症者数は7日間平均で79人と、ともに前週から増加。脇田座長は「医療提供体制は全国的に逼迫はしていないが、沖縄では注意が必要だ」とした。

●全国の感染状況、前週の1.12倍 「緩やかな増加傾向」

 厚労省によると今月11日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナ患者数は前の週から2731人増えて2万5163人となった。1つの医療機関あたりの平均の患者数は5.11人で前の週の1.12倍。前の週から増加が続くのは10週連続となる。

 都道府県別では多い順に、沖縄18.41人、鹿児島7.37人、石川6.58人、埼玉6.51人、北海道6.47人などとなっていて、36の都府県で前の週より増加している。東北地方は減少している地域が多いが、首都圏や西日本での増加が目立つ。移行直後と比べると全国では約2倍となっている。このほか、今月11日までの1週間に新たに入院した人は全国で4330人で、前の週と比べて208人の増加となった。

●米FDA、「1価ワクチン」の開発を推奨

 米国では、新型コロナの感染状況の変化に伴い、ワクチンの成分をどのようにするか、FDA(米国食品医薬品局)の専門家会議などで議論が重ねられてきた。FDAは16日、米国国内でこの秋以降、使用する新型コロナのワクチンとして、変異株の「XBB.1.5」に対応する「1価ワクチン」の開発を製薬各社に推奨したことを発表した。

 「XBB.1.5」は複数のオミクロン株が組み合わさり、免疫から逃れやすい性質が指摘されている。今月10日現在、米国内の新規感染者の中で最も多く、およそ4割を占めると推定。複数の製薬会社はすでに「XBB」系統に対応する成分のワクチンの開発を進めていて、今回のFDAの推奨は、開発中のワクチンの有効性に関するデータや、製薬各社が供給できる時期の情報などをもとに行った。FDAの推奨を受け、製薬各社は今後、ワクチン開発をさらに加速させるとみられる。

●9月からの接種、「XBB.1」系統対応のワクチン使用へ

 新型コロナのワクチン接種は来年3月まで無料が継続、5月から高齢者などを対象に接種が進められ、9月からは5歳以上のすべての人を対象にした接種が始まる予定。現在の接種は、従来株に対応する成分と、オミクロン株の「BA.5」などに対応する成分を含んだ「2価ワクチン」で行われている。厚労省の専門家分科会は16日、9月から始まる接種では現在流行の主流となっているオミクロン株「XBB.1」系統だけに対応する「1価ワクチン」を使う方針を決めた。

 理由について分科会では、これまでの「2価ワクチン」よりも「XBB.1」系統に対してウイルスの働きを抑える効果が期待できることや、今後、従来株が流行する可能性は極めて低いことなどを挙げている。一方「5歳以上のすべての人」としている接種の対象者について、厚労省は最新の知見や外国の状況などを踏まえ、9月の接種開始を前に改めて分科会で議論したうえで決めることにしている。

【6月19日】

●新型コロナワクチン接種後に死亡、新たに5人に一時金など支給へ

 新型コロナのワクチンの接種後に死亡した人については、予防接種法に基づいた健康被害の救済制度で、国が因果関係が否定できないと認定した場合には、死亡一時金などが支給されている。厚労省は19日、接種後に間質性肺炎の悪化や急性心不全、急性心筋梗塞などで亡くなった、72歳から91歳の男女5人について、新たに認定することを決めた。

 5人全員が高血圧症や腎臓病などの基礎疾患があったということで、厚労省は、死亡診断書やカルテの記載などを踏まえて、因果関係が否定できないと判断したとしている。接種したワクチンの種類や接種の回数などは明らかにしていない。新型コロナのワクチン接種で、死亡一時金などの支給が認められたのは、今回の5人を含めて20代から90代までの合わせて72人となった。

【6月20日】

●自宅療養で貸し出しのパルスオキシメーター、未返却相次ぐ 千葉

 新型コロナに感染して自宅療養をしていた人に貸し出されていた血液中の酸素の状態をみるパルスオキシメーターについて、千葉県内で返却されないケースが相次いでいて、自治体が速やかな返却を呼びかけている。このうち千葉市は、パルスオキシメーターをおよそ2万2000台所有し、2020年12月から先月まで、新型コロナに感染して自宅療養をしていた人に貸し出してきた。

 療養が終わった段階で郵便で返却することになっているが、市によると、先月末の時点で2割余りにあたるおよそ5000台が返却されていないという。このほか千葉県内では、少なくとも千葉県で1万6200台余り、柏市でおよそ520台、船橋市でおよそ420台が返却されていない。1台の価格は、3500円から1万2000円ほどだという。各自治体は「自治体の財産なので必ず速やかに返してほしい」と呼びかけている。

●外食チェーン、コロナ禍で停滞していた海外進出 再び加速

 外食チェーンの間では、コロナ禍の落ち込みから回復する外食需要を取り込もうと、企業の買収などを通じて海外進出を再び加速する動きが相次いでいる。「丸亀製麺」などを展開するホールディングスは、欧米などで外食需要が回復する中、海外店舗の増加ペースを再び速めていて、昨年度は63店舗の増加。今年度も、この2倍以上にあたる162店舗の増加を計画、英国のピザチェーンなどの買収やカナダでのうどん店の初出店などを予定している。

 回転ずし大手の「くら寿司」は、中国大陸への出店計画を復活させ、6月に上海に初出店した。今後ほかにも、米国を中心に出店を加速し、2030年中に海外店舗を400店舗に増やし、年間1500億円の売り上げを目指す。居酒屋などを展開する「ワタミ」がことし2月以降、台湾と韓国、シンガポールに出店、焼き鳥の「鳥貴族」ホールディングスが、1年以内に米国に出店する方針。コロナ禍で停滞していた外食チェーンの海外進出が再び加速している。

【6月22日】

●RSウイルス感染の子どもが急増 小児病棟では足りず「危機的状況」

 RSウイルスなどの感染症にかかる子どもが急増し、関東では一部の病院で小児病棟が埋まりつつある。医療現場からは「危機的な状況」という声もあがり、医師らは、手洗いなどの感染対策を呼びかけている。RSウイルスは、もともとはインフルエンザと並んで「冬かぜ」の代表と言われていた。近年は流行入りが少し早まる傾向にあり、2021年には夏に大流行した。今年も5月以降、流行の兆しを見せている。

 国立感染研によると、全国3千の定点医療機関から報告された1定点あたりのRSウイルスの患者数は、6月5~11日で2.64人(速報値)で、21年と同程度まで増えている。最多は山口県の7.16人で、奈良県の5.15人と続く。首都圏では東京都が1.72人、千葉県が2.64人、埼玉県が2.53人、神奈川県が1.51人だった。

【6月23日】

●コロナ感染者数、前週比1.1倍 11週連続で増加 沖縄で医療逼迫

 厚労省によると今月18日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は前の週から2451人増えて2万7614人。1つの医療機関あたりの平均の患者数は5.6人で前の週の1.1倍。増加が続くのは11週連続。都道府県別では多い順に、沖縄が28.74人、鹿児島が9.6人、千葉が7.57人、愛知が7.22人、埼玉が7.02人など、32の府県で前の週より増加している。今月18日までの1週間に新たに入院した人は全国で4417人で、前の週と比べて67人の減少した。

 厚労省は全国の流行状況について「全国的に緩やかな増加傾向が続いているほか、5類移行の前後で単純に比較はできないものの沖縄県ではことし1月の第8波のピークに近い水準になっているため引き続き注視したい」としている。

 6月23日発表の定点把握(6月12日~18日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●沖縄で急拡大、搬送困難事例も

 沖縄県内では新型コロナ感染が急拡大している。患者の搬送先を探すのにおよそ1時間かかるケースも発生している。県によると、今月18日までの1週間に県内54の医療機関から報告された新型コロナの患者数は1552人、1医療機関あたりの平均患者は28.74人で、前週から1.56倍に増えた。推計される患者総数は7280人で、全国最悪の水準の感染状況が続いている。県全体の入院者数は今月18日現在で507人で、重症は9人、コロナ専用病床の使用率は57.8%。

 県内の医療機関では医療提供体制が逼迫しはじめ、27の重点医療機関では7か所で救急診療、3か所で一般診療を制限している。また先週、県内では救急車を呼んだ患者の搬送先を探すのに55分かかるケースや病院への照会が10回行われたケースなど、搬送が困難な事例が複数発生しているという。県保健医療部の糸数部長は「感染を防ぐための行動を取ってもらえるよう期待したい。軽症の場合は救急の時間帯の受診は控えてほしい」と呼びかけている。

●専門家「基本的な感染対策、思い出し行動を」

 政府分科会のメンバーで、東邦大学の舘田教授は現在の感染状況について「地域差があるものの感染者の数は全国的に増加している。特に突出している沖縄県では、病床使用率が5割に達し、現場の医師からは『医療体制が極めて逼迫している』と報告されている」と述べた。その上で「小児の診療現場では、RSウイルスやヘルパンギーナなどの患者も増えている。これらの感染症がコロナとともに拡大することで逼迫が起きないよう注意する必要がある」と話している。

 そして「沖縄県以外でも急激な感染拡大が起こる可能性がある。蒸し暑くなる時期を迎えているが、感染リスクが高い場面でのマスクの着用や換気の徹底など基本的な感染対策を改めて思い出し行動してもらうことが大事。高齢者や基礎疾患がある人で、ワクチンを最後に接種してから4か月から半年が経過している人は追加接種を考えてほしい」と話している。

【6月25日】

●コロナ下で高齢者の「フレイル」増加 自粛生活で心身の活力低下

 新型コロナ感染症が流行した2020年と2021年に、高齢者の心身の虚弱(フレイル)が進んでいたとする分析結果を、国際医療福祉大学のグループがまとめた。自粛生活が続く中、懸念されていた「コロナフレイル」の増加が裏付けられたかたちになった。フレイルとは、健康と要介護の中間に位置付けられ、筋力や心身の活力が低下した状態を指す。

 フレイルを防ぐには、運動と栄養、社会参加の三つが重要で、一つでも欠けると衰弱が進むとされる。分析をした同大の広瀬助教(理学療法学科)は「コロナ下で地域活動が中止になり、友人間の交流や外出の機会が減った。社会参加の減少から、健康がドミノ倒しのように崩れている恐れがある」と語る。今後について広瀬助教は「社会活動は継続することが何よりも大事。感染対策に注意しながら、趣味や地域の活動を続けてほしい」と話している。

【6月26日】

●「第9波の可能性」 尾身氏が首相面会 高齢者守る重要性強調

 政府の新型コロナ対策分科会の会長を務めていた尾身氏は26日、岸田首相と首相官邸で面会し、感染状況や今後の見通しについて意見交換した。面会後、尾身氏は記者団に「全国的に微増傾向にあり、第9波が始まっている可能性がある。高齢者をどう守るかが非常に重要になってくる」と述べた。感染状況については、「定点観測のデータをみると、県によって多少の違いはあるが全国的には微増傾向にある」と述べた。

 微増傾向の理由は、新型コロナが「5類」に移ったことで、人同士の接触機会が増えたことだと分析。「(地域的に流行を繰り返す)エンデミックに落ち着いていく可能性もある」とも述べた。尾身氏は「致死率はそんな急激には変わっていない」との見方も示し、社会経済活動を維持しながら、高齢者や基礎疾患のある重症化リスクのある人を守ることが重要だと強調。6回目のワクチン接種を促しつつ、「新規感染者数や死者数を注意深く観察する必要がある」とした。

●松野官房長官「重症化リスク高い方など、積極的に接種検討を」

 松野官房長官は、午前の記者会見で「専門家からは、感染者数が増加傾向にあること、死亡者数の推移を注視する必要があるが、死亡率はG7各国に比べ非常に低い水準にある、定点報告のほか重層的に実態を把握する必要があることなどの指摘があった」と説明した。

 そして「専門家の意見も踏まえ、引き続き感染状況を重層的に把握するとともに、感染拡大が生じても必要な医療が提供されるよう幅広い医療機関で対応する体制への移行を進めていく。また重症化リスクが高い方などに対するワクチン接種を進めており、対象者は積極的に接種を検討してほしい」と述べた。そのうえで「今後、夏に向けて一定の感染拡大が生じる可能性がある。各地域の感染動向を見ながら、自治体や医療関係者と連携し、先手先手で必要な対応を行っていく」と述べた。

【6月27日】

●沖縄、コロナ感染急拡大 専用病床ほぼ満床、患者受け入れ困難に

 沖縄県では、今月25日までの1週間で病院に搬送された新型コロナの患者は157人と前の週のおよそ1.3倍に増え、感染が急拡大している。県内の新型コロナ専用の病床はほぼ満床、多くの病院の救急部門で新たな患者の受け入れが難しくなっている。那覇市消防局によると、搬送先が見つかるまでに照会を4回以上行い、現場に30分以上滞在せざるを得なかった救急搬送困難事案が19~25日に21件、前週から4倍に増えた。

 夏休みの観光シーズンを前に、県内のホテルの中には感染急拡大の影響で予約の申し込みが鈍り、キャンセルが出ているところもある。事業者からは、これ以上の影響の拡大に不安を訴える声があがっている。玉城知事は、26日の記者会見で「このまま感染が拡大し続けた場合、昨年の第7波を超えることも想定しなければならない」と懸念。沖縄を訪れる観光客に対し、「体調不良であれば少し旅行を延期し、十分体調を整えてから来てもらいたい」と呼びかけた。

【6月29日】

●沖縄感染増、シーズン直撃 新型コロナ報告数、突出して最多

 沖縄県は6月29日、19~25日の1週間に報告された1定点医療機関あたりの感染者数が、前週から1.37倍増の39.48人になったと発表。全国で突出している。夏休みシーズンを控え、さらに感染が広がる懸念が強まっている。1週間の感染者の総数(推計値)は1万人に達し、コロナ患者向けの病床使用率は25日時点で65.9%まで上昇。コロナ入院患者は900人前後の高い水準で推移。医療従事者が、感染・濃厚接触で休むケースも相次いでいるという。

 沖縄県医師会は29日に記者会見を開き、「過去にも全国に先行して夏前に沖縄で流行した。今後、全国でも感染拡大が起こる可能性がある」と警鐘を鳴らした。

●沖縄の医師に危機感、5類でも対策訴え

 24時間対応の救命救急センターに勤務する沖縄県立中部病院の山口医師は「昨夏の第7波をしのぐ勢いで感染が拡大している。流行はさらに拡大する可能性がある」と懸念する。第7波では、直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数が全国最多となるなど、沖縄の感染状況は全国で最も深刻となった。

 背景に、「5類」に移行したことに伴う、社会のとらえ方の変化があると山口医師はみる。「5類に移行したからといって、ウイルス自体が変化したわけではないが、『もう5類』と油断してしまっている」と指摘。街でマスクをしない人が増え、換気や手洗いなどが徹底されなくなっていると話す。夏の観光シーズンを控え、「やっと日常に戻ったという人も多いと思うが、今こそ、3年間身につけてきた基本的な個人の感染対策を徹底すべきだ」と語った。

●第8波、自宅での死者1309人 厚労省 70代以上が85%

 厚労省は29日、新型コロナ感染症の流行の「第8波」にあたる昨年11月1日から今年1月31日までの間に、自宅で亡くなった新型コロナ患者が1309人いたと発表した。約85%が70代以上の高齢者だった。厚労省によると、亡くなったのは男性743人、女性566人。80代以上が63.0%で、70代が22.6%、60代が7.3%。

 死亡直前の症状は、軽症か無症状が38.3%、中等症13.4%、重症13.8%だった。死後に陽性とわかった人は31.7%。77.5%の人に基礎疾患があった。ワクチンの接種歴は、0回が16.2%、42.4%は不明。4回接種した人も18.8%いた。自宅療養中に重症化して死亡したケースや、陽性が判明したが、がんや基礎疾患があり自宅での看取りを希望した、高齢者施設内でのクラスターで亡くなった、コロナ以外の要因で亡くなった後に陽性がわかったなどがあった。

【6月30日】

●新型コロナ患者数、緩やかな増加傾向 沖縄、「第8波」超えも

 厚労省によると、新型コロナの全国の感染状況は先月25日までの、1週間の医療機関1つあたりの平均患者数が6.13人と前の週の1.09倍となり、12週連続で増加した。このうち沖縄県が39.48人と全国で最も多く、ことし1月の第8波のピークを超える水準で感染が急拡大している、次いで、鹿児島県11.71人、熊本県8.75人、愛知県8.03人、千葉県7.77人などと、39の都府県で前の週より増加している。

 今月25日までの1週間に新たに入院した人は全国で4567人で、前の週と比べて29人の増加。厚労省は「全国ではゆるやかな増加傾向が続いているほか、沖縄県ではことし1月の第8波のピークを超える水準になっている。去年は夏に全国的に感染が拡大したので引き続き注視したい」としている。

 6月30日発表の定点把握(6月19日~25日) 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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●沖縄、別の感染症も流行 小児専門病院逼迫

 6月に入り10歳未満や10代の間で新型コロナの感染が急速に広がっているほか、風邪に似た症状を引き起こすRSウイルス感染症や、ヒトメタニューモウイルス感染症も流行している。このため小児専門の病院では対応に追われていて、沖縄本島南部の南風原町にある「県立南部医療センター・こども医療センター」では子ども向けの集中治療室(PICU)が8床あるが、6月29日時点で満床となっている。

 小児感染症内科の張医師によると、6月25日には190人近くの患者が救急外来を利用し、このうちおよそ7割が子どもでその多くが発熱の症状を訴え、5人程度が入院した。「子どものウイルス性感染症は時期に応じて主要な流行が決まっていて同時に流行することは珍しいが、この1か月ほどは新型コロナとRSウイルス感染症などが流行している。3年間行われてきた感染対策が解除され、感染症が広がりやすくなっていることが原因の1つだと思う」と指摘した。

●沖縄の医師「5類への移行で大規模な救急病院に患者集中」

 厚労省の専門家組織メンバーで沖縄県立中部病院の高山医師は、沖縄県内の感染状況について「すべての年齢層に広がり、減少へと転じる兆しはない。免疫を逃避する能力が高まったXBBウイルスが県内流行の主流になっていて、過去に感染をしていても再び感染するリスクが高まっている」。医療の現状について「行政による入院調整機能が無くなったことで、規模の大きな救急病院に患者が集中する傾向が強まり、一部医療機関が逼迫してしまっている」と指摘した。

 そのうえで「院内感染で使用できる病床が減ってしまうことや、コロナ以外の感染症で子どもが重症化する例が増えていることも大きな課題。今後、さらに感染拡大した際やインフル流行と重なるとさらに厳しい状況になることも予想され、高齢者や子どもの重症患者など個別の入院調整のあり方を議論しておく必要があるのではないか」と訴えた。

●都内クリニック「コロナ検査を希望しない患者も」

 東京・渋谷区のクリニックでは大型連休明けの時期は新型コロナの検査を受けて感染が確認された人はほとんどいなかったが、その後、徐々に増加していて、今週は1日に20人ほどに検査を行い、このうち陽性が確認されるのは6人~7人ほどだという。ただ5類移行後、検査の費用は自己負担となっていて、検査を希望しない患者もいるということで、実際にはさらに多くの患者が感染している懸念もあるようだ。

 クリニックの宮田理事長は「学校や職場などさまざまな場所で感染が広がっていることも懸念される」と話す。また、ヘルパンギーナや手足口病などほかの感染症が確認されるケースも増えていることから、のどの痛みを鎮める薬や解熱剤などが入手しにくい状況になっている。理事長は「患者さんが処方箋を持って薬局を回るような状況も発生している。周囲に感染を広げないためにも、まずはしっかりと検査を受けてほしい」と呼びかけている。

●小池都知事「感染者急増でも対応する体制は確保」

 小池知事は6月30日の定例会見で、都内の感染者数は前の週に比べてほぼ横ばいであることなどから、医療提供体制への大きな負荷にはなっていないという認識を示した。そして「コロナの教訓は、急に増える時は一気に増えることであり、もしそのような状況に陥った時でも、機動的に対応するための体制は確保している」と述べ、手洗いなどの基本的な感染防止対策を行うよう呼びかけた。

●政府分科会 舘田教授「第9波となる可能性」

 分科会メンバーで、東邦大学の舘田教授は「全国的には増加傾向はまだ緩やかだが、沖縄県では第8波以上の水準で感染が拡大している。今後ほかの地域でも感染が急増し、第9波となる可能性がある」とし、「なぜ、沖縄で感染者が増えたのか分かっていないが、これまでも全国と比べ早い時期に感染拡大する傾向があった。感染により獲得した免疫が失われたり、暑くてマスクをつけにくかったりして、増加につながった可能性がある」と分析。

 その上で「子どもの感染症が全国的に広がり、入院する子ども患者が増えていて、これがコロナ拡大と重なれば病床逼迫も考えられる。感染状況の最悪リスクに備え、行政が入院調整を支援する取り組みを進めることが重要」。感染拡大への備えとして「高齢者や基礎疾患がある人は、早めの追加接種を検討して欲しい。また重症化リスクの低い人も、風邪を引いたと思ったらコロナ感染を疑い、慎重な行動を取ることが大事」と話す。

●松野官房長官、先手先手で必要な対応 岸田首相、必要な対策取るよう指示
 
 松野官房長官は、午後の記者会見で「今後、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性があり、引き続き先々の感染動向を見据えながら、先手先手で必要な対応を行っていく」。また、沖縄県の状況ついて「入院者の増加や院内クラスターの発生により医療に一定の負荷がかかっている。沖縄県では県民への基本的な感染対策などの呼びかけに加え、医療提供体制の確保に向けた取り組みを進めており、引き続き県と密接に連携をとりつつ適切に対応していく」と述べた。

 岸田首相は30日夕方、加藤厚労相や後藤新型コロナ対策担当相らに、沖縄県と連携しながら必要な対策を取るよう指示した。厚労省は、今後、沖縄県内の医療提供体制が十分かどうか、県や医療関係者などから聞き取りを行うなど状況の把握に努め、対策を検討する方針。また去年、夏の間に全国で感染が拡大したことも踏まえ、換気の徹底など基本的な感染対策を呼びかけるとともに、沖縄県をはじめ各地で高齢者などへのワクチン接種を進めていきたいとしている。

 
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 5類移行後の「定点把握」は、感染状況の傾向や水準を把握する事が目的で、日々の正確な感染者数を表していない。これまでの1日ごとの感染者数を集計する医療機関や保健所の作業も大変であったが、「全数把握」に慣れていたため、定点あたりの数を聞いてもピンとこない。ただし、定点の数から推計患者を出すことはできるので、推計を参考にしてもらえば良いとの考えもあるようだ。

 しかし、オミクロン株が主流となって軽症者や無症状が増え、検査を受けない人も増えているという。5類移行後に、国民の意識も変わってきているので、「9波の可能性」とか「9波の入口」という話もどこか、別の世界かと思ってしまう。

 5類移行後はコロナ死者の日々の公表はなくなり、過去5年のデータから予測される死者数と比べ、どれほど実際の死者が増えたかをみる「超過死亡」の公表に代わっている。死亡届などをもとに厚労省が集計する「人口動態統計」を使うそうだ。従来の方法では超過がわかるのは2カ月後、死因別では5カ月後になるが、厚労省は、迅速にコロナの動向を把握するため、1カ月以内に示すことにしたという。

 6月9日に移行後初となる分析を公表し、「超過死亡は認められなかった」という。つまり深刻な流行拡大は起きていないとされている、これもピンとこない。1カ月後に死者のトレンドがわかっても、対策ができるのかという問題もある。

 6月26日の尾身会長の会見で、英国では感染拡大の波を経るごとに徐々に亡くなる人の数が少なくなり、感染が地域の中で一定のレベルに落ち着く「エンデミック」に移行してきている可能性があると述べた。「日本も第9波による死者数が第8波を下回るようであれば、英国から遅れてエンデミックの方向になっていくのではないか」という発言に期待したい。

2023年6月25日 (日)

栗田美術館

 2023年6月11日(日)雨の降る中を栃木県佐野市を巡った後、隣接する足利市の「栗田美術館」を参観する。

 本ブログ記事「佐野厄除大師」の続き。
  
 
栗田美術館 足利市駒場町 14:20~15:50
 
 「佐野観光物産館」駐車場から車で10分ちょっと、14:15「栗田博物館」の駐車場に到着。
  
 「伊万里焼」および「鍋島焼」の磁器のみ1万点あまりを蒐集した美術館。創立者の栗田英男(1912年12月20日 - 1996年10月4日)は、足利市の出身で、実業家、総会屋、元衆議院議員、美術評論家。陶磁器の収集対象をこの2分野に絞っているが、世界的に有数の陶磁コレクションだという。
 
 3万坪といわれる広大な敷地に、大小30あまりの施設が建つ。「本館」のほか、「大手門」、「世界陶磁館」、「歴史館」、「資料館」、「阿蘭陀館」(ミュージアムショップ)、「栗田山荘」(食事処)、「陶磁会館」(企画展示室)、「無名陶工祈念聖堂」、「栗田嵐嶽記念館」、「陶磁研究所」(工房)など。広大な庭園や展示室の設計、磁器の飾り付けまで、全て栗田本人が手がけたという。
 
 「大手門」の入場券発売所。入場料1,250円、割引きで1,000円。
 
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 入って左へ、山裾を上ると「栗田山荘」と「茶室寿光院」(写真なし)があり、おもてなしの館になっている。
 
 「本館」入口の石畳には、創立者の美術館への意気込みが彫られている。
 
 「この美術館には
  陶磁器に生涯を賭けた栗田英男が
  深い愛情と強靱な意志を持って蒐めた
  魂の記録が隅々にまで色濃く執拗に
  燻りこめている 昭和五十年 秋」
 
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 「本館」は、日本の美を追究した世界屈指の陶磁器の殿堂だという。白い漆喰壁が特徴の本館建物は、BCS賞(建設業連合会の賞)を受賞した。ここに「伊万里」「鍋島」の名品を常時約400点展示してある。撮影禁止。
 
  「本館」の展示室 鍋島色絵岩牡丹植木鉢文大皿 出典:栗田美術館のパンフレット

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 「鍋島色絵岩牡丹植木鉢文大皿」は重要文化財。鍋島尺皿の中でもひときわ格調高い名品といわれている。
 
 「本館」裏手にある「資料館」。「伊萬里」「鍋島」の焼き物に関する資料が、1、2階に年代別に展示資料が並んでいる。

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 その先の松の木の丘を登ると、「歴史館」がある。有田泉山(いずみやま)の白磁鉱で製作した磁器タイルを建物の内外に使用した塔のような建物。
 
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 有田泉山は、日本の磁器発祥の地。17世紀初めに朝鮮人陶工・李参平が磁器の原料である磁石を発見し、日本で初めて磁器が誕生した。
 
 海外へ輸出した伊萬里大壺展示室(写真撮影可)から階上の展示室へと続き、地階に講堂がある。
 
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 伝説のロックバンド「クイーン」のフレディ・マーキュリーは、1986年9月にプライベートで来日し、「栗田美術館」を訪れたことはファンの間ではよく知られている。
 
 左は展示室の写真、右はシンコー・ミュージック・ムック(2019年02月発売)より
 
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 日本と日本文化を愛してやまなかったフレディは、来日の度に興味は増し、招き猫から始まり、着物、浮世絵、陶磁器、果ては火鉢など多くの古美術品を日本で収集し、ロンドンに持ち帰っていたという。1991年に45歳の若さでこの世を去った。フレディの人生を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』公開(2018年)を機に、若い参観者が増えているという
 
 「歴史館」の最上階は広々ゆったりとした応接室で、眺めのよい展望室となっていて、「足利フラワーパーク」を見下ろす。
 
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 「陶器会館」は、「クイーン」のレコードや写真などのほか、ゆかりのグッズも展示されている。また館内には喫茶室もある。陶磁器への造詣が深かったフレディが 1986年9月に訪問した「栗田美術館」は、ファンの間では「聖地」となっている。

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 「陶器会館」の前にある栗田氏家族の銅像「志向の像」。1985年(昭和60)11月、開館10周年に建立された。左が美術館建設の構想と決意をしたときの創立者の栗田英男。書家・陶芸家で1981年(昭和56)に他界した弟の嵐嶽(らんがく、右)と、美術館を見ることなく1967年(昭和42)、86歳で天寿を全うした母のよし。
 
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 栗田嵐嶽は、栗田英男の実弟で孤高の芸術家。嵐嶽は、生前作品を公開することはなかったが、絵画、書、陶磁器と幅広く創作した。「栗田嵐嶽記念館」には、嵐嶽の作品を展示しているという。
 
 「阿蘭陀館」は、江戸時代の長崎出島にあった商品陳列所を模して建てられた陶磁器専門のミュージアムショップ。有田焼の作品を中心に豊富に取揃え展示・販売している。
 
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 15:50、「栗田美術館」を後にして、帰路へ。17:30自宅着。
 
 
 ★ ★ ★
 
・有田焼と伊万里焼
 
 佐賀藩主・鍋島直茂は豊臣秀吉の朝鮮侵攻に参加した際、朝鮮から協力した農民や漁民、とくに陶工など多数の人たちを連れ帰って帰化させた。その中の一人、李参平(日本名:金ヶ江三兵衛)が17世紀初め、1610年代に泉山の白磁鉱を発見、上白川天狗谷(てんぐだに)に築窯したのが近世陶磁器を代表する「有田焼」の創始とされる。
   
 「有田焼」は、有田(鍋島藩、佐賀県有田町)を中心とする肥前国で生産された磁器の総称。製品の主な積み出し港が伊万里であったことから、消費地からは「伊万里」と呼ばれた。「三川内焼」(平戸藩、長崎県)、「波佐見焼」(大村藩、長崎県)などのほか「鍋島焼」も含まれる。
 
 「伊万里」は創始から約100年の間に技術と生産体制が発展し、染付とともに1640年代から色絵の生産も始まった。1660年代からは、オランダ東インド会社の注文による輸出用磁器が生産され、「柿右衛門様式」や「金襴手(きんらんで)様式」の華麗な色絵磁器が完成し、国内外で広く知られるようになった。18世紀以降は、一般内需向けの大小さまざまな食器が生産され、各地に供給され消費拡大していった。
  
・初期伊万里
  
 「伊万里焼」の中で1610~40年代頃までに作られたものは「初期伊万里」と呼ばれる。素焼きをしない生掛け焼成のため、肉厚の大らかな器形をしている。力強く自由な筆致で描かれる文様は素朴で味わいがあり、中国の古染付(こそめつけ)の影響を受けたものも多く見られる。初期伊万里を焼いた窯跡からは染付を主に、青磁や銹釉(さびゆう)、瑠璃釉(るりゆう)などを用いた豊富な内容の製品が出土している。

 この「初期伊万里」は絵付けの発色が安定せず、生地も厚く歪みや押指の跡が残るなど粗雑な部分があり、次第に「古九谷」や「柿右衛門」などに押され市場から姿を消してしまった。
 
 染付楼閣山水文皿 1640-1650年代 佐賀県立九州陶磁文化館 出典:ウキメディア・コモンズ

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・古九谷(初期色絵)

 1640年代には有田西部の山辺田窯(やんべたがま)などで色絵磁器の生産が創始され、国内向けの大皿などの色絵磁器製品が生産された。これらは長年、加賀(石川県)の九谷が産地であると誤って考えられていたことから「古九谷」と称され、現代では「古九谷様式」あるいは「初期色絵」と称されている。

 色絵牡丹蝶文大皿(初期色絵)東京国立博物館 出典:ウキメディア・コモンズ

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・鍋島焼
 
 1640年頃からは鍋島藩が、将軍家や諸大名などへの贈答用高級磁器をもっぱら製造する藩窯が活動を開始。鍋島は有田近郊の大川内山(おおかわちやま、伊万里市南部)に1670年代に本格開窯、「伊万里」の製品とは違った独特の形式美を持つ精緻な磁器を生産した。日本の磁器の最高峰に位置づけられている。その製品は食器類で、一尺、七寸、五寸など、円形木盃形の皿が主体で、純日本的な意匠。これらの製品を今日、「鍋島様式」あるいは「鍋島焼」と呼んでいる。

 鍋島 色絵芙蓉菊文皿 出典:ウキメディア・コモンズ
  
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・柿右衛門様式

 「伊万里焼」の輸出と、これに伴う技術革新により生まれたのが「柿右衛門様式」。オランダ東インド会社からの厳しい品質注文を受け1670年代に完成、素地や釉薬(ゆうやく)が改良され、白磁の地にほとんど青味のない「濁手」(にごしで)と呼ばれる乳白色の素地が作られた。この素地に色絵で絵画的な文様を表したものを「柿右衛門様式」と称する。皿や鉢などの食器以外に、人形類も多く作られた。ヨーロッパの王侯貴族から高い評価を受けた。

 柿右衛門 大壺 東京国立博物館蔵 出典:ウキメディア・コモンズ

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・金襴手様式
 
 経済活動と町人の文化が栄えた元禄時代、この1690年代に始まった新たなスタイルが「金襴手(きんらんで)」。染付の素地に赤、金などを多用した絵付を施した製品が作られるようになった。この種の様式のものがヨーロッパ向けの輸出品となった。国内向けは「型物(かたもの)」と呼ばれる特別注文品、輸出向けは王侯貴族の居館を飾った大皿や大壺がその代表。
 
 色絵金襴手唐花文皿 出展:国立東京博物館 画像検索
  
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・伊万里焼と古伊万里

 「伊万里焼」と「古伊万里」の大きな違いは、骨董的価値。江戸時代に有田で焼成された歴史的、骨董的価値のある作品を「古伊万里」と呼び、明治以降に現在の佐賀県伊万里市で焼成された陶磁器のことを「伊万里焼」と呼ぶ。明治初期に焼き物を産地名で呼ぶようになり、現在の「伊万里焼」と呼ばれる陶磁器が誕生することになった。「古伊万里」はヨーロッパの王侯貴族達に愛され、今でも「オールドイマリ」(Old Imari)として世界中に熱烈なコレクターが存在する。

  中国では1644年明王朝が滅び、その混乱期にヨーロッパで重宝されていた中国の磁器の輸入も途絶えてしまう。それを埋めるために、オランダ東インド会社は中国製陶磁器を見本としてヨーロッパ人の好みに合う製品を制作するように依頼し、「伊万里焼」の海外輸出が始まった。中国製磁器の輸出が再開されてからは、東南アジア方面の市場は中国製磁器に奪還されたが、ヨーロッパ方面への「伊万里焼」の輸出は継続したという。

・酒井田柿右衛門

 江戸時代、有田の陶芸家、および代々その子孫(後継者)が襲名する名称。初世(1596-1666)は白磁、染付の改良に努めた後、長崎で赤絵の技法を学び、1640年ころに日本最初の赤絵焼成に成功した。作品は乳白色の素地に細い線で雲竜、鳳凰、松竹梅などの文様を描き気品高い。初世のころから外国に輸出され、西欧でも模倣作が作られた。その後は子孫の第15代酒井田柿右衛門(1968年~)は、2014年に襲名した。

 酒井田家は、有田皿山(さらやま、有田焼の生産地)の中心部から離れた南川原(なんがわら)山に窯を築き,伊万里焼とは性質を異にする上質の色絵磁器を焼成した。濁手(にごしで)などといわれる純白の白磁に、赤、青、青緑、黄、紫などの色絵具を用いて花鳥人物文様などを描いた色絵磁器(赤絵)は、「柿右衛門様式」として知られている。

 1912年に『名工柿右衛門』という歌舞伎が制作され、11代片岡仁左衛門が主演した。11代柿右衛門と親交のあった仁左衛門のはまり役だったとされ、その後も他の俳優達によって演じられた。内容は史実に基づいておらず、フィクションである。夕日に映える柿の実を見が赤絵磁器を作ったとする話が、『陶工柿右衛門』や『柿の色』の題で大正時代の小学校の教科書に掲載され広く知られたという。筆者の子どもの頃にそんな物語を聞いたが、創作だとは知らなかった。

2023年6月24日 (土)

佐野厄除大師

 2023年6月11日(日)、雨の降る中を「唐沢城趾」に行った後、午後、栃木県佐野市の「佐野厄除大師」などを巡る。

 本ブログ記事「唐沢山城趾」の続き。
  
  
●佐野市観光物産会館 佐野市金井町 12:30~
 12:30、「観光物産会館」駐車場に車を駐める。「佐野厄除大師」の入口正面にある佐野市最大級の品揃えを誇る物産館。お土産用佐野らーめん、そば、耳うどん、お菓子、地酒、天明鋳物・桐製品などの伝統工芸品、厄よけ土産、さのまるグッズ、地元で採れた新鮮野菜など。
  
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●佐野らーめん 12:50~
 「観光物産会館」や「佐野厄除大師」の周辺にらーめん店が密集している。テーブル席と座敷あわせて50席の「大師庵」(物産館の左隣)に入店。「佐野厄除らーめん」(1,050円)を注文した。一度、東北自動車道の佐野サービスエリアで「佐野らーめん」を食べたことがあったが、その味をすっかり忘れていた。あっさりとした醤油味で、美味しい。
 
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 大師庵の「佐野厄除らーめん」 出典: 佐野らーめん会 公式ホームページ 
 
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 中国の料理人が「青竹打ち」を伝授したのが「佐野らーめん」のルーツといわれている。市内には100年以上の歴史を持つ老舗をはじめ、150店舗以上のらーめん店がそれぞれの味を競っているという。醤油ベースの澄んだスープにコシのあるちぢれ麺を提供している店が多い。太さは中太から細麺、平打ちなど、店によって異なるという
 
 「青竹打ち」が特徴ではあるが、竹打ちを再現出来る製麺機も登場しており、必ずしも全ての佐野らーめん店が手打ちの「竹打ち」というわけではない。飽きの来ないさっぱりとした味が特徴。トッピングで異なるが、650円~1,000円前後。佐野名物イモフライ(130円)も出す店もある。
 
  
●佐野厄除大師 佐野市金井上町 13:10~
 
 「観光物産会館」の道路を挟んだ対面に、「厄除大師」の入口(山門)がある。

 「惣宗寺」(そうしゅうじ) は、天台宗寺院で、山号は「春日岡山」。一般には「佐野厄除大師」の通称で知られる。藤原秀郷が944年に奈良の僧・宥尊(ゆうそん)上人を招いて開いたという。厄除元三慈恵大師を安置し、厄除け、方位除け祈願。正月になると大祭を開催し、厄除けをはじめ、身体安全や心願成就などのご利益があるという。
 
 青柳大師(前橋市・龍蔵寺)、川越大師(川越市・喜多院)と共に「関東の三大師」の一つに数えられることが多く、毎年の年末年始には関東地方を中心にテレビCMが多く放送されるため広く知られており、初詣の参拝客で賑わう。弘法大師を祀った真言宗の「関東厄除三大師」(西新井大師・川崎大師・ 観福寺大師堂)とは全く別だという。
 
 惣宗寺山門(佐野市指定文化財)は、佐野城の移築門といわれている。屋根には金箔の葵のご紋。
 
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 厄除元三慈恵大師一千年御遠忌を記念して建立された「金銅(きんづくり)大梵鐘」は、 人間国宝の鋳金工芸作家・香取正彦氏によって謹製され、日本一大きな金の梵鐘(つりがね)で、 直径 1.15m、重量約2トン。
 
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 金銅は、銅製鋳物(いもの)に金箔ではなく金めっき(純金を水銀で溶かして塗る鍍金(ときん))を施したもので、仏像などはあるが、鐘は始めて見た
 
 「パゴダ供養塔」は、4mの方形基壇に6つの相輪と1つの塔身水煙(すいえん)をつけた 宝珠からなり、高さ8mを有する。三界萬霊有縁無縁の霊、戦争災害死者、事故横難(おうなん)死者、水子霊などを供養する為に造られた塔。製作者は、彫刻家の田村了一氏。パゴダは、ビルマ様式の仏塔。
 
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 「佐野厄除大師」本堂。ここにも屋根に金箔の装飾。
 
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 「惣宗寺」には水子地蔵尊もあり、供養に訪れる人も多いそうだ。
 
 徳川家康の遺骨を久能山から還葬の際、この寺に一泊するなど徳川幕府との縁も深いという。江戸時代には、上野の寛永寺の末寺であったという。その縁で寺側から願い出て、1828年(文政11年)に東照宮本殿(県指定文化財)が、造営されたそうだ。
 
 しかし境内を探したが、そういった建物や説明板は見当たらなかった。後で調べると、現在はちょうど補修工事中(令和2年6月5日~令和10年2月28日)だったようだ。社殿は日光東照宮を模しており、精巧な彫刻に極彩色で彩られているという。
 
 佐野市は、足尾銅山鉱毒事件の田中正造のゆかりの地であり、境内には墓所(分骨の碑)がある。
 
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 墓は、他にも農民たちの希望で渡良瀬川沿岸の5カ所に分骨され、記念碑的な墓が数々あるそうだ。その中で「惣宗寺」にある墓が第一号だという。
 
 「佐野厄除大師」後にして、「佐野観光物産会館」に土産の買い物で再び立ち寄り、駐車場に戻る。
 
 14:00駐車場を出発、隣接する足利市の「栗田美術館」に向かう。
 
  
★ ★ ★
 
 田中正造は、下野国安蘇郡小中村(現・佐野市小中町)の出身。足尾銅山鉱毒事件の被害者でもあり、苦しんでいる渡良瀬川沿岸の農民の救済を政府に訴え、最後は明治天皇に直訴しようとしたことで知られている。衆議院議員選挙に当選6回。
 
 田中正造 出典:ウキメディア・コモンズ
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 正造は、死の直前まで精力的に活動し、河川調査の帰途の1913年(大正2年)8月2日 足利郡吾妻村下羽田(現・佐野市下羽田町)の支援者の一人、庭田清四郎家で倒れた。正造はそのまま1か月間病に臥し、9月4日その庭田家で生涯を閉じた。71歳没。死因は胃ガンなどとされる。財産は全て鉱毒反対運動などに使い果たし、自宅の建物や田畑は既に地元に寄贈していたため、死去したときは無一文だった。庭田家近くの県道沿いに、「田中正造翁終焉の地」碑があるという。

 足尾銅山鉱毒事件で公害闘争の拠点としていた、群馬県邑楽郡渡瀬村早川田(現・館林市下早川田町)にある曹洞宗「雲龍寺」にて9月6日に密葬が行われ、10月12日に「惣宗寺」で本葬が行われた。本葬の参列者は一説に30万人ともいわれる。ちなみに「雲龍寺」は群馬県の飛び地で渡良瀬川の左岸にあり、佐野の「惣宗寺」とは、5Km弱しか離れていない。

 田中の遺骨は、栃木・群馬・埼玉県の鉱毒被害地計6カ所に分骨された。このため、墓は6カ所にある。被害地では現代でも偉人として尊崇されており、「佐野市郷土博物館」が関連資料を保存・展示しているそうだ。

 

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2023年6月23日 (金)

出流原弁天池と唐沢山城趾

 2023年6月11日(日)、雨の降る中を唐沢山城趾のほか、栃木県佐野市と足利市をめぐる。

 

 佐野市は、栃木県の南西部に位置し人口11万人。北は中山間地域、南は市街地と農業地域が広がる。
 
 日本名水百選の「出流原(いずるはら)弁天池」、万葉集にも詠まれ、カタクリの群生する「三毳山(みかもやま)」、平将門の討伐やムカデ退治伝説で有名な藤原秀郷(ひでさと)が築いたとされる「唐沢山城」、一千余年の歴史を持つ「天明鋳物(てんみょういもの)」など、自然・歴史・文化的な財産を有する。また足尾鉱毒事件の田中正造ゆかりの地としても有名。
 
 この日は「出流原弁天池」と「唐沢山城趾」、午後から「佐野らーめん」「佐野厄除け大師」、隣接する足利市の「栗田美術館」を巡る。
 
  
●出流原弁天池 佐野市出流原町 9:15~9:25

 「唐沢山城趾」の観光ガイドは、10時からの予定。その前に「出流原(いずるはら)弁天池」に寄ってみる。9:15、5台分しかない磯山公園駐車場に車を駐める(満車の場合はフィッシングセンターに駐車可)。「出流原弁天池」は、「磯山弁財天」(磯山公園)の麓にある。
 
 周囲138mの「出流原弁天池」(県の天然記念物、日本名水百選)は、樹木に覆われ湧き出す水は日量約2,400t、水温は四季を通して16℃。鯉が泳ぎ、池水は底が見えるほど清澄。一帯は秩父古生層の石灰岩で形成されており鍾乳洞を通る水はカルシウムを含むミネラルウォーター。
 
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 「磯山弁財天」は、「弁天池」から100mほど先、200段の石段を登った岩山の中腹にある。約千年前に唐沢山城主である藤原秀郷の勧進により弘法大師が相州「江ノ島弁天」にて護摩修行時の灰で建立されたと伝えられている。当時は一帯に七宝伽藍が林立して、隆盛を極めていたそうだ。 現在の本殿は鎌倉時代に再建、神社建築でも大変珍しい釘を使わない独特な「懸造り (かけつくり)」で作られている。
 
 弁財天からの見晴らしが良く、佐野平野を一望できるが、雨が降っていることもあり時間の関係で登拝は割愛。
 
 
●唐沢城趾 佐野市富士町 9:45~12:00
 
 「唐沢城趾」は、「続・日本百名城」、「関東七名城」のひとつで、国指定史跡の山城跡。唐沢山山頂に本丸を有し、400年以上前に築かれた貴重な「高石垣」がこの山城の目玉。本丸周辺では関東平野を一望できる眺めと、春は桜やツツジが咲き誇り、秋には紅葉の中の散策を楽しむことができる。
 
 平安時代、藤原秀郷関東に下向し唐沢山に城を築いたのが始まりとされる。戦国時代に秀郷の子孫である佐野氏が居城し、交通要衝の地にあるため、本城をめぐって上杉氏などと何度も戦いがあった。そのため、攻撃に備えるいろいろな工夫が随所に見られる。平らに削平された曲輪(くるわ)。土を盛り上げた土塁。堅牢な「高石垣」、侵入を防ぐ堀など、現在でも「唐澤山神社」本殿がある本丸を中心にその城跡が広がる。
 山内案内図 出典:唐澤山神社ホームページ 【画像をクリックすると拡大表示】

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 「出流原弁天池」から車で15分ほど、9:45「唐沢山レストハウス」駐車場に車を駐める。予約していた佐野市観光ガイドと合流。ガイドの案内で、城内を巡る。
 
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 「くい違い虎口(こぐち)」は、北の「避来矢(ひらいし)山」、南の「天狗岩」の間にある防備を固めた出入口。土塁をくい違いにして直線的に進入できないようにするなどの工夫がされている。当時は土塁だったのか、現在は石垣で作られている。東側は、「升形」になっている。
 
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 「くい違い虎口」の突き当たりに「天狗岩」がある。険しい岩山で、山頂から南方や東方への視界は良好。眺望の良さを活かし、周囲を見張る役割を果たしたものと考えら、かつては物見櫓があったとも、大筒が掛けられていたともされる。樹木に覆われ、雨に煙っていて全貌はよく見えなかった。
 
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 武者詰めがあったとされる「枡形」、この先にも城内への出入口である「虎口」がある。

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 「枡形」を過ぎたところにある「大炊(おおい)の井」。「避来矢山」と「西城」の間にある口径9m、深さ8m以上の大きな井戸。山城における水の確保は重要だが、現在まで涸れることなく豊かな水を蓄えているという。
 
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 「四つ目堀」は、この先の東側への進路を分断する大きな堀切。現在「唐沢山神社」の「神橋」が架かっているが、かつては曳橋(ひきばし)であったとされている。曳橋は、いざという時に橋を引き払い、通行を遮断することができた。この先は、神社の参道として舗装され、石段が設けられている。
 
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 当時の「大手の道」筋が残されている。「くい違い虎口」から続く神社へ向かう手前(西側)で、「二の丸」「本丸」方面に折れて狭い坂道を上るルート。現在の神社の舗装された参道の方を進む。
 
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 「唐沢山神社」(昔の本丸)に向かう参道の石段。
 
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 神社への石段を登らず左に折れて「二の丸」向かう。途中、「本丸」南西の石垣は高さ8m、約40m延びる「高石垣」。小田原合戦以降、佐野氏が豊臣秀吉と深い関係にあったため、西日本を中心とする技術の導入によって築かれたものとされる。関東では極めて珍しい貴重なもの。
 
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 「二の丸」の周囲には石塁のような石垣が巡る。「本丸」の「奥御殿」直番の詰所があったとされている。現在「本丸」への通路は直線的にアプローチしているが、かつて鉤(かぎ)形に折れていたそうだ。
 
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 「本丸」に向かう階段。鳥居のあたりに門があった4本柱の礎石が残っている。
 
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 「本丸」にある藤原秀郷を祀った「唐沢山神社」。かつてはここに「奥御殿」があった。
 
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 「本丸」(神社)から南側へ、参道の石段を降りる
 
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 今は社務所となっている蔵屋敷、武者詰めがあった「南城」跡からの見晴らし。天気が良ければ、東京スカイツリーや富士山を望むことができる。左手の山は、万葉集にも詠まれた「三毳山(みかもやま)」。
 
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 「南城」跡には、万葉集の東歌が刻んである古びた木柱が立っていた。
 
 「下毛野(の)美可母(みかも)の山の小楢(こなら)のす ま麗(ぐは)し兒(こ)ろは 誰(た)が笥(け)か持たむ」

 栃木市と佐野市の市境にある三毳山(みかもやま)を詠み、「コナラの葉のようにみずみずしく、麗しい乙女は誰の食器を持つのだろう」との意味で、食器を持つとは妻になることを意味する。
 

 「南城」の周囲は石垣が巡るが、ガイドの説明では特に南東側の石垣は、見応えがあるという。石垣の角(すみ)の部分に使われる「算木積み」の技法は、石垣が崩れないように強度をアップさせている。 

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 「南城」から東へ、曲輪(くるわ)の一つ「長門丸」に向かう途中の「車井戸」。深さ25mとも言われ、「本丸」のすぐ下にあるため、城内の重要な水源であった。「車」とは、つるべの滑車のことか。
 
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 周囲を土塁が巡る「長門丸」。城で使用する薬草などを作っていたことから「お花畑」とも呼ばれた。現在は弓道の練習場になっている。更に東側の「金の丸」との間には堀切があった。この先に東側にも曲輪が続く。
 
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 「杉曲輪(すぎくるわ)」から見る曲輪の「金の丸」(「平城」ともいう)。お宝蔵があった「金の丸」は土塁も残り、ロッジとして利用されている。「杉曲輪」は御仏殿があったとされ、西側の「金の丸」と東側の曲輪「北城」(北の丸)との間はそれぞれ大きな堀切があった。
 
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 「杉曲輪」には「唐沢山青年自然の家」があったそうだが、2007年(平成19年)3月に閉館し更地になっている。
 
 この先の「北城」の間の堀切は深い。階段を下り登り切った「北城」には、キャンプファイヤーの施設が残されていた。
 
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 「北城」から北側に下り、「杉曲輪」「金の丸」「長門丸」の下の細い道を西に向かい、「本丸」の北側の「武者詰」を抜けると「三の丸」。
 
 現在は、「帯由輪」(おびくるわ)と「二の丸」の間を「三の丸」としている。本城では大きな曲輪で、かつては賓客の応接間があったとされる。周囲は高く急な切岸が巡るが、部分的な石垣等が複数箇所で認められるという。
 
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 「三の丸」から「神橋」を見下ろす。今は土砂で埋まっているが、深い「四つめ堀」がはっきりわかる。
 
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 坂道を下って、「神橋」から出発地の駐車場に戻る。12:00、ガイド終了。「唐沢城趾」を後にして、佐野市街地の「佐野厄除け大師」へ向かう。
 
 これ以降は、本ブログ記事「佐野厄除け大師と栗田美術館」に続く。
 
 
 ★ ★ ★
 
●唐沢城趾
 
 「唐沢山城」は、平安時代の927年、藤原秀郷が従五位下・下野国の押領使(警察・軍事的な官職)を叙任、関東に下向し唐沢山に城を築いたのが始まりと伝えられる。940年、平将門による「平将門の乱」が起こったが、秀郷らの活躍で乱を鎮圧。この功績により秀郷は従四位、武蔵・下野両国鎮守府将軍を拝領した。
 
 戦国時代に秀郷の子孫である佐野氏が居城し、交通要衝の地にあるため、本城をめぐって上杉謙信らと何度も戦いがあった。関ヶ原の戦いでは徳川方に付き3万5千石の旧領を安堵され、「佐野藩」が成立。1602年(慶長7)麓に「佐野城」が築かれ、平安時代より続いた「唐沢山城」はその歴史に幕を閉じた。
 
 廃城に至った説として、江戸に火災があったとき、山上にある唐沢山城よりこれを発見し早馬で江戸に駆け参じたが、江戸を見下ろせる所に城を構えるは何たることかと家康の不興を買ったという言い伝えがある。実際は、平和な時代になって、山よりも平地の方が藩の政治・経済、生活に便利だったからだろう。

 1883年(明治16年)、有志により本丸跡に「唐沢山神社」を建立。1965年(昭和30)「栃木県立自然公園」開設。1963年(昭和38年)「栃木県唐沢青年自然の家」が開所。2014年(平成26)、城跡が「国の史跡」に指定された。

2023年6月19日 (月)

新型コロナ2023.05 「5類」移行

  新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。3年余り続いたコロナ対策は大きな転換点を迎えた。移行後、感染者への入院勧告・指示、感染者・濃厚接触者への外出自粛の要請はなくなり、感染対策は個人の判断に委ねられる。厚労省は26日、定点あたりの新型コロナ新規感染者数が、15~21日は全国で3.56人だったと発表。前週の2.63人から約1.4倍に増えた。4月上旬から緩やかな感染拡大が続いている。

 2023年5月1日から31日までの新聞、テレビ、ネット情報から、新型コロナの主なニュースを辿る。本ブログ記事「新型コロナ2023.04 漸増傾向」の続き。【写真や図をクリックすると、拡大表示します】


【5月1日】

●米国 入国時のワクチン接種証明、5月11日から不要に

 米国のバイデン政権は、新型コロナの感染状況が落ち着いてきたとして、5月11日に「国家非常事態宣言」を解除するのに合わせて、空路で入国する外国人に義務づけていたワクチンの接種証明の提示を不要にすると1日、発表した。理由についてホワイトハウスは、2021年1月以降、新型コロナによる死者は95%、入院患者数は91%近くそれぞれ減少したほか、世界的に見ても死者数が最低水準となっているためとしている。

 ジョー・バイデン米大統領 出典:ウキメディア・コモンズ

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 そのうえで国民の80%以上が少なくとも1回の接種を受けているとして「措置が導入された状況とは異なる段階にきている」としている。ホワイトハウスは、入国の要件などの詳細は後日発表するとしている。

●新型コロナ「後遺症」、診療報酬加算へ

 5類への移行後も流行は今後も続くと見込まれることから、厚労省は新型コロナの後遺症への対応を強化する方針。具体的には、全国各地で後遺症の診療にあたる医療機関のリストを今週中にもとりまとめて厚労省のホームページなどで見ることができるようにするほか、後遺症の患者を診療した医療機関に支払われる診療報酬を5月8日から加算する。

 また、後遺症についての国内外の最新の研究成果が診療に反映されるよう、医療機関向けに随時、情報を提供していく方針。一方、患者を受け入れている医療機関では、後遺症に悩む人たちへの家族や周囲の理解と支援が大切だと指摘している。

●5類移行 「脱マスク」に温度差

 新型コロナが感染症法上の「5類」になる8日から、接客サービス業の従業員にも「脱マスク」の動きが広がる。政府が着用を「個人の判断」とした後も、多くの企業は従業員に着用を求めていた。業界にはコロナ前の日常に戻したいとの期待が大きいが、一部では「お客様への配慮」として、着用する動きも残る。

 観光業界は、ようやくコロナ禍からの回復に向かっている。「脱マスク」の流れは、旅行需要をさらに喚起するとの期待が業界にはある。小売りや銀行業界でも緩和する動きが目立つ。判断が分かれるのは百貨店業界。鉄道の乗務員もJR北海道、東日本、東海、西日本、九州は着用を個人の判断とする一方、JR四国は乗務員、駅員とも原則マスク着用を続けるという。

●コロナ専門の病棟、半数が「縮小」「廃止」 全国の大学病院

 全国の大学病院にある新型コロナ専門病棟の半数が「すでに廃止」か「縮小」されていることが分かった。新型コロナが感染症法上の5類に移行する8日以降は、診療報酬の特例加算が削減され、コロナ患者の受け入れが広がるかは不透明。コロナ患者の看護は人手がかかる。診療報酬などが減ることから、コロナ患者を受け入れるほうが赤字になる可能性がある。

 調査をした全国医学部長病院長会議の横手会長(千葉大病院長)は会見で「患者を診れば診るほどマイナスとなる状況は変えてもらいたい」と訴えた。

【5月2日】

●過大請求最大16億円か ワクチン業務などKNT発表

 ワクチン接種など新型コロナ関連業務の委託料を自治体に過大請求していた問題で、近畿日本ツーリスト(KNT)は2日、水増し額が最大約16億円に上る疑いがあると発表した。コールセンター業務で実際の人数より多く請求していた。契約についての知識不足と、営業目標を達成したいとの意識が原因だとしている。同社はワクチン業務だけでなく、軽症者の収容施設の運営なども請け負っており、3年間の受託事業の合計額は約1300億円にのぼる。

 近畿ツーリスト ロゴ 出典:ウキメディア・コモンズ

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 2日に記者会見を開き、社内点検の結果を公表した。2020年4月~23年3月に扱った762団体、2924件の受託事業を調べたところ、すでに判明している大阪府東大阪市や静岡県焼津市を含む16自治体に5億8400万円を水増し請求していた。速やかに返納するとしている。16自治体とは別に、約70自治体と一部の民間企業に最大で計10億円の過大請求をしていた疑いも判明した。

【5月3日】

●ワクチン証明偽造疑い ボルソナロ・ブラジル前大統領宅を捜索

 おととし11月から去年12月にかけて、ブラジル保健省の新型コロナのワクチンをめぐるデータを不正に書き換え接種証明書を偽造した疑いで、ブラジルの連邦警察は3日、首都ブラジリアのボルソナロ前大統領の自宅などを捜索した。またデータの書き換えに関与したとして、ボルソナロ氏の当時の側近ら6人を逮捕したという。

 ジャイル・ボルソナロ 前ブラジル大統領 出典:ウキメディア・コモンズ

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 地元のメディアは、去年12月ボルソナロ氏や、その家族が米国に渡航する直前にワクチンの接種証明書が偽造されたと伝えている。ボルソナロ氏は地元メディアに対し「私はワクチンを接種していないし、接種証明書を偽造したこともない」と述べて関与を否定した。氏を巡っては、ことし1月にブラジル議会などが襲撃された事件を扇動した疑いや、サウジアラビア政府から贈られた高額の宝飾品を私物化しようとした疑いでも捜査が進められている。

【5月5日】

●WHO、新型コロナ「緊急事態宣言」終了を発表

 WHOのテドロス事務局長が5日、3年3カ月に及んだ「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の終了を宣言した。だが、700万人近い命を奪ったこのウイルスは、いまも根絶されていない。会見では、緊急事態が3年以上に及ぶ中で、ワクチン接種や感染により集団免疫が高まり、新型コロナによる致死率が下がり、医療システムへの負荷が緩和されてきたと指摘。「ほとんどの国でコロナ禍の前のような暮らしに戻ることができている」との認識を示した。

 ただし、「緊急事態」終了は、危機が去ったという意味ではないと強調。新型ウイルスは今後も地球上にとどまり変異を続けており、「新たな感染者や死者の増加をもたらすリスクは残る」と警告。そして、各国が「緊急対応」ではなく、他の感染症と並んで「管理」する局面に移行する時期に入ったとの考えを示し、警戒を解かないよう呼びかけた。WHOに報告された新型コロナ死者は690万人超だが、氏は「実際の人数はその数倍、少なくとも2千万人だ」とも述べた。

●尾身会長「判断は適切、ただ終息した訳ではない」

 WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を終了すると発表したことについて、政府分科会の尾身会長は「世界的に感染者数が少しずつ減り、直近では亡くなる人の数も減って医療の負荷が軽減されてきている。日本でも感染症法上の位置づけを『5類』に移行する対応をとる中でもあり、WHOの判断は適切なのではないか」と述べた。

 その上で「ただ、これで新型コロナの感染が終わった、終息したという訳ではない。今後、感染が低いレベルに向かっていくことを期待したいが、これからも感染者数が急増し、医療が逼迫する事態になってしまうこともあり得る。市民自身が個人の判断で、いままでの経験を元に感染リスクの高い行動を控えめにするなどの対応をとることが、これまでと変わらず有効な対策になると思う」と指摘した。

●コロナ下3年の死、都市より地方で拡大

 新型コロナの感染が広がった3年間に全国で亡くなった人は、例年の水準を大きく上回っていた。コロナだけでなく、循環器や呼吸器の病気、老衰といった死因で亡くなる人も増えた。人口当たりの死者数の増加は、感染が拡大するにつれ、高齢者の多い地方に広がっていた。2020年初めから2022年末までに、都道府県から報告されたコロナの死者は5万7千人。一方、コロナ以外の死因も含めた国内すべての死者は、厚労省研究班が予測する例年の水準より13万人以上多かった。

 感染が広がり始めた2020年は、予測より約3万5千人少なかった。未知のウイルスへの恐怖から感染対策が徹底されたことなどが要因とみられる。しかし、2021年にデルタ株が登場すると感染は拡大。死者は予測より約5万2千人多くなった。2022年には地方にも感染が広がり、予測より約11万8千人多い人々が亡くなった。直前の5年間のデータから例年並みの死者数を予測し、人口動態統計として報告された死者数と比較。多いと「超過死亡」、少ないと「過少死亡」と呼ぶ。

●死因、循環器の病気や老衰が増加

 死因別で特に多かったのは循環器の病気で、2022年11月までに約2万3千人の人々が例年より多く亡くなった。老衰による死者は約1万8千人増、呼吸器の病気による死者は約1万1千人多かった。感染を機に衰弱、誤嚥性肺炎になったり、寝たきりになったりしたことで増えた可能性がある。心筋梗塞や脳卒中といった循環器の病気は、治療が急がれるのに医療逼迫で対応が遅れたり、コロナ感染によって血栓ができる合併症にかかったりする例があったとみられる。

 感染急拡大した2021年以降は、ベッドが満床で救急搬送に時間がかかったり、治療開始が遅れたりする例も続出。2022年には、高齢者が感染しても施設や自宅で療養する流れが強まった。医療逼迫で通常の医療が受けられなかったとみられる。当初は重症化が早く、そのまま亡くなって死因がコロナになる例が目立った。2022年にオミクロン株が主流になると体がダメージを受け、時間をおいて亡くなる人が増加、死因がコロナ以外になった例が増えた可能性がある。

●ワクチン2回接種、8割完了

 首相官邸などによると、今年4月20日までに全人口の80.2%にあたる1億337万人が2回のワクチン接種を済ませた。65歳以上では92.4%。ただ、3回目以降の接種率は下がっている。65歳以上は91.3%が3回目の接種をしたが、全体では68.6%で、4回だと半数に満たない46.5%だった。感染力が高いオミクロン株に対応するワクチンの接種率も44.9%にとどまっている。

 都道府県では、3回接種率が最も高かったのは秋田県で80.2%。山形県の78.0%、岩手県の77.5%と続いた。逆に低かったのは沖縄県の51.6%や大阪府の62.3%など。沖縄県のワクチン・検査推進課は「20、30代を中心に、若い年齢層の接種が進まなかった」としている。

【5月6日】

●ウィズコロナに移る各国 米も緊急事態解除へ 経済復調の中国

 WHOは5日、新型コロナの「緊急事態」終了を宣言した。多くの国では、すでに規制が緩和や撤廃され、「ウィズコロナ」が定着しつつある。いまも1週間に約44万人の新たな感染が報告されているが、世界全体でみると感染者数や死者数が最も低水準の状態が続いている。米政府は今月11日、新型コロナ感染拡大に対処する公衆衛生上の「緊急事態宣言」の期間を解除する。ワクチンや検査、治療薬などは、今後は自己負担になるケースが出てくる。

 中国政府は昨年末、3年近くに及んだ「ゼロコロナ政策」を転換。軽症者の自宅隔離を認めたり、地区をまたぐ行動履歴の確認を撤廃した。今年1月には入国者に義務づけた隔離を撤廃。1~3月期の実質経済成長率が4.5%と経済正常化が進んでいる。英国のイングランドでは公共施設でのマスク着用義務が昨年1月に撤廃され、同2月には全ての法的規制を解除。他の地域でも、昨年5月迄には全ての義務が撤廃されている。

【5月7日】

●Jリーグ、感染対策ガイドライン廃止へ 5類移行受け

 2020年5月に策定された「Jリーグ新型コロナ感染症対応ガイドライン」は、選手やスタッフを対象にした検査の手順や、チームの関係者が陽性判定を受けた場合の対応、それに試合における観客数の制限などが細かく定められ、すべてのクラブがこれにしたがって活動してきた。今シーズンはおよそ3年ぶりにすべての席で声出し応援ができ、3月からは声出し応援の際のマスクの着用を個人の判断に委ねている。そのうえで5類移行をめどに、ガイドラインの運用自体を廃止することにしている。

【5月8日】

●新型コロナ きょうから「5類」に移行

 新型コロナの感染症法上の位置づけについて、厚労省は外出自粛の要請や入院勧告などの厳しい措置をとることができる「2類相当」として対策にあたってきたが、8日、季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。移行後、感染対策は個人の判断に委ねられる。これまでのように限られた医療機関で患者を受け入れる体制から幅広い医療機関で対応する体制を目指し、無料にしてきた医療費の窓口負担分については検査や外来診療の費用などが自己負担になる。「外来医療費の比較」の図の出典は、NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 流行状況の把握は、「全数把握」から指定医療機関が1週間分の感染者数をまとめて報告する「定点把握」に変更される。厚労省の発表は週一回、毎週金曜日、初回は19日の予定。「定点把握」の図の出典は、NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 一方で、今後も流行を繰り返すことが予想されることから、厚労省は感染したあとの療養期間の目安として、発症翌日から5日間は外出を控えることを推奨する。「療養期間」の図の出典は、NHK新型コロナウイルス特設サイト

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 移行にあわせて、政府の対策本部や感染対策の「基本的対処方針」も廃止、3年余り続く国のコロナ対策は大きな節目を迎えた。 

●高齢者ら高リスク、懸念なお

 重症化リスクの高い高齢者らへの対策は、5類移行後も続ける必要がある。昨秋に感染者の把握方法が変わり、検査をしない人も増えた。感染者の検出率が下がり、実際の感染者数はもっと多かったと推測されている。重症化率や致死率は下がってきたが、高齢者ほど高く、厚労省発表の昨夏時点の80歳以上の致死率は1.69%。沖縄県で2022年に亡くなったコロナ患者約400人のデータによると、7割超は70歳以上で、推定された感染経路は入所施設約4割、医療機関約3割だった。

 日本では75歳以上の後期高齢者が1900万人超と、高齢化が著しく進む。高齢者らハイリスクの人たちをいかにコロナから守るか、これからが正念場だが、懸念材料は多い。感染が拡大すれば、高齢者も多く感染して重症化しやすい。死者を増やさないためには、高齢者施設や病院でのクラスター発生を抑えることが重要になる。

●高齢者向け接種、今年度分始まる

 高齢者らを対象にした2023年度の新型コロナワクチンの接種が8日、始まった。接種の目的は感染予防から重症化予防に重きを置き、年2回行われる。接種対象は、65歳以上の高齢者や基礎疾患があるなど重症化リスクの高い人、こうした人に接する機会が多い医療機関や高齢者・障害者施設の従事者。接種にはオミクロン株対応のワクチンが使われる。今回の接種は8月まで、2回目は9月以降に予定されている。それ以外の人への接種は、9月以降に年1回の機会が設けられる。

●GW、コロナ前水準 JR利用者・高速交通量

 JR旅客6社は8日、大型連休中(4月28日~5月7日)の新幹線や在来線特急などの利用状況を発表した。各社の利用者は前年よりも3~4割程度増え、コロナ前の2018年と比べても94%まで回復。記録が残る1990年以降では、1日あたりの利用者数も過去7番目に多かったという。JR東海では利用者数が2018年に比べて100%まで回復。東海道新幹線の利用者数は356万7千人で2018年比101%とコロナ前をわずかに上回った。

 高速道路各社もこの日に連休中(4月28日~5月7日)の交通量を発表した。全国の主要40区間では1日の平均交通量は4万2千台(前年比106%)だった。最も長かった渋滞は3日の関越道下り線の藤岡ジャンクション(群馬県)付近で54キロだった。

●最後の全数把握

 新型コロナの「5類移行」に伴い、これまでの「全数把握」による毎日の感染者数の発表は2023年5月8日(月)が最後となった。死者数と重症者数の発表は、5月9日(火)が最後。以下6枚の図の出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【5月9日】

●衆院本会議、約3年ぶり全議員出席し質疑 5類で制限解除

 衆議院本会議では、新型コロナの感染拡大を受け、2020年4月から、法案などの採決の際をのぞいて、出席を半数程度の議員に限る措置が取られてきたが、「5類」に移行したことを受け、措置が解除された。9日午後、解除後初めてとなる本会議が開かれ、およそ3年ぶりに、すべての議員が出席できる形で質疑が行われた。また、演壇に設置されていたアクリル板も取り外され、感染拡大前の通常の状態に戻った。

【5月10日】

●コロナ宣言解除でメキシコ越境者増? 米政権、移民規制を強化

 バイデン米政権は10日、他国で亡命申請をせず不法に入国した人を退去させることを盛り込んだ新たな移民規制を発表した。新型コロナの「緊急事態宣言」を11日に解除するのに伴い、メキシコからの越境者が急増することを見据えて12日から実施する。政権は移民政策で右派、左派の双方から批判を受けており、難しいかじ取りが続く。

●オミクロン株「BA.5」系統、高熱では増殖しにくい 東大など

 オミクロン株の「BA.5」系統は、高熱の状態では増殖しにくいとする実験の結果を、東京大学などのグループが国際的な科学雑誌で発表した。グループは、ヒトのiPS細胞から肺の細胞を作って、デルタ株やオミクロン株の「BA.5」と「BQ.1.1」を感染させ、ウイルスの増え方を調べた。その結果、平熱に近い37℃ではどの変異ウイルスも2日後には10万から100万倍に増えた。

 一方で、40℃では、デルタ株は37℃のときと同様に増えたが、「BA.5」の増加は1000倍にとどまり、「BQ.1.1」は増えなかった。グループは、オミクロン株は高熱で増殖しにくく、デルタ株などに感染した場合に比べて重症化する人の割合が少ないことに関わっている可能性がある。オミクロン株で重症化する人の割合が低かった理由の解明につながる可能性があるとしている。

【5月11日】

●「コロナ感染状況落ち着いた」 米国、国家非常事態宣言解除

 米国のバイデン政権は3年前から続けてきた「国家非常事態宣言」を11日いっぱいで解除する。背景には、ピーク時の2021年1月以降、新型コロナ死者が95%減少するなど感染状況が落ち着いてきているほか、国民の80%以上が少なくとも1回のワクチン接種を受けていることなどがある。これにともないコロナ禍で続いてきた様々な措置が解除されることになり、空路で入国する日本人を含む外国人に義務づけられていたワクチン接種証明の提示も不要になる。

 このほか連邦政府職員などを対象にしたワクチン接種の義務化や、新型コロナの検査キットの無料配布が終了するほか、各州や自治体の感染状況の国への報告義務もなくなる。ただ、専門家などからは検査キットの無料配布や報告義務がなくなることで、再び感染が拡大した場合の把握や対応に遅れが出るのではないかと懸念の声も出ている。

●韓国、コロナ隔離義務解除 警報レベル引き下げ

 韓国政府は11日、6月から新型コロナの警報レベルを、最高段階の「深刻」から「警戒」に1段階引き下げると発表した。コロナ感染者の隔離義務解除などが柱。街頭ではマスクをつけずに歩く人が多く、コロナ前の日常が戻りつつある。「3年4カ月ぶりに国民が日常を取り戻すことになりうれしく思う」。尹錫悦大統領は11日、コロナの対策本部の会議で述べた。WHOが緊急事態の終了を宣言したことを受け、韓国でも対策の緩和を決めた。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領 出典:ウキメディア・コモンズ

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 現在7日間の感染者隔離義務は解除され、5日間の隔離の「勧告」となり、個人の裁量に任される。一方でコロナの検査や治療への公費支援は、当面継続するという。マスクの着用義務は段階的に引き下げられており、今年1月に屋内での着用義務を解除。3月には公共交通機関での義務も解除された。今回、感染時のリスクが高い患者がいる、入院が可能な医療機関などの施設では着用義務を維持する一方、それ以外の医院や薬局では解除される。

●新型コロナ対応の記録公表 政府分科会尾身会長ら約90人が執筆

 政府分科会の尾身会長などの専門家や、全国の自治体の担当者などが、これまでの対応を振り返る記録を、まとめて公表した。この記録は、2020年以降の新型コロナの対応について、政府分科会のメンバーの専門家や政府や全国の自治体の担当者など、およそ90人が執筆。記録では、当初の対応から感染状況を把握する体制や保健所や医療の体制、ワクチンや治療薬の確保、それに、社会生活への影響まで、当事者が実際に行った対応と得られた教訓が記されている。

 尾身会長は、リスクを評価し取るべき対策の提言が専門家の役割だとしたうえで、布マスクの全世帯配布などを例に「専門家の意見を聞いたうえで、政府が対策の方針を決め、その理由を説明するという明確な意思決定プロセスを確立しておく必要がある」と指摘。また、脇田座長は、科学的に十分に精査されていない内容の資料が厚労省から突然出てきたこともあり、リスク分析と評価する専門家の思いと、厚労省の立ち位置との折り合いに苦労したなどと振り返っている。

【5月12日】

●企業純利益、最高水準に 3月期見通し コロナ後・円安影響

 コロナ禍からの回復や歴史的な円安を追い風に、上場企業の2023年3月期決算は、最終的なもうけを示す純利益が過去最高水準になる見通し。業績の重しになっている資源高や半導体不足が今後は和らぎ、好調が続くと予想する企業が多い。11日までに発表した703社(53.7%)と、未発表企業の業績予想などをもとに試算。売上高は前年比14.2%増、営業利益は4.2%増となる見込み。

 コロナ禍での行動制限で大きな打撃を受けていた非製造業が著しく改善。空運業は純損益が3年ぶりに赤字から黒字に転換、陸運業は純利益を10倍以上増。円安や資源高の影響で、商社は外貨で稼いだ分が円換算で膨らんだほか、原料炭などの資源やエネルギーの価格高騰で、過去最高益の更新が相次いだ。一方、電気・ガス業は赤字に転落。非製造業全体での純利益は34.7%増。製造業も円安が輸出を後押しするなどし、売上高が16.9%増加。だが、仕入れコストの急増などで純利益は5.5%減。

【5月14日】

●大型連休 成田空港の国際線利用、コロナ禍前の半分程度まで回復

 東京出入国在留管理局成田空港支局によると、先月28日から今月7日までの10日間に成田空港の国際線を利用した人は56万6000人余りだった。コロナ前の2019年は、大型連休の11日間で109万人余りで、今年はこの半分程度まで回復したことになる。利用者の内訳は、日本人がおよそ19万人、外国人がおよそ37万6000人で、出国先は韓国が最も多いおよそ19%。続いて米国、台湾だった。

【5月17日】

●4月 訪日外国人旅行者194万人余、前月比13万人増 回復傾向続く

 日本政府観光局によると先月、日本を訪れた外国人旅行者は推計で194万9100人と、前の月より13万人余り、率にして7%増えた。感染拡大前の2019年の同じ月と比べると33%少ない水準だが、去年10月に観光目的の個人旅行が解禁されるなど、水際対策が大幅に緩和されたことで増加傾向となっている。

 国や地域別では、韓国が最も多く46万7000人、次いで、台湾が29万1600人、米国が18万3900人。日本政府観光局では、先月は東南アジアや欧米など各国で祝日があったため、旅行需要が高まったことや、航空便の増便などが主な要因だと分析している。一方、2019年の外国人旅行者全体の3割を占めていた中国からの旅行者は、日本への団体旅行が制限されていることなどから10万8300人にとどまっている。

●ことし1~3月 日本人旅行者の国内消費額、コロナ禍前上回る

 観光庁によると、ことし3月までの3か月間に日本人が国内を旅行中に宿泊や買い物などで消費した金額は、4兆2331億円。これは去年の同じ時期の1.8倍にのぼる。また、感染拡大前の4年前、2019年の同じ時期を0.5%上回った。3か月ごとの消費額をまとめているこの調査で、コロナ禍前の水準を上回ったのは今回が初めて。

 観光庁は、年明けに再開した国の観光需要の喚起策「全国旅行支援」が呼び水となって、旅行に伴う消費が伸びたことが主な要因だとしている。また、旅行で支出する金額は、1人当たり4万2277円と、感染拡大前の2019年の同じ時期を21%上回っている。水際対策が緩和されてから日本を訪れる外国人旅行者が急速に増加し、インバウンド消費が拡大しているが、こうした中で日本人旅行者の消費についても回復の動きが鮮明になっている。

●東証3万円台回復、1年8カ月ぶり 脱コロナ追い風

 17日の東京株式市場で、日経平均株価が約1年8カ月ぶりに3万円台を回復。円安や「脱コロナ」の動きを追い風に企業業績が堅調なことに加え、企業が自社株買いなど株主還元の姿勢を強めていることが株高につながっている。日経平均は年初から5千円近く上がった。新型コロナの規制緩和で客足が戻り、業績を急回復させた「脱コロナ」銘柄の上昇が目立つ。

 業種別では鉄道会社などの陸運が年初から16%上昇。百貨店などの小売り(13%)や空運(9%)も伸びた。金融緩和も株高を支える。日本銀行の新体制が4月、大規模緩和の継続を決めたことで円安が進んだ。電機や自動車など輸出銘柄が買われた。日経平均はバブル期の1989年に3万8915円の史上最高値をつけた後、長く低迷。大規模な財政・金融政策を受けて2021年2月、3万円台を回復したが、欧米が金融引き締めに転じたため伸び悩んでいた。

●GDP年1.6%増 旅行や外食好調 1〜3月 3四半期ぶりプラス

 2023年1~3月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)で前期(2022年10~12月期)比0.4%増、年率換算で1.6%増となった。世界経済の減速に伴い輸出は落ち込んだが、コロナ禍からの回復で旅行や外食など個人消費が全体を押し上げた。内閣府が17日、1次速報を発表した。2022年10~12月期が下方修正されて年率換算で0.1%減とプラスからマイナスに転じたため、3四半期ぶりのプラス成長になった。

 GDPの半分以上を占める個人消費は0.6%増。行動制限のない年末年始となりサービス消費が好調だったほか、半導体不足で不振だった自動車の販売が回復。一方、物価高による節約志向の高まりで食品や家庭用消耗品、衣類などは減少。賃金や社会保険料などの雇用者報酬は実質1.3%減少、6四半期連続でマイナス。賃金は伸びても物価上昇に追いつかない状況が続く。設備投資は0.9%増と、2四半期ぶりにプラス。輸出は4.2%減と、6四半期ぶりのマイナス。輸入は2.3%減。

【5月18日】

●東京都、5類移行後初の「定点把握」 感染状況は?

 東京都は18日、今月8日から14日までの感染状況や専門家が分析するモニタリング結果について公表した。新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行して初めて、定点把握による感染者数を発表し、今月14日までの1週間で1医療機関あたりでは2.40人だった。前の週に比べて1.7倍になっていて、専門家は「緩やかな感染拡大傾向にあるが大型連休の影響もあるため今後の動向に注意が必要だ」としている。

 18日発表の東京の定点把握と全数把握 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【5月19日】

●コロナ定点感染数、5類移行後初公表 厚労省「緩やかに増加」

 厚労省は19日、新型コロナについて、一定の医療機関で継続的に把握する定点あたりの新規感染者数が、8~14日は全国で2.63人(速報値)だったと発表した。前週は1.80人(参考値)で、1.46倍に増加だった。前の週より増加するのは6週連続で、厚労省は「比較的、低い水準ではあるが、4月以降、緩やかな増加傾向が続いている。大型連休の影響もあるので今後の推移を注視したい」としている。8日にコロナの感染症法上の分類が5類に移行後、初めての公表となる。

 都道府県別では多い順に、沖縄県6.07人、石川県4.90人、北海道4.36人、新潟県4.30人、山梨県4.22人などとなっていて40の都道府県で前の週より増加している。厚労省は、流行状況を継続的に把握する指標の一つとして「新規入院者数」の発表を新たに始めた。5月14日までの1週間に新たに入院した人は全国で2330人で、前の週と比べて55人の減少とほぼ横ばい、厚労省は入院が必要な人が急増するような流行状況ではないとしている。

 5月19日発表の新規感染者の定点把握 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【5月20日】

●コロナ感染者数、毎日推計し更新のサイト開設 モデルナ日本法人

 モデルナ・ジャパンが今月ウェブサイトを公開し、民間の医療情報データベースに登録された全国およそ4200の医療機関からのデータをもとに、専門家の監修を受けて統計的に推計した、全国や地域ごとの感染者数を毎日更新して示している。また、年代別の感染者数の推計や検査を受けた人のうちの陽性者の割合「陽性率」も掲載されている。

 18日までのデータでは、全国の感染者数は1週間平均で1日当たりおよそ2万4000人と推計されていて、モデルナ・ジャパンは「これまで慣れてきた感染者数の形でデータを示すことが、最新の流行状況を正しく把握し、適切に行動するために重要と考える」としている。

【5月22日】

●羽田空港 新型コロナで閉鎖の国際線施設、需要回復に伴い再開へ

 羽田空港では、国際線の発着を増やすため、国内線専用だった第2ターミナルが増築され、3年前の2020年3月に国際線用の出発ロビーや到着ロビーなどの施設がオープンした。新型コロナの影響でおよそ2週間後に閉鎖された。それ以来、国際線の発着は第3ターミナルに集約されていたが、水際対策の緩和が大幅に進んだことで、国際線の発着便数は最近では多い日で一日250便と、感染拡大前を上回る水準まで回復しているという。

 このためターミナルビルの運営会社では、施設を使用する全日空などと協議した結果、夏にはさらに需要が増えることが見込まれるとして、ことし7月19日に施設を再開することを決めた。ただ、手荷物検査を行う保安検査員の人手不足の影響などにより、まずは時間を限って再開されるということで、全日空が一日に出発5便のほか、到着を数便運航することにしていて、徐々に便数を増やしていきたいとしている。

【5月23日】

●WHO総会開幕 台湾の参加、中国などの反対で今回も認められず

 WHOの年次総会は今月21日から30日までスイス・ジュネーブで開かれ、新型コロナの教訓を踏まえ、今後のパンデミックへの備えなどについて議論が行われる予定。総会では22日、WHOに加盟していないものの2016年までの8年間、オブザーバーとして年次総会に参加していた台湾については、中国などの反対で参加の可否について議論しないことが決まり、台湾の参加は7年連続で認められなかった。

 米国が「台湾の公衆衛生や先進技術はWHOにとって価値がある」と声明を出すなど、欧米各国などからはコロナ感染拡大の対策で成果をあげた台湾を参加させるべきという声があがっていた。22日の協議で中国政府の代表は「参加については『1つの中国』の原則に基づき処理されなければならない」と述べた。参加が認められなかったことについて、台湾外交部は「これは公衆衛生の問題であり、政治が優先されるべきではない」と不満を表明した。

【5月24日】

●イベルメクチン、新型コロナ患者に投与も効果みられず 北里大

 寄生虫が原因で失明などが引き起こされる感染症の特効薬「イベルメクチン」について、新型コロナ患者に投与しても効果がみられなかったとする結果を、治験を進めていた北里大学病院などのグループが発表した。治験は2020年8月からおととし10月まで新型コロナに感染した20歳以上の中等症までの患者248人を対象に行われた。。

 イベルメクチンは、ノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大学の大村特別栄誉教授の研究を元に開発された、寄生虫によって失明やリンパ管の腫れが引き起こされる病気の特効薬で、新型コロナへの効果があるか各国で研究が進められたが、去年9月、製薬会社の「興和」も新型コロナ患者に投与しても、有効性がみられなかったとする治験の結果を発表していた。

●生保、コロナ響き減益 8社3月期決算 入院給付金膨らむ

 生命保険大手8社の2023年3月期決算が24日、出そろった。新型コロナ感染者に支払う入院給付金が膨らむなどし、本業のもうけを示す基礎利益では全社が減益となった。一方、外貨建て商品の売れ行きが好調で、扱いの多い第一生命は売上高にあたる保険料等収入で日本生命を抜き、8年ぶりに首位に立った。

 コロナ感染者への入院給付金について、各社は無症状で自宅療養などをした「みなし入院」患者も支払い対象とした。昨年9月末に重症化リスクの高い人に対象を絞ったものの、支払額は急増。日本生命は前年の約8倍にあたる1811億円(約130万件)に、第一生命は約10倍の1062億円(93万件)に膨らんだ。ただ、コロナは今年5月8日に感染症法上の「5類」に移行し、給付金の支払いは今後急減する見込み。

【5月25日】

●北京市当局 感染者増加傾向、対策呼びかけ

 北京市の保健当局は24日、新型コロナを含めた感染症全体の患者数が5月21日までの1週間で2万5000人余りとなり、このうち新型コロナの感染者が最も多かったと発表した。新型コロナの感染者が最も多いのは4週連続で、北京市の保健当局は、公共交通機関を利用する際にマスクを着用するなどの感染対策の徹底を呼びかけた。

 中国政府はことし1月に厳しい行動制限などを伴う「ゼロコロナ」政策を終了し、5月からは国内の感染状況に関するデータを明らかにしておらず、実態の把握が困難になっている。こうした中、中国の感染症の専門家は5月22日、国内の感染状況について、1週間当たりの新規感染者数が5月末におよそ4000万人、6月末にはおよそ6500万人にそれぞれ達するという予測を示し、再び感染が拡大することへの警戒感が強まっている。

●東京都 1週間の感染者、前週の1.5倍 2週続け増加傾向

 25日、都は感染状況のモニタリング項目について、5類移行後2回目となる発表を行った。それによると、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、416か所から報告があった感染者数の合計は今月21日までの1週間で1470人で、1医療機関当たりでは3.53人となった。これは、前週の2.40人の1.47倍にあたり、2週続けて増加傾向にあるということで、専門家は「感染拡大の増加スピードに注意が必要だ」としている。

 また、今月22日時点での入院患者数は、前の週より196人多い702人となり、専門家は「現時点で医療提供体制への大きな負荷は見られないが、引き続き状況を注視する必要がある」としている。

【5月26日】

●新規感染者、前週比1.4倍 15〜21日緩やかな拡大傾向続く

 厚労省は26日、定点あたりの新型コロナ新規感染者数が、15~21日は全国で3.56人だったと発表した。前週の2.63人から約1.4倍に増えた。4月上旬から緩やかな感染拡大が続いている。8日にコロナが5類に変わり、定点医療機関からの報告は今回が2回目。全国に約5千ある定点で継続的に把握することで、感染者数の増加や減少をつかむことができる。

 42都道府県で感染者が前週から増えた。最多は沖縄の10.80人で、石川6.38人、岩手6.32人と続く。東京3.53人、愛知4.51人、大阪2.37人、福岡3.09人だった。15~21日の全国の新規入院患者数は3215人で、前週(2489人)の約1.3倍に。集中治療室に入院している全国の重症患者数は7日間平均で52人だった。

 5月26日発表の新規感染者の定点把握 出典:NHK新型コロナウイルス特設サイト

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【5月31日】

●国内宿泊者数、前年同月比41%増 外国人は19倍と大幅増

 観光庁によると、4月、国内のホテルや旅館などに宿泊した人は、速報値で延べ4763万人で、去年の同じ月より41%増加した。このうち、日本人の宿泊者は延べ3724万人で、去年の同じ月より12%の増加。また、外国人の宿泊者は、延べ1038万人で、去年の同じ月の19倍と大幅に増加し、コロナ禍前の92%の水準となった。

 

 ★ ★ ★

●厚労省リーフレット(2023年度版)

 「感染対策は個人・事業者の判断が基本となります」 出典:厚生労働省ホームページ

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2023年6月 3日 (土)

富弘美術館

 2023年5月7日(日)、雨の中を桐生新町のまち並みを歩いてめぐった後、「富弘美術館」で星野富弘氏の詩画を鑑賞。
 
 
 本ブログ記事「桐生のまち並み(重伝建)」のつづき。
 
 14:00、桐生市観光バス駐車場を出発。次の目的地の「富弘美術館」へ向かう。「富弘美術館」は、桐生市から日光に向かう122号線を北上、「草木ダム」を過ぎて草木湖の西岸を走り、「草木ドライブイン」からすぐのところにある。雨はやまない。
 
 14:50、入館。入館料520円、館内撮影禁止。
 
 10年以上前に一度来たことがあったが、美術館は新しくなっていて、大小の展示室、ロビー、図書コーナー、ショップ、トイレどすべての部屋が円形の空間だった。
  
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 東村(現・みどり市)のふるさと創生事業により1991年春に開館した「富弘美術館」は、美しい山々と湖にとけこむように建っている。不慮の事故での9年間の入院生活から、久しぶりにふるさとに帰った星野氏を迎えたのは、子どもの頃から慣れ親しんだそんな東(あずま)村の自然だった。絶望の中で苦しい闘病生活を支えた母の献身的な看病、覚えていた詩人の言葉、そして信仰。彼は口に筆をくわえて文や絵を描いた。
 
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 館内に入ると、星野氏の透明感あふれる水彩で描かれた草花と、素朴で美しい文字が調和した独特な「詩画」の世界が広がる。星野氏の作品は「生きる勇気」や「生きることのすばらしさ」をなにげない毎日のなかから、自然に教えてくれているという。
 
 以下、富弘美術館のパンフレットから転載。
 
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 15:45、富弘美術館発。18:00、自宅着。

 本ブログの関連記事

 「鬼怒川温泉」2012年11月18日投稿

  http://otsukare-sama.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-6aa9.html

  

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●星野富弘
 
 星野富弘氏は、日本の詩人、画家。1946年4月24日、群馬県勢多郡東村(現・みどり市)に生まれる。
 
 1970年、群馬大学教育学部保健体育科を卒業し高崎市の中学校体育教師になるが、同年6月17日、クラブ活動の指導中の墜落事故で頸髄を損傷、手足の自由を失う。
 
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 1972年、群馬大学病院入院中、口に筆をくわえて文や絵を書き始め
 
 1974年、キリスト教の洗礼を受ける。
 
 1979年入院中、前橋で最初の作品展を開く。同年9月に退院し、帰郷。
 
 1981年、結婚。雑誌や新聞に詩画作品やエッセイを連載。
 
 1982年、高崎で「花の詩画展」開催。以後、全国各地で開かれる詩画展は、大きな感動を呼び現在も続いている。
   
 1991年5月、東村に村立「富弘美術館」が開館。「花の詩画展」は、ブラジル各都市をはじめ、ニューヨーク、ハワイ、サンフランシスコ、ロサンゼルスと開催された。
 
 2005年4月、「富弘美術館」新館が開館。近接の商業施設(草木ドライブイン)と併せ、道の駅に登録。
 
 2006年3月、勢多郡東村は、新田郡笠懸町、山田郡大間々町と合併し、みどり市になった。
 
 2006年5月、熊本県葦北郡芦北町に姉妹館として町立「星野富弘美術館」開館。
 
 2006年6月、群馬県名誉県民となる。
 
 富弘美術館と草木湖 Googleマップより転載
  
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2023年6月 2日 (金)

桐生のまち並み(重伝建)

 2023年5月7日(日) 雨の中、桐生新町のまち並み(重要伝統的建造物群保存地区、群馬県桐生市)を歩く。
 
 桐生市は、群馬県南東部に位置し、太田市、館林市とともに東毛地方の拠点都市であり、東毛北部の中心都市。古くから絹織物を産する機業(きぎょう)都市で、桐生織は京都・西陣の西陣織と並び称された。市内に多くの産業遺産があり、桐生織物会館旧館を含む6件の「日本遺産」や、130件以上の「国登録有形文化財」が残されている。桐生新町は、関東地方で5番目、県内で2番目に選定された国の「重要伝統的建造物群保存地区」(重伝建地区)。
 
 9:35、桐生市観光バス駐車場に到着。9:55、徒歩で「有鄰館」(ゆうりんかん)着。
 
 10:00、「有鄰館」の敷地奥にあるビール蔵跡の「からくり人形芝居」の芝居小屋に入場(無料)。
 
●からくり人形芝居 10:00~
 
 ボランティア団体「桐生からくり人形芝居保存会」の方から、からくり人形芝居の歴史や関連資料の説明を聞く。
 
 桐生からくり人形芝居は江戸初期、1662年(寛文2年)に始まった竹田出雲のからくり芝居の系譜をひく。1894年(明治27年)「天満宮」御開帳に江戸浅草奥山の竹田縫之助の「活き人形からくり人形芝居」が興行された。東京では無くなりつつある江戸風情の名残りを受け入れたのが桐生だったという。
 
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 各町会が1961年(昭和36年)までに6回、「天満宮」の御開帳時に上演していた「からくり人形芝居」を、1999年(平成11年)に復元・復活させて、現在「桐生からくり人形芝居保存会」が上演している。機織り機の技を活かした「からくり人形芝居」が毎月第1、3土曜日、1日5回(午前10時~午後4時)に上演。「曽我兄弟夜討」「助六由縁江戸桜」「羽衣」「巌流島」「八百屋お七」「巌流島」など季節によって演題が変わる。
 
 10:15~歌舞伎十八番の一つ「助六由縁(ゆかり)江戸櫻」の上演(事前予約済み)。
 
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 芝居観覧後、舞台裏の手作り「からくり」を見学。
 
 10:40、予約してあった観光ガイド「織都(しょくと)桐生」案内人の会と合流。基本ガイド料2時間2,000円。
  
●有隣館 市指定の重要文化財 10:40~
 
 「有鄰館」は、桐生新町の重伝建区内である本町二丁目の南端にある。江戸時代に桐生に定着した近江商人・矢野家が営んでいた醸造業の11棟の蔵群。江戸時代から昭和時代にかけて、酒・味噌・醤油をなどを醸造し、保管するために使用されていた。
 
 蔵群は、1994年(平成6年)矢野商店から桐生市に寄付され、その後改修整備が行われ、1997年(平成9)年4月より、舞台や展示、演劇、コンサートなど多目的イベントスペースとして活用されている。周辺に残る歴史的建造物や近代化遺産などと一体となった町並み保存の拠点にもなっている。なお、「有鄰」とは、孔子の「徳孤ならず必ず鄰あり」という故事から引用した言葉。
  
 本町通りから見る「有鄰館」の煉瓦蔵は、市内最大。
  
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 「矢野商店」の店舗と店蔵は、「有鄰館」の敷地で本町通りに面する。
 
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●花のにしはら (旧書上商店)
 
 明治・大正期の書上(かきあげ)文左衛門の店舗「旧書上商店」は桐生で最大の織物買継商。この一帯に店舗や蔵、居宅が連なっており、その離れには作家・坂口安吾(1906年-1955年)が晩年を過ごした。
 
 花のにしはら 出典:Googleマップ
 
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 「旧書上商店」は、3代文左衛門の時、買継商として店を構え発展。11代文左衛門の時(明治期)、横浜へ支店をつくり織物輸出業を開始、さらに上海へも出店。当時「関東織物買継王」とも称された。12 代文左衛門の時、店員は 100 人を超え、繁盛をなし、戦後まで営業を続けた。旧店舗は、現在花屋さんになっている。
  
●旧曽我織物工場 国登録有形文化財
  
 1922年(大正11年)建築、栃木県で産出した大谷石造りのノコギリ屋根工場。出典:文化遺産オンライン(文化庁)
 
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 内部は木造、屋根には排気塔が立ち、通風用の丸窓飾りが特徴。屋根の北西方向に採光面を設けることで、一日中一定の明るさが得られることから、織物の生地を点検するのに適していた。工場は貸倉庫として活用されていたが、現在は使われなくなり活用を検討中。
 
● 平田家住宅 国登録有形文化財
 
 1914年(大正3年)、袖蔵は1900年(明治33年)建築。江戸時代、現在地で雑貨商を始めたが、その後染料、生糸などを扱うようになった。戦時中商品の仕入れが困難になり廃業した。この地域にはめずらしい漆喰仕上げの壁に重厚な扉の蔵作り店舗。
 
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●中村弥一商店 国登録有形文化財
 
 本町通りの東側で、幅約12m、奥行き約82mの敷地に、北寄りに建つ。雑貨店の店舗で、建設当時の店構えを良く残し、織物産業の興隆を伝え貴重。1957年(昭和32年)からは塗装店になった。
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 1922年(大正11年)建築の店舗は、北風による火災の延焼を防ぐ北側の外壁、灰墨を混ぜた鼠漆喰仕上。そのほか文庫蔵、新座敷、奥座敷が直列し、南辺に浴場、石蔵が建ち並ぶ。この短冊状の屋敷地は、桐生新町の町立て当時の規模をそのまま伝えている。
 
●森合資会社 国登録有形文化財
 大正3年建築、屋根は銅板葺きで、外壁には珍しい白磁タイルを使用した洋風の事務所。隣には、白漆喰の土蔵造2階建ての店蔵。会社は、桐生の発展に大きく貢献した。

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●一の湯
 
 ノスタルジックな銭湯で、明治時代に隣接する織物工場で働く女性労働者が利用する浴場として建築された。1912年(大正元)年には公衆浴場として営業していたが、後継者難で2018年末に廃業した。4月15日、約4年半ぶりに復活した。
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●桐生天満宮 県指定の重要文化財 11:35~
 
 本町通りの突き当たりが「桐生天満宮」。本町通りを振り返ると、広い道幅の古い町並み。
 
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 「桐生天満宮」は、桐生のメインストリート「本町通り」の起点として、「桐生新町」の町立て以来桐生を見守ってきた。

 神門(桐生門)と水舎 以下、からくり水車、拝殿、神楽殿、本殿。

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 水車の横に説明板がある。

「この水車は高須孝重氏により寄贈されたもので、桐生からくり人形保存会の有志の方々の協力で完成しました。水車動力での使用目的で作られたもので、宮本武蔵のからくり人形芝居の舞台を設置して上演する予定です。平成十二年十二月 桐生天満宮」
 
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 「桐生天満宮」は1591年(天正19年)、桐生新町創設にあたり下久方村梅原(現在の桐生市梅田町1丁目)より現在地に遷座されたと伝えられる。社殿は江戸時代に多い権現造り、本殿と幣殿の外壁には美しい彩の彫刻が施されている。この彫刻は、黒保根村(現在の桐生市黒保根町)出身で、「上州の左甚五郎」と呼ばれた彫物師・ 関口文次郎の作。完成までに15年を要したという。
 
 本殿後方の「末社春日社本殿」は一間社流造、銅板葺きで彫刻の特徴から室町時代後期のものと推定。市内最古の建物で市指定重要文化財。
 
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●群馬大学理工学部同窓記念会館 国登録有形文化財 11:55~
  
 休館だったので、大学構外の歩道橋の上から、外観を見学。
  
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 この建物は、当初「桐生高等染織学校」として創設されたもの。その後、1949年(昭和24年)、学制改革により「群馬大学工学部」(2013年(平成25年)「理工学部」)になった。1972年(昭和47年)、校舎新築に伴い、講堂及び正面玄関の一部を敷地中央より現在地に移築、同窓記念会館として活用されている。
  
 木造2階建て瓦葺き、デザインは中世西ヨーロッパの教会堂に用いられたゴシック式、2階吹き抜けの大空間を支える為、「ハンマービーム」と呼ばれる独特の屋根構造になっている。土台はレンガ積み、外壁は下見板張りのペイント塗り。
 
 守衛所と同窓記念会館の建物 出典:同窓会館パンフレット
 
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●工房「風花」 12:05~
 
 「ベーカリーカフェレンガ」に付設の絹遊塾・工房「風花(かざはな)」に入室。工房「風花」は、絹の糸製造から染め、織りまで行う工房。主に初心者向け織り教室、この工房から生まれたシルク製品(マスク・ストール・ウォーマー・靴下等)の販売している。
 
 繭から糸を紡ぐ実演。
 
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 国内での使用されなくなった「ガラ紡機」の実演を見学。「ガラ紡機」は、綿の塊から直接糸を紡ぐ独特のしくみを持つ紡績機。操作中に機械が「ガラガラ」と音を出すことから、「ガラ紡」と呼ばれ、手回しから水車で回すガラ紡績が始まった。
 
●ベーカリーカフェレンガ(旧金谷レース工業) 国登録有形文化財 12:35~
 
 1920(大正9年)に建てられた桐生で唯一のレンガ造りのノコギリ屋根工場。煉瓦は深谷市の日本煉瓦製で、イギリス積み。隣接する事務所棟は、1931年(昭和6年)建築。木造2階建てスクラッチタイル貼り、窓や細部に昭和初期の洋風建築の特徴が見られる。建物2つを比較してみると大正・昭和各時代の流行の違いがよくわかるという。
 
 レンガ工場内部は改装され、2008年(平成20年)4月からパン工場&カフェとして活用、焼きたてパンが評判だそうだ。ノコギリ屋根工場に入場し、内部を見学。
 
 ベーカリーカフェレンガの工場(右)と事務棟(左)。「四辻の齋嘉」から撮影。
 
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●四辻の齋嘉 12:40~
 
 「桐生天満宮」界隈の十字路に風情のある木造建築。明治から大正時代築の斎藤家(旧斎藤織物)の旧宅を再生した。4つの町に面した十字路に建つ事から、斎藤織物の創業者、斎藤嘉吉に因んで以前から「四辻の斎嘉」と呼ばれていたという。1923年(大正12)年建築の母屋は、千本格子の京町屋の風格を備える。
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 NPO法人として立ち上がり、桐生市の産業観光の町ガイドとして誕生した株式会社「桐生再生」が買い取り、補修工事を施し観光拠点として生まれ変わった。低速電動コミニュティバス「MAYU」の実証実験にも参加し、その発着基地にもなっている。この古民家と明治時代の蔵をレンタルスペースとして貸し出している。また土日のランチ限定の食事処としても営業。
 
 群馬の郷土料理「おっきりこみうどん」(稲荷寿司とのセット)をこの古民家の落ち着いた和室で食べられる。「おっきりこみうどん」は、幅広のうどんを野菜と一緒に煮込み麺料理「おきりこみ」「煮ぼうとう」と呼ばれることもあり、山梨の「ほうとう」に似ている。一方で、特に桐生市辺りで食べられている 「ひもかわうどん」は、幅の広い平打ち麺。「おっきりこみ」のうどんには塩は使われていないが、「ひもかわ」には塩が使われているそうだ。
 
 蔵と母屋はつながっていて、外に出ないでも蔵の中に入ることができます。開けっぱなしの重厚な扉の厚みで、蔵だとわかる。
 
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 2階建ての蔵の1階部分は、洋室に改装してある。
 
 12:55、ガイド終了。12:55~「四辻の斎嘉」の庭の東屋で、持参した弁当で昼食。
 
●桐生歴史文化資料館 13:40~
 
 「桐生歴史文化資料館」は、桐生市民の歴史と文化についての知識普及・教養の向上と、重伝建地区を訪れる人へのサービス拠点。
 
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 桐生織物の歴史資料として、展示の中心に「生人形白瀧姫」像と日本織物会社に関わる資料を据えていて、その他に桐生の歴史・文化に関わる資料が展示されている。以下2枚の写真は、「桐生歴史文化資料館」のパンフより転載。
 
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 「生人形白瀧姫」について、「桐生歴史文化資料館」のパンフより以下に転載する。
 明治26(1893)年、初代安本亀八によって制作された生人形を日本織物会社が買い取ったと考えられています、日本織物倒産後は、会社施設などは様々な企業に引き継がれましたが、明治28年に会社構外に落成した織姫神社が改築を経ながら存在を続け、平成元(1989)年改築の際に社殿の中からこの像が発見され、その際に白瀧姫と名付けられました。この生人形については、日本織物に引き取られた際に撮影された写真以外に記録は無く、謎を秘めています。
 13:50、「桐生歴史文化資料館」を出て、14:00桐生市観光バス駐車場を出発。次の目的地の「富弘美術館」へ向かう。
 
 以下、本ブログ記事「富弘美術館」に続く。
 
  
 ★ ★ ★
 
 上州名物の三つの「か」は、「かかあ天下」と「空っ風」と「雷」。「かかあ天下」とは、女が働き者ということ。上州では養蚕が盛んであった。この仕事は女性が行うため、一家の経済の主導権が女性にあることが多く、発言力も大きかった。きめ細かな蚕の飼育は、女性の繊細な感覚と勤勉さにあった。上州女性は、春から夏にかけては養蚕、秋の収穫を終えると糸挽きと織物に専念。品質の優れた繭や生糸、織物を生産できる女性は高く評価され、収入は男性よりもはるかに高額だったそうだ。
 
 桐生市は、1921年(大正10年)、山田郡桐生町が群馬県内3番目、県東部で初めて市制施行。2023年4月末現在の人口は、103,823人。上毛かるたで「桐生は日本の機どころ」と詠まれるなど、奈良時代から絹織物の産地として知られる。市内川内町は古くから「仁田山紬」の産地として知られた。川内町にある「白滝神社」には、この地に機織りを伝えたとされる白滝姫が祀られており、上毛かるたの絵札には、白滝姫が機織りをする姿が描かれている。
 
 桐生新町は、1591年(天正19年)に徳川家康の命を受け、代官・大久保長安の手代・大野八右衛門により町立てされて発展した。町立て当初からの敷地割りが残り、当時から織物の生産が行われ、絹織物業を中心に発展した町の特徴をあらわしている。江戸後期から昭和初期にかけて建てられた近代の桐生を代表する産業である絹織物業に係わる様々な建造物が一体として残され、多様な主屋や土蔵、ノコギリ屋根の工場など、製織町として特色ある歴史的な環境を今日に伝えている。
 
 製糸・撚糸・染織・縫製・刺繍など、繊維に関する様々な技術を持つ事業所が集積する総合産地であることから「織都(しょくと)」という風雅な呼び名がある。昭和中期は群馬県で人口最多の市であった。
 
 
 ★★★
 
国の重要文化財に桐生天満宮を新たに答申 社殿など2棟 群馬・桐生市





 2003年6月23日「群馬テレビ」配信のYahooニュースによると、「桐生天満宮」が国の重文に答申された。以下にその記事を転載。 
 国の文化審議会が23日に開かれ、群馬県桐生市の天満宮を新たに国の重要文化財に指定することが答申されました。国の重要文化財に指定するよう答申されたのは桐生市天神町の天満宮の本殿・幣殿・拝殿と末社春日社本殿のあわせて2棟です。本殿が幣殿と拝殿につながっている、いわゆる「権現造り」でこちらは1992年に県の重要文化財に指定されています。本殿・幣殿は壁面の精緻な彫刻などによる壁面の装飾が特徴である一方、拝殿は比較的簡素な造りとなっていて、江戸時代後期の北関東を代表する神社建築の一つとされています。1991年に市の重要文化財に指定されている末社春日社本殿は本殿後方にある比較的小型の建物です。17世紀初期の建築とみられ、市内で最も古い木造建築物です。
 県や天満宮は、2019年度から実施した県内の寺や神社を対象にした調査で、価値が高いという結果が出たことが今回の指定へとつながったとしています。
 今回の答申を経て官報に告示されると県内の国宝や重要文化財はあわせて27件、82棟となります。

2023年5月27日 (土)

埼玉県立自然の博物館

 2023年4月30日(日)、埼玉県立自然の博物館(長瀞町)を見学する。

 当初、秩父鉄道長瀞駅から宝登山を経て長瀞アルプスの山並みを歩き野上駅までのハイキングを予定。しかし前日、雨予報のために計画を変更して「埼玉県立自然の博物館」を見学する。
 
 
 11:58、秩父鉄道・上長瀞駅で下車。

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 駅前に3軒ほど蕎麦屋がある。一番駅に近く花に囲まれた、一見して蕎麦屋らしくない「もみの木」に入店。

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 旬の野菜天ぷらそば(1,800円)を注文。天ぷらの盛り合わせの量がてんこ盛り、食べ応えがある。
 
 南桜通りを歩き、5分ほどで「埼玉県立自然の博物館」。長瀞は、「日本地質学発祥の地」とされ、博物館の前に石碑が建つ。
 
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日本地質学発祥の地

埼玉県知事土屋義彦書

由来の記

 荒川が刻んだ景勝地長瀞は、広い岩畳や色とりどりの変成岩がみられ、早くも大正十二年には国の名勝・天然記念物に指定された。
 ここに分布する変成岩は、三波川結晶片岩と呼ばれ、西日本地域にかけて帯状に分布しており、日本列島の根幹をなすものである。明治十年東京大学に地質学科が創設され近代地質学が初めて日本に導入されると、翌年には、初代教授ナウマン博士が長瀞を調査している。以来、長瀞一帯は、我が国地質学上の重要な研究拠点となり、多くの地質学者を育てて、日本地質学発祥の地と云われるようになった。
 彩の国元年である本年は、日本地質学会が発足して百周年を、さらに、長瀞町が町村合併五十周年を迎えた。折しも、由緒あるこの長瀞の地に、天皇・皇后両陛下が行幸啓された。
 これらを祈念して「日本地質学発祥の地」の碑をここに建立する。

 平成五年十二月

埼玉県
長瀞町

 
 博物館の入口にある「パレオパラドキシア 」の実物大模型。この博物館の目玉。
  
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 13:00、博物館に入館。200円。出典:ウキメディア・コモンズ
 
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●オリエンテーションホール
 
 巨大ザメ「カルカロドン メガロドン」のアゴの復元模型。
 
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 今から2500万年前から400万年前に世界の海に栄えた巨大な肉食性のサメ。1986年(昭和61)春、このサメの歯化石73本が、埼玉県深谷市(旧大里郡川本町)の荒川河床に分布する約1000万年前の地層(比企層群土塩層)から発見された。
 
 巨大ザメ「カルカロドン メガロドン」の模型。大きさ12m。
 
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 さわれるはく製コーナー ニホンイノシシ
 
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 ニホンツキノワグマ
 
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 アライグマ ニホンアナグマ ホンドタヌキ
 
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 秩父鉱山産の鉱物標本。
 
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 下から1列目の左は閃亜鉛鉱、右は黄鉄鉱。2列目の左は黄鉄鉱、右は閃亜鉛鉱・黄銅鉱。3列目は磁鉄鉱。上段右は黄銅鉱、右は閃亜鉛鉱・黄鉄鉱。
 
●地学展示ホール
 
 恐竜「ガリミムス ブラツス」の全身骨格レプリカ。疾走している様子を再現している。
 
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 「ガリミムス」は、白亜紀末期のアジアで生きていた恐竜で、ニワトリモドキという意味。特徴的な長い足と長い首を持ち、小さな頭に大きな目。歯がなくクチバシがあった。草食または雑食性。長い足と骨に空洞が多く軽い身体は、走るのに適していた。映画「ジュラシックパーク」にも登場した。
 
 日本ではこの仲間の化石が、熊本県、福井県、群馬県で発見されているそうだ。秩父の地層には白亜紀の地層が細長く分布しているのが見られその時代の化石が多く発見されているが、説明板には埼玉県で「ガリミムス」が発見されたという記述はない。
 
 「ガリミムス」の 復元モデル 出典:ウキメディア・コモンズ
  
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 250万年~100万年前に昔の日本に棲んでいた「アケボノゾウ」の全身骨格レプリカ。肩までの高さ1.8mで、現代のゾウよりもずっと小さく進化した。
 
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  西武鉄道・元加治駅から徒歩約10分の入間川の河床に、約200万年前のアケボノゾウの足跡化石を見ることができるという。同じ地層からは臼歯や骨格などの化石も見つかっている。500m下流には、メタセコイアの株が多数見つかった化石林があったが、現在は侵食によりほとんど残っていないそうだ。
  
●天然記念物 古秩父湾の地層と化石
 
 埼玉の海に生息した太古生物の「パレオパラドキシア」の骨格見本。
 
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 今から約1700万年前~1500万年前の秩父盆地は、奥秩父の山すそまで海が入りこみ、東に開く入江となっていた。秩父の太古の海「古秩父湾」には、パレオパラドキシアという哺乳類の海獣が生息していた。埼玉県からは、世界で最も多くパレオパラドキシアの化石が発見されている。
 
 中でも、1972年(昭和47)に秩父市大野原で発見された標本と1981年(昭和56年)に小鹿野町般若で発見された標本は体の骨の大部分がそろっている「全身骨格」であり貴重なもので当博物館の代表的な展示物となっている。秩父市で発掘された大野原標本の全長は、2.5m。
 
 「パレオパラドキシア」の大野原標本(実物化石)
 
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●生物展示ホール
 
 埼玉の森を再現した大ジオラマ 初夏の原生林
 
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 ニホンカモシカと絶壁に自生する岩茸(いわたけ)を採る人
 
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●2階企画展示室「自然の色と模様」
 
 鳥やキノコの展示など。
 
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 14:15に博物館を出発。雨は降りそうもないので、次の目的地へ。
 
 上長瀞駅に戻って14:33発熊谷駅行き、野上駅14:39着。
 
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 国道140号線と並行して脇道を北へ進み、萩寺洞昌院を左に見て通り過ぎ、長瀞町消防団第2分団を左折し、長い坂道を登る。山の中にポツンとあるカフェギャラリー「風の丘」に、15:23着。
 
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 野上駅から約2.7Km(40分ほど)。ここは、秩父郡長瀞町野上下郷。
 
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  長瀞町の自然に囲まれた山の中のカフェ。
ホットコーヒーと黒蜜・黒豆のセット(650円)を注文。店の奥様の笑顔と自然豊かな風景に癒されながら、ゆったりとした時間を楽しみ、のんびりと過ごす。
 
 「風の丘」を16:15に出て、再び徒歩で野上駅に16:55着。17:07発熊谷行きに乗車。
 
 警戒した雨は午前中ほんのちょっとぱらついた程度。結果的には、当初の計画通り行けたかもしれなかった。

2023年5月21日 (日)

行く春の信州桜めぐり

 2023年4月17日(月)、見頃の桜を探して信州をめぐる旅。

 今年の桜は東京で3月14日に開花前線がスタートし(平年より10日早い)、3月22日に同じく東京で全国最初の満開が観測された。平年より9日早い。全国的に、観測史上かなり早い開花・満開を記録している。関東甲信地方での満開は、東京を除く関東の主な都市では3月24日~30日、甲府が3月24日、 長野では4月3日。

 行く春の見頃の桜を探して、信州をめぐる。この日は、パラパラの小雨と曇り空。4月中旬にしては、この日の朝方で7℃、昼でも10℃前後、ダウンコートが欲しい寒い日だった。

 

 早朝3:35自宅発、4:50マイクロバスに乗車して出発。

 

●水中(みずなか)のしだれ桜(高山村) 7:05~7:45

 長野県の北部、小布施町を経て高山村へ。車から降り、しばらくすると身体が冷えて寒い。

 説明板

景観重要樹木
指定番号 第4号 「水中のしだれ桜」

 高山村黒部集落の南の水田地帯の一画にあり、孤高の気高さを漂わせている。
 幹周約7m、樹高約13m、樹冠約15m。黒みのある主幹が2本あり、1本は垂直で他は斜めに伸びて枝がはうように広がっている。花の赤みが濃く、多くの写真愛好家が訪れます。村指定の天然記念物で、樹齢は推定500年余り。
 村の五大桜の1つといわれている。 高山村

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 残炎ながら葉桜。手前のピンク色の小さい枝垂れ桜が満開。

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●黒部のエドヒガンザクラ(高山村) 8:00~

 「水中のしだれ桜」からクルマで東へ10分のところ、やはり山間の水田地帯。駐車場の八重桜は、満開。

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 説明板

景観重要樹木
指定番号第3号 「黒部のエドヒガン桜」

 黒部集落の南の水田地帯の一画にあり、孤高の気高さを漂わせている。
 幹周約7メートル、樹高約13m、樹冠約15m。黒みのある主幹が2本あり、1本は垂直で他は斜めに伸びて枝がはうように広がっている。
 花の赤みが濃く、多くの写真愛好家が訪れます。村指定の天然記念物で、樹齢は推定500年余り。村の五大桜の1つといわれている。 高山村

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 雨が上がり、高山村の村里に虹が架かる。

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●弁天さんのしだれ桜(須坂市) 9:15~10:05

 高山村から須坂市に移動。豊丘の地域を一望できる高台にある一本桜。

 信州須坂観光協会ホームページ

須坂市指定天然記念物の桜「弁天さんのしだれ桜」

 奈良山(なろうやま)の山ふところに位置する高台に湧水池「弁天池」があり、池のほとりに樹齢推定250年のしだれ桜がある。地元では弁天さんの大桜と呼ばれ、見事な花をつける。標高730mの高地にあるため開花が平地より一週間ほど遅い。池の前には川中島合戦ゆかりの「謙信道」に沿って林道「月生線」が通り、戦国武士の隠れ里の伝承が今も残る。北アルプスを望み須坂市を一望できる景勝地である。
 幹周約4.2m、樹高約13m
 中灰野と梅ノ木在住者により「弁天さんの桜と梅を守る会」を発足。桜を地域の文化財として守り、地区の歴史について調べ案内看板を作成するなど地域づくりにつながる保存活動が始まっている。 須坂市教育委員会

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 桜の傍らには蚕神(さんじん)の石碑。 その手前には、写真には写ってないが、湧水の「弁天池」と池の中には水神を祀る小さな石祠がある

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●立屋・番所の桜(小川村) 11:30~12:10

 長野市と白馬村の中間にある小川村には、通称「オリンピック道路」が通っている。オリンピック道路から山の上の方まで細い道をかなり登ったところに「立屋・番所の桜」駐車場がある。「桜山」 に登り、「番所の桜」から「立屋の桜」へと回り、番所(関所)跡を見て駐車場に戻る。

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 小川村観光協会ホームページ

~番所の桜~
 立屋口留め番所跡の近くにあり、「立屋の桜」の実生の台木に接木された桜を育て、移植。色濃いベニシダザクラとして成長し、美しい花を咲かせます。

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~立屋の桜
 墓の守り桜とし、鎮魂と真夏の暑さをさける為に植栽されたと伝えられています。昭和54年に村天然記念物に指定されたエドヒガンザクラ。
 樹高15m伝承350年。小川村は桜の里、春には民家のまわりや山々に雄大に咲き誇り、多くの写真愛好家で賑わいます。

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 小川村観光協会ホームページ

立屋口留番所(たてやくちどめばんしょ)跡

 松代藩主真田信之は「人改め」と「物資改め」のため藩内20箇所に口留番所を設置しました。当時立屋は、善光寺に通じる大町街道と戸隠〜麻積宿を結ぶ道が交差する要衝の地であり、1649(慶安2)年、椿峰村に立屋口留番所が設けられました。
 番役人として、松代藩家老・鈴木右近の子、八右衛門が派遣され、以降7代目八右衛門まで続きました。1872(明治5)年、番所制度が廃止されましたが、今もなおその面影を残しています。

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 この辺りから、残雪の北アルプスの眺望が素晴らしとのことだが、この日のは曇っていてまったく見えず。

●貞麟寺のしだれ桜(白馬村) 12:50~13:20

 広大な境内の中の樹林の奥に「貞麟寺」の庫裏(くり)、その左先に本堂が見える。お寺の背後には天狗岳から延びる尾根が迫る。

 貞麟寺の重厚な本堂

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 白馬村ホームページ

貞麟寺の枝垂れ桜(エドヒガンザクラ) 村指定 天然記念物 指定年月日 昭和49年10月1日

 この桜は、エドヒガン(バラ科サクラ属)を母種とする枝垂れ系品種の落葉高木で「糸桜」とも呼ばれ、かつて国の天然記念物に指定されていました。この枝垂れ桜は寺の歴史を語っており、樹齢は推定400年、樹囲5m、樹高16m、花が大きくて色も紅に濃く稀にみる名木です。貞麟寺開山の手植樹と伝えられ、この桜の満開期が麻を蒔く時期と目されてきたため、古来から「麻蒔(おまき)糸桜」とも呼ばれています。

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 貞麟寺の庭園

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 庭園には、他にも大きい枝垂れ桜がある。

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 境内にはカタクリの群生地があるが、咲いているのは僅かだった。

●道の駅「白馬」(白馬村) 14:05~13:30

 道の駅で休憩、昼食。

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 昼食、かきあげ蕎麦(1,000円)。土産のおやき4個960円。


●長谷寺(ちょうこくじ)(白馬村)
 14:25

 白馬村飯森地区にある「長谷寺」は「塩の道」の名刹として知られ、境内にある枝垂桜が満開になる頃には、多くの観光客で賑わうそうだ。残念ながら見頃をとうに過ぎていて、引き返す。なお、境内には白馬村指定の天然記念物の樹齢500年を超えた老杉群もある。

●四十九院のコブシ(白馬村) 14:40~15:10

 モクレンの一種のコブシが 、白くて大きな花びらの花をつけて満開。田んぼや畑が広がる広々したところに、北アルプスを背景に2本のこぶしぽつんと静かにがたたずむ。白馬に春の訪れを知らせてくれる「こぶし」は、桜よりも早く咲き、白馬村の村木に指定されている。

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 白馬連峰は、雲隠れ。

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 信州の桜はすでに満開を過ぎ、葉桜になっていた。その中でも見栄えの良い桜を掲載したが、天気も悪く鮮やかな桜の風景が撮れなかったのは残念だった。

 国道148号線を北上し、日本海側の北陸自動車道「能生I.C.」で降り、 国道8号線沿いの道の駅「マリンドリーム能生」(新潟県糸魚川市)に立ち寄り休憩。19:30、出発地に帰着。20:10、自宅着。

 

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